会社法
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会社法
+ .1 .会社の機関
有限責任会社と株式会社の違い
ブラジルで一般的に選択されている会社形態は、有限責任会社(LTDA)と株式会社(S/A)になりますが、それぞれ根拠となる法律が異なります。
有限責任会社は「ブラジル新民法(以下、民法)」(Código Civil.;2002年1月10日制定、2022年改正)、株式会社は、「ブラジル株式会社法(以下、会社法)」(Lei Das Sociedades Por Ações;1976年12月15日制定、2022年改正2015年改正)により、それぞれ規定されています。
[有限責任会社]
有限責任会社は民法に従い会社の機関設計を行う必要がありますが、株式会社に比べると、定款よって比較的柔軟な設計を行うことが可能となっています。また、出資者は出資額を限度とする有限責任となるため、事業に失敗したときのリスクを出資額に限定できる会社形態です。
会社の維持・運営についても、監査役の常設が不要である点や、財務諸表についても公告が不要で、年1回開催されるパートナー総会の承認のみで済む点、更に出資者全員が書面で決議する場合には総会の開催も免除される点など、比較的容易に活動を行うことができます。
上記のようなメリットから、有限責任会社は最も一般的な進出形態として選択されています。
※大会社とは、総資産額が2億4,000万レアル以上、または総収益が3億レアル以上の大規模有限会社を指します
会社の機関については、定款に規定することにより、株式会社に似た設計を行うことも可能となります。たとえば、定款に定めることで取締役会を設置することも可能です。民法は、このように定款自治による一定の自由を会社に与えています。
原則的な機関設計は、パートナー(出資者)、業務執行者(Administrator)によって構成されます。監査役(会)の設置は任意ですが、設置する場合は3~5名である必要があります。また、会計監査人については、「大会社」に該当する場合にのみ設置が必要となります。
[株式会社]
株式会社は、株式会社法に基づき事業運営を行う必要があります。同法は、前身となる1940年法規政令や、それを補完していた1965年の資本市場法に、公開株式会社特有の規定などの新制度を追加し、体系化して、1976年に制定されたものです。
株式会社とは、出資者である株主から資金調達を行い、株主から委任を受けた業務執行者(Administrator)が事業を行い、事業により生じた利益を株主に分配する構造を持つ会社形態です。株式会社における公開、非公開の区分は、当該会社が発行する株式が証券会社の店頭において取引が認められているか否かによって決定されます。株式会社のメリットは、株式の公開が可能であり、また、出資者となる株主を公募できることにあります。株主の加入、脱退は株主名簿に反映するだけでよく、会社定款の改定などは必要ありません。有限責任会社の場合は、そのつど会社定款を改定し、州の商業登記所へ登録する必要があります。
※1授権資本の設定のある非公開会社を指します
※2経営審議会は、公開会社または授権資本の設定のある会社の場合、設置が必要となります
株式会社の機関は、株主(出資者)、経営審議会、取締役会、監査役、会計監査人で構成されます。株式会社では所有と経営が分離されるため、出資者である株主と業務執行者の利益が一致しない場合があります。このため、業務執行者に対する監視体制を強化し、健全な経営が可能となるように機関設計が規定されています。公開会社及び授権資本の設定のある非公開会社の場合は、経営審議会の設置が義務付けられています(会社法138条2項)。経営審議会は、会社の運営についての全般的な方針を定め、取締役の選任・解任などを行う機関です。監査役については、株式会社の場合、3名から5名の監査役の設置が必要となりますが、常設か否かについては定款で規定することができます(会社法161条1項)。
また、公開会社、大会社(総資産額が2億4,000万レアル以上、または総収益が3億レアル以上の上場会社及び非上場会社)、一部の手金融機関、投資ファンド、証券取引所、保険会社、年金ファンドなどは、ブラジル証券取引委員会(CVM)に登録された会計監査人(外部監査人)を設置する義務があります。
+ .2 .有限責任会社
パートナー(出資者)
■パートナー(出資者)数
有限責任会社には、最低1名以上のパートナー(出資者)が必要となります。国籍や個人、法人などの要件はありません。ただし、外国法人や外国人がパートナーとなり、現地で業務執行を行わない場合は、ブラジルに居住する法定代理人(Legal Representative)にその権限を委譲する必要があります(民法1060条)(P.164「法定代理人」の項を参照)。
