投資環境
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~経済環境~
注目されるインドネシア経済
■成長著しい経済
インドネシアは、人口約2億8.444万を抱えた世界4位の人口大国で、安定した経済成長を続けています。名目GDPは1兆159憶USドル(IMFによる2025年予測値)にまで拡大し、経済規模はASEANナンバー1となりました。
【名目GDPの推移(ASEAN10ヵ国】
(単位:10憶USドル)
出所:IMF World Economic(以下、IMF) Database October,2025
【名目GDPの推移(新興8ヵ国比較)】
(単位:10憶USドル)
出所:IMF World Economic(以下、IMF) Database October, 2025
■GDPと経済成長率
開発独裁といわれたスハルト大統領時代(1968~1998年)に、外資の積極的な導入と石油をはじめとした豊富な天然資源を背景として、インドネシア経済は大きく成長してきました。
特に1989年から1996年にかけては年率6~7%の連続成長となりました。しかし、1997年に起きたアジア通貨危機をきっかけとして、インドネシア経済は大きく後退しました。その影響は大きく、1998年には経済成長率マイナス13%にまで落ち込みました。
その後の民主化移行期にインドネシア経済は徐々に復調し、ユドヨノ政権になった2004年以降は順調に成長を遂げています。2008年のリーマン・ショックに端を発した世界金融危機の影響により、2009年はやや伸びが鈍り4.6%増にとどまりましたが、他のASEAN各国や諸外国に比べると落込みは軽いものでした。インドネシアで10年ぶりに政権が交代し、2014年にジョコ・ウィドド政権が発足しました。ジョコウィ大統領は貧困層の医療・教育無料化などの社会政策で地方政治家時代に人気を得ており、大衆を支持基盤としているため、経済政策においても保護主義的色彩の強い政策を打ち出しています。また、2019年3月にはMRT(ジャカルタ都市高速鉄道)のフェーズ1(Lebak Bulus to Hotel Indonesia(HI)Roundabout)が開通しました。2024年までの西ジャカルタまで伸びる計画があり、2019年5月開票にてジョコウィ大統領が再選し、プロジェクトが進んでいます。2019年のインドネシアの実質GDP成長率は5.24%となり、2014年以降上昇傾向にあります。緊縮財政の影響で政府消費支出が減少したものの、民間消費支出が回復しました。輸出入は依然としてマイナス成長ですが、下げ止まる兆しをみせています。分野別では金融・保険、運輸・倉庫などのサービス業が高い伸び率となっています。資源価格が回復傾向にあり、鉱業はプラス成長となりました。欧州財政危機と世界経済の停滞時期においても高成長を続けており、底堅いインドネシア経済の実力と今後の可能性が、一層世界的注目を集めるところとなりました。2020年には新型コロナウイルス感染症のパンデミックを受けインドネシアの実質GDP成長率は-2.07%となりましたが、2022年には経済正常化によりGDP成長率は5.3%とパンデミック前の水準に近づく回復を見せました。2025年現在でも、世界経済の減速リスクを抱えつつ約5%前後の堅調な成長が予測されています。
巨大マーケットのポテンシャル
インドネシア経済の特徴の一つとして、旺盛な内需の伸びがあります。隣国のマレーシアやタイなどとは異なり、インドネシアは輸出依存度が比較的低く、世界金融危機などに大きく左右されずに成長を続けてきたのも、このことが大きな要因といわれています。
内需の伸びは、積極的な財政出動による公共投資も一因ですが、民間セクターの投資や個人消費の伸びもまた大きく貢献しています。21世紀になってから、1人当たりの名目GDPは5倍近くも伸び、2011年に3,000ドルを超え2019年は4,123ドルとなり、2020年以降新型コロナウイルス感染症のパンデミックにおいても経済規模が拡大しています。もともと貧富の差が大きいといわれてきたインドネシアですが、個人の購買力の底上げと同時に、貧困率の低下が進み、所得中間層の厚みが増して内需を押し上げています。2億7,200万という人口の多さだけではなく、所得の増加がマーケットとしての魅力をよりいっそう押し上げていくことは確実です。
※2025年は予測値
出所:IMF ‘World Economic Outlook Database, October 2025
安定した経済状況
インドネシア経済のもう1つの特徴として、健全な財政状況、安定的な物価や為替など、経済が安定していることがあります。1990年代に経験したアジア通貨危機から得た教訓は、インドネシア経済の安定と底堅さをもたらすようになりました。
■インフレ
アジア通貨危機の頃には年率50%を超えるハイパーインフレを経験したインドネシアですが、近年は経済が拡大しているにもかかわらず物価は比較的落ち着いているといえます。特に2009年から2015年のインフレ率は4~5%台で推移しており、2018年には3.29%、2019年には2.82%となっており、経済成長率に見合った状態だといえます。更に、2020年は2.03%となり、2021年のインフレ率は1.55%と見込まれています。
世界金融危機と欧州財務危機以降は、世界経済の低迷を基調としているため、金利政策は緩和の方向にあります。2009年から段階的に6%台にまで引き下げられ、2012年2月には0.25%の引下げにより5.75%となりました。しかし、2013年に入ってからは、電気料金の値上げや、ジャカルタで起きた大洪水、ルピア安による輸入品の価格上昇など、インフレ懸念が高まっています。同年8月には再び政策金利の引上げが行われ7.0%になりました。2014年、2015年は同数で6.4%と高い水準のままでしたが、商品価格の低下や米などの輸入制限を緩和した事で、2016年は3.5%、2018年は3.2%に大きく抑えられました。家計消費は好転し、政府の低所得者層への減税策が徐々に消費に好影響を与えることが期待されました。しかしながら、2020年には新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響で需要が低くとどまっていることから、食品や輸送等の価格が下落しました。2021年においてもパンデミックによる需要減少・物価下落が続いているため、インドネシア中央銀行は物価安定の維持と中央・地方レベルでの政策協調の強化に努めています。
※2025年以降は予測値
出所:IMF ‘World Economic Outlook Database, October 2025
■インドネシア財政
21世紀に入ってからは、均衡財政に近い状況で数年間推移してきましたが、2009年以降、世界的な経済停滞を背景として、景気のてこ入れ策としての財政出動などにより赤字額が増えました。しかし、財政赤字の対GDP比は、国家財政法により定められている3%以下に抑えられており、政府債務残高のGDP比も20%台となっているため、年率数%台で経済成長している状況におけるインドネシア財政は比較的健全だといえます。
しかし、政府は、増え続ける歳出をどのように抑制するかという課題に直面しています。
※2026年は予測値
出所:IMF ‘World Economic Outlook Database, October 2025’
経済政策
インドネシアは、現在最も潜在的な成長が期待されている新興国と言われています。これまでは、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が新たなマーケットとして注目を集めてきました。しかし近年では、CIVETS(コロンビア、インドネシア、ベトナム、エジプト、トルコ、南アフリカ)が注目を集めており、その一角を担うインドネシアは、その人口上昇率の高さから、これからのアジア経済のキー・カントリーとなるであろうことは間違いありません。ここでは、近年立て続けに行われた政府の経済政策について言及します。
インドネシア政府により経済政策パッケージ(第13弾)が発表され、景気刺激への期待が高まる中、低所得者向け住宅の規制緩和に関する発表がなされました。従来は、低所得者向け住宅を建築するために必要だった許認可が33個であったのに対し、規制緩和によって11個にまで減少しました。すなわち、低所得者向け住宅を建築する開発業者が負担するコストのうち、最大70%までのコスト減少が見込まれています。
一方で、市場における情報の非対称性や、モラル・ハザード等の懸念点も挙げられます。例えば、低所得者向け住宅であれば、その欠陥は外部からでは分かりにくく、構造に欠陥があるまま完成を急いだり、劣悪な資材を用いたりする危険性は常にあります。
政府はこれまで、様々な景気刺激策を立て続けに打ち出してきました。
しかし、全ての政策が成功しているわけではなく、中央政府と地方政府の思惑にはかなりの乖離があるため、なかなか協力をこぎつけることが出来ず、発表はしているものの、実現していない政策も数多く存在しています。
また、2016年1月から2017年3月まで実施されたタックス・アムネスティ―の資金還流効果は、一定の成果は見られたものの、政府目標の165兆ルピアには届きませんでした。具体的には、延べ62万7,000人以上が参加し、135兆ルピアの税収が達成されました。資金還流が伸び悩んだ根底には、行政に対する不信が一因であるとされています。
(注:タックス・アムネスティ(Tax Amnesty)とは、資産を正確に申告していないなどの納税者に対し、正しく申告することにより、税額を控除したり、刑罰を免除したりするプログラムのことで、国内資産の還流と増収を狙いとする政策。本年度より実施されている)
