投資環境
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
経済■ 経済動向
フィリピンは、ASEAN第2位の人口と国民の英語運用能力の高さという強みから、投資する魅力を備えた国です。VIP(ベトナム、インドネシア、フィリピン)の一角に位置付けられており、今後20~30年先を見据えた場合に経済成長率や人口増加率の面では勢いがあるといえます。外国企業がフィリピンに興味を持つ理由として、フィリピン人の高度な英語運用能力や、中国に比べて安価かつ豊富な若い労働力にあります。近年は理工系大学も充実しており、工学系人材を30万人、IT系人材を26万人輩出しています。豊富な外貨準備高と健全な国際収支からも、わが国との関係性を深めていくことが期待されています。
フィリピン中央銀行(BSP:Bangko Sentral ng Philipinas)が2025年に発表したデータによると、フィリピンのGIR(総外貨準備額)は2022年~2023年の初頭まで7カ月以上の減少を続けていましたが、その後回復を徐々にし、2025年の9月で前年同月比の2.5%増となりました。フィリピンでは伝統的に農業が主要産業でしたが、近年はコールセンター業務などのビジネス・プロセス・アウトソーシング(BPO)産業の発展により、サービス産業の比重が高まっています。
フィリピン経済では、2012年以来継続的にASEAN諸国でトップクラスの経済成長率を維持しています。国家経済開発庁のリポートによると、2021年第1四半期のGDP成長率は-4.2%となり、2020年より世界的猛威を振るった新型コロナウイルスの影響により下降へと向かいました。特にコロナ以前までフィリピンの景気を支えていた個人消費、および小売業の成長の鈍化が上記の煽りを受けたことが大きな要因となっています。そして、フィリピン統計庁(PSA)は2025年11月7日、2025年第3四半期のGDP成長率が前年同期比4.0%だったと発表し、前期の5.5%、前年同期の5.2%を大きく下回っています。これは、公共事業予算の支払いをめぐる問題を受けて政府からのプロジェクトに対する要件が厳格化されて支出が遅れている事も要因としてあげられています。また、民間消費は、台風や地震などの自然災害による経済活動の停滞で減速もしており、消費者や投資家の信頼回復を目的に、政府は災害対策への投資を含む改革や中長期的な施策を推進しています。
■ 経済成長率の推移
フィリピン経済は、実質GDP成長率が2012年から2019年まで毎年6%を超える水準を保っていました。特に、2016年には7.15%を記録し、翌年からも続いて6.93%、6.34%、6.12%と他のASEAN各国との比較においても高い伸びを記録していました。しかし、2020年には新型コロナウイルスの影響を受けて一時期では-16.9%のマイナス成長となっています。ただ翌年の2021年には12%にまで伸び戻り、2022年には実質GDP成長率は前年比7.6%でした。この数値は、政府が目標としていた6.5%~7.5%の成長率目標を上回っただけでなく、1976年の8.8%に次ぐ経済成長率となりました。
フィリピンの景気を根本的に支え大きなシェアを占める民間最終消費支出は8.3%で、国内での需要増加が経済成長を導きました。産業別では、鉱工業の成長率が6.7%、サービス業が9.2%、農林水産業は0.5%でした。この経済成長の理由については、主に新型コロナウイルスに伴う経済活動規制の緩和が国内で十分に進展し、繰越需要が起きたことだと考えられます。翌年2023年ではGDP成長率は5.6%、2024年は前年比5.7%と連続で政府目標(6.0%~6.5%)未達成が続きました。
【国内総生産(2018年一定価格)】
*前年比成長率(%)
2018-2019年第1四半期~2024-2025年第3四半期
出典:フィリピン統計局
以下のグラフは東南アジア主要国における名目GDPおよび構成比です。フィリピンが占める名目GDPの割合はASEANにおいてタイに次いで第4位となっています。
【東南アジア諸国の成長】
出典:International Monetary Fund
■ インフレ
2018年よりフィリピンのインフレ率は急激な高騰の一途をたどります。同年6月のインフレ率は前年同月比の5.2%とフィリピン中央銀行のターゲットであった4.0%を上回る水準となりました。背景には税制改正や通貨ペソの下落、さらに国内景気の過熱があり、そこでフィリピン中央銀行は4年ぶりの利上げを敢行しました。2019年から2021年までは2~3%と落ち着きをみせていたものの、2022年に入ると再び高水準へ上振れした結果、同年1月のインフレ率は8.7%まで上昇します。これは2008年11月に記録された9.1%よりも高い数値となりました。この高振れの原因としては、食糧価格、住宅賃料や水道代、電気代などの生活費にかかわる物価の高騰、レストランや宿泊サービスの需要増加によるものと考えられており、今後も年単位で継続的な上昇が予想されます。
【フィリピンにおける全ての品目を含んだ消費者物価指数(CPI)の変化(2018~2025年)】
出所:フィリピン統計局
■ 財政収支の推移
2019年には過去最大の6,602億ペソの財政赤字となりました。フィリピン第16代大統領ドゥテルテ氏は「ビルド・ビルド・ビルド」を中心としたインフラプロジェクトを掲げる一方で、国家予算成立の大幅な遅れや、中間選挙キャンペーンによる公共工事の禁止など、多岐にわたる過剰な予算執行によって財政を圧迫させました。
フィリピン財務局は2025年11月時点で1,576億ペソの赤字を発表し、前年同月比の12%増加となりました。これを受けた第17代大統領マルコス氏は、インフラ支出の削減はせずにGDP比で5~6%を維持し、広範な税制改正と経済成長による税収増に取り組む意向をみせています。
国際的格付機関フィッチ・レーティングス(フィッチ)は、2022年10月27日に「フィリピン共和国(フィリピン)の外貨建ておよび自国通貨建て長期発行体デフォルト格付(IDR)、外貨建ておよび自国通貨建て無担保優先債券の格付をトリプルB(BBB)に据え置く」と発表しました。BBBという格付は、投資適格最低基準であるトリプルBマイナス(BBB-)を一段階上回るステータスであり、「金銭債務の履行能力は概ね十分にあると考えられるが、経営又は経済環境の悪化がこの能力を損なう可能性がある」を意味します。フィッチは、2017年12月、フィリピンの格付をそれまでの(BBB-)から(BBB)へと引き上げ、それ以降、BBBを継続しています。
こうしたなか、ドゥテルテ前政権は良好な財政状況もあって財政支出や政府開発援助(ODA)を頼りにインフラ整備にこだわってきましたが、マルコス政権はやや方針転換し、官民連携(PPP)方式を積極的に活用していくことを明らかにしています。コロナ禍で財政収支が悪化し、政府の債務残高が膨らんでいることが背景にあります。とはいえ、マルコス政権の開発計画でもインフラ整備にかける財政支出のGDPに占める割合を引き続き5%~6%に維持することが明記されており、従来の財政支出とODAに頼りつつ、さらにPPPを加えることによってインフラ整備を加速させたい意向が示されました。しかし、政府の公共事業に関する不正や汚職問題が浮き彫りとなり、格付けの引き上げはしばらく見送りになる可能性が高いと言われています。
出典:フォーカスエコノミクス
【アジアおよびその他主要国の格付け】
|
| 国名 |
AAA |
| 米国、ノルウェー、スイス |
AA | AA+ | シンガポール、オーストリア、ドイツ、オランダ、フィンランド |
AA |
| |
AA- | 韓国、香港、フランス | |
A | A+ | 英国、中国 |
A | 日本 | |
A- | スペイン、ポーランド、チリ | |
BBB | BBB+ | インド、タイ、マレーシア |
BBB | フィリピン、インドネシア、ペルー、イタリア | |
BBB- | インド、ルーマニア、メキシコ | |
BB | BB+ |
|
BB | ブラジル | |
BB- | エジプト |
■ 経常収支
フィリピン経済を支える大きな柱の一つが、海外労働者からの送金による経常移転収支の黒字です。海外で季節労働者をするフィリピン人労働者はOFW(Overseas Filipino Workers、以下OFW)と略称され全人口の1割超に相当する1,000万人ほどが該当すると言われており、年々増加傾向にあります。行き先は割合が大きい順に、アジア、ヨーロッパ諸国(9.3%)、北および南アメリカ(8.9%)、オーストラリア(2.2%)、アフリカ(1.3%)となっています。季節労働者のおよそ6割を女性が占めています。フィリピン人は総じて英語力が高いため、優秀な人材が欧米に渡ることによってこのような状況が生じます。2025年中央銀行の発表によると、OFWの国別送金額は多い順にアメリカ(40.4%)、シンガポール(7.3%)、サウジアラビア(6.3%)、日本(5.0%)、イギリス(4.5%)、UAE(4.5%)、カナダ(3.2%)、カタール・韓国(2.9%)、台湾(2.7%)、香港(2.7%)となっています。
貿易
フィリピン経済における問題の一つは財政赤字ですが、 その主な原因は貿易赤字です。貿易構造は、電子機器の半完成品を輸入し、それを半導体などに加工した上で輸出する中間貿易が主流となっています。2020年には新型コロナウイルス感染拡大の影響を大きく受けたものの、2025年9月には貿易赤字も前年同月比で縮小し、年々減少の兆しを見せています。本節ではフィリピン統計局(PSA)の2024年貿易資料よりフィリピンの貿易概要を確認します。
■ 対外貿易総額と貿易収支
2024年の対外貿易総額はおよそ2,003億6,600万USDであり、前年の対外貿易総額1,990億2,900万USDから年間0.7%増加しています。 2022年と2021年には、対外商品貿易総額はそれぞれ13.2%と23.6%の年間増加を記録したのに対し、2023年は7.8%の減少をしていました。2024年の対外貿易総額のうち、63.6%が輸入品で、残りが輸出品です。
【フィリピンにおける対外貿易総額の業績】
出所:フィリピン統計局
貿易収支(BoT-G)とは輸出額と輸入額の差額を示すもので、2023年のBoT-Gは-525.9億米USDと年間8.8%の貿易赤字でした。2022年の貿易赤字は年率36.6%の増加、2021年では年率71.5%の増加となりました。
【フィリピンにおける輸出入統計額】
出所:フィリピン統計局
経常収支全体では総じて黒字となっていますが、これは貿易赤字を大きく上回る海外からの送金に支えられた経常移転黒字によるものです。このような経常収支構造はASEAN諸国では異例であり、メキシコと似た構造となっています。
【フィリピンにおける経常収支(2014~2024年)】
出所:フィリピン統計局
■ 輸出
下記のグラフは2006年から2024年にわたって年度ごとのフィリピン における輸出額を示しています。2024年の同国の総輸出売上高は732億6,800万USDで、前年の総輸出額795億7,000736億2,000万万USDから年間0.6%増加しています。2022年と2021年の輸出総額は、それぞれ年間6.5%と14.5%の増加を記録し、2023年では7.5%減少しました。