有限責任会社は、パートナーの出資割合をQuotaの保有率として株数表記で定款に記載しますが、実際の出資証券は発行しません。持分の譲渡について、定款に譲渡に関する規定がある場合はそれに従い、ない場合は、パートナー間の譲渡は自由に行われます。また、1株1議決権とした4分の1以上の反対がなければ、パートナー以外への譲渡も可能となります(民法1057条)。
■パートナー(出資者)の権利
有限責任会社のパートナーは、出資額に応じて配当を受取る権利や、パートナー総会に出席して議決権を行使する権利を有しています。また、有限責任会社の業務を執行する権利が与えられ、業務執行者として実際の会社運営を行うことも可能です(民法972条、1060条、1072条等)。
パートナー(出資者)は会社の会計書類、登記書類などの資料関係、資金状態や経営管理状況などについて、監査し、情報を受取る権利を持っています(民法1021条)。パートナーの責任範囲は出資額が限度ですが、パートナーが本来支払うべき出資金の一部が未払の場合(ほかのパートナーが引受けた出資金が未払の場合も含む)、当該出資額まで連帯責任を負います(民法1052条)。
■パートナー(出資者)総会
パートナー総会とは、有限責任会社の最高意思決定機関であり、株式会社の株主総会に相当します。パートナー(出資者)が10名以下の場合はパートナー会議(Reunião dos Sócios)、10名以上の場合はパートナー総会(Assembléia dos Sócios)と分類されます。パートナー総会で決定する事項は以下の通りです(民法1071条)。
・あらゆる費用等への支払権限
・業務執行者(Administrator)の選任及び解任
・パートナーの報酬(契約で定められていない場合)
・定款変更
・設立、合併、解散決議
・清算人の選任及び解任
・債務の再建(concordata)のための申請等
[開催場所]
民法上、特段の規定はありません。招集時に開催場所を指定します。
[招集権者と招集通知]
パートナー総会は、定款に規定する場合、業務執行者(Administrator)が招集します。定款に定めがない場合、最低3回の公告をもって招集を行います。また、出資比率の5分の1以上を保有しているパートナーは、単独で総会を招集することができます(民法1072条、1152条)。
[定足数]
パートナー総会が成立するためには、出資比率の4分の3以上を保有するパートナーが出席しなければなりません。ただし、1度目の招集による出席が定足数に満たずに、再度招集を行う場合には、当該定足数の規定は適用されません(民法1074条)。
[決議方法]
パートナー総会の決議要件は、一般事項については原則として過半数の賛成が必要となりますが、会社にとっての重要事項を決議する場合には、決議要件が加重されます。
たとえば、パートナー(出資者)でない者を業務執行者に選任する場合や、業務執行者を解任する場合は議決権の3分の2以上の賛成が必要であり、定款変更や合併・解散の場合は議決権の4分の以上の賛成が必要となります。また、書面による決議が可能で、全パートナーによる書面決議があった場合、パートナー総会の開催を省略することができます(民法1072条3項)。
パートナー総会においては、各パートナーの出資比率に応じて議決権が付与されますが、定款に定めることによって特定のパートナーに対する議決権を制限することも認められています。
法定代理人
外国法人や外国人個人がパートナーとなる場合,ブラジル法人は,ブラジル居住者を法人の法定代理人(Legal Representative)として登録しなければなりません。ブラジル法人のパートナー(出資者)の条件において、法人・個人、ブラジル国籍、外国籍の要件はありません。従って、外国法人や外国人個人はパートナーとなり得ますが、ブラジル居住者を法定代理人として別途選任し、連邦歳入局に登録する義務があります。
日本企業がパートナーとなる場合もこれに該当します。法定代理人の要件は、ブラジル居住者(ブラジル人、もしくはブラジル永住ビザを保有している外国人)となります。そのため、ブラジル法人への赴任者がブラジル永住ビザを保有している場合、この者を法定代理人に選任することが可能です。
法定代理人については、法人設立を開始する時点で必要となるため、まずは設立の代行を行う現地弁護士などを選任し、法人設立完了後に永住ビザを取得した赴任者へ変更するのが一般的な流れとなります。
業務執行者
■業務執行者の人数/要件
有限責任会社については、最低1名の業務執行者(Administrator)が必要となり、その者が有限責任会社を代表して業務を行います(民法1012条)。
業務執行者は、原則としてブラジル国内に居住する個人のみ就任することが可能です。この場合、ブラジル国内に居住している者であれば国籍は問われません。また、業務執行者はパートナー、法定代理人と兼任することが可能です。
