設立
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進出形態
本章では、中国に拠点を設ける際に必要な手続を解説します。中国への進出形態は現地法人、支店および駐在員事務所の3つに分けられます。さらに、現地法人は独資企業、合弁企業、合作企業、外商投資企業の4種類に分けられます。このうち独資企業、合弁企業、合作企業を総称して三資企業といい、中国政府が推奨している現地法人の中でも、近年、最も採用されている進出形態です。
支店設立については、2024年改正会社法244条に基づき、中国に本店がない場合には、銀行業及び保険会社にのみ認められており、製造業やサービス業については、明確な法的根拠がないため支店設立が難しい状況となっております。
駐在員事務所については、あらゆる業種で設立が認められており、市場調査や現地とのコネクション強化を目的として設立する企業が多くございます。ただし、販売活動等の営業活動はできず、PEリスクがつきまとうといったデメリットがあります。
また、中国に拠点を設立する場合、考慮すべき法律は、会社法、外商投資法、私営企業暫行条例、国有企業法です。2013年に会社法が改正され、2014年3月1日以降は、最低資本金の引き下げや1人会社の設置などの条件が緩和されています。
会社法は一般法であり、その下に外商投資法、外商投資株式会社規定、外国投資者による国内企業買収規定、独占禁止法などの特別法が存在します。外商投資企業に対する法律の適用は特別法が優先されます。したがって、外商企業の法律行為は会社法に定める基本事項に準拠した上、特別法で明記される条項に従う必要があります。
進出方法
現地法人
■独資企業
独資企業とは、中国側の出資はゼロで100%外国企業が出資し設立する形態です。また、複数の外国企業により出資を受けて設立した場合でも、独資企業として定義されることとなります。
親会社が経営権を100%持つため、迅速な意思決定ができ、費用や時間などの負担や摩擦を最も抑えられる進出方法です。現地人を総経理にした場合等では、本社(日本)との間で摩擦が生じることもあります。
独資企業の設立について、奨励、制限等に当てはまる具体的な業種は外商投資方向指導規定および外商産業指導目録に定められています。
■合弁企業
合弁企業(中外合資経営企業)とは、中国政府により認可された外国側出資者と中国側出資者が、国内販売や営業許可など商権を持つ中国企業との共同出資で有限会社を設立する形態を指します。登録資本金のうち、外国側出資者の出資比率は原則として25%以上です。独資企業では、特殊ライセンスの取得や事業内容の都合上、外国側の出資比率に制限がある業種で進出する場合などは有効な方法ですが、価格面で折り合わなかった場合は進出の障害となります。中国企業との共同経営の難しさとともに、異文化摩擦が表面化しやすい形態です。
■合作企業
合作企業は、中国側の出資と外国側の出資の両方により設立される点は合弁企業と同じですが、出資比率に関わらず、出資者間で責任の分担および収益の分配などを約定するものです。これは華僑が通常利用する形態であり、いわゆる「のれん分け」のことです。小規模でパートナーを組みサービス業に従事する場合、単純な投資案件として土地を利用させてもらう実質的独資型経営の場合に有効な形態です。
法律上、出資者は無限責任となります。法人型(法人格を持つ)合作企業の外国側当事者は最低出資比率が25%に制限されています。
■外商投資株式会社
外商投資株式会社(外資株式会社)とは、外国企業と中国企業が中国国内において共同して設立する形態です(外商投資株式会社設立の若干問題に関する暫定規定、1995年1月公布・施行,上場会社の外商投資に関わる関連問題の若干意見、2001年10月公表)。当該規定では、組織機構、株式発行、上場等の具体的な規定がないため、一般法である会社法、証券法等が適用されます。
中国国内外での株式上場、社債発行等の手段により高額の資金調達が可能になりますが、暫定規定には厳しい条件があるため、これらの手段を利用する例は極めて少ないのが現状です。
■会社設立要件
会社法上、中国で会社を設立するための条件は次のように定められました。
・最低資本金は、有限責任会社は全株主が引受けた出資額、株式会社は全株主が引受けた株式総額、外商投資株式有限会社は3,000万元
・現物出資は、総出資枠の70%まで出資可能
・有限責任会社は、1人からの出資が可能
この結果、外商投資企業に関する特別法に規定がなく、かつ業種による投資目録上の制限が設けられていない場合には、合弁企業または合作企業の最低資本金の制限なく設立することが可能です。外資単独出資で1人有限会社を設立する場合には、会社法の1人有限会社に関する規定に準拠することになります。
