投資環境
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投資環境
ビジネスアンケートに見る中国の投資環境
世界銀行と国際金融公社(IFC)が、2020年に「ビジネス環境の現状2020」を共同で発表しています。このアンケートの結果から世界の中国への評価を見ていきます。
中国は、ビジネス環境ランキングの総合順位が189の国と地域中31位で、前年から15つ順位を下げています。BRICSではロシアは28位、ブラジルは124位、インドは63位となっております。さらに日本は29位、韓国は5位であり、BRICSに比べて東アジアの投資環境が一歩先を行く状況にあります。
※2021年9月、世界銀行グループは「ビジネス環境の現状」報告書を廃止することを発表しました。
金融(株式)市場
中国の証券取引所は上海、広東省の深圳市、香港にあります。
次のグラフは、上海証券取引所が公表しているインデックスである上海総合の推移を表しています。上海総合は、人民元建A株(中国本土の投資家および適格海外機関投資家のみ取引可能)と外貨建B株(中国本土の投資家以外の投資家でも取引可能)の両方に連動している1990年を100とした指数です。世界金融危機後の2009年7月に3,400ポイントとなった後、インフレ抑制のための金融引き締めや需要の悪化を懸念して調整局面を迎えました。その後は金融危機対策からの脱却と成長戦略の転換の時期を経て、現在は比較的安定するように推移しています。
【1990年~2024年における上海総合の数値推移】
為替レート
中国の通貨である元(人民元)は、高度経済成長とともに本来の価値は上昇しているはずですが、1ドル=8.28元になるように中国人民銀行が為替市場に介入して、輸出が牽引する経済成長を守ってきました。しかし2005年に中国政府は通貨バスケット制を導入し、人民元の切り上げを行いました。その結果、中国の外貨準備高は膨れ上がり、2000年代後半には日本を抜いて世界で1位となっています。日本円と中国元の関係においては、2020年後半から元高・円安が急激に進んでおり、2025年現在、1元当たり19~20円の範囲で安定をしています。
外国直接投資額(FDI)
外国直接投資額(FDI)は1980年代から2010年代にかけて急増しました。
1980年代から生産拠点に対する投資が活発に行われ、その後2000年代からは中国を巨大なマーケットとして捉え、積極的な市場開拓が行われてきました。
しかし、2020年代に入ると、対中直接投資は減少傾向となります。コロナ禍を経た2023年には、FDIの数値が30年ぶりの低水準となりました。中国政府が自国経済を支えようと、海外からの投資呼び込みに動く中で、厳しい現状が示された形となります。
さらに、2024年以降も米国との貿易戦争が再開されたこともあり、中国に流入する外国資本は引き続き低調が続いています。
国家外為管理局(SAFE)のデータに基づくと、2024年の中国の国際収支における対中直接投資は1,680億ドル(約25兆6,000億円)の流入超過となり、1990年以降の最低水準に落ち込みました。
国別の対中投資では、2024年の1位は香港、2位はシンガポール、5位にアメリカとなっており、日本は7位と前年の4位から順位を後退させています。
中国への投資を巡る弱い統計は、地政学的な緊張や欧米の金利上昇により、外資系企業がいかに中国から資金を引き揚げているかを浮き彫りにしています。
欧米の中央銀行が政策金利を引き上げたのに対し、中国は景気刺激のために金融政策を緩和しました。中国で事業を行っている日系企業を対象に行われた調査によると、2023年はそのほとんどの企業が投資を削減或いは横ばいとし、過半数の企業が2024年について前向きな見通しを抱いていないことがわかりました。
今後も外資企業による資金引き揚げの動きには、十分な注意が必要となります。
【出典:China's State Administration of Foreign Exchange】
インフラストラクチャー
中国は世界と繋がる効率の良い交通ネットワークの整備に力を入れています。近年、中国の総合的立体交通ネットワークの規模及び品質は大幅に向上しています。「14次5カ年計画」期間において、中国の交通運輸の発展は交通強国の建設における新しいステージに入り、ネットワーク構成の最適化・品質と効率の向上・ボトルネックとなっている規制の解消・国際的なルートの保障能力及び接続性レベルの向上をより重視しています。
また、中国共産党は、2025年10月に中央委員会第4回全体会議(4中全会)を開催し、2026年から始まる第15次5カ年計画の基本方針を決定しました。
第15次5カ年計画では、①現代的産業システムの構築し、実体経済の基盤強化、②高水準の科学技術の自立自強の加速、新質生産力の発展を牽引、③強大な国内市場の建設、新たな発展パターン構築の加速、などを上位に掲げ、ハイテク強国の建設を目指す方針が示されました。
■陸上輸送
中国は広大な国土を有する国であり、鉄道及び幹線道路ネットワークを絶え間なく発展させ、総じて東西南北、四方八方につながる多層的な交通ネットワークを建設しています。以下に、中国交通運輸部のデータを参考にその内容を紹介します。
■鉄道
2024年年末で、中国の鉄道営業距離は16.2万kmに達し、鉄道ネットワーク密度は16.9km/1万平方kmに及んでいます。年間鉄道旅客輸送量は43億1,200万人、旅客回転量は1兆5,799億人kmに達しました。2024年、鉄道貨物輸送総量は51億7,500万トン、貨物取扱総量は3兆5,862億トンkmに達した。中国の高速鉄道の建設は世界でもトップクラスで、世界の中でも高速鉄道を有する数少ない国の一つで、高速鉄道営業距離も年々伸ばしています。2024年の高速鉄道営業距離は4万8,000kmに達しました。
■道路
2024年年末で、中国の幹線道路距離は549万400kmに達し、幹線道路密度は57.21km/100平方kmに及んでいます。そのうち、高速道路距離は19万700kmに達しました。2024年、中国全土の幹線道路における旅客回転量は5,117億人km、貨物回転量は7兆6,848億トン/kmに達しました。道路インフラの急速な発展により、道路の通行能力と輸送効率が大幅に向上し、物流業の発展を加速させています。
■船舶輸送
中国の内陸河川航路は距離が徐々に拡大され、航路水準が安定的に向上し、港湾の取り扱い能力が継続して強化され、海運の接続性について引き続き世界一に位置しています。2024年年末で、中国の内陸航路の運航距離は12万8,700km、そのうちクラスⅢ以上の航路は1万6,000kmあります。中国全国に1万トンクラス及びそれ以上は2,971バース、そのうち、沿海港湾の1万トンクラス以上は2,484バースあります。
■航空