上述の法定代理人同様、法人設立を開始する時点で必要となるため、まずは設立の代行を行う現地弁護士などを選任し、法人設立完了後法定代理人を変更する際に、同時に業務執行者も永住ビザを取得した赴任者へ変更するのが一般的な流れとなります。
ブラジルの永住ビザは、投資家や業務執行者に対するビザとなります。ビザ取得の申請を行う際は、申請先となるブラジル労働省に対して、受入れ先となるブラジル法人における業務執行者としての立場を明確に示す必要があります。このため、当該現地法人の定款に、ビザ取得予定者を業務執行者として記載しておく必要があります。
具体的には、ブラジル法人定款の業務執行者の項目に、永住ビザ取得予定者かつ業務執行者就任予定者の氏名やパスポート番号などの個人情報を記載し、「ブラジル居住者となり次第業務執行者へ就任する」旨の注記を加えるのが一般的な対応方法となります。これは、ブラジル居住者でなければ業務執行者へ就任できないことに対処するための処置であり、永住ビザを取得し、業務執行者へ正式に就任する際には、定款を変更して当該箇所を修正する必要があります。
監査役
■設置義務
有限責任会社においては、パートナー間での相互監視が行われるという理由から、機関設計上監査役の設置は義務付けられていません。しかし、定款に記載することで監査役の設置が可能となります(民法1066条)。
■監査役の人数/要件
監査役を設置する場合は、ブラジル居住者3名以上5名以下で構成される必要があります(民法1066条)。ただし、過去に有罪判決を受けた者など、民法1011条1項に規定されている項目に該当する者は、監査役に選任することができません(民法1066条1項)。
■監査役の権限
監査役は業務等の監督を行う機関となります。有限責任会社の監査役は、ブラジル民法上で規定されている職務に加えて、契約によって規定外の職務を行うことができます(民法1069条)。ブラジル民法で規定されている監査役の権限は、以下の通りになります。
・財務諸表に関する報告書を社員総会に提出する
・四半期ごとに会社の業務、財務情報、その他必要な情報を調査し、パートナー総会に報告する
・社内で不正行為及び組織的な犯罪が起きた場合に調査し、パートナー総会に報告する
・パートナー総会の招集日(または定款の定める日)から起算して30日以上開催が遅延した場合、当該総会の招集を行う
その他
■増資/減資に関する規定
増資を行う場合、パートナー総会出席者の過半数の賛成が必要となります(民法1076条3項)。増資に関する決議があった日から30日以内に、パートナー総会において割当出資の通知を行う必要があります。(民法1081条1項)
減資については、1.累積損失を解消する場合、または2.事業目的に対して過剰であると判断される場合において、可能となりますが、2.の場合は、減資を承認する会議の議事録を90日間公表し、特に申し出がなかった場合など、一定の条件を満たした場合にのみ可能となります。(民法1082条、1084条)。
■配当/配当方法の決定
パートナーに対する配当額は、原則的に各パートナーの出資割合に応じて決定されます。ただし、パートナー間の同意があれば、出資割合に関係なく自由な割合で利益の配当を行うことができます。
+ .3 .株式会社
株主
■株主数
ブラジルで株式会社を設立する場合、最低2名以上の株主が必要となります(会社法80条1号)。株主は、有限責任会社のパートナー(出資者)と同様、国籍や個人、法人などの要件はありません。
しかし、外国に居住している外国人、外国に法人登記されている法人が株主となる場合、ブラジル居住者を法定代理人(Legal Representative)として選任する必要があります(「法定代理人」を参照)。
■株主の権利
株主は以下の権利を有しており、原則として定款上の規定や株主総会の決議によっても変更ができません。また、各株主に付与される権利は平等でなければなりません(会社法109条)。
・会社の利益を配当として受領する権利
・清算時に会社の残余財産を受ける権利
・会社の経営を監督する権利
・株式、株式転換受益証券、株式転換社債、新株引受券の引受につき、会社法171条優先権事項、172条優先権の排除事項の規定に従って有する優先的な権利
・会社法の規定に該当する場合において、会社を退く権利
そのほかにも株主と会社間、または支配株主と少数株主間の意見の不一致が生じた場合、これを仲裁により解決することができる旨を定款に定めることができます(会社法109条3項)。
■株主総会
株主総会は、法律及び定款に基づいて招集され、会社の目的の範囲内においてすべての事項を決定する権限を有します(会社法121条)。また、株主総会は、法律もしくは定款に規定された義務の履行を怠る株主の権利を剥奪する権限を有します。権利の剥奪は、所定の義務が履行された場合には、直ちに解除されなければなりません。
株式会社の設立段階において、株式の引受が行われた後に創立総会を開催する必要があります。創立総会では、発起人の行った設立手続の承認を行い、会社定款の承認、会社役員の選任、株式の内容や数について決議をします(会社法86条)。