このように、様々な景気刺激策を展開しているものの、見込み通りの効果は出ていないと言えます。しかし、2億人に及ぶマーケットと、潜在労働人口の成長率の高さから、依然としてインドネシア経済は注目を浴びていくであろうことは間違いありません。
第1弾 | 製造業に対する規制緩和 |
許認可手続の縮小 | |
第2弾 | 輸出に係る税率引き下げ |
産業資産に係る投資ライセンス取得の高速化 | |
第3弾 | 労働集約的な資源に係る関税の引き下げ |
第4弾 | 賃金引上げに関するルール整備 |
労働集約的・輸出を主とする中小零細企業に対する少額貸付 | |
第5弾 | 資産価値再評価に関する課税インセンティブ |
不動産投資信託に対する二重課税撤廃 | |
イスラム系金融機関に対する規制緩和 | |
第6弾 | 経済特別区に対する優遇税制 |
第7弾 | 労働集約的な産業に従事する国民の所得税の緩和 |
第8弾 | 航空機部品産業に対する所得税 |
原油精製所の開発に対する投資インセンティブ | |
第9弾 | SOEの過去のサービスを対象とする課金システムの見直し |
「inapoitnet」システムを用いた政府機関の窓口統合 | |
輸送分野でのルピア建ての義務化 | |
民間の政府の郵便価格の平準化 | |
第10弾 | 投資規制緩和ならびに中小零細企業の保護 |
第11弾 | 地場の不動産投資信託からの土地譲受に対する減税 |
輸出企業に対する補助金強化 | |
製薬産業に対する戦略強化 | |
第12弾 | 手続短縮、コスト削減などを通じた |
インドネシアに対する投資インセンティブの強化 | |
第13弾 | 低所得者層のための住宅 |
第14弾 | EC(電子商取引)市場の発展を促すロードマップ |
第15弾 | 国内物流サービス提供の事業と競争力の発展 |
第16弾 | 経済政策パッケージ |
資源輸出から高付加価値貿易へ
インドネシアは天然資源に非常に恵まれた国です。石油、天然ガス、石炭といった化石エネルギー資源だけでなく、銅、ニッケル、錫など多くの鉱物資源も埋蔵されています。また、広大な海域がもたらす魚介類などの豊富な海洋資源、高温多湿の熱帯雨林気候で成長するアブラヤシからとれるパーム油や、ゴムの木からとれる天然ゴムなど、多くの一次産品を産出してきました。それらの多くは、有力な輸出産品でもありました。
しかし、インドネシア政府はこれらの輸出の質の転換を図る方針を打ち出しています。特に、1970年代には輸出の約5割を占めていた石油への依存度を2割にまで下げるという目標を掲げて、21世紀に入ってその目標を達成しています。さらに加工貿易を促進し、インフラ整備による物流の円滑化、付加価値の大きい産業育成などにより、国際競争力を高めることを目指しています。
他のASEAN諸国に比べて貿易依存度の低いインドネシアにとっては、貿易拡大の可能性は大きいといえます。積極的に二国間および多国間貿易協定を推進しており、今後は、アジアのみならず世界を視野に入れたダイナミックな交易展開が期待されます。
インドネシアの貿易
インドネシアの2019年の輸出は、前年比7.3%減の1,670億300万ドル、輸入は前年比9.3%減の1,703億8,800万ドルとなり、輸出、輸入ともに前年比で減少しました。貿易収支は、33億8,500万ドルの赤字となりましたが、赤字幅は前年から縮小しました。2020年には新型コロナウイルス感染症のパンデミックが輸出入に影響し、とりわけ輸入においては2020年5月の時点で、日本が前月比55.5%減、中国が37.7%減、ASEAN諸国が32.3%減、アメリカが11.7%減と急落しました。
出所:WITS Trade データベース
■国別の輸出入状況
インドネシアの輸出先を国別に見ると、最も多いのが中国です。2020年には317億USドルで全体の19.5%を占めています。次いでアメリカが186億USドル(11.4%)で2位、日本が136億USドル(8.4%)で3位、以下、シンガポール6.5%、インド6.4%、マレーシア5.0%、韓国4.0%と続きます。ASEAN域内への輸出も大きく増えています。
出所:インドネシア中央統計庁Indonesian Foreign Trade Statistics 2024 – Book I
輸入について国別・地域別に見てみると、中国が最も多く396億USドルで28.0%を占めています。次いでシンガポールが123億USドル(8.7%)で2位、日本が106億USドル(7.5%)で3位、以下、アメリカ6.1%、マレーシア4.9%、韓国4.8%、タイ4.6%と続きます。日本は、輸入に関して比率を1990年の24.8%から、2020年には7.5%へと下げてきており、アメリカも同様の傾向にあります。一方で中国、シンガポール、マレーシア、タイ、インドなどのアジア諸国が増加の傾向にあります。中でも、ASEAN域内からの比率増加がより顕著で、全体の2割以上を占めるようになりました。
出所:インドネシア中央統計庁Indonesian Foreign Trade Statistics 2024 – Book I
■品目別の輸出入の状況
インドネシアの輸出を品目別に見ると、中国やインドを主要輸出先とする石炭などの鉱物性燃料が輸出全体の2割を占めるものの、2019年には347億USドルで前年比17.3%減となりました。また、動植物油脂では森林破壊の元凶としてパーム油の輸入規制を進める欧州連合(EU)に代わり、インドが有望な市場として挙げられますが、対印輸出量でマレーシアに追い越され伸び悩みました。一方で、輸送機器が日系企業による乗用車のタイやベトナムへの輸出により前年比7.9%増となりました。また、鉄鋼は中国企業によるステンレス鋼の対中輸出により28.9%増となりました。
出所:インドネシア中央統計庁Indonesian Foreign Trade Statistics 2024 – Book I
輸入については、2019年の鉱物性燃料が前年比25.4%減と最も大きく減少しました。また、国内需要が鈍化したことで、スマートフォン用部品などの電気機器・部品も8.2%減少しました。輸送機においては、インドネシア国内自動車市場が伸び悩み、生産のための部品類の輸入が減少しました。
ユドヨノ政権下で、インドネシア政府は、従来の石油・天然ガス依存の貿易バランスを改善し、自動車部品、電気・電子産業、繊維、農水産加工などの産業育成による脱石油依存方針を明確に打ち出しています。また、2008年にインドネシアはOPEC(石油輸出国機構)を脱退し、日本とはEPA(経済連携協定)を締結し、AFTA(ASEAN自由貿易地域)においても自由化が進んでいます。また、2002年から取り組みが行われていた中国とASEANのFTA(自由貿易協定)の締結も2019年に全ての承認が完了し、ASEANおよびアジアにおける新たな生産拠点を目指しています。
【品目別の輸入額】 | ||
|
| (単位:100万USドル) |
輸入品目 | 2018年 | 2019年 |
一般機器・原子炉・ボイラー | 27,070 | 26,766 |
自動データ処理機械 | 2,346 | 2,290 |
液体ポンプ等 | 1,238 | 1,203 |
機械 | 1,030 | 1,090 |
鉱物性燃料 | 31,473 | 23,480 |
石油、歴青油(原油除く) | 17,069 | 13,085 |
原油 | 9,161 | 5,705 |
天然ガス | 3,032 | 2,507 |
電気機器・部品 | 21,335 | 19,583 |
電話機、携帯電話(部品含む) | 5,795 | 5,615 |
鉄鋼 | 10,213 | 10,388 |
プラスチック原料・製品 | 9,177 | 8,703 |
輸送機(鉄道除く) | 8,019 | 7,161 |
部品 | 3,765 | 3,382 |
乗用車 | 1,067 | 1,131 |
貨物自動車 | 1,630 | 900 |
有機化学品 | 6,893 | 5,817 |
鉄鋼製品 | 3,876 | 3,585 |
穀物 | 3,782 | 3,237 |
光学、写真、医療・手術器具など | 2,874 | 2,860 |
合計(その他含む) | 187,917 | 170,388 |
出所:JETRO
産業構造の変化
インドネシアはもともと豊富な天然資源を有する農林水産業国で、かつ地下資源の豊富な資源国でもあります。しかし、スハルト大統領時代の1960年代後半から製造業を中心とした工業化が図られ、第二次産業の比率が大きくなりました。それまでは、農林水産業がGDPに占める割合が5割もありましたが、1990年代には10%台にまでなり、それに代わって第二次産業は10%台から40%台を占めるに至りました。
1990年代後半になると、アジア通貨危機の打撃を受けて製造業は大きく後退しました。その後、製造業は徐々に持ち直してきたものの、より高成長を遂げて比率を増したのは第三次産業です。2012年時点で、第三次産業がGDPに占める割合は47.5%となり、第二次産業を上回っています。特に、運輸・通信分野の成長は目覚しくGDPの1割を占めるに至り、建設業も大きく伸びています。
2020年には製造業が全体の2割近くを占めており、自動車などの輸送機器や機械類に加えて、飲食料品の製造が著しく成長しています。また、貿易・ホテル・レストラン業も15%を占めています。
2021年現在、製造業が変わらずGDP全体の2割近くを占めている一方で、ホテル・レストラン業は新型コロナウイルスのパンデミックの影響で2.4%まで落ち込んでいます。
産業 | 2023年 | |
金額 | 割合 | |
(10億ルピア) | (%) | |
製造業 | 3,900,062 | 18.6% |