2024年時点で、中国境内の運輸空港(香港、マカオ、台湾を除く)は、263ヵ所あります。年間飛行機の飛行回数は延べ539万回にのぼります。中国の民間輸送空港の旅客取扱量は延べ7億3,000万人、貨物/郵便取扱量は延べ898億1,600万トンにのぼります。年間旅客取扱量が延べ1000万人を超える輸送空港は40箇所、年間旅客取扱量が延べ100~1000万人の輸送空港は67箇所、年間貨物/郵便取扱量が延べ1万トンを超える輸送空港は67箇所あります。
2021年時点で、中国の定期路線は計4864便、国内路線は4585便、そのうち、香港・マカオ・台湾路線は25便、国際路線は279便運航されています。国内定期便就航都市(または地域)は244(香港、マカオ、台湾を含まず)に上っています。航空会社の国際定期便は41カ国の60都市に就航し、本土の航空会社の定期便は8つの本土都市から香港に、8つの本土都市からマカオに、本土の航空会社は8つの本土都市から台湾地区に就航しています。2021年末で、中国とその他の国もしくは地域と二者間航空運輸協定を128件結んでいます。
中国は世界レベルの空港群、及び国際ハブ空港を中核に、地域ハブ空港を根幹に、非ハブ空港及び一般空港を重要補完とする国家総合空港体系の建設を加速します。空港数は、400ほどとなり、重点的に京津冀・長江デルタ・粤港澳大湾区・成渝の4大世界クラス空港クラスターの建設、10大国際航空ハブとしての地位を固めます。鄭州・天津・合肥・鄂州など4つの国際航空貨物ハブの建設も推進し、40港前後の地域ハブ空港を配置し発達した世界とつながる航空輸送ネットワークを構築しています。
■電力
2024年末での、中国の発電設備容量は前年同期比12%増の32億5千万キロワットにのぼります。うち、太陽光発電と風力発電の設備容量は13億キロワット超、非化石エネルギーの設備容量が設備総容量を占める割合は50%以上となり、石炭火力発電の発電設備容量の割合40%を上回りました。
カテゴリー別に見てみると、水力発電は全発電設備容量の13%を占める4億4千万キロワット、風力発電は同16%を占める5億2千万キロワット、太陽光発電は同26%を占める8億9千万キロワットとなっています。
■通信
中国は情報通信産業を0から作り上げ、弱みから強みへの転換を遂げています。通信インフラは常に改善されており、自主的なイノベーションの能力が大幅に向上しています。現在、中国ではすでに全世界最大の5Gネットワークを構築しており、2024年時点で基地局は470万以上あり、80%以上の行政地区で5Gが利用できるようになっています。
中国は引き続き固定移動通信の「2ギガビット」のインフラ・ネットワーク設備の建設を拡大し、ユニバーサル通信サービスを深化させ、アプリケーションの革新に力を注ぎ、推進しています。
中国の省と地域
中国の主な省と地域は以下のとおりです。
中部地方と西部地方はネクストフロンティアと呼ばれ、華東地区を凌ぐ経済成長を誇っています。
中部地方は、現在、特に政府から優遇されている地域です。中部地方は穀物生産が盛んで、石炭、非鉄金属、レアアースといった鉱物資源が豊富です。全国の食糧生産基地、エネルギー原材料基地、先進的設備製造およびハイテク産業基地の「3つの基地」と、東部地域と西部地域の架け橋であり南北を連結する総合交通ハブであるとして「1つのハブ」を提唱したことで、中部地方の発展が加速しました。これらの地理的特徴と資源賦存状況から、中部地方は地域振興の構想が練られており、この点で他地域よりも優位です。
中西部地域外商投資優勢産業目録(2013年5月改定施行)によると、他の地域では非奨励類に該当する業務が、中西部では奨励類に属している場合があります。中西部は産業移転の受け皿として発展しています。たとえば、華東地区は人件費や土地代等が上昇している影響で、製造業等が中部地方に移転するケースが増えています。
西部地方では2000年から政府による西部大開発戦略がとられており、大規模なインフラの開発が進んでいます。さらに2012年1月には第12次五カ年計画が採択されました。インフラ建設の加速や優位性産業・近代的農業の発展によって、中国経済の成長計画の一翼を担っています。具体的な計画内容は以下のとおりです。
・重点的経済区・農業区・環境保護区等の主体性機能区への適切な指導
・交通と水利施設に注力したインフラ施設整備の加速
・環境保護強化
・国家エネルギー基地や資源加工基地建設といった特色ある優位性産業の発展
・近代的農業発展の加速
・都市の生活水準向上
・優先的な教育発展と雇用の拡大と公共サービスの均等化
・市場開放の拡大による産業発展の推進
対外開放地域
中国では、1978年12月の中国共産党第11期中央委員会第3回全体会議で開放政策が決議され、外資導入が具体的に開始されました。現在の中国には大別して4つの経済特別奨励区があります。
■経済特区
中国での最初の経済特別奨励区として、1979年7月に深圳、珠海、汕頭、廈門の四市に経済特区(経済特別区)が設置されました。
2007年まで外資に対し施行されていた外国企業および外商投資企業所得税法により、外資に対しては開放地域ごとに所得税の税率を10~15%にするという大幅な優遇税率を適用していました。
しかし2008年1月に施行された新企業所得税法により、内資・外資の企業所得税率が段階的に引き上げられ、25%に一本化されました。
さらに外資に対する開放地域別の優遇政策を原則廃止し、ハイテク、省エネ、環境など中国政府が重視する分野別に、最初の1~2年は企業所得税を免除し、3~5年は50%に減税する、または3年間は企業所得税を15%に据え置くといった優遇政策の適用が可能になりました。
■経済技術開発区
経済技術開発区は、対外開放をより一層促進するために設けられた工業地区で、経済特区に準じた優遇措置が与えられています。主に生産性企業、技術集約企業、輸出加工企業の誘致を狙った戦略でした。
1984年5月に沿海開放都市(上海、天津、大連など14都市)が指定され、同年9月には温州と北海を除く12都市で14の経済技術開発区が設けられました。
その後、温州、北海や内陸部も含めた多くの都市が経済技術開発区に指定され、2014年12月時点で218の同区が設置されています。2008年には所得税が25%に引き上げられました。
■沿海経済開放区
1985年2月に沿海地区の経済発展と内陸への経済開発の波及を促進するため、長江デルタ、珠江デルタなどの地域に沿海経済開放区が指定されました。
生産性企業、科学研究プロジェクト企業、エネルギー、交通、港湾関係、知識集約型プロジェクトに対し、税制優遇政策が採用されています。
■高度新技術産業開発区
国務院の「高度新技術産業開発区と関連政策規定に関する通知」(1991年3月公布)により、国内27カ所の地域が高度新技術産業開発区(以下、ハイテク産業開発区)として指定されました。2015年時点で88カ所が指定されています。企業誘致を目的に道路、通信、電機、ガス、上下水道、排水施設等のインフラが整備され、税制面の優遇措置が施され、管理サービス体制も整っています。