しかし、実務的に最低資本金の制限を受けずに設立できることは稀であり、仮に設立できた場合でも、少額の資本金で運用できるコンサルティング会社程度の規模となります。近年は、許認可ベースで設立可能資本金額が決定されるため、会社設立案件の都度、政府部門に対して問い合わせる必要があります。
■登録資本金と投資総額
外商投資法によれば、企業の登録資本金とその投資総額について、比率が明確に定められています。登録資本金と投資総額の差額は、企業による外資借入限度額として使用することが可能です。
登録資本金とは、会社を設立するために工商行政管理機関に登記する会社資本金の総額を指し、各株主が出資を引き受けた出資額を合計したものです。中国には授権資本の規定(たとえば、設立後に追加出資しやすくする上限枠)がないため、登録資本金は、株主が実際に出資すべき金額となります。登録資本金は通常人民元によって表示しますが、株主間の合意により外国通貨を用いて表示することも可能です。多く用いられる外国通貨は、USドル、HKドルおよび日本円です。
投資総額とは、会社の生産規模に応じて投入する必要のある基本建設資金および生産、運転資金の合計です。つまり、投資総額は、登録資本金と借入金の合計額を意味します。ただし、ここで指す借入金は、実際には国外の銀行または企業からの外債に限定されます。投資総額の算出は以下のように行います。
【投資総額の算出式】
投資総額=登録資本金+国外銀行からの借入金+国外企業からの借入金
■出資方式
株主は、金銭をもって会社に出資することができ、また、現物、知的財産権、土地使用権などの金銭によって出資額を評価できるものに基づいても出資をすることができます。さらに、法律に従い譲渡することのできる金銭以外の資産を価値評価して出資することもできます(会社法27条)。
非貨幣性資産をもって出資する場合には、中国国内で会社法等により設立された評価機関による評価を経て資産を確認しなければなりません。非貨幣性資産で出資した場合は、所有権移転手続をしなければなりません。
ただし、株主は、役務、信用、自然人の氏名、商業上の信用、フランチャイズ権または担保を設定している資産などを評価して出資することは認められません。
会社登録資本とする外貨と人民元、または外貨と外貨との間の換算は、払込当日に公表される中国人民銀行の為替レートの中間値に従って計算します。
駐在員事務所
駐在員事務所の中国語表記は「外国企業常駐代表機構」、駐在員事務所長の中国語表記は「首席代表」です。駐在員事務所では本社のために情報収集、連絡業務、市場調査等の補助的・準備的業務を行うことができます。
日本企業が中国に進出する最初のステップとして、駐在員事務所を設立することが考えられます。中国における外国企業の駐在員事務所は、中国の国内において直接的営業活動以外の活動に従事し、当該企業を代表してその経営範囲内の業務連絡、製品紹介、市場の調査研究および技術交流などを行うことができます。
駐在員事務所が直接的な営業活動を行った場合には、2万元以下の罰金を科されます(外国企業常駐代表機構登記管理規則、国函字[1983]第28号15条)。駐在委員事務所が現地で従業員を雇う際には、中国政府が指定した人材派遣会社(FESCO等)を通じて行わなければなりません。その場合は、原則として外国人および正式な戸籍を持たない中国人の雇用は禁止されています。
駐在員事務所は現地での営業権を持たないため営業活動はできません。このため企業所得税は課税対象外と考えられますが、間接的な営業活動に該当する業務内容については課税対象となり推定課税を受けます。
支店・分公司
■国外法人の支店
国外法人の支店とは、営業所または役務提供場所を指します。中国では、支店は法人格を有さないものとされ、国外法人が中国国内の支店を設立する場合には法律上の制限(2023年12月改正会社法)があり、支店の審査認可の方法は国務院が別途定めています。支店設立の明確な規定がないため、実務上では外国の銀行および保険会社以外の支店設立は困難な状況です。支店設立時には主管機関または審査許可機関の認可と、国家工商行政管理局の登記を行う必要があります。
■現地法人の分公司
中国国内の現地法人が設立する拠点を分公司といいます。分公司は、認可された経営範囲内で経営活動を行うことができます。しかし、企業法人格は有していないため、分公司は単独では対外的責任を負うことはなく、すべての責任は本社が負います。
営業性分公司は公司の経営範囲と同様の経営活動ならびに営業行為が可能です。
非営業性分公司は公司との連絡業務とアフターサービスといった業務が可能で、営業行為またはそれに関連する行為が禁止されています。
投資性公司