卸小売業 | 2,702,446 | 12.9% |
農林水産業 | 2,617,670 | 12.5% |
鉱業・採石業 | 2,198,018 | 10.5% |
建設業 | 2,072,385 | 9.9% |
運輸・倉庫業 | 1,231,242 | 5.8% |
通信業 | 883,637 | 4.2% |
金融・保険業 | 869,168 | 4.2% |
ホテル・レストラン業 | 526,264 | 2.5% |
不動産業 | 505,457 | 2.4% |
その他 | 3,386,028 | 16.2% |
合計 | 20,892,377 | 100.0% |
出所:インドネシア銀行
出所:インドネシア銀行
■農林水産業
GDPに占める農林水産業の比率は2021年で13.3%と2010年ごろの水準まで上がっています。就労人口は約4割を占め、いまでもインドネシアの主要産業といえます。
インドネシアは、高温多湿な熱帯雨林気候で生育する農産品が世界のトップレベルで、多く生産されている国です。パーム油は世界一の生産額で、2位のマレーシアと合わせると世界生産の9割以上にもなります。天然ゴムはタイに次いで2位、キャッサバはナイジェリア、タイ、ブラジルに次いで4位、米は中国、インドに次いで3位です。
インドネシア農業の特徴の1つは、地域によって主要農産品が異なることです。米やキャッサバなどの国内消費の多い穀物の多くがジャワ島などを中心とした零細農家で作られていますが、主要輸出品である、パーム油や天然ゴムの多くはスマトラ島で作られています。地域による特徴が大きいということです。
出所:国連食糧農業機関、インドネシア統計局
林業や水産業も盛んで、カリマンタン島やスマトラ島を中心に生産されている熱帯雨林産広葉樹のラワン材合板は世界的で、広大な海域から水揚げされる水産品も豊富です。
インドネシア政府は、食料自給率の向上を目指して品目ごとに目標を定めており、豊かな農林水産業国であることも国の基盤として重要です。また、ジャワ島とそれ以外の農業インフラの差も指摘されており、各地域の自然環境や栽培する作物に合ったインフラ整備が課題となっています。
■食品
インドネシアの食品産業は、巨大な人口と経済成長を背景に国内需要が増加し、加工食品や外食産業が活況を呈しています。イスラム圏では食品販売に必須のハラル制度(イスラム教における禁忌である豚肉やアルコールなどを排除した食品規格で決められた基準)をクリアしなければなりませんが、巨大なイスラム圏の食品のグローバル・マーケットの入り口として、インドネシアの食品産業が注目されるようになりました。すでに、マレーシアでは同様の取組みを行っています。インドネシアには2億人以上のイスラム教徒がおり、圧倒的に大きな国内マーケットを有しています。国内マーケットと国外イスラム圏への輸出の相乗効果とその可能性が注目されています。
■自動車産業
21世紀に入って、アジア通貨危機による打撃からの回復を遂げると、インドネシアの自動車生産は増加基調となりました。特に2007年には40万台、2008年には60万台と伸び、2009年は世界金融危機の影響により減産となったものの、その後は3年連続で過去最高を更新して、2012年にはついに100万台の大台に乗り、2018年には134万台と推移しています。
インドネシアでは、完成車の輸出入は、ともに年間十数万台であるため、国内で生産した自動車の多くが国内で販売されるのが特徴です。スハルト時代から進出して現地生産をしてきた実績を持つ日本企業が、国内販売数の9割以上を占めています。トップ9のうち7社が日系で、2020年の日系のシェア合計は96%でした。トップシェアは3分の1を占めるトヨタ(30.3%)で、次いでダイハツ(17.1%)とホンダ(13.8%)、スズキ(12.4%)、三菱(10.9%)、以下、三菱ふそう、いすゞ、日野と続き、10位に中国のWulingとなっています。
この数年の着実な経済成長を背景にして、国民の購買力が増していることが自動車産業の追い風となっています。一般に1人当たりのGDPが3,000USドルを超えると自動車や家電製品などの耐久消費財の普及が加速度的に進むといわれており、インドネシアはそのフェーズに突入しつつあると見られています。インドネシア政府は経済の成長戦略として高付加価値産業の育成を掲げており、その最右翼である自動車産業が国内消費向けとしてのみならず、生産輸出拠点としても成長をしていくことが期待さています。
2011年から2012年にかけて、日本企業をはじめとした世界中の自動車メーカーの大型投資が相次いで発表されました。トヨタは、2011年にジャカルタ郊外のカラワン工場の隣接地に第2工場を建設して、アジア向け輸出を視野に入れた300億円近い大規模投資を決定しています。また、ホンダは四輪車の新工場を2014年に稼動させタイに次ぐ生産拠点とすることを発表し、日産も既存工場の生産能力を向上させ年間50万台の生産を目指すとしています。
欧米の自動車メーカーもフォードとゼネラル・モーターズが小型車にフォーカスした戦略に転じて販売を伸ばしており、BMWは生産ラインの増強をしました。クライスラーも販売網拡大のための投資を発表しています。これまでは日系自動車メーカーのほぼ独占に近いインドネシア自動車産業でしたが、今後は国際競争の激化が必至といわれています。
2018年においては、ASEAN最大の自動車市場のインドネシアとなり、さらに中国系完成車メーカー参入の動きが強まっています。2017年7月に西ジャワ州ブカシ県のGIIC工業団地で生産を開始したSGMW MOTOR INDONESIA(Wuling)に続き、2017年11月にSokonindo Automobile(ソコニンド)がバンテン州セラン県のモデルン・チカンデ工業団地で完成車工場を稼働させました。
一方、2020年は新型コロナウイルス感染症のパンデミックが自動車産業にも影響を与えました。2020年の自動車生産台数は2018年のおよそ半分まで減少し、日系では日産自動車がインドネシア工場を閉鎖しました。この状況に対し、政府が自動車減税や刺激策を打ち出したこともあって、2021年には生産が再び回復に転じ、2022年には約147万台とパンデミック前のピークを上回る水準に達しました。しかし、2023年には世界経済の減速や部品供給の制約を背景に再び生産が落ち込み、その後も消費者・企業の動きが慎重となり、生産・販売とも回復が鈍化しています。
今後は、インドネシア政府は「環境・気候変動の抑制に関するパリ協定」において、特段の対策を講じなかった場合(BAU: Business As Usual)と比べて、2030年までに温室効果ガスを29%削減するという目標を掲げているため、その目標の達成のための重要な手段である電気自動車(EV)など環境車の普及が命題となります。
また、生産世界一位のパームオイルを活用したバイオディーゼル燃料の活用、生産能力の向上が注目されています。
統括的に見ても、インドネシアの自動車産業は適切な政策が実施されさえすれば、成長のポテンシャルが高いといえます。経済発展やインフラ整備の進展に伴い、自動車市場も都市から地方へ、富裕層から中間層へ、持続的に拡大していくことが期待されます。
出所:OICA(国際自動車工業連合会)’Production Statistics’
インドネシア 2025年メーカー別新車販売台数(卸売台数)
メーカー | 販売台数(台) | 市場シェア(%) |
トヨタ | 288,982 | 33.4 |
ダイハツ | 163,032 | 18.8 |
ホンダ | 94,742 | 10.9 |
三菱自動車 | 72,217 | 8.3 |
スズキ | 66,809 | 7.7 |
三菱ふそう | 27,804 | 3.2 |
いすゞ | 26,296 | 3 |
日野 | 24,158 | 2.8 |
Hyundai | 22,361 | 2.6 |
五菱(Wuling) | 21,923 | 2.5 |
BYD | 16,669 | 1.9 |
出所:GAIKINDO(インドネシア自動車製造業者協会)、JETRO『インドネシア自動車市場レポート(2025年)』
■石油・天然ガス
石油と天然ガス産業はインドネシア経済を長い間支えてきました。スハルト大統領時代には、石油ガス公社であるプルタミナ(Pertamina)が探鉱、開発、生産、販売を独占し、1970年代後半から1980年代前半には輸出の5割以上を占めると同時に、国庫を潤してきました。
しかし、アジア通貨危機と民主化以降の混乱した時期に外国投資が減速しました。2002年にプルタミナの独占は廃され国際競争の中に置かれることとなる一方で、施設が老朽化するなどして石油生産量は減少に転じました。国内消費は上昇を続けて輸入超過となり、2009年にOPEC(石油輸出国機構)を一時脱退しました。
原油は、日本も古くから開発に乗り出してきたスマトラ島の東岸や南部、カリマンタン島が三大生産地とされています。天然ガスもやはりスマトラ島やカリマンタン島、西パプアなどで生産され、スマトラ島の北岸、カリマンタン島東岸、西パプアにあるLNG(液化天然ガス)ターミナルから日本などへ輸出されています。
天然ガスも、国内需要が増加し続けていますが、エネルギーの大消費地であるジャワ島へは、スマトラ島南部のガス田からパイプラインが引かれているだけです。それ以外は遠隔地の島にあるためパイプラインの敷設は難しく、国内の需給が逼迫しているにもかかわらず、液化されて輸出にまわされています。このような地理的な特徴やインフラ整備の遅れにより、インドネシアはエネルギー輸出国でありながら、一方では輸入国でもあるのです。
このため、インドネシア政府は、今後もよりいっそう増加する国内エネルギー需要に対応すべく、石油・天然ガス施設への投資を促進し、再び増産へと向かわせる方針を明確化するとともに、肥料業界や発電所への供給の優先や、LNGターミナル建設を計画するなどしています。