ハイテク産業開発区には、ソフトウェアパークといわれる中国のソフトウェア発展と、アウトソーシングに対して産業戦略サポートをする経済発展に欠かすことのできない国家産業基地が含まれます。ソフトウェアパークとして、現在は大連ソフトウェアパーク(DLSP:大連軟件園)をはじめ、武漢パーク、蘇州パークがあります。
なかでもDLSPは、「官助、民弁」という政府支援・民間運営式の管理モデルをパークで初めて構築しました。その役割はソフトウェアだけでなく、航空・ホテル・金融・教育・不動産といった産業の発展をもたらし、大きな社会価値を生み出しています。そのためDLSPは産業・教育・住宅・娯楽設備がひとつになった国際的サイエンスパークになっています。さらに世界中のサービス業における中国移転の勢いに合わせて、都市や区域の経済発展と質の向上に繫がっています。
■保税区
保税区は、保税区条例により規定された特別な管理を行う経済貿易区域です。
国が輸出入を禁止する貨物とその他特別な規定がある貨物を除き、国外との間で自由に搬出入でき、関税と輸入段階の徴収、許可証書類の検査、通常の税関監督管理手続が免除されます。この場合の輸入段階税とは、増値税、消費税を指します。詳しくは、「保税制度」で述べます。
■上海自由貿易区
2013年7月に上海自由貿易試験区総体法案が可決され、これまでの開発区以上に外国企業に対する規制緩和や人民元取引の自由化等が可能な上海自由貿易区が開設されました。上海自由貿易区が作られた背景には、中国国内経済状況の変化と世界を取り巻く貿易環境の変化が大きく影響しています。
2008年以降中国の経済成長は鈍化し、一方で労働コストは年率10%以上で上昇し続け、労働集約型産業や加工型産業が成り立たなくなりました。低コストに依存する産業から、高付加価値産業やサービス産業へシフトする必要が出てきました。また、世界中で自由貿易への切り替えが盛んに議論され、中国もより自由な貿易を行うためのインフラ整備を進めざるを得ない状況になりました。
そこで、試験的に上海自由貿易区を開設することになりました。当該法案成立には、上海自由貿易区を起点として、高付加価値産業等の誘致と中国自身のTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)加入の体制整備という狙いもあります。
上海自由貿易区は、新たに整備される貿易区ではありません。既存の上海総合保税区等(外高橋保税区、外高橋物流園区、洋山保税港区、浦東空港総合保税区等)から成り、具体的な政策内容は以下のとおりです。
○外国企業の投資分野拡大
外国企業のうち、設立が制限されていた分野(外商独資国際船舶管理企業、外商投資信用調査会社、外商独資医療機関等)も設立が許可されるようになります。その他の産業については投資者要件や出資比率制限等の制限性措置が一時中止または撤廃となります。
○会社設立手続の簡素化
会社設立手続も簡素化されます。奨励類、許可類および今後開放される現代サービス業重点領域の外商投資企業の設立に関しては、契約や定款の審査認可が不要となり、届出制に変わります。
〇企業所得税の優遇措置
進出企業に対して、企業所得税の優遇措置が適用されます。中国の企業所得税は通常25%ですが、一定の要件を満たした企業の税率は15%になります。
〇人民元の取引・銀行金利を自由化
人民元資本項目の自由化、金利自由化や、人民元のクロスボーダー利用の先行、金融制度の対外開放などのメリットを享受できます。現在保税地域の外為管理は、原則として区域外と同じ扱いとなっていますが、上海自由貿易区ではより弾力的な措置(人民元決済手続の簡素化など)が採用されています。
〇貿易手続の簡素化
上海自由貿易区を経由する輸出入貨物の手続が簡素化されます。これまで上海綜合保税区は、区外との境界線のみならず国境線を出入りする貨物に対しても届出登記を行うなど、区内でも厳しく管理をしていました。今後、上海自由貿易区では、自由貿易区外との境界線のみを管理する方式に変更されます。それにより区内での貨物保管ならびに移動については届出登記等の手続が不要となります。
保税制度
保税制度とは税関の認可を受けて、輸入貨物・物品を一時的に課税留保する制度のことです。保税制度と加工貿易は密接に関連しています。加工貿易とは、企業が保税扱いで輸入した全部または一部の原材料ならびに部品等を、中国国内において加工や組立を行い、製品または半製品として輸出する業務のことです。
貿易をするためには、2004年に施行された対外貿易経営者届出登録規則に基づいて、商務部が委託した機関で届出ならびに登記を行ったうえで対外貿易経営権を取得していなければなりません。
■保税制度の構成
保税制度と密接に関係するものとして、加工貿易のほかに保税倉庫等ならびに保税地域があります。各取引内容と租税優遇制度は次の表のとおりです。
■加工貿易保証金制度と銀行保証台帳制度
加工貿易では輸入原材料や生産設備が保税されます。その代わりに税金(関税・増値税)相当額を保証金とし、税関に預入をしなければなりません(加工貿易保証金制度)。
企業の税関指定の中国銀行の支店において発行する銀行保証台帳で輸入原材料と輸出製品の照合ならびに管理を行い、実際の保証金預入に替える制度(銀行保証台帳制度)もあります。
銀行保証台帳制度には税関による企業分類ランク、産業分類などにより実際の関税・増値税の相当額の保証金を輸入申告ごとに税関に預け入れる実転形式と、台帳管理の適用は受けられるが実際の保証金の預入を必要としない空転形式の2種類があります。
■保税地域
[保税区]
保税区は保税区条例により規定されており、国務院により認可され、税関が特別な管理を行う特定の経済貿易区域を指します。以下の13の保税区があります。
保税区の役割は、国の輸出入禁止や特別な規定がある貨物を除いて、保税区と国外の間を自由に搬出入できるというものです。ここでは関税・増値税と消費税を指す輸入段階税、許可証書類検査、税関監督管理手続が免除されます。
保税区には外貨管理の自由度の拡大、関税と増値税の免税範囲拡大、外貨決済の自由度の拡大、貿易会社設立といったメリットがあります。保税区では主に輸出入貿易、中継貿易、加工貿易、貨物倉庫、貨物輸送、商品提示、商品取引、金融などの業務が許可されています。
保税区内企業では、輸出入割り当てならびに輸出入許可証交付が免除されており、保税区内貿易をはじめ保税区同士の貿易、非保税区企業の輸出入貿易の代理も認められています。保税区の優遇政策は次の表のとおりですが、実際の進出には保税区ごとの対応が必要です。
[輸出加工区]
輸出加工区とは国務院により認可され、税関が管理監督する特定の経済技術開発区をいいます。輸出加工区の特徴は主にその管理体制にあります。たとえば輸出加工区内に搬出入する貨物や関連場所(貨物の一時保管場所等)を24時間監督するという点や、輸出加工区内会社は税関とのコンピュータによるネットワーク化を実施して貨物データの交換を行うことなどです。
輸出加工区の設置目的として、加工貿易管理の強化、税関監督管理の規範化、発展促進、対外貿易輸出拡大奨励が挙げられます。
