(タイトル未設定)
Ⅰ.インドネシアにおけるM&Aの動向
インドネシアは、人口が世界第4位の3億人弱おり、国内マーケットしてもASEAN諸国の中でも大きな経済大国の1つとして今後注目されている国です。
インドネシアは1950年、オランダ植民地から独立しました。独立後、政府は主要産業を国有化することで発展し、1990年代には製造業を中心として戦略的成長を図り、成長してきました。しかし、企業間癒着や政府関係者の親族によるファミリービジネスが社会問題となり、さらに、アジア通貨危機も重なったことで、当時のスハルト大統領による政権は幕を閉じました。
その後、2004年に発足したユドヨノ政権下で行われた国営企業の民営化や経済政策により、個人消費は安定的に成長しています。インドネシアの実質GDP成長率は、2025年時点で5.0%と、東南アジアの中でも高い水準を保っています。近年では、その市場価値が認められ、インドネシアに事業を展開する企業が増えています。
外資規制が他国に比べて厳しい中でもM&Aを使用し、厳しい外資規制を回避し進出を行う方法や、またユニコーン企業(Gojek、tokopedia、traveloka等)も輩出するようなスタートアップ大国になりつつあり欧米諸国からも注目が集まっています。
次のグラフは2017~2023年の間に、インドネシアで行われたM&Aのうち、公表されているM&Aの件数と金額の推移を表しています。
2020年、2021年とコロナの影響もあり、件数が少なかったですが、2022年のM&A件数は23件と増加しています。2023年も現状の公表ベースで18件ほどM&Aが行われ、また2022年と比べ、取引金額は上昇しており、1,034百万米ドルの取引金額から、大型のM&Aが行われたと考えられます。
■日本企業のM&A事例
次表は、近年、日本からインドネシアに対するM&Aの事例です。
日本 | インドネシア | 年度 | 出資比率 | 業種 |
株式会社電通 | Dwi Sapta Group | 2017 | 51% | 広告業界 |
日本たばこ産業 | KaryadibyaMahardhika | 2017 | 100% | たばこ事業 |
株式会社レンタルのニッケン | PT. Berlian Amal Perkasa | 2023 | - | 建機 レンタル会社 |
天馬株式会社 | PT. Hyuk Jin Indonesia | 2023 | 100% | プラスチック成形加工メーカー |
AnyMind Group株式会社 | PT Digital Distribusi Indonesia | 2023 | 100% | EC支援事業 |
大和工業株式会社 | Gunung Raja Paksi Tbk | 2025 | 80% | 不動産 |
ホッカンホール ディングス | PT. DELTAPACK INDUSTRI | 2018 | - | 飲料パッケージ |
ノダ | PT.SURA INDAH WOOD | 2018 | 100% | 建材製品製造 |
Ⅱ.投資規制
M&A活動を含む公開会社の活動および資本市場は、インドネシア財務省を構成する政府機関である金融サービス庁(OJK:Otoritas Jasa Keuangan)によって規定および監督されており、M&Aに関連する法規には以下のようなものがあります。
会社法では一般的なM&Aについての規定がありますが、OJKRuleと資本市場法が会社法よりも優先されます。また、OJKRule、資本市場法では規定されていないM&Aに関する論点については、会社法が適用されます。
■投資調整庁からの許可
投資調整庁(BKPM:Badan Koordinasi Penanaman Modal)は、インドネシアの投資に関する政府機関であり、外国株式の保有は投資調整庁の承認の下で行われます。つまり、インドネシアでの企業買収において、対象企業が外国企業(PMA:Penanaman Modal Asing)の場合、および対象となっている株式が投資調整庁の下で登記された外国株主が株式の過半数または支配権を持っている場合、投資調整庁からの承認が必要となります。
■投資規制
インドネシアでの投資においては、投資の可否と出資金額を検討する必要があります。
出資金額については、2013年投資調整庁長官令第5号(2013年5月27日施行)により、従来は窓口規制であった資本規制および投資金額規制が、具体的な規定として明記されました。
同令では、最低投資金額が規定されており、各金額相当の外貨(USドル)の投資金額、資本金設定が必要となります。また、2025年投資調整庁長官令第5号により、製造業・非製造業を問わず、KBLIコード(5桁)ごとに最低投資金額100億ルピア超、最低払込資本金額25億ルピア超を満たす必要があります。
特に、商社をはじめとしたサービス業の場合、100億ルピアの投資金額は現実的ではない場合が多いです。投資金額については、四半期に1度その調達の進捗状況について、投資調整庁に報告する必要がありますが、投資金額の調達ができず、その結果投資が実現しなかったことによる罰則はありません(ただし、資本金額については、原則として全額の払込およびその証明書が会社登記手続上必要です)。2021年オムニバス法により多くの外国投資への禁止分野、規制分野(ネガティブリスト形式の規制)が大幅に緩和されました。ただし、一部の業種では引き続き投資規制が適用されるため、その内容を確認する必要があります。
ネガティブリスト改定