■非鉄金属
インドネシアは主要な非金属の生産国であり、特にニッケルの生産量は世界最大、錫、銅、ボーキサイト、金なども世界有数の生産国として位置付けられています。こうした豊富な鉱物資源は、電気自動車バッテリーや再生可能エネルギー産業の拡大により、国内外から注目が集まっています。
世界的な潮流でもある資源ナショナリズムの傾向はインドネシアでも顕著で、2009年に施行されたインドネシア新鉱業法とその関連法では鉱物資源の国内での高付加価値化が義務付けられたため、国内での製錬が拡大され鉱石の輸出には新たな規制が加わりました。
外資規制については、従来の「10年以内に国内資本51%以上」とする規定は法改正により変更され、2020年以降の制度では鉱区(IUP/IUPK)の種類に応じた譲渡・持株比率の規制が再整理されています。
近年は、世界的な需要、供給制約および地政学的リスクの高まりによって鉱物価格が変動しやすい環境にあり、インドネシアへの投資も活発です。特にニッケルについては、中国企業を中心とした投資が急増しており、世界のEVサプライチェーンの中核を担い始めています。
「人口ボーナス」を活かす鍵となる製造業
経済成長を続けるインドネシアの強みとして、約2億8,000万人を超える人口が挙げられます。総人口が多いことよりも、むしろ「人口ボーナス」といわれる生産労働人口が多いことが最も大きな強みといえます。しかし、それを活かせるかどうかは、産業構造の変革がどれくらい進むかにかかっています。
前述したように、インドネシアは地下資源や農林水産資源が豊富であるため、資源輸出によって経済を牽引してきました。また、総人口が多く、所得が向上してきたことによる国内の旺盛な消費が好調な経済を維持しています。しかし、今後インドネシア経済が中長期的に持続的な発展を遂げるためには、豊富な生産労働人口が国内で付加価値創出にあたる必要があります。どれだけの生産労働人口が高付加価値労働に従事することができるようになるかが、持続的な経済成長の鍵となるでしょう。
ジョコ政権時代には、2030年までにインドネシアはGDPランキングで世界トップ10入りする目標が掲げられました。2020年7月には、世界銀行がインドネシアを下位中所得国から上位中所得国に引き上げました。2021年7月には、新型コロナウイルス流行の影響を受け再び下位中所得国に格下げとなりましたが、雇用の吸収力が高い製造業を中心とした国内産業の育成が促進され、技術革新により生産性が向上し、人口ボーナスがダイナミックに活かされることになれば、MP3EIの目標を達成し、「中進国の罠」を突破する可能性は依然として残されています。
さらに現在、政府は人口ボーナス期が終わると予測される2030年代半ばに向け、経済の付加価値創出の中心を製造業、グリーン産業、デジタル産業へとシフトする取り組みを強化しています。これらの政策が着実に成果を上げ、持続的成長軌道を確保することが期待されています。
~投資環境~
ビジネスアンケートに見るインドネシアの投資環境
2020年に世界銀行と国際金融公社(IFC:International Finance Corporation)が、共同で発表した「ビジネス環境の現状2020」によると、インドネシアは、このランキングの総合順位が190の国または地域中73位(2019年は73位)です。世界的には、2014年の120位から大きく順位を上げましたが、依然として、ASEAN諸国のシンガポール(2位)、マレーシア(12位)、タイ(21位)と比べて大きな開きがあります。
指標項目 | 2019 | 2020 | UP or DOWN |
事業の開始 | 134 | 140 | 6ランクDOWN |
建設許可手続 | 112 | 110 | 2ランクUP |
電力の調達 | 33 | 33 | 変動なし |
資産の登録 | 100 | 106 | 6ランクDOWN |
資金調達 | 44 | 48 | 4ランクDOWN |
投資家の保護 | 51 | 37 | 14ランクUP |
税金の支払 | 112 | 81 | 31ランクUP |
クロスボーダー取引 | 116 | 116 | 変動なし |
契約の履行 | 146 | 139 | 7ランクUP |
事業の撤退 | 36 | 38 | 2ランクDOWN |
出所:DOING BUINESS
また、国連貿易開発会議(UNCTAD:United Nations Conference on Trade and Development)が発表した「世界投資報告書2017」によると、多国籍企業が投資先として期待する国のランキングでは、アメリカ、中国、インドに次いでインドネシアが4位と、世界中から投資対象国として注目を集めています。
出所:UNCTAD ’World Investment Report 2017’
金融(株式)市場
首都ジャカルタにインドネシア証券取引所(IDX)があります。オランダ領東インド時代のバタヴィア証券取引所を前身とするジャカルタ証券取引所(JSX)と、スラバヤ証券取引所(SSX)が2007年に統合して、インドネシア証券取引所となりました。
株式の取引がメインだったジャカルタ証券取引所と、債券や先物取引を中心としていたスラバヤ証券取引所の相互効果が期待された合併でした。2021年5月時点の時価総額は992億USドルで、世界28位の市場規模にまで拡大しましたが、インドネシアの経済を考えるとまだ相対的に市場規模が小さく、今後の発展が期待されます。
近年の市場規模拡大の要因は、主に好調なインドネシア経済を背景とした時価総額の上昇によるもので、新規上場数は多くありません。インドネシアの企業は大企業でも一族所有が多く、透明性を求められる上場を嫌う傾向が少なくないこと、上場しても流通する株式の比率が少ないこと、自国の投資家マネーがシンガポールに流れがちであることなど多くの課題があるといわれています。
株式市場は、大企業が上場するメインボードと、中小・中堅企業によるディベロプメントボードに分かれており、メインボードの特定の十数社に取引の過半数が集中する特徴があります。インデックスは、全銘柄の時価総額加重平均指数であるジャカルタ総合指数(JCI)が一般的です。
【時価総額推移】
出所:Trading Economics
為替レート
インドネシアはアジア通貨危機のときに自国通貨の危機的状況を経験しており、21世紀に入ってからは着実に外貨準備高を増やし、為替の安定に備えられるようになりつつあります。長期的に資金を必要とする国家レベルでのインフラ整備をしているため、長期の対外債務は比較的多いですが、外貨準備高比率は年々下がっています。
インドネシア中央銀行は、2009年から政策金利を段階的に6%台にまで引き下げてきました。国際収支の赤字拡大に伴い、2012年初頭よりルピア安で推移していますが、金利引上げは2013年初頭においても見送られました。しかし、行き過ぎたルピア安には、インドネシア中央銀行は為替市場の介入を断固として行うと表明しています。
資源価格の低迷による輸出額の急減と、インフラ整備の資金捻出のための各種補助金の削減による生活必需品の実質的な値上げに伴い、インドネシアの通貨ルピアの為替市場での価値は大きく落ち込みました。2015年の年初時点で1ドル=1万2500ルピアだった対ドルレートは、米利上げ観測の高まりを受けて8月24日に1ドル=1万4000ルピア台に急落します。さらに9月29日までに1ドル=1万4700ルピア前後に下げたためにインドネシア中央銀行は9月30日に為替安定政策パッケージを発表・実施したことにより、ルピア安の流れは一服しましたが、10月20日時点で1ドル=1万3600ルピア前後と、1998年のアジア通貨危機以来の安値圏にとどまっていることには変わりありません。通貨安の進行により輸入産業には大きな悪影響が見られ、恩恵を受けるはずの輸出産業は品目が限られていることや現地調達率が高くないことから、通貨安のメリットを享受している企業はごく限られています。このためインドネシア国内の経済活動も大きく落ち込むこととなり、2015年を通したGDP成長率は目安である5%を割り込み、4%台にとどまるものと見られています。2018年後半から連続して災害が起きたことも重なり1ドル=1万5000ルピア台まで下落していた対ドルレートは同年10月以降は安定し、2020年1月、1ドル=1万3500ルピア台まで戻りましたが、同年4月からコロナの影響により再び1ドル1万6500ルピア台まで急落。その後、不安定ながらも落ち着きを取り戻し、2022年現在は1ドル=1万4300ルピア台を記録したものの、2025年には1ドル=1万6500ルピアまで戻っています。
Japanese Yen-Indonesian Rupiah
出所:Trading Economics
外国直接投資額
アジア通貨危機を契機として停滞していた外国直接投資(FDI:Foreign Direct Investment)は、インドネシアの政治が安定し、本格的に経済成長し始めた2005年頃より増加傾向にあります。世界金融危機の影響により2009年にはいったん大きく落ち込みましたが、その後は順調に投資が拡大し、2011年は194億USドル、2012年は245億USドル、2013年は286億USドルと過去最高を毎年大幅に更新しています。
2013年時点の国別では、インドネシアからの資金の還流が含まれますが、日本が最高額となっており、47億USドルで全体の16%を占めています。2位はシンガポールで46億USドル、次いでアメリカが24億ドル、韓国が22億ドルと続いています。2013年の日本からの直接投資額は前年から92%増加し、日本からの対インドネシア投資が急増しています。