【年度毎のフィリピンにおける輸出額(2006~2024年)】
出所:フィリピン統計局
[品目別の輸出]
2024年の輸出額の年間減少幅が最も大きかった品目グループは電子製品で、その額は42億4,500万USDでしたが、2024年には28億1,400万USDの増加で回復しました。これに対し、ココナッツオイルが2023年には9億2,058万USD、2024年には1億4,100万USD、さらに、その他工業製品が2023年に4,290万USD、2024年に7億700万USDと連続で減少しています。
【年単位で増減した5つの主要輸出品目グループ】
出所:フィリピン統計局
電子製品は引き続き2024年も同国の最大の輸出品であり、同期間の総収益は390億9,400万USDで、同国の総輸出の53.4%を占めています。これに、その他の工業製品の輸出額が46億7,600万USD(6.4%)、その他の鉱物製品の輸出額が30億646万USD (4.1%) と続きました。電子製品商品グループは引き続き輸出売上高でトップを維持しており、今後も高い輸出売上高が予想されます。
[国別の輸出]
主要貿易相手国別では、米国への輸出が最も多く、2024年の輸出総額に占める121億4,400万USDに相当し、シェア16.6%を占めています。2024年の主要輸出貿易相手国上位5位のその他の国の輸出額と輸出総額に占める割合は次のとおりです。
・中華人民共和国、94億4,400万USD(12.9%)
・日本、103億3,000万USD(14.1%)
・香港、96億500万USD(13.1%)
・韓国、35億7,000万USD(4.9%)
【主要提携国によるフィリピ ン輸出額(2024 年)】
出所:フィリピン統計局
また、タイは輸出総額で東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国をリードしています。ASEAN加盟国への輸出総額は110億1,500万USDに達し、2024年の同国の総輸出収入の15%を占め、特にタイへの輸出は、2023年でASEAN加盟国への輸出総額の31.4%を占めていたシンガポールを差し置いて26.8%にあたる29億5,600万USDで最も高いシェアを占めました。
【ASEAN 貿易提携国によるフィリピン輸出額(2024 年)】
出所:フィリピン統計局
ASEAN加盟国への主な輸出品目と、それに対応する輸出額およびASEAN輸出総額に占める割合は次のとおりです。
・電子製品、63億3,700万USD(57.5%)
・精製銅製のカソードおよびカソード部分、7億7,400万USD (7.0%)
・その他の製造品、9億600万USD(8.2%)
・機械および輸送機器、4億3,900万USD(4.0%)
・ココナッツオイル、4億6,400万USD(4.2%)
地域別での比較では、2024年の輸出額で最も高いのは東アジアで364億1,000万米USD(49.5%) です。次いで、北米が輸出額121億3,000万USD(16.5%)、東南アジアが輸出額112億2,000万USD(15.2%)となっています。
【地域別フィリピン輸出額(2022~2024年)】
出所:フィリピン統計局
■ 輸入
2024年の輸入品総額は1,275億9,600万USDで、前年の1,262億900万USDから年間1.0%程増加しました。過年度での傾向でみていくと、2023年は年間8.0%減少したのに対し、2022年と2021年には、総輸入量はそれぞれ17.4%と30.1%の年間増加を記録しました。
【年度毎のフィリピンにおける輸入額(2006~2024年)】
出所:フィリピン統計局
[品目別の輸入]
商品グループ別での輸入品目では、電子機器が266億4000万USDと1位を占め、2022年度と比較すると6000万USDほど減少している一方で、輸送機器では124億5100万USDと1000万強USDほど増加しました。
【品目別輸入額上位5 位(2023~2024 年)】
出所:フィリピン統計局
主要な品目別では、原材料と中間財の輸入が2024年の輸入総額の最大の割合を占め、464億7,100万USD(36.4%)に達しています。次いで資本財のシェアが357億2,800万USD(28%)、消費財の輸入額が258億2,300万USD(20.2%)となりました。
【フィリピン主要商品輸入額(2023~2024年)
出所:フィリピン統計局
[国別の輸入]
中華人民共和国は、2024年の輸入総額の25.7%に相当する328億3,200万USD相当の輸入品の最大の供給国となっています。2024年の主要輸入貿易相手国のその他の上位5位について、対応する輸入額と輸入総額に占める割合を集計すると、次のようになります。
・インドネシア、106億4,000万USD(8.3%)
・日本、101億800万USD(7.9%)
・韓国、96億3,300万USD(6.4%)
・米国、81億6,700万USD(6.4%)
【主要提携国によるフィリピン輸入額(2024年)】
出所:フィリピン統計局
2024年のASEAN加盟国からの輸入総額は360億4,200万USD、つまり同国の総輸入額の28.2%を記録しています。輸入の大部分はインドネシアからのもので、ASEAN加盟国からの輸入総額の29.5%にあたる106億4,000万USDとなりました。
【ASEAN 貿易提携国によるフィリピン輸入額(2024 年)】
出所:フィリピン統計局
投資環境
■ アンケートから見る投資環境
国際協力銀行(JBIC:Japan Bank for International Cooperation)が実施したアンケート調査(右記表)をもとに、すでに海外への進出経験のあるわが国製造業企業が、フィリピンを事業展開先としてどのように見ているのか。
ASEAN加盟国に着目すると、上位国から順にベトナム、インドネシア、タイ、マレーシア、そして2025年には8位となったフィリピンが続きます。カンボジアは19位、シンガポールは24位、ミャンマーは33位となっています。
加盟国内で比較すると芳しくないが、全世界からの位置づけは、次のように言えます。2014年においては11位であったところ、2015年に8位に浮上し、2019年以降7位~9位の順位を維持しています。
このランキングでフィリピンより上位に位置する国は、当該国自体が巨大市場である場合や(中国、インド、米国)、自動車などの産業集積が一定程度進んでおり第三国への輸出拠点としての地位を確保している国(タイ、インドネシア、ベトナム)が目立ちます。
他のアジア諸国と比べて遅れをとるフィリピンの今後に向けた課題となっています。
【わが国製造案企棠が中期的に有望視する国】
出所: JBIC 「わが国製造莱企業の海外事業展開に関する調査報告」(2024年、2025年度調査より作成)
金融(株式)市場
フィリピン証券取引所(PSE:The Philippine Stock Exchange, Inc. 以下PSE)は、首都マニラにあるフィリピンで唯一の証券取引所であり、2025年3月時点において283社が上場しています。 1992年にマカティにあるMkSEとマニラにおけるMSEをPSEに統合し、さらにPSEはマニラ首都圏マカティ市にある取引所の地方事務所をセブ市に開設しました。これは、首都圏に集中している投資家以外に、フィリピン第2の経済圏を持つセブ地方の小口投資家を狙ったものと見られています。
2011年6月にはASEAN4カ国の証券取引所(マレーシア証券取引所、フィリピン証券取引所、シンガポール証券取引所、タイ証券取引所)がオンラインで結ばれ、国家間のクロスボーダーのオーダー・ルーティングやトレーディングがネット上で可能となりました。これにより、投資家や取引所会員各社は単一の接続で、ASEAN市場にアクセスすることができるようになり、今後はPSEの一層の活性化が期待されます。
しかし、フィリピンでは 株式市場を通じたガバナンスが有効に機能していないこと、また、企業の情報開示も十分ではなく、一般株主が企業業績を正確に把握することが困難であることから、株式市場の投資家が企業経営に関与しようとする意識が低いとの指摘がありました。また、PSE年報および市況報告書によると、IPO発行実績が年平均2~4件と取引規模が小さいのが現状であり、国内資本の大手企業においても未上場企業が多数存在しています。
2020年以降のフィリピン総合指数(PCOMP)、および株価時価総額の加重平均推移では、フィリピン証券取引所に上場された商工業、不動産、鉱業、石油部門の銘柄で構成されてれおり、1994年9月30日を基準日としています。コロナ禍を機に2020年には大きな落ち込みがあったものの、翌年には回復の兆しを見せながら2025年まで横ばいの推移となっています。
■ 為替レート
フィリピンペソは2020年から2021年にかけて為替が下落したものの、2022年7月頃から上昇し、2023年にはコロナ以前よりもレートが上がっています。ASEAN諸国においては変動が激しく、今後も順位の入れ替わりが予想されます。
【ASEAN各国通貨の為替レート(対ドル、期中平均)】
出典:JETRO
【ASEAN 主要国通貨の為彗レート(対ドル、期中平均、2019 年1 月=100)】
出典:JETRO
■ 直接投資(FDI)
フィリピンは、自動車や電子部品などの業種を中心にグローバル輸出拠点として外資系企業の進出が増加した背景があります。日系企業の主要進出企業は、自動車・電子機器・機械など、中国一極集中の懸念から周辺のASEAN諸国へと展開が図られたことが要因だと考えられます。前アキノ政権では民間資金を導入する官民パートナーシップ(PPP)スキームを推進しており、海外からの大型投資により一層のインフラ投資の加速が見込まれます。
【フィリピンの外国直接投資受入状況(100万USドル)】
出所:フィリピン中央銀行
■ 業種別受入動向
フィリピンにおける外国直接投資を業種別でみると、2023年に続いて2024年も再生可能エネルギー(再エネ)分野を含む「電力、ガス、空調」の投資額が3,415億100万ペソと最も大きくなっています。前年比では53.4%減となったものの、2022年の法改正により水力発電プロジェクトを除く再エネ事業で外資100%による運営が可能になったことや、2023年に開始されたグリーンレーンの導入が、引き続き再エネ分野での投資を後押ししていると考えられています。「製造業」は13.7%増の1,261億3,300万ペソと伸びを続けています。また、「ホテル、外食」は前年比81.0倍の200億9,800万ペソでした。フィリピン移民局によると、2024年にフィリピンを訪れた外国人観光客数は1,470万人を超え、新型コロナ後の観光業の順調な回復が見られています。2022年単年および2019年~2022年の4年間累計では通信業の投資が最も大きくなっています。これは、2021年にフィリピン経済区庁(PEZA)による認可が進んだことで、マニラ首都圏でのソフトウェア開発やBPO産業が振興しました。
【フィリピンの業種別外国直接投資受入状況】
