労務
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
■労働環境
そのうち労働力人口(15歳以上の労働可能人口)は約4,077万人、就業者数は約4,045万人となっています。就業者のうち、農林水産業従事者が約1,112万人と最も多く就業人口の約3割を占めています。
【労働状況別の労働者数】
■ 産業別就業人口
一般就業者の就業構造を産業別に見ると、農林水産業(約1,112万人)が全体の約27%と最も多く、次いで卸売・小売業(約683万人、約17%)、宿泊・飲食サービス業(約364万人、約9%)、**建設業(約248万人、約6%)**などが多くを占めています。
参照元:NSO, Statistical Yearbook Thailand 2024
タイでは、学歴による賃金や処遇の格差が大きいため、高学歴志向が進んでいます。それでも、一般就業者のうち**大卒以上の就業者の割合は約17%**にとどまっています。この状況により、ワーカー層や専門職などの優秀な人材が不足し、企業にとっては人材確保と賃金の高騰が経営課題となっています。
2024年時点において、タイ国内で就労を認められた合法的な外国人労働者は約333万人にのぼっています(2024年5月時点)。
彼らの多くはミャンマー、ラオス、カンボジア等からの出稼ぎ労働者です。一方で不法就労者の正確な数は不明ながら、依然として相当数存在すると推定されています。それに対し、タイ政府は不法就労者の取り締まりや合法化政策のバランスに悩まされている状況です。
【産業別労働者数】
1995年頃の投資ブーム期には、労働需要が供給を上回り、一時的に人手不足が深刻化しました。しかし、1997年のアジア通貨危機を契機に経済が低迷し、労働需要は急減。1998年には失業率が約4.4%にまで悪化しました。その後は経済の回復に伴い徐々に改善し、2016年には失業率0.5%、失業者数約17万人まで低下しました。
しかし、2020年の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大はタイ経済にも大きな打撃を与え、特に観光・サービス産業に依存する労働者に深刻な影響を及ぼしました。パンデミックのピーク時には失業率が**2021年第2四半期に1.96%**に上昇し、一部地域や業種では大規模な一時解雇や閉鎖が相次ぎました。
その後、経済活動の再開と国際観光の段階的な回復を背景に雇用情勢も改善。2024年の年間平均失業率は0.69%、**2025年3月時点では0.79%**と、パンデミック以前の水準にほぼ戻りつつあります。
傾向としては、若年層(15〜24歳)の失業率が高く、2024年時点では**約4.3%**に達しており、依然として構造的な課題が残っています。また、性別で見ると、近年は男性と女性の失業率に大きな差は見られません。2024年現在、タイの失業率は日本(約2.6%)、アメリカ(約3.7%)と比較しても極めて低水準であり、東南アジア諸国の中でも安定した雇用環境を維持しています。
特ににASEAN諸国においては、域内での労働移動が一層活発化しており、マレーシア、シンガポール、ベトナムなどとの間で高度人材や専門職の争奪が激化しています。タイ国内企業にとっても、優秀な人材の流出を防ぎ、海外からの熟練労働者を確保するため、給与・待遇面の改善が求められる状況が続いています。
また、近年の最低賃金引き上げ(2024年末に一部地域で400バーツ超/日)や物価上昇の影響も相まって、今後は総合的な報酬水準の引上げが避けられないと見られています。とりわけデジタル、製造、物流、ヘルスケア分野では深刻な人材不足が続いており、これらの分野ではASEAN域内でも高度なスキルを持つ労働者の獲得競争が一層熾烈化すると予想されます。
■ 失業率
タイでは失業率に季節変動が見られます。毎年初めの乾季(1~3月)は農閑期にあたり、農業従事者の一時的な失業が増えるほか、新卒者が労働市場に参入するため失業率が一時的に上昇します。6月以降は農繁期に入り、また新卒者の就職が進むことで失業率は低下する傾向にあります。
■ 産業別平均賃金
【産業別賃金の推移】
2024年の全産業平均賃金は月額約15,740バーツで、上昇傾向が続いています。金融・保険業(約28,660バーツ)や電気・ガス業(約21,815バーツ)は高水準ですが、製造業(約14,520バーツ)、宿泊・飲食業(約12,727バーツ)、農林水産業(約8,294バーツ)は平均を下回っています。2020年以降も過去5 年間上がり続けています。
■他国との賃金比較
バンコクの賃金水準を周辺諸国の主要都市と比較すると、一般労働者(ワーカークラス)やエンジニアの賃金は、引き続きジャカルタやホーチミンより高い水準にあります。一方で、中国の深圳との賃金格差は年々縮小しており、現在では同程度の水準に達しつつあります。また、ここ数年でバンコクでは中間管理職クラスの人材需要が高まり、それに伴いこの層の賃金が急速に上昇しています。特に日系企業を含む外資系企業の拡大により、優秀な中堅層の人材確保が難しくなってきている点も注目されます。
【周辺諸国との平均賃金比較】
■ 部門別、役職別給与の比較
タイにおける給与体系は、企業規模や業種、部門、役職、そして従業員の技能レベルや経験、学歴により大きく異なります。また、勤続年数も昇給や昇格に影響を与える重要な要素です。
事務系職種では、在庫管理やサポート職、カスタマーサービス、販売職での月給は、最低で約1万バーツから、上限で約3万バーツ程度が一般的です。また、経理・財務や秘書職では、新人レベルで月給約3万〜4万バーツが相場となっており、マネージャークラスでは秘書を除き約8万〜15万バーツ、部長クラス以上では20万〜25万バーツに達することもあります。また業種別では、航空業界(若年層)が、月給約1万〜1万5千バーツ。国際航空業務や資格保有者では10万〜15万バーツも可能。銀行・輸出入業では、若手で約1万5千〜2万5千バーツ、管理職で70万〜15万バーツ。また、小売・FMCG業界:営業や商品管理職で月給2万〜3万5千バーツ。上級管理職では10万バーツを超えるケースもあります。石油・ガス、製薬業界は、高報酬の業種で、管理職では月給30万〜35万バーツに達する場合があります。エンジニア・技術職では、初任給は約1万2千〜1万8千バーツ。上級職でも昇給幅は比較的限定的で、5万〜8万バーツ程度が上限となることが多いです。
IT分野では、若年層で月給1万5千〜3万バーツですが、シニア職になると8万〜12万バーツ、管理職では20万バーツ前後も期待できます。また、たいでは、日系企業で、日本語スキル保持者の需要が特に高く、若手でも月給5万〜8万バーツを得ることが可能です。また、職位や経験により15万〜35万バーツと高水準の給与を得るケースもあります。
