会計
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インドの会計制度
■インドの会計制度の概要
インドにおける企業会計は、インド勅許会計士協会 (ICAI:TheInstitute of Chartered Accountants of India)の会計基準審議会が定める会計基準、および2013 年会社法に従って運用されています。
・ インド会計基準(India Accounting Standards)
・ インド会計基準2016年改正法(the Companies(IndianAccounting Standards)Amendment Rules, 2016)
・ インド会計基準解釈(I n d i a A c c o u n t i n g S t a n d a r dInterpretation)
・ 2013年会社法(India Companies Act, 2013)
インドで企業活動を行う会社は、これらの法規に則って決算書を作成しなければなりません。インド会計基準は2 0 1 8 年3 月時点でAS(Accounting Standards) 29 まで制定されており、すべてのインド内国企業に適用されます。2 0 1 6 年9 月、インド勅許会計士協会(The Institute of Chartered Accountants of India)は IFRS に準拠したインド会計基準(Ind-AS:Indian Accounting Standards)
を公表しました。2016 会計年度より、銀行、保険会社、一部金融機関を除く上場・非上場企業に対し、会社の規模に応じて段階的に強制適用となりました。当該会計基準の適用ロードマップは以下のとおりです。
銀行、保険会社、その他金融機関に対しても、2018年4月より規模に応じて段階的に適用となっています。上記の基準を満たさない企業については、引き続き現行のインド会計基準が適用となります。この新しいインド会計基準は、その大部分がIFRSに準拠していますが、一部異なる内容もあります。たとえば、IFRS基準では貸借対照表のことを「Statement of Financial Position」と呼ぶのに対してインド会計基準では「Balance Sheet」、IFRS上では損益計算書を「Statement of Comprehensive Income」と呼ぶのに対し、インド会計基準では「Statement of Profit And Loss」と呼びます。このため、IFRSを強制適用している国とはいまだみなされていないのが現状です。
[会計期間について]
2013年会社法上、会計期間は法人税の課税期間同様の4月1日〜3月31日と定められました。ただし、海外の親会社が異なる会計期間を採用しており、インド子会社が連結決算の対象に入っている場合は、国家会社法審判所(NCLT:National Company Law Tribunal)の許可を得た上で、異なる会計期間を採用することが可能です。原則として合理的な事業上の理由(例:親会社の連結要件等)がある場合に限り承認されます。
[[会計帳簿について]
会計帳簿は証憑と併せて、少なくとも8年間保存する必要があります。また、会社登記局(ROC)やインド政府には会計帳簿等の書類を検査する権限が与えられているので、常に会社に備え置いておく必要があります。会計帳簿を保管する場所は、原則として登記上の本社である必要がありますが、例外として、インド国内の他の場所に保管することもできますが、その場合には、取締役会決議後7日以内に備え置く住所等を書面で登記官に通知することが求められます。
会計帳簿の記載事項としては、現金収支とその原因、商品の仕入と売上、資産と負債などがあります。会計帳簿は真実かつ公正であり、取引内容については説明が可能でなければなりません。また、日本と同様に発生主義および複式簿記による記帳が要求され、会計帳簿は証憑類とともに年代順に保管しなければなりません。
会計帳簿は、紙媒体に加え、電子モードでの保存も認められており、電子保存に関しては以下の要件が定められています。
・帳簿および関連書類は、電子モードで作成・保存する場合でも、インド国内でアクセス可能な状態でなければならない。
・電子データは、元の情報を正確に再現でき、改変が行われていないことを保証できる形式で保存すること。
・支店その他の事業所における電子帳簿も、本社の会計帳簿と同等の完全性を保持しなければならない。
・電子データをクラウドや外部サーバーに保存する場合、サーバー所在地、サービス提供者名、インド国内における責任者の氏名および住所を会社登記局に通知すること。
・バックアップをインド国内サーバー上で毎日(日次)保存すること
会社がインド内外に支店を持っている場合には、会社法に基づき、支店での取引を適切に会計帳簿に記録し、概要報告書を支店から登記上の本社に送付する必要があります。