出所:フィリピン統計局
■ 国別外国投資受入額
フィリピンは、自動車や電子部品などの業種を中心にグローバル輸出拠点として外資系企業の進出が増加した背景があります。日系企業の主要進出企業は、自動車・電子機器・機械など、中国一極集中の懸念から周辺のASEAN諸国へと展開が図られたことが要因だと考えられます。前アキノ政権では 民間資金を導入する官民パートナーシップ(PPP)スキームを推進しており、海外からの大型投資により一層のインフラ投資の加速が見込まれます。
【フィリピンの国別外国直接投資受入状況】
出所:フィリピン統計局
■ フィリピンへの日本企業の進出数
フィリピンに進出している日系企業総数は、2024年10月外務省の発表によると1,630社にのぼります。近年の傾向としては小売業の進出です。ユニクロ(ファーストリテイリング)が、2012年6月15日にフィリピン小売業のリーディングカンパニーであるSMリテールと合弁の形で進出しており、2019年10月末時点で60店舗出店しています。また、コンビニではファミリーマートが2913年4月に1号店を開店し、 2019年9月末時点で76店舗出店しており、ローソンが2015年3月に1号店を開店し、2019年6月末時点で45店舗出店しています。2019年にはホテルオークラが進出、さらには伊勢丹などの企業の進出が予定されており、フィリピン市場に目を向けた進出も目立ってきています。2024年4月には、ニトリホールディングスがBonifacio Global City(通称BGC)、MITSUKOSHI BGCにてフィリピン第1号店を出店しており、同企業は2025年に海外100店舗規模となる出店を見込んでいるなど、日系企業から新規設立・店舗拡大の国として注目されていることが分かります。
■ インフラ
アジア各国がインフラ整備を急務としており、フィリピンもその例に漏れません。ただし、厳しい国家財政事情もあり、計画通りに進まないのが現状です。
フィリピンのビジネスリスクの一つとして多くの企業が挙げる点が、電力インフラの未整備です。フィリピンでは電力の需給バランスが整っておらず、電気料金は周辺国のおよそ2倍となっています。また、電力の供給や質が不安定となっています。したがって、精密機器を製造するような工場では、自家発電用のディーゼル発電などの対策が必要となります。それゆえ他国より多くの投資が必要となってしまいます。
アロヨ政権下では、「フィリピン中期開発計画」の中で10大政策中の3つに交通インフラに関する政策が挙げられていたことから、以前からインフラの未整備については認識されていたようですが、一貫性のない政府方針が民間企業の不信を招き、なかなか整備が進んでいませんでした。
このため、前アキノ政権では官民パートナーシップ(PPP)によるインフラ整備を打ち出しました。PPPとはインフラ整備の運営権を民間企業に入札させ、その民間企業の資金によってインフラ事業を実施していくという手法です。
これにより2016年にはGDP比で1.8%だったインフラ整備費が2015年には同4%まで上がりました。
2016年6月末に発足したドゥテルテ政権もインフラ整備には積極的な姿勢を見せており、予算面ではインフラ整備費をGDP比の5~7%に拡大させると表明し、PPP事業の積極的な推進も掲げています。わが国からも安倍首相が2017年1月に訪比してドゥテルテ大統領と会談し、包括的な経済協力のため、政府開発援助(ODA)や民間投資を合わせて今後5年間で1兆円規模を支援することを表明しています。
これによって、地下鉄などのほか、地方都市への電力供給インフラの整備などが想定され、日本が官民を挙げてインフラ整備に協力すると表明しています。
マルコス大統領下での2024年度国家予算では、公共インフラ・農業などの経済サービス部門に対して前年比5.2%増額の1兆6300億PHPほどが割り当てられました。「ビルド・ベター・モア」を掲げたマルコス指導の下、近隣東南アジア諸国と比較すると30年の遅れと言われている不十分な状態の対処を課題としていることがうかがえます。
※ビルド・ベター・モア:Build Better MoreからBBMと略称される、マルコス政権下におけるインフラ開発プログラム。
またフィリピンは島国であることから、海路での運輸が発達しています。古くから貨物の往来も多く港が整備されており、空路においてもマニラ国際空港の存在は東アジアと東南アジアを結ぶ中心として重要な地域と認識されています。しかし、陸路では地方の自治体によって発達度合いにバラつきが見受けられ、インフラとして包括して考えたときには未整備地域が多く占めているとみなして良いでしょう。
■ 人的資源
フィリピンの人口は2025年で1億1,600万人と、ASEANの中ではインドネシアに次ぐ規模となっています。またフィリピンの人口ピラミッドは、1950年当時の日本の人口ピラミッドと同じ形をしており、若年層の人口が最も多い発展途上国特有の富士山型の典型となっています。人口ボーナス(生産年齢人口が総人口に占める割合が高い状態)のピークは2045年頃まで続くと言われています。これは今後、若い労働力が長期安定的に供給されることを示しており、今後、耐久消費財を中心とする内需が一気に高まり、フィリピンという国の競争力となって現れてくることが期待されます。
【フィリピンの人口ピラミッド】
出所:PopulationPyramid.net
■ 人の特徴
フィリピン人は明るく、素直なおおらかな性格の持ち主であると言われることが多く、ホスピタリティにあふれ、高齢者を敬う保守的な国民性の傾向があります。カトリック信者がおよそ8割を占め、まじめで誠実な人がいる反面、大らかさと陽気さが度を過ぎて勤勉さに欠けるという声も日本人駐在員から耳にしますが、これはフィリピンに限った事態ではなく、東南アジア全体で見受けられる現象でもあります。そのため現地で従業員を雇用する場合、ルール遵守の意識付けも兼ねて、法律の抜け漏れがない就業規則による細かなルール設定や職務記述書の作成を含めたマネジメントが必須です。
ただ、フィリピンはアメリカ、イギリスの次に英語話者が多い国であり、優れた語学能力よりコールセンターなどのBPO(ビジネス・ プロセス・アウトソーシング)産業が評価されています。これにはマネジメント層のみならず、ワーカーとも直接英語で会話ができる点が優位に働いていたおかげだと言えるでしょう。
■ 賃金コスト、労働力の質と量
フィリピンの賃金コストに関して、製造業におけるマネジャー、エンジニア、作業員を比較すると、主要なアジア圏で中間に位置しています。しかし、他国に比べて作業員レベルまで英語が堪能なことを考えれば、アジア圏の中では比較的リーズナブルな価格で質の高い人材を確保することができる点で優位性があると考えられます。 マニラ首都圏における農業部門以外の最低日給は2025年7月18日より50ペソ上昇した695ペソになり、今後も継続的な引き上げが予測されます。
フィリピンには法定最低賃金があり、ワーカーの賃金は必ずしも低廉ではなく、タイと同様のレベルです。しかし、エンジニア(たとえばコンピューター技術者)では、質量ともに豊富で、定着率も高く、賃金も比較的低廉であるという特徴が挙げられます。 加えて、前述したように英語でのコミュニケーションが可能な人が多く、技術指導が容易なことは大きなメリットです。他のASEAN諸国と比べてもビジネスにおいて英語の話せるワーカーが多いのもフィリピンの比較優位性の一つだと言えます。先述したように、世界の各国がフィリピンにコールセンターやコンピューターソフトの開発、BPOで進出している理由も、その英語力の高さによるものです。
■ 地理的な優位性
日本から最も近い東南アジアの一国であり、フェデックス・エクスプレス社がハブ空港などを構えていることから、業種によって地理的優位性を持つものと思われます。
■ 投資課題
フィリピンの投資環境の課題を挙げるなら、①インフラ整備の遅れ (道路・電力等)、②裾野産業の脆弱さ(低い現地調達率、生産コスト高)、③労働争議などです。
「世界の工場」として台頭する中国からの安価な製品の流入が、 ASEAN各国に始まっています。また、ASEAN域内の日系企業では、 域内の生産拠点を再編・集中しようとする動きや、コスト削減のため現地調達率を高めようとする動きがあります。たとえば、タイは自動車 (特に1トントラック)の輸出基地として、自動車部品産業の集積度合いが高まっています。今後、ますます国際競争が激しくなる中、外国からの投資を呼び込むとともに、発展を続けていくためには、投資環境をより整備していくことが課題です。
また、気になるフィリピンの治安についてですが、2007年にマニラ市内中心部のマカティ地区にある日系企業が利用していた高級ホテルにおいて、武装集団が当時のアロヨ大統領の退陣を求める立てこもり事件が発生しました。しかし、反政府勢力は一般市民に危害を加えないとの考えを持っているため、無差別に一般市民を巻き込むような テロはあまり考えられません。神経質になりすぎないことが必要です。それよりは、もう少し身近な繁華街や観光地でのスリ、ひったくり、美人局の類には注意する必要があります。
フィリピンでの技術系人材の確保については、文系出身のITエンジニアが多い日本に対して、フィリピンでは理工系大学出身のITエンジニアが多いのが特徴です。毎年30万人の工学系人材と、26万人のIT系人材を輩出しています。
また、アジア圏の中でも特に大学進学率が高く、理工系出身の質の高いITエンジニアが多くいます。人材が豊富なわりに国内産業が発展途上であることから、先進国の外資系企業で働きたいという意欲のある人材が多いためです。今後フィリピンにおいて技術系人材を確保するのが難しくなることが考えられ、日系企業の進出が少ない今がチャンスだと言えるかもしれません。
投資規制
■ 外資政策の基本3法
フィリピンでは産業に関わらず外国投資家からの投資が歓迎されていますが、国内産業の保護を目的として、特定の業種に対する外国投資には規制がかけられています。事前にこれらについて把握するために、どの法律を参照すれば良いのかを知っておく必要があります。ここでは、外資政策の基本となる法律と、投資規制、優遇政策との関係を整理します。
外資政策の基本となる法律は次の3つです。
❶ 1987 年オムニバス投資法
1987年オムニバス投資法(The Omnibus Investment Code of 1987)は、優遇措置を伴う投資に関する法律です。
❷ 1991 年外国投資法
1991年外国投資法(The Foreign Investment Act of 1991)は、オムニバス投資法に定められていた「優遇措置を伴わない投資」の規定に代わり制定されたもので、優遇措置を伴わない外国投資に関する基本的な法律となっています。
❸ 1995年特別経済区法
1995年特別経済区法(The Special Economic Zone Act of 1995)は、輸出加工区及び特別経済区(Special Economic Zones)に関する総括的な法律であり、特区内に進出する企業に対して優遇措置を付与しています。