地域別直接投資ではアジアが全体の48%を占めており、そのうちシンガポールなどASEAN地域から半分、日本や韓国などのASEAN以外が残りの半分となっています。イギリス、ドイツなどの欧州は全体の9%、アメリカなどの北・中南米が13%、オセアニアは1%、アフリカは3%となっています。また、イギリス領バージン諸島などのタックス・ヘイブンを利用した迂回投資も少なくありません。全体としては、オセアニアとアフリカからの投資が相対的に比率を下げ、アジアと北・中南米からの投資が大きく伸びています。
2016年には、外国からの直接投資(FDI)で中国の存在感が高まっています。インドネシア投資調整庁(BKPM)によると、今年1~9月のFDI実施額は前年同期比10.6%増の214億6100万ドル(約2兆4472億円)で、このうち中国からの投資は15億9000万ドルで前年同期の約3倍増となりました。中国からの投資実施額は、シンガポールの約71億ドル、日本の約45億ドルに続く3番目で、鉄鋼業と鉱業分野のプロジェクトが目立ちます。インドネシア国内で中国が行った投資プロジェクトは1205件で、シンガポール、日本、韓国に続いて4番目に多い結果となっています。
2017年には韓国を追い抜き、シンガポール、日本に次ぐ3番目にきており、依然中国の勢いはとまらない形となっております。2019年には投資実施額においてシンガポールに続いて中国が2番目に位置しています。2020年には新型コロナウイルスのパンデミックの影響で各国マイナス成長となる中、中国からの投資は2.02%とプラス成長を維持しています。さらに、パンデミック後の2023年通年では、約502億7000万ドルのFDIを記録し、過去最高を更新しました。
国名/地域名 | 2023年 | 2024年 | |||
件数(件) | 投資額(百万US$) | 件数(件) | 投資額(百万US$) | 伸び率(%) | |
シンガポール | 4,200 | 13,300 | 4,600 | 15,200 | 14.3 |
中国 | 3,800 | 8,200 | 4,000 | 9,000 | 9.8 |
香港 | 3,000 | 6,500 | 3,200 | 7,200 | 10.8 |
日本 | 1,800 | 3,600 | 1,900 | 4,100 | 13.9 |
米国 | 1,700 | 3,400 | 1,750 | 3,800 | 11.8 |
韓国 | 1,500 | 3,000 | 1,600 | 3,300 | 10 |
マレーシア | 1,300 | 2,600 | 1,400 | 2,900 | 11.5 |
オランダ | 1,200 | 2,400 | 1,300 | 2,700 | 12.5 |
英国 | 1,100 | 2,100 | 1,200 | 2,400 | 14.3 |
台湾 | 1,000 | 1,900 | 1,100 | 2,200 | 15.8 |
出所:インドネシア投資調整庁(BKPM)
産業部門別に見ると、製造業など第二次産業が全体の半分近くを占めており、次いでサービス業などの第三次産業が27.9%、農業や鉱業などの第一次産業は24.2%となっています。
特徴としては、鉱業、林業、繊維といった天然資源とその加工分野に関連した投資は堅調で、引き続き主要な投資対象分野となっています。製造業の中で顕著なのは、自動車産業などの輸送機器部門の投資が伸びていることです。第三次産業では、好調な経済と盛んなインフラ整備を背景として、建設、不動産等が大きく伸びています。
日本からの投資は製造業が多く、自動車産業ではトヨタやダイハツの生産ライン拡大のための大型投資や、部品メーカーの新規進出が続いています。韓国からは小売業への投資が多いのが特徴でしたが、サムスンによるインドネシア国内での携帯電話生産計画が発表されるなど、精密機器分野での投資が活発になっています。全体としてインドネシアへの直接投資意欲は旺盛な内需を背景としていることから、以前にも増して投資分野の幅が広がっているといってよいでしょう。
出所:インドネシア投資調整庁(BKPM)
インフラ
世界経済フォーラムが行う、「世界競争力レポート(The Global Competitiveness Report)2019」によると、インドネシアのインフラの総合評価は141カ国中50位で前年より5位下がっています。また、ASEAN主要6カ国と比べてみると、シンガポールが1位、マレーシア27位、タイ40位となっており、インドネシアと、フィリピン(64位)、ベトナム(67位)は水をあけられています。各インフラの評価は、道路109位、鉄道85位、港湾36位、空港56位、電力89位となっています。
2011年5月、ユドヨノ大統領は、経済成長・加速マスタープラン(MP3EI)の中で、全国を6地域に分けた「経済回廊構想」を発表し、道路、鉄道、港湾、空港、電力、水力などの幅広いインフラ整備に取り組むことを表明しています。そのために、官民連携(PPP:Public-Private Partnership)を推進することとし、インフラ金融公社(SMI:Sarana Multi Infrastruktur)とインドネシア政府保証ファンド(IIGF:Indonesia Infrastructure Guarantee Fund)の設立など、国家的優先課題としてインフラ整備に取り組む姿勢を明確にしています。ユドヨノ政権二期目(2009年10月~2014年)でインドネシアのインフラは大きく前進しました。
2014年から政権交代し、第7代大統領に就任したジョコ・ウィドド(通称ジョコウィ)はインフラ整備を公約の中核に据え、大量公共輸送システムの整備、インフラ開発銀行の設立、鉄道と海運を重視しており、これまであまりにも自動車に偏りすぎていた公共交通システムを、よりバランスのとれたシステムに是正していこうとする方向性を示しました。その結果、在任期間である2014~2024年にかけて、国全体のインフラ支出はGDPの約3.6%から5%前後まで上昇し、高速道路総距離は倍増し、電力の供給安定性も改善しています。
2024年に就任したプラボウォ大統領は、ジョコウィ政権のインフラ路線を基本的に継承しつつ、①新首都の継続開発、②国内製造業・食料安全保障を支える物流インフラ、③国防インフラの強化、④鉄道網の拡張を重点に置く方針を示しています。また、港湾・道路・空港の国家連結性を強化し、外貨・民間資金をより積極的に誘致する姿勢を明確にしています。
■道路
インドネシアの道路の総延長距離は55万㎞以上になりますが、そのうち舗装道路は約59.5%(2017年)にとどまっています。インドネシアでは、人口の増加と経済活動が活発になったことによる物流や人の移動の増加が顕著で、二輪車を含む自動車保有台数が急増しています。しかし、道路整備が、経済成長に追いついていないのが実状といえるでしょう。経済回廊構想は、地域ごとにその特性を生かしたインフラ整備を行い、さらには地域同士の相互効果を狙った構想となっています。この構想はスマトラ島東部からジャワ島北西部、ジャワ島北部を特に優先的に進めることとなっています。また、道路整備を含む輸送インフラが、地域を連結して包括的に進められることになっています。日本の円借款によるスマトラ島とジャワ島を結ぶ巨大プロジェクト「スンダ海峡大橋」なども含まれます。地域間の交通整備によるダイナミックな経済成長が期待されています。都市交通における道路整備の遅れは大きな問題となっています。なかでもジャカルタの通勤時間帯の渋滞はより深刻で、自動車の専有面積合計が道路の総面積を超えるグリッドロックの状態に近いといわれています。バス専用レーンの「バスウェイ」というシステムを導入して通勤者の公共交通利用を促し、一般道の拡幅工事や高速道路化をするなど、さまざまな対策を講じています。さらに、2019年に開業したジャカルタ都市高速鉄道(MRT)、および路面鉄道(LRT)の開発が都市交通改善に寄与しつつありますが、依然として中長期的な都市計画に基づいた大規模公共交通網の整備が必要とされています。
地方を中心としたインフラ投資の拡大、燃料補助金削減を断行し予算を捻出したことから、2015年度のインフラ予算は昨年度から41%増加し、国内の格差是正に向けジャワ島外に優先的に資金を投下しました。24の主要港湾整備、造船業振興、離島間航路の拡充等からなる海洋インフラ強化に対応した投資が行われました。
2019年予算では、インフラ開発に充てる予算は2.4%増にとどめており、ジョコ・ウィドド大統領2014年の就任以来続けてきたインフラ予算の拡大路線は一息ついた格好でしたが、2021年予算では昨年度から42.2%と再び大きく増加しました。
一方で、2025年に向けては財政調整が進み、公共事業・住宅省(PURR)のインフラ予算が大幅に削減されるなど、投資の重点化が図られています。それでも地域間格差の是正や物流効率化を目的とした道路・港湾インフラ整備は、国家戦略として継続されています。
■港湾
インド洋と太平洋の間の主要な貿易ルートにまたがる2万平方キロメートル以上の面積をカバーする17,000以上の島々からなる群島として、インドネシアとその経済にとって大気と海上のつながりは不可欠です。そのため、国際的にも国内的にも海運は生命線といわれるほど重要で、インドネシアの港湾インフラの重要性は非常に高いといえます。インドネシアの港湾は輸出入のためだけでなく、国内の輸送手段としても重要な役割を果たしています。以下のグラフからもわかるように、年間貨物取扱量の半数以上が国内貨物です。それは、シンガポールやマレーシアのタンジュン・ペラパス港などに比べて、インドネシアの港湾が国際貨物のハブとしての機能が低いために相対的に国内貨物の比率が高いとの指摘もあり、今後の課題を示しているといってもよいでしょう。インドネシアの主な港湾は4つの国営港湾会社(PELINDO:PT.Pelabuhan Indonesia I~IV)によって独占的に運営されてきたため、非効率な運営がなされ、設備の近代化や許容量の拡大などに必要な投資が十分に行われずにきました。そのため、2008年に運輸法が改正され、民営企業の参入が可能になり、外国からの投資機会が生まれ、港湾同士のサービス競争も生じました。