[検査役について]
インドには会計帳簿の検査役制度があります。検査役は登記官等の役人が就任し、検査役は事前の通知なく検査を行う権利が認められ、取締役等は検査役に対して協力する義務を負います。
この検査は会社法第206条から第210条に基づき実施され、中央政府(MCA)が命じる「Inquiry」または「Investigation」として行われます。違反が重大な場合には、検査報告書を根拠として検察(Serious Fraud Investigation Office:SFIO)による刑事訴追に移行することもあります。
■会計決算について
[決算スケジュール]
コンプライアンス関係業務として、すべての会社は、定時株主総会終了後30日以内に財務諸表を、60日以内に年次報告書を会社登記局に提出しなければなりません。財務諸表の提出については、貸借対照表、損益計算書およびその他関連書類のコピーを3部提出する必要があります。提出する財務諸表は、監査人による監査済財務諸表であることが求められますので、それまでに法定監査を終了させておく必要があります。年次報告書には、以下の事項を記載します。
・登記上の本社の情報
・株主の情報
・社債権者の情報
・株式および社債の発行状況
・負債状況
・現在および過去の株主および社債権者の情報
・現在および過去の取締役、マネージング・ディレクター、マネージャーおよびカンパニーセクレタリー(会社秘書役)の情報
定時株主総会は、会計期間終了後180日以内に開催する必要があるため、3月末決算の法人を想定した場合、9月末までに開催しなければなりません。ただし、法人を設立して初年度は、会計期間終了後9カ月以内に開催すればよいため、前述の想定の場合、12月末までに開催する必要があります。
[財務諸表の作成]
コンプライアンス関係業務として、すべての会社は、定時株主総会終了後3 0 日以内に財務諸表を、6 0 日以内に年次報告書を、会社登
記局に提出しなければなりません。
財務諸表の提出については、貸借対照表、損益計算書およびその他関連書類のコピーを3 部提出する必要があります。提出する財務諸表は、監査人による監査済財務諸表であることが求められますので、
それまでに法定監査を終了させておく必要があります。
年次報告書には、以下の事項を記載します。
・ 登記上の本社の情報
・ 株主の情報
・ 社債権者の情報
・ 株式および社債の発行状況
・ 負債状況
・ 現在・過去の株主および社債権者の情報
・ 現在・過去の取締役、マネージング・ディレクター、マネージャー
およびカンパニー・セクレタリー(会社秘書役)の情報定時株主総会は、会計期間終了後1 8 0 日以内に開催する必要があるため、3 月末決算の法人を想定した場合、9 月末までに開催しなければなりません。ただし、法人を設立して初年度は、会計期間終了後9 カ月以内に開催すればよいため、前述の想定の場合、1 2 月末までに開催する必要があります。
■税務申告
税務上は法人税、個人所得税の申告のほか、源泉税の四半期報告やGST の申告など、日本ではなじみがない制度もあります。個々の税目の申告納付スケジュールについては8 章を参照。
原則的な取扱と異なるケースが発生することもあります。たとえば、国外関連者と取引を行っている企業は、会計士が作成する移転価格証明(3CEB)を1 1 月末までに提出しなければなりませんが、この対象となる場合には、税務監査および法人税の確定申告は通常より2 カ月後の11 月末となります。
■財務諸表の作成
インド会計基準およびインド会社法に従って作成します。貸借対照表と損益計算書には、取締役会を代表する者による署名が求められます。取締役がインドにいない場合は、他の取締役が署名した上で、代表者が署名できない理由を明記します。
作成した財務諸表は、インド勅許会計士の監査を受けた後に定時株主総会へ提出し、株主の承認を受けなければなりません。
会社法上、取締役がこれら規定に違反した場合には、1年以下の有期刑もしくは5万ルピー以上50万ルピー以下の罰金、または併科となります。また、取締役でない者が委任を受けた場合で任務懈怠があるのであれば、同様に罰せられます。作成された財務諸表および取締役報告書は、監査報告書とともに会社登記局にForm AOC-4(連結財務諸表の場合は AOC-4 CFS)で電子的に提出します。
インドにおける財務諸表の特徴は、貸借対照表に固定性配列法を採用している点にあります。固定性配列法とは、流動性の低い項目から順に配列する方法であり、資産については「固定資産」「流動資産」の順、貸方は「資本」「固定負債」「流動負債」の順に記載します。
損益計算書に関しては、日本では「売上総利益」「経常利益」「当期純利益」と利益を3段階に区分して算出しますが、インドでは、一部の特別損益項目を除き、総収益から総費用を引いて「経常利益」を一度で算定することに特徴があります。
