設立
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事業拠点の特徴
進出の形態 |
カンボジアに事業拠点を設立する場合は、「会社法(Law on Commercial Enterprise)」及び「商業規則と商業登記に関する法律(Law Bearing upon Commercial Regulations and the Commercial Register)」に準拠しつつ、投資環境、優遇制度、投資規制などを考慮しながら、その進出形態を検討する必要があります。
「会社法」は2005年4月26日に国民議会で採択され、2005年5月19日にカンボジアで最初の包括的な会社法として公布されました。企業が事業活動を行う際の枠組みを提供するものであり、会社の種類、機関、株式、資金調達及び他の標準的な会社法規において通常規定されているその他の事項を定めた条項を含みます。
この法律は「パートナーシップ」、「有限責任会社」、「外国会社」に対して適用されています(詳細後述)。
一方、「商業規則と商業登記に関する法律」は1995年5月に制定され、「取引業者」、「貿易」、「通商行為」等について規定されており、外国会社を含む登記の手続は同法に従い、遂行されなければなりません。
以下、本章では、会社法の条文については、法律名を省略し、条文のみを記載します。
外国企業がカンボジアでビジネスを行う際は、有限責任会社の設立、支店、駐在員事務所の設置などの進出形態から選択することができます(会社法271 条、以下、特に指定しない場合は同法に基づきます)。
なお、日系企業が進出する際には、非公開株式会社による参入が最も一般的となっています。
【進出の形態】
事業形態 | 位置付け | 実効税率 | 特徴 |
現地法人 | 国内法人 | 20% | 外国人に対して禁止されている行為以外可能 |
支店 | 外国法人 | 20% | 上記274条に加え、以下の行為が可能 |
駐在員事務所 | 外国法人 | – | 営業活動不可 |
現地法人 |
現地法人としての会社形態は、以下の通りとなります。
■有限責任会社(LLC:Limited Liability Company)
有限責任会社は、すべての株主が間接有限責任を負う形態で、非公開会社と公開会社に分けることができます(85条)。カンボジアでのLLCは株主による有限責任を定義しており、日本での株式会社に該当します。
・ 非公開会社(Private Limited Company)
・ 公開会社(Public Limited Company)
非公開会社は、2名以上30名以下の株主で設立される会社であり、株式の譲渡について制限がある会社をいいます。株主が1名の場合は、単独株主有限責任会社(Single Member Limited Company)となります。単独株主有限責任会社と非公開会社の違いは、株主相互間の関係を除き、ほぼ同じ扱いとなります(86条)。
これに対して公開会社は、株式の上場を前提としており、株式の募集は証券取引所を通じて行い、公衆から株主を募集する形で資本調達を行います。
非公開会社と公開会社の大きな異同は以下の通りです。
【非公開会社と公開会社の比較】
主に異なる項目 | 非公開会社 | 公開会社 |
株主の人数 | 1~30人※ | 規定なし |
株式の公募 | 不可 | 可能 |
業務の制限 | 融資、銀行、保険業務不可 | なし |
※1名の場合は、一人会社となる
カンボジアにおいては、外国人または外国企業の100%出資により有限責任会社を設立することができ(283条)、有限責任会社への出資比率には、100%カンボジア資本と、100%外国資本、そしてカンボジアと外国資本の合弁の3種類存在します。
外国人又は外国法人が51%以上の出資を行っている場合は、「外国法人」、51%未満の場合には「内国法人」と定義されます(101条、283条)。実情においては、ほとんどの場合100%外国出資の形態をとっています。
支店 |
支店(Branch)は、本社や本店から離れた地域において、本店と同様の営業活動を行うために設立される事務所となります。カンボジアの法律によって外国人又は外国法人に対して禁止されている業務を除き、定期的な物品の販売やサービスの提供が認められ、製造・加工・建設に従事することも可能です(278条)。
支店の資産は本店の資産であり、本店は支店の債務に対して責任を負います(279条)。また、カンボジア国内で設立された会社と同様の法的責任や納税義務を有します。支店については、QIPの適用はありません。
現地法人と支店の比較 |
カンボジア進出時において、現地法人又は支店どちらで進出するべきかという問題については、それぞれの優位性ついて、進出企業の状況や事業内容などを総合的に考慮し決定することが必要になります。
現地法人の場合、現地法人(子会社)と親会社は別々の事業体であり、それぞれの会社はそれぞれの国の税率で税金を申告することになります。資金移動に関しては、親会社と事業体が異なるので自由には行うことができず、貸付、借入、寄付、贈与、配当、出資等それぞれの方法について税務上の事項を検討する必要が出てきます。また、親会社とは別法人になるため、定款、労務関係等の資料を新たに作成する必要があり、設立に要する時間や費用が支店と比べ多くなります。
支店の場合、支店は本店と同一の会社であるため、支店の赤字を本店で吸収できることや、資金を自由に移転することが可能である点や、定款、労務関係等の新たな資料を作成する必要がなく、進出にかかる諸作業の省力化が可能という利点があります。しかし、利益や債務が本店に帰属するため、カンボジアでトラブルが起き、大きな債務を抱えた場合は、本店が債務者になるというリスクが存在します。
現地法人で行える事業に関しては、別法人であるために制約はなく、自由な経営展開が可能となります。一方支店では、本店と異なる事業を行うことはできず、自由自在に動くことができないというデメリットがあります。
また、事業ライセンスに関しても、法令上ライセンスの取得主体(現地法人、支店、個人)について、明確な記載がない場合があり、実務的には支店の場合にはライセンス発行を認めないというケースも発生しているため、この点については関係省庁または専門家等と事前に確認が必要になります。
現地法人、支店どちらも同じような手続で設立、設置を行うことができ、実務上下記の比較表以外に大きく異なる点は存在していません。
【現地法人と支店の比較まとめ】
| 現地法人 | 優位性 | 支店 |
活動範囲 | ・法令により禁止される行為を除き、 カンボジア内国法人と同様 | 同等 | ・カンボジア法令により外国企業に対して禁止されている行為除き、国内法人と同様定期的な物品やサービスの提供、製造・加工・建設に従事することが可能 |
設立実務 | ・定款の作成、認証が必要・資本金の振込、銀行残高証明書の提出が必要(その他設立実務についてはほぼ同様だが、 設立実務は支店のほうが容易) | 支店 | ・定款の作成不要
・資本金の振込が不要 |
会社法務 | ・株主総会の開催・取締役会の開催・株式譲渡や取締役交代時届出(報告義務などによる事務負担が大きい) | 支店 | ・取締役会などの実施義務なし
・代表者変更時は届出が必要 |
QIP適用 | ・可能 | 現地法人 | ・不可 |
債権債務 | ・私的有限責任であり、株主の責任は 各自出資した資本金の範囲に限定 | 現地法人 | ・独立した法人格を有しておらず、債権債務は本国の会社に直接帰属(279条) |
資金移動 | ・貸付、借入、寄付、贈与、配当、出資等の方法による(税務上の事項を検討する必要がある) | 支店 | ・資金を自由に移転することが可能 |
税務会計 | ・カンボジア国内企業と同様(月次、年次決算報告義務有り) | 同等 | ・カンボジア国内企業と同様
(月次、年次決算報告義務有り) |
労務 | ・労働省への申請や届出が必要 | 同等 | ・労働省への申請や届出が必要 |
撤退 | ・容易に清算が可能(ただし、解散、閉鎖に際して税務署により 税務調査が実施されるので、 解散もしくは閉鎖時の税務状態によって難易度が変化) | 同等 | ・容易に支店閉鎖が可能 |
駐在員事務所 |
駐在員事務所は、商務代表事務所(Commercial Representative Office)、商務連絡事務所(Commercial Relations Office)及び代理店(Agency)の形態があります。主として情報収集等の限られた「非営利活動を行うことを目的として登録される事務所であり、カンボジア国内において商品の売買やサービス提供、生産・建設活動などを行うことはできません。駐在員事務所の業務は、市場調査の実施、展示会の開催などに限定されており、現地従業員との雇用契約、賃貸借契約、水道光熱費の契約等を除く契約の主体になることはできません(274 条)。そのため、多くの場合は親会社への情報収集のために設立されます。
商務代表事務所および商務連絡事務所は次の活動を行うことができます(274条)。
・ 親会社への紹介を目的とする顧客との接触
・ 親会社への提供を目的とする商業情報の調査
・ 市場調査
・ 展示会での物品の販売、事務所又は展示会でのサンプルや商品の展示
・ 展示会のための物品の購入や保管
・ 事務所の賃借や現地職員の雇用
・ 親会社の代理として行う現地顧客との契約(契約の履行は親会社が行う)
また駐在員事務所は、課税対象となる事業活動が認められていないので、法人税の対象とはなりませんが、従業員給与に対する給与税、源泉徴収税等の課税は行われるので、注意が必要です。また、駐在員事務所ではQIPの適用はありません。
パートナーシップ |
パートナーシップ(Partnership)とは、利益を獲得する目的で2名以上のものが共同事業体を形成するために契約を交わすことをいい(8条)、医者、弁護士、会計士など専門家に適した形態です。
カンボジアにおけるパートナーシップは、一般パートナーシップ(General Partnership)と限定パートナーシップ(Limited Partnership)の2種類に分かれています。日本でいう持ち分会社に近いイメージとなります。
■一般パートナーシップ
一般パートナーシップは、口頭又は書面による契約が可能なため(9条)、法的書類は特に必要ではありません。商業規則と商業登記に関する法律に従って登記されたときは、自己の名前により動産・不動産を所有できるほか、契約を交わすことや訴訟を起こすことができます(12条)。
パートナーシップから生じる利益や損失については、各パートナーに分配され(23条)、債務については共同又は個別で負担することになります。なお、債権者はパートナーシップ全体に対して債務執行を要求した後に、各パートナーに対してその財産に対する執行を求めることができます(42条)。そのため各パートナーは、パートナーシップの債務について無限責任を負います。
■限定パートナーシップ
限定パートナーシップは、一人又は複数の業務執行権及び代表権を有する一般パートナーと一人又は複数の出資義務を負う限定パートナー間の契約です。
一般パートナーは、共同又は個別に負債に対する責務を負います(75条)。限定パートナーは持分に応じて利益を受け取り、債務については出資した金額を限度に責務を負います(71、72条)。
個人事業 |
個人事業(Sole Proprietorship)は、一名の個人が所有する企業で、法人格はありません。個人と企業が同一視され、すべての口座、資産。契約は所有者(個人事業者)の名義で登録されます。
個人事業主の登記は一般の法人登記より必要種類は少なくなり、事業開始が容易ではありますが、個人が事業のすべてを管理するため、すべての利益に対して権利を有し、負債や義務のすべてに対して責任を負います。そのため、事業の失敗などの場合に無限責任を追うことになります。なお、利益については個人に対して直接課税され、現地法人等と同様に月次申告義務があります。
進出形態によるメリット・デメリットのまとめ |
| 特徴 | メリット | デメリット | |
現地
法人 | 非公開 | ・株主1名以上
(株主が1名の場合は、単独株主有限責任会社) ・取締役1名以上 | ・親会社と別の法人格で、
リスク回避が可能 ・株主の責任は 払込金額に限定・QIPの適用有り ・内国会社と同様の 業務が実施可能 | ・株式譲渡や 取締役交代の際 商業省への 届出承認が必要・報告義務に伴う 事務負担の増加・課税対象 |