株式会社は、定時株主総会を1年に1度以上開催する必要があります。定時株主総会では、株主への決算報告や監査役・業務執行者(Administrator)の選任が主な決議事項となります。決算書の株主総会への報告が決算日以後4カ月以内とされているため、通常は決算日以後4カ月以内に開催されることになります。
定時株主総会の決議事項(会社法132条)
・業務執行者(Administrator)の報告の受理及びそれに基づく財務諸表の審議・採決
・当期純利益の処分及び配当についての決議
・監査役、業務執行者(Administrator)の選任
・会社法167条の承認決議
※会社法167条該当規定:会社の決算時において払込資本及び資本準備金の価値修正額につき、定時株主総会の承認があれば資本組み入れを行うことができる
臨時株主総会は、経営審議会(非設置会社の場合、取締役会)が必要と認める際に、いつでも開催することができます。また、会社の損失が資本金額の半分に達した場合には、株主へ報告するための臨時株主総会を開催しなければなりません。
[開催場所]
以前は、株主総会は物理的に開催され、株主は直接又は代理人により出席して議決権を行使すべきものとされていました。しかし、法律の改正によって株主が株主総会にリモート参加して議決権を行使することが認められました。加えて、オンライン開催又は物理的な開催とオンライン開催のハイブリッド開催も認められ、株主が議決権を直接又はリモートで行使することが認められています。(会社法124条2項)。
【株主総会開催場所に関する規定】
| ブラジル | 日本 | |
| 非公開 | 公開 | |
開催場所 | 原則として、本店所在地。ただし、オンライン開催も可能 | 同左 | 規定なし |
決定方法 | 原則として経営審議会。経営審議会が設置されていない場合は、取締役(会)が決定(123条) | 同左 | 同左 |
株主総会の招集権限は、経営審議会が設置されている場合は経営審議会が有します。経営審議会の設置がない場合、もしくは経営審議会員がすべて欠員である場合は、取締役(会)が招集権限を有します(会社法123条、150条)。経営審議会の設置がなく、取締役(会)のすべてに欠員が生じている場合は、株主が臨時株主総会を招集することができます。この場合、臨時株主総会の開催までは筆頭株主が会社の代表となり、会社の緊急を要する業務につき、代理で業務を行うことができます(会社法150条2項)。
また、以下の場合においても、株主や監査役に招集の権限が付与されます(会社法123条)。
監査役に招集権限が付与される場合(会社法163条5項)
・会社の業務執行機関が、定時株主総会の招集を1カ月以上遅らせた場合
株主に招集権限が付与される場合(会社法123条)
・法律または定款に定める場合
・業務執行者(Administrator)が60日以上招集の業務を怠った場合(持株比率に関係なく招集権あり)
・業務執行者が総会招集請求から8日以上経っても応じない場合
(会社資本の5%以上を代表する株主に招集権あり)
・業務執行者が監査役会設置のための総会招集請求から8日以上経っても応じない場合(議決権を有する会社資本5%以上を保有る株主、または無議決権株主5%以上を代表する株主に招集権あり)
株主総会の招集通知については、少なくとも3回の公告が必要になります。公告には、総会の日時、場所、議題を記載します。なお、定款変更を行う場合は、公告にその事項を示す必要があります(会社法124条)。
非公開株式会社の場合は、初回の招集は1回目の公告から起算して、少なくとも8日前に行われなければなりません。初回の招集によって総会不成立の場合は、少なくとも5日前に、再度招集を行います。
公開株式会社の場合は、初回の招集は、1回目の公告から起算して15日前に行わなければなりません。総会不成立の場合は少なくとも8日前に再度招集を行います。
[株主総会の議長団]
日本では議長の権限として、①総会の議事運営を整理し、②秩序を乱す者を退場させる権利が与えられています(日本会社法315条)。
また、選任方法については、会社法においては明文規定がないため、定款に定めがあればそれに従って決定することになります。実際に日本の多くの企業では、「社長を議長とする」などと定款に規定しています。
ブラジルでは、出席株主が選出する議長と書記によって構成される議長団がこれに該当します。また、定款に規定がある場合を除き、総会議事は議長団が提示することになります(会社法128条)。
[株主総会の決議]
株主総会は会社の最高意思決定機関であり、会社にとって重要な事項(定款の変更、役員の選任や財務諸表の承認、清算決議など)については、株主総会決議によって決定しなければなりません。この点は日本と同じですが、定足数や決議要件などの点で異なります。
[定足数]