[XBRL形式での年次報告について]
2011年3月31日に終了する会計年度より、以下の要件を1つでも満たす企業は、会社登記局に提出する年次報告について、XBRL(Extensible Business Reporting Language)形式が求められるようになりました。
・インドで上場しているすべての会社およびそのインド現地子会社
・払込資本金が5,000万ルピー以上の会社
・売上高が1億ルピー以上の会社
XBRLとは、各種財務報告用の情報を作成、流通、利用できるように標準化されたXMLベースのマークアップ言語です。XBRLでは、タクソノミと呼ばれる概念と、インスタンスと呼ばれる表示とがそれぞれ定義付けされています。タクソノミとは、データの概念を定義するもので、概念同士の関係を説明し、概念についての追加的な情報を提供します。一方、インスタンスとは、タクソノミによって定義付けられた概念を報告形式に整え、文字・数字に関する表示を行っています。タクソノミとインスタンスが分離されていることで、勘定科目名の日本語を英語に入れ替えが可能になり、オフィスツールなどにエクスポートして各種財務指標を計算する作業が容易になるなど、非常に拡張性に富んでおり、優れた言語であるとされています。
また、XMLベースであることから他の言語との互換性に優れており、多くの国や証券取引所においてXBRLでの事業報告および財務報告が求められるようになってきています。
[連結財務諸表の作成について]
2013年会社法129条(3)に従い、1社以上の子会社、または関連会社を有する会社は、単体財務諸表のみならず連結財務諸表の作成が義務付けられています。連結財務諸表については単体財務諸表と同様の形式及び方法にて作成され、単体財務諸表とどともに年次株主総会にて株主より承認を受ける必要があります。
国際財務報告基準への対応
■国際財務報告基準(IFRS)とインドにおけるコンバージェンスについて
国際財務報告基準(IFRS:International Financial ReportingStandards)とは、国際会計基準審議会(IASB)により制定される会計基準です。これまでは各国が独自の会計基準を制定し会計処理を行ってきました。ところが、国によって会計基準に相違があると、財務諸表を利用する投資家にとって国際的な比較が困難となり、また財務諸表を作成する企業は異なる会計基準に従って財務諸表を作成しなければならず、コストが大きくなるという問題がありました。IFRS はこうした問題を解消するために制定された、国際的に統一された会計基準です。世界各国はIFRS をその国の会計基準として採用(Adoption)するか、IFRS と同等の基準となるようにその国の会計基準を収斂(Convergence)させるよう求められてきました。
■インドと日本のIFRSへの取り組み
インドでのIFRS 適用は毎年延期されてきました。当初は、2 0 1 1年4 月以降開始する会計年度からの適用を予定していましたが、一度延期となり、さらに2012 年2 月にインド政府はIFRS 適用の決定を2014 年12 月まで延期すると発表しました。その後、2015 年1月2 日にMCA からIFRS に収斂された新インド会計基準(Ind AS)の適用について、金融機関、保険会社、ノンバンクを除く企業に対するロードマップが、プレスリリースされました。2 0 1 5 年4 月時点では、自主的な適用が可能であるとしながらも、2016 年以降は、段階的に強制適用対象企業の範囲を拡大させていく内容となっています。
親会社、子会社、関連会社、合弁会社については、純資産の規模について言及されていませんので、小規模会社でも適用対象になると考えられます。
日本では、上場会社は2010 年3 月期からIFRS の任意適用が許可されており、その後、上場会社への早急な強制適用が議論されていましたが、結局のところ、現時点まで強制適用は行われていません。しかし一方で、近年、IFRS 基準で財務諸表を作成している日本企業も増えてきています。
新インド会計基準(Ind-AS)の制定に当たっては、国際会計基準(IAS)またはIFRS がベースとされていましたが、以下のような観点から適切ではないと判断された場合、IFRS とは異なる基準を制定することとされていました。
・ 法制度
・ 経済環境
・ 企業の準備状況
・ IFRS で選択可能な処理
インドは、会計に関する取扱の多くが法令で規定されており、このような事情から、Ind-AS についてIFRS への収斂は進めていくものの、IFRS の採用は行わない旨が明らかにされています。ただし、収斂を進める上で、可能な限りIFRS をそのまま採用することが方針とされており、別段の取扱を設けるのは、国内の諸状況から特に必要とされた場合に限るとされています。
■インド子会社の連結決算