優遇措置を受けることができるかどうかは、大きく2つの検討事項があります。一つは業種です。これは❶、❷の法律を基に検討します。もう一つは、地域別での優遇です。これは❸を参照します。
まず、業種での優遇政策は、「1987年オムニバス投資法」を参照し、自社が投資しようとするビジネスが優遇を享受できるかどうかを 検討します。
担当政府機関は投資委員会(BOI:Board of Investments)です。BOIが同法に基づいて、投資優先計画(IPP:Investment Priority Plan)を発表しています。このIPPの対象業種に投資する企業には法人税減免などの優遇政策が与えられます。これに該当する場合は、BOIへ投資申請を行うこととなります。2022年度戦略的投資優先計画(SIPP)では、ティア1から3にわけて、下記の優先投資分野が定められています。
ティア1
2020年版投資優先計画(IPP)に記載されたすべての活動(ただし、ティア2または3に記載されたものを除く)で、2020年版IPPに記載された活動は以下のとおりです。
1.新型コロナウイルスのパンデミック対策に関連するすべての適格な事業
a.必須物品
医薬品、医療機器・装置、個人用保護具(PPE)、手術機器・用品、実験機器・試薬、医療用品、工具および消耗品(除菌剤・洗浄剤、次亜塩素酸ナトリウム、ポビドンヨードなどを含むがこれらに限られない)、これらの物品の生産・製造に使用する原材料、半製品・中間製品、機械・設備の生産・製造が対象となる。また、これらの物品を製造するための製造活動の再利用も含む。
b.必須サービス
火葬場、医療廃棄物の処理・処分、研究室、実験施設、病院、検疫施設などのサービスの提供が対象となるがこれらに限られない。また、投資委員会の決定に従い、新型コロナウイルス対策やその影響の緩和に関連するその他の物品やサービスも対象となる。これには、政府やその機関・部門、地方自治体のプログラムに含まれるものなどがあるが、これらに限定されない。
2.投資委員会の決定に従い、提案されているバリク・プロビンシャ(Balik Probinsya)プログラムや政府が実施する可能性のある同様のプログラムなど、密集した都市部以外での雇用機会を創出するプログラムを支援する活動への投資。
3.基準を満たすすべての製造業(農産物加工を含む。ただし、マニラ首都圏では、近代化プロジェクトのみが対象)
a.工業品の製造または農産物および水産物の加工(ハラルフードおよびコーシャフードを含む)による、[1]半製品/中間品、または[2]完成品もしくは消費財の生産
b.プレハブ住宅用部品、機械および部品を含む装置の製造航空宇宙部品
4.農業、漁業および林業(ただし、マニラ首都圏では、農業インフラと支援サービス、都市農業プロジェクトのみが、新規、拡張、近代化として対象)
農産物、水産物および林産物の商業生産が対象となる。また、保育園、孵化場、収穫後施設、その他の支援サービスやインフラも対象となる。
5.戦略的サービス業
a.集積回路(IC)設計
集積回路の設計に必要なすべての論理・回路設計技術が対象となる。
b.クリエイティブ業界/ナレッジベースサービス
国内向けのIT-BPMサービス(コンタクトセンター、データアナリティクスなど)や、アニメーション、ソフトウエア開発、ゲーム開発、医療情報管理システム、エンジニアリング・デザインなどのオリジナルコンテンツを伴うサービスが対象となる。
c.航空機の保守、修理および整備
d.代替エネルギー自動車用チャージ/燃料補給ステーション
e.産業廃棄物対応
f.電気通信事業(ただし、新規参入者のみが対象)
g.最先端工学、調達および建設
6.ヘルスケアおよび災害リスク軽減管理サービス
総合病院、専門病院、その他の医療・健康施設(薬物更生施設、検疫所、避難所を含む)の設置・運営が対象となる。
7.集合住宅(ただし、マニラ首都圏では、賃貸用の低コスト都市住宅のみが対象)
200万ペソを上限とする住宅の開発が対象となる。
8.インフラストラクチャーおよび物流(LGU-PPPを含む)
空港、海港、(空路、陸路および水路)輸送、LNG貯蔵・再ガス化施設、石油・ガスのパイプラインプロジェクト、大量の水処理・供給、トレーニング施設、試験所、国内工業地帯などの(ただし、これらに限定されるものではない)、国の経済発展・繁栄に不可欠な物理的インフラの構築・運営が対象となる。また、地方自治体(LGU)が主導・実施するPPPプロジェクトも対象となる。
9.イノベーション・ドライバー
研究開発(R&D)活動、臨床試験(治験を含む)の実施、センター・オブ・エクセレンス、イノベーション・センター、ビジネス・インキュベーション・ハブ、スマート・シティ、ファブリケーション・ラボ(ファブラボ)/コワーキング・スペースの設置、モビリティ・ソリューションやデジタル取引の開発が対象となる。また、以下のような新技術や新興技術の商業化、製品やサービスに関する商業化されていない特許、および国内で行われた研究開発の成果物も対象となる(ただし、これらに限定されない)。
10.インクルーシブ・ビジネス(IB)モデル
バリューチェーンの一部として、農業ビジネスや観光分野における中堅・大企業(MLE)が、零細企業(MSE)に対してビジネス機会を提供する活動が対象となる。
11.環境または気候変動関連プロジェクト
エネルギー、天然資源、原材料の効率的な利用、汚染の最小化・防止、温室効果ガスの削減につながる商品の製造・組立、エネルギー効率関連施設の設置が対象となる(ただし、共和国法第11285号またはエネルギー効率・保全法に基づくものを除く)。また、国際基準に基づいたグリーンシップリサイクルや、民間の材料回収施設の設立も対象となる。
12.エネルギー
従来の燃料(すなわち石炭、ディーゼル、バンカーおよび天然ガス)、廃熱、その他の廃棄物を利用した発電プロジェクトや、バッテリーによるエネルギー貯蔵システムの構築が対象となる。
ティア2
フィリピンの産業バリューチェーンにおけるギャップを埋める活動で、以下が含まれる。
1.グリーン・エコシステム
電気自動車(EV)組立(純EV、プラグインハイブリッドEV、ハイブリッドEV、燃料電池EVなど)、EV部品・コンポーネントおよびシステムの製造、EVインフラの構築・運営、エネルギー効率に優れた船舶・機器の製造、スマートグリッド・再生可能エネルギー用電子機器・回路(ウェアラブルソーラー機器を含む)、バイオプラスチック・バイオポリマー、再生可能エネルギー、エネルギー効率・保全プロジェクト、エネルギー貯蔵技術、統合廃棄物管理・廃棄・リサイクルなどを対象とする。
2.ヘルスケア関連活動
ワクチン自立支援プログラム、その他保健省(DOH)、科学技術省(DOST)、その他の類似機関が承認したその他の健康関連プログラムを支援する製造、医薬品、医薬品有効成分、専門病院など、健康関連活動を対象とする。
3.防衛関連活動
国防省(DND)、フィリピン国軍(AFP)、国家安全保障会議(NSC)が承認する国防関連活動を対象とする。
4.産業バリューチェーン・ギャップ
鉄鋼、繊維、化学、グリーンメタル加工(銅、コバルト、ニッケルなど)、原油精製、ラボスケールウェハー製造など、バリューチェーンのギャップに対処する活動を対象とする。
5.食料安全保障関連活動
農業省(DA)またはフィリピン農業・水生・天然資源研究開発評議会(PCAARRD)が承認する、食料安全保障を競争力をもって確保するために重要な製品およびサービス、またはグリーン/有機農業を支援するものを対象とする。
ティア3
1.経済の変革を加速させる重要な活動で、以下の活動が含まれます。
ロボット工学、人工知能(AI)、積層造形技術、データ解析、デジタル変換技術(クラウドコンピューティングサービス、ハイパースケーラー、データセンター、デジタルインフラなど)、ナノテクノロジー(ナノエレクトロニクスを含む)、バイオテクノロジー、新しいハイブリッド種の生産・採用、その他のインダストリー4.0技術などを含むが、これらに限らない研究開発および第4次産業革命の先進デジタル生産技術の採用に関する業務。
2.装置、部品の製造、サービスの製造、知的財産(IP)および研究開発製品・サービスの商業化、航空宇宙、医療機器(個人防護装置を除く)、IoT機器・システム(無線センサーおよび機器を含む)、フルスケールウェハ製造、先端材料などを含むがこれらに限らない、高度な技術を要する革新的製品・サービスの製造および生産を行うこと。
3.研究開発ハブ、センター・オブ・エクセレンス、科学技術パーク、イノベーション・インキュベーション・センター、技術系スタートアップ、スタートアップ支援施設(インキュベーター、アクセラレーター)、宇宙関連インフラなどを含むがこれらに限らない、イノベーション支援施設の設立。
出所:JETRO(『第12次外国投資 ネガティブリスト』より抜粋)
上記の優遇政策に該当しない場合に残る選択肢は、優遇措置を伴わない外国投資か、投資禁止業種に該当するかの2 択です。これを把握するために、「1991年外国投資法」のネガティブリストを参照します。ネガティブリストには、業種ごとに出資比率が決められています。 逆に、このネガティブリストに該当しなければ、原則100% の外国投資が認められます。
❹1991年外国投資法(共和国法7042号、1996年改正)
同法に基づいて定期的に更新される「外国投資ネガティブリスト(Foreign Investment Negative List)」によって、外国投資規制分野が規定されます。2022年7月に改訂された第12次ネガティブリストが最新版となっています(2024年1月16現在)。
1991年外国投資法は、アキノ政権下に制定され、1996年にラモス政権下で改正されました。この法律は、1987年オムニバス投資法の「奨励措置が適用されない外国投資」を改正したものです。よって、優遇措置に該当しない投資について、国内市場開放を目指したもので、 ネガティブリスト以外の業種に対する投資は外資による100% 出資が認められます。
■ 禁止分野
以下の業種に該当する場合、外国投資家の参入や外国人の就業が認められていません。
1. インターネットビジネス及びレコーディングを除くマスメディア
2. 専門職
3. 払込資本金が250万USドル以下の小売業
4. 協同組合
5. 民間警備保障会社
6. 小規模鉱業
7. 群島内・領海内・排他的経済海域内の海洋資源の利用、河川・湖・湾・潟での天然資源の小規模利用
8. 闘鶏場の所有、運営、経営
9. 核兵器の製造、修理、貯蔵、流通
10. 生物・化学・放射線兵器の製造、修理、貯蔵、流通
11. 爆竹その他花火製品の製造
出所:JETRO(『第12次外国投資 ネガティブリスト』より抜粋)
■ 出資比率による規制
ネガティブリストでは、業種ごとに外国資本の出資比率上限を定めています。 ネガティブリストは、リストAとリストBに分類されており、リストAは、「憲法および法律の定めにより投資が規制される分野」、リストBは「安全保障、防衛、公衆衛生および公序良俗に対する脅威、中小企業の保護を理由に投資が規制される分野」が記載されています。
リストAは外資出資比率上限が、25%以下、30%以下、 40%以下に分類して規定しています。