公開 | ・取締役3名以上 | |||
支店 | ・本国の親会社と同一の法人格 | ・社内組織や定款、 会計等管理業務の 簡素化・内国会社と同様の 業務を実施可能 | ・QIPの適用なし
・支店の債務は 親会社に帰属 ・課税対象 | |
駐在員
事務所 | ・営業活動を行うことができない
・親会社と同一の法人格 | ・社内組織や定款、 会計等管理業務の 簡素化・法人税なし | ・QIPの適用なし
・定期的な商品販売、 サービス提供は不可・課税対象となる 事業活動は不可 | |
パートナー
シップ | ・2名以上から設立可能 | ・高い独立性および柔軟性 | ・QIPの適用なし | |
個人事業主 | ・責任はすべて個人に帰属 | ・登記コストが 相対的に低廉・個人が全利益に対する 権利を有し、すべての 決定権を有する・撤退が容易 | ・QIPの適用なし
・無限責任 ・業務範囲が限定 ・課税対象 | |
投資規制及びインセンティブ
投資規制 |
■禁止業種
カンボジアでは、政府発行の政令によって、投資不適格リストが規定されており、下記の事業については、外国企業による投資が禁止されています。
・ 向精神剤及び麻薬物質の製造・加工
・ 国際規則または世界保健機構により禁じられた有害性化学物質、農薬・農業用殺虫剤、及び化学物質を使用したその他の商品で、公衆衛生及び環境に影響を及ぼすものの製造
・ 外国から輸入する廃棄物を使った電力の加工及び生産
・ 森林法により禁止されている森林開発事業
■外国企業の土地所有に関する規制
外国企業及び外国人は土地を保有できないことが明記されています。そのため、外国企業は以下のいずれかの方法により土地を利用することになります。なお、アパートやコンドミニアムなどの集合住宅など、土地以外の不動産については、2階より上層階部分について外国企業又は個人の所有が認められます。
・ カンボジア国籍企業からの賃借
土地の賃借は、15年以上50年以内で賃借が可能となっており、賃借権は更新することができます。
・ カンボジア国籍企業と合弁会社を設立
合弁会社名義で土地を購入することになるが、外国資本の出資比率は49%までに限られます。
・ 特別経済区への入居
特別経済区開発会社と長期賃借契約を締結することで、最長99年の契約期間に渡り土地を使用することができます。
・ カンボジア政府からの賃借
農業開発などを目的とした経済的土地コンセッションに対しては、1万ヘクタールまでの土地を最長99年間賃借することができます。
・ カンボジア国籍の取得
土地の購入権は、カンボジアへ移住してから7年後に取得することができます。
・ カンボジア人との結婚
配偶者名義で土地を取得することができます。
■外国人の雇用上限
カンボジア国民の雇用を守るため、外国企業は原則としてカンボジア国民の雇用を優先させなければなりません。ただし、カンボジア国内で人材の獲得ができない場合には、外国人管理者、技術者または専門家を雇用することができます。その上限は総従業員の10%までとされていますが、10%を超えて外国人を雇用する場合は、個別に労働職業訓練省から許可を取得する必要があります。
■外国為替規制
外国為替法において、公認銀行を通じたものであれば外国為替取引に対しては制限しないという旨が規定されています。
投資インセンティブ |
カンボジアは、他のアジア諸国のように出資比率に関する規制はありません。前項の不適格リスト以外の業種では外国資本100%の現地法人設立が原則として認められています。また、投資優遇措置として、適格投資プロジェクト(QIP:Qualified Investment Project)による優遇措置、特別経済区制度及び特定分野に対する優遇措置など、さまざまな制度が用意されています。
■適格投資プロジェクトへの投資優遇措置
適格投資プロジェクト制度は、雇用創出及び産業育成を目的とした外資誘致政策の一つで、認可を取得することができれば、下記に記載している法人税の免税など、種々の優遇措置を受けることができます。
・ ワンストップ・サービス
継続的な投資促進サービスの向上のために、CDC内にカンボジア特別経済区委員会が設立されています。カンボジア特別経済区委員会の管理の下、投資プロジェクトの登録から日々の輸出入許可に至るまでワンストップ・サービスを提供することになっています。
・ 法人税免税または特別償却の優遇措置
企業は通常20%の法人税を納めなければなりませんが、QIPの免税措置を受けた場合は、最長9年間の法人税免税を受けることができます。その内訳は、始動期間、3年間、優先期間からなります。始動期間とは、「最終登録証明書発行の日から利益を計上するまでの年」、または、「最初に売上を計上してから3年間」のいずれか短い方となります。優先期間(最長3年)は、投資業種と投資金額により認められる延長期間のことであり、個別案件ごとに当局が決定します。デメリットとしては、法人税免税を受けるために、毎年「義務履行証明書」を取得する必要があり、財務状況などの開示をしなければなりませんので、間接コストがかさむという点があげられます。
それでも、上記の通り最長9年間免税されることから、投資の際に是非活用したい優遇措置の一つといえるでしょう。
また、法人税の免税適用を受けない場合は、固定資産の40%の特別償却が認められ、製造・加工工程において使用される新品または中古の有形固定資産価額の40%について特別償却することができます。
・ 輸入関税免税の優遇措置
QIPの優遇制度の目玉のもう一つが輸入関税の免税です。すべてのQIPに共通するものは、生産用設備、建設用資材の輸入免税です。
国内志向型QIP(Domestically oriented QIPs)は、生産設備、建設資材及び輸出品生産のための生産投入材に対して輸入関税が免税されます。国内志向型QIPは生産投入材について、申告ベースで輸入関税の還付を受けることができます。つまり、輸入の時点では課税されますが、直接輸出、または輸出産業に供給した場合は、輸出した商品の生産に用いた生産資材の数量に応じて、四半期報告書の審査を経て関税免除される、という仕組みになります。
輸出志向型QIP(Export Oriented QIPs)については、生産設備と建設資材の他に、原材料、中間財、副資材の輸入関税が免除されます。輸出志向型QIPは、何%以上を輸出しなければならない等、具体的基準は定められておりません。
裾野産業QIP(Supporting Industry QIPs)は、生産設備、建設資材、原材料、中間財、生産投入用副資材の輸入関税が免除されます。なお、製品を100%輸出企業に提供しなかった場合や輸出できなかった場合は、その部分について輸入関税及びその他の税金が課されます。
■優遇措置を受けるための最低投資額
投資法改正により、投資優遇措置の対象が拡大、更に最低必要投資額の引下げが実施されました。これにより、中小企業でも、QIPによる優遇措置の恩恵を受けることができるようになりました。
業種ごとの最低投資額は、以下の表の通りです。
【投資優遇措置を受けるための最低投資額】
最低投資額 | 業種 |
10万USドル以上 | 輸出産業に製品のすべてを供給する裾野産業 |
20万USドル以上 | 動物の餌の製造 |
30万USドル以上 | 皮革及び関連製品、金属製品、電気・電子機器、事務用品、玩具、スポーツ用品、自動二輪社及び部品、アクセサリー、陶磁器の製造 |
50万USドル以上 | 繊維、履物、帽子、繊維産業のための製品、気を使用しない家具・美品、紙及び紙製品、ゴム製品、プラスチック製品、伝統薬、輸出用水産物、穀物、作物製品の冷凍及び加工、食品、飲料の清算、上水道の供給 |
100万USドル以上 | 化学品、セメント、農業雨用肥料、石油化学製品、現代訳の製造 |
200万USドル以上 | 近代的なマーケットや貿易センターの建設(1万ha以上の敷地を有し、かつ充分な駐車場用地が必要) |
400万USドル以上 | 産業、農業、観光、インフラ、環境、工業技術、科学その他のサービスに関する技能開発、技術もしくはポリテクノロジーのための訓練を行う教育機関 |
800万USドル以上 | 国際貿易博覧会センター、会議場 |
■優遇措置不適格プロジェクト
下記のプロジェクトについては、優遇措置を受けることができません。
・ 各種の商業活動(輸入、輸出、卸売、小売、免税店)
・ レストラン、カラオケ、バー、ナイトクラブ、マッサージ店、フィットネスセンター
・ カジノ、賭博、観光、専門的サービス
・ 銀行、金融機関、保険会社、金融仲介業の通貨・金融サービス
・ 三ツ星を下回るホテル
・ 不動産開発、倉庫設備、駐車場
・ 新聞、メディアに関する活動(ラジオ、テレビ、報道、雑誌、映画、ビデオ製造等)
・ 水路、道路、空路による運輸サービス(鉄道分野への投資を除く)
・ タバコの製造
・ 自然林の木材を使用した木製品の製造・加工
・ 50ha未満の複合娯楽施設(ホテル、テーマパーク、スポーツ施設、動物園等を含む)
■特別経済区における優遇措置
現在カンボジアには39の特別経済区があり、製造業のためにインフラが整備されています。特別経済区に入居している企業は、QIPと同様の優遇措置に加え、付加価値税(VAT:Value Added Tax)の免除を受けることができます。
その他、投資申請やビザ取得手続の代行や、労務問題などトラブルの対応相談を行うことができます。
事業拠点の設立
事業拠点の設立は、その採用した事業形態により手続が異なりますので、注意が必要です。会社登記に際しては、大量の文章作成をクメール語で行い、申請書と共に提出することが要求されており、自社独自で対応することは非常に困難であると考えられます。
事業開始までの流れは以下の図の通りで、経済特区内の適格投資プロジェクト(Qualified Investment Project, QIP)案件、それ以外の場所でのQIP案件、QIPとならない通常の案件の3種類があり、それぞれ対応する機関が異なります(QIPについては、第2章投資環境3参照)。
以下では、日系企業がカンボジアに拠点を設ける際に、最も多く採用されているQIPとならない非公開会社、支店、パートナーシップ及び個人事業の登記手続を説明します。商業省での登録にかかる申請期間は通常3週間から1カ月程度となっていますが、祝日、政治状況、署名権限者の配置換え、手続き、必要書類の変更等の状況により、通常の期間よりも大幅に伸びる可能性があります。実際に商業省での手続きに3カ月以上かかるケースも存在するため、カンボジア特有の事情を考慮し、余裕を持って手続を行うことが必要です。
現地法人(非公開会社)の登記手続き |
ここでは、日系企業に多い非公開会社の設立手続を説明します。会社設立の手続は、日本側とカンボジア側に分かれ、日本側においては現地法人情報の決定と必要書類の準備となり、カンボジア側の手続は、各種申請や資本金の払込等となります。
一名以上の行為能力を有する自然人又は法人は、会社定款を商業省商業登記局(Commercial Registration Bureau)に提出することにより会社を設立することができます(91条)。会社設立証明(Certificate of Incorporation)が登記局より発行され(97条)、登記の日をもって会社は法人格を有することになります(98条)。
■日本側の手続
日本側の手続は以下の通りとなります。
① 現地法人情報の決定
② 必要書類の準備
③ 準備書類の送付
① 現地法人情報の決定
法人の設立の際には、株主や取締役、会社の事業目的、授権資本金や払込資本金、登記住所をあらかじめ決定する必要があります。
[商号の決定]
会社の名称として使用できるのは、原則クメール語ですが、英語などの言語を用いることも認められています。クメール語と異なる言語を使用する場合、同じ音声で発音するクメール名を会社名の上側により大きな文字で配置しなければなりません。
なお、会社名の末尾には、「Private Limited Company(非公開会社)」、「Public Limited Company(公開会社)」又は適切な略称を付けることが義務付けられています(92条)。
[資本金の決定]
会社法において、最低資本金は400万リエルと規定されています。定款に特別の定めがない限り、株式は1株あたり額面4,000リエル以上で、最低1,000株を発行しなければなりません(144条)。最低額面金額以上であれば、10,000リエルや100,000リエルなど、きりの良い数値を設定するのが一般的です。