これらの給与体系は、従業員の基本給のみで、その他の手当や役職手当などは含まれていない点に注意する必要です。給与の決定要素には、従業員の持つ資格、経歴および学歴が含まれており、これらは、従業員がより上のレベルの職種を求める際の市場での信用にも用いられます。
【部門別給与の一例(2024年)】
特に上級管理職および高い技能職の外国人従業員は、国籍や資格および経歴によって著しく大きな額を得ることができます。会社の規模や国際企業あるいは世界的な組織により、給与体系は大きく異なっています。会社規模が同程度の同業他社の同じポストでも、大きく異なる手当や保障を受けることができることに注意しなければなりません。
■労働組合と労働争議
タイでは1972年に制定された「労働者保護法」により、最低賃金、労働時間、災害補償などの基本的な労働者保護制度が導入されました。1975年には労使関係に関する規範を定めた「労働関係法」が成立し、労働組合の結成や労使交渉、紛争解決の枠組みが制度化されました。
その翌年の1976年には、国内の複数の労働組合を統合する形で「タイ労働会議(Labour Congress of Thailand:LCT)」が発足しましたが、同年に発生した軍部クーデター(いわゆる「血の水曜日事件」)を受けて戒厳令が敷かれ、多くの労働権が一時的に停止され、ストライキも禁止されました。
1981年にこの禁止措置は解除され、1990年には傷病・出産・失業・老齢・死亡などに対する保障を制度化した「社会保険法」が成立しました。しかし翌1991年には、国営企業の労働者に対して組合結成権およびストライキ権が再び制限されるなど、一部の労働者に対する権利制限が継続されました。1994年には「労働者災害補償法」が施行され、労働災害への補償制度が明確化され、1998年には労働時間の短縮、解雇補償の引き上げなどを含む包括的な「労働者保護法(Labour Protection Act)」が制定されました。
さらに、2008年の法改正では、派遣労働者の権利保護が強化され、派遣元・派遣先双方に対し、平等な待遇と福利厚生の提供義務が課されました。
また近年では、**2023年の改正労働者保護法(Labour Protection Act No. 8)**において、育児休暇制度の拡充化や、在宅勤務に関する雇用主の義務や労働時間管理の整備。解雇通知と補償の強化、セクシャルハラスメントの防止規定の強化等の新たな改正が加えられました。
■ 労働組合等
労働組合を結成する場合には、1975年制定の労働関係法の規定に基づいて、10人以上の労働者の発起人を必要とし、労働局に労働組合規約案を登録し、その許可を得ることが必要となります。組合の規約が、法律の目的に合致し、国家安全保障および経済に悪影響を及ぼさない場合には労働局から許可が下り、労働関係法上の労働組合として活動できるようになります。
これにより、労働組合の組合員は、雇用者等に対して以下の内容についての要求、交渉、仲裁決定の受理、協約締結の権利を持つことができます。
- 労働条件
- 労働日、労働時間
- 賃金
- 福利厚生
- 解雇
- 労働者の苦情申立
- 労働条件協定の改定または更新
【タイの労働組合(2012年4月現時点)】
タイでは依然として労働組合の組織率は全労働人口の約2〜3%程度と非常に低い水準にとどまっており、国際的にも組織率の低さが課題とされています。
たとえば、全国民間産業労働者会議(NCPE)は2024年時点で約48組合・18,000人の組合員を擁し、国営企業労働連盟(SERC)は約165,000人・約42組合と、依然として国内最大の労働組合連盟の一つとされています。
しかしながら、産業別労働組合のネットワークは未成熟であり、また組合幹部の人材育成や交渉能力の不足などにより、強固な**全国レベルの統一組織(ナショナルセンター)**の形成には至っていません。このため、実効性ある労使交渉や政策提言活動は限定的で、政治的影響力も弱いのが現状です。
タイにおいて労働法規が遵守されているかどうかの監督は、労働省労働保護福祉局によって行われています。同局は定期的に検査等を行い、事業所が労働法に違反していないかの確認をします。
なお、50人以上の従業員を雇用する事業所は、5人以上の労働者代表で構成する福利厚生委員会を設置しなければなりません。また使用者は、少なくとも3カ月に1度、この福利厚生委員会と従業員の福利厚生についての協議をしなければならないとされています。
■労働争議の発生状況
労働争議の発生件数は、2010年が77件(参加者58,611人)、2011年が119件(同73,573人)、2012年(同52,345人)が100件とおおむね年間100件前後で推移しています。2014年には117件となっています。
労働争議の中には、当事者間での解決が難しく、政府や役所の介入を求めてデモを行い、社会問題に発展するケースもあります。日系企業では、2009年にトステム・タイ工場、2009~2010年にマツダ合弁工場で、それぞれ賃上げ要求の労働争議が発生しています。
2012年にも、日系の部品メーカーで労働争議が長期化し労働組合員数百人が労組幹部ら178名の解雇の撤廃や退職金の支払を求めてデモ行進を行い、日系以外の外資系企業でも賃金などの引上げを要求するストライキが発生しています。2014年には日系のOA機器メーカーの工場で労働争議が発生し、賃金や手当の引き上げの要求を行いました。
2022年10月には、パンデミック期間の「ストライキ・ロックアウト禁止」が解除され、労使間で正式なスト権・ロックアウト権が再び行使可能に。また、2025年5月では、労働団体がラボアーデーに超過勤務手当引上げ、リスク保険基金の創設など9項目を政府に提出し、集会・デモに発展しました 。
■ 労働争議解決の手続
タイでは、1979年に制定された労働裁判所設置および労働事件訴訟法に基づいて、労使間の紛争を専門に審理するための第1審裁判所として労働裁判所が設けられています。労働裁判では、労働問題に関する専門的知識のある裁判官のほかに、労働者側を代表する者と雇用者側を代表する者が、陪席裁判官として裁判に加わることになっています。
陪席裁判官は、裁判長に対して、労働者側にも雇用者側にもつかず、公平に職務を全うすることの宣誓を求められます。裁判の迅速性を重視し、控訴は第2審の控訴裁判所ではなく、最高裁判所に対して行うことになっています。ただし、控訴理由は法律事項に限られています。