第11次ネガティブリストの発行により、フィリピン人のみが就業できる専門職は大幅に減少しましたが、これは相手国の該当分野でフィリピン人の就業許可が前提となります。日本においては、例えば外国人が建築、内装設計、不動産サービスを行うことは禁止されていないため、日本人がフィリピンにおいて建築、内装設計、不動産サービ スにおいて就業することが可能となります。その際には、専門業種の管轄当局(PRC)に対し、日本で就業可能である旨を証明した上で、特別許可申請をする必要があります。一方、日本の外為法において、 農業、水産業に対する投資につき、財務大臣及び主務大臣への事前届出が必要であり、審査の結果、投資内容の変更または中止の勧告を実施する場合がありますが、明確な外資規制はされていません。
ただし、個別法が存在し外国人就業が禁止されている業種において、フィリピンにおいて日本人による同様の行為は許可されません。この場合にはその個別の法律の改正を待つ必要があると考えられます。また外国資本による持株比率に関する規制として、第10次ネガティブリストにおいては、ラジオ通信網会社、BOT 法(共和国法第 7718 号)に基づくインフラ開発プロジェクトはそれぞれ外資比率20%以下と25%以下と設定されていましたが、今回の改定によりこれらの規制が緩和され、外資比率40%以下の会社においても上記事業を行うことが可能になりました。
■ アンチダミー法による規制
1936年に承認された共和国法(C.A 108:Commonwealth Act No.108)では、規制業種における、役員の外国人占有比率を、資本規制比率に準じて取扱わなければならない旨が規定されています。 ネガティブリストによって、外国資本の出資比率が規制されている場合には、役員の構成でも外国人比率を規制割合以下にする必要があります。
■ 資本金規制
銀行や金融業など、一定の業種は、最低資本金の規制が定められています。
[銀行]
• ユニバーサルバンク:30億~200億ペソ
• 商業銀行:20億~150億ペソ
• 貯蓄銀行
-本店がマニラ首都圏内:5億〜4億ペソ
-本店がマニラ首都圏外:2億〜8億ペソ
• 地方銀行(本店の所在地による):1,000万~2億ペソ
[小売業]
共和国法第11595号にて2021年12月、改正小売業自由化法が承認され外資の場合、払込資本金は2,500万ペソ以上が必要と記されています。また複数の実店舗で小売業を営む外資は、1店舗当たり最低1,000万ペソの投資を行う必要があります。なお、払込資本金は、1店舗当たりの投資額要件を満たすために、資産の購入に使用することができます。最低払込資本の実際の使用については、証券取引委員会(SEC)または貿易産業省(DTI)が監視し、これらの機関および国家経済開発庁(NEDA)により、最低払込資本金額は3年ごとに見直しがされます。その他、業種を問わず、「払込資本金20万USドル以下の国内市場向け企業」は、ネガティブリストによって、外資の資本比率が40%以下に制限されており、最低資本金の規制が加わります。要約すると以下の3つに分類されます。
<外資が40%以下の場合>
この場合、最低資本金の規制はありません。
<外資が40%超の出資の場合>
ネガティブリストに従い、原則として20万USドルが最低資本金となりますが、以下のいずれかに該当する場合は、10万USドルが最低資本金となります。
・ 最先端テクノロジーを用いていること
・ 革新的スタートアップ企業であること
・ フィリピン人の雇用が15人上
<輸出向けに事業を行う会社の場合>
主に輸出向けに事業を行う会社の場合、当該最低資本金規制は適用 されません。輸出向けに事業を行う会社とは、以下の会社を指します。
・ 製造業で、生産量の60%以上を輸出する場合
・ 貿易業で、フィリピン国内での購入量の60%以上を輸出する場合
第12次ネガティブリスト
1.相互主義を条件として、初等・中等レベルの教育が含む、専門家による指導が認められる。また、専門課程の教育に関する除外規定が削除されたため、現行の法律および規制に従う限り、外国人が専門課程を教えることが出来るようになった(政府委員会または司法試験も含む)。
2.小売企業への外資導入に必要な資本金の要件が引き下げられ、払込資本金が25,000,000ペソ以上となった( Republic Act No. 1195, Republic Act No. 8762; Retail Trade Liberalization Act of 2000)
3.一般的に、協同組合では外国人の出資は認められないが、フィリピン出生者による出資は認められるようになった。
4.Republic Act No. 9184 (Government Procurement Reform Act) 施行規則に基づくインフラプロジェクトの調達(外国投資上限40%)
5.公益事業の運営には、従来通り外国人持ち分の40%制限があるものの、公共サービス法の改正に伴い、公益事業とみなされる事業が以下のように再定義され、範囲が限定された。
- 配電
- 送電
- 石油・石油製品パイプライン輸送システム
- 上下水道設備および下水道設備
- 海港
- 公共交通機関
6.国防省の許可を必要とする製品の製造、修理、保管、および流通は、100%の外国投資が認められるようになった。
7.最低資本金20万米ドル以下の国内市場向け零細・中小企業(外国投資上限40%) ただし、以下の要件に該当し、払込資本金が10万米ドル以上であれば、100%の外国投資が認められる。
a.科学技術省(Department of Science and Technology 以下、「DOST」)が定める先端技術に重視するもの
b.主催機関である貿易産業省、情報通信技術省、DOSTが革新的新興企業法に基づき、新興企業または新興企業を支援する企業として承認された企業
c.直接雇用の従業員の過半数がフィリピン人であり、かつ15人未満を下回らないこと
8.相互主義を前提に外国人がフィリピン開業できる専門職として、以下のものが追加された。
- 犯罪学
- 食品技術
- 海洋甲板工学
- 専門教育
- 放射線およびレントゲン
- 音声言語病理学
9.企業による専門職の外資規制は建築専門職のみとなった。
リストA
<外資保有不可>
・ レコーディングおよびインターネット事業を除くマスメディア
・ 法が特に定めた場合に所定の条件に従って行う場合を除く、専門職の実践。第12次外国投資ネガティブリスト別紙には以下の職業が定められています。
- 外国人がフィリピンで開業することが許されない職業(ただし、関連する法律に規定された相互主義の対象となる場合を除く)。
- 関連する法律により外国出資が制限されている専門職の企業における実践。
・ 協同組合(フィリピン出生者の投資を除く)
・ 私立探偵、監視人、警備員事務所の組織・運営
・ 小規模採掘
・ 群島水域、領海、排他的経済水域における海洋資源の利用、および河川、湖沼、湾、潟湖における天然資源の小規模な利用
・ コックピットの所有、運用、管理
・ 核兵器の製造、修理、備蓄および配布
・ 生物、化学、放射兵器および対人地雷の製造、修理、備蓄、流通
・ 爆竹およびその他の火工品の製造
<上限25%>
・ 雇用斡旋(国内、国外雇用を問わない)
・ 防衛関連施設の建設
<上限30%>
・ 広告業
<上限40%>
・ 天然資源の探査、開発、利用
・ 土地の所有(フィリピン出身者で契約能力のあるものを除く)
・ 公共事業の運営
- 配電
- 送電
- 石油、石油製品パイプライン輸送システム
- 上下水道設備および下水道設備
- 海港
- 公共交通機関
・ 教育機関(宗教団体や宣教師会外国人外交官とその扶養家族、その他の外国人一時住居者、またはBatas Pambansa No. 232第20条で定義された正式な教育システムの一部を形成しない短期的な高度技術開発のために設立されたものを除く)。
・ 米及びとうもろこしの栽培、生産、精米、加工、小売を除く取引、並びに米及びとうもろこし、その副産物の物々交換、購入またはその他の方法による取得(売却期間中におけるものを除く)。
・ 政府関係法人、会社、機関または地方公共団体への材料、商品および商品の供給に関する契約
・ 深海商業漁船の運航
・ マンション住戸の所有権
・ 民間無線通信網
リストB
<上限40%>
・ フィリピン国家警察(PNP)の許可を必要とする品目の製造、修理、保管、流通
- 銃器(拳銃から散弾銃まで)、銃器の部品およびその弾薬、銃器の製造に使用される、または使用することを意図した器具または装置
- 火薬
- ダイナマイト
- 爆発物
- 火薬の製造に使用される成分(例:カリウム、ナトリウムの塩素酸塩、アンモニウム、ナトリウム、バリウム、銅、鉛、カルシウム、亜銅酸塩の硝酸塩、硝酸、ニトロセルロースなど
- 伸縮式照準器、スナイパースコープ、その他これらに類する装置
(注:上記の品目の製造または修理は、生産量の うちフィリピン国家警察長官が定める割合が輸出されることが外資保有の許可条件とされる。)
・ 危険薬物の製造、流通
・ サウナ、スチームバス、マッサージクリニック、その他公衆衛生や風紀に危険を及ぼすとして法律で規制されている類似の行為(ウェルネスセンターを除く)。ただし、以下の要件に該当し、払込資本金が10万米ドル以上であれば、100%の外国投資が認められる。
(i) DOSTが定める先端技術を伴うもの
(ⅱ) 革新的新興企業法に基づき、主管庁である貿易産業省、情報通信技術省、DOSTから新興企業または新興企業を支援する企業として承認されたもの
(ⅲ) 直接雇用の従業員の過半数がフィリピン人であり、かつ15人未満を下回らないこと
■ 土地所有規制
ネガティブリストの規制により、外国資本40%超の会社は、土地 を取得することができません。そのため、工場用に土地を利用する場 合は、土地の所有者からリースを行うことになります。リース期間は 最長50年ですが、更新することが可能です。また、リース以外に、フィリピン人パートナー(弁護士など)と外資40%以下の会社を設立して、土地を取得する方法もあります。
■ 外国為替管理規制
フィリピンの外国為替管理制度は、フィリピン中央銀行(BSP)が管轄し、為替規制はBSPの通貨理事会(Monetary Board)の政策に よって決定されます。1992年に外貨集中義務が撤廃されて、外貨の売買がほぼ自由化されました。 しかしながら、貿易取引対価以外の外貨取引については、中央銀行 による規制が残っています。中央銀行は、「外国為替売却を一時的に 停止、または制限すること」、「居住者またはフィリピンで営業する企 業が取得するあらゆる外貨為替を、中央銀行が指定する銀行・代理人に引き渡す」、という制限を課すことができます。
[貿易取引]
輸出にかかわる外貨受取は、中央銀行の定める通貨(USドルなど)で行われなければなりません。信用状に基づく取引など、一定の条件を満たす輸出入決済のための外貨交換については、中央銀行の事前承認なく商業銀行が自由に行うことができます。
[資本取引]
外国投資家が資本、または資本から発生した配当や利益、収益金について送金を行うために、銀行を通じて外貨を購入する場合、外国投資を中央銀行に事前に登録する必要があります。
