設立
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3章 設立
1. 事業拠点の特徴
2. 事業拠点の設立
3. 会社の清算及び撤退
1.事業拠点の特徴
■ブラジルの事業形態
ブラジルにおいてビジネスを行う際の事業形態は、株式会社、有限責任会社、合名会社、合資会社、株式合資会社、協同組合など多岐にわたります。しかし、外資企業の進出に適した形態は株式会社(Sociedade Anônima: S/A)と有限責任会社(Sociedade Limitada: LTDA)の2種類です。
ブラジルでは「駐在員事務所」という概念が会社法上認められていないこと、これに加えて、外資企業の支店設立については、原則大統領令が必要とされており、実質法人設立での進出しか選択できないという現状があります。このため、殆どの外資企業は現地法人を設立し、ブラジルへ進出しています。
まずブラジルにおける全ての事業形態の特徴を概観し、続いて有限責任会社について詳しく見ていきます。
ブラジル民法(CÓDIGO CIVIL /No.10.406/02)によれば、法人格を有する事業形態は、企業/営利社団法人(Sociedade Empresaria)と簡易法人(Sociedade Simples)の2種類に分けることができます。
企業/営利社団法人は、出資者は原則出資のみを行い、実際の役務提供は従業員が行います。一般的な事業形態であり、殆どの企業がSociedade Empresariaとなります。この場合、法人登記の申請は各州の州商業登記所(Junta Comercial)に行います。
一方、簡易法人は、会計事務所、弁護士事務所などが該当し、出資者本人が直接役務提供を行います。また、業務を補助する社員を雇用している場合でも、出資者が役務提供している限りは、簡易法人として登記を行う事ができます。この場合、登記申請は、法人民事登記所(Cartório de Registro Civil de Pessoas Jurídicas)に行います。
事業形態の次に、法人形態を選択します。法人形態は以下の7つが有りますが、このうち株式会社(Sociedade Anônima)はSociedade Empresariaとしてのみ設立が可能、協同組合(Cooperativa)はSociedade Simplesとしてのみ設立が可能となります。現在ブラジルで最も選択されている法人形態は、内資企業、外資企業問わず有限責任会社となります。このため、Sociedade Empresariaの有限責任会社(Sociedade Limitada)が最も一般的な形態といえます。
- 合名会社 :Sociedade em Nome Coletiva
- 合資会社 :Sociedade em Comandita Simples
- 個人有限会社 :Empresa Individual de Responsabilidade Limitada
- 有限責任会社 :Sociedade Limitada/LTDA
- 株式会社 :Sociedade Anônima (Sociedade Empresariaのみ)
- 株式合資会社 :Sociedade em Comandita por Ações
- 協同組合 :Cooperativa (Sociedade Simplesのみ)
■現地法人
■有限責任会社 (Sociedade Limitada :LTDA)
有限責任会社は、ブラジルへ進出する日系企業を含む外資企業が最も選択する法人形態であり、また、ブラジルにおいて最も設立登記されている法人形態です。有限責任会社の設立には、出資者(パートナー)が1名以上必要となり、出資者は自己の持ち分である出資金額を限度とした有限責任を負うことになります。
有限責任会社の場合、株式をブラジル証券取引所へ一般公開することは認められていません。有限責任会社は1919年発効の政令と、ブラジル民法によって規定されていますが、不足部分に関しては株式会社同様の株式会社法によって補足的に準用されています。
■株式会社 (Sociedade Anônima :S/A)