2021年2月2日に施行された大統領規程2021年10号により、外国投資規制が規定され、その後大統領令2021年49号により一部改定されました。今回の改定により、大幅に外国投資規制が緩和され従来350項目の規制内容から46項目へ減少しました。投資規制緩和の1つとして、ディストリビューターの100%での出資が認められるようになりました。
■規制業種
条件付きで投資が許可されている事業は、外国資本の出資比率に制限がある場合や、特別許可が必要な業種など、詳細に規制要件が定められています。代表的なものを以下に挙げますが、詳しい内容はOSSシステム内で原文を確認するもしくはBKPM日本支社へ問い合わせるなど、どのような制約の下に投資が可能かを判断することが重要です。
■ノミニー
インドネシアでは、外国からの投資規制としてネガティブリストが存在します。そのため、いかにインドネシアが魅力的なマーケットであっても、この外資規制によって外国企業の設立や買収が不可能な場合があります。これを回避するためにノミニーと呼ばれる手法があります。
たとえば、外国資本出資比率40%未満と規制されている分野において、日本企業が40%まで出資し、51%に達するために必要な残り11%を出資企業と友好的な現地企業に出資してもらい、事実上、被出資企業の経営権を獲得する方法です。
しかし、ノミニーは法律上違法行為であり、実際にノミニーを行った人は禁固刑、出資を受けた法人は営業許可取り消しという罰則も規定されています。会社設立にあたってリスクとなりますので、知らないうちにノミニーを使用することなどないよう注意が必要です。
■資本金に関する規制
最低授権資本金額は、会社創設者間の合意に基づき決定し、最低引受資本金額および最低払込資本金額は授権資本金額の100%となります。
■外国企業の土地利用に関する規制
インドネシアにおいては、外国人ならびに外国企業が土地を所有することは禁止されています。外国企業に認められているのは、法律上、土地の利用権のみです。この土地の利用権は、土地の表面のみについて行使ができるものであり、空中や地下の天然資源の利用までは含まれません。外国企業が取得可能な土地利用権は、その用途の違いにより、開発権、建設権、使用権に分類されます。
インドネシアにも、日本と同様に不動産登記制度があり、上述の3つの権利もインドネシア国家土地局で登記した時点より権利が発生します。また、土地利用権を取得した場合、取得額の5%が不動産取得税として賦課されます。
インドネシアに工場を建設しようとする場合、建設権(HGB:Hak Guna Bangunan)に加えて、立地に関する許可(IL:Izin Lokasi)を土地局から取得した後、建物の建築許可(IMB:Izin Mendirikan Bangunan)を公共事業局から取得する必要があります。
公開会社買付規制
■任意公開買付
公開会社の株式の買収は、任意公開買付(VTO)という方法で行うことができます。
任意公開買付は、資本市場監督庁の自発的公開買付に関する規則9条1項、OJK Rule No.IX.F.1(Kep-263/BL/2011)で規定された方法です。その後、2015年第54号(54/POJK.04/2015)で一部改定されました。
任意公開買付は、個人、会社、組織または団体が株式(またはその他の株と交換可能な証券や株式取得権のある証券)を取得するためにマスメディアを通して、他の証券との交換や購入による入札を行うことです。マスメディアとは、新聞、雑誌、映像、テレビ、ラジオ、その他の電子媒体、文書、冊子、印刷物であり、100人以上に公表されているものを指します。VTO取引は、証券取引所内でも取引所外でも行われます。後述する義務的公開買付において負う義務は、任意公開買付では負いません。
[情報開示義務]
任意公開買付を希望する事業者はOJKに以下の表明(公開買付届出書)を提出します。
・株式を上場している証券取引所
・対象企業
・オファー期間にも有効な場合は、同じターゲット企業によって発行された同じ株式のための任意公開買付を提出している他の事業者
任意公開買付表明がOJKに提出されたのと同時に、この情報は、少なくとも2日間にわたってインドネシア語の全国紙1紙を含む2紙の新聞上に公表しなければなりません。
任意公開買付表明は、OJKから任意公開買付届出書の効力が発生した旨の通知を受領していれば有効となります。
[禁止事項]
任意公開買付を申請した当事者は、表明の公表後15日から有効期限までの間に売買を行うことを禁じられています。
任意公開買付申請の当事者は、買収する株式の種類やポジションによって、別の規制または要件を課されることはありません(株式の利益または権利に齟齬がある場合は除く)。ターゲット企業は公開買付を発表した日から任意公開買付有効期間満了まで、任意公開買付の効力である支配権の変更を妨げるような行為をしてはなりません。
[タイムテーブル]
任意公開買付の有効期間は、任意公開表明の執行日から2営業日以内に始まります。有効期間は最低30日であり、OJKの承認があれば90日までは延長をすることができます。
任意公開買付期間の延長は少なくとも15日で、全国で流通しているインドネシア語の新聞で最低2日間公表されます。
任意公開買付による取引(VTO Transaction)は、支払の着金または証券の配送によって、任意公開買付有効性期間満了の12日以内に完了しなければなりません。