定時株主総会の決議に必要な定足数は、法律に特別な規定がある場合を除いて、原則として第1回の招集においては、議決権を有する株主による会社資本の少なくとも4分の1を有する株主の出席をもって成立します。第2回以降の招集においては、定足数についての規定は定められていません(会社法125条)。非公開会社では、定款に明記することを条件とし、特定の決議に要する定足数を増加することができます。
[決議要件]
株主総会の決議は、原則白票を除く得票の絶対多数によって行われます。賛否同数の場合で、かつ定款に仲裁の手続の定めや特別規定がない場合、2カ月以内に株主総会を再度招集する必要があります。再度招集を行った株主総会においても賛否同数の場合、株主は第三者に決議を委ねることができます。また、この決議権限の委任に株主の同意が得られない場合、裁判所が会社の最良の利益を考慮して決議を行います(会社法129条2項)。
株式会社において特定の決議事項を決定する場合、特別決議として通常の臨時株主総会決議の決議要件が変更されます。非公開会社の場合、以下の各項目につき特別決議事項として全株主の過半数以上の承認が必要となります(会社法136条各号)。
・定款に別途規定がある場合、または授権が既にある場合を除き、その他の組との比率を守らない優先株式の創設、または存在する優先株式の組の増加
・1種または2種以上の組の優先株式に付与された優先権、償却または償還に関する利益及び条件の改定、または更に優遇された新しい組の創設
・配当義務の低減
・吸収合併または新設合併
・会社集団(Grupo de Sociedades)への参加(会社法265条)
・会社目的の変更
・会社の清算処理の終了
・受益証券の創設
・会社の分割
・会社の解散
公開会社においては、直近3回の臨時総会における株主の出席数が、議決権を有する株主の半数に至らなかった場合、証券取引委員会の権限のもと、決議における定足数を緩和することができます。
この場合、証券取引委員会による許可を招集の公告に記載する必要があります。なお、低減された定足数による決議は、当該3回目の臨時総会においてのみ適用されます(会社法136条2項)。
[議決権]
日本の会社法では、株主は株式保有数に応じて平等に取扱うという原則(株主平等原則)が法的に守られているので、原則として1株につき1議決権が付与されます(日本会社法109条1項)。
ブラジルにおいても、株式会社の場合、普通株式には1株につき1議決権が付与されます。定款によって各株主の議決権の数に制限を設けることが可能ですが、いかなる種類の株式についても、1株に2議決権以上の権利を付与することはできません(会社法110条)。
議決権は、会社の利益を考慮して行使されなくてはなりません。会社もしくは他の株主に損害を与える目的や、自己もしくは他者に不正な利得を与える目的での議決権の行使、またはそれらを与えるおそれのある議決権の行使は、権利の濫用とみなされます。この場合、当該議決権による決議を無効とすることが可能であり、当該株主は発生した損害について責任を負い、獲得した利益を会社へ返還することになります(会社法115条)。
優先株式においては、普通株式が有する権利(議決権を含む)を付与しないことが可能であり、また制限を設けることも可能です。ただし、このような議決権を有しない優先株式については、議決権停止の期間が連続して3年を超えない範囲で設定されなければなりません。(会社法111条1項)
このような場合であっても、あらかじめ定められた配当額が支払われていない場合、議決権の行使が認められます(会社法111条)。また、仮に配当が滞った場合、他の株主より優先的に配当を受けることが可能です。
[質入株式と譲渡担保設定株式の議決権]
株式を質に入れた状態でも、株主は議決権を行使することが可能です。ただし、譲渡担保における譲受人となる債権者は、株主が債権者の同意なしに、特定の決議につき議決権を行使できない旨をあらかじめ契約にて取り決めておくことができます。
また、譲渡担保によって保証を受けた債権者であっても、株主との契約に別途文言として規定しない限り、議決権を行使することはできません(会社法113条)。
[議決権の代理行使]
日本では、株主の議決権行使の機会を保障するために、議決権の代理行使や書面による議決権の行使が一定の場合には認められています。ブラジルにおいても、議決権の代理行使が認められています(会社法126条)。
法定代理人
株主の要件として、法人・個人、ブラジル国籍、外国籍についての制限はありません。従って、外国企業や外国人個人が株主になることができます。しかし、外国企業、または外国籍の個人が株主となる場合、ブラジル居住者を法定代理人(Legal Representative)として選任し、連邦歳入局に登録し、定款に記載する義務があります(会社法119条)。
日本企業が株主となる場合も、上記に該当します。法定代理人の要件は、ブラジル居住者(ブラジル人、もしくはブラジル永住ビザを保有している外国人)となります。そのため、ブラジル赴任者が永住ビザを保有している場合、この者を法定代理人に選任することが可能です。