インドに子会社を設立した場合、原則として日本の親会社はインド子会社を連結決算の対象としなくてはなりません。インド子会社ではインドの会計基準に則った財務諸表を作成しますが、日本の親会社での連結決算時には、日本基準、米国会計基準、国際財務報告基準のいずれかに修正した上で、連結決算を行わなくてはなりません。したがって、インドに子会社を設立する会社の経理担当者は、少なくともインド会計基準と日本基準の違いを理解しておく必要があります。
また、インド子会社で作成する財務諸表が適正なものでなければ、親会社で連結決算を行う際に、修正などの余計な負担がかかることとなってしまいます。しかし、設立当初から経理に日本の親会社と同等
のコストを掛けることは非常に困難です。
現地駐在員の多くは営業や製造等の担当者であり、必ずしも会計や税務に関する知識が十分でないケースが多く見受けられます。会社のスタート時点では、現地駐在員に正しい会計処理をさせようと努力するよりも、現地の会計事務所の指導を受けながら駐在員が経理を行うか、会計事務所に会計業務を委託する方が効率的です。
■インドの会計基準
前述のとおり、一定規模以上の企業や上場企業に対しては、IFRSへの収斂が進められているInd-AS が強制適用されています。
Ind-AS強制適用対象以外の企業、つまり純資産が25 億ルピー未満の企業で、かつInd-AS 強制適用対象会社の持ち株会社や子会社に該当しない企業については、Ind-AS の採用は任意であるため、●ページに掲載した従来のインドの会計基準(AS)を採用しているケースが多くあります。AS は、現在AS29 まで制定されています。
そのうち、AS3(キャッシュ・フロー計算書)、およびAS17(セグメント報告)については、中小規模企業への強制はありません。ここで言う中小規模企業とは、以下のすべての要件を満たす企業を言います。
・ インド国内外において、株式、社債等を上場しておらず、上場準備などもしていない
・ 銀行、金融機関、保険会社以外であること
・ 直近の事業年度における売上高が5 億ルピー以下
・ 直近の事業年度中のいずれの時点においても借入金が1 億ルピーを超えない
AS はおおむね、Ind-AS や国際的な会計基準と同様になりますが、日本の会計基準やIFRS と比較すると以下のような相違点があります。
[ インド版IFRS(Ind-AS)について]
監査制度
■監査制度
インドの監査制度は、2 0 1 3 年会社法と2 0 1 6 年会計監査規則(CARO:Company Audit Report Order, 2016)とによって規定されています。これらによると、外国会社を含むすべての会社は、法定監査(Statutory Audit)を受けなければなりませんまた、所得税法により、課税年度における売上高が1,0 0 0 万ルピーを超える企業は、上記法定監査に加えて税務監査(Tax Audit)を受けなければならないとされています。
これに関しては、日本においては、資本金の額が5 億円以上または負債の額が2 0 0 億円以上の大会社のみ、会社法に基づく会計監査人監査を受けなければならないとされています。
インドでは、すべての会社が法定監査を受けなければなりませんので、注意が必要です。
■法定監査
インドにおける法定監査とは、監査報告書において会社の作成した財務諸表が、インド国内で公正妥当と認められる会計基準に準拠し、真実かつ公正な外観を与えるものであるかどうかについての意見を、
会計監査人が表明することを言います。
また、会計監査人が監査に必要なすべての情報および説明を入手したか、会社が法律に従って会計帳簿を適切に保管しているか、貸借対照表および損益計算書が会計帳簿と一致しているかについても記載します。
監査人は、監査報告書に2 0 1 3 年会社法に加えて2 0 1 6 年会計監査規則の規定する一定の事項についても記載しければなりません。ここで言う一定の事項とは、会社の内部統制に関する事項、税金等の法
定支払義務の納付状況や、調達した資金の使途に関する事項等を含みます。
定時株主総会へ提出する財務諸表は、法定監査済でなければならないので、実質決算日から6 カ月以内に法定監査を終了しなければなりません。
監査人が作成する監査報告書の様式は日本と異なっており、財務諸表が適正に作成されているかだけではなく、内部統制に関する事項、税金の納付状況、調達資金の使途などについても記載されます。これは、2016 年会計監査規則の規定に基づくものです。
2014 年4 月以降に始まる会計年度より、会計監査人の独立性を維持し、財務諸表に対する信頼性確保を目的として、MFR(MandatoryFirm Rotation)という会計監査人を強制的に変更する制度が始まりました。これには3 年間の猶予期間が設けられていたため、2 0 1 7年4 月以降にすべての企業に適用されました。ただし、例外として、銀行、保険会社は本制度の対象外とされています。