この法的形態に基づく企業を設立するには、2名以上の株主が必要となります。株主の責任は、引受済株式の発行価格に限定されます。会社の資本金は株式によって分割され、企業は必然的に営利目的を持たなければなりません。
開業の際は、事業の経済・財務的フィージビリティースタディー、会社定款の草案、会社の基盤に関する情報、事業計画書などを提出する必要があります。会社資本金は、現金または評価可能な資産で構成することができます。
株式会社はブラジル証券市場への上場が可能な法人形態であり、自社が発行する有価証券が、証券取引所または店頭取引において取引が認められているか否かによって、公開株式会社もしくは非公開株式会社に分類されます。
公開株式会社は、自社の株式を証券取引所で取引し、非公開株式会社は金融機関で取引します。公開株式会社の場合は、規制・監督権限を有する連邦独立行政機関である証券取引委員会 (CVM) の登録が必要になります。
■有限責任会社と株式会社の比較
ブラジルでは、有限責任会社が法人全体の90%から95%と圧倒的に多く利用されており、進出する外資企業も同様です。理由として、株式会社は株式会社法の規定により設立要件が厳しくなりますが、有限責任会社の場合は、原則としてブラジル民法の規定に従い、株式会社と比べて規定されている設立要件が緩い点が挙げられます。
まずは、機関設計の容易さです。株式会社では、会社の規模を問わず監査役会の設置(3~5名)が義務付けられますが、有限責任会社の場合は、設置が任意となります。
また、株式会社は財務諸表を年に一回公告する義務がありますが、有限責任会社の場合は、公告義務がないため、最低年1回開催される総会で承認されればよく、出資者全員が書面で議決する場合には、この総会開催も免除されます。
【株式会社と有限責任会社の比較】
| 株式会社 | 有限責任会社 |
株主 /出資者(パートナー) | 2名以上 | 1名以上 |
役員会 | 2名以上 | - |
経営審議会 | 3名以上 | 義務なし |
業務執行者(取締役) | 2名以上 | 1名以上 |
監査役会 | 3~5名 | 任意 |
財務諸表の公告 | 必須 | 不要 |
証券市場への上場 | 可 | 不可 |
次章「第5章 会社法」に株式会社、有限責任会社の各機関設計について、詳細な説明を記載しています。
■その他の進出形態
合名会社(Sociedade em Nome Coletiva)
合名会社は、ブラジル民法1045条に準拠した法人形態であり、出資者が会社の債権者に対し、直接連帯して責任を負う無限責任社員だけで構成される会社を指します。出資者は最低1名から設立が可能となります。
原則、医師、弁護士、科学者、作家などによって行われる専門分野における知的経済活動に関する制度が定められています。
社名には出資者の名前が使用され、かつ「会社」を表す「&Compania」や「兄弟会社」を表す「Hermanos」などの文言を付加する必要があります。資本金については、各出資者が自由に設定することができます。出資者は、その出資額にかかわらず役員会の議決権を保有し、経営を組合や第三者に委託する場合を除き、法的代表権を有することになります。
合資会社(Sociedade em Comandita Simple)
合資会社は、ブラジル民法1045条に準拠した法人形態であり、出資者として出資金額に応じた責任のみを負う有限責任社員と、出資に加え会社経営も担当することで法的代表権と無限責任を負う無限責任社員で構成される会社を指します。合資会社は、会社が倒産して多額の負債を負う場合、その負債を全て弁済する義務が発生します。合資会社の設立には、法人・個人に関係なく、出資者が2名以上必要となります。しかし、出資者のうち有限責任社員は会社成立までに出資額全額を出資する義務はありません。
社名には出資者の名前が使用され、かつ「会社」を表す「&Compania」、または単純合資会社の形態を選択する場合は「S. en C.」などの文言を付加する必要があります。
以前は、株式合資会社(Sociedade em Comandita por Ações)も存在しましたが、2002年の根拠法(art. 1.007, CCB)改正で廃止となりました。