現地法人の一種として、投資性公司(投資性会社)があります。投資性公司とは、中国において外国投資者が独資または中国の投資家との合弁形式で設立した直接投資に従事する有限責任会社をいい、傘型会社とも呼ばれます。投資性公司の投資により設立された企業は外商投資企業として、中華人民共和国商務部より外商投資企業批准証書が、また国家工商行政管理局より外商投資企業営業許可証が公布されます。
■統括会社
中国の法令において、統括会社の定義を明確に定めたものはありませんが、一般に統括会社と呼ばれる場合、多国籍企業が地域単位で事業戦略の立案や管理を行う地域本社を指し、中国における統括会社は中国全土を統括する場合と、中国を含めた東アジア、或いはアジア全体を統括する場合があります。
組織の形態としては投資性公司、管理性公司、その他に分類できます。
投資性公司は投資業務それ自体を営業許可の範囲で行うことができ、国家レベルの法規を根拠としています。
管理性公司は主に中国内のグループ会社の管理を目的として設立された会社であり、他にも通常の一般性外商投資公司であって単にグループ会社にコンサルティングサービスを提供している会社を統括会社と呼ぶことも可能です。また駐在員事務所が情報収集の範囲で一定の統括機能を有している場合もあります。
■投資性公司の設立要件
外国投資者が投資性公司を設立する際の要件として、営業許可証の交付日から2年以内に3,000万USDを下回らない出資金を払い込み、登録資本金のうち残りの部分の出資金は営業許可証の交付日から5年以内に払い込むこととされていました。
しかし、2015年に要件が撤廃されています。現在でも地域によって商務部門や外資系企業の誘致を担当する部門から一定規模の新規投資を要求されることはあるものの、法令上は商務部門の事前認可なしに資本金額に制限なく設立が可能な状況になっています。
なお、業種や登記地区によって異なることがあるため、設立をご検討される場合には、事前の政府部門に対する確認が必要となります。
■投資性公司のメリット・デメリット
メリットは、中国の市場変化のスピードに合わせて意思決定権限を現地で担うことにより意思決定の迅速化を図り、これまでの事業部による縦割りの経営体制を刷新、および中国事業の横断的な展開を可能にする体制を構築することです。
また、税務面でも投資性公司であれば各子会社への出資が前提となるので、出資先からの配当を受け取ることが可能です。
デメリットは、販売利益など、非投資性収益を原資とした投資は不可であることです。
■投資性公司と管理性公司の違い
投資性公司と管理性公司の最大の違いは、投資性公司が、その経営範囲に投資を行うことを含めることができるのに対して、管理公司はこれが認められていない点です。
上記より直接の投資者として中国国内の各子会社に対してガバナンスを効かせることが期待され、また最終的には株主としての法に基づく権利行使が可能です。
管理性公司の場合は出資者の立場からではなく、種々の管理サービス、シェアードサービスを通じて子会社を監督することになります。
また、各子会社の視点からは投資性公司と管理性公司の要請への対応は義務ではないため、出資者に比べその権限は弱くなってしまいます。
三資企業の設立手続
三資企業(独資企業、合弁企業、合作企業)の設立手続はいずれの形態もほぼ同じです。根拠法は設立形態を問わず、外商投資法に依拠します。
合併企業(中国国内経済組織と外国経済組織の共同出資によって設立された有限責任会社)、合作企業を設立する場合、原則として外国側投資者による投資プロジェクトの確認、中国側パートナー選定、合併・合作協議書の締結による申請を行ってから、独資企業と同様の設立手続を行います。
審査機関の批准を受けたのち、申請者は認可証書を取得した日から90日以内に、認可証書に基づき、合併企業、合作企業の各所在地の工商局で登記手続を行わなければなりません。
日本側の手続
■現地法人情報の決定…❶
[商号候補の選定]
現地法人の商号(会社名)を選定します。有限責任会社であれば「有限責任公司」または「有限公司」、株式会社であれば「株式有限公司」または「股份有限公司」を商号の中に記載しなければなりません。また、商号は中国語(漢字)表記でなければなりません。
[機関設計]
中国に現地法人を設立する場合、有限責任会社の形態を選択する例が大多数です。有限責任会社を設立する場合、最も簡素な機関設計は、取締役(執行董事)1名、監査人(監事)1名です(改正会社法75条、83条)。
また、株主が全員一致で同意した場合、監事1名を置かないことも可能です(改正会社法83条)。
[資本金]
以前は、最低資本金の定めがありましたが、2013年に改正され(2013年改正会社法26条)、法律上は、資本金が1元でも設立可能になりました。ただし、実務上、資金繰りを考量した、経営を行うのに必要な資金の確保が会社設立申請時に要求されます。外資の場合はどのような業種であっても最低3万元以上を資本金とするケースが多いです。