[機関設計の決定]
会社の機関設計は会社法に規定されており、非公開会社の場合、株主、取締役が必置の機関となります。
株主は1名以上いれば良く、個人や法人の区別もありません。そのため、特段苦慮すべき事項はありません。
取締役は、非公開会社の場合1名以上必要です。国籍や居住性の要件は、会社法に規定はありませんので、日本の親会社の役員などが就任することが可能です。
以上のように、カンボジア会社法は比較的簡易な機関設計を容認しています。ただし、会計監査法により、一部の要件を満たす会社には、外部の独立した公認会計士による会計監査を受ける義務が定められています。以下、5章会計の抜粋です。
下記の要件のうち2つ以上を満たす場合は、各会計年度の財務諸表をKICPAA(カンボジア公認会計士・監査士協会)に登録している独立した監査人の監査を受けなければなりません。 |
・年間売上が30億リエル以上
・監査年度の資産平均価格が20億リエル以上 ・監査年度における平均従業員数が100人以上 |
その他、機関設計の詳細は、第4章会社法を参照
② 必要書類の準備
[親会社からの必要書類]
申請に際して、申請書類の記入にクメール語が用いられることや、手続の煩雑さに鑑みると、コンサルタント、法律事務所や会計事務所による代行サービスを利用するのが通常です。サービスには定款の作成サポートや翻訳業務、現地当局への申請書類の提出代行等が含まれています。
会社設立代行を依頼する場合、以下の書類を用意します。
・ 親会社定款 (日本語・英語)
・ 親会社登記簿謄本 (日本語・英語)
・ 親会社代表取締役のパスポートの写し
・ 現地法人代表取締役のパスポートの写し
・ 設立委任状、公証・認証委任状、宣誓書
・ 現地法人代表者任命状(親会社による新会社設立及び現地代表者選任に関する取締役会議事録)
親会社の定款、登記簿謄本、及び取締役会議事録については、取得から3カ月以内のものである必要があり、公証役場の認証が必要となります。また、親会社代表取締役及び現地法人代表取締役のパスポートの写しは、青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したものでなければなりません。
[新会社の書類作成]
新会社が準備すべき書類としては、定款及び設立委任状があります。委任状は日本での公証・認証及び現地で会社設立のための委任状が必要です。以下、定款作成について説明します。
定款記載事項
登記の申請には、下記の内容を記載した新会社の基本定款を作成する必要があります。基本定款はカンボジア語で作成する必要がありますが、英語版も併せて申請が可能です。基本定款は、全ページに全株主の署名を入れなければなりません(95条)。基本定款へ最低限記載すべき事項は下記のとおりです(Ministry of Commerce No. 141 MoC/SM 2006)。
・ 会社名
・ 会社形態
・ 会社の目的と主たる活動
・ 会社の存続期間
・ 登録事務所の住所
・ 授権資本(単位:リエル)、授権株式の数及び種類、1株あたり額面価格
・ 全株主の名前、職業、国籍、パスポート情報(又は身分証明書)、割当株式数
・ 会社取締役の名前、国籍、住所、パスポート情報(又は身分証明書)、任期
・ 株主の加入又は退出に関する事項
・ 会計
・ 解散
・ 基本定款の修正
・ 会社登録の発表
なお、付属定款は届出の必要はなく公文書ではありませんが、通常、最初の取締役会での採択により作成されます。
定款は商業省からはサンプルが提供されますが、担当者によって内容が異なるということがあり、また会社にとって不利な内容が含まれていることもあるので、専門家に確認されることをお勧めします。また商業省との交渉により、自社で作成した定款の承認を得ることも可能です。ただし、商業省の事務処理能力の観点から、定款の承認を受けるのに相当な時間を要することがあるため注意が必要です。
[必要書類の公証、認証]
上記で用意した書類のうち、以下に掲げる書類は、公証役場、カンボジア大使館にて公証・認証を受けなければなりません。この手続が行われていない場合には、カンボジアでの登記申請時に受理してもらえないため、注意が必要です。
・ 親会社定款
・ 親会社登記簿謄本
・ 親会社代表取締役のパスポートの写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ 現地法人代表取締役のパスポートの写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ 設立委任状、公証・認証委任状、宣誓書
・ 現地法人代表者任命状
③ 準備書類の送付
上記における認証処理が終了次第、これらの書類をカンボジアへ郵送し、後述のプロセスはすべてカンボジアで行います。
■カンボジア側の手続
カンボジア側での手続きは以下の通りとなります。
① 商号の予約
② 銀行口座開設・資本金の払込
③ 必要書類の準備
④ 会社登記の申請
⑤ 登記費用の支払
⑥ 商業登記証明書の発行
カンボジアでの登記手続は、欧米の影響を受けており、日本の商業登記とは異なります。申請に関しては、登記申請書をそのままファイリングするファイリング方式が採用されていましたが、2016年1月4日より商業省の登記用のオンラインシステムにおいて登記を行うことが義務付けられています。そのため、すべての法人、支店、駐在員事務所、個人事業またはその代理店を有する個人及び法人は、商業省のホームページにてオンラインによる商業登記を行う必要があります。
ユーザー設定は、商号確認、予約及び登記のための最初のステップです。会社等の設立、登記をする者は、下記の商業省ホームページにおいてユーザー設定のための情報を記入し、会社固有のユーザー設定を行う必要があります。
(www.businessregistration.moc.gov.kh)
① 商号の予約
商業省のホームページにおいて、登記申請を開始する前に、類似した商号がないか等、希望する商号が使用可能かどうかを確認します。商号の予約を行うには、商業省のホームページにてReserve a Company Nameを選択し、会社の種類等の選択、商号のクメール語表記及び英語表記を記入し、確認を行う必要があります。
商業省に出向いての必要書類の提出は基本的に不要ですが、要求される場合もあります。利用したい商号が既に存在する場合は、それに代わる商号を提示する必要があります。商業省は、既に使われている商号、類似する商号、公序良俗に反する商号、その他不適切な商号の登記を拒否することができます(92条)。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Reserve a Company Nameを選択
b) 必要事項の記載
Company Typeより、Private Limited Company(非公開有限責任会社)を選択
商号の予約においては予約費用が必要になります。ホームページにて会社の商号を記入すると、 商号予約費用の支払いページが表示されますので、手続きに従いオンラインにて予約費用の支払いを行います。商号確認に関する費用は、商号ひとつあたり4万リエル(約10USドル)及び銀行手数料となっています。予約費用はオンラインシステムにて支払われる必要があり、メールにて領収書が発行されます。
商号の予約及び費用の支払い後、商号は公式に商業省内部で審査されるまで予約済みとみなされることになるため、この期間中は第三者に同様の商号を登録されることはありません。商号予約申請の承認を受けると、承認日から3ヶ月間予約されるものとされ、2回目の商号予約費用を支払えば、さらに3ヵ月間延長することができます。
商号予約に要する期間は特に定められていませんが、実務的には1週間程度で完了します。
① 銀行口座開設・資本金の払込
カンボジア会社法では、会社設立前に資本金の払込を完了することが要求されています。
ただし、カンボジアでの銀行の実務慣行として、設立予定のカンボジア法人名義での口座開設をすることができません。そのため、実務上は取締等の個人名義で開設をするか、代行業者の口座に一時的に資本金相当額を払い込み、銀行残高証明を発行する必要があります。
最近では法人開設前に法人の仮口座の開設に応じる銀行も出てきています。 具体的な手続や詳細は、銀行に個別に問い合わせる必要があります。払込資本額は、最低資本金額の400万リエル(約1,000USドル)や、定款記載の総資本金額の25%など、商業省担当者により見解が異なっていますので、申請時に商業省の担当者又は外部専門家に照会することをお薦めします。
登記申請が受理された後に法人名義の口座を開設し、残りの資本金残額の払い込みを行いますが、商業省による払い込みのチェック等は行われていません。
② 必要書類の準備
現地法人の登記に当たり必要となる書類は、以下の通りとなります。
・ 現地法人の定款
・ 賃貸契約書、水道光熱費の明細書、郵便書類等の住所確認書類
・ 商事、民事又は刑事事件において罰則が課せられたことがないことに関する取締役の宣誓書
・ 株主及び取締役全員の写真(35mm×45mm、裏面に署名)
・ 株主及び取締役全員のパスポート(又は身分証明書)の写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ カンボジア公認銀行発行の銀行残高証明
法人が株主の場合、以下の書類もあわせて必要となります。
・ 認証された親会社の定款写し
・ 認証された親会社の登記簿謄本写し
・ 各株主法人代表者による、親会社における株主代表者の任命に関する決議書
③ 会社登記の申請
商業省のホームページにおいて商号予約の際に使用したアカウントにてログインし、ホームページの会社登録ページよりIncorporate a Private Limited Companyを選択し、示されているステップの通り、会社の一般情報、住所及び連絡先、取締役情報、株式及び株主情報を入力し、③で準備した書類を提出することで登記の申請ができます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Incorporate a Private Limited Companyを選択
b) 予約した商号、事業活動等の一般情報の記入及び書類アップロード
c) 住所及び連絡先の記入
d) 取締役情報の記入(1人以上の取締役を設定することも可能)
e) 株主情報の記入(株主が法人の場合)
株主が個人の場合は、個人情報の記載が必要となります。
f) 記載した情報の確認、提出
⑤ 登記費用の支払い
上記の手続が完了し、すべての情報及び書類を提出した後、登記費用支払いのページが表示され、オンラインにて支払いを行います。登記費用は168万リエル(約420USドル)となっています。登記費用に対する領収書はオンラインにて発行されます。登記費用の支払い後、商業省において登記申請が審査されます。
⑥ 商業登記証明書の発行
①から⑤の手続きを完了後に、登記申請が承認された後、商業登記証明書が発行され、営業を開始することができます。ただし、登記完了後に、税務登録など必要な手続を行わなければなりません。
商業登記証明書は、オンラインシステムにおいて請求を行えば、登録したメールアドレスに送信され、簡易に入手することができます。
登記申請が完了し、登記証明書を取得した場合は、商業省の承認済みデザインにしたがって社印の作成が可能になります。
支店及び駐在員事務所の登記手続き |
支店及び駐在員事務所は、現地法人とほとんど同様の手続きにて登記することができます。支店及び駐在員事務所の登記手続きは以下の通りとなります。
① 商号の予約
② 必要書類の準備
③ 会社登記の申請
④ 登記費用の支払
⑤ 商業登記証明書の発行
① 商号の予約
現地法人と同様、商業省のホームページにおいて、登記申請を開始する前に、類似した商号がないか等、希望する商号が使用可能かどうかを確認する必要があります。商号に関わる費用も同様に商号ひとつあたり4万リエル(約10USドル)及び銀行手数料となっています。予約費用はオンラインシステムにて支払われる必要があり、メールにて領収書が発行されます。