(出所)Statistics Indonesia
インドネシア政府は、国内の100を超える商業港のうちから、25港を戦略的に国際港として整備しています。中でも、ジャワ島西部のジャカルタにあるタンジュン・プリオク港、ジャワ島東部のスラバヤにあるタンジュン・エマス港、スマトラ島北部のメダンにあるベラワン港、スラウェシ島南部にあるマカッサル港は、国際ハブセンターと位置付けられています。2019年には、国内貨物取引において25港が全体の三分の一を占め、国際貨物取引においては40%以上を占めています。従来、タンジュン・プリオク港のコンテナ取扱量がインドネシア全体の約5割にもなりましたが、許容量不足や効率の悪さによる慢性的な物流停滞が問題となりました。またタンジュン・プリオク港の拡張とともに、ジャカルタ郊外に新港であるチラマヤ国際港の整備が進められていましたが、2015年石油ガスの懸念により計画は中止されました。その後、コロナ禍を経て港湾拡張計画の一部は停滞したものの、2021~2023年のPELINDO統合により、港湾運営の効率化が大きく進みました。また、国家物流戦略(2023~2027)のもと、政府は国際ハブ機能の強化と国内高炉の効率化を重点政策として掲げており、港湾・フェリー航路の整備を推進しています。
■空港
インドネシアには27の国際空港、269の国内空港があります(小規模飛行場を含む)。主要空港は、旅客数も航空貨物も年々増え続けているため、滑走路の拡張や旅客ターミナルの増築、新空港の建設などが急ピッチで進められています。ジャカルタ市内から20㎞ほどにあるスカルノ・ハッタ国際空港の2024年の利用旅客者数は約5,480万人に達し、パンデミック前の高水準に近い規模まで回復しています。これは、ASEAN最大級の利用者であり、地域の航空交通の中核として重要な役割を担っています。
■鉄道
インドネシアには総延長距離5,000㎞以上の鉄道が敷設されていますが、そのすべてがジャワ島とスマトラ島にあります。ほとんどが貨物輸送用で、その多くが非電化、単線です。ジャカルタの都市部とスラバヤの一部だけは電化されており、通勤路線として路線網が整備されています。また、ジャカルタでは大量高速交通システム(MRT:Mass Rapid Transit)というインドネシア初の地下鉄や、スカルノ・ハッタ国際空港アクセス鉄道建設が完了しました。ジャカルタのMRTは、2009年の円借款供与契約後に2013年10月から建設フェーズに入り、2015年から本格的に地下部分のトンネル工事や高架の建設などが開始されました。2019年に入って全路線で試運転を実施し、3月中旬から一般試乗会を実施しました。運行区間のうち、ジャカルタの目抜き通りであるタムリン通り、スディルマン通りは地下を通行しています。基準料金は1キロ当たり1万ルピア(約79円、1ルピア=約0.0079円)と設定されました。始発から終点までを30分間で走行するため、深刻な渋滞を避ける公共交通手段として期待されます。
2019年3月24日に行われた開業式にはジョコ・ウィドド大統領が出席し、MRTの第2期工事についても建設開始を発表しました。第2期工事では現在の路線を北へ7.8キロ延伸することが予定されていましたが、2021年ジャカルタが決めた事業費に対し日本が求める事業費が高すぎたことが大きな原因となり,MRTジャカルタのウィリアム・サバンダル社長はJICAとの直接契約を止める提案を発表し、完工は大きく遠のく結果となりました。2025年現在でも、一部区間の掘削は開始されたものの、完工時期は当初予定より大幅に後ろ倒しとなっています。
■電力
国営電力公社(PLN:Perusahaan Listrik Negara Persoro)が長年にわたり発送電事業を独占してきましたが、1992年に発電分野への民間事業者参入が認められ、電力インフラに民間投資を促す方向へ転換されました。現在ではPLNの発電設備容量は8割程度となっています。インドネシアでは、石油、ガス、石炭といった国内で産出される化石燃料による火力発電が主流ですが、石油生産の減少により主要な燃料は石炭にシフトしています。また、インドネシアは熱帯雨林気候にあり豊富な水資源による水力発電や、世界有数の火山国でもあるため地熱発電も有力なエネルギー源です。電力の需要はGDP成長率よりも1~2%高く推移しており、年々増加の一途をたどっています。全体として消費量はなんとかまかなわれている状態ですが、乾季に水力発電量が減ることや、発電所の点検時に発電量が低下するため、需給バランスが逼迫した状況に陥ることがあります。今後の電力需要予測が大幅増であることから、インドネシア政府は電力供給量の拡大を優先課題と位置付けています。経済成長・加速マスタープラン(MP3EI)の一環として、インドラマユ石炭火力発電所やバンテン石炭火力発電所の新設や、ジャワ=スマトラ連系送電線計画などの発送電事業整備計画が推進されています。また、インドネシアの特徴として地域による電化率の格差があります。ジャワ島やスマトラ島の多くが8割程度の電化率で、ジャカルタは99%となっています。一方、パプアやスラウェシ島では4~6割程度の地域もあります。地域格差を解消すべく電化を進めるために、地域ごとの発電量確保や送電網の充実なども課題となっています。
出所:エネルギー鉱業資源省「電力統計2019」
■通信
インドネシアでは、かつては国営企業によって電話事業が独占されていましたが、規制緩和により民間企業も参入できるようになりました。固定電話の普及はあまり進まず、携帯電話の契約数が急激に増えています。2023年時点の移動体通信(携帯電話)の加入件数は約3億5,200万に上り、ほぼ全ての人々に普及した状況です。大手業者はTelekomunikasi Selilar、Indosatooredoo、Hatchison3Indonesia、XLアシアタなどで、上位者が市場の大半を占めています。
また、携帯端末の普及に伴いインターネットの普及が進んでおり、2024年時点で、全人口の約8割にあたる約2億2,020万人の利用者がいるとされます。
同国のインターネット利用の特徴は、携帯電話からのアクセスの多さであり、国民の27%がモバイル端末から利用していると推定されます。
主要な工業団地では既に光ケーブルが敷設されて高速インターネット環境が整っており、複数のインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)を自由に選択できます。
| 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
固定電話加入件数(千) | 10,378 | 10,753 | 11,053 | 8,304 | 9,477 |
固定電話普及率(%) | 4.00% | 4.10% | 4.20% | 3.10% | 3.50% |
| 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 |
移動電話加入数(千) | 338,948 | 385,573 | 435,194 | 319,435 | 345,025 |
移動電話普及率(%) | 131.20% | 147.40% | 164.40% | 119.30% | 127.50% |
インドネシア進出に係る投資規制
インドネシアでの投資においては、投資の可否と出資金額を検討する必要があります。
出資金額については、従来はBKPM長官規程2021年第4号が基準となり、インドネシアでの外国企業の設立に当たっては、最低投資額、払込資本金ともに100億ルピア(約9,000万円、1ルピア=約0.009円)(土地・建物を除く)が原則とされてきましたが、2025年10月に改定され、払込資本金は原則25億ルピア(約2300万円)に変更になりました(BKPM長官規程2025年第5号)。ただし、この払込資本金は12カ月間の口座留保義務が加えられました。なお、最低投資額については変更はなく、100億ルピアのままとなっています。
特に商社をはじめとするサービス業の場合、100億ルピアの投資金額は現実的とはいえません。投資金額については、四半期に1回、その調達の進捗状況について投資調整庁(BKPM:Badan Koordinasi Penanaman Modal)に報告する必要がありますが、投資金額の調達ができず、その結果投資が実現しなかったことによる罰則はありません(ただし、払込資本金については、原則として全額の払込およびその証明書が会社登記手続上必要です)。2021年オムニバス法により多くの業種が規制対象ではなくなり、外資100%での進出が可能となりました。インドネシア進出の際は、自社の進出形態やビジネススキームに合わせた事業コード(KBLI)の取得が必要となります。
ネガティブリスト改定
2016年5月18日、外国投資規制を規定する大統領規程2016年44号(ネガティブリスト)が施行されました。
このネガティブリストに対し2021年2月2日付で投資事業活動に関する大統領規則2021年10号が成立し、成立から30日経過後の2021年3月4日に施行されました。
主な変更点としては禁止分野が21分野から、ギャンブル活動、ワシントン条約に含まれる魚類の捕獲、珊瑚の捕獲・採取、化学兵器の製造、オゾン層破壊に影響を及ぼす化学原料製造の6分野に縮小されたことが挙げられます.