[登記住所]
中国の登記住所は二重登記が認められていません。そのため、現地法人を設立する前に既に中国に事務所を保有している場合、その事務所を現地法人の登記住所として登録することができません。そこで、以下のいずれかの手法をとります。
①事務所のスペースを分割し、不動産の権利書も含めて独立させる
②事務所とは別の住所を登記住所とする
①は家主の同意と協力が必要です。複数の部屋を一括で借りている会社が選択することができますが、登記の変更手続が必要となります。
一方、②は家主の同意が得られなかった場合や事務所のスペースを分割できない場合に選択します。この手法では新たに家賃コストが発生します。
また、その住所が会社登記用として使用可能かどうかについては、その住所の「房地产权证(不動産権利証)」に記載の“用途”項目を確認する必要があります。
■必要書類の準備…❷
会社を設立するためには、審査機関の批准および各種登記が必要となります。日本側で準備する書類は以下のとおりです。
・出資者資格証明書
出資者の所在地の公証機関の公証と駐日中国大使館・領事館の認証が必要となります。公証と日本外務省の認証および中国大使館の認証済みの文書は慎重に取扱う必要があります。コピーをとる際にホッチキス等をはずしたことにより、何らかの問題が発生した場合には、その法律上のすべての責任を当事者が負うことになります。
・株主全員が共同で署名したフィージビリティスタディ報告
定款の必須事項のみを記載しておくと、変更が生じた際に全会一致の株主総会決議を開催する頻度を減らすことができます。
・各株主の銀行資本信用証明(原本)、登記登録証明ならびに法定代表の証明(いずれもコピー)外国投資者が個人である場合は身分証明書を提出しなければならない。
・投資各当事者の注冊会計師の監査を経た直近1年分の監査報告書付き決算書類
・設立予定の外商投資商業企業の輸出入商品目録、董事会構成員名簿ならびに投資各当事者の董事任命書
・会社の董事、監事、総経理の氏名、住所を記載した文書および委任派遣
・住所等を記載した任命書等
・外国企業の発行する署名権者に対する授権書または証明文書
・法定代表者の写真
また、中国側で準備する書類として以下のようなものがあります。
・外資会社設立登記申請書
・会社の定款
・財産権譲渡手続(最初の出資が非貨幣性の資産をもって行われる場合)完了の証明書類
・新規会社の住所証明書(賃借契約の原本、不動産証明書のコピー)
・その他、中国政府機関(商務局や税務局等)から要求される必要書類
フィージビリティスタディ報告書
フィージビリティスタディ報告書(実行可能性調査)とは、事前にプロジェクトの実行可能性を調査・検討することです。「F/S」と略記されることもあります。外商投資の申請で最も重視される書類のひとつで、大まかに次の4つに分類できます。
日中双方にプロジェクトチームを作り情報を収集し、上記4つの検討事項から調査項目について折衝していきます。報告書作成時点で有効な中国法規を理解し、実務上行われる事項の可否を検討することが重要です。フィージビリティスタディ報告書は計画書であるため、断定的な数値や表現は回避するべきです。
申請用のフィージビリティスタディ報告書は通常チェックリスト方式で作成されます。許認可を受けるための書類としてはこうした書式で十分ですが、日本国内で投資意思決定時に利用するために別途詳細なフィージビリティスタディ報告書を作成し検討することもあります。
外商投資企業による報告
外商投資企業は独資企業の設立を申請する前に、独資企業設立予定地の県級あるいは県級以上の地方人民政府に、一定の内容の報告書を提出します。独資企業が設立する予定所在地の県級あるいは県級以上の人民政府に対する報告には、独資企業の設立趣旨、経営範囲、規模、製品、技術設備、用地面積および要求、必要な水、電気、石炭、ガスあるいはその他のエネルギーの条件と量、公共施設に対する要求などの内容を記載する旨の規定があります。設立申請報告を受けた地方人民政府は報告の提出を受けた日から30日以内に書面で外国投資者に回答をします。
現地での手続
■企業名仮登録…❶
地方人民政府により設立申請が許可された場合、企業名仮登録をします。省市の工商行政管理局管内において、選定しようとする商号と類似する商号の同業他社が存在する場合に備えて、申請書に記載する商号は第3候補まで記載する必要があります(漢字2文字以上重複すると登録拒否される)。
会社名について政府の認可を受けたのちに企業名称事前審査許可通知書が公布されます。企業名仮登録は、設立する予定所在地の工商行政管理局に申請を行い通常5営業日で登録されます。
■外商投資企業項目許可申請…❷