任意公開買付に応募された証券について、買付が成立しなかった場合には、特別な条件がない限り、証券(Offered Se K Rule IX.H.1、およびその改定版9 /POJK.04/2018では上記のような規定はありません。
■義務的公開買付制度
義務的公開買付とは、企業買収に当たって、情報の適切な開示と、株主間の平等(公平な売却機会)を確保するための制度であり、公開会社の支配に変更が生ずるときには公開買付が義務付けられるという制度です。義務的公開買付が適用された場合、OJK Rule IX.H.1および9 /POJK.04/2018が定める枠組みに従わなければならず、任意公開買付を規定するOJK Rule IX.F.1は適用されません。
9/POJK.04/2018では公開会社の支配は「その会社の50%以上の議決権を伴う株式を保有しているか、会社の管理・方針を、いかなる方法によるものであっても、直接または間接的に決定できる場合」と定義され、以下によって証明されます。
・ある株主が他の株主との契約によって議決権の50%以上を保有する場合
・公開会社の設立証書または契約書に基づき、会社の財務および経営権を保有する場合
・公開会社の取締役および監査役の任命、解任権を保有する場合
・公開会社の取締役会および監査役会の議決権の過半数を支配する場合
・公開会社のその他の支配権を保有する場合
ただし、以下に該当する場合は公開買付の義務を負いません。
・グループ内での支配権移の場合
・第三の当事者が保有する株式で、新しい支配者から同じ条件でオファーを受けた場合
・第三の当事者が株式を保有している企業で、その企業の株式に対して同時に義務的公開買付および任意公開買付を行う場合
・大株主によって保有されている株式(直接および間接的に20%以上)
・他の支配者が保有する株式
[概要]
新たに支配を獲得した株主は、支配獲得後1営業日以内に下記の情報を公表し、新聞広告及び資本市場・金融機関監督庁に次の事項について報告を行う必要があります。
・株式の獲得数および株式保有数
・買付者に関する情報(氏名、住所、電話番号、事業内容など)
・支配獲得後の目的
また、新たに支配株主になった者は、上記の報告に加え他の株主が保有する株式について、公開買付を実施しなければなりません。(ただし、①新たに支配株主になった者と個別に株式譲渡の合意をしている株主、➁新たに支配株主となった者から同一の条件で個別に株式購入の申し出を受けている株主、➂同時期に株式公開買付を行っている株主、④法定の要件を満たす主要株主及び➄他の支配株主を除く。)
そして、資本市場監督庁から強制公開買付届出書の公表を許可する旨の通知書を受領した後、2営業日以内に全国紙の新聞上において公表し、公表の翌日から30日間の強制公開買付期間が開始されます。公開買付期間終了後、12日以内に決済を完了させ、決済完了後5営業日以内に資本市場監督庁に対して強制公開買付報告書を提出しなくてはなりません。
公開買付の結果、公開会社の資本金の80%以上を支配株主が取得した場合、最低20%を市場に返還する義務があり、公開買付終了から2年以内に80%を超えて保有する株式については第三者に譲渡し、最低300名の株主によって保有されている状況に戻さなければなりません(フリーフロート規制)。
[公開買付価格]
強制公開買付けにおける株式の買付け価格は、①支配権の移転が生じた株式取得の公表日前90日間の各取引日のもっとも高い市場価格の平均値又は➁支配権の移転が生じた株式取得における株式取得価格、のいずれか高い方の価格に設定しなければなりません。
■情報開示
義務的公開買付を規定するOJK Rule IX.H.1では、取得者は買収に係る売り手株主の情報や機密情報を、交渉中に公開することを許可しています。
取得者が開示を選択する場合、最低1日以上、インドネシア語の新聞で公表され、ターゲット企業、OJK、ターゲット企業が上場する取引所に提出されます。その後、取得者は、実行から2営業日以内に獲得の延長や終了を含む進捗状況の開示義務を果たさなければなりません。
開示義務のある情報は、以下のとおりです。
・取得予定の株式の額
・取得者の個人情報(氏名、住所、電話番号、事業形態、取得の目的)
・取得者によって既に取得済みの証券の額(ある場合)
・獲得の目的達成のための計画
・交渉の方法とプロセス
・交渉の内容
しかし、交渉段階では買収計画について公表する義務はありません。取得者が開示しないことを選択する場合は、取引が完了するまですべての交渉に係る情報機密は維持されます。
なお、獲得完了後、以下の情報を開示する義務があります。
・取得した株式の額、株式の株式数
・当事者の個人情報(氏名、住所、電話番号、事業形態、取得の目的)
・取得者が組織であるという旨(該当する場合のみ)
Ⅲ.会社法及びM&Aスキーム
■M&Aの分類
インドネシアにおけるM&Aは、主に新設合併、吸収合併、直接買収、間接買収、分割の5つに分類されています。しかし、合併はインドネシア内国法人同士でないと利用できないことから、日本を含めた外国企業が利用する方法は主に買収となります。
M&Aに関する法規定は、会社法第8章に記載されています。ここでは、M&Aを行うに当たって特に留意すべき事項のみ解説します。
■吸収合併計画書の作成
被吸収合併会社および吸収合併会社の取締役会は、吸収合併計画書を作成する必要があります(法第123条第1項)。