輸出加工区の対象は輸出加工会社、輸出加工会社の商品にサービスを提供する専門の倉庫会社、税関認可がある輸出加工区の貨物搬出・搬入に係る運輸会社です。商業小売、一般貿易、中継貿易ならびに輸出加工区と無関係の業務は対象外です。
輸出加工区の優遇政策は次の表のとおりですが、進出時には個別に確認することが必要です。
輸出加工区の留意点として加工区外会社に製品の加工を委託することはできないということが挙げられます。委託が必要な際には、主管税務局の認可が求められています。
[物流園区]
物流園区とは、保税区内もしくは保税区に隣接する特定港区内に設立された、より物流に特化した区域です。これは国務院が許可した税関特殊監督管理区域でもあります。特徴は、国内貨物が物流園区に入った段階で輸出とみなされて、増値税還付が可能となることです。現在では8カ所が認定されています。
貨物の搬出入監督の管理に関しては大きく3つに分類されます。
〇物流園区と中国国外間
中国国外から物流園区(以下、園区)へ貨物が搬入される場合、入国貨物届出リストによって園区主管税関に貨物の申告手続を行う形で届出管理が行われています。園区から国外へ輸出する貨物についても園区主管税関への届出が必要ですが、輸出関税は免除されます。
〇物流園区から物流園区外
園区から園区外への貨物搬出に関しては、多くの場合、園区主管税関で申告することができます。園区企業は、頻繁に少量の貨物の搬出入をする場合、園区主管税関の認可を受けることにより、集中通関手続が可能となります。
集中通関手続とは、貨物の輸出入時に税関が貨物の申告を受付けた日の実施税率ならびに為替レートを毎回適用するシステムです。年度をまたいで手続を行うことはできず、1カ月以内に完了しなければなりません。
〇物流園区外から物流園区
園区外から園区に貨物が搬入される場合、園区主管税関での貨物申告を行います。貨物の種類によっては輸出許可証の提出が必要となります。園区外から園区への搬入貨物には増値税の還付も認められています。
還付申請は、税関が署名発行した輸出貨物通関申告書とその他所定の証憑を添付して主管税務局で手続を行います。
園区は保税区とは異なり、物流専門の区域です。域内での生産や加工などは認められていません(包装の変更等、簡易な加工を除く)。物流園区の優遇政策は下表のとおりですが、進出時には個別に確認する必要があります。
地域情報
本節では、日本企業が多く進出している省・市ごとに中国における位置付け、特徴についてみていきます。
■遼寧省
遼寧省の常住人口は、4,155.0万人(2024年時点)。中国東北部に位置し、北は吉林省と内モンゴル自治区に接していますが、南部は渤海に面して遼東半島が突き出ており、環渤海経済圏を構成している経済が発展した地域です。鉄鉱石や石炭などの鉱物が豊富で、重工業の発達した省として知られています。遼河油田は国内最大級の産出量を誇る油田でもあります。
大連市は東北地方最大の港湾都市で、国内最大規模の重化学工業地帯を抱える工業都市でもあります。遼寧省の沿岸部には大連のほかに「五点一線」と呼ばれる海浜道路で結ばれた錦州、丹東、営口、盤錦、葫蘆島といった都市が工業ベルト地帯をなしており、日本からも多くの企業が進出しています。特に機械・設備製造業関連企業が多いです。
大連市は、中国東北地方だけでなく、北東アジアの国際物流拠点としての役割も果たしています。渤海の対岸に位置する青島市とは高速貨物船で結ばれており、空路は国内だけでなく、日本、韓国、ロシアの各国の地方都市とも直接結ばれています。保税地区を有しており、海路・空路におけるさらなるハブ化を促進しています。
瀋陽市は、機械工業などが発達した人口約924.3万人(2024年時点)の省都です。内陸に位置し、吉林省や黒龍江省への玄関口ともなる中国東北地方の中核都市です。2010年に国家レベルでの新型工業化総合改革試験区として瀋陽経済区が承認され、今後は北東アジアの経済集積地としての発展が期待されています。
大連は親日的な土地柄として知られており、日本商工会や日本人学校のほか日本食レストランも多数あります。尖閣列島問題に始まった中国各地での反日デモも大連では起こらなかったといわれています。
■山東省
山東省は中国華北部に位置し、常住人口10,080.17万人(2024年時点)、省都は済南市です。広東省の珠江デルタや、上海を中心とした長江デルタとならび称される環渤海経済圏を、北京市、天津市、遼寧省などとともに構成する産業の発達した地域です。
省の東部は山東半島が渤海と黄海に突き出ており、半島部には沿海開放都市である青島市や煙台市を擁しています。大小の港がたくさんあり、古くから行っている海運交易が強みです。農産物や海産物が豊かに産出されるだけでなく、油田や炭田、金山などを有し、鉱物資源にも恵まれた土地です。
山東省は、原材料を輸入しやすく製品を輸出しやすいという立地や、積極的に進められてきた海運などの運輸インフラ整備により、繊維や食品加工などの地場産業が早くから育ってきました。さらに鉱物資源に由来した鉱業とともに、電力産業や石油化学、鉄鋼、機械、造船などの重工業も発達しています。近年はハイアール(海爾)、ハイセンス(海信)といった二大家電メーカーの生産基地としても有名で、産業構造はより重層的になっています。
今後は情報産業やバイオ分野などの新規産業を、既に定着している軽工業や重工業とのバランスのとれた産業構造に転換する戦略が、国または省レベルで打ち出されています。たとえば、山東半島藍色経済区として海洋資源に立脚した産業育成や、黄河デルタ高効率生態経済区の一部としての再生可能エネルギーや現代農業を含む先端技術の開発があります。
山東省は朝鮮半島に近いため韓国系企業が多数進出していますが、日本企業も電子機器をはじめ、各分野が進出しています。
■北京市
北京市は中国の首都で、政治・文化・経済の中心、中央直轄市(省レベルの権限を持つ特別市)の1つです。常住人口は2,000万人の大台を越え、2024年時点では2,183.2万人となりました。
上海に次ぐ巨大な経済規模で、金融、情報産業、サービス業などの第三次産業が占める率が高い都市型経済構造を持ちます。各企業の本部機能が集積しており、中国という中央集権国家の核となるメガシティーです。
それゆえに北京はいくつもの顔があります。その一つは中国中央政府機関や世界各国の大使館がある政治の中心としての顔です。次に、世界中の多国籍企業や中国の大手企業が名を連ねる中央ビジネス地域(CBO)や中国の大手銀行の本店をはじめとして多くの金融機関が集まる金融街などを持つ経済の中心としての顔があります。
さらに、中国版シリコンバレーと呼ばれる中関村のほか北京大学や清華大学(中国の大学は研究機関として位置付けられる)をはじめとして数多くのR&D施設を擁する科学技術の先進地域という顔もあります。また万里の長城や故宮などの世界文化遺産もあり、世界中から観光客が訪れる観光都市の顔もあります。
■天津市
天津市は中国華北部にあり、北京市、山東省、遼寧省に隣接して渤海湾に面しています。常住人口1,364万人(2024年時点)の大都市で、北京市、上海市、重慶市と並ぶ中央直轄市の1つです。