商号の予約及び費用の支払い後、商号は公式に商業省内部で審査されるまで予約済みとみなされることになるため、この期間中は第三者に同様の商号を登録されることはありません。商号予約申請の承認を受けると、承認日から3ヶ月間予約されるものとされ、2回目の商号予約費用を支払えば、さらに3ヵ月間延長することができます。
原則として、支店の場合は親会社名の前に「Branch of」という名称、駐在員事務所の場合は「Representative Office of」という文言が付されます。以前はLiaison Officeや末尾にCambodiaといった文言を追記することが交渉により認められていましたが、現在はシステム上このような記載は認められていません。
商号予約に要する期間は特に定められていませんが、実務的には1週間程度で完了します。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Reserve a Company Nameを選択
b) 必要事項の記載
Company Typeより、Foreign Company(支店又は駐在員事務所)を選択
② 必要書類の準備
支店及び駐在員事務所の登記に当たり必要となる書類は、以下の通りとなります。
・ 賃貸契約書、水道光熱費の明細書、郵便書類等の住所確認書類
・ 認証された親会社又は本店の定款写し
・ 認証された親会社又は本店の登記簿謄本写し
・ 支店又は駐在員事務所の設立及び代表任命に関する決議書
・ 代表者の写真(35mm×45mm、裏面に署名)
・ 支店又は駐在員事務所代表者のパスポート(又は身分証明書)の写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ 商事、民事又は刑事事件において罰則が課せられたことがないことに関する取締役の宣誓書
③ 会社登記の申請
商業省のホームページにおいて商号予約の際に使用したアカウントにてログインし、ホームページの会社登録ページよりRegister Foreign Companyを選択し、示されているステップの通り、支店または駐在員事務所の一般情報、親会社の情報、住所及び連絡先、取締役情報を入力し、②で準備した書類を提出することで登記の申請ができます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Register Foreign Companyを選択
b) 予約した商号、事業活動等の一般情報の記入及び書類アップロード
c) 親会社情報の記入
d) 住所及び連絡先の記入
e) 取締役情報の記入(1人以上の取締役を設定することも可能)
f) 記載した情報の確認、提出
④ 登記費用の支払い
上記の手続が完了し、すべての情報及び書類を提出した後、登記費用支払いのページが表示され、オンラインにて支払いを行います。登記費用は168万リエル(約420USドル)となっています。登記費用に対する領収書はオンラインにて発行されます。登記費用の支払い後、商業省において登記申請が審査されます。
⑤ 商業登記証明書の発行
①から④の手続きを完了後に、登記申請が承認された後、商業登記証明書が発行され、営業を開始することができます。ただし、登記完了後に、税務登録など必要な手続を行わなければなりません。
商業登記証明書は、オンラインシステムにおいて請求を行えば、登録したメールアドレスに送信され、簡易に入手することができます。
コーポレートセクレタリー(企業秘書)サービス
2022年1月29日付の商業企業法改正により、カンボジアに設立された全ての有限責任会社は、カンボジアに永住する”コーポレートセクレタリー(企業秘書)”を任命する必要があります。
※カンボジアでの設立をお考えの企業様には、再度ご案内できればと存じますのでお問合せ下さい。
パートナーシップの登記手続き |
パートナーシップの登記申請についても、現地法人、支店及び駐在員事務所とほとんど同様の手続きにて登記することができます。パートナーシップの登記手続きは以下の通りとなります。
① 商号の予約
② 必要書類の準備
③ 会社登記の申請
④ 登記費用の支払
⑤ 商業登記証明書の発行
① 商号の予約
現地法人と同様、商業省のホームページにおいて、登記申請を開始する前に、類似した商号がないか等、希望する商号が使用可能かどうかを確認する必要があります。商号に関わる費用も同様に商号ひとつあたり4万リエル(約10USドル)及び銀行手数料となっています。予約費用はオンラインシステムにて支払われる必要があり、メールにて領収書が発行されます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、PARTNERSHIPS、Reserve a Partnership Nameを選択
b) 必要事項の記載
Partnership Typeより、General Partnership(一般パートナーシップ)又は Limited Partnership(限定パートナーシップ)を選択
② 必要書類の準備
パートナーシップの登記に当たり必要となる書類は、以下の通りとなります。
・ 賃貸契約書、水道光熱費の明細書、郵便書類等の住所確認書類
・ パートナーシップ設立に関する合意書
・ 商事、民事又は刑事事件において罰則が課せられたことがないことに関するパートナーの宣誓書
・ パートナーのパスポート(又は身分証明書)の写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ パートナーの写真(35mm×45mm、裏面に署名)
パートナーが法人の場合
・ 認証されたパートナーの登記に関する法的文書
・ パートナーシップ設立及びパートナーである法人の代理人任命に関する決議書
③ 会社登記の申請
商業省のホームページにおいて商号予約の際に使用したアカウントにてログインし、ホームページの会社登録ページよりRegister a General Partnership又はRegister a Limited Partnershipを選択し、示されているステップの通り、パートナーシップの一般情報、住所及び連絡先、パートナー情報を入力し、②で準備した書類を提出することで登記の申請ができます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Register a General Partnershipを選択
b) 予約した商号、事業活動等の一般情報の記入及び書類アップロード
c) 住所及び連絡先の記入
d) 個人情報を含むパートナー情報の記入
e) パートナー以外に管理者がいる場合、管理者情報を記入
f) 記載した情報の確認、提出
④ 登記費用の支払い
上記の手続が完了し、すべての情報及び書類を提出した後、登記費用支払いのページが表示され、オンラインにて支払いを行います。登記費用は168万リエル(約420USドル)となっています。登記費用に対する領収書はオンラインにて発行されます。登記費用の支払い後、商業省において登記申請が審査されます。
⑤ 商業登記証明書の発行
①から④の手続きを完了後に、登記申請が承認された後、商業登記証明書が発行され、営業を開始することができます。ただし、登記完了後に、税務登録など必要な手続を行わなければなりません。
商業登記証明書は、オンラインシステムにおいて請求を行えば、登録したメールアドレスに送信され、簡易に入手することができます。
個人事業主の登記手続き |
個人事業の登記申請についても、現地法人、支店及び駐在員事務所と同じくオンラインシステム上で行わなければなりません。しかし、個人事業主に関しては、実務上オンラインシステムが使用されることは少なく、各市や州の商業省部門に届け出を行うことが一般的となっています。この場合システム上では商号が登録されないため、商号は保護されない可能性があります。
パートナーシップの登記手続きは以下の通りとなります。
① 商号の予約
② 必要書類の準備
③ 会社登記の申請
④ 登記費用の支払
⑤ 商業登記証明書の発行
① 商号の予約
現地法人と同様、商業省のホームページにおいて、登記申請を開始する前に、類似した商号がないか等、希望する商号が使用可能かどうかを確認する必要があります。商号に関わる費用も同様に商号ひとつあたり4万リエル(約10USドル)及び銀行手数料となっています。予約費用はオンラインシステムにて支払われる必要があり、メールにて領収書が発行されます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、SOLO PROPRIETORSHIPS、Reserve a Solo Proprietorship Nameを選択
b) 必要事項の記載
② 必要書類の準備
個人事業の登記に当たり必要となる書類は、以下の通りとなります。
・ 賃貸契約書、水道光熱費の明細書、郵便書類等の住所確認書類
・ 商事、民事又は刑事事件において罰則が課せられたことがないことに関する事業主の宣誓書
・ 事業主のパスポート(又は身分証明書)の写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ 事業主の写真(35mm×45mm、裏面に署名)
③ 会社登記の申請
商業省のホームページにおいて商号予約の際に使用したアカウントにてログインし、ホームページの会社登録ページよりIncorporate a Sole Proprietorshipを選択し、示されているステップの通り、個人事業の一般情報、住所及び連絡先、事業主の情報を入力し、②で準備した書類を提出することで登記の申請ができます。
a) ONLIN ESERVICEメニューより、Incorporate a Solo Proprietorshipを選択
b) 予約した商号、事業活動の記入
c) 住所及び連絡先の記入
d) 事業主情報の記入
e) 記載した情報の確認、提出
④ 登記費用の支払い
上記の手続が完了し、すべての情報及び書類を提出した後、登記費用支払いのページが表示され、オンラインにて支払いを行います。登記費用は30万リエル(約75USドル)となっています。登記費用に対する領収書はオンラインにて発行されます。登記費用の支払い後、商業省において登記申請が審査されます。
⑤ 商業登記証明書の発行
①から④の手続きを完了後に、登記申請が承認された後、商業登記証明書が発行され、営業を開始することができます。ただし、登記完了後に、税務登録など必要な手続を行わなければなりません。
商業登記証明書は、オンラインシステムにおいて請求を行えば、登録したメールアドレスに送信され、簡易に入手することができます。
企業の年次申告
商業省(Ministry of Commerce: MOC)は2017年4月5日付けの"企業の年次申告(Annual Declaration of Commercial Enterprise(ADCE))の提出”に関するプラカスを発行したことを受け、各企業は毎年MOCのオンラインシステムを利用し、ADCEをMOCに提出することになります。
ADCE提出のためのオンラインシステム利用は義務化されておりますので、企業がMOCシステムに再登録した日から3ヶ月以内に行うことになります。
また、この提出期限(3ヶ月)をすぎた場合は、2,000,000 KHR(約500 USD)の罰金が課されることになりますので、ご留意ください。
ドメイン名
2024年4月1日、MOCと郵政省(Mistry of Posts and telecommunication)は共同通達(Notification: 0837)を発表し、現地登録企業がメールアドレスに使用する国内ドメイン".com.kh"に対しても要件を定めています。
※現地登録企業が上記ドメインでのアドレスを持っていない場合は、直ちに郵政省への申請登録を行う必要があります。
Sub-Decree 287に基づき、レベル2の国別ドメイン名には以下が含まれます:
1. 企業または公共企業用に指定された「.com.kh」で終わるドメイン名
2. 組織,団体及び組合のために指定された「.org.kh」で終わるドメイン名
3.「.edu.kh」で終わるドメイン名で、公立・私立の教育機関を表すもの
4. コンピュータ・ネットワーク・サービスを提供する企業または機関を指定する「.net.kh」で終わるドメイン名
5. 省庁や国家機関のために指定された「.gov.kh」で終わるドメイン名