吸収合併計画書の作成後は、監査役会(コミサリス会)の承認を経て株主総会への提案がなされます。合併という会社の存続に関わる重要事項に関する変更であることから、取締役会、コミサリス会、株主総会という会社のすべての機関の承認を取得することが求められます。
ここでの留意点は、特定の会社はこの法律の事項以外に、政令に基づき事前に関係官庁に承認を得る必要がある点です。「特定の会社」とは、銀行およびその他金融系企業などの金融業を指します。
また、これらの規定は資本市場関連法令に規定がない場合は、公開会社にも有効です。吸収合併計画書に記載すべき株式交換比率に関しては、考慮する必要がありません。一般的な日本国内のM&Aと同じく、株価は市場価値によって判断されます。
■従業員への通知
当事会社の取締役会は、合併計画に関して監査役会(コミサリス会)の承認を得た後、株主総会招集の30日前までに従業員に対して合併計画の概要を書面により通知しなければなりません(法第127条第2項)。これは、会社の従業員は、会社が合併等の組織再編行為を行う場合に自ら会社を退職することを選択したときには、通常の自己都合退職の場合よりも割増しの退職金を受け取る権利が労働法上認められているため、かかる権利を行使するかどうかの判断をする機会を付与するためです。
■債権者の保護
当事会社の取締役会は、株主総会招集の30日前までに少なくとも1紙の新聞に合併計画の概要を公告しなければなりません(法第127条第2項)。これは、会社の合併により自己の利益が損なわれると考える債権者に対して異議を申し立てる機会を付与するためです。合併に異議がある債権者は合併計画の公告後14日以内に異議を申し立てなければならず(同条第4項)、この期間内に異議申立てがなされなかった場合には、債権者はかかる合併を行うことを承認したものとみなされます(同条第5項)。
期間内にいずれかの債権者から異議申立てがなされた場合には、まず取締役会が当該債権者と交渉を行い、株主総会の開催日までに当該異議申立てを解決するよう努めることになりますが、当該債権者との間で合意に至らない場合には、かかる異議申立てがなされていることを株主総会において説明し、株主総会においてその解決を図らなければならなりません(同条第6項)。かかる異議申立てに対して株主総会で何らかの解決案を用意し、債権者に対して提示して債権者の合意が得られない限り、合併、買収あるいは分割を実行することはできません(同条第7項)。
■株主総会による合併計画の承認
当事会社の取締役会は、コミサリス会の承認を経た合併計画を株主総会に提出し、株主総会の承認決議を取得します。合併計画の承認決議は、議決権の4分の3以上を有する株主の出席であり、決議要件は、出席株主の議決権の4分の3の賛成が必要です。なお、合併に反対する株主は、その合併が株主又は会社を害すると評価できる場合には会社に対してその株式の適正な価格による買取りを請求することができますが(法第126条第2項、第62条)、それ自体は合併手続を止める効力はありません(同条第3項)。
■合併証書の作成
株主総会による承認後、合併計画の内容を盛り込んだ合併証書が公証人によって作成され、公証人の面前で当事会社が締結します(法第128条第1項)。この公正証書はインドネシア語で作成しなければなりません。吸収合併に伴い法務人権大臣に対して定款変更の承認又は届出(承認が必要となる定款変更については、本章第4節2.参照)の手続が必要となる場合、かかる承認の申請又は届出に際してはこの合併証書の写しを添付します(法第129条第1項)。
法務人権大臣より定款変更が承認された日又は届出が受理された日において、合併の効力が生じることになります。吸収合併は実施されたが存続会社の定款は変更がない場合には、定款変更の承認・届出手続は不要となりますが、その場合でも消滅会社の法人格消滅の登記及び存続会社の株主構成の変更等に関する登記事項の変更を行う必要があるため、合併証書の写しを法務人権大臣に提出しなければなりません(法第129条第2項)。この場合、法務人権大臣に対して合併証書を提出して受理された日において、合併の効力が生じることになります(法第133条第1項)。
一方で、新設合併の場合、合併証書に基づき新設会社の設立証書が作成されることになり(法128条第3項)、新設会社は会社の設立認可を法務人権大臣から取得するため、設立認可申請書に当該合併証書の写しを添付して提出しなければなりません(法第130条)。法務人権大臣より会社の新設についての認可が付与された日において、新設合併の効力が生じることになります。
■合併結果の公告
存続会社又は新設会社の取締役会は、合併の効力発生日から30日以内に合併の結果を少なくとも1紙の新聞において公告しなければなりません(法第133条第2項)。また、①吸収合併の場合、存続会社の定款変更に係る登記及び官報での公告並びに消滅会社の法人格の消滅に係る登記、②新設合併の場合、当事会社の法人格の消滅に係る登記及び新設会社の設立認可に係る登記及び官報での公告については、法第29条及び第30条の規定に従って法務人権大臣が行います(法第132条)。
■株式取得における買収
買収においては、発行済株式もしくは発行予定株式を、取締役会または株主から直接取得することになります。その際、会社法89条に定めた定足数および決議方法を満たした株主総会の決議に基づくこととなります。株主総会における決議スキームは、以下のとおりです。
また、取締役会経由による買収を行う場合には、買収する側は株式取得を行う目的を被買収企業の取締役会に届出ること、ならびに買収計画書の作成をする必要があります。