地方商務部に対し、外国投資者が企業を設立する目的や計画を提出します。具体的には、以下の情報です。
・事業計画書:企業の事業内容、運営モデル、収益予測を詳細に記述
・投資者情報:投資者の身分証明書、法人登記証、出資額などを提出
・資本構成:資本金の額や出資比率を示す必要がある
・市場分析:対象市場の状況や競争環境についての分析を含む
・経営陣情報:経営者の経歴や役割を明記
外商投資企業項目許可申請が認可後、外商投資企業批准証書を取得することができます。
■工商登記…❸
外国投資企業批准証書を取得後1カ月以内に、工商行政管理局への登記手続(工商登記)を行います。ここでの登記内容は、主に営業ライセンス項目です。この登記が完了すれば、営業ライセンスが発行され、中国でビジネスを行うことが可能となります。手続には通常3営業日を要します。
期日までに手続が完了しなかった場合は許認可書の効力は自動的に失効するため注意が必要です。なお、以前は営業許可証の他に、組織機構コード証及び税務登記証を品質技術監督部門、税務部門へ別途申請する必要がありましたが、三証合一により営業許可証に統合されました。
■会社印鑑作成…❹
中国では、会社印鑑に対外的に大きな法的効力があり、法人の権利を象徴するものです。印鑑取得のためには、現地の警察署(公安局)に営業許可証、法定代表者の身分証明書および董事会メンバーの名簿の原本とコピーを添付して申請書を提出します。委任状があれば代理人による申請も可能です。申請後1営業日で印鑑作成の許可証が交付され、この許可証をもって公安局指定の印鑑作成業者が法人実印(公章印)、責任者印と財務印を作成することができます。
■統計局登記…❺
以下の書類を揃え、統計局に申請します。
・統計登記申請表(統計局指定フォームを使用)
・営業許可証のコピー
提出するすべてのコピーは、法人実印(公章印)捺印が必要で、手続には約1営業日を要します。この登記により、中国政府側での投資額などの分析が可能になります。
各種登記手続
工商登記が完了し、仮の営業許可証を受取り、統計登記が完了した後は、下記のような手続を行います。
■外国為替登記…❶
営業許可証を取得した後、30日以内に管轄の外貨管理局で外貨管理登録を申請します。所要期間は1営業日です。申請時に必要な主な書類は以下のとおりです。
・申請表
・批准証書
・会社の定款
・営業許可証
・銀行口座開設証書
税務登記の際、中国子会社の財務担当者が税務講習を受ける必要があります。受講しない場合、税務登記申請の認可が下りず、増値税発票を発行することができません。
■銀行口座開設…❷
中国には独得な外貨管理制度があります。中国の銀行口座には、外貨口座と人民元口座があります。外貨口座は、資本取引用の外貨専用口座と経常取引用の外貨基本口座の2つを開設しなければなりません。
外貨専用口座は資本取引、借入、借入金の返済、不動産その他資産の譲渡取引のために用いられます。口座の種類は外貨資本金口座、外貨借入金口座、外貨借入金返済口座、外貨臨時専用口座などがあります。
通常は法人設立の手続が完了した後、30日以内に企業所在地の外貨管理局で外貨登記を行い、外貨登記証と外貨ICカードを取得します。その後、口座開設銀行にそれらを提示して外貨資本金口座を開設します。また、外貨管理局から対外債務登記証、外貨借入登記証等を取得して、その他の外貨専用口座を開設します。
外貨専用口座を開設したあと、指定銀行(企業所在地の銀行。専用口座とは異なる銀行でも可)で外貨基本口座ならびに人民元口座を開設することができます。外貨専用口座開設までの所要期間は3営業日です。申請時に必要な書類は以下のとおりです。
・営業許可証
・批准証書
・外国為替管理登記証と他の関連書類
・法定代表者のパスポートのコピー
外商投資株式会社の設立手続
外商投資株式会社(外資株式会社)はすべての資本が均等額の株式で構成され、株主は引き受けた株式を上限として会社の責任を負う形態で、日本の株式会社に似ています。
ただし、中国で外商投資株式会社を設立する場合、さまざまな条件が存在します。
・最低1名の外国株主が必要
・国内外の株主が共同して株式を保有、かつ外国株主が保有
・会社の登録資本金の4分の1以上の株式が必要
・最低登録資本金額は3,000万元
日本企業が外商投資企業の形態で進出するケースは稀です。この形態で進出するメリットとして、日本の株式会社と同様、将来的な上場による資金調達ができることがあります。その他、投資額が大きくなることで外部からの信頼性が増すため、銀行からの融資を受けやすくなることも挙げられます。資本金額が小さいと設立許可が下りないというデメリットがあります。
外商投資株式会社の設立には大きく分けて新規設立と変更設立の2つの方法があり、その他、外国側出資者が発行する株式会社の株式を登録資本金の4分の1以上引き受ける資本参加による設立もあります。