法定代理人は、法人設立を開始する時点で必要となります。そのため、まずは設立の代行を行う現地弁護士などを選任し、法人設立完了後に赴任者が永住ビザを取得した後に、法定代理人を変更するのが一般的な流れとなります。
経営審議会
ブラジルの株式会社において、会社の業務執行を行う機関として経営審議会(会社法140条)と、取締役会(会社法143条)があります。2つの会議体は、ともに業務執行を行う機関ではありますが、必要人数や選任方法などに違いがあります。
[経営審議会とは]
経営審議会は財務、管理運営上の指示を行う機関となります。取締役を選任・解任し、定款の定める範囲内で権限の授与を行う権限があります。
会社の運営について、全般的な方針を決定する権限を有する点が特徴となります。
なお、公開会社及び大会社※の場合、経営審議会の設置が義務付けられています(会社法138条2項)。
※大会社:総資産額が2億4,000万レアル以上、または、総収益が3億レアル以上の上場会社及び非上場会社
[経営審議会の人数]
経営審議会は、3名以上の株主によって構成されます(会社法140条、146条)。また、経営審議会員全体の分の1を超えない範囲で、経営審議会員を取締役として選任することができます(会社法143条1項)。
経営審議会に欠員が生じた場合、原則、会社はすぐに欠員を補充する必要があります。従って、定款に別途規定のない限り、残りの経営審議会員が補欠を任命し、任命された者が次の定時株主総会まで、経営審議会員として職務を遂行することになります。経営審議会員の過半数に欠員が生じた場合は、直ちに臨時株主総会を招集し、経営審議会員を選任しなくてはなりません(会社法150条)。また、経営審議会員の全員が欠員となった場合、取締役会が臨時株主総会の招集を行い、経営審議会員を選任しなければなりません。
[経営審議会員の選任、解任、辞任]
経営審議会員は株主総会で選任され、また,総会はいつでも経営審議会員を解任することができます(会社法140条)。株主総会の議事録及び経営審議会の議事録には、選任した各構成員の資格、任期を記載し、登記並びに公告を行う必要があります(会社法146条1項)。経営審議会員は、経営審議会の議事録に就任の文言を記載し、署名することによって正式に就任となります(会社法149条)。指名後30日以内に議事録及び文書に署名が行われない場合は、この議事録及び文書は無効となります。ただし、正当な理由が提示され、これが受領された場合は、この限りではありません。(会社法149条1項)
経営審議会員が辞任する場合、会社に対しては書面による辞任通知を提出した時点において、また第三者に対しては商業登記所での登記と公告をもって、辞任の効力が発生します(会社法151条)。
[経営審議会員の要件、任期]
経営審議会員は、自然人で、かつ株主である必要があります。外国に居住する経営審議会員は、ブラジル国内に居住する現地代理人を任命する必要があります。
経営審議会員の任期は、3年以内で設定する必要がありますが、再任が可能です。(会社法146条2項)
[権限]
経営審議会の権限は、以下の通りです(会社法142条)。
・会社経営のための全般的な方針の策定
・取締役の選任または解任及び定款の定める範囲においての権限の授与
・取締役による執行業務の監査、会社の行為に対しての情報開示請求
・株主総会の招集
・取締役の営業報告及び会計報告書への意見表明
・行為執行・契約締結に先立って、それら自体への意見表明(定款による規定がある場合)
・株式及び新株引受権の発行についての決定(定款による規定がある場合)
・非流動資産の譲渡、物上担保の設定、第三者の債務に対する保証の提供を授権する行為
・会計監査人の選任及び解任(設置が必要となる場合)
[定款規定事項]
定款において規定すべき経営審議会に関連した事項は以下の項目となります(会社法140条)。
・経営審議会員の数、または許容される上限数及び下限数
・総会または経営審議会自体による議長の選任及び交代方法
・経営審議会員の交代方法
・経営審議会員の任期
・経営審議会の招集、設置及びその活動に関する規則
取締役(会)
[取締役会とは]
取締役会は、経営審議会から定款により授権された業務を行う機関です(会社法142条2項)。従って、取締役会の構成員は、定款に定められた業務を行うことになります。
[取締役会の人数]
取締役会は、1名以上の取締役によって構成されます(会社法143条)。経営審議会の設置がある場合は、経営審議会員との兼任も可能ですが、兼任が可能となる人数は、経営審議会員の3分の1が上限となります(会社法143条1項)。
[取締役の選任、解任、辞任]