個人有限責任会社(Empresa Individual de Responsabilidade Limitada)
2012年1月執行の法規(LEI Nº12.441、DE 11 DE DE JULHO2011)によって、個人有限責任会社の設立が可能となりました。出資者は1名にて設立が可能です。出資者は個人・法人の制限はありませんが、個人出資の場合は、その個人1名につき個人有限責任会社1社のみ出資が可能となります。
個人出資の場合、Adoministratorの設置は任意となりますが、法人出資の場合は通常の有限責任会社と同様に、Adoministratorが必置となります。
協同組合 (Cooperativa)
協同組合は、民主的で集団的な団体の創設を通じて自発的に団結する20 人以上の者によって、簡易形態型会社の様態として設立されます。協同組合が他の種類の会社と異なるのは、人間の連合であると同時に1つの事業でもあり、そこでは組合員自身が企業のオーナーであるという点です。協同組合の専門家のサービスを依頼したい企業は、どの分野であるかにかかわらず、その部門の協同組合に直接要請することができます。
■現地法人以外の進出形態
■支店・駐在員事務所
ブラジルでは「駐在員事務所」という概念が会社法上定められていないため、支店のみ設立が可能となります。しかし、海外に本店を置く外資企業が、その支店をブラジル国内に設置するためには、ブラジル政府による事前承認が必要と規定されています。
この承認を得るためには、まず、ブラジル商業登記部(DNRC: Departamento Nacional de Registro do Comércio)へ必要書類を提出、申請が妥当と評価される必要があります。また、開発庁・産業省・貿易庁での検査を受け、これらの全ての検査が終了したのち、最終的に政府の承認を得ることができます。しかし、検査や承認における所要期間や、承認の基準となる明確な判断根拠は明示されていません。
政府からの承認が下りた場合、法人同様に現地での代理人を選定し、支店を設置する州の州商業登記所にて、支店の開設手続きを行います。手続が終了し、CNPJ(法人登記番号)が取得できた時点で実際の事業活動が開始できます。
2. 事業拠点の設立
■有限責任会社の設立手続
ここでは、日系企業を含む外資企業がブラジルへ進出するにあたって、最も一般的な法人形態である有限責任会社を設立する場合の流れについて、説明していきます。
ブラジルにおける法人設立プロセスは、インターネット上での処理が多いため、プロセスの進捗確認や、登録情報の確認なども、項目によってはインターネット上で行う事ができます。法人登記におけるシステムや、登録の申請フォームはポルトガル語表示のみの対応となり、記入項目も多く煩雑なことから、現地専門家の利用は欠かせません。
【法人設立(CNPJ取得)手続】
- 代理人の選定・現地法人情報の決定
ブラジルに法人を設立する場合、現地居住権を持っている者を「法定代理人(Legal Representative)」として必ず登録しなくてはなりません。日系企業が法人を設立する際は、現地の設立代行業者や、現地業務執行者の方を代理人に選定して、法人の設立を行う場合が殆どです。
外国人(例えば、ブラジル現地へ赴任する駐在員)でも、役員用の一時滞在ビザを保有していれば法定代理人として登録することが可能なため、多くの日系企業は、駐在員が赴任後に役員用の一時滞在ビザを取得し、法定代理人となる場合が多いようです。
実際の法人設立を委託するにあたっては、法定代理人に対して法人設立に関する一切の権限を委任する旨の設立委任状を作成します。法定代理人はその委任状をもとに法人設立の為の書類作成や当局への申請を行います。設立委任状の一般的記載事項は、出資者に関する情報、法定代理人に関する情報、法定代理人の職務範囲と委任事項、法定代理人の責任範囲となります。
また、機関設計、資本金、登記住所など、新会社である現地法人に関する様々な事項を検討していく必要があります。
【有限責任会社の機関設計/資本金 4章会社法より抜粋】
| 有限責任会社 | 留意点 |
出資者(パートナー) | 1名以上 | ・法人/個人のどちらでも可 ・外資企業(外国人)の場合はブラジルの居住者を法定代理人に指名する必要がある |