職場で発生する労働争議等についての解決のための一連の手続は、労働関係法に以下のように規定されています。労働条件の改善に関する要求書を労働者が提出する場合には、労働者の15%以上の署名、労働組合が提示する場合には全労働者の5分の1以上が労働組合に加入していることがそれぞれ求められます。労使交渉の際には、労使双方が労働局所定の資格を有するアドバイザーを参加させることができます。
- 労使双方は、要求書受理の日から3日以内に労使交渉を開始しなければならず、3日以内に交渉を開始できない場合、または労使交渉開始後の理由を問わず合意に至らなかった場合には、労働関係法上の労働争議が発生したものとみなされます。要求書を提出した側は、合意不成立の時点から24時間以内に労働局に書面で通知しなければなりません。
- 労働局の調停官は、通知を受けた日から5日以内に調停に入ります。日本とは異なり、必ず調停の手続を踏まなければなりません。
- 調停により合意に達した場合には、合意内容を労使双方署名うえ、書面で合意に達した日から3日以内に30日間以上公示します。
調停によって合意に至らなかった場合には、以下のいずれかになります。
- a. 争議仲裁人を任命することに合意する
- b. 労働者側からのストライキもしくは使用者側からのロックアウトに突入する
争議仲裁人による仲裁は、労使双方の合意であるため、実際には5(b)のストライキもしくはロックアウトにいたるケースがほとんどです。この場合には、24時間前までに労働局と相手方に対して書面で通知しなければなりません。要求書が相手方に提示されない場合や、労働局の調停に一方が従った場合等には、ストライキやロックアウトに突入することは禁止されています。
■労働争議の争点
【労働争議の争点(2013年)】
タイでは労働争議の主な争点として、レイオフ・解雇、賃金額、労働条件不満が依然として中心にあり、過去には2013年に8,995件の解雇が報告され、その後も多くの解雇や条件に関する争議が発生し続けています。近年、司法統計によると、タイの労働裁判所では年間1万件以上の紛争が扱われており、解雇や不当解雇が最も多く、続いて労働保護法違反や雇用条件交渉が争点となっています。
こうした争議の背景には、同業他社との賃金格差が顕著な場合や、賃上げ率が5%程度と高く推移している中で定期的な給与見直しが行われない企業側の対応不足があり、従業員の不満が高まりやすい状況がありました。企業は従業員のモチベーション向上を目的に、個々の希望に合わせた給与パッケージ設計(例えばボーナスや手当を含む)を行うケースも増えています。
また、パンデミック後の法改正や社会意識の変化により、企業には適切な労働時間管理と正当な解雇手続きが以前にも増して求められており、解雇時には就業年数に応じた解雇補償、未消化年休の支払い、および不当解雇の場合の追加補償などを行う義務があります。このように、労働争議の中心がレイオフや賃金にある現状を踏まえると、企業は同業他社との賃金水準を定期的に比較し、競争力ある給与見直し制度を維持するとともに、解雇や補償に関する法的義務を厳格に遵守することが重要となっています。
【在タイ日系企業のタイ人従業員給与月額】
職務環境や企業方針、上司との関係、キャリアパスなどの要素は、入社または在職継続への意思にますます影響を与えるようになっています。また同時に給与水準以外の要因として、その会社で働くことのメリットをいかに労働者に伝えられるかが重要となります。特にエンジニアなど高度技術系の労働者には、彼らの技能に応じた役割を与え、マネージャー昇進に繫がる大きなチャレンジの機会を与えて夢を持たせることも、彼らを会社に惹きつけ、効率的に活用するためには大切です。
具体的かつ長期的なメリットこそ、従業員を継続的に雇用できる有効な手段となります。長期的なメリットは、会社の目標と従業員個人の目標とを一致させるためにも必要です。またそれにより、従業員が蓄積した知識や経験によって高い生産性を維持することにも繫がります。
タイ人労働者を雇用する際には、ワーカーと大学卒の管理職(マネージャー)候補、エンジニアとに分けて考える必要があります。タイでは、いわゆるブルーカラー、ホワイトカラーの区別が比較的明確です。従業員を募集する場合には、新聞広告、工業団地内や最寄の労働事務所への掲示、人材斡旋会社の斡旋のほか、縁故や口コミで募集するなどの手段がありますが、近年では採用チャネルも多様化しており、オンライン求人(jobsDB、Indeedなど)、SNS、大学連携プログラムに加え、社員紹介制度(リファラル採用)も注目されています。リファラル採用は適合度が高く定着率も良い傾向があるため、近年多くの企業が促進しています。
また、バンコクではローカル、外資系ともに人材紹介会社が多く、これらの会社は人材紹介以外にも労務・法務手続のアウトソーシング、企業組織や労働関係、異文化における労働管理などの人事労務コンサルティングも行っています。タイ人労働者雇用の際には、日系企業は日系の人材紹介会社、コンサルティング会社に相談するのも有効な手段です。
■雇用慣行と労務管理
なお、雇用及び求職者保護法(1985年)と外国人雇用法では、タイの職業紹介制度が規定されており、労働者を雇用するに当たって免許を取得していない業者を通じての求人行為は禁止されています。免許は人材紹介会社に発行され、求職者への企業の紹介、企業への求職者の紹介が認められます。
最近は、ワーカーとマネージャークラスの人材がともに不足しており、優秀な人材を集めることが難しい状況です。タイでは人材の流動性が高いために、就業期間の長短にかかわらず転職に対する抵抗感が少なく、処遇(給与、ポスト等)次第で簡単に職場を変える、いわゆるジョブホッピングの傾向が見られます。特にマネージャー層、若年層でこの傾向が強くなっています。そのため、エンジニアやマネージャーなどの募集に際しての給与水準や企業の立地といった雇用条件の決定に当っては、競合他社の条件などに留意する必要があります。
またタイでの現地スタッフを管理する上で特に注意しなければならないのは、業務上でミスをしたスタッフに対して他の従業員の前で叱責を加える等、当人のプライドを傷つけないように指導をすることです。タイ人は体面を重視する傾向が強いため、そのような行為を受けた場合にはすぐに転職するか場合によっては、他の従業員も巻き込んで大きな問題に発展してしまうことも考えられます。
■ 福利厚生
タイにおける福利厚生の例としては、下記のようなものが挙げられます。
- フリンジベネフィット(付加給付)
- 労働者のための貸付基金
- 教育プログラムの実施
- 託児所
- 労働保護福祉に関する教育
- HIV/AIDSに関する管理標準の整備