登録された外国投資は、登録済外国企業の資本の本国送金または利益の送金は、現行規則で指定された手続及びその他の条件に従って、中央銀行に事前に承認を受けることなく、商業銀行で行うことができます。
[借入]
現地での借入
外資40%超の会社は土地の所有が認められていないため、土地を 担保にすることができません。この場合、親会社の保証を担保にすることになります。また、長期借入については、まだ整備されていないため、ペソ建で長期借入を行うことは、現状難しいと考えられます。
外貨借入
原則として、外貨建の借入は中央銀行の許可が必要となります。将来の元利金の支払を外貨建で行う場合には、借入の実行前に中央銀行への届出が必要となります。
投資インセンティブ
1987年オムニバス投資法(共和国法226号)は、アキノ政権下の1987年に制定されました。国内外問わず、 投資優先計画(IPP)に記載された投資について、 投資委員会(BOI)に申請、登録すれば優遇措置の適用を受けることができます。
■ 投資優先計画に基づく業種別優遇政策
2017年度IPPでは、次の10分野を優先投資分野として指定しており、投資優先分野に該当していれば優遇対象となります。
1.基準を満たすすべての製造業(農産物加工を含む。ただし、近代化プロジェクトを除き、メトロマニラ外のプロジェクトのみ対象)
a. 工業品の製造または農産物および水産物の加工(ハラルフードおよびコーシャフードを含む)による、[1]半製品/中間品、または[2]完成品もしくは消費財の生産
b. プレハブ住宅用部品、機械および部品を含む装置の製造航空宇宙部品
2.農業、漁業および林業(ただし、農業に関する近代化プロジェクトを除き、メトロマニラ外のプロジェクトのみ対象)
3.戦略的サービス業
a. 集積回路設計
b. クリエイティブ業界/ナレッジベースサービス
c. 航空機の保守、修理および整備
d. 代替エネルギー自動車用チャージ/燃料補給ステーション
e. 産業廃棄物対応
f. 電気通信事業(ただし、新規参入者のみ対象)
g. 最先端工学、調達および建設
4.医療サービス(薬物更生施設を含む)
5.集合住宅(ただし、賃貸用の低コスト都市住宅を除き、メトロマニラ外のプロジェクトのみ対象)
6.インフラストラクチャーおよび物流(LGU-PPPを含む)
7.イノベーション・ドライバー
8.インクルーシブ・ビジネス(IB)モデル
9.環境または気候変動関連プロジェクト
10.エネルギー
■ 税制面の優遇措置
BOIに投資申請を行い、許可を受けた場合には、以下のような税制面の優遇措置を受けることができます。
・ 法人税の免除
a. パイオニア企業※:6年
b. 非パイオニア企業:4年 (a ,b共に特定条件下で対象期間を合計7年まで延長可能)
c. 拡張投資:3年(拡大規模に比例した分についてのみに限定)
d. 5年間、資本設備や予備部品に係る輸入関税の免除(大統領令 70号)
e. 埠頭税、輸出税、課徴金などの免除
f. 国内諸税相当額の免除(輸出製品およびその構成部品の製造、 加工または生産に使われる原材料、供給品、半製品に限る)
g. 国産繁殖用家畜および遺伝学的材料に対する関税を含む税額 控除、または免税輸入(ただし、登録日から10年間を限度とする)
※ パイオニア企業とは、以下の要件を満たす企業であり、それ以外の企業は非パイオニア企業と定義づけられている。
・ フィリピンにおいて商業規模で生産されたことのない財または原材料の生産に従事している企業
・ フィリピンにおいて商品生産に実績がなく、試されたことのない新規の設計、製法または工程の利用を行っている企業
・ 石炭などの伝統的資源を利用していない、もしくは非伝統的資源の生産やそれらを利用する設備の製造に従事している企業
・ 非在来燃料の生産またはそれらを燃料として利用する設備の製造を行っている企業
・ 非在来型資源の生産、それらの燃料への転換または利用している企業
・ 農業、林業、鉱業に従事するないしそれらに関するサービス業に従事する企業
企業復興税優遇法:CREATE法 2021年4月11日
ドゥテルテ元大統領は2021年3月26日、CREATE法案に署名し、4月11日に同法案は発効しました。
概要は、
(1) 法人所得税率の引き下げ
(2) 最低法人所得税率の一時的引き下げ
(3) 投資インセンティブの整理・合理化となります。
(1) 法人所得税率の引き下げ
① 内国法人の法人所得税率を、現行の30%から25%へ引き下げます。なお、課税所得が500万ペソ以下、かつ総資産(法人の事務所・工場・設備が立地する土地は算入から除く)が1億ペソ以下の内国法人は、20%となる。新しい税率は、2020年7月1日から遡及して適用されます。
② 居住外国法人に課される法人所得税率を、フィリピンを源泉とする課税所得に対して、現行の30%から25%へ引き下げます。新しい税率は、2020年7月1日から遡及して適用されます。
③ 非居住外国法人の法人所得税率は、2021年1月1日から25%となります。
(2) 最低法人所得税(MCIT)率の一時的な引き下げ
内国法人および居住外国法人に課されるMCIT率を、2020年7月1日から2023年6月30日にかけて現行の2%から1%へ引き上げます。
(3) 投資インセンティブの整理・合理化
政府の定める戦略的投資優先計画(SIPP)に該当する新規事業に対して、税制優遇措置を適用します。事業の立地や業種、あるいは輸出企業と国内市場向け企業のどちらに該当するのかに基づき、享受できる優遇措置が決まります。該当する新規事業について、例えば、輸出企業の場合は、4~7年の法人所得税免税(ITH:Income Tax Holiday、以下ITH)を受けられます。その後、(A)10年間にわたって総所得に5%の特別法人所得税率を適用、もしくは、(B)10年簡にわたって各種の追加控除を利用したうえで一般法人所得税率を適用、のいずれかを選択します。
[ITH期間中]
〈ITH〉
輸出企業: 4~7年間 国内市場向け企業: 4~7年間
[ITH期間終了後のインセンティブ・オプション(A)]
・総所得に対して5%の特別法人所得税率
輸出企業: 10年間 国内市場向け企業: 該当なし
[ITH期間終了後のインセンティブ・オプション(B)]
・各種の追加控除
輸出企業: 10年間 国内市場向け企業: 5年間
[ITHの付与期間と投資地域・産業との関係]
・ マニラ首都圏(NCR)
ティア1*:4年間 ティア2**:5年間 ティア3***:6年間
・ 大都市圏もしくはNCRに隣接する地域
ティア1:5年間 ティア2:6年間 ティア3:7年間
・ その他の地域
ティア1:6年間 ティア2:7年間 ティア3:7年間
ティア1*:雇用創出の可能性が潜在的に高い経済活動。市場の失敗により十分な供給が行われていない基礎的物品・サービスに関する掲示亜活動。イノベーションを通じた価値創出が見込まれる経済活動など。
ティア2**:地域内でこれまで生産もしくはサービス提供されておらず、かつ産業開発や輸入代替の観点から重要と考えられる財・サービスを生産・供給する経済活動。
ティア3***:研究開発活動(明確に高付加価値を創出する、生産性を高める、科学・健康分野で画期的であるなどの条件が課される)。新しい知識や知的財産を生み出す経済活動。高度な技術を使用した製造業。経済を大きく変革させるうえで重要な活動。
CREATE法では、同法発効前の時点で、投資誘致機関の登録を受け、既に優遇措置を受けている企業に対する経過措置を次のように定めています。
・ CREATE法の発効前に法人所得税免税(ITH)のみを享受している場合、登録時の条件に基づき、ITHの残存期間について同優遇措置を享受できます。
・ CREATE法の発行前にITHを享受しており、かつ当該優遇措置においてITH適用期間終了後に、総所得に対して5%の特別優遇所得税率を享受できる場合、ITHと5%の特別優遇所得税率を、合わせて10年間を上限に享受できます。
・ CREATE法の発効前に総所得に対して5%の特別優遇所得税率を享受している場合、10年間は5%の特別優遇所得税率を享受できます。
省庁横断的な機関として、財政インセンティブ審査委員会(FIRB)が新たに設置されました。FIRBはインセンティブ制度の政策立案を行い、投資誘致機関のインセンティブ制度運用について監督権限を有します。10億ペソ以下の投資案件については、投資誘致機関に同案件に対する税制上のインセンティブ付与を委任します。
CREATE法の成立前、フィリピンの法人所得税率は30%であり、ASEAN加盟10か国の中で最も高い水準にありました。
出典:JETRO
[企業復興税優遇法の改正法:CREATE MORE法(2024年)]
フェルディナンド・マルコス大統領は2024年11月11日、CREATE MORE(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises to Maximize Opportunities for Reinvigorating the Economy)法に署名し、同法は成立しました。これは、2021年に施行されたCREATE法(Corporate Recovery and Tax Incentives for Enterprises Act)を補完・強化するための改正法であり、フィリピンにおける外国投資誘致および企業競争力の向上を主目的としています。CREATE法では法人税率の引下げや税制優遇の合理化が図られた一方、投資家からは「税制優遇の不透明性」「インセンティブ期間の短縮」「既存投資への影響」等が懸念として指摘されていました。CREATE MOREは、これらの課題を踏まえ、税制優遇措置の明確化・柔軟化および投資環境の安定性向上を図る制度として位置付けられています。
①CREATE MOREの主な改正ポイント
(1)税制優遇措置の拡充・柔軟化
CREATE MOREでは、登録企業(Registered Business Enterprises:RBE)に対する税制優遇措置について、以下の点が見直されています。
- 所得税免除(ITH)および特別法人税率(SCIT)の適用期間の柔軟化
- プロジェクトの規模、戦略的重要性、地域性等を考慮した優遇期間の個別設定
- 高付加価値産業、輸出志向型産業、雇用創出効果の高い事業への重点的支援
これにより、単一的・画一的であったCREATE法下の優遇設計から、投資内容に応じた差別化されたインセンティブ制度へと転換が図られています。
(2)既存投資および登録企業への配慮
CREATE MOREでは、既存の登録企業や進行中の投資プロジェクトに対する安定性の確保が明確に意識されています。
- 既存の税制優遇契約の尊重
- ルール変更による不利益変更の回避
- 投資計画の継続性・予見可能性の確保
これにより、外資系企業が懸念していた**制度変更リスク(policy risk)**の低減が期待されています。
(3)付加価値税(VAT)および関税上の優遇の明確化
CREATE MOREでは、所得税優遇に加え、間接税分野の取扱いも整理・明確化されています。
- 原材料・設備の輸入に係る関税免除
- 輸出関連取引におけるVATゼロレーティングの適用範囲の明確化