法定代理人 (Legal Representative) | 1名以上 | ・1つの法人につき必ず1名以上登録が必要 |
業務執行者 (取締役) (Administrator) | 1名以上 | ・会社の経営を行う者(サイン権者) ・ブラジルの居住者 |
監査役会 | 任意 | ・設置する場合、3名を選定 ・監査役に選任される者には既定の条件がある |
会計監査人 | 右記条件に該当する場合のみ必要 | ・総資産額が2億4千万BRL以上、または、総収益が3億BRL以上の上場会社及び非上場会社の場合のみ |
資本金要件 | 無し | ・外国人に役員用の一時滞在ビザを発行する場合のみ、1人当たり600,000BRLの資本金が払い込まれている必要がある |
■出資者(パートナー)
有限責任会社の出資者は、最低1名以上必要となります。出資者は、出資額を登記してから5年間は出資額に対する責任を負います(ブラジル民法1055条)。出資者の個人責任として、通常は出資額が責任の限度となりますが、資本金に未払金額がある場合においては、出資を行った法人の権利乱用、法人資産と個人資産の混同、不当解散についても個人責任が発生する場合があります(ブラジル民法1052条)。
出資者は、ブラジルの法人及び個人、ならびに外国法人や外国人が該当します。しかし、外国にて登記、居住している外国法人、外国人が出資者となる場合は、ブラジルの居住者である法定代理人を選任する必要があります。
■法定代理人(Legal Representative)
ブラジルにて法人を設立する場合、定款上原則Legal Representativeを設定する必要があります。外国法人、外国人が出資者となる場合は、ブラジルでの出資者代理である法定代理人がLegal Representativeとして定款に記載され、委任状に記載のある職務範囲において活動を行います。同一人物によるLegal Representativeの兼任が可能なため、出資者2者共に同一人物を選任することが可能です。
■業務執行者(取締役)(Administrator)
業務執行者は、会社の経営を行う者(サイン権者)です。有限責任会社の場合は、ブラジル居住者がサイン権者として必要になるため、駐在員が赴任するまでの間は設立の際に権限を委任した法定代理人を、Adoministratorに兼務させる形で登録する場合が多い様です。前有限会社法(Decreto n.º 3708/1919)では、出資者のみAdoministratorに就任することができましたが、ブラジル民法1061条では出資者以外の者も就任できるように変更されています。
Adoministratorは職務執行に際して法律や定款の違反、又は職権乱用を行った場合に、民事、租税や労働債務に対する連帯責任が発生する可能性があります。
■監査役(会)
有限責任会社の場合、監査役を任意で設置することができます。設置する場合は、3名以上のブラジル居住者を選任し、監査役会を設置します。しかし、監査役に選任される者についての条件が規定されており、ブラジル民法1011条1項に定められる有罪判決を受けた者などは選任できない(ブラジル民法1066条)、原則ブラジルに居住し、大学程度の課程を修了した者か、会社の業務執行者又は監査役の職務を3年以上就任した者に限られる等があります。
■会計監査人
有限責任会社の根拠となるブラジル民法上では、会計監査人の設置に関する規定は定められていませんが、定款自治による自由度が高く、任意で会計監査人を設置することが可能です。また、総資産額が2億4千万BRL以上、または、総収益が3億BRL以上の上場会社及び非上場会社の場合、大会社に該当し、必ず会計監査人を設置する必要があります。
■資本金要件
有限責任会社において、最低資本金の法的要件は定められていません。しかし、外国人がブラジルへ赴任し、役員として一時滞在ビザを取得する場合、1人当たり600,000BRL以上の資本金が払い込まれている必要があります。つまり、ブラジルへ現地法人を設立し、ブラジル人のみを雇用した場合、最低資本金の法的要件はなく、外国人を現地に赴任させ、役員用の一時滞在ビザの取得申請を行う時点で初めて、最低資本金の法的要件が発生することになります。