天津市は渤海湾に面して大規模な工業地帯と港湾を有する、華北地方で最も工業が盛んな都市の1つでもあります。機械、電機、化学工業から繊維などの軽工業まで幅広い分野の企業が立地しています。
郊外には開発区となっている工業団地が数多くあり、世界中の大企業が中国の生産拠点として進出しています。物流やサービス産業も発達しており、商業都市としても大きな存在感があります。都市型農業の推進、研究開発や教育分野の育成にも力を入れており、成熟した都市型経済モデルへの転換が図られています。
■江蘇省
江蘇省は中国華東部に位置し、常住人口は8,526万人(2024年時点)、省内GDPは中国全土の約1割を占めます。そのGDPは半分以上が第二次産業によるもので、機械、電子機器、建築材料、化学工業、繊維、食品加工など幅広い分野に及び、工業化が進んでいます。ハイテク産業の育成にも積極的です。
江蘇省の南部は揚子江の下流域に広がる長江デルタにあり、上海市と浙江省に隣接した経済発展が著しいエリアです。特に、中国五大湖の1つである太湖の周囲に位置する蘇州市と無錫市は上海市とは距離的にも近く、経済的にも関係が密接で、改革開放(1978年以降に始まった中国国内体制の改革および対外開放政策)後に早くから外国企業が進出して目覚しい経済発展を遂げてきました。
日本企業も多数進出しており、蘇州市や無錫市、南京市などにも多くの邦人が在留しています。この地域は経済発展に伴い賃金水準の上昇が顕著で、一般作業員の平均賃金は蘇州市、無錫市ともに上海市と同様に中国で最も高い水準にあります。
こうした背景もあり、上海市と南京市の中ほどに位置する常州市や、長江をはさんで上海市の対岸に位置する南通市などにも、多くの内外の企業が進出するようになりました。上海市から南京市までの距離は292kmありますが、いまや高速道路で3時間半、滬寧高速鉄道を使うと1時間で移動可能になり、上海─蘇州無錫─常州─南京のベルト地帯がより広大な経済エリアとして存在感を現しています。
江蘇省北部の中心都市である徐州市は古くから民族資本が育っていた地域ですが、現在は外資の誘致が進み、アメリカ、ドイツ、日本企業などが進出して多くの大型工場が稼動しています。東シナ海に面した港湾都市である連雲港市にも日本の食品メーカーなどが進出しており、北部でも経済振興が進んでいますが、省内の南北格差が大きいのが現状です。
■上海市
上海市は常住人口2,480.26万人(2024年時点)、中国華東部に位置する中国最大の都市です。一大経済圏である長江デルタの中心でもあり、世界中の注目を集める成長目覚しい巨大都市です。
1990年代から多くの外国企業が進出し、工業都市として急成長しました。その後、労働集約型生産からハイテク産業などの高付加価値生産に重点を移し、さらには金融や小売、不動産などの第三次産業が成長して現在のような巨大な経済圏になりました。1人当たりのGDPは21万7,447元(2024年時点)を超え、先進国並みです。
長江河口部に面した浦東新区は1990年代から大規模開発が行われ、多くの外国企業が進出してきたエリアで、日本企業も多数あります。この区域には上海証券取引所のある陸家嘴金融貿易区や、家電や精密機械など高付加価値製品の生産・輸出企業が多く進出している金橋輸出加工区、医薬や情報機器などのR&Dの多い張江ハイテク園区、長江国際海港に隣接し中国初の保税区となった外高橋保税区の4つの開発区があります。中国の威信をかけて2010年に開催された上海万国博覧会も浦東新区を再開発して行われたものです。現在は高層ビルが立ち並ぶ上海の新都心となり、今後は世界の金融センターとしても存在感を増すと考えられます。
上海市は中国や東アジアの交易の要でもあります。超大型コンテナ船にも対応した最新式の洋山深水港が既に一部開業しており、上海港のコンテナ取扱高は2011年にシンガポールを抜き世界一となりました。2022年のコンテナ取扱高は4,730.3万TEUにのぼります。上海虹橋空港と上海浦東空港の2つの空港があり、札幌、仙台、新潟、東京、名古屋、小松、大阪、広島、松山、福岡、北九州、長崎、鹿児島、沖縄など多くの日本の都市とも直結しています。2010年には上海虹橋空港第2ターミナルがオープンし、利用者の年間受け入れ可能数が両空港あわせて3,000万人となりました。高速鉄道、都市交通が虹橋総合交通ハブとして総合的に整備されており、輸送量の増強だけでなく、トランジット時間の短縮など利便性向上が図られています。
■浙江省
浙江省は常住人口6,670万人(2024年時点)、中国華東部に位置する省です。
浙江省北部は上海市や江蘇省南部の蘇州市や無錫市などの工業地帯に隣接しており、改革開放後に急速に工業化しました。公共インターネット網がよく整備されているなど、華東部の中でも特に産業の近代化に積極的な省です。工業は機械、建材、化学、繊維、食品加工などが盛んで、研磨機や発電機など重機の生産でも有名です。
浙江省の日本企業数は、その多くが北部にある杭州市、寧波市、嘉興市に進出しています。省都の杭州市は常住人口約1,030.0万人(2024年末時点)の大都市で、古くから交易が盛んな土地柄です。現在は高度な工業化が進んでいます。寧波市は杭州市に次ぐ浙江省第二の工業都市で、上海市、深圳市に次ぐ中国第三の港湾を持つ海運の中核地でもあります。
た、上海市、杭州市、寧波市、蘇州市の中間に位置し、いずれの都市からも車で1時間ほどのところにある嘉興市には、日本企業投資区である平湖経済開発区があります。電子部品や精密機械など先端情報産業を積極的に誘致しています。
2008年には嘉興市と寧波市を結ぶ杭州湾上に杭州湾跨海大橋が架けられました。上海市から寧波市への所要時間が4時間から2時間に短縮され、浙江省北部の交通の便が格段に良くなり、域内交易が促進されました。
■福建省
常住人口4,193万人(2024年)の福建省は中国華南部に位置し、北は浙江省、南は広東省、東は海峡を隔てて台湾と面しています。海岸近くと内陸盆地にわずかに平地があるほかは山がちの土地柄で、森林被覆率が62.9%以上という緑豊かな省です。景勝地として知られるとともに、ウーロン茶や花崗岩の産地として世界的に有名です。沿海部は3,300kmに及ぶリアス式海岸で、省都である福州市をはじめとして泉州市、厦門(アモイ)市といった港湾都市が点在しています。
福建省は広東省とともに華僑の出身地として知られており、全世界に数百万人の福建系華人がいます。歴史上、複数回にわたり福建省から台湾への住民の移住があり、台湾には福建省をルーツとする人が多くいます。台湾との関係が強く、台湾企業への投資が多いのはそのためです。
1980年代の改革開放政策への転換と台湾海峡の緊張緩和とともに、福建省の経済振興が始まりました。厦門市の経済特別区指定を皮切りに、現在では福建省の沿海部のすべてが沿海経済開放区となっています。日本企業など外資の進出もありますが、地場産業や台湾資本が主導している傾向が強いです。主要産業は石油化学、機械、電子・電気ですが、輸出依存度は広東省ほど高くはありません。地場産業として古くから農林水産加工が盛んで、製茶、精糖、製紙は全国でもトップクラスです。