本制度では、会計監査人の任期を最大5 年までとして、定期的に変更することを義務化しています。ただし、会計監査人が法人の場合は2 期(最大10 年)まで継続可能となっています。また、一度任命した会計監査人には、任期終了後5 年間のクーリング・オフ期間が設けられており、その期間中は再度会計監査人になることができません。
■税務監査
インド所得税法44AB条に従い、以下に該当する会社および事業主は税務監査の対象となります。
・前年度における総売上高が5,000万ルピー以上
・前年度における特定の事業からの収入が500万ルピー以上
・インド所得税法第44ADおよび第44AE条に規定された推定課税制度を適用の上、推定課税の根拠として使用された推定利益率よりも低い利益率となる場合
・推定課税制度を適用の上、推定利益率よりも低い所得を申告し、かつ所得が非課税限度額を超える場合
・推定課税制度を適用の上、途中で制度適用を停止し、その後5課税年度以内に所得が非課税限度を超える場合。
なお、前年度の現金収入および支払がそれぞれ総収入および支払額の5%未満である場合は、総売上高の閾値は1億ルピーとなります。
税務監査は、勅許会計士によって実施されなければならないため、通常は法定監査と同様の監査人により実施されます。
税務監査の期日は、法人税の確定申告期日である1か月前となり、国外関連者間取引を有する企業(法人税確定申告期日11月末)の場合は10月31日、それ以外の会社は9月30日が期日となります。税務監査対象企業が正当な理由がないにもかかわらず期日までに履行しない場合、総売上高の0.5%もしくは15万ルピーのいずれか低い金額が罰則として規定されています。
■原価監査
インド企業省(MCA:Ministry of Corporate Affairs)発行の通達によると、特定の業種に該当し、そのうち一定の要件を満たした企業については、原価監査人を任命し、原価監査報告書による証明を受けなければならないとされています。
原価監査人は、在庫の明細や付加価値額などを記載した原価監査報告書を作成し、これを中央政府および被監査企業に対して提出します。会計年度末日から180日以内に提出しなければなりません。
[業種カテゴリー①]
バルク医薬品(Bulk Drugs)、製剤(Formulations)、肥料(Fertilizers)、砂糖(Sugar)、工業用アルコール(Industrial Alcohol)、電力産業(Electricity Industry)、石油産業(Petroleum Industry)、電気通信(Telecommunications)業を営む場合で、以下の要件に該当する企業は原価監査を受ける義務が生じます。
・5千ルピー超の純資産(Net Worth)を保有する企業
・売上高が2億ルピーを超える企業
・インド国内又は国外の証券取引所に、株式又は債券を上場する企業、上場予定の企業
[業種カテゴリー②]
セメント(Cement)、タイヤ&チューブ(Tyres & Tubes)、鉄鋼プラント(Steel Plants)、鋼管とパイプ(Steel Tubes and Pipes)、紙(Paper)、殺虫剤(Insecticides)業を営む場合で、以下の要件に該当する企業は、原価監査を受ける義務が生じます。
・売上高が10億ルピーを超える企業
・インド国内又は国外の証券取引所に、株式又は債券を上場する企業、上場予定の企業
原価監査人は、会計年度開始日から9 0 日以内に選任されなければなりません。また、原価監査報告書には、比較可能性を持たせるために、過年度の数値を記載することが要求されており、たとえば2018 ~ 2019 年の原価監査報告には2017 ~ 2018 年の数値に加えて2016 ~ 2017 年の数値も記載する必要があります。
■内部監査
インド会社法(Companies Act, 2013)第138条および Companies (Accounts) Rules, 2014に従い、以下に該当する会社は内部監査(Internal Audit)の対象となります。
・すべての上場会社
・非上場公開会社で、以下のいずれかの条件を満たす場合
-払込資本金が5億ルピー以上
-前会計年度の売上高が20億ルピー以上
-前会計年度のいずれかの時点にて借入残高10憶ルピー以上を計上した場合
-前会計年度のいずれかの時点にて預り金残高2憶5千万ルピー以上を計上した場合
・非公開会社で、以下のいずれかの条件を満たす場合
-前会計年度の売上高が20億ルピー以上
-前会計年度のいずれかの時点にて借入残高10憶ルピー以上を計上した場合
内部監査は、会社の取締役会、または監査委員会(Audit Committee)によって任命された内部監査人(Internal Auditor)により実施されます。内部監査人は勅許公認会計士またはコスト会計士(Cost Accountant)である必要がありますが、会社の従業員であっても任命することが可能です。