ブラジル進出において、最低額での初期投資を検討している外資企業は、現地に赴任する駐在員1名に現地法人の代表者として役員用の一時滞在ビザを取得させ、法定代理人として登録し、他に赴任者がいる場合は、通常の一時居住ビザを取得させるケースが一般的となります。ちなみに、一時居住ビザを取得する場合、現地ブラジル人の雇用義務が発生します(詳細は「第8章 労務」参照)。
- 親会社提出書類の公証・認証、ブラジルへ郵送
出資者となる法人の定款と登記簿謄本、法定代理人への設立委任状を作成し、公証役場での認証を行います。その後、公証・認証を行った後、外務省にて、アポスティーユ認証手続きを行います。(これまで、ブラジル領事館での認証手続き処理を必要としておりましたが、2016年に日本はブラジルとハーグ条約を締結したことにより、アポスティーユ認証のみの対応で手続きを進められることとなりました。)その後、これらの書類をブラジルへ郵送します。親会社提出書類の言語については、日本語でも英語でも使用することが可能です。プロセス④にある公的翻訳を行うことにより、最終的には全ての書類はポルトガル語に翻訳される必要がありますが、ブラジルでは日本語からポルトガル語へ直接翻訳を行える公的翻訳人が多く存在するため、当該処理が可能となります。
[書類の認証とは]
在外大使館・領事館において書類の認証を行う場合、その書類はまず日本の法務局、公証人、外務省の公印が押印されていなければなりません。それぞれの役所にて押印してもらうこともできますが、日本の場合は公証役場にて上記3点の押印を揃えることが可能です。公証人に書類認証を依頼する際は、身分証明書が必要となります。また、公証役場で認証の代理申請を行う場合は、以下の書類が必要となります。
- 印鑑証明に登録された社印(個人の場合は実印)が押印され、印鑑証明に登録されている者の署名がされた公証委任状
- 上記捺印された印の印鑑証明書(法務局より発行されてから3カ月以内のもの)
- 代理委任者が法人の場合は、登記簿謄本(法務局より発行されてから3カ月以内のもの)
- これら書類の原本還付を受ける場合は、代理人の身分証明書と印鑑
- 商号の確認
ウエブサイト上で、商号が既に使用されているか否かの確認を行います。有限責任会社の場合、以下2点に注意する必要があります。
[商号の末尾]
有限責任会社を表すLtda(Limitadaの略称)を商号の末尾に付加しなければなりません。なお、日系企業の英語商号で記載される「Co.Ltd」と同義のため、ポルトガル語ということ以外は特出すべき点はありません。
[事業内容の挿入]
ブラジル法人の事業内容を表した文言を、商号内に挿入する必要があります。挿入される文言については投資登録で申請、また、以降のプロセスで作成する定款に記載される事業内容から判断され、原則その法人が行う主な事業を表した文言が入ります。
例えば、コンサルティングファームの場合、企業へのコンサルティングを主な事業目的としているため、正式な商号は「CONSULTING FIRM CONSULTORIA EMPRESARIAL LTDA.」となり、LTDAの前に記載されている「CONSULTORIA EMPRESARIAL」が事業内容を表した文言となります。これは株式会社法によって定められており、原則全ての有限責任会社に付加されます。株式会社の場合は、このような商号に関する規制はありません。
- 提出書類の公的翻訳
提出書類は全てポルトガル語である必要がある為、必要書類となる親会社の登記簿謄本や定款、また上記プロセスにて作成した設立委任状などを、ブラジルの公的翻訳人によってポルトガル語へ翻訳します。
公証委任状については、更にブラジル公証人による認証が必要となります。この翻訳作業は、ただ単純に日本語または英語からポルトガル語へ翻訳すれば良いというわけではなく、正式に国から認定された公的翻訳人によるものでなければなりません。
- 親会社のCNPJ(税務登記番号)取得