■新規設立
新規設立は、はじめから外商投資株式会社として設立する方法で、発起設立と募集設立に分けられます。
[発起設立]
発起設立は、会社が発行する株式の全部を発起人が引き受けて会社を設立する方法です(改正会社法91条)。発起設立により新規設立を行う場合には以下の条件をすべて満たさなければなりません。
・発起人1名以上200名以下で、そのうち半数以上が国内住所を持つ(改正会社法92条)
・半数以上の発起人は中国人民共和国国内に住所を有していなければならない(改正会社法92条)
[募集設立]
募集設立は、会社が発行する株式の一部を発起人が引き受けて、それ以外の部分は公開募集または特定の対象者に募集して会社を設立する方法です(改正会社法91条)。募集設立により新規設立を行う場合には、以下の条件をすべて満たさなければなりません。
・発起人1名以上200名以下で、そのうち半数以上が国内住所を持つ(改正会社法92条)
・発起人のうち、最低1名は外国株主(暫定規定6条)
・発起人のうち、最低1名は株式募集前に3年間連続して利益を得ている記録があること(同規定6条)。また、同一人が外国株主である場合は、所在地の注冊会計師による監査報告書の提出が必要。発起人が会社設立に合意後、その設立手続を1名の発起人に共働して委任することが可能
■変更設立
変更設立は、既存の有限会社形態の外商投資企業を外資株式会社へ組織変更する手法です。
[設立要件]
変更設立により新規設立を行う場合は、出資者および最低資本金等以外にも以下のような要件があります。
・外商投資企業の設立後3年以上が経過し、かつ直近3年間連続して利益を上げている
・当初の外商投資企業の出資者が外資株式会社の発起人となり会社の設立合意書、定款を作成し、当初の許認可機関の審査を受ける
・当初の外商投資企業の権利、義務はすべて外資株式会社が引き受ける
[提出書類]
変更設立の手続を行う際には、以下の書類が必要です。
・当初の外商投資企業の契約書、定款
・当初の外商投資企業の会社の組織変更に関する決議
・当初の外商投資企業の投資者の契約書、定款の終了に関する決議
・当初の外商投資企業の資産評価報告書
・発起人の合意書
・会社の定款
・当初の外商投資企業の営業許可証
・会社設立申請書
・発起人の信用証明
・フィージビリティスタディ報告書
[変更手続]
外商投資企業の当初の出資者が発起人として会社の組織変更の合意書、定款に署名した後、当初の外商投資企業の所在地の認可機関に提出します。
一次審査の承認後、商務部の認可申請をし、発起人が認可証書を受領し、引き受けた出資額の払込完了後、会社の登記機関へ登記変更手続を行います。
[参考資料①]外商独資企業の設立スケジュール
[参考資料②]外商独資企業の設立に必要な情報
駐在員事務所の設立手続
駐在員事務所の設立は外国企業の駐在代表機構の管理に関する暫定施行規定に従います。当該規定は1980年に国務院により公布され、1995年に実施細則が発表されています。業種により規定が異なるため、設立の際は省務局への確認が必要です。
■受入保証先の決定…❶
受入保証先とは、これから駐在員事務所を設立する組織の身元保証に相当するものです。受入保証先(接待単位)は業種によりほぼ決まっており、過去に取引のあった中国企業または外事服務組織として決定します。ただし特定の業種(銀行、保険会社等)は受入保証先が不要です。
■場所の選定…❷
外国企業の駐在員事務所は、各地域で中国政府の指定する機関またはその許可を得ている機関(対外経済貿易委員会等)が開設を認めているオフィスビルおよびホテルにのみ、開設が認められます。事務所の開設場所を決定したのち、開設場所オフィスの賃貸借契約書を締結します。駐在員事務所の開設場所の選定は❶と同時進行で行います。
■設立の認可機関への申請…❸
[申請機関]
❶の後、業種別に各主管部門(認可機関)に認可申請を行います。
[書類提出]
許可申請にあたり、上記の許可機関に以下の書類等を提出します。
■登記手続…❹
認可手続終了後、認可機関から外国企業の中国における駐在代表機構認可証書およびその通知書が発行され、発効日より30日以内に駐在員事務所所在地の工商行政管理局に登記申請しなければなりません。登記申請に必要となる主な書類は以下のとおりです。
・駐在員事務所登記申請書
・認可機関から発行された認可証明書
・外国企業の中国における駐在代表機構認可証正本
これらの申請と同時に駐在員個人の登記申請も行う場合が多いです。登記申請後一定期間内に、駐在員事務所に対して外国企業(地区)駐在代表機構登記証が、また駐在員個人に対して代表証が交付されます。