取締役は、経営審議会(経営審議会の設置がない場合は株主総会)によって、いつでも選任、解任することが可能です(会社法143条)。取締役が辞任する場合、社内的には会社に対して辞任する旨の書面を提出した時点において、また第三者に対しては商業登記所の登記及び公告を行った時点で効力が発生します(会社法151条)。
[取締役の要件、任期]
取締役は、自然人のみ就任することができます(会社法146条)。
取締役の任期は、3年以内で設定する必要がありますが、再任が可能です(会社法140条3項)。また、定款等において、再任を制限する規定を設定することはできません。なお、任期に関しては、定款において明確に記載する必要があります(会社法140条)。
[権限]
取締役(会)の権限は、以下の通りです(会社法144条)。
・定款に明確な規定がなく、かつ経営審議会の決議のない場合、会社を代表する業務執行
・通常の取締役業務の執行
取締役は、その委任された権限の範囲内で、代理の業務執行者としての代理権を行使することが可能です。この場合、文書において権限範囲を特定し、代理権限を明確に確定する必要があります(会社法144条)。
[定款に規定すべき事項]
取締役(会)について、定款に規定すべき事項は以下の項目となります(会社法143条)。
・取締役会の定員数、またはその上限数及び下限数
・取締役の交代方法
・取締役の任期
・取締役の権限事項
・取締役の権限の範囲内における特定権限事項
【経営審議会/取締役(取締役会)】
| 経営審議会 | 取締役会 |
人数 | 3名以上(会社法140条) | 1名以上(会社法143条) |
国籍 | 明文規定なし | 同左 |
居住地 | 国外居住なら国内代理人が必要(会社法146条) | 明文規定なし |
選任 | 株主総会普通決議(会社法140条) | 経営審議会または株主総会(会社法143条) |
解任 | 株主総会特別決議(会社法140条) | 経営審議会または株主総会(会社法143条) |
任期 | 最長3年(会社法140条) | 最長3年(会社法143条) |
報酬 | 株主総会で決定(会社法152条) | 同左 |
開催時期 | 明文規定なし | 同左 |
監査役(会)
日本の会社法と同様の概念として監査役(会)があります。日本の株式会社と異なり、ブラジルではすべての株式会社において監査役(会)の設置が義務付けられています(会社法161条)。
[権限]
監査役(会)の権限としては、以下の通りです(会社法163条)。
・通常の業務行為に対する監査
・経営審議会員や取締役が、法律及び定款における所定の義務を履行したか否かの調査
・年間の営業報告についての意見行為
・年度末の財務諸表監査に対する意見行為など
[設置義務]
ブラジルの株式会社は会社の規模・業種を問わず監査役(会)を設置しなければなりません。ただし、常設とするか営業期間中に株主の請求により設置するかは、選ぶことができます。監査役(会)は3~5名の構成員及び同数の補欠員から成り、株主総会により選任されます(会社法161条1項)。
[監査役の要件、任期]
監査役に選出される者は、原則としてブラジルに居住し、大学卒業程度、またはそれと同等程度の就学課程を修了した者、もしくは業務執行機関または監査役の職務3年以上務めた者に限られます。業務執行機関の構成員や、従属会社に所属する会社員、役員の配偶者、またはその三親等までの親族は選出することができません(会社法162条2項)。監査役の任期は1年となります。
[監査役の報酬]
監査役の報酬は、株式総会の決議により決定されます。利益、交際費、利益分配額を除いた取締役の報酬総額を取締役の人数で除した額の10%を下回ることができません(会社法162条3項)。
【会計監査人の設置】
会計監査人の設置については、会社法上の規定はありませんが、公開会社(ブラジルの証券流通市場に株式が上場している会社)、大会社(総資産額が2億4,000万レアル以上、または、総収益が3億レアル以上の上場会社及び非上場会社)、または一部の大手金融機関には会計監査人の設置が強制されます。
会計監査人の選任・解任、報酬の決定等に関する権限は、経営審議会が有します(会社法142条9号)。会計監査人の報酬額は、市場の観点から見て適正な範囲かつ、会社の事業規模を考慮して算定される必要があります。
株式
■株式の種類
日本では会社法上、さまざまな種類の株式を発行することが認められていますが(日本会社法108条1項各号)、ブラジルでは、株式の種類は普通株式と優先株式の2種類に大別されます。
[優先株式]
ブラジルにおいては普通株式のほか、優先株式を発行することができます(会社法11条、15条)。ブラジルにおける優先株式は、日本における優先株式と同様、配当を優先的に受取る権利が付与される株式を指します。優先株式を利用することによって、普通株式より少なくも10%以上高額での配当請求権の付与が可能です(会社17条1項2号)。
特定の優先株式に対しては、業務執行機関の1人、または数人の役員を選出する権利を付与することが可能です(会社法18条)。
■株式会社の新株発行