内部監査の範囲、頻度および方法は、取締役会または監査委員会が決定します。内部監査人は、会社の内部統制、リスクマネジメント、ガバナンス体制の有効性を評価し、その結果を経営陣に報告します。
内部監査は単なる法令遵守にとどまらず、不正防止や業務効率化、統制強化を目的とした経営管理上の重要な機能として位置付けられています。そのため、法定要件を満たさない企業においても、自主的に内部監査制度を導入する事例が増えています。
なお、内部監査の未実施または虚偽報告があった場合、会社法第450条に基づき、会社および責任者に対して罰金が科されることがあります。罰金額は通常10,000ルピーから100,000ルピーの範囲です。
内部統制への対応
■海外子会社の内部統制の必要性
2 0 0 9 年6 月に、大手電機メーカーのベトナム子会社に出向中の社員が約8 億円を横領し、行方不明になるという事件が起こりました。この事件により、日本から直接目の届かない海外子会社の運営には、海外子会社の潜在的なリスクの高さを念頭に置かなくてはならないことを、改めて思い知らされることとなりました。
日本で上場する企業は2 0 0 8 年4 月1 日以降に開始する事業年度から、内部統制の構築と運用について、経営者が責任を負うことになりました(日本版SOX 法:J-SOX)。また、経営者は財務報告に関わる内部統制の有効性を評価し、報告する義務も負っています。
内部統制の構築と運用は上場会社にとっての義務となったことは間違いないのですが、前述の事件を考えれば、単に義務だからという理由で内部統制を整備するのではないことがわかります。内部統制は事業リスクを軽減させるために、積極的に整備・運用していくべきものであると言えます。
■海外子会社の内部統制の整備運用
連結決算での財務報告全体において重要な役割を果たす内部統制(全社統制)は、インドに子会社を設立した場合、影響を受ける可能性があります。全社統制の評価のためには、会計方針、財務方針、トップ・マネジメントによる意思決定プロセス等についてのリスクを評価することが必要です。
これには、すべての連結決算の対象となる在外子会社や持分法の適用対象会社(関連会社)が該当しますが、連結決算に対する影響が僅少であるいう理由で、設立直後のインド子会社は、全社統制評価の対象外と考えられる可能性はあります。
しかし、インド子会社の将来の成長を考えれば、いずれ全社統制の対象となることは確実です。会社が大きくなってから、突然、内部統制を構築し、運用していくことは思った以上に難しくなるものです。有効な内部統制の構築と運用のための労力を削減できるよう、将来を見据えた子会社のマネジメントを行っていくことが企業の長期的な利益に繋がると考えられます。
営業活動に注力している現地駐在員に管理業務やその構築を任せることは、企業活動として必ずしも効率的とは言えません。むしろ外部の専門家などのリソースを積極的に活用していく方が効率的な場合もあります。
■インドにおける内部統制に関する法規定
インドでは、以下の特定の企業を除く、すべての会社が財務報告に関わる内部統制の構築と運用を行い、その適正性について取締役会にて報告することが義務付けられました(The Companies Rules, 2014, Rule 8(5))。
・One person company(一人会社)
・会社法2条85項に規定されたSmall company(小規模会社、払込資本金が4,000万ルピー以下、または直近の売上高が4億ルピー以下)
・銀行、保険会社、会社法8条に規定された慈善目的会社
・公開会社の子会社または持ち株会社でない非公開会社、かつ以下要件を満たす会社
-払込資本、準備金および剰余金の合計が1,000万ルピー未満
-会計年度のどの時点においても、銀行等からの借入金総額が1,000万ルピー未満
-会社法Schedule Ⅲに開示される総売上高が1億ルピー未満
対象となる会社の取締役は、年次報告書にて会社が適切な内部統制を構築し効果的に運用されていることを年次報告書にて記載することが義務付けられます。
また、2016年3月期からは、内部統制の構築・運用とその有効性について、法定監査と同じ会計監査人が評価を行い、監査報告書に意見を表明することが義務化されました。なお、前会計年度の売上高が5億ルピー未満、もしくは借入残高が2.5億ルピー未満の非公開会社については、法定監査人による内部財務統制に対する報告義務については対象外となります。
監査報告書における内部統制にかかわる報告要件及び形式は、会計監査規則CARO(Companies Auditor’s Report Order)にて規定されており、2024年現在はCARO2020が適用されます。以下にて、CARO2020にて規定された、内部統制にかかわる21項目になります。
■インドの会計システムと財務統制について