これにより外資規制が大きく変更され、インドネシアの投資環境は外国企業にとってより参入しやすい状況に変化しています。
規制業種
条件付きで投資が許可されている事業は、外国資本の出資比率に制限がある場合や、特別許可が必要な業種など、詳細に規制要件が定められています。代表的なものを以下に挙げますが、詳しい内容は原文を確認し、どのような制約の下に投資が可能かを判断することが重要です。
禁止業種を除き、外資による出資が可能ですが、ネガティブリスト方式で業種ごとに外資出資比率の上限が定められています。
業種ごとの主な出資比率は2016年のネガティブリストを詳しく確認する必要があります。
農業 | ・大麻の栽培 |
林業 | ・ワシントン条約に記載され魚類捕獲 |
海洋漁業 | ・沈没船の積載物に由来する貴重品の引き上げ |
工業 | ・水銀を含有する物質を用いた塩化アルカリ製造業 |
運輸 | ・陸上ターミナルの実施と運営 |
情報通信 | ・無線周波数及び衛星軌道の監視基地の経営と運営 |
教育文化 | ・政府系博物館 |
観光・創造経済 | ・賭博/カジノ |
■資本金に関する規制
製造業・非製造業の区別なく、土地建物を除く投資額の合計は原則5桁の産業分類コードKBLIごとに100億ルピア超、引受資本金と払込資本金は同類で、25億ルピア以上を満たす必要があります。また、各株主の出資額は、1000万ルピア以上。なお投資額については以下の例外規定があります。[BKPM規則2025年5号]
- 大規模商業:KBLIの頭から4桁ごとに、土地建物を除いて総投資額100億ルピア超
- 飲食サービス:KBLIの頭から2桁ごとに、土地建物を除いて同100億ルピア超
- 建設サービス:KBLIの頭から4桁ごと、建設コンサルティングサービス事業、建設施工事業、統合建設事業のいずれか1活動において、土地建物を除いて同100億ルピア超。建設コンサルティングサービス事業は、建設施工事業および/あるいは統合建設事業と一緒に行うことはできない。
- 工業:異なるKBLI5桁の製品種類を1つの製造ラインにおいて生産する場合は、1ラインで土地建物を除いて同100億ルピア超
- 不動産開発:ビル全体または統合住宅地の形の不動産の場合は、土地建物を含めて同100億ルピア超。1つのビル全体ではない、または統合住宅地ではない不動産ユニットの場合は、土地建物を除いて同100億ルピア超
[BKPM規則2021年2号]
■外国企業の土地利用に関する規制
土地所有権は、インドネシア国民(個人)にのみ認められています。法人は、所有権に代わる権利を得た上で、工場を建てるなどして操業することができます。
[1960年土地基本法(農地基本法)第9条、第21条]
バリやロンボックをはじめ、様々な観光地を持つインドネシアですが、観光地では不動産の価格は高騰化する一方です。例えば、ここ数年のバリの不動産の価格平均で20%ほど上昇しており、特に人気のある場所であれば、最大40%上昇したと言われています。
このように、不動産投資先としては大変魅力あるインドネシアですが、その反面、外国からの投資に対しては大変厳しい規制があることもまた事実です。以下では、インドネシアにおいて不動産投資をする上で知っておくべき規制と、実際の運用について記載します。
<インドネシアにおける物権の種類>
インドネシアでは、日本と同様に様々な物権が民法上規定されています。その代表的なもので、次のようなものがあります。
・所有権(Hak Milik)
・借地権(Hak Pakai)
・建物賃借権(Hak Sewa Bangnan)
(※各物権の日本語訳については、民法上最も性質の近いものを適用しております。)
このうち、土地の所有権については、外国人及び外国法人ともに保有することは出来ません。これはインドネシア憲法上禁止されていますので、将来の法改正を期待することは非常に困難です。一方で、借地権(Hak Pakai)が設定されている土地上に建てられた戸建てとアパートメントについては、2015年12月22日に法改正がなされ、外国人及び国内に事務所を有する外国法人に建物の所有が認められることになりました。これはインドネシアにおける不動産投資を行う上で、画期的な法改正だと言えます。
<借地権(Hak Pakai)に関する注意すべき事項>
借地権とは、土地の上に建物を所有するための権利を言います。建物を取得する際には、必ずインドネシアのデベロッパーからの購入という形をとることが義務付けられています。さらに、購入後も戸建てとアパートメントの所有が無条件で認められるわけではなく、いくつかの要件を満たす必要があります。
- 最長80年の所有となること
- 国外に居住地を移す場合には、移転から一年以内に第三者へ譲渡すること
- 各州の最低価額を超えていること(付表参照)
<ノミニーを使った回避方法>
もう一つ、インドネシアにおいて不動産を取得する方法があります。「ノミニー」と呼ばれるインドネシア人の名義貸しを利用するという方法です。ノミニーに対し不動産の購入資金を貸し付け、それを経由することで間接的に不動産を保有することが可能です。ただし、ノミニーは明文上禁止されています(投資法2007年第25号33条)。万が一、ノミニーが発覚すると操業停止になります。
第一に、ノミニーが裏切る可能性があります。不動産所有権の名義人はノミニーなので、当該権利もノミニーに帰属してしまいます。第二に、あまりにも低所得のノミニーであれば、確定申告の際に不動産の購入代金をどこから調達したのかを疑われるケースが散見されます。とはいえ、不動産を管轄する国立土地局(National Land Agency)によれば、ノミニーを発見することは実際上ほとんど不可能に近いとされています。
以上のように、投資先として非常に魅力的なインドネシアの不動産市場ですが、法制上不透明な部分が数多く存在しますので、リスクを見通しつつ投資していくべきだと言えるでしょう。
投資インセンティブ
投資優遇措置の少ないインドネシアにおいても、特殊な業態、地域、あるいは創業時の税務上の恩典がいくつか認められるケースがあります。
■タックス・ホリデー制度
インドネシアの国内産業育成のため、開発を重点的に行うべきとされた下記5分野において、法人税の免除を認める措置があります。(2011年8月15日財務大臣規定第130号、2014年10月6日財務大臣規定第192号にて一部変更。)
・基礎金属
・石油ガス採掘あるいは石油ガスを源とする有機基礎化学
・機械
・再生エネルギー
・通信機器
これらの分野において、1兆ルピア以上の投資を行う企業に対して、5年から最長10年の法人税の免税措置を享受することができますが、条件として、投資金額の10%をインドネシアの国内銀行に預託することが義務付けられています。免税を受ける際の手続として、工業省に申請し、財務大臣の許可を得ます。ワンルーフサービスにより、投資調整庁でも申請が可能です。
また、新たにパイオニア産業に新規投資を行う企業に、租税総局長が決定した商業生産の開始より5年から20年にわたり、投資額に応じて法人税を50%または100%減額する内容もあります。
対象は18分野、産業分類コード(KBLI)番号ベースで計169業種が指定されています。
申請はオンライン・シングル・サブミッション(OSS)のシステムにて行います。
OSSへの登録内容から、OSSがタックスホリデーの要件を満たした新規投資を選定し、その後該当投資者へ通知がきます。該当者の商業生産開始前に、OSSシステムを通じて、投資計画における固定資産の明細と負債・資本比率、株主の財務証明書のソフトコピーをアップロードすることにより、タックスホリデーが申請されたと見なされます。
申請にて不備なしと判断されると、OSSシステムによって、租税総局を通じて財務大臣宛てに、法人税減免供与推薦として送付されます。推薦を受け取った財務大臣により、タックスホリデー供与の可否を決定されると、推薦状の受理から5稼働日以内に財務大臣決定書が発行されます。
■保税地区内の優遇制度
外国から物品の輸入をする場合、支払VAT(PPN)、関税(BM)、前払法人所得税(PPh22)が付加されますが、保税地区で操業する場合には保税のメリットとしてこれら税金の支払いが不要です。そのため輸出志向型の企業にとっては、キャッシュフロー上のメリットもあります。保税のステータスは保税工場(PDKB)と保税倉庫(PPKB)に与えられますが、いずれにおいても税務上のメリットは同じです。保税地区に工場を建設することができるのは、原則的に輸出を業とする企業ですが、一定の範囲内であれば国内販売をする企業も建設可能です。
当該部分は何度も法律の改正がありましたが、2012年3月16日に保税地区に関する財務大臣令第44号が交付されました。それによると、2014年12月31日までは、保税地区から出荷する完成品は当該年度売上の50%まで、部品の国内販売比率は従前の当該年度売上の60%までと規定されています。ただし、販売比率は改定される可能性があるため、注視していく必要があります。
保税のステータスを取得するためには、以下の物理的な条件をクリアするほか、1年または数年に1回、税関監査を受ける必要があります。