■広東省
広東省は華南地方にあり、南シナ海に面した温暖な地域です。省の常住人口は1億2,800万人(2024年末時点)、GDPは14兆1,635億元(2024年時点)でいずれも全国トップです。
珠江の河口に位置する広州市、香港、マカオを結んだ三角形のエリアとその周辺地域は珠江デルタと呼ばれ、中国の改革開放を先導してきた一大経済圏です。1980年に、香港に隣接している深圳市と珠海市、汕頭市がまっさきに経済特区として開放され、1984年に広州市などの沿海都市、翌1985年には珠江デルタ全域が経済開放区となりました。
改革解放前より市場経済が導入され外資が進出しており、目覚しい経済成長を遂げてきました。食品、繊維、化学工業、医薬品、電子・電気機器、機械など業種も多岐にわたります。特にテレビや冷蔵庫、電子レンジなど家電製品の生産は中国随一です。
広東省は香港系企業による加工貿易が盛んな地域で、日本企業も1990年代までは加工貿易を中心に進出しました。現在は部品などの現地調達を必要とする産業が進出し、製造業の裾野の広がり、さらには内需の拡大に伴う国内マーケット向けの生産が増加して、加工貿易に依存した経済体質から変貌を遂げています。
[深圳市]
深圳市は香港に隣接しており、九龍から列車で40分、広州からは1時間という地の利があり、中国で最初に経済特区として市場経済が導入された都市です。早くから電子機器や家電製品の外国企業が進出しています。現在ではハイテク産業の集積が進んでいます。
深圳市は中国で唯一陸・海・空の税関が揃う港湾都市として、コンテナ取扱高世界第4位(2022年)の深圳港を有しており、物流拠点として内外において重要なポジションにあります。サービス産業が盛んであること、中国第二の証券取引所である深圳証券取引所があり華南地方の金融拠点であることも特徴です。従来の製造業の利潤率が下がっているため、第三次産業に重きを置いた産業構造への転換が進んでいます。
[広州市]
広州市は、広東省の省都として政治や文化の中心を担っています。地下鉄や高速道路などの交通網も発達した常住人口1,897.8万人(2024年末)の大都市です。広東省の中心に位置し、珠江デルタの各都市とのアクセスが良いのが特徴です。
水運の要という地の利を生かして造船、鉄鋼、機械、石油化学などの重工業が発展していますが、精密化学、医薬品、情報産業などの高付加価値産業の育成にも力を入れています。現在ではアメリカやドイツなどの多くの自動車産業も進出しています。
[東莞市]
東莞市は広州市と深圳市の間に位置し、常住人口1,057.08人(2024年末)、香港の約100km北にあります。東莞市にルーツを持つ香港市民が多いこともあり、改革開放後は香港企業が盛んに繊維や電子・電気などの加工貿易に投資をしてきました。その後、日系の電子機器部品メーカーや台湾系のパソコン部品メーカー、欧州の携帯電話メーカーの進出が相次ぎ、パソコンや携帯電話の端末関連の一大生産拠点となっています。
[恵州市]
恵州市は広東省北部最大の常住人口611.68万人(2024年末)を有し、深圳市と東莞市に隣接しており、改革解放直後から多くの香港系企業が家電製品を生産してきました。TCL電子集団の本社が置かれ、オランダのフィリップスや、日系ならびに韓国系の大手電機メーカーが進出し、電気・電子機器の集積地となりました。デジタル工業園区を設置してハイテク企業の誘致やシェルとの合弁石化プラントが操業開始するなど、近年は産業構造の幅が広がりつつあります。
投資インセンティブと規制
投資許可機関と権限
外資を導入するに当たり、投資規模によって審査や認可をする機関が異なります。中央政府である国務院の商務部と、商務部が委譲する地方政府の主管商務部門の大きく2つに分けられます。
中央政府は「投資総額1億USドル以上の奨励類及び許可類項目もしくは、投資総額5,000万USドル以上の制限類項目」の外資導入認可権限があります。一方、地方政府は「投資総額1億USドル未満の奨励類及び許可類項目もしくは、投資総額5,000万USドル未満の制限類項目」の外資導入認可権限があります。
中央政府である国務院の外資導入には細かく管理機関が設置されており、商務部だけに権限が与えられているわけではなく、機関ごとに役割が異なります。具体的な機関とその主な役割は以下のとおりです。
〇商務部
・企業・支店・事業所の設立認可
・企業の清算認可
・企業の持分譲渡認可
・外国企業との技術導入契約の認可または登記
・輸入許可管理商品である銀現物出資設備等輸入認可
・企業の輸出許可管理商品輸出時の認可
〇国家市場監督管理局
・企業設立前の企業名称の仮登記可否認定
・企業登記と事務所登記の申請認可と営業許可証公布
・登記済み企業への年度検査実施と決算書等の報告書受理
〇国家外貨管理局
・企業の外債登記申請受理と登記証交付
・企業からの外貨収支報告ならびに主要決算報告受理の調査
・外貨年度検査実施
・企業の外貨口座開設報告受理
・対外債務届出受理
〇税関総署
・物品等の輸出入管理
・輸出入貨物等の通関業務
〇税務局
・企業の税務登記受理
・企業の納税管理
・対企業の税務調査
〇財務局
・企業所定の財務諸表受理
〇土地管理局および国有資産管理局
・土地使用権・建物関連の払い下げならびに譲渡・担保登記の受理
・土地使用権譲渡または土地賃貸借の契約書認可
・土地使用許可証交付
・国有資産評価額決定
廃止された優遇措置
外資企業に対し、税率上の優遇措置を採っていた中国ですが、2008年1月に施行された企業所得税法により、2008年以降、開放地域ごとに定められた優遇税率が廃止されました。内資・外資で税率を区別するのではなく、中国政府が重視する産業分野での優遇措置に切り替えました。
改正理由は、外資企業に対する優遇と公正な競争を求める市場経済との間の矛盾が中国国内で指摘されたことが挙げられます。それまで中国国内企業(内資企業)と外資企業では中国全土平均で実効税率に10%前後の差がありました。改正前の外資企業が年間で軽減された税額は約500億USドルに及びます。
外商投資に対する規制
【中国への外資参入基本政策】
中国における外資参入基本政策は、「准入前国民待遇(参入前内国民待遇)」及び「外商投资准入特别管理措施(外商投資参入特別管理措置,以下;外商投資ネガティブリスト)」に基づき実施されています。
外商投資ネガティブリストにおいて、外商投資を禁止或いは規制する業種・分野を規定し、その他業種・分野の外国投資者は国内投資者と同様の待遇(参入前内国民待遇)を享受することができます。
なお、外商投資規制に関し、鼓励外商投资产业目录(外国投資奨励産業目録)においては、業種や製品品目ごとに優先度で区分し、優先度の高いプロジェクトほど、認可プロセスの簡略化や税制優遇等が図られています。しかし、昨今は審査認可権限の下部機関への委譲や届け出制への移行、優遇制度の廃止が進んでおり、外国投資奨励産業目録に該当することのメリットは限定的なものとなってきています。