インドにおいては、財務会計処理を行う上で、Tally(タリー)というソフトウェアが主流となっており、一定の日本企業も同様にインド子会社にてTally を使用しています。その他、SAP社のSAP R/3、オラクル社のOracle PBCS、Microsoft 社のDynamics NAVなどが、インドに進出している日本企業で、好んで使用されているようです。
これらの製品を選択するときは、当然ながら、インドの会計制度・税制に適用していることが求められます。その他、親会社との連結作業の負担軽減、原価計算を含む管理会計に対応しているか否か、製品価格などを比較検討し、規模や年数といった会社の状況に応じて適切なものを選択することが必須です。
会社規模や経営環境、親会社側からの内部統制の要請レベルに従って会計システム及び会計ソフトの検討を行うべきですが、会社規模が拡大し財務統制や業務効率性がより重要となる状況であっても、設立当初に使用していた会計ソフトを引き続き使用している、といった状況も珍しくありません。インド子会社の成長度合いとそれに伴って求められる財務統制のレベルや業務効率性の観点から、定期的に会計ソフトの変更を検討する必要があるでしょう。
インドには上記のような会計ソフトウェアを取扱う販売店が多数ありますが、サポート体制の充実度合いは販売店により大きく異なります。初期導入サポートはもちろんのこと、法改正、バージョンアップへの対応などについて事前に販売店に問い合わせ、対応レベルを確認しておくことが非常に重要です。
また、2023年3月期の会計年度より、The Companies (Accounts) Rules, 2014, Rule3(1)に従い、すべての会社は監査証跡(Audit trail)を記録するための会計ソフトの使用が義務化されています。会計帳簿上の取引仕訳等の記録の変更がなされた際に変更にかかわる編集ログ(変更日及び時間、ログインID等変更者の情報等)の取得が機能上装備され、同機能が無効化できない/されていないことが求められます。監査人は、監査証跡機能の履行の有無のみならず、正しく運用されているのか、無効化や改ざん等の可否、監査証跡の記録保存等について、監査報告書にて意見を提出します。各会計ソフトの販売会社についても、同改正に伴う機能追加等を行っておりますが、古いバージョン等を引き続き使用している場合等については、要注意となります。
■参考文献
[参考資料・ウェブサイト]
・ The Institute of Chartered Accountants of India(インド勅許会計士協会)https://www.icai.org/
・ Ministry of Corporate Affairs (インド企業総務省)http://www.mca.gov.in/
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https://www.eyjapan.jp/services/assurance/ifrs/issue/ifrs-others/other/pdf/ifrs-jgaap-comparison-v40.pdf
・ PWC ‘Ind AS pocket guide 2016 Concepts and principles of Ind AS in anutshell’
https://www.pwc.in/assets/pdfs/publications/2016/ind-as-pocketguide-2016.pdf
・ The Institute of Chartered Accountants of India (Set up by an Act ofParliament), New Delhi ‘INDIAN ACCOUNTING STANDARDS (IND AS): AN OVERVIEW(REVISED 2018)’https://resource.cdn.icai.org/50757indas40425indas.pdf
・ 尻引義博「インドの財務報告に係る内部統制制度の導入」PwC’s View、Vol. 1(February 2016)
https://www.pwc.com/jp/ja/japan-knowledge/pwcs-view/pdf/pwcsview201602-
india.pdf#search=%27%E5%86%85%E9%83%A8%E8%B2%
A1%E5%8B%99%E7%B5%B1%E5%88%B6+%E3%82%A4%E3%83%B3
%E3%83%89%27
・The Institute of Chartered Accountants of India (インド勅許会計士協会)HP
・Ministry of Corporate Affairs (インド企業総務省)HP
・Income Tax Department (所得税局)HP
・新日本有限責任監査法人 日本基準-国際財務報告基準(IFRS)の比較 Version 3.0