・工場周りに2.5メートル以上のフェンスを設置する
・公道からの通用口は1カ所だけとする
・税関から派遣される担当者のための詰め所を設置する
基本的には、保税工場または倉庫からの搬出・搬入を確認し、保税状態で入庫したものを一般国内市場向けに違法に販売していないかを確認します。監査対応、事務手続はありますが、税務優遇の少ないインドネシアにおいて、保税制度は魅力的であるといえます。
2018年9月21日付での財務大臣規定2018年第131号(No.131/PMK.04/2018)でも、保税区に立地する企業は、原材料や資本財などの輸入にかかる関税が免除され、その他の輸入にかかる諸税も徴収されないとしています。
一方で、輸出、他の保税地区・自由貿易地域への販売、政府が定めたその他の経済特区への販売を含む前年の実績額の合計の50%を限度として、正規の輸入手続きを踏めば、国内向けに販売することも可能となります。さらに、製品を国内の保税区域内の他企業に全量供給することも可能です。この場合、輸入手続きは不要で、付加価値税などが免除されます。他にも、保税区域内の企業から区域外の下請工場に加工に出す場合、加工後に製品を引き取る場合も同様に付加価値税等が免除されます。
■資本財および原材料マスターリスト制度
税務上の投資優遇制度として、資本財および原材料のマスターリスト制度があります。
2009年12月16日財務大臣規則第176号(2012年5月21日施行財務大臣規則第76号で一部変更、2015年9月30日施行財務大臣規則第188号にてさらに変更)において、事業開始・拡大時に機械を輸入する場合、あるいは原材料を輸入する場合に当該物品に係る関税を免税すると規定されています。
資本財および原材料のマスターリストは、製造業以外にも、観光・文化、運輸・通信(公共輸送サービス)、公共医療サービス、鉱山、建設、港湾等の非製造業等、当該産業の発展や拡大に必要と認められる場合に、関税の免除を受けることができます。
資本財マスターリストの申請の場合、投資調整庁に対して、輸入機械のマスターリストを申請し、その優遇認可を受けます。また、新規投資会社でなくても、追加投資が必要なときには同様に投資調整庁に対して追加投資認可を申請し、取得します。
原則として、1つのプロジェクトに対して1回のみ輸入機械のマスターリストおよびその認可を申請することが可能です。すでに認可を得たプロジェクトが、同一の機械を輸入する際に、再び認可を得ることはできませんが、投資認可の修正は可能です。
原材料マスターリスト申請免除期間は免除決定から2年とされています。ただし製造業に限り、使用する機械のうち、その総価額の30%以上がインドネシア国産である場合には、生産に必要な輸入原材料の輸入税の免除を免除決定から4年にわたって受けることができます。
申請時には表にある書類を用意して投資調整庁に申請をします。
投資調整庁にて申請後、所轄税務署に免税許可を申請します。中古資本財の場合はその後に、商業大臣の許可を取得し、船積み前の許可を取得します。
■その他(中小企業保護/経済特区)の優遇制度
通常、インドネシアの法人所得税は22%と規定されていますが、年間売上が50億ルピア以下の小規模事業の場合には法人所得税が50%免除となる措置があります。
経済特区(KAPET)に指定を受けた地域については、保税地区に認められる税務上の優遇のほか、加速減価償却等の優遇措置があります。
参考文献
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https://www.imf.org/en/Publications/WEO/weo-database/2021/April
・Bank Indonesia - Indonesia Financial Statistics ‘Gross Domestic Product By Industrial Origin At Current Prices’
https://www.bi.go.id/en/statistik/ekonomi-keuangan/seki/Default.aspx#headingThree
・Statistics Indonesia ‘[2010 Version] Growth Rate of GCP 2010 Version (Percent), 2021’
https://www.bps.go.id/indicator/11/104/1/-2010-version-growth-rate-of-gdp-2010-version.html
・Statistics Indonesia ‘Foreign Trade Statistics Import 2020 Volume I’ 2021-06-10
・JETRO「世界貿易投資動向シリーズ インドネシア」2020年11月10日
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/gtir/2020/09.pdf
・JETROビジネス短信「9月の消費者物価指数、前年同月比上昇率は低水準続く」2020年10月9日
https://www.jetro.go.jp/biznews/2020/10/db8c65d9c7721300.html
・JETROビジネス短信「3月の消費者物価指数、3か月連続で上昇幅が縮小」2021年4月15日
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/04/f0444096f018fe2b.html
・JETRO「ASEAN-中国自由貿易協定(ACFTA)の物品貿易協定(Trade in Goods Agreement)」2020年8月改訂
https://www.jetro.go.jp/ext_images/theme/wto-fta/asean_fta/pdf/acfta_202008rev.pdf
・NNA ASIA「パーム油の対印輸出、マレーシアが上回る」2019年8月26日
https://www.nna.jp/news/show/1942030
・NNA ASIA「世銀の所得分類、下位中所得国に格下げ」2021年7月12日
https://www.nna.jp/news/show/2211451
・Digima「【2020年版】インドネシア経済の最新状況|通年GDP成長率が-1.7%~/世界銀行が上位中所得国に引き上げ…ほか」2020年1月5日
https://www.digima-japan.com/knowhow/indonesia/13664.php
・SankeiBiz「【データで読む】インドネシア、タックス・アムネスティで税収増加」2017年5月22日
https://www.sankeibiz.jp/macro/news/170522/mcb1705220500003-n1.htm
・日本経済新聞「インドネシア工場 閉鎖 再生計画の概要」2020年5月29日
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO59717540Y0A520C2TJ1000/
・自動車産業ポータルMARKLINES「自動車販売台数速報 インドネシア 2020年」2021年1月29日
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-indonesia-by-month-2020
・FAOSTAT(国連食料農業機関)‘Crops and livestock products 2020’
https://www.marklines.com/ja/statistics/flash_sales/automotive-sales-in-indonesia-by-month-2020
・OICA(国際自動車工業連合会)‘Production Statistics’
https://www.oica.net/production-statistics/
・坂口安紀編『途上国石油産業の政治経済分析』岩波書店、2010年
・独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構「世界の鉱業の趨勢2012――インドネシア共和国」
https://mric.jogmec.go.jp/public/report/2012-04/Indonesia_12.pdf
・外務省「政府開発援助(ODA)国別データブック2012――インドネシア」
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/shiryo/kuni/12_databook/pdfs/01-01.pdf
OECD (2025), OECD Economic Outlook, Volume 2025 Issue 1: Tackling Uncertainty, Reviving Growth, OECD Publishing, Paris, https://doi.org/10.1787/83363382-en