“.gov.kh”で終わるドメイン名を除き、その他ドメイン名の有効期限は登録日から1年間となっており、年会費を支払うことで更新が可能となっています。有効期間満了後に更新料の支払いがない場合は、ドメイン名は一時的に停止され、さらに60日間支払いがない場合、ドメイン名はシステムから削除されます。
また、ドメイン所有者からの要請があった場合または関連法令が改正された場合についても、ドメイン名が削除される場合もあります。
※2023年1月1日以降にADCEを申請する場合は、全ての企業が国内ドメイン名を持つメールアドレスをMOCに提出しなければなりませんので、カンボジアで設立をお考えの企業様はカンボジア国内メールアドレスも設定いただければと存じます。
参考資料 |
以下の資料は、弊社株式会社東京コンサルティングファームで使用している、カンボジア現地法人の登記情報を記入するシートです。法人登記を行うにあたり、申請書類や会社定款に必要な現地法人情報がここに記載されます。
I. カンボジア現地法人の会社名について
| 会社名(英語) | その他 |
① |
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② |
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③ |
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※候補順に上から記入してください。
II. カンボジア現地法人の登記住所について
| 登記住所 |
① |
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② |
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③ |
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III. 授権資本金額について
| 授権資本金額(リエル) |
① |
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② |
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③ |
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※法令上の最低払込資本金400万リエル(約1,000USドル)となっています。また、投資分野によって個別に投資条件という形で最低資本金の要件が設定されているため、 投資検討段階で、確認が必要となります。
IV. 設立時株式振込金額について
| 発行予定株式数 | 一株当たり金額 | 払込資本金額 |
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※株式は一株あたり額面4,000リエル以上で、最低1,000株を発行しなければなりません。最低額面金額以上であれば、10,000リエルや100,000リエルなど、きりの良い数値を設定するのが一般的です。一株あたりの金額を指定しない場合は、自動的に4,000リエルとなります。
V. 株式引受人について
| 株主名 | 株主が法人の | 株主の現住所 | 引受 | 保有割合 |
① |
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② |
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③ |
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④ |
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⑤ |
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| 上記株主名 | 国籍 | 電話番号 |
① |
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② |
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③ |
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④ |
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⑤ |
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※株主は、一人有限責任会社の場合は1名のみ、通常の有限責任会社は2名以上必要です。
VII. 取締役について
| 事業目的 |
① |
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② |
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③ |
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④ |
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⑤ |
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※設立後に追加することもできますが、別途手続きが必要となるため、関係する事業及び今後行う可能性のあるすべての事業目的を記載してください。
設立後の手続き |
商業省において事業拠点の登記が完了した後、会社は規定の期限内に税務当局における税務登録及び労働省における事業所開設の申請を行わなければなりません。各種登録にかかる申請期間は通常下記の通りですが、政治状況や署名権限者の配置換え等の状況により、通常の期間よりも大幅に伸びる可能性も大いにありますので、余裕を持って手続を行うことが必要です。
・ 税務当局での申請: 通常1 カ月〜2 カ月程度
・ 労働職業訓練省での申請: 通常1 カ月〜2 カ月程度
■税務当局における税務登録
2016年1月1日から施行された財政法(The Law on Financial Management)により、これまでの納税制度が大きく改正され、個人事業主を含む、納税者に該当するすべての会社は、商業省において商業登記が承認された日から15日以内に税務当局にて税務登録を行う必要があります。さらに、税務登録を申請する際に、税務当局もしくは会社所在地を管轄する所轄税務支局にパテント税(Patent Tax)及び付加価値税(VAT)の納税者登録を実施し、パテント証明書及び税務登録番号(VAT TIN番号)を入手しなければなりません。
この新納税制度下においては、個人事業主も実質的に法人等と同様の税制をとることになり、会計の記帳を行い、正確な記帳に基づいて申告納税を行うこととなりました。
カンボジアにおける税務登録申請書類や納税金額は、課税制度の分類によって異なります。カンボジアにおける課税制度は、申告納税方式及び推定課税方式に分類されましたが、2016年の財政管理に関する法律第10条に基づき申告納税方式に一元化されました。現在、申告納税方式下での納税者は、小規模納税者、中規模納税者及び大規模納税者の3種類に分類されています。税務登録申請書類及び納税金額は、各納税者の種類によって異なります。
[納税者の種類]
2016年よりカンボジアの課税制度は申告納税方式に一元化され、納税者は、小規模納税者、中規模納税者及び大規模納税者の3種類に分類され、具体的には以下の通りとなります。
小規模納税者(Small Taxpayer)
個人事業主またはパートナーシップであり、以下のいずれかを満たすもの
・ 年間売上高が2.5億リエル(約62,500USドル)超、7億リエル(約175,000USドル)以下
・ 業年度内に終了するいずれかの連続する3カ月間の売上高が6千万リエル(約15,000USドル)超
・ 翌月以降3カ月間の予想売上高が6千万リエル(約15,000USドル)
中規模納税者 (Medium Taxpayer)
下記のいずれかを満たすもの
・ 法人として登記されている企業
・ 年間売上高が7億リエル(約175,000USドル)超、20億リエル(約500,000USドル)以下
・ 地方政府、商工会、協会、非政府組織等
大規模納税者 (Large Taxpayer)
下記のいずれかを満たすもの
・ 外国法人の支店及び駐在員事務所
・ QIP認定企業
・ 年間売上高が20億リエル(約500,000USドル)超
・ 外国の大使館及び領事館、政府機関、国際機関及びその代理機関等
[税務登録]
申告課税方式における小規模納税者、中規模納税者及び大規模納税者に該当するすべての会社、パートナーシップ及び個人事業主は、商業登記関連書類を税務当局に提出し、税務登録を行う必要があります。
税務登録義務を有するすべて者は、所定の税務登録申請書及び必要書類を、直接税務当局において申請を行うか、オンラインにて登録申請を行うことができます。実務上はオンラインにおいて登録申請を行ったとしても、直接税務当局に必要書類等を提出する必要があり、また取締役会や事業主の税務当局への出頭が必要となっているため、オンラインでの申請は行わず、直接税務当局にて登録申請を行うことが一般的です。
税務登録の申請手続きについては、以下の通りとなります。
① 代表者の税務当局への出頭
② 必要書類の準備
③ 必要書類の提出及び納税
④ 税務登録証明書の発行
① 代表者の税務当局への出頭
定款上の取締役会会長、会社のオーナーもしくは組織の代表者が税務登録のために税務当局に出向き、顔写真の撮影及び指紋登録を行う必要があります。外国人である取締役会会長や会社のオーナーがカンボジア国外に住居し、出頭することが困難な場合、取締役会のその他の者に委任することが可能となっています。
出頭による手続が完了されなければ、パテント証明書、VAT証明書、税務登録証明書等の書類が発行されないため、注意が必要です。税務当局に出頭する際は事前予約等必要なく、所要時間は、税務当局の混雑具合によりますが、通常1時間程度で完了します。
② 必要書類の準備
税務登録に関して必要となる書類は以下の通りです。
・ 所定の申請書
・ 商業登記証明書等の各種証明書類の原本
・ カンボジア公認銀行の銀行残高証明書
・ 代表者のパスポート及びビジネスビザの写し(青のインクによる直筆の署名及び拇印を付したもの)
・ 代表者の写真(35mm×45mm、裏面に署名)
・ 代表者の居住証明書の原本
・ 事務所賃貸契約書の写し
・ 事務所オーナーが支払っている固定資産税の納税証明書の写し
税務登録に必要となる所定の申請書には、下記の情報を記載する必要があります。
・ 事株主及び取締役の情報
- 親会社代表のメールアドレス
- カンボジア国内の住所
- 会社からの給与額
- 個人のメールアドレス及び電話番号
- 代表者住所の毎月の資料
・ 登録事務所情報
- 事務所の電話番号
- 代表者の電話番号
- 事務所の代表メールアドレス
- 事務所の毎月の資料
・ 従業員情報
- 従業員の総数
- 従業員の賃金総額
・ 銀行情報
- 銀行名
- 銀行口座名
- 銀行口座情報
・ 売上に関する情報
- 最初の販売又はサービス提供日
- 過去3カ月及び12カ月の売上実績(リエル)
- 今後3カ月及び12カ月の売上実績(リエル)
代表者がカンボジア国外に住居しており、現地における居住証明書を取得できない場合は、カンボジア国外に居住している旨を記載した文書を事業者が作成し、税務当局に提出することにより居住証明書と認められます。
また、アパートやマンションなどの住宅の一室を登記住所とすることは認められていますが、商業省又は税務当局において登録が拒否されるということが稀に発生します。また、アパートやマンションを登記住所として使用すると、アパートやマンションのオーナー側に源泉徴収税などの税負担が発生するため、登記住所とすることを好まず、税負担の分だけ賃貸料を増額し、企業側のコスト増となるケースもあります。
③ 必要書類の提出及び納税
代表者の出頭や必要書類の準備を完了した後、税務当局の納税窓口にて納税を行います。新規登録の際には、40万リエル(約100USドル)を納付する必要があります。