登記手続後30日以内に認可証書、登記証および代表証を持参して、公安機関、財務機関、税務機関および銀行等の部門で関係手続を行う必要があります。
従来は、外国企業は主管政府機関による認可および登記を経なければ、中国国内に駐在員事務所を設立することができませんでした。すなわち、まず審査認可機関による認可を取得し、その上で工商行政管理局における登記手続を行って、はじめて駐在員事務所の設立を完了することとされてきました。外国企業常駐代表機構登記管理条例(中国国務院令[2011]第584号、同年3月1日施行)改正に伴い、設立手続はかなり簡略化され、多くの業種について審査機関による認可が不要となり、基本的には工商行政管理局における登記手続のみで設立することができるようになりました。
投資性会社の設立手続
外国投資者は、投資性会社の設立を申請する場合、申請書類について、設立を予定している投資性会社の所在地にある省、自治区、直轄市または計画単列市の主管商務部門の審査、同意を受けた後、商務部の審査、許可を受けなければなりません(投資性会社規定6条)。
申請に必要な書類は以下のとおりです(外商投資者が投資性公司を設立することに関する規定17条)。
・合弁企業を設立した諸方の申請書、契約、会社、定款。独資を設立した投資者の申請書、実行の可能性がある研究報告書、定款
・投資者の資格証明書(法人証明書を含む)または国家公認機関に認可された中国大使館の認定法律文献である身分証明書
・既に外資と認可された承認書(コピー)、営業証(コピー)
・資本検証報告書(コピー)
・過去3年間分の貸借対照表
・外商投資者が投資性公司を設立することに関する規定5条に基づいて作成された保証書
・企業名称の事前通知書
・登記する住所の使用証明書
・取締役会成員リスト、委託書、身分証明と履歴書
・委託書(委託人がいる場合)
・商務部が指定するその他の文献
・申請人が提出した文献のリストおよび連絡先情報(電話、ファクシミリ、携帯電話番号、メールアドレス)
商務部は2006年3月1日外商投資による投資性会社の設立・運営に対する審査認可権限の委託に関する通知を施行し、登録資本1億USドル以下の投資性会社の設立に関する審査認可権限を地方部門である商務部門に委譲しました。
現地法人の支店(分公司)の設立
外国企業の支店設立は、法律上禁止されていませんが、一般的に銀行のような金融等特殊業界を除き、支店の設立は認められません。ここでは現地法人の支店の設立について述べます。
[設立条件]
分公司を設立するための条件は原則として以下のとおりです。
・親会社が開業1年以上かつ登録資本金が全額払込まれている
・生産活動が正常に運営されており、既に製品を販売している
■董事会での分公司の設立決議…❶
新たな分公司の設立は企業にとって大きな影響を与えることになります。そのため、董事会の決議が必要となります。
■営業許可証のコピーを取得…❷
本社を所管する工商行政管理局からの同意を得て、分枝機構設立同意通知書と工商行政管理局公印を捺印した営業許可証の写しを取得します。
■所管する工商行政管理局に登録申請…❸
分公司設立地を所管する工商行政管理局に登録申請して、分公司に対する営業許可証を取得します。
現地法人は、会社の定款および会社登記証明書などの関連文書をもって中国の主管機関に申請を提出し、認可を経たのち、会社登記機関で法に従い登記を行い、営業許可証を受領することにより中国で支店を設立することができます(改正会社法244条)。
支店の設立に関する審査許可規定は国務院が別途定めるとされていますが、現在まで、外資銀行管理条例および外資保険会社管理条例の公布により、現地法人として支店の設立が認められているのは銀行と保険会社のみで、メーカーやサービス業等は明確な法律根拠がないため、中国に支店を設立することができません(改正会社法244条)。銀行と保険会社の支店の設立は法令に基づき、いずれも厳しい条件を満たしたうえで、それぞれ銀行行政監督管理機構(銀監会)と保険監督管理委員会(保監会)の承認を経て、相応する営業許可証を取得し、工商行政管理機関で登記を行う必要があります。
WTO加盟による規制緩和に伴い、銀行と保険会社の支店設置が急速に増えています。銀行業に関しては外資銀行管理条例およびその実施細則の施行により、現地法人化を条件に中国人に対しての人民元建てリテール業務が可能となるため、外国銀行の支店の現地法人化が相次いでいます。支店は営業ができるため、活動、経営活動に相応する資金を支給しなければなりません(改正会社法245条)。支店は法人格を有さないため、中国国内で行う経営活動についての民事責任は、現地法人が負うことになります(改正会社法247条)。
定款
定款は、会社の組織、経営活動、出資者の権利義務及び従業員等を拘束、保護する原則となるものです。合弁企業、独資企業の定款における必須記載事項は、「会社法」、「外資企業法実施細則」にて、定められています。