法人登記を行うにあたって、ブラジルでは2002年より、親会社も税務登記番号を取得するように義務づけています。このプロセスは申請先が連邦国税庁とブラジル中央銀行の2カ所のうちから選択できます。いずれもCNPJ用のプログラムを通して申請を行い、申請受理までの期間もほぼ同じです。
- 現地法人の定款登記
親会社のCNPJ取得後は、ブラジル現地法人の会社定款を作成します。作成した定款は、法人設立申請時において州商業登記所(Junta Comercial)へ登記します。
定款は、ポルトガル語のみで作成され、原則それぞれの項目における根拠法と条文番号を記載する必要があります。会計事務所が有する規定のフォーマットを利用して作成することができますが、内容は確認しておかなければなりません。
定款には通常以下の項目が記載されます。
- 商号
- 登記所在地
- 出資者情報、責任範囲
- Legal Representativeの情報、権利
- Adoministratorの情報、権利、決議方法、業務範囲、責任範囲
- 設立目的・事業目的
- 総会決議、役会決議
- 登記資本金額、発行株式総数、1株当たり額面価額、株式保有率など
- 会計年度
- 配当
- 免責
- 出資者の除名
- 解散、清算
- 裁判
ブラジルの法律上、法人設立時点において資本金が払い込まれている義務はありません。外資企業が出資者となる場合は、現地法人のCNPJを取得後にブラジル市中銀行に銀行口座を開設し、外資登録が終了した時点で資本金の送金が行えます。しかし、定款にて資本金払込の期日を規定する必要があるため、一般的には「○○期間以内に資本金を払い込む」という文言を記載する必要があります。
留意すべき点は、役員用の一時滞在ビザの申請において定款に資本金が払い込まれている旨が記載してある状態でなくてはならないという点です。このため、ビザ取得申請を開始する時点で資本金が払い込まれた旨を記載するため、定款を変更する必要があります。
また、Legal RepresentaitveやAdministratorの情報を定款に記載する必要があるため、外国人駐在員が役員用の一時滞在ビザ取得後に該当ポストに就任する場合は、再度定款の変更が必要となります。つまり、外資企業がブラジルに現地法人を設立した場合、資本金が払い込まれた時点と、役員用の一時滞在ビザを取得した駐在員をLegal RepresentaveやAdministratorへ登録する時点の2回にわたって定款を変更する必要があります。定款の変更は通常約1ヵ月程度で終了する場合が殆どです。
- 現地法人のCNPJ(法人登記番号) 取得 ⇒営業開始
定款登記が終わり、投資申請が受理されると、国税庁よりブラジル法人のCNPJが発行されます。CNPJが取得できれば、原則的に定款に記載した事業内容にて事業活動を開始することができます。また、領収書の発行や従業員の雇用、銀行口座の開設、Certificado Digitalの取得なども行えます。
Certificado Digitalは、電子認証(Digital Certificate)であり、ブラジルで法人管理上の目的で使用されている機器のことで、政府管轄のシステムにログインする際に必ず必要となります。政府管轄のシステムとは、税務、会計、労務を管轄するSPED(Sistema Público de Escrituração Digital)等が該当します。初期設定では、全ての権限が1つのCertificado Digitalに集約されていますが、目的に応じて、他のCertificado Digitalへ特定の権限の委譲を行う事が可能です。通常は1つの法人に1つ保有され、会社代表者の権限で登録されることになります。
現地法人のCNPJ取得後に、各業種によってそれぞれ国、州、市レベルでの登録が必要となりますが、一般的には現地法人のCNPJが取得できた時点で会社が設立したと見做されています。
【法人設立後(CNPJ取得後)手続き】
- 銀行口座の開設
資本金の払込に当たっては、まずブラジル市中銀行に法人の銀行口座を設立する必要があります。日本へ進出している「ブラジル銀行(Bank of Brazil)」、「イタウ・ウニバンコ銀行(Itaú Unibanco S.A., Tokyo Branch)」などのブラジル4大銀行(他2社:バンコ・サンタンデール・ブラジル、バンコ・ブラデスコ)や、City Bankなどの世界的な銀行もあります。また、邦銀大手3行もブラジルへ進出しています。