外国投資奨励産業目録の最新版は、現在2022年版であり、外国投資奨励産業目録では、地域別にそれぞれ中国全国で519項目、中西部地区等については955項目の、合計1,474項目が奨励分野として定められています。改定前の2020年版に比較して、製造業やハイテク分野、サービス業関連の奨励項目が増加しています。
また、指导外商投资方向规定(外商投資方向指導規定)第5条において、以下に掲げるプロジェクトは認可が受けやすく、また関連項目まで認可範囲を拡大できるよう優遇されています。
【奨励類】
・農業新技術・農業総合開発及びエネルギー・交通・重要原材料工業
・ハイテク、先進的で使用に適する技術に属し、製品性能の改善、企業の技術経済収益性を高めることができるもの、或いは国内の生産能力が不足している新設備、新材料の生産に属するもの
・市場の需要に適応し、製品品質を高め、新興市場を開拓或いは製品の国際競争力を増加させるもの
・新技術、新設備、エネルギー及び原材料を節約できるもの、資源の総合利用、資源の再生及び環境汚染防止に属するもの
・中西部地区の人的資源及び資源の優位性を発揮させ、国の新産業政策に合致するもの
・国の法律や行政法規で奨励を規定するその他のプロジェクト
【制限類】
制限類に該当するプロジェクトに投資をする場合には、外資100%は認可されず、その投資に制限がかかります。ただし、中国側投資者の外商投資プロジェクトにおける出資比率合計が51%以上の場合には、中外合弁企業等の形態で当該制限業種に投資をすることができます。
外商投資ネガティブリストにおいて、出資比率等に対して制限のある項目数は、2018年導入当初の20項目から、2020年版外商投資ネガティブリストでは10項目にまで削減されています。これにより、下記の状況に当てはまらなければ一般製造業は基本的に外資参入が可能となります。
・技術レベルの立ち遅れているもの
・資源の節約及び生態環境の改善に不利なもの
・国が保護採掘の実行を規定する特定鉱産物の探査、採掘に従事するもの
・国が段階的に開放する産業に属するもの
・法律、行政法規で規定するその他状況
【禁止類】
以下の項目に該当するプロジェクトに投資することは禁止されています。
・国家の安全に危害を及ぼす、または社会・公共の利益を損なうもの
・環境汚染、自然環境破壊、または人体の健康を害するもの
・耕地を大量に占有し、土地資源の保護・開発に不利益を与える、
または軍事施設の安全と機能を害するもの
・国の特有の製造プロセスまたは技術により生産するもの
・国の法律または行政法規の規定で禁止されるその他のプロジェクト
土地制度と譲渡・移転
中国では土地についての権利の概念を所有権と使用権の2つに分けています。基本的に都市の土地は国が所有しており、社会主義を色濃く反映しています。中国に進出する際には土地の制度について確実に把握しておくことが重要です。
中華人民共和国憲法第1章10条で、土地の所有権は全人民所有と集団所有のいずれかとされています。全人民所有とは国家が所有していることを意味し、集団所有とは農民集団の所有を意味します。
土地の使用権限には国有土地使用権と集団土地使用権の2つがあります。国有土地使用権はさらに割当土地使用権と払下土地使用権に分類されます。
払下土地使用権取得のためには、2007年から入札・競売・公示方式が採用されています。以前は協議、入札、競売の3つの方法がありましたが、農地保護、無計画な投資や低水準の重複建設を防止するために変更されました。土地使用権を取得すれば、賃貸、担保設定、譲渡も可能になります。ただし、土地使用年限は用途別に上限が定められています。
中国の土地の使用は、厳格な管理がなされています。土地の用途を農業用地、建設用地、未利用地に分け、決められた土地の利用以外で使用する際には用途転換手続をとらなければいけません。ただし厳密に土地の用途別面積が中国国内で定められており、簡単に用途の変更はできないようになっています。
日本企業が中国の土地を使用する場合は、国家から土地の使用権限を与えられているにすぎないことを忘れてはなりません。制度を理解せずに日本企業の立退き騒動が勃発した例もあります。日本と異なり、中国では土地の私有は認められていないため、全人民所有権と集団所有権の2つの所有権しか存在しません。
2年以上の遊休土地については、遊休土地処理規則(国土資源部令[1999年]第5号)において「土地取得後1年以上を経ても建設工事を始められないときは土地代金の20%以下に相当する土地遊休費を支払わなければならず、2年連続して土地を利用しないときは、政府は土地を無償で回収する」と規定されています。
土地管理の強化により、地方政府から回収を求められた実例があります。さらに2004年8月に改正された土地管理法(主席令[2004年]第28号)には「公共の利益や都市計画等に基づく国による収用」を認める規定があり、実際に日本企業を含む外国企業が創業後に収用・移転を余儀なくされたケースもあります。近年は規定の運用が厳格化されつつある点に留意が必要です。
さらに2004年8月に改正された「土地管理法」(主席令第28号)等に「公共の利益や都市計画等に基づく国による収用」を認める規定がありますが、創業後に収用・移転を余儀なくされたケースがあるなど、近年、規定の運用が厳格化されつつある点に留意が必要です。
日本企業が中国の土地を使用する場合は、国家から土地の使用権限を与えられているにすぎないことを忘れてはなりません。日本では土地の私有が認められていますが、中国では全人民所有権と集団所有権の2つの所有権しか認められていません。制度を理解せずに日本企業の立退き騒動が勃発したことも多々あります。
国有資産の管理制度と評価制度
国有資産の管理体制は、国家の経済における重要な部分を担っています。そのため経済体制に制約されるという性質をもち、その変化に伴って見直されます。2002年11月の第16回共産党大会で、計画経済時代に作られた国有資産の管理体制について以下の5項目が見直されました。
・国務院の管理下における独立した国有資産管理専門の機関設立
・国有資産管理における分権制の廃止と国有資産管理機関の権限と責任の一元化
・中央政府と地方政府での出資権の分権化
・国有資産運営に対する政府行政介入の制限
・国有資産は社会調整機能とバランスをとるものと再定義し、国有資産の形態を検討
この見直しを受けて2003年の4月に中国国有資産監督管理委員会が発足しました。国有資産とは、以下の資産を指します。
・国家が法により取得あるいは認定した資産
・国家が各種の形式で企業に対して投資したものおよび投資収益
・国家が行政単位に財政資金を交付することにより形成した資産
以下の場合には国有資産が流出する可能性があります。
・資産価額に不適切な金額を計上する
・低価格で他へ転売する
・無償の国有資産の転売や経営陣への転売のために転売価格を設定し、自らが購入する
・管理不足による簿外化、投資資産の未回収