- サービス輸出に係るVATの実務上の取扱い整理
これらは、製造業のみならず、BPO、IT、グローバルサービス企業にとっても重要な実務ポイントとなります。
②税務実務上の留意点
(1)投資委員会(FIRB)および投資促進機関との関係
CREATE MORE下では、税制優遇の付与にあたり、
・財務省傘下のFIRB(Fiscal Incentives Review Board)
・PEZA、BOI等の投資促進機関(IPA)
の役割が引き続き重要となります。
特に、優遇内容・期間は一律ではなく、承認プロセスに依存する部分が大きいため、事前協議および申請内容の精緻化が不可欠です。
2)タックスプランニングへの影響
CREATE MOREの導入により、フィリピン進出企業のタックスプランニングは以下の点で再検討が必要となります。
- 通常法人税率(20~25%)と特別税率の比較
- ITH終了後の税負担シミュレーション
- グループ内取引・移転価格税制との整合性
- ASEAN諸国との投資比較
特に、長期投資案件では、優遇終了後の税負担が経済性に与える影響が大きい点に留意すべきです。
③日本企業への実務的示唆
CREATE MOREは、日本企業にとって以下の点で実務的な意義を有します。
- フィリピンへの中長期的な製造・サービス拠点設置の検討余地拡大
- ASEAN域内での投資先再評価の一環としての選択肢強化
- 既存拠点の再投資・事業拡張における税務上の安定性向上
一方で、制度運用は依然として行政裁量の影響を受けるため、最新の施行規則(IRR)や実務運用の動向を継続的に確認することが不可欠です。
[フィリピンの資本市場効率促進法(2025年7月1日)]
フィリピンの資本市場効率促進法(CMEPA:Republic Act No. 12214)はフィリピンの税法を改正する形で成立した税制改革法であり、2025年7月1日から適用されています。資本市場に関わる税制を簡素化・公平化し、取引コストを引き下げることで投資参加を促進し、資本市場の競争力・流動性を高めることを目的としています。具体的には、株式取引や受動的所得(利子・配当・キャピタルゲイン等)に係る税制を見直し、従来の複雑な税率体系を統一・合理化するものです。
①CMEPA による主な税制変更のポイント
- 株式取引税(Stock Transaction Tax:STT)の大幅な引き下げ
- 文書印紙税(Documentary Stamp Tax:DST)の引き下げおよび対象範囲見直し
- 受動的所得(利子・配当・キャピタルゲイン・ロイヤルティ)の税率体系の統一・簡素化
- 集合投資商品(ミューチュアルファンド・UITF)への税制優遇の明確化・拡充
②CMEPA に基づく税率一覧(2025年7月1日以降)
以下は、代表的な課税項目についてCMEPA適用後の税率を一覧にしたものです。
課税項目・取引類型 | 改正前(例示) | 改正後(CMEPA適用) | 備考 |
株式取引税(STT) | 0.6 %(上場株式売買) | 0.1 %(上場株式売買) | 上場株式の売却等に対する税。現地・外国取引所を問わず適用。 |
文書印紙税(DST)(株式新規発行) | 1.0 % | 0.75 % | 株式新規発行時の税率。 |
DST(債券・外国債等) | ケースにより不統一 | 0.75 % | 債券・債務証書等の外国発行分も均一課税。 |
DST(ミューチュアルファンド・UITF) | 一部税率あり | 免除(新規発行・償還・譲渡) | ミューチュアルファンド / UITF の取引に対して免税措置。 |
利子所得(受動的所得) | 変動税率(例:5–20 % 等) | 20 %(最終源泉税) | 各種預金・債券等の利子に一律適用。 |
配当所得(受動的所得) | 原則 10 % 等 | 10 %(最終税率) | 国内企業からの配当に対して一律。 |
ロイヤルティ所得 | ケース・法域により変動 | 20 %(一部例外あり) | 書籍等に係るロイヤルティは 10 % が適用される場合あり。 |
キャピタルゲイン税(未上場株式等) | 所得税体系の一部 | 15 % | 上場株式は STT 適用により CGT とは区別。 |
③実務上の主な留意点
■株式・証券取引
上場株式の取引コスト(STT)が大幅低減し、売買手数料以外の税負担が軽減されました。
■受動的所得の税制統一
これまで存在した長期定期預金の非課税扱い等の優遇措置が廃止され、すべての利子所得が一律 20 % の最終源泉税の対象となります。
■投資信託・UITF の税制優遇
ミューチュアルファンド・UITF は文書印紙税が免除され、投資商品の普及が促進されます。
■外国投資家・非居住者
非居住者一般については、引き続き 25 % の最終税が課される場合があるため、非居住者向け税務処理には別途注意が必要です(居住者と税率が異なるケースあり)。
CMEPA による税制改正は、資本市場参加の敷居を下げると共に、税制の透明性・一貫性を向上させるものです。取引コストの削減と税率の統一によって、個人投資家・機関投資家の両面で投資環境が改善されるとともに、国内外の資本流入が期待されています。また、税務処理の簡素化により、税務コンプライアンスの負担軽減にも資するものと評価されています。
■ その他の優遇措置
その他にも、外国人の雇用や通関手続の簡略化というように、さまざまな優遇措置があります。
・ 外国人の雇用(登録日から5年間(延長可能)、登録企業は統括,監督者,技術者,顧問職に外国人を登用できる)
・ 通関手続の簡略化
・ 労務費に関する課税所得からの追加控除(登録から5年間の間、 資本設備額に対する労働者数比率>BOIの定める所定の比率、 の場合。直接労働の増加に対応する労務費の50%を追加控除)
・ 委託生産設備の無期限の使用
・ 保税工場・保税倉庫を利用する特権
形態別の優遇措置
■ 地域統括本部、地域経営統括本部に対する優遇措置
1987年オムニバス投資法の定めに従い、 地域統括会社(RHQ: Regional Headquarters、以下RHQ)または地域経営統括会社(ROHQ: Regional Operating Headquarters、以下ROHQ)として登録している企業は、後述のインセンティブを受けることができます。
RHQは、アジア太平洋地域における支店や関連会社の監督や調整業務を行います。フィリピン国内での事業活動を源泉とした収益を計上することはできず、フィリピン国内に子会社や支店を有している場合であっても、経営に直接参加することができません。
一方ROHQは、フィリピンまたはアジア太平洋において、他の支店、子会社に対して総務/企画、事業計画・調整、財務助言サービス、原材料及びコンポーネントの調達、販売の管理/促進、訓練/人事、物流業務、研究開発/製品開発、技術サポート/メンテナンス、 データ処理・通信、事業開発といったサービスを提供する事業拠点です。
RHQとは異なり、フィリピン国内での事業活動を源泉として収益を上げることができます。簡略化した要件は以下です。
・ RHQの活動は、地域内の統括・連絡・調整センターとしての役割に限定される
・ ROHQは、フィリピン国内での事業活動を源泉として収益をあげることができる
・ RHQは、フィリピン国内の子会社や支店の経営に参加すること、あるいは、本店、支店、関連会社、子会社または他の会社に代わって商品及びサービスの販売を行うことができない
・ RHQを開設する多国籍企業は、フィリピン国内における活動を行うのに必要な金額を、フィリピンに送金することを義務付けられ、その最低金額は、年間5万USドルまたはこれに相当する外貨金額であることが要件である。ROHQについては、20万USドルを一括送金する必要がある
主に税金面の優遇措置が与えられます(下記表参照。)
| RHQ | ROHQ |
減免措置 | ・法人税所得免除(ただし、年次申告書を提出しなければならない) | ・法人所得税が10%となる |
・地方税及び手数料が免除される。 | ||
また、適用を受けたRHQ、ROHQで雇用される駐在員に対しても、減免措置やビザ取得の便宜の優遇措置が適用されます。
[ビザ]
RHQ及びRHOQに所属する駐在員及びその同伴者・未婚の子女(21歳未満)は有効期間3年のビザが発給される。(なお、申請すれば追加で3年の延長が可能となる)
[減免措置]
外国人駐在員の個人使用による所持品及び家財が免税輸入となる。また、職員やその扶養家族の旅行税については減免される。
以前はRHQ及びROHQに所属する駐在員の個人所得税は一律15%と優遇措置が取られていましたが、税制改正法案(共和国法第10963号)により、2018年1月1日よりRHQ及びROHQにおける個人所得税の優遇措置が撤廃されました。以後は一般の駐在員同様、累進課税制により、個人所得税(0%〜35%)が適用されます。
■ 特別経済区に付与される投資インセンティブ
1995年特別経済区法(共和国法7916号)に基づき、フィリピン経済区庁(PEZA:Philippine Economic Zone Authority、以下PEZA)は、都市部以外の特定の地域に外国投資を誘致するために輸出加工区(エコゾーン)を設置しています。輸出型製造業やサービス供給者に対して投資の促進・サポートをすることで事業運営の簡易化を図るのが目的です。PEZA法に基づき、特定の地域に設置された外国企業は、優遇措置を受けることができます。
なお、本法が成立する前から、1987年 オムニバス投資法に基づく優遇措置が付与されていますが、本法の成立により、特別経済区で事業を行う企業に対しては、既存の優遇措置に加え、以下の優遇措置が付与されます。
■ 優遇の内容
優遇措置に関しては、事業の種類などによって異なります。各事業に対応する優遇措置をまとめていきます。
[輸出製造業]… ❶
〈法人所得税免除〉
法人所得税が以下の期間に渡って100%免除されます。
・ 拡張プロジェクト: 3年間の免除(ただし、所得税免除は、増加した部分の売上高のみに適用)
・ 非パイオニア企業: 4年間の免除
・ パイオニア企業: 6年間の免除
プロジェクトが以下の基準に準拠している場合には、1つの基準で1年間の免除期間が延長されます。それゆえ、免除期間の延長は最大で2年間となります。
・ 当該プロジェクトを操業してから最初の3年間の純外貨獲得高が、年間平均で50万USD以上ある場合
・ 当該プロジェクトにおける労働者に対する資本設備の比率が、直近で既に申請された前年度に1万USDを超えていない場合
当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得※
※総所得とは登録活動から得られる総売上高または総収入から販売割引、返品、引当、販売値引、直接費用を差引き、課税期間中に発生する管理費・偶発的な損失を控除する前の額を指します。この5%の総所得は課税対象です。
〈その他〉
・ 輸入された原材料、資本設備、機械※、予備部品に対する関税及び租税の免除
・ 埠頭税、輸出税、賦課金または手数料の免除
・ BIRとPEZA要件の遵守を条件とした現地調達におけるVATの免除