- 中央銀行への外資登録・資本金の送金
外資企業はブラジルへ投資を行う際、必ずブラジルの中央銀行にて外資登録を行う必要があります。これは、外国からブラジルへ送金される外貨、ブラジルから外国へ送金される外貨を全て中央銀行がコントロールすることを意味しています。
手順として、ブラジル中央銀行情報システム(SISBACEN)にて情報システム閲覧用暗証番号、外資登録番号(RDE-IED)を取得し、定款で規定した資本金額を外貨送金します。外資登録はブラジル中央銀行による事前の審査などは行われず、単なる作業的な処理で登録が完了します。
外貨で払い込んだ資本金がブラジルへ着金すると、ブラジルレアルへ両替し、SISBACENを通して資本金として登録する必要があります。この際に現地法人のLegal Representaitveが、送金目的と金額の妥当性を市中銀行へ説明する必要があります。
- 各官庁に対する法人登記の届出
現地法人のCNPJを取得した後は、現地法人の登記住所を管轄している商業登記所、財務局、市役所など国、州、市レベルの役所に対して、それぞれ法人設立の届け出や業種によっては追加登録を行う必要があります。国家社会保障院(INSS)、使用者組合、貿易統合システム(SISCOMEX)、州代理店業協会(Corcesp)などの各関係機関への申請もこのタイミングで行います。この手続は一般的に3ヵ月程度で終了します。
- 設立登記完了
上記の手続後、現地法人の設立プロセスが全て完了します。有限責任会社の設立手続の場合、プロセス全体で約8カ月程度から、場合によっては1年ほどかかることになります。
○補足
増資をする場合:
まずは増資前の時点で外国資本が入っているか、言い換えれば、出資に外国法人・国籍の個人がいるかで手続きが変わります。
① 増資前の時点で外国資本が入っているケース
② 増資前の時点で外国資本が入っていないケース
そこからさらに、増資する法人・個人が外国法人・国籍であるかがポイントとなります。
③ 増資する法人・個人がブラジル法人・ブラジル国籍である。
④ 増資する法人・個人が外国法人・国籍である。
①-③の場合
この場合は、増資する前の時点で中央銀行への外国企業としての登録は行っており、定款変更し実際の資金移動後、再度、中央銀行へ増資後の情報をアップデートする手続きとなります。
①-④の場合
①-③の場合と同様に既に中央銀行への外国企業としての登録は行っているものの、今回の増資する法人・個人が外国法人・国籍であるため、まずは法人の場合はCNPJ、個人の場合はCPF、という納税者番号を取得する必要があります。その後、定款を変更し、実際の資金移動後、再度、中央銀行へ増資後の情報をアップデートする手続きを行います。
②-③の場合
増資前、増資後も外国資本が入っていない為、中央銀行への外国企業としての登録は不要です。定款を変更し、実際の資金移動をもって、増資が完了となります。
②-④の場合
増資にあたり、国内企業から外国企業となる為、まずは増資する法人・個人のCNPJ・CPFの取得が必要となります。その後、定款の変更、実際の資金移動をし、中央銀行への外国企業としての登録を行います。
参考資料①
(編集の方へ:別途エクセルファイルがありますので、そちらをご利用ください)
参考資料②
(編集の方へ:別途エクセルファイルがありますので、そちらをご利用ください)
3. 会社の清算及び撤退
■有限責任会社の清算
現地法人の清算に必要な手続は以下の通りです。
①清算人の選任
清算人とは、会社の業務を整理し、債務の清算、資産の分配を行う者を指します。清算人の義務、責任は、業務執行者、監査役、株主と同様に、会社の消滅まで継続します(ブラジル民法217条)。定款に規定がない場合、総会が清算の方法を決定し、清算人を任命します。経営審査会を有する会社は、経営審査会においても清算人を任命することができます。
会社の解散が判決によるもので、裁判による清算となる場合は、訴訟法の法規を順守しなければならないため、裁判所が清算人を任命します(ブラジル民法209条)。