こうした国有資産の流出を回避するために管理体制の見直しが行われ、1996年1月に企業国有資産所有権登記管理弁法が施行されました。その主な目的は以下のとおりです。
〇企業の国有資産所有権における登記の強化
所有権登記については年度検査制度を実施しています。各年度終了後90日以内に所有権年度検査手続を行い、財務報告書および国有資産運営年度報告書を国有資産管理部門に提出します。この報告書には、出資者の資金の実際の払込状況、企業国有資産の構成の変更、国有資産の増減等の内容が含まれます。
〇国有資産の基礎的な管理制度の健全化
国有資産の管理・監督権限は国有資産管理行政主管部門にあります。ただし、法定評価は国有資産管理行政主管部門が直接行うわけではなく、国有資産管理行政主管部門が認定した評価機関が行います。たとえば国有資産評価会社、会計事務所、審計事務所、財務諮問会社等です。
中央政府または地方政府の国有資産管理行政部門は、原則として中国の資産評価会社や会計事務所等にその評価資格を認めます。
〇国有資産の流出防止
国有資産の流出防止については資産評価の手続に関する規定があります。国有資産の評価はすべての資産について必要というわけではありません。合弁企業や合作企業設立時や、中国側が国有資産による現物出資を行う場合や、中国側の持分を外国側が取得する場合等に必要となります。
国有資産評価管理規則で規定しているもののうち中国で主に適用される企業価値評価方法としては、インカムアプローチ(企業の価値を将来の予測収益力に基づき算出)、コストアプローチ(企業の価値をB/Sから算出)、マーケットアプローチ(企業の価値を上場企業と比較して算出)の3つがあります。
清算時の処分価格で評価する清算価格法もありますが、上記に記載した評価法が用いられる傾向があります。
インセンティブ
■産業別
外商投資産業指導目録(新目録)で4つに分類されていたもののうち(奨励、許可、制限、禁止分類)、奨励を受けることができる要件は以下のとおりです。
・農業新技術・農業総合開発およびエネルギー・交通・重要原材料工業
・ハイテクかつ先進的で使用可能な技術に属し、製品性能を改善し、企業の技術経済収益性を高めることのできるもの、または国内において生産能力が不足している新設備、新材料の生産に属するもの
・市場のニーズに適応し、製品グレードを高めて新興市場を開拓するもの、または製品の国際競争力を増加させるもの
・新技術、新設備、エネルギーおよび原材料を節約できるもの、資源の総合利用、資源の再生および環境汚染防止に属するもの
・中西部地区の人的資源および資源の優位性を発揮させ、かつ、国の新産業政策に合致するもの
・国の法律・行政法規で奨励を規定するその他のプロジェクト
上記のいずれかに該当する場合は、奨励類の外商投資プロジェクトに該当します。新目録は、製造業の中でも高度先端分野にあたる製造業を重点的な奨励項目としています。高度先端分野とは環境に配慮した技術で、たとえば紡績分野や化学工業分野におけるクリーン生産や省エネといった環境親和型の技術を指します。
2007年の改定では、人的資源および資源の優位性の発揮に関して「中西部地区に限る」という項目が削除されましたが、中西部や東北地方の発展を促進する方針には変更点はありません。これらの地域の奨励分野は、今後改定される予定の「中西部地区、外商投資優勢産業指導目録」に統一して組み入れることが前提となっています。
2011年の改定ではエネルギーを多く消費し、環境への負荷の高い資源消費型産業(両高一資)の削減が特徴です。本改定を受け、両高一資を規制するために環境保護局を環境部に昇格させ、環境対策への予算を増やしています。
具体的には、国務院の発展改革委等部門の一部産業の生産能力過剰および重複建設抑制と産業健全発展誘導に関する若干の意見の許可・転送についての通達(2009年9月26日国務院公布)により、鉄鋼、セメント、板ガラス、石炭化学工業と多結晶シリコン、風力発電設備の6業種が生産能力過剰および重複建設が深刻な業種として位置付けられました。これにより石炭化学工業と多結晶シリコンの生産が奨励類から除外されました。風力発電設備においても、外資参入の質の向上のため、奨励類として認められるための条件が従来の1.5MW以上から本改定で2.5MW以上の風力発電設備に引き上げられました。
一方で外資の新技術・新製品を大いに活用し、国内製造業の付加価値を高めるために紡績、化学工業、機械製造等の分野が新たに奨励類として追加されています。中国では生産能力が過剰になることが問題視されています。奨励類から除外された分野は、このままでは企業は倒産するか、着工もままならず従業員は失業に追い込まれ、銀行の不良債権の増加による経済効果の好転は厳しいと予測されたため、政府はこの通達を公布しました。
経済貿易緊密化協定
経済貿易緊密化協定(CEPA:Closer Economic Partnership Arrangement)は、2003年6月29日に香港・中国本土間にて調印され、2004年1月1日に施行された協定です。中国市場参入時の規制緩和早期化など中国のWTO加盟時の公約を上回る対外優遇政策を実施する内容となっています。
CEPAは自由貿易協定(FTA:Free Trade Agreement)と実質的には同じですが、中国と香港は国同士ではないため一国二制度をとっています。そのため自由貿易協定とはせずにCEPAとしています。
本協定には、3つの特徴があります。
〇香港製品に対する関税
中国は香港製品について、ほぼすべての貨物貿易における関税および非関税障壁の段階的軽減または廃止を目指しています。
〇18分野のサービス産業の解放
中国は香港企業に対し、広告、会計、音楽映像、銀行、建設・不動産、会議・展覧、流通、貨運代理、保険、法律、物流、経営コンサルティング、医療・歯科、証券、倉庫業、通信、観光、運輸の18分野において規制を緩和しています。
ただし、優遇政策の適用を受けるためには香港企業として認定されることが必須です。香港企業として認められるためには、以下の要件をすべて満たしていなければなりません。
・設立後3~5年経過している
・企業所得税を納付している
・現地従業員を50%以上雇用している
〇貿易と投資の効率化
本協定は、以下の項目において中国本土と香港が協力し、手続の効率化等を図ることを目標としています。
・貿易・投資の促進
・通関の効率化
・商品検査・検疫、食品安全、品質、標準化
・電子商取引の導入
・法規制の透明性の向上
・中小企業の協力関係の強化
・漢方医薬ほか医療品分野における連携
参考文献
『中国の投資・M&A・会社法・会計税務・労務』
(久野康成・TCG国際弁護士法人監修 TCG出版)
世界銀行 ビジネス環境の現状2020
Open Knowledge Repository (worldbank.org)
世界銀行 ビジネス環境の現状2019
Open Knowledge Repository (worldbank.org)
日本貿易振興機構
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