買収計画書の記載項目は、以下のとおりです。
これに対し、株主から直接株式の買収を行う場合には、買収計画書を作成する必要はありません。しかし、被買収企業の定款に定められている株式移管規定と、会社が第三者との間で締結している契約には注意を払う必要があります。
■株主総会決議の事前通告
前述のように合併・買収を行うに当たっては、取締役会は株主総会決議の事前通告をしなければなりません。これは、自分の利益が損なわれると感じる関係者に対し、異議申立の機会を与えるためです。
■監査役会(コミサリス会)による買収計画の承認
買収会社及び対象会社の取締役会が作成した買収計画は、株主総会の決議にかけられる前にそれぞれの会社のコミサリス会の承認を取得しなければなりません(法第125条第6項)。会社の買収という組織の根幹に関する事項であることから、取締役会、コミサリス会及び株主総会という会社の全ての機関の承認を取得することが求められます。
■従業員への通知
合併手続同様、対象会社の取締役会は、買収計画に関してコミサリス会の承認を得た後、株主総会招集の30日前までに対象会社の従業員に対して買収計画の概要を書面により通知しなければなりません(法第127条第2項)。
■債権者保護手続
買収における債権者保護手続も基本的には合併における手続と同様です。すなわち、対象会社の取締役会は、株主総会招集の30日前までに少なくとも1紙の新聞に買収計画の概要を公告しなければなりません(法第127条第2項)。かかる買収に異議がある債権者は買収計画の公告後14日以内に異議を申し立てなければならず(同条第4項)、この期間内に異議申立てが無かった場合には、債権者はかかる買収を行うことを承認したものとみなされます(同条第5項)。
期間内にいずれかの債権者から異議申立てがなされた場合には、まずは取締役会が当該債権者と交渉を行い、株主総会の開催日までに当該異議申立てを解決するよう努めることになりますが、当該債権者との間で合意に至らない場合には、かかる異議申立てがなされていることを株主総会において説明し、株主総会においてその解決を図らなければなりません(同条第6項)。かかる異議申立てに対して株主総会で何らかの解決案を用意し、債権者に対して提示して債権者の合意が得られない限りは、買収手続を進めることはできません(同条第7項)。
対象会社の取締役会は、コミサリス会の承認を経た合併計画を株主総会に提出し、株主総会の承認決議を取得します。合併計画の承認決議は、議決権ベースで75%以上の株式を保有する株主が出席し、出席株式数の75%以上の賛成が必要です。なお、買収に反対する株主は、その買収が株主又は会社を害すると評価できる場合には会社に対してその株式の適正な価格による買取りを請求することができますが(法第126条第2項、第62条)、それ自体は買収手続を止める効力はありません(同条第3項)。
■公正証書の作成
株主総会による承認後、買収計画の内容を盛り込んだ買収証書が公証人によってインドネシア語で作成され、公証人の面前で買収会社及び対象会社が署名することで締結になります(法第128条第1項)。かかる買収証書は、法務人権大臣に対して定款変更の届出を行う場合に添付しなければなりません(法第131条第1項)。
■買収結果の公告
対象会社の取締役会は、買収の効力発生日から30日以内に買収の結果を少なくとも1紙の新聞に公告しなければなりません(法第133条第1項及び第2項)。また、対象会社の定款変更に係る登記及び官報での公告については、法務人権大臣が行います(法第132条)。
■株主からの直接の取得
対象会社の取締役会を通さず対象会社の株主から直接対象会社の株式を取得することにより対象会社の支配権を獲得する場合、上述した買収計画の策定及びコミサリス会の承認の手続は不要となり、売主である既存株主との間で直接締結する株式譲渡契約に基づき株式の譲渡が行われることになります。この場合、会社法及び対象会社の定款に基づく株式譲渡に関する制限に留意しつつ(法第125条第8項)、合わせて、組織再編行為という観点から、一定の手続規制に服することになります。実務上、外国会社が直接インドネシアの株式会社を傘下に収める手法としては、この類型の買収が用いられることが圧倒的に多いです。取締役会を通じた買収に比べて買収計画の策定が不要である点において利便性が高く、また取引の実態に鑑みても、買収交渉は直接対象会社の株主との間で開始するケースが多いからです。
■会社分割
会社法が定める会社分割には、完全会社分割と一部会社分割の2種類があります(法第135条第1項)。完全会社分割とは、被分割会社の資産と負債の全てが2社又はそれ以上の承継会社に譲渡され、その結果被分割会社は法的に消滅するものを意味し(同条第2項)、一部会社分割とは、被分割会社の資産と負債の一部が1社又はそれ以上の承継会社に譲渡されますが、被分割会社は会社分割後も法的に存続するものを意味しています(同条第3項)。会社分割の具体的な手続に関しては会社法上ほとんど規定されておらず、反対株主による買取請求権、債権者異議手続、従業員に対する通知、株主総会による承認が合併や買収に関する手続と同様に行われるとされているのみで、手続の詳細は下位規則に委ねられているものの(法第136条)、下位規則が未だ制定されていないため、実務的には会社分割を使った組織再編というのは手続上不明確な点が多く、実例も少ないです。