■意向書・合弁契約書
合弁会社設立には、フィージビリティスタディ報告書、定款に加えて、意向書及び合弁契約書の作成が必要です。
意向書
合弁企業、合作企業を設立する場合において、中国側のパートナーと本格的な交渉に入る前に、合弁の概要等について、合弁当事者間で交わす文書を一般的に意向書と呼んでいます。意向書の記載内容については法規の定めはなく、双方を拘束する法的拘束力はありません。しかしながら、倫理的な拘束力は残り、さらにこの意向書が今後交渉していくであろうフィージビリティスタディの基礎になると考えられます。実際のところ、意向書の内容が合弁契約書や定款の基礎を構成する要素となるため、法的拘束力がないとは言えども、実質的には当事者双方を拘束する力は備わっているものと考えます。
合弁契約書
フィージビリティスタディ報告書の記載内容は、合弁契約書や定款の内容と重複します。フィージビリティスタディ報告書は認可機関に提出するものであって、当事者を拘束するものではありませんが、合弁契約書は認可機関に提出するとともに当事者を拘束するものになります。したがって、作成には慎重な対応を要します。 合弁契約書の記載内容は、「合弁企業法実施条例」で定められている必須記載事項と各当事者で協議して記載できる任意記載事項の2種類あります。
法人設立後の手続
■資本金の払込
資本金の払込は複数回に分けることができます。分割で資本金を払込む際、分割回数などの制限はありません。その場合、外資企業設立申請書および外資企業定款の中に出資金の納付期限を記載しなければなりません。
また2023年12月29日、中国の全国人民代表大会(全人代)にて、会社法が改正され、同法第47条にて会社登記から5年以内に登録資本金の払込が必要と規定されました。
外資企業には工業所有権・非特許技術等の無形資産による出資について規制があります(中華人民共和国外商投資法実施条例)。当該工業所有権、ノウハウの評価は世界における通常の評価原則と一致しなければならず、その評価額は外国企業の登録資本の20%を超えてはなりません。
価格評価して出資した工業所有権ならびにノウハウについては、所有権証書のコピー、有効期間の状況とその技術性能、実用価値および評価計算の根拠と基準などを含む詳細な資料を揃えて、外資企業設立申請書の付随書類として認可機関に提出しなければなりません。
■財政局登記手続
財政局に対し財政登記証の申請をする際に以下の書類が必要となります。各書類のコピーには法人実印(公章印)が必要です。
・財政登記申請書(財政局指定のフォームを使用)
・営業許可証のコピー
・批准証書のコピー
■税関登記
税関登記の正式名称は輸出入貨物荷受荷送人登録登記です。設備や原材料の輸入、製品の輸出を行うために必要な手続で、各区により若干異なるため、登記を行う前に必ず各区の税関に確認する必要があります。必要書類は次のとおりです。財政局登記と同様に、各書類のコピーには法人実印(公章印)が必要です。
・税関登記申請表(税関指定のフォームを使用)
・営業許可証原本ならびにコピー
・批准証書のコピー
・対外貿易経営者備案登記表
・人民元基本口座許可証のコピー(人民元口座番号)
・定款のコピー
・営業場所を証明する会社所在地の土地使用権購入契約書(協議書)または建屋賃貸借契約書(協議書)のコピー(2部)
・賃貸契約場所の不動産権利証書(房屋産権証)のコピー(2部)
・会社公章印
■増値税一般納税人資格申請
増値税とは物品の販売や役務の提供、物品の輸入を行う場合に適用される税金のことです。仕入控除・輸出還付・増値税発票の自社起票が認められる納税者を一般納税義務者、認められない納税者を小規模納税義務者に分類しています。
このため、一般納税義務者に該当するか否かが重要な問題となります。これを確認するには、一定の基準を満たした企業が、管轄の税務局へ申請する必要があります。
一般納税人資格取得申請に必要な書類は以下のとおりです。
・増値税一般納税人申請(認定)審査表
・営業許可証写しのコピー
・納税申告記録カード
・発票購入簿の原本(税務登記後、税務局より受領するもので発票購入時の記録ノート、審査用)
・上崗証(会計業務に携わることができる許可証)以上の資格を有する会計人員(2名)の資格証のコピー
・販売契約書(月平均販売額が20万元以上のもの)
・登記地の賃貸契約書(または売買契約書)のコピー
参考文献
・中华人民共和国公司法
・中华人民共和国外商投资法
・中华人民共和国外商投资法实施条例
・私营企业暂行条例
・国有企业法・
・指导外商投资方向规定
・外资并购境内企业规定
・中华人民共和国反垄断法
・外商独资企业法实施细则
・关于外商投资举办投资性公司的规定