【清算人の義務】 (ブラジル民法210条)
- 清算を決議あるいは決定した総会の議事録又は裁判所の決定を登記し広告すること
- 場所の如何を問わず、会社の財産、帳簿、書類を収納すること
- 総会又は判事の定めた期間内に、会社の決算を行うこと
- 会社の取引を終了させ、資産を現金化し、債務を支払い、残余を株主に分配すること
- 資産が負債の支払に足りない場合、株主に対して株式の全額支払を行うよう請求すること
- 法律の定めあるいは必要と判断される場合、総会を収集すること
- 会社の清算を通報し、法律の定めがある場合、和議を請求すること
- 清算終了とともに、清算の実行及び取引並びに清算の最終的な計算に関する報告書を総会に提出すること
- 清算の終了した総会の議事録を登記・報告すること
【清算人の権限】 (211条)
清算人は会社を代表し、動産、不動産の譲渡、和解、受取証書の授受を含め、清算に必要な一切の行為を行う
②解散
会社は解散後も清算に必要な限りは存続します。解散した会社であっても、清算手続を行うために、完全に消滅するまで法人格を有します(ブラジル民法207条)。この点は、日本の会社法における解散と同じです。
清算中においても法人格を有するため、会社の商号は使用できますが、この場合は全ての行為、取引において「清算中」という文言を使用しなくてはなりません(ブラジル民法212条)。
③株主総会の招集、開催と貸借対照表の作成・提出
清算人は6カ月ごとに総会を招集し、半期における行為や取引の報告を行います。その際、清算状態についての報告と会社の貸借対照表を提出しなくてはなりません。総会は、この報告のための準備期間として、3カ月から12カ月の間で期間を設定することができます(ブラジル民法213条)。
④負債の支払、資産の分配
清算人は、期限の満了、未満の区別なく債務の支払を行います。資産が負債を超える場合は、清算人がその責任において、期限満了の債務を全額支払うことができます(ブラジル民法214条)。
債権者への支払、保証が終了し、全債務の弁済が終了した後、会社の残余資産の額に応じて、その資産を株主間で按分比例により分配する決議を行うことができます。また、総会は株主の90%以上の賛成をもって、社員に残余資産の分配を行うことができます。この際、総会は社員への残余資産分配に条件を設定し、その条件と設定額に応じて分配を行います。
社員への残余資産分配に対して少数株主が反対した場合、分配について設定した条件が少数株主に損害を与え、多数株主に利益があると証明できれば、分配の停止を請求し、既に分配が完了している場合は、与えられた損害に対して弁償請求することができます。
⑤清算の完了
負債の支払と残余資産の分配が終了した後、清算人は総会を開催し、会社清算についての最終報告を行うことによって会社の清算手続が完了します(ブラジル民法216条、219条)。
参考文献
- ブラジル民法(原典)
(LEI Nº 10.406, de 10 de JANEIRO de 2002 - DOU DE 11/01/2002 - CÓDIGO CIVIL)
- 改正 ブラジル株式会社法
(LEI DAS SOCIEDADES POR AÇÕES/LEI Nº 6,404 de 15/12/1976)
- Ministry of External Relations 「Legal Guide for Foreign Investors in Brazil」
- INTERNATIONAL BUSINESS PUBLICATIONS, USA
「BRAZIL COMPANY LAWS AND REGULATIONS HANDBOOK」
- DEMAREST E ALMEIDA 「BUSINESS LAWS OF BRAZIL」
- PricewaterhouseCoopers 「Company Formation in Brazil」
- IFC(国際金融公社)「Doing Business Brazil 2012」
- ジェトロ(日本貿易振興機構)二宮 康史著「ブラジル経済の基礎知識 第2版」
- JBIC(国際協力銀行)「ブラジル投資環境」
- ブラジル対外関係省「ブラジル投資ガイドブック ステップ・バイ・ステップ」