会社分割は被分割会社の特定の事業を包括的に譲渡する組織法上の行為であり、当該事業に含まれる債権債務や財産の個別の移転手続が不要である点において、個別の移転手続を要する事業譲渡に比べて手続上のメリットがあります。また、被分割会社の特定の事業に係る債権や財産を現物出資により新会社を設立する方法もありますが、現物出資を行う場合には鑑定人による個々の債権や財産の価値の評価手続を要するため実務的には時間とコストを要しますが(法第34条第2項)、評価手続が不要である点でも現物出資に比べ手続上のメリットがあると言えます。かかる観点からも、施行規則の早期の制定が望まれます。
■事業譲渡
この他にも、事業ごとに相手方に売却する事業譲渡という方法が採られることがあります。事業譲渡とは、一般的には会社の事業の(重要な)一部を第三者に譲渡することを意味し、事業譲渡スキームは、基本的には相手方に対する資産等の一つ一つの売買契約という点で日本における会社法と同じですが、インドネシアの会社法上事業譲渡に関する規定を設けていません。上述のとおり、会社の事業の一部を包括的に譲渡することができる会社分割の制度は施行規則が未制定であることから実務的には利用しにくい状況にあり、したがって代替手段として事業譲渡が利用される頻度は高いです。
インドネシアにおける事業譲渡を行う際のポイントは以下の通りです。
○会社の純資産の50%を超える資産の譲渡については株主総会の特殊決議が必要です(法第102条第1項乃至第5項、第89条)
○またかかる資産の譲渡が株主又は会社に対して損害を与える行為でこれに同意できない株主は、会社に対して自己の株式を適正な価格で買い取ることを要求する権利を有することができます(法第62条第1項)。
○資産、債権債務、契約、雇用関係を一つずつ個別に譲渡する必要があります。
○不動産に関する権利移転は、譲渡証書(Deed)に基づいて権利移転、登記する必要があります。
○契約関係の譲渡については、契約当事者全ての同意が必要です。
○従業員に対して譲受会社への転籍は強制することが出来ず、通常の解雇である退職金、功労金の支払いが必要となります(cf.労働法上、自己都合退職であれば支払い不要)。
債権者からの異議申立があり、かつ、これを解決できない場合、取締役会は株主総会で解決できるよう当該異議申立を報告する義務があります。また、異議申立が解決するまでは、合併および買収・分割行為を行うことは禁止されています。事業譲渡は会社分割と異なり、事業を構成する資産、債権債務、契約関係、雇用関係等を一つずつ個別に譲渡させる必要があり、かかる権利移転の方法については移転の対象となる客体によってその方法も異なるため注意が必要です。
■株主の権利
M&Aに関する株主の権利に関しては、会社法126条に規定されています。同条によると、新設合併、吸収合併、直接買収、間接買収、分割に関する株主総会決議に同意しない場合(具体的には、会社が株主または会社自身に損害を与えるような行動をとり、株主総会決議に同意できない場合)、株主は、その権利を行使することができます。
ここでいう損害を与える行為には、以下のようなものがあります。
・定款の変更
・会社の純資産の50%以上の価値を有する資産の譲渡または担保の差し入れ
・新設合併、吸収合併、直接買収、間接買収、分割
会社の行為が上記に該当した場合、株主は会社に適正な価格で株式を買い戻してもらうことができます。ただし、この権利行使は新設合併、吸収合併、直接買収、間接買収、分割の過程を妨げないものでなければなりません。
■当局への申請
株主総会にて承認された新設合併、吸収合併、取得または分割は、インドネシア語で公正証書として作成され、そのコピーを法務人権省(Minister of Law and Human Rights)に届出る必要があります。これら組織再編に外国投資の要素が含まれている場合は、さらに投資調整庁による承認が必要となります。
Ⅳ.関連する各種規制・法律
■資本市場法
公開会社が関連する合併及び株式譲渡(買収)に関しても、原則会社法の規定が適用されますが、それに加えて、インドネシア資本市場監督庁(BAPEPAM-LK)が制定した資本市場法令(資本市場法及び関連する規則を含む。)及びインドネシア証券取引所(IDX)の規則が適用されます。資本市場法令が会社法と異なる定めを設けている場合には、資本市場法令の規定が優先されます(会社法第123条第5項及び第137条)。現在有効な資本市場法は、1995年施行のUNDANG-UNDANGREPUBLIK INDONESIA NOMOR 8 TAHUN 1995 TENTANG PASAR MODALとなります。ここではM&Aに関連する内容について解説していきます。
■市場操作およびインサイダー取引規制
資本市場法の第6章には、投資家保護を目的として、市場操作およびインサイダー取引に関する規定があります。
市場操作規制とは、株式を売買する際に、他人への詐欺行為を禁止するものです。具体的には、株式に関して利益を得る、もしくは損失を免れるために、誤った情報開示をしたり、重要な情報の開示をしないといった行為を指します。
この市場操作やインサイダー取引は市場監視によって常に注意を払われており、疑わしい行為はすぐにOJKに報告されます。違反した者は行政処分ないし刑事罰の対象になり得ます。
競争法