駐在員にとっても、タイ現地の労働者にとっても、技能を高める教育プログラムの実施は、従業員の動機付けに有効です。特に、個人のキャリアパスとリンクさせた教育プログラムが効果的であり、そのようなプログラムへの参加は、社員にとって大きな魅力となります。
実際に手当として利用される代表的なものとして以下のようなものがあります。
[車の提供と手当]
会社が従業員に車を提供します。トラブルが起きた場合の損害賠償リスクなどを考慮して、社用でも私用でも使用できるようにするか、社用に限定するかは、あらかじめ規定等で定めておくべきです。ガソリン代や維持費は、会社が負担する場合があります。
[交通費]
従業員の通勤に係る費用は、月額で定額とするか、雇用者と従業員の間での話し合いにより定めたり、上限を設ける場合があります。
[住居と住居手当]
住居および住居手当を支給します。これらには、建物の提供、住居手当の支給などが含まれます。
[教育費]
従業員の子供の教育費を全額または一部負担します。学校の種類や負担範囲は会社により異なります。
[医療費]
医療費の全額または一部を会社が負担します。通常、医療費の領収書等を提出し、それに基づいて控除します。従業員の家族の医療費に適用されるケースもあります。
■ 祝祭日
タイでの主な祝祭日には、以下のものがあります。地域および年によって日にちが変わることがあるため、注意が必要です。
【タイの祝日(2026年)】
労働法
■労働基準関係法令
雇用関係については、ヨーロッパの民法を範とした民商法典によるほか、労働者保護法が基本ルールになっており、自由な契約に委ねつつ、弱者保護の観点から、近年は労働者の保護を図る傾向が強まっています。具体的な法令としては、労働者保護法(2008年)、タイ民法・商法典3篇6章雇用に関する規定(575~586条)、職業紹介および求職者保護法(2001年)などがあります。
これらの法令は、労働契約、解雇、賃金、労働時間、休暇、超過勤務、休日労働、超過勤務の割増賃金、若年労働者、女性労働者、少数民族労働者、外国人労働者、安全衛生、外部委託の基準、就業規則などについて規定しています。
また、2023年の第8次改正では、新たに在宅勤務やリモートワークに関する規定(第23/1条)が導入され、勤務時間外の「連絡拒否権(right to disconnect)」も法制化されました。リモートワーカーには従来と同等の権利が保障され、勤務時間・休憩・超過勤務・設備費などを含む書面による合意が義務付けられています。
また、解雇時には**解雇補償の増額や非課税枠の引上げ(最大600,000バーツまで)**が行われ、女性・若年者・外国人・少数民族・派遣労働者など多様な労働者層への保護規定も強化されました。
【労働基準に関連する法規】
■ 労働者保護法
労働者保護法は、雇用者と労働者の間における権利義務について規定した法律で、労働者、女性労働者、年少労働者の雇用、賃金、福祉、職場の安全、解雇手当、労働厚生基金、労働監督官の労働者保護の実施方法等に関する最低基準について規定しています。
- 中央公務、地方公務、自治体公務
- 国営企業労働関係法に基づく国営企業
- 省令で定められた以下の業種および職種
- 石油法に基づく石油事業における労働(石油事業に関係する補修およびサービスも含む。特に探査区域および生産地での作業)
- 熟練または学術労働、サービスおよび管理面における労働、事務職、販売に関する専門職、サービス面における専門職、製造に関する労働、またはこれらの業務に関連する労働
- 就労日ごとの販売またはサービス営業時間が連続していない飲食店における労働
- 石油または石油化学における探査、掘削、精製および製品製造に関する熟練または学術労働
- 管理職、学術職、事務職、および財務または会計に関する労働
- 移動販売業または商品購買勧誘業
また、労働者保護法77条では、雇用者が労働者に対して以下のような取扱を行う場合には、労働者から事前に書面による承諾を得なければならないとされています。
- 時間外勤務をさせる場合
- 休日勤務をさせる場合
- 賃金、時間外勤務手当、休日勤務手当、休日時間外勤務手当および労働に起因するその他の手当を小切手または外国通貨で支払う場合
- 一つの事由に対し、月収の10分の1、もしくは複数の事由により月収の5分の1を超えて控除する場合
さらに労働者保護法を遵守させるために、労働大臣は労働監督官を任命し業務に当らせることとされています。また雇用者は以下に該当する場合には労働監督官に報告をしなければなりません。違反した場合にはそれぞれ罰金が科されることとなります。
- 18 歳未満の年少者を雇用する場合(違反した場合の罰金:2 万バーツ以下)
- 雇用者が事業を休業する場合(違反した場合の罰金:1 万バーツ以下)
- 通常の解雇ではなく機械導入や技術革新などを理由に解雇をする場合(違反した場合の罰金:2 万バーツ以下)
【日本とタイの労働基準比較】
■ 休暇
タイでは、上記の表に記載している年次有給休暇の他に以下の休暇を与えることが義務付けられています。
[疾病休暇]
業務外の事由による疾病を理由とする休暇は、1年間のうち30日間を有給としなければなりません。ただし、3日以上連続して会社を休む場合には、医師の診断書を会社に提出する必要があります。
[出産休暇]
出産を理由とする休暇は、休日を含め120日間与える必要があります。ただし、そのうちの60日間は有給としなければなりません。また配偶者の出産に伴う配偶者支援休暇(最大15日)の新設されました。
[不妊手術休暇]
不妊手術を受けたことを理由とする休暇は、医師が定めた期間を有給としなければなりません。
[兵役休暇]
兵役等を理由とする休暇は、日数に関係なく認められます。このうち60日間は有給としなければなりません。
[研修休暇]
就業研修を理由とする休暇が認められています。なお、18歳未満の年少者の研修のための休暇は、30日まで有給としなければなりません。
[労働組合活動のための休暇]
労働組合の業務を理由とした休暇は、事前に通知をすれば認められます。なお、この休暇は有給としなければなりません。
[個人都合休暇]
労働者が私的な理由で取得できる年3日以上の有給休暇です(労働者保護法第32条)。申請は原則として事前に雇用者の承認が必要で、家族の用事・役所手続き・冠婚葬祭などが主な理由にあたります。
■ 割増賃金
労働者が時間外労働をした場合には、割増賃金として通常の賃金の1.5倍以上を支払わなければなりません。休日の時間内労働については、通常の2倍以上の賃金、休日の時間外労働については、通常の3倍以上の割増賃金となります。なお、時間外、休日、休日時間外の割増賃金は、以下のような管理監督者や出来高払いの労働者には適用されません。