加えて、税務当局に印紙税(Stamp Tax)の納付が必要です。印紙税は100万リエル(約250USドル)となっており、税務当局から領収書が発行されます。また、定款や商業登記証明書等の各種商業省発行書類にステッカーが貼られ、ステッカー費用として1万5千リエル(約3.75USドル)を支払う必要があります。
④ 納税登録証明書の発行
税務当局へ出頭し、写真撮影及び指紋採取が完了ており、税務登録に関するすべての必要書類が提出された後、約10営業日で税務登録が完了します。しかし、実際は1カ月から2カ月程度の期間が必要となります。また、税務登録が完了した後、税務当局の担当者が会社現地を調査し、場所の写真撮影及び住所のGPSデータを取得する必要があり、その際に税務登録完了後のすべての正式書類を届けるものしています。
税務登録を完了し、後述するパテント登録及びVAT登録の完了後に、以下の正式書類が発行されます。
・ 税務登録証明書(納税登録カード)
・ 税務申告に関する通知
・ パテント証明書
・ VAT登録証明書
[パテント登録]
新規に税務登録を行うすべての法人、パートナーシップ及び個人事業主は、パテントの登録及び納付を行い、パテント証明書を入手しなければなりません。パテント税は、納税者の種類に基づいて、事業活動に対して課税される税金です。
パテント税は以下の要件に基づいて納税されます。
・ 複数の事業活動を有する納税者は、それぞれの事業活動に対してパテント税を支払う必要があります。
・ 異なる複数の市や県などの場所において、同じ事業活動を行う支店、倉庫、工場などを有する納税者は、それぞれの市または県においてパテント税を支払わなければなりません。同じ市または県内において複数の支店、倉庫、または工場を有する場合については、別途パテント税を支払う必要はありません。
パテントの登録及び納税の申請手続きは、まず税務当局に税務登録申請書提出し、パテント税を納付する必要があります。基本的には新規税務登録申請と同時に行われます。
パテント税の納付金額は納税者の種類及び事業活動の数により異なりますが、各事業活動に対する納付金額は以下のとおりです。また、パテント証明書は毎年更新する必要があり、上記納税額は毎年発生します。
・ 小規模納税者の納税金額は、4万リエル(約100USドル)
・ 中規模納税者の納税金額は、120万リエル(約300USドル)
・ 大規模納税者の納税金額は、20億リエルから100億リエルの売上を有する場合は300万リエル(約750USドル)、100億リエル以上の売上を有する場合は、500万リエル(約1,250USドル)
上記のパテント税が納税された後、パテント証明書が発行されます。通常、税務登録及びVAT登録が完了し、税務登録証明書及びVAT登録証明書等と同時に発行されます。
[VAT登録]
パテント登録に加え、申告納税方式において納税者に該当するすべての事業者はVATの登録を行わなければなりません。対象事業者は、業務開始時点もしくは納税者が課税対象者となってから 30 日以内にVAT登録を行う必要がありますVATの登録申請手続きに関しては、税務当局へ所定の税務登録申請書を提出する必要があります。
VAT証明書は、通常、税務登録手続が完了し、税務登録証明書等と同時に発行されます。
■労働職業訓練省における事業所開設申請
商業省での登記及び税務当局での税務登録完了後、カンボジア労働法が適用されるすべての事業者は、企業又は事業所を開設する前に労働職業訓練省(Ministry of Labor and Vocational Training、以下「労働省」)に書面にて事業所開設申告を行う必要があります(労働法17条1項)。
また例外として、常時8人以上の労働者を雇用するわけではなく、かつ、機械設備を使用していない事業者は、 企業又は事業所の実際の開設日から30日以内に、労働省に申請書を提出する必要があります(労働法17条2項)。
労働省での申請は、通常1カ月から2カ月程度必要となりますが、祝日が重なる時期や、省内の局長等の人事変更、申請手続、必要書類の変更が実施された場合などに、完了までの期間が長期化する可能性があります。
[所轄担当窓口の特定]
事業所の場所及び従業員数により、申請を行う窓口が異なります。申請窓口は以下の通りになります。
【事業所開設申請の担当窓口】
特別経済区(SEZ)入居企業 | 特別経済区内の労働省窓口 |
従業員数100名以下 | 所轄地区の労働省窓口 |
従業員数100名超 | 労働省本局 |
[申請書類の準備]
労働省への手続きは、以下の3つの申請を行う必要があります。
① 事業所開設申告(Registration for Opening of Enterprise、従業員登録を含む)
事業所の開設、従業員の採用を労働省に届け出る手続き
② 会社台帳登録(Registration of Enterprise Ledger)
労働省からの監査の際、監査内容を記載する台帳発行の手続き
③ 従業員給与台帳登録(Registration of Payroll)に関する申請
従業員の給与を記載する台帳を発行する手続き
会計システムや勤怠管理システムなどを使用し管理する場合、別途許可を得る手続きが必要
なお、申請書類はすべてカンボジアで記載される必要があります。
[申請費用の納付]
労働省に支払う申請費用は、省令にて正式な費用が記載されています。申請費用は従業員数により異なりますので、注意が必要です。
【従業員数が7名以下の事業所】
申請手続き | 費用 | 期間 |
事業所開設申告 | 2万リエル(約5USドル) | 日数:15日 |
会社台帳発行 | 2万リエル(約5USドル) | 日数:7日 |
従業員給与台帳発行 | 4万リエル(約10USドル) | 日数:7日 |
【従業員数が8名以上100名以下の事業所】
申請手続き | 費用 | 期間 |
事業所開設申告 | 3万リエル(約7.5USドル) | 日数:15日 |
会社台帳発行 | 4万リエル(約10USドル) | 日数:7日 |
従業員給与台帳発行 | 6万リエル(約15USドル) | 日数:7日 |
【従業員数が101名以上500名以下の事業所】
申請手続き | 費用 | 期間 |
事業所開設申告 | 10万リエル(約25USドル) | 日数:15日 |
会社台帳発行 | 8万リエル(約20USドル) | 日数:7日 |
従業員給与台帳発行 | 12万リエル(約 30USドル) | 日数:7日 |
【従業員数が501名以上の事業所】
申請手続き | 費用 | 期間 |
事業所開設申告 | 20万リエル(約50USドル) | 日数:15日 |
会社台帳発行 | 8万リエル(約20USドル) | 日数:7日 |
従業員給与台帳発行 | 12万リエル(約30USドル) | 日数:7日 |
[証明書類等の発行]
事務所開設の申請後、労働省所轄から以下の認証を受けた証明書類が発行されます。
・ 事業所開設証明書
・ 従業員登録証明書
・ 会社台帳
・ 給与台帳(又は他システムにおける給与処理承認証明書)
■労働職業訓練省におけるその他の登録事項
[外国人労働許可関係]
外国人の雇用に関して、カンボジア人に資格及び専門知識を有する者がいないときには、必要な資格及び専門知識を有するカンボジア人以外の外国人を雇用することがでます。カンボジア人従業員を雇用する場合、人数制限等はありません。外国人を雇用する際、下記の要件を満たす必要があります。
・ 合法的にカンボジアに入国している
・ 労働許可証を保有している
・ 有効な居住許可を有している
・ 有効なパスポートを保持している
・ 適切な評価と規律を有している
・ 自らの職業を為し得るだけ健康で、伝染病を有していない
また外国人の雇用は、原則としてカンボジア人従業員数の10%以下のでなければいけません。10%の内訳は以下のとおりです。
・ 外国人オフィススタッフ3%
・ 専門知識を有する外国人従業員6%
・ 通常外国人従業員1%
ただし、人数の少ない事務所では外国人従業員数がカンボジア人従業員数の10%を超える場合も多くあり、従業員割当申請の際に、外国人従業員の役割、専門知識、会社にとっての重要性を明確に証明することで、労働省に対して特例許可の手続をとることができます。
従業員割当及び労働許可の手続きにかかる期間は8日間となっていますが、労働省担当者によると従業員割当は9日間、労働許可の取得には15日間必要であるとされています。実務上は、15日間を超える場合が多くなっており、特に申請が集中する時期(毎年3月頃)は、労働許可の取得まで数ヶ月かかる場合もあります。
労働許可取得の手続きは、以下の通りとなります。
① 従業員割当申請(Quota)
② 労働許可証、雇用カードの申請
③ 申請費用の支払い
④ 申請完了
① 従業員割当申請
外国人従業員の労働許可の発行を受けるためには、事前に労働省に対して事業所開設申請を行っている必要があります。事業所開設の申請が受領された後、従業員割当表、労働許可発行申請書、健康診断や登録料支払いなどの手続を完了させる必要があり、すべての手続きが完了した後に、労働許可が発行されます。
労働省は、外国人の雇用・労働を管理するため、2016年9月より電子化による外国人労働のデータ管理システム(The Foreign Worker Centralize Management System、以下FWCMS)を労働省ホームページ(www.fwcms.mlvt.gov.kh)にて運用しています。事業者は、従業員割当表及び外国人従業員の労働許可の申請を、上記のホームページにより行わなければなりません。
事業者は、申請の際に雇用している外国人従業員及びカンボジア人従業員の給与や職務内容などの情報を申請書に記入し、労働省に提出する必要があります。すべての企業は、FWCMSホームページにおける従業員割当の申請において、以下の情報を記入し、必要書類を添付した上で登録を行わなければなりません。
・ 商業登記証明書の詳細情報
- クメール語及び英語での社名(商業登記証明書に記載されているものと同様の社名)
- 登録番号
- 登録日付
- 会社の形態
- 社名の省略(TCF等)
- 商業登記証明書の添付
・ パテント証明書の情報
- クメール語及び英語での企業主の名前(パテントでの名前と同様)
- 性別
- 国籍
- 主な事業内容
- VAT番号
- 会社住所
- メールアドレス(ログイン時のユーザーIDとなる)
- 暗証番号
- 携帯電話番号
- パテント証明書の添付
・ 従業員の移動に関する申請書の情報
- 申請書の登録番号
- 申請書の登録日付
- カンボジア人従業員数
- 外国人従業員数
- 従業員の移動に関する申請書の添付
・ 従業員割当申請の情報
- 以下の表における、カンボジア人及び外国人従業員の、事務所員、専門的従業員、非専門的従業員それぞれの現在及び追加従業員数の記入
番号 | 職種 | カンボジア人
従業員 | 外国人従業員 | ||||
現在 | 追加 | 合計 | 現在 | 追加 | 合計 | ||
1 | 事務所員 |
|
| 0 |
|
| 0 |
2 | 専門的
従業員 |
|
| 0 |
|
| 0 |
3 | 非専門的
従業員 |
|
| 0 |
|
| 0 |
合計 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | |
② 労働許可、雇用カードの申請
従業員割当申請完了後、労働省・職業及び手工芸局に労働許可証及び雇用カードを申請しなければなりません。FWCMSホームーページ(www.fwcms.mlvt.gov.kh)に以下の情報を記入し、必要書類を添付した上で申請を行う必要があります。
・ 年度の選択
・ 就業している会社名
・ パスポート等情報
- 氏名
- 性別
- 生年月日
- 身長
- 国籍
- 出生国
- パスポート番号
- 発行所
- 発効日
- 失効日
・ ビザ情報
- ビザ番号
- 発行所
- 発効日
- 失効日
- 入国日
・ 滞在許可
- 滞在許可の種類(永久滞在・一時滞在)
- 滞在許可番号
- 発行所
- 発効日
・ 労働契約及び学歴情報
- 労働契約期間
- 雇用開始日
- 地位(職位)
- 給与額(USドルでの月学給与)
- 学歴レベル(学士、修士、博士等)
・ 健康診断書
- 発行所(通常労働省付属の労働医療局)
・ 個人情報
- 携帯電話番号(SMSが可能なもの)
- 連絡可能なその他の電話番号
- 現在の住所
- メールアドレス(ログイン時のユーザーIDとなる)
- 暗証番号
添付する必要がある書類は以下の通りとなります。