インドネシアで最初に施行された競争法は、1999年施行のUndang-Undang Nomor 5 Tahun 1999 tentang Larangan Praktek Monopoli dan Persaingan Usaha Tidak Sehatとなります。1999年競争法は現在も大枠として有効である一方で、オムニバス法により一部改正されました。その後、2021年施行の政府規則Peraturan Pemerintah (PP) Nomor 44 Tahun 2021 tentang Pelaksanaan Larangan Praktek Monopoli dan Persaingan Usaha Tidak Sehatで罰則について規定されました。ここではM&Aに関連する内容について解説していきます。
■M&Aにおける禁止事項
M&Aに関連する項目として、以下の行為が禁止されています。
役職の兼任
同一人物が競争関係等にある複数の会社に所属すること(競争26条)。
株式保有
事業者が、競争者の株式の過半を保有することにより、市場支配的地位に該当する市場構造をもたらすこと(27条)。
合併等
事業者が他の会社と合併もしくは提携、または他の会社の株式を取得することにより、独占的行為または不公正な事業競争をもたらすこと(28条)。
合併等については、総資産額2兆5,000億ルピアまたは総売上額5兆ルピア(銀行業については総資産額20兆ルピア)を超えるものについては、合併等の発効日から30営業日以内に、事業競争監視委員会(KPPU、以下委員会)に届出なければなりません。なお、事業者は合併等の計画について委員会に対し事前に相談することができます(29条および2010年政令第57号)。会社は独占や不平等競争を引き起こすすべての買収について、委員会に報告しなければなりません(2010年政令第57号で示されている、合法企業の合併や買収と独占や不平等競争を引き起こす企業株式の取得)。
2010年政令第57号において、資産価値やある程度の売上を上回るいかなる合併、統合、買収もそれが行われた30日以内に委員会に報告しなければならないと定められています。これは、個人および企業の独占や不平等競争を禁止するためです。
合併、統合、買収が独占や不平等競争を招くかどうかについては、取引の評価を行う権利があります(事業競争監視委員会規則3条1項、2010年政令第57号)。
同政令9条4項では、委員会が、通知書の結果、独占および不平等競争の疑いがある場合、委員会は合併、統合、買収を中止させ、損害賠償または罰金(250億~1,000億ルピア)、禁錮刑(最長6カ月)を請求することができます。
■事業競争監視委員会への買収前相談
委員会に取引前の相談をすることは可能ですが、通知書の義務の免除はありません。
合併、統合、買収を考えている企業が委員会に相談すると、書面にて助言、指導、忠告が行われます。しかしながら、すべての企業が委員会に相談できるとは限りません。合併、統合、買収を考えている企業のうち、事業資産や売上高が上限を超える場合に限り、口頭もしくは書面にて相談を依頼することができます。
委員会は提出された書面をもとに評価をします。合併や買収に関するすべての書類を受取ってから90営業日以内に書面にて助言、指導、忠告します。2010年政令第57号11条4項、2010年規則7条によると、委員会の評価は合併、統合、買収の計画書の承認および棄却に影響を及ぼしません。また、取引が完了したのちに行う委員会の評価の権限を阻害するものではありません。
書面で示された評価は独占的慣行または不平等競争が起こる兆候がある場合に対する見解です。委員会へ相談をした企業団体は、評価に影響されないため、評価のいかんにかかわらず計画に言及することができます。ただし、次の段階で、委員会が独占や不平等競争が起こりそうな合併、統合や買収であると判断したとき、取引を終了させることができます。
Ⅴ.M&Aに関する税務
■資産取引
資産買収は現存する子会社か、新しく設立されたインドネシアの法的主体を通して行われます。資産の買収、移転には、さまざまな政府機関の承認が必要です。
インドネシアでは買収対象企業の未開示の債務を確定することが困難であるため、資産買取の手法がよくとられます。しかし、売り手はさまざまな理由から通常株式や持分取引を行い、結果として、インドネシアでの資産取引はわずかな件数となっています。
資産取得にかかわる税務としては、売り手側の資産の売却益には22%の法人税が課されます。また、資産取引では税金負債は移転されず、売り手側に残ります。
資産および事業取引では、売り手が5%の所得税を、買い手が5%の不動産移転税をそれぞれ負担します。ただし、承認された買収においては、不動産移転税の免除を受けることができます。
■取得価格
複数の資産および事業を取得した場合、買い手は取得価額を適切に分配しなければなりません。インドネシアでは特別なルールは現在のところ存在しませんが、税務当局から指摘を受けないように留意する必要があります。
事業合併、結合、拡張による資産の移転は時価により会計処理をします。一定の適格要件を満たす場合は資産の帳簿価格による移転が認められるため利益や損失は生じません。しかし、国税総局(DGT)による承認が必要となります。
[のれん]
資産および負債を取得する際には、インドネシア会計基準では、国際財務報告基準(IFRS)と同様に資産または負債の取得日の公正価値で評価されます。当該資産および負債の取得価格のうち、その公正価値を上回る部分がのれんです。
のれんは、一般的に一律20年と設定されていましたが、20年を超える実際の経済的耐用年数を利用することも可能となりました。
[減価償却]