- 雇用者と同様に労働者の賞与や解雇を決める権限と義務を持つ者
- 訪問販売や勧誘など、歩合制労働者
ただし、上記の労働者が休日労働をした場合には、その時間に応じて通常の賃金と同額を支給する必要があります。
■ 月給制の場合の賃金
タイでは月給で働く労働者に対して、休日および祝日に賃金が支払われているものとして取扱う必要があります。そのため時間外勤務手当を計算する際には、月給を暦日数および就業時間で除して時給を計算し、その後、前述の割増賃金率を乗じて時間外勤務手当等を計算します。
■ 競業避止義務
タイでは競業避止を規定する法律はないため、就業規則上に競業避止義務について定めることが可能です。そのため、転職を防止したり同業他社に社内のノウハウが流出することを防いだりするために、就業規則に競業避止義務を記載しているケースがあります。ただし、雇用者に不当に有利な雇用契約や就業規則等を定めることについては認められません。
過去の判例として、従事することが禁止されている業務の範囲およびその業務の地理的範囲が合理的に制限されている場合に限り、競業避止を定めることが認められています。
■ 試用期間
タイでは試用期間を設定することが法的に認められています。ただし、120日以上の試用期間を設定し、120日を超えてから解雇をした場合には、試用期間中であっても雇用者は解雇手当を支払わなければなりません。そのため、タイでは119日以内で試用期間を設定するケースが多くなっています。
試用期間中は予告なしに解雇できるという契約をした場合であっても、試用期間を終了させることは解雇と同様とみなされるので、試用期間のみでその後、正式に採用をしない場合であれば、試用期間満了1カ月前の通知が必要となります。タイでも日本と同様、労働者の解雇には合理的な理由がなければなりませんが、試用期間中の仕事への取組み方や能力を見て、能力不足を理由とした解雇をすることは法令上認められています。
採用面接だけでは、従業員の能力を判断するのは難しいため、多くの企業が試用期間を設定し、採用に役立てています。
■ 賞与
タイでは日本と同様、賞与に関する労働法上の決まりはありません。ただし、タイは転職が頻繁に行われる国であるため、賞与等の福利厚生を支払わないと労働者がすぐに退職してしまうという問題があります。実際、多くの日系企業で1~4カ月分の給与と同額の賞与を支払うことが一般的となっています。
■ 労働管理に関連する法規
労働管理に関する法令とその管轄は以下のとおりです。
[労働関係法]
労働関係法は、雇用者と労働者双方が、遵守すべき労働基準が規定されています。これにより、労働争議が発生した際に円満かつ速やかに解決できるようにしています。1975年に制定された労働関係法において、従業員が20名以上いる雇用者は労働条件協定を書面で作成しなければならないとされていますが、就業規則が作成されている企業は、就業規則を労働条件協定の代わりとすることができます。
労働条件協定の書面には、以下の内容を記載しなければなりません。
- 労働条件
- 労働日、労働時間
- 賃金
- 福利厚生
- 解雇
- 労働者の苦情申立
- 労働条件協定の改訂もしくは更新
労働条件協定は労使で合意した日から3年以内で有効期間を定める必要があります。有効期間の定めがない場合には、一般的に労使で合意した日もしくは雇用者が労働者を雇用し始めた日から1年間が有効期間となります。
■ 労働技能開発に関連する法規
労働技能開発に関する法令とその管轄は以下のとおりです。
■ 職業就労に関連する法規
職業就労に関する法令とその管轄は以下のとおりです。
タイでは労働者保護法により満15歳未満の労働者を雇用することが禁じられています。15歳以上18歳未満の年少労働者には、特定の危険労働の禁止、4時間連続の就労後1時間以上の休憩、深夜労働(22時~翌6時)の禁止、時間外労働および休日労働の禁止等の制限が設けられています。
女性労働者については、セクシャルハラスメントの禁止、危険労働の禁止、深夜労働(22時~翌6時)の制限、妊娠を理由とする解雇の禁止などの女性保護の規定があります。また、2011年1月17日付官報で2011年労働安全衛生環境法が公布され、併せて1998年労働者保護法改正法も同日付で公布されました。
今回の労働安全衛生環境法は、これまで労働者保護法の中で労働安全に関する規定として盛り込まれていたものを、より詳細に規定するために設けられたものです。
労働安全衛生環境法の主要な規定として、以下のようなものがあります。
■賃金に関する法制度
労働者保護法上、賃金は「雇用契約に基づく通常労働時間に対する労働の対価」とされ、以下の要件が定められています。
- 最低賃金以上の金額であること
- 支払は現金で行うこと
※ただし、労働者の事前の許可を得ている場合には、銀行振込も可能
- 性別を問わず同一職務に対しては、同一賃金であること
- 使用者には少なくとも月1回または労使合意に基づく時期に、賃金の支払義務があること
- 労働者の不可抗力に基づくものではない休業時に、賃金の75%以上(2008年改正以前は50%以上)を支払う義務があること
- 通常の賃金、時間外労働、休日労働手当および休日時間外労働手当からの控除の禁止
ただし、個人所得税、労働組合費、貯蓄協同組合費、積立金、雇用者への損害賠償金(事前に労働者の承諾を要する)等は賃金から控除することができます。
これらに違反して雇用者が賃金を支払わない場合には、年15%相当の利息を加算して支払わなければなりません。
■最低賃金
タイでは、1972年労働法に基づく内務省令により、1973年以降は、地域ごとに最低賃金(日額)※が規定されています。さらに2008年労働者保護法の改正により、職能ごとの最低賃金が最低賃金委員会により定められることになりました。
※1日8時間を超えない通常の労働時間、危険労働については1日7時間を超えない労働時間
【職能ごとの最低賃金】
近年タイでは最低賃金は上昇傾向にあり、2023年12月29日付の労働省告示により、以下のように職能別最低賃金(スキル別最低賃金)が改定され、2024年1月1日より施行されています。対象職種は、工業技術、機械、サービス産業などの分野にわたり、1日あたり最低賃金は475~715バーツの範囲で設定されています。
本改定では、技能レベル(Level1~3)に応じた段階的な賃金が適用されるようになっており、対象職種の拡大や新分野(メカトロニクス、産業用ロボット、身体障がい者支援など)への対応も強化されています。
■最低賃金