・ 地方政府の賦課金、手数料、免許及び課税の支払免除(ただし、所得税免除期間中の場合には以下を除き固定資産税を支払う必要がある)
※製造、加工や産業目的のために特別経済区内で導入・運用される機械については、その運転開始から最初の3年間についての固定資産税を免除
※不動産に帰属しない生産設備は固定資産税から免除・拡大源泉徴収税の免除
[ITサービス業]… ❷
〈法人所得税免除〉
法人所得税が以下の期間に渡って100%免除されます。
・ 拡張したプロジェクト:3年間の免除(ただし、増加した部分の売上高,販売高のみに適応)
・ 非パイオニア企業:4年間の免除 ・ パイオニア企業:6年間の免除
プロジェクトが以下の基準に準拠している場合には、1つの基準で1年間の免除期間が延長されます。それゆえ、免除期間の延長は最大で2年間となります。
・ 当該プロジェクトを操業してから最初の3年間の純外貨獲得高 が、年間平均で50万USドル以上ある場合
・ 当該プロジェクトにおける労働者に対する資本設備の金額が、直近で既に申請された前年度に1万USドルを超えていない場合
〈特別税の適用〉
当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
〈その他〉
・ 輸入された設備と部品に対する関税及び租税の免除
・ 設備の輸入貨物に対する埠頭税の免除
・ BIRとPEZA要件の遵守を条件とした通信費、電力費、水道代及び建物のリース料を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加価値税の免除
・ 地方政府の賦課金、手数料、免許及び課税の支払免除(ただし、所得税免除期間中の場合には以下を除き固定資産税を支払う必要がある)
※製造、加工や産業目的のために特別経済区内で導入・運用される機械については、その運転開始から最初の3年間についての固定資産税を免除
※不動産に帰属しない生産設備は固定資産税から免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
[観光業]… ❸
〈法人所得税免除〉
投資優先計画(IPP)に基づく許可を取得した場合、所得税が4年間免除されます。
〈特別税の適用〉
当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
〈その他〉
・ 輸入された設備に対する関税及び租税の免除
・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加価値税の免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
[医療観光業]… ❹
〈法人所得税免除〉
外国人患者に対する医療サービスから得られる収入について、所得税が4年間免除されます。
〈特別税の適用〉
当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
〈その他〉
・ 輸入された医療設備と部品に対する関税及び租税の免除
・ 専門的な技術力と企業の登録活動の運営に必要とされる部品・機器の供給のための医療設備の輸入に対する関税及び租税の免除
・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加価値税の免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
[農業関連業]… ❺❻
〈法人所得税免除〉
法人所得税が4年間免除されます。
〈特別税の適用〉
当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
〈その他〉
・ 輸入された生産設備・機械、種畜、設備と機械の予備部品や備品を含む農具に対する関税及び租税の免除
・ 輸出税、埠頭税、関税及び手数料の免除
・ 通信費、電力費、水道代及び建物を含んだ現地調達における物品とサービスにおける付加 価値税の免除
・ 市長の許可、営業許可証、職業の執行許可、健康証明書、衛生検査料及び廃棄料等の地方自治体の手数料納付の免除
[運送または倉庫業]… ❼
PEZA認定の輸出製造企業への販売、もしくは、PEZA認定の輸出
企業への積送品や直接輸出するための梱包作業、サイズ変更、仕様変 更や再販売に係る原材料、仕掛品に対しての税金及び関税が免除されます。 検査、梱包、外観検査、保管及び地方に供給される原材料の付加価値税が免除されます。なお、所得税免除や特別税の適用はありません。また、運送または倉庫業は100%PEZA企業への売上でなければならない点も注意が必要です。
[特別経済区開発・運営業]… ❽
〈特別税の適用〉
製造特別経済区の開発者と運用事業者は、当該企業の所得税免除期間の満了をもって、5%の総所得課税が適用されます。
ITパーク、観光特区などの開発者と運用事業者は、総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する固定資産税を除くすべての国税・地方税が免除されます。
〈その他〉
・ 現地購入品の付加価値税の免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
[施設提供企業]… ❾
〈特別税の適用〉
総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する固定資産税を除くすべての国税及び地方税が免除されます。
〈その他〉
・ 現地購入品の付加価値税の免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
[特別経済区公共事業企業]… ❿
〈特別税の適用〉
総所得に対して5%の特別税及び開発者の所有する土地に対する固定資産税を除くすべての国税及び地方税が免除されます。
〈その他〉
・ 現地購入品の付加価値税の免除
・ 拡大源泉徴収税の免除
工業団地情報
地域の特徴
国内には、フィリピン経済区庁(PEZA)というフィリピンの政府機関が運営母体となった輸出加工区、民間運営の団地を含め、主要な工業団地が多く存在します。いずれの工業団地も空港、港湾からのアクセスが容易であることも要因の一つです。
近年ではマルコス政権のもと、外資企業誘致を積極的に行う一方で、前述した税優遇措置の縮小という問題を抱えながらも、国別にみた同経済地区における投資というと、2025年時点で日本が最多となっています。エコノミックゾーン(経済区)と呼ばれる工業団地に進出する外国企業の約6割が日系企業であり、現在およそ200社の日系企業が経済区内で活動しています。とりわけカラバルゾン(マニラより南方に位置するカビテ州、ラグナ州、バタンガス州、リサール州、ケソン州)地区への進出が目立ちます。
周辺国と相対的にフィリピンにおける経済成長率の高さとリスク分散を好条件に思った日系企業が、電子部品や医療機器を筆頭に、自動車などの工場規模拡大を目的とし、同国を追加投資として選択しています。さらに日本以外のアジア圏との貿易も年々拡大傾向にあることから、今後も同地区内における外資からの投資は、増加の一途をたどると考えられています。
工業団地には、「経済区庁により開発・運営される輸出加工区」、 「国家住宅公団により開発・運営される工業団地」、「民間により開発・ 運営される工業団地」があります。政府は貿易工業省主導で輸出加工区を中心とした工業団地整備開発に注目しています。
■ 日系企業が進出している主な工業団地
[ファーストフィリピン工業団地]
バタンガス州サントトマス市およびタナウナン市にまたがる地域に位置する、総開発面積が457haという広大な土地を有する工業団地です。2024年時点で入居企業数が138社(うち日系企業が74社)です。1996年、ASEAN各国で工業団地を展開する住友商事海外工業団地がフィリピンの有力財閥ロペスグループと共同で開発・設立し、マニラ中心部からおよそ52km、高速道路で50分ほどの場所にあります。各種インフラはもちろん、貸工場、和食レストラン、屋内スポーツ施設、物流センターなどの施設も充実し、常駐する日本人管理人のもと運営されています。
また、すでに操業可能な貸工場、事務所などの提供も行っています。Brother、Canon、Nestle、富士通、住友ベークライト、本田技研工業、YKKなどが入居しており、主要な自動車・二輪メーカーや電機メーカーが60分圏内に集積しています。また、世界最大のたばこメーカー、フィリップ・モリスが進出し、世界最大規模ともいわれる煙草生産拠点を作ることで話題になっています。
[ラグナテクノパーク]
ラグナ州サンタ・ローサ市およびビニャン市にまたがる地域に位置する、総開発面積が471haほどの工業団地です。2024年時点で270社、10万人を超える従業員、そして70億ドル以上の収益をあげています。
首都マニラ中心地から南へ45kmに位置し、高速道路で約1時間の場所にあります。フィリピンの大手財閥アヤラ・グループ、三菱商事などの合弁で開発し、マニラ中心部から44kmです。120社を超える企業の製造工場が隣接し、周辺にはショッピングセンターや高級住宅地が立ち並んでいます。日立製作所、東芝、NECなどのコンピュータ会社が多数進出しています。また、本田技研工業、いすゞ自動車などが入居しています。
[クラーク経済特別区]
マニラの北約80kmに位置し、高速道路で約1時間、フィリピンのルソン島パンパンガ州にあるアンヘ㆑スに隣接しています。1991年に米軍クラーク空軍基地が返還された後、フィリピン政府が引継ぎ、 1993年に政府直轄の経済特別区と指定され、軽工業、リゾート、カジノ、国際会議場などがあります。クラークの約半分のエリアが国際空港であり、韓国などから直行の定期便が飛んでいます。プールやゴルフコースまで歩いていけるなど、住環境も整っており、クラーク開発公社(CDC:Clark Development Corporation)の管理のもとで、治安も良いことで有名です。更に、数々のレストランやホテルがあり、免税店では日用品の購入も可能です。
日系の大手では横浜タイヤの工場が有名であり、他にも中小企業が複数進出しています。
[リマ工業団地]
フィリピン政府が重点工業地域と指定しているカラバルゾンエリア のマニラ首都圏バタンガス州に位置し、マニラ中心部から約65km、高速道路で約70分。丸紅と現地アルカンタラグループの中核企業で あるアルソンズランド社の合弁企業であるリマランド社により開発され、工業用水、電気の安定供給、セキュリティ面での管理も行われています。
リマシティホテルが操業中であり、現在戸建住宅を開発中であり、商業地域の開発計画もあります。セイコーエプソン、日立電線、ヤマハ発動機などが進出済みです。
参考文献
・ 世界銀行
・ JETRO
https://www.jetro.go.jp/world/asia/ph/invest_03.html
・ 国連貿易開発会議(UNCTAD)『世界投資報告書2011 年版』
・ JBIC
・ PEZA
・ 外務省
・ フィリピン国家統計局
http://www.nscb.gov.ph/secstat/d_accounts.asp
・フィリピンニュース庁