減価償却費は課税所得から控除されます。減価償却が可能な資産は事業に使用されている、もしくは生産品として所有されている有形資産で、耐用年数が1年以上のものです。特定の事業を除き、土地は減価償却の対象にはなりません。
建物・建築物は恒久的なものと非恒久的なものに分類されます。実務上は、税法が耐用年数を決定しますが、税法の資産カテゴリに当てはまらない資産は耐用年数によって減価償却されます。建物とその他の不動産は定額法によってのみ、それ以外の資産は定額法もしくは定率法のどちらかを選んで減価償却することができます。
また、ビジネス目的テストを通過した場合、資産を簿価で移転することができますが、その場合、DGTからの許認可が必要です。
[付加価値税]
2010年4月1日に改定された付加価値税(VAT)規定により承認された合併や統合は、インドネシアVATの対象にはなりません。一方、承認された合併や統合以外の資産および事業取引については、通常どおり11%が課税されます。
[譲渡税・印紙税]
土地や建物の権利譲渡には、回収不能な権利譲渡税(5%)が課されます。ただし、承認された合併や統合であれば、50%の課税分が免除されます。
また、領収書、合意書、委任状といった特定の法律文書に対しては、通常10,000ルピアの印紙税が課されます。
■株式取引
持分譲渡は、譲渡益に対する税負担は一度で済むため、売り手にとっては好ましいのですが、多くの場合、譲渡時のインドネシアでの課税をさらに制限するよう、株式取引に際してオフショアの資本がしばしば用いられます。
ほとんどの株式買収は、インドネシアの国内からの直接投資により行われます。買い手は配当に係る源泉税やキャピタル・ゲイン課税を最小化するため、インドネシアと租税条約を締結している国に所在する法人を通じてインドネシアの対象企業を買収しようとします。最適な買収ストラクチャーかどうかは、買い手の課税関係に影響されます。
[税務引当金と保証]
株式取引では、買い手はターゲット企業のすべての関連負債や未払税金を引受けるため、買い手はより広範囲な保証を求められます。
税務当局は、税務申告が提出された日から5年以内に税務監査を実施します。世界基準によれば、インドネシア税務当局の税務監査は厳しいといわれているため、税務リスクを低減するために、専門家からの助言を受けるべきです。インドネシアでM&Aを行う際は、税務デュー・デリジェンスを行うことで、既存の税務リスクを洗い出し、将来の税務リスクを回避することが賢明であるといえます。
[税務上の繰越欠損金]
税務上の繰越欠損金は基本的に5年、また、特定の事業領域では10年間繰り延べることができます。ただし、合併や統合に関する新しい法律の下では、ターゲット企業の繰越欠損金は、買収企業との間で相殺することができないため、買収日に失効します。
[株式売却前の配当]
会社の発行株式の25%を超えて保有する株主への配当は免税となり、個人への配当は10%の所得税が課されます。
すべての売却益には22%の法人税が課されるため、株式売却前の配当を活用することで、税務上のメリットを享受できるスキームを組める可能性があります。
[譲渡税]
権利譲渡の際に発生する、特定の文書に対する10,000ルピアを除き、インドネシアでは印紙税は発生しません。しかし、インドネシア証券取引市場に上場している企業の株式売却益には、0.1%の所得税が課されます(発起人株式にはさらに0.5%上乗せ)。ある特定の状況下では、特定の種類のベンチャーキャピタル企業はキャピタル・ゲインに対する課税免除があります。また、外国企業によって保有されている非公開会社の株式売却益には、二重課税条約で保護されない限り、5%の所得税が課されます。
[税務許可]
買収において、資産を簿価で移転するためには、税務許可を取得する必要があります。また、承認された合併、統合において、土地・建物にかかる5%の権利移転税の免除を受けるためにも、税務許可の取得が必要です。
参考
インドネシア共和国法律第8号(1995年)
資本市場に関する法律
インドネシア共和国法律第5号(1999年)
独占的慣行の禁止および不公正な事業競争の禁止に関する法律
インドネシア共和国政令第24号(2000年)
印紙税(Bea Meterai)の税率および印紙税が課される名目金額の課税限度額の変更に関する政令
インドネシア共和国法律第28号(2009年)
地方税および地方使用料に関する法律
インドネシア金融サービス庁規則第54号(2015年)
任意公開買付け(任意テンダー・オファー)に関する規則
インドネシア金融サービス庁規則第9号(2018年)
公開会社の買収に関する規則
投資調整庁(BKPM)規則第4号(2021年)
リスクベース事業許認可サービスおよび投資優遇措置に関する実施指針ならびに手続に関する規則
インドネシア共和国法律第7号(2021年)
税制規定の調和に関する法律
インドネシア共和国政令第44号(2021年)
独占的慣行の禁止および不公正な事業競争の禁止の実施に関する政令
投資調整庁(BKPM)規則第5号(2025年)
電子統合事業許認可システム(OSS:Online Single Submission)を通じたリスクベース事業許認可および投資優遇措置に関する実施指針ならびに手続に関する規則
IMF 『World Economic Outlook Update, January 2026』
https://www.imf.org/-/media/files/publications/weo/2026/january/english/text.pdf