タイではここ数年、最低賃金の引き上げが段階的に進められており、直近では2024年1月1日付で全国の最低賃金が改定されました。たとえば、バンコクの最低賃金は以前の331バーツから367バーツに引き上げられ、チョンブリーやラヨーンといった東部工業地帯でも365~370バーツの水準へと上昇しています。その他の地域もおおむね330~360バーツの範囲に改定され、企業にとっては依然として賃金水準の上昇が大きな関心事項となっています。
なお、労働保護法により、最低賃金や職能別賃金水準に満たない賃金を支払った場合には、雇用主には6か月以内の禁錮または10万バーツ以下の罰金が科されることが定められています。
もっとも、最低賃金の上昇だけに注目し過ぎるべきではなく、タイには多くの投資メリットも存在します。たとえば、親日家が多く日本企業との相性が良いこと、ASEANでも特に日本語学習者が多いこと、法人税率20%という競争力ある税制、約6,600万人という大きな国内マーケットなど、総合的な投資魅力を備えています。したがって、タイ進出や事業運営を検討する際には、賃金コストのみならず、これらのプラス要素も含めて総合的に判断することが重要です。
雇用者は、労働者を雇用する場合には、書面または口頭で雇用契約を締結しなければなりません。雇用契約の締結については、民商法典3部6章や労働者保護法に規定されています。雇用契約には、期間を定めるものと期間を定めないものがあります。雇用契約を締結する際には、労働条件などを記載した雇用契約書を作成するのが一般的です。
10人以上を常時雇用する雇用者はタイ語の就業規則、従業員台帳および賃金台帳を作成し、労働局の検査を受ける必要がありましたが、2017年4月4日の法改正によって提出義務がなくなりました。事業運営の利便性向上のため、108条2項「当局への就業規則」、同条3項「就業規則に対する当局の修正権限」が法改正に関する命令により削除されました。
ただし、以下の労働者保護法および労働関連法に違反する内容については労働法が適用されることとなります。
- 雇用している労働者の数
- 労働時間
- 賃金
- 職能別賃金の有無
- 報告年度における労働者増減計画の有無および理由
就業規則は、作成または変更後7日以内に同規則のコピーを労働福祉保護局に提出しなければなりません。就業規則に記載しなければならない項目は以下のとおりです。
- 労働日、通常の勤務時間と休憩時間
- 休日、休日取得の方法
- 超過勤務と休日勤務に関する規則
- 基本給、超過勤務手当、休日手当、休日超過勤務手当の支払方法
- 規律と罰則
■雇用契約と就業規則
- 苦情の申出先、方法
- 解雇、退職金、特別退職金
就業規則上記載する必要のある項目である「苦情の申出先、方法」については、少なくとも以下について記載する必要があります。
- 苦情の範囲と内容
- 苦情の申立方法
- 苦情の解決手続
- 苦情に基づく調査
- 苦情申立者の保護
就業規則は、労働者が10人以上となった日から15日以内に労働者に公表する必要があります。また、事業所にコピーを保管した上で、労働者が認識しやすいように事業所に掲示しなければなりません。また、労働保護福祉局に就業規則を届出る必要がありますが、就業規則が法に抵触する場合、労働保護福祉局長によって修正を命じられることがあります。
なお、就業規則の作成、掲示、届出を怠った場合、または従業員台帳や賃金台帳の作成を怠った場合には、2万バーツ以下の罰金が科されます。
従業員台帳には氏名、性別、国籍のほか、雇用開始日、役職または業務、賃金等を記載します。賃金台帳には労働日、労働時間、賃金、時間外手当、休日労働手当等の金額の記載と労働者の署名が必要です。従業員台帳は従業員の退職日から、賃金台帳は支払日から、それぞれ2年間保存・保管する義務があります。また、労働者を雇用した雇用者は、後述の社会保険法と労働災害補償法の規定に従って、30日以内に雇用者登録と被保険者登録を行います。労働者は積立金、雇用者は負担金をそれぞれ社会保障基金/労働者補償基金に支払わなければなりません。
■休業の取扱
[一時休業実施の要件]
タイ労働者保護法75条では、会社が以下の要件に該当する場合には一時的に休業することが認められています。
- 通常の業務運営が困難になるほどの事業活動に支障を生じる重大な理由によること
- 不可抗力に基づくものでないこと
- 事業の一部もしくは全部の休止であること
- 臨時的な休業であること
なお、上記要件に該当する場合は、労働者および労働監督官への3労働日前の事前通知をしなければなりません。
[休業手当の支給]
上記の要件に該当した場合には、会社は一時休業を行うことが認められています。ただし休業期間中は、従業員に休業開始時の給与の75%の休業手当を支給しなければなりません。
休業手当の給付期間は休業開始から業務開始の間となり、休業手当の算定の基礎となる「休業開始時の給与」とは、基本給の75%ではなく、月々定額で支給される役職手当や食費手当などを含んだ賃金の総額になります。
■ 労働時間の短縮
一時休業と同じように、人件費を抑えるために労働者の労働時間の短縮を検討する場合があります。タイでは、労働時間を短縮することは、労働条件の不利益変更には該当せず、労働者の同意を得なくても短縮を行うことが可能です。ただし、労働時間の短縮に伴う従業員の賃金の減額に関しては、労働条件の不利益変更に該当するため、労働者の同意を得なければ減額をすることはできません。
たとえば、会社が行うべき業務の減少により、労働者の労働時間を1日8時間から6時間に減少させたとします。この場合、労働者の同意を得ずに労働者に支払う賃金を8時間分から6時間分に変更するのは違法になります。
会社が経営危機の状況にある場合でも上記は適用されるため、その状況を労働者に伝えて、労働時間短縮に伴う賃金の減額の必要性を伝え、同意を得る必要があります。
もし、労働者が賃金の減額を拒否した場合には、会社が経営危機等の危急時に賃金減額に同意しなかったという理由で、その労働者を解雇することが可能です(正当の解雇事由として認められる)。この場合は、解雇手当を支給し、解雇を行います。
ただし、このような場合には、解雇された労働者が労働裁判所に不当に解雇をされたと訴える可能性があります。そのため、会社が経営危機等の状況に陥り、労働者に賃金の減額を求める場合には、会社側は実際に会社が置かれている経済状況、労働時間短縮の必要性、雇用維持への努力等を説明し、裁判で不利な状況にならないように準備をする必要があります。
■従業員の解雇
■ 通常解雇(解雇手当を伴う解雇)
通常解雇とは、会社都合で従業員を一方的に解雇する事をいいます。