新株を発行するタイミングは大きく、設立時と、設立後の2つに分けられます。
[設立時の新株発行]
設立時は、定款に定める登録資本を、全株主の最低2名以上による引受が必要となります。株式の発行は、株式総数を定めたうえで、法人設立時にすべての株式を発行します。払込みの最低額は、資本登録した資本の10%以上となります。法人設立時において、発起人が当該資本の受領から起算して5日以内に引受人の名により、資産計上することになります。
[設立後に増資を行う場合]
設立後に増資を行う場合、授権資本内であるか授権資本を超えて増資を行うかにより、決議の種類などが異なります。
また、上記以外では以下の場合において増資を行うことができます。
上記表にある利益、準備金を資本金に組入れる場合については、新株発行をせずに額面金額の変更(増加)により増資することが可能です(会社法169条1項)。
なお、監査役(会)が活動中の場合は、増資の決議に先立ち、監査役(会)に意見聴取を行う必要があります(会社法166条2項)。
定款の記載内容
増資を行う場合には、以下の項目を定款に記載する必要があります(会社法168条1項各号)。
・資本金の額、株式の数の限度
・発行可能な株式の種類
・株主が引受に対して優先的な権利を有する場合とその条件、またはこの権利を有しない場合とその条件
・株式決定の権限を保有する機関(株主総会、経営審議会のどちらかを記載)
[減資に関する規定]
資本の過大評価や損失がある場合、株主総会は累積損失額まで会社資本を減少する旨の決議を行うことが可能です(会社法173条)。減資は特別決議で議決権を有する株主の過半数の承認が必要となります。
監査役が活動中に、業務執行者により減資が提案された場合、株主総会での決議の権限は、当該監査役の意見を前提としなければなりません(会社法173条1項)。
また、減資時には発行済株式と等価値の株券の発行が可能ですが、決議後から株券の交付までの間は効力を有しません(会社法173条2項)。
株主に対する株式額の一部返還をもって減資を行う場合、資本の払込が完了してない場合で、払込済の価額まで株式価額を減少させる場合においては、減資決議を行った総会の議事録は、公告後60日が経過しなければ効力を有しません(会社法174条)。
[自己株式]
会社が自ら発行する株式(自己株式)を保有することは、原則として認められていません。ただし、証券取引委員会の定める規定に従うことを条件とし、例外的に可能となります(会社法30条1項、2項)。
会社が保有する自己株式については、議決権及び配当請求権は与えられず、再び取引の対象とすることができない点に、留意する必要があります。
例外的に、自己株式の取得が認められるのは以下の場合です(会社法30条1項)。
・法定の消却、買取請求、償還の場合
・金庫株として継続的に保有する場合、消却のため、利益及び任意準備金の額まで資本金を減少させずに取得する場合、または贈与の場合
・前項目の手段により取得し、金庫株として保管された株式が譲渡される場合
・株式の回収による減資の場合で、かつ現金による株式の一部買入を行う場合
※回収される株式の価額は、取引所の価額と同額か、それ以下でなければなりません
■株式の発行価額
額面より高い価額での株式の発行は、定款にて定めがあれば可能ですが、額面より低い価額での株式の発行(有利発行)は、ブラジルの会社法上認められません(会社法13条)。
■配当の決定方法
株式会社が配当を行う場合、配当宣言日(配当基準日)において、株主名簿に登録されている株式所有者、及び用益権者に対して配当を行うことになります(会社法205条)。配当を行うためには、原則として株主総会の決議が必要となりますが、会社に十分な利益があると判断された場合、業務執行機関の決議にて中間配当を行うことが可能です。(会社法204条2項)ただし、この場合、定める資本準備金を超えてはなりません(会社法204条1項)。
配当金は、特別な決議事項がある場合を除き、配当宣言日(配当基準日)より60日以内に支払う必要があります(会社法205条3項)。配当額は、株式数に応じて決定されますが、優先株式の内容に配当額が異なる旨をあらかじめ定めている場合においては、この限りではありません(会社法203条)。
+ .4 .参考文献
参考文献
•ブラジル民法(LeiNº10406,de10dejaneriode2002-DOUde11/01/2002-CódigoCivil)
・ブラジル会社法(LEI No 6.404, DE 15 DE DEZEMBRO DE 1976.)
・『BusinessLawsOfBrazil』DemaresteAlmeida
•InternationalBusinessPublications,USA『BRAZILCompanyLawsAndRegulationsHandbook』
・ブラジル日本商工会議所
・鈴木信男訳『改正ブラジル株式会社法(2010)』