・ パスポートの写し
・ ビザの写し
・ 滞在許可証
・ 労働契約書
・ 健康診断書(労働医療局発行の診断書又は労働医療局より認証を受けた診断書)
・ 居住証明書
・ 写真
滞在許可の提出は、法令上要求されていませんが、オンラインシステムにおいては記入すべき事項となっています。現在のところ、居住証明書がある場合、又は企業の所在地内に滞在する外国人の場合は、滞在許可の提出は不要とされています。
また、健康診断証明書の発行所の選択肢として、労働省付属の労働医療局及びその他が表示されますが、その他とされる機関は明確になっておらず、私立病院や医療機関等を指すものとされています。労働医療局から発行される健康診断証明書を有していない外国人は、私立医療機関等において健康診断を行い、オンラインシステムによって当該局に対する2万リエル(約5USドル)の費用を支払い労働医療局から診断書の認証を受ける必要があります。
③ 申請費用の支払い
従業員割当及び労働許可証雇用カードの申請に関わる費用として、以下の通り支払いを行う必要があります。
費目 | 費用 | 期間 |
証書発行費用 | 20USドル | 年間 |
雇用契約書登録費用 | 10USドル | 登録時のみ |
従業員割当申請費用 | 50USドル | 年間 |
労働医療局での健康診断費用 | 25USドル | 年間 |
労働許可証、雇用カード発行費用 | 130USドル | 年間 |
システム関連追加費用 | 30USドル
(及びVAT10%) | 年間 |
労働医療局発行以外の健康診断書認証費用 | 2万リエル
(約5USドル) | 年間 |
④ 申請完了
申請書類の提出及び申請費用の支払後、労働省より従業員割当申請に対する許可及び労働許可証・雇用カードが交付されます。
[社会保険制度への加入]
2002年9月の社会保障法(Law on Social Security)により、労働法の適用を受ける企業等で雇用される従業員に対する労働災害(Occupational Risk)、従業員医療(Employee Healthcare)及び年金(Pension Fund)の各制度が規定されました。社会保険制度は、国家社会保険基金(National Social Security Fund、NSSF)によって運営され、1名以上の従業員を雇用する企業は、従業員の雇用状況をNSSFへ登録することが義務付けられており、登録後30日以内に保険料を納付するとともに、各労働者に登録番号を伝える必要があります(保険料などの詳細は、第7章労務3参照)。また、2019年1月時点では、年金制度の運用は開始されていません。
■事業ライセンスの取得
事業活動の業種や業態によっては、各担当省庁から個別にライセンスを取得する必要がある業種や業態があります。個別にライセンス取得が必要な業種や業態の判断基準や手続等は、各省庁発行 の省令、通達等において定められています。
【個別にライセンスが必要となる業種の例】
業種 | 担当省庁 | 備考 |
飲食店 | 観光省 | 審査あり |
ゲストハウス・ホテル | 観光省 | 審査あり |
ホテル | 観光省 | 審査あり |
旅行代理店 | 観光省 | 保証金の支払いが必要 |
不動産サービス業 | 経済財政省 | 無犯罪証明書の提出が必要 |
通関業 | 関税・消費税総局 | 通関に関する専門家が必要 |
運送業 | 公共事業運輸省 | トラック等の登録も必要 |
診療所、病院 | 保健省 | 代表者はカンボジア国籍である必要あり |
薬局 | 保健省 | 医薬品や化粧品の調査あり |
海外人材派遣業 | 労働職業訓練省 | 代表者はカンボジア国籍である必要あり |
教育機関 | 教育・青少年・スポーツ省 | 審査あり |
実際の手続等については、法律と運用との間に乖離があるため、ライセンス取得の際には、関連省庁又は外部専門家に問い合わせることをお勧めします。
M&Aによる進出
カンボジアにおいては、リスク回避の観点から、既存事業の株式の一部又は全部を買収するM&Aによる進出も増加傾向にあります。現在は、銀行や金融業を中心に、製造業などにより、株式の一部を買収しての業務提携が見られます。日本からの投資では、製造業を中心に新規工場の設立といったモデルが多くなっていますが、第3次産業へのM&A型の進出検討も増加傾向にあります。
カンボジアにおけるM&Aの手法としては、下記の方法が考えられます。
1. 対象企業の株式を取得
2. 対象企業の事業、資産及び債務を譲り受ける事業譲渡
3. 対象外者との合併
ここでは、非公開の有限責任会社に関して、それぞれの方法の概要を紹介します。
1. 対象企業の株式を取得
株式取得は、更に以下の2つの方法に分けることができます。
・ 既存の株主から既に発効されている株式を取得する
・ 新たに発効される株式を取得する方法
・ 既存の株主から既に発効されている株式を取得する
企業の株式譲渡は、会社法および定款に定められた株式譲渡に関する制限に従って行われなければならないため、対象企業の定款の株式譲渡制限に関する記載を確認する必要があります。中小企業の場合、設立時の定款の準備において、代理人に一任したり、広く使用されているフォーマットをそのまま使用したりと、記載事項があまり理解されていないケースが多くありますので、事前の確認が重要になります。
また、株式譲渡に基づき、企業の当該株式の名義を変更する際は、譲渡人及び譲受人が共同で申請を行う必要がありますので、注意が必要です。
適格投資プロジェクトを取得している企業が対象の場合で、株式譲渡により経営権を取得した際、譲渡日から10日以内に譲受人の名称、住所等を監督省庁に届け出る必要があります。
・ 新たに発効される株式を取得する方法
対象企業が新たに株式を発行するためには、対象企業の取締役又は取締役会が、以下について決定を行う必要があります。
a. 株式の発行時期
b. 株式の発行価格
c. 株式を発行する相手
d. 株式の対価として現物出資又は役務提供を受ける場合は、その価額
また、定款又は社内規則に新株発行についての規定がある場合には、その規定に従って新株発行の手続きを進めなければならないため、対象外者の定款及び社内規則の記載を確認する必要があります。定款において特定の種類株式に対する新株引受権が規定されている場合には、当該種類株主に当該種類の新株引受権を付与すること無く新株を発行することはできないため、留意が必要です。
新株式は、対価の支払いが完了するまでは発行することができません。株式の対価としては、金銭、商標、著作権、特許権などを含む現物出資や、役務の提供による形態でも可能となります。しかし、公開有限責任会社の場合は、役務を対価として新株を発行することはできません。現物出資及び役務の提供については、取締役又は取締役会がその価額を決定することができ、その価額が最終的なものとなります。ただし、不正行為が介在している場合は、この限りではありません。
2. 対象企業の事業、資産及び負債を譲り受ける事業譲渡
事業譲渡の場合は、株式取得とは異なり、譲り受ける事業、資産又は債務を個別に選択することが可能になりますが、これらに関する権利、義務については個別に移転の手続きを行う必要があります。
カンボジアの会社法においては、事業譲渡に関する定めは存在しないが、当該事業譲渡が、企業財産の全部又は重要な一部の譲渡に該当する場合には、定款の定めによっては取締役が株主総会に対して提案を行い、株主総会の決議が必要となる可能性があるため、事前に定款の記載を確認する必要があります。
3. 対象企業との合併
カンボジアの企業は、他の企業と合併し1つの企業になる吸収合併、又は2つ以上の企業が合併し新しい企業を構成する新設合併が可能になります。合併により解散して法人格が消滅する企業は消滅企業となり、合併後に事業を継続する企業は存続企業となります。
会社法により定められている合併の手続は、以下の通りとなります。
a. 合弁契約の決議
b. 消滅企業の株主に対する株主総会の通知の送付
c. 商業省への届け出
a. 合弁契約の決議
各合併当事企業は、自身の取締役会において、定款に別段の定めがある場合を除き、過半数による決議により合併契約の議案を承認します。
合併契約には、以下の事項を定める必要があります。
・ 合併の条件
・ 存続企業の定款
・ 各消滅企業の各種類の株式を存続企業の株式に変換する方法
・ 消滅企業の株式が存続企業の株式に変換されない場合には、株主が合併に際して受領する金銭、権利、証券又は他の財産の数量
・ 各種類の株主が合併についての決議を判断する際に入手すべきその他の情報
・ 合併を完了し、存続企業のその後の管理・運営を定めるために必要な規定の詳細
b. 消滅企業の株主に対する株主総会の通知の送付
存続企業の株主は、合併についての議決権を有している消滅企業の株主に対して、合併の承認に関する株主総会の通知を送付する必要があります。消滅会社の株主総会による承認決議には、決議に参加した株主の総議決権の3分の2を下回らない賛成が必要になります。
合併承認決議の前から株式を保有し、合併に賛成の投票を行わなかった株主は、c.の商業省に対する届出が行われた後、存続企業に対して書面による通知を行い、価格査定請求と同時に株券を返還することにより、企業と株主との最長90日間の交渉を経て、最終的には裁判所が決定した金額を当事者が受け取ることができます。
c. 商業省への届け出
存続企業の取締役は、商業省に対して、合併契約書、取締役会決議書、株主総会議事録、存続企業の定款等の届出を行うひつようがあります。各書類を提出後、商業省から合併証明書が発行されます。合弁証明書に記載された日付において、以下の効力が発生します。
・ 消滅企業の合併及び同一の会社としての継続性
・ 消滅企業が所有する財産及び債務が、存続企業の財産・債務として承継
合併により設立される法人が、適格投資プロジェクト(QIP)の投資優遇措置及び投資保証の承継を望む場合、合併及びこれらの承継の日から10日以上前までに、監督省庁に対して書面で申請する必要があります。
会社の清算及び撤退
現地法人の収益性の悪化や本店による支店・駐在員事務所の閉鎖の決定等により、カンボジアから事業を撤退する場合には、債権者への返済や残余財産の分配を適法に行い、会社を清算する必要があります。
会社法において、株式を発行していない会社は、全取締の決議によっていつでも清算をすることできるとされています。また、資産及び負債を有しない会社は、株主総会特別決議によって清算することできます。二種類以上の株式を発行している会社は、議決権の有無にかかわらずすべての種類株主総会おける特別決議によって、清算することができます。各種清算手続き完了後、会社は、清算証明書に記載された日付において、消滅したものとみなされます。
カンボジアには、現地法人や支店、駐在員事務所の清算手続きを詳細に規定する法律はなく、商業省は過去国際的に実践されている手続きの採用を認めています。清算の大まかな流れは、下記の通りとなります。
① 税務当局より税務清算証明書の取得
② 商業省での登録の抹消
③ 税務当局への通知
④ 労働省への通知
⑤ その他関連機関への通知
税務当局より税務清算証明書(Certificate of Tax Situation、CTS)の取得
商業省での商業登録の抹消に先立ち、税務当局から税務清算証明書を取得する必要があります。税務当局での税務清算手続きの流れは、以下の通りとなります。最後の手続きのみ、税務清算証明書を取得し、商業省での商業登録抹消手続き完了後の税務当局での手続きとなります。
【税務当局での税務清算フロー】
税務清算証明書はすべての税務負債を完済した後でなければ発行されないため、税務調査(通常包括的税務調査)が未完了のすべての事業年度について税務当局による税務調査を受け、すべての未清算の税金負債を完済しなければなりません。
税金清算証明書を取得するために、会社は税務当局による税務調査を受けるため、会社は税務当局に登録の抹消とすべての調査未了年度についての包括的税務調査の実施を要請するレターとともに、税務登録抹消申請書を提出する必要があります。
この申請書とレターの提出時以降、税務申告書を提出しなくても問題とならないように、レターの提出時点で会社に課税対象となるような費用(給与や家賃など、給与税や源泉徴収税の対象となる費用)が発生しないように準備してお必要があります。その上で、レターに最終の月次及び年次税務申告書を税務当局に提出済みである旨も記載しておきます。