会社の都合で解雇する場合、労働者保護法118条により120日以上の勤続者には勤続年数に応じた解雇手当を支給しなければなりません。この場合、日本と同様に事前通告が必要です。タイの場合一給与期間以上前に文書により事前通告するか、事前通告に代えて、上述の事前通告から解雇の日までに支給しなければならない額の賃金を支給することにより即時解雇することができます(労働者保護法17条)。
一給与期間前とは、たとえば毎月30日が給与支給日である場合、 30 日かそれ以前に次の給与支給日に解雇するよう事前通告をしなければならないと解されています。つまり、事前通告日と解雇日の間に 2 回給与支給日がなければならないということになります。また、未使用有給休暇については買取義務があるため注意が必要です(労働者保護法67 条)。
勤務年数に応じた解雇手当は以下のとおりです(労働者保護法 118 条)。
勤続期間 | 解雇補償金金額 |
120日以上1年未満 | 退職時の賃金の30日分 |
1年以上3年未満 | 退職時の賃金の90日分 |
3年以上6年未満 | 退職時の賃金の180日分 |
6年以上10年未満 | 退職時の賃金の240日分 |
10年以上20年未満 | 退職時の賃金の300日分 |
20年以上 | 退職時の賃金の400日分 |
■ 懲戒解雇(解雇手当を必要としない解雇)
以下の正当事由をもって懲戒解雇をした場合には、会社側は解雇手当を支払う必要はありません(労働者保護法119条)。
- 業務に対して不誠実であったり、故意に雇用者に対して罪を犯した場合
- 故意に雇用者に損害を与えた場合
- 不注意により雇用者に深刻な損害を与えた場合
- 就業規則、雇用者の合法的な規則または命令に違反したり雇用者がすでに警告書を出している場合(ただし、雇用者が警告書を出すほどでは ない場合は除く。警告書は労働者が違反を犯した日から1年以内は有効である)
- 間に休日があるなしにかかわらず、正当な理由なく3労働日連続して職場放棄した場合
- 不注意または軽犯罪に対する判決を除き、最終判決で懲役を命じられた場合
以上の場合でも、解雇通知の中に必ず正当事由を記載することが大切です。
後々裁判になった際に後付けで理由を主張したとしても受入れられません。また、些細な違反等に関して、警告もせずに即時に解雇をした場合には、その解雇は合理的ではないという理由から認められない可能性が高くなるため、軽い懲戒処分(口頭による注意、警告書の発行、停職、減給処分)を行う必要があります。
また季節的労働のように就業の期間が明確に定められており、その定めにより雇用を終了した場合等は、懲戒解雇には該当せず、解雇手当を支払う必要はないとされています。
■ その他の解雇
使用者が機械化、機械の変更、技術の向上の結果として組織、製造、流通、サービス過程を再構成し、労働者数を削減する必要があるために、労働者の雇用の終了を望む場合、使用者は雇用終了日の60日以上前に労働監督官と雇用が終了する労働者に雇用の終了日、雇用終了の理由、労働者氏名を通知しなければなりません。
使用者が雇用を終了する労働者に事前に通知をしなかった場合や、労働者保護法118条1項に定めた期限以前に通知しなかった場合には、使用者は118条に基づく解雇手当とは別に、最後の賃金の60日分、または労働成果に基づいて単位給の支払を受けている労働者については、最後の60労働日の賃金に相当する特別解雇手当を通知の代わりに支払わなければなりません(労働者保護法121条)。
使用者が121条に従い労働者の雇用を終了する場合、当該労働者が勤続6年以上であった場合、雇用者は118条に基づく解雇手当に加えて、1年につき最後の賃金の15日分以上、または労働成果に基づいて単位給の支払を受けていた労働者については最後の賃金の15日分以上に相当する特別解雇手当を支払わなければなりません。
しかし、同条に基づく解雇手当の総額は最後の賃金の360日分以上または労働成果に基づいて単位給の支払を受けていた労働者については最後の360労働日の賃金を超えてはなりません。
特別解雇手当の計算については、労働期間が1年未満の場合は180日を超えていれば1年の労働として数えます(労働者保護法122条)。
■事務所移転による雇用契約の終了
使用者が事業所を移転することが労働者やその家族の通常の生活に重大な影響を及ぼす場合、使用者は事業所の移転日から起算して30日以上前に労働者にその旨を知らせなければなりません。
これに関連して、労働者が移転先事業所での労働を希望しない場合は、労働者は雇用契約の終了を通知する権利を行使することができ、118条により、受取る資格のある解雇手当の50%以上の特別解雇手当を受取る資格を有します。
使用者が労働者に事務所の移転を事前に通知しない場合、使用者は最後の賃金の30日分に相当する額(労働成果に応じて単位給の支払を受けている労働者については、最後の30労働日の賃金に相当する額)の特別解雇手当を支払わなければなりません。
労働者は、使用者が事業所を移転した日から起算して30日以内に労働福祉委員会に対し、その移転が雇用者が事前通知をしなければならないケースか、または労働者が雇用契約の終了を通知する権限を持ち、特別解雇手当を受取る資格を持つケースかについて申立をすることができます。
使用者または労働者が労働福祉委員会の決定通知を受けてから30日以内に裁判所に提訴しなければ、その決定は最終的なものとなります。使用者が提訴する場合、使用者は提訴までに、申立をした労働者に支払うべき金額に相当する額を裁判所に預けなければなりません。
同条の下に雇用契約の終了を通知する際、労働者は雇用者が事業所を移転、または労働福祉委員会の決定または裁判所の判決が確定してから30日以内にその権利を行使しなければなりません(労働者保護法120条)。
【不当解雇】
不当解雇とは、従業員に非がないにもかかわらず、会社都合で一方的に解雇することを言います。この場合、解雇手当のほかに損害賠償金を支払わなければなりません。日本では不当解雇と判断された際、もとの職場への復帰というケースもありますが、タイにおいては復帰後の人間関係を考慮して、賠償金による金銭的解決が一般的です。解雇が認められない場合は以下のようになります。
・妊娠を理由した場合
・労働組合を理由にした場合
・労働者もしくは労働組合が組合活動を行っている時
・労働裁判所の許可なしでの労働者委員会委員の解雇
・労災での治療中または労働能力が不能となった場合
タイでは、裁判になると労働者側に有利な判決が出やすくなっていますので、裁判になった場合を想定して、立証可能な状況を作っておくことが重要です。
■その他:障がい者雇用義務