税務当局はすべての調査未了年度に対して税務調査を実施する必要があるため、税金清算証明書を入手するまでには、実務上1年以上の期間がかかることがあります。税務調査では、税務当局の調査官が現在までのすべての会計記録を検証し、その中で解消すべき税務上の争点が発見された場合、その証拠となる特定の収益や経費項目等の取引、金額等の実在性や網羅性を裏付ける根拠となる資料の提出を要求されます。
上記の証拠となる資料が欠けている場合や、会社が税務調査に適切に対応できていない場合等について、重点的に検証されます。その結果、根拠が不足している部分について、税務当局から巨額のみなしでの一方的な追徴課税を受けることが多々ありますが、その追徴課税は必ずしも正確で、実情を反映しているものとは限りません。ここで最終的な合意に至らない場合は、仲裁機関や司法機関に場所を移し、判断を仰ぐ可能性があります。しかし、仲裁機関はあるものの実務上使用されるケースはほとんどありません。またカンボジアには税務上の論争を扱う税務裁判所や独立した法廷が存在せず、このような論争に関する最終的な決定権は税務当局自身にあります。そのため、根拠に乏しい一方的なあらゆる追徴課税項目の全額について支払わなければなりません。
以上の税務調査プロセスを考慮すると、会社は税務当局に税務調査開始の要請を行う前に、以下のような対応を行うことが有効となります。
・ 過去の税務申告について見直し
過去の税務申告について、税金清算の手続きにおいて顕在化しうる潜在的な納税漏れの有無を確かめ、その金銭的な影響を検討します。
・ 修正申告及び未払税金の支払い
過去の税務申告について見直しを行った結果、申告漏れや未払いの税金がある場合、税務調査後の追徴税額通知にて税務当局から指摘される前に、修正申告を行い、税務当局に納税します。税務調査にはかなりの時間がかかるため、先に修正や納税を行うことで延滞利息(月2%、単利)を最小化することができます。
・ 申告、納税は行っているが資料が不足している場合
証憑等の証拠書類に不足があると追徴課税に直結する可能性があるため、十分な証拠書類を適切に用意し、過去の月次、年次税務申告で申告した内容を完全に裏づけられるようにしておく必要があります。場合によっては、仕入先等にインボイス等の証憑を再発行してもらうよう調整する必要があります。
また、税務当局からの税金清算証明書は税務調査の完了後に自動的に発行されるわけではなく、一般的に税金清算証明書の取得には、税金清算証明書の発行を要請するレターの提出など税務当局とかなりのコミュニケーションが必要となります。清算手続きをできるだけ早く進めるためには、上記事項を認識し、定期的かつ密接に税務当局へ働きかけることが重要となります。
商業所での登録の抹消
株式会社は、株主総会特別決議による承認を受けることで解散することができます。
会社は所定の書式に従って、清算申請書(Articles of Dissolution)を取締役に送付し、清算申請書を商業省に提出後、清算証明書(Certificate of Dissolution)を発行が発行されます。清算証明書に記載された日付をもって会社は解散することになります(251条)。
会社の清算における大まかな流れと各検討項目は以下の通りです。
- A) 清算及び解散の提案及び株主総会の招集
- B) 取締役への決議書の送付
- C) 債権者への通知
- D) 負債の支払い
- E) 資産の分配
- F) 清算申請書の発行
- G) 商業省による認証
- H) 商業省における清算手続きの完了
A) 清算及び解散の提案及び株主総会の招集
取締役又は株主総会における議決権を有する株主は、会社の任意清算及び解散を提案することができます。任意清算及び解散の提案が行われる株主総会の招集通知には、清算及び解散の条件を記載しなければなりません。財産又は債務を有する会社で、以下の場合、全ての種類株主総会における特別決議によって解散することができます。会社が二種類以上の株式を発行している場合、種類株主が議決権を有しているか否かに関わらず、すべての種類株主総会における特別決議が必要となります。(252条)。
・ 株主総会特別決議又は株主が取締役に対してすべての会社財産を分配し、すべての会社債務を弁済する権限を付与する株主総会普通決議が可決された場合
・ 商業省担当者に対して清算申請書を提出する以前に、会社財産を分配し、会社債務を弁済した場合
B) 取締役への清算主旨書の送付
清算及び解散についての株主総会の承認決議が行われた後、会社は規定のフォーマットにより清算主旨書(Statement of Intent to Dissolve)を発行し、取締役は商業省に提出します。商業省は清算主旨書を受理した後、清算主旨証明書(Certificate of Intent to Dissolve)を発行します。商業省が清算主旨証明書を発行してから、清算証明書が発行されるまでの間、会社の法人格は存続するものとされており、会社を清算するために必要な業務以外の活動は停止となります(253条)。
C) 債権者への通知
清算主旨証明書が発行された後、取締役は、ただちに債権者に清算又は解散の意思を通知しなければなりません。また、清算の意思は2 週間以内に、会社の登記上の事務所の所在地において、発刊されている新聞又は商業省の規定する他の刊行物等で公告する必要があります(254条)。
D) 負債の支払
清算主旨証明書が発行された後、会社は以下の手続を踏まなければなりません(255条)。
・ 資産の回収
・ 株主に現物による分配が行われる予定のない資産の処分
・ すべての債務の履行
・ その他清算に必要なすべての業務の遂行
E) 資産の分配
清算の旨を通知し、すべての債務の弁済又は免除が行われた後、会社は、金銭か物品かにかかわらず株主の残余財産分配権に基づいて残存する資産を分配します(255条)。
F) 清算申請書の発行
清算の手続が完了した後は、会社は清算申請書(Articles of Dissolution)を作成し、取締役に送付しなければなりません。取締役は清算申請書を商業省に提出し、清算証明書を発行することになります(257条)。
G) 商業省による認証
税務当局からの税務清算証明書を取得後、会社は商業省に以下の書類を提出して、商業登記の抹消を行う必要があります。
・ 清算申請書/商業省のForm C
・ 登記抹消に関する株主/本店の決議書の原本(要公証)
・ 商業省で登録されている最新の定款のコピー(支店、駐在員事務所の場合は不要)
・ 清算人指名の承諾レターの原本
・ 最新の商業省の認可レター(変更ある場合)
・ 商業省が発行した会社設立証明書(Certificate of Incorporate)の原本
・ 税金清算証明書(Certificate of Tax Situation)の原本
・ 商業省が発行した会社設立認可レターのコピー
・ 最新の年次事業申告書(Annual Declaration of Commercial Enterprise, ADCE)のコピー
・ 最新のパテント証明書のコピー
・ 商業省に申請書類を提出する代理人に対する委任状の原本
・ 商業省に申請書類を提出する代理人のパスポート又はカンボジアIDカードのコピー
会社はすべての必要書類を揃えて商業省に提出し、申請手続きに対する手数料48万リエル(約 120USドル)を支払います。商業省は申請書類一式の受領日から5営業日以内に申請された清算証明書を発行するとされていますが、実務上は数週間の日数を要する場合があります。
H) 清算の完了
清算証明書に記載された日付をもって、会社の法人格が消滅したものとみなされます。(257条)。
なお、清算及び解散に関する規定は、裁判所に破産を申し立てた会社には適用されません(258条)。
税務当局への通知
現地法人や支店、駐在員事務所は商業省からの清算証明書を取得後、15日以内に以下の書類とともに通知レターを税務当局に提出する必要があります。
・ 商業省の清算証明書
・ 当初取得した税務登録抹消申請書
・ 届出済みのレター
・ 税務清算証明書
労働省への通知
現地法人や支店、駐在員事務所は商業省からの清算証明書を取得後、30日以内に以下の書類とともに通知レターを労働省に提出する必要があります。
・ 商業省からの清算証明書のコピー
・ 最新のパテント証明書のコピー
・ 商業省が発行した会社設立証明書のコピー
・ 税務清算証明書のコピー
労働省からは認可レターなどは発行されません。そのため、労働省の押印又は職員の署名がある書類を1セット控えとして返却するように要請するため、通知書類を3セット準備する必要があります。提出済み通知レターの控えが、清算における義務を果たしたことを証明する唯一の書類となります。また、通知レターの提出にあたり手数料はかかりません。
その他関連機関への通知
・ 国家社会保険基金(NSSF)への通知
社会保険調査官又は国家社会保険基金長官は、会社の清算について必要な情報を、清算後30日以内に国家社会保険基金に提供することを要請するこができます。
特別な規制はありませんが、国家社会保険基金に登録している現地法人や支店、駐在員事務所はその閉鎖を決定した場合、閉鎖の理由と国家社会保険基金への拠出を停止する旨を記載した通知書を国家社会保険基金に提出することが望ましいです。
労働省への通知手続き時と同様、国家社会保険基金からは認可レターなどは発行されません。そのため、国家社会保険基金の押印又は職員の署名がある書類を1セット控えとして返却するように要請するため、通知書類を3セット準備する必要があります。提出済み通知レターの控えが義務を果たしたことを証明する唯一の書類となります。また、通知レターの提出にあたり手数料はかかりません。
・ 工業・手工芸省(Ministry of Industry and Handicraft, MIH)への通知
手芸工場含む工場を有しており、事業を清算する場合には、工場の所有者は閉鎖日の1ヶ月前までに工業・手工芸省に書面で通知しなければなりません。
会社は商業省の清算証明書を取得後、商業省が発行した会社設立認可レターのコピー及び税務清算証明書のコピーと共に、通知レターを提出する必要があります。
労働省への通知手続き時と同様、工業・手工芸省からは認可レターなどは発行されません。そのため、工業・手工芸省の押印又は職員の署名がある書類を1セット控えとして返却するように要請するため、通知書類を3セット準備する必要があります。提出済み通知レターの控えが義務を果たしたことを証明する唯一の書類となります。また、通知レターの提出にあたり手数料はかかりません。
・ 他のライセンス当局
他のライセンス当局に登録している現地法人や支店、駐在員事務所は、商業省からの清算証明書の取得後に、事業閉鎖について当該ライセンス当局への通知又は認可申請が必要になります。
[裁判所の監督下で清算を行う場合]
商業省又は利害関係者は、会社の精算手続き中いつでも裁判所の監督下で清算手続きが実施されるように申請を行うことができます。申請者は、商業省に通知する必要があり、取締役は弁護士などの助言を受けることもできます(256条)。
参考文献
・ 法務省「商業規則及び商業登記に関する法律(1999 年)」
https://www.moj.go.jp/content/001224653.pdf
・ 独立行政法人 日本貿易振興機構(JETRO)プノンペン事務所 ビジネス展開・人材支援部ビジネス展開支援課「カンボジア会社設立マニュアル」2021 年 2 月(改訂版) https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2021/5aab0cee7e1f877 e/setsuritsu_202102.pdf
・カンボジア開発評議会(Council for the Development of Cambodia)
https://cdc.gov.kh/
・ Kingdom of Cambodia ‘Business Registrationʼ Ministry of Commerce https://
www.businessregistration.moc.gov.kh
・ Ministry of Labour and Vocational Training https://
・ Mercury General LPC & Partners「カンボジアにおけるM&A について」令和 3 年 3 月更新