タイにおける障害者の雇用義務は、労働省および社会開発・人間の安全保障省が所管する「障害者エンパワーメント法(2007年)」 (関係省令の制定を経て、11年から施行)を根拠とするもので、前身である1991年成立の「障害者リハビリテーション法」からはさらに義務内容が強化された内容となっています。
上記法令の第33条には、障がい者雇用につき「一定の条件に該当する場合、一定の雇用義務を果たすか、納付金を納める義務がある」が規定されています。
■一定の雇用義務を果たす場合の雇用基準
・該当機関:民間事業者および政府機関を問わず、従業員100 人以上の事業所の雇用主または所有者に適用となり、業種も問われません。
・法定雇用率:雇用割合は、100名につき1名
雇用者または従業員が100名を超える場合は、その後雇用者数を100で割って、端数を50人となる場合にもう1 名追加で雇用する必要があります。
例:従業員が151名以上いる場合は、2名を雇用する義務が発生します。
・雇用者数/従業員者数のカウント:一企業/機関ごと
同一機関、企業において支部または支店が存在する場合でも、その省内のすべての機関または事務所の従業員数を含めた数となります。
・雇用者の条件:原則、正社員(フルタイム)での雇用
正社員の内、部署や職位(ポジション)へ規定は特段なく、あくまでも雇用者にあったポジションにて雇用すること
・時点:毎年10月1日時点の状況(従業員数)がベース
雇用者数の計算にておいても時点が適用されており、毎年10月1日時点の状況(従業員数)がベースとなります。
■納付金を納める場合
既定の障がい者を雇用しない場合、別途、納付金を納める必要があるという規定があります。
・納付金の計算方法
該当年度の全国一律最低賃金× 365(日)× 障害者雇用不足人数
(年間13万バーツぐらい(日本円で50万円相当)を障害者雇用不足人数につき納付する。)
また期限までに納付金を支払わない場合でも雇用主に対し年利7.5%の利子をペナルティーとして支払わなければなりません。
タイの社会保険制度
■社会保険法
■ 適用範囲
タイでは1990年に社会保険法が成立し、現在は、労働者の業務上以外の傷病、障害、出産、死亡、子女扶養、老齢、失業の7種の給付に関する保障制度が整備されています。当初は、20人以上を雇用する事業所の加入が義務付けられていましたが、2002年4月からは従業員を雇用する事業所はすべて加入しなければならなくなりました。 被保険者は、民間企業の従業員で満15歳以上60歳以下の雇用者とされ、外国人も対象となります。ただし、家事労働者は含まれませ ん。
業務上の傷病等については後述の労働者災害補償法に基づく労働者 災害補償基金制度があります。社会保険法および労働者災害補償法の 所管官庁は労働省社会保険事務局となっています。
■ 保険料
2018年に保険料の改定が予定されていることは序章「社会保険料の値上げ」(P.12を参照)で述べたとおりです。
日本とタイでは、社会保障協定が締結されていないため、日本人駐在員は日本とタイの双方で社会保険に加入することになりますが、上限があるため日系企業や日本人駐在員にとってはそれほど大きな追加コストにはなりません。会社は同額の保険料を負担し、翌月の15日までに社会保険事務局に支払います。なお、保険給付のために、政府が2.75%を負担しています。
■ 社会保険給付の受給要件と給付内容
7種類の社会保険給付の受給要件と給付内容は次のとおりです。
■労災保険法
■ 概要
労働者の業務上の障害、疾病、および死亡に対する保険給付を行い、労働者の保護、補償をすることを目的として、1973年に労働者 災害補償基金が設立されました。現在は、1994年に改正された労働者災害補償法に基づき、労働省社会保険事務局がこの基金を運営して います。
■ 保険料および保険給付会社は、勤務中に怪我をしたり、病気になったり、死亡した従業員に必要な保険給付のために、法律で定められた保険料を支払わなければなりません。保険料は、日本と同様に全額雇用者の負担で、料率は 労災事故の発生率に応じて業種ごとに上限年間賃金の5%の範囲内で定められています。
保険給付の内容は、補償金、療養費、リハビリ費用、葬祭費の4つです。補償金は障害、疾病などの程度に応じて法律で定められた率が支払われますが、一般的には月給の60%、2,000バーツ以上9,000 バーツ以下の範囲内で毎月支給されます。療養費は実費で、通常3万5,000バーツ、程度が重い場合には5万バーツが上限となります。リハビリ費用は必要に応じて法定の率(上限2万バーツ)で払われます。
死亡の場合は日給の100倍までの範囲で葬祭費が支払われます。 ただし、保険給付の具体的な金額は、業種ごとの労災事故率の統計デ ータやその時点における基金の負担・基金残高により算出されます。
タイでは失業保険の水準が低いため、それを補う意味から、前述の社会保険や労災の他に、退職積立基金法の任意加入による退職積立基金制度が設けられている企業がありますが、日系企業の中では、労働者に対する福利厚生として企業独自の制度を設けているケースも見受けられます。
■Latest News&Updates
【法改正による定年後の継続雇用】
タイでは9月に「定年」に関する法改正がありました。定年後の継続雇用に関しての対応方法については以下2通りの選択があります。
(1)雇用条件を変更せずに、継続して雇用する。当該従業員が退職する場合に、勤務年数に応じた解雇補償金を支払う。
(2)定年になった段階で一度解雇補償金を支払い、定年退職とする。その後、雇用契約を新たに結ぶ。※(2)の場合、雇用契約の内容は変更が可能です。
特記事項は以下の通りです。
(1)の選択に関しては、雇用条件を変更しないことが、ポイントとなります。
当該従業員との同意の下で雇用条件(給与額や手当など)を変更した場合、変更事項が解雇補償金の金額を下げてしまう可能性があります。その場合、「雇用者が解雇補償金を低く付与するために雇用条件を変更した」と、労働局から判断される可能性があります。
(2)の選択に関しては、会社が有期雇用契約を結ぶ場合は、解雇補償金の支払いは不要となります。しかし、タイでは有期雇用の定義がありますので、内容に沿った形での雇用が必要となるため、留意が必要です。無期雇用の場合は、会社都合による解雇の場合にのみ、解雇補償金の支払いが必要となります。
日本人を駐在させる際の留意点
■ビザ及びワークパーミット
■ ビザとワークパーミットの取得義務
タイで外国人が就労するためには、ビザとワークパーミットを取得 する必要があります。ビザを取得するためには入国管理局、ワークパ ーミットを取得するためには労働省によりそれぞれの基準で審査され ることになります。
ビザ:外国人がタイに滞在するために必要な許可証
ワークパーミット:外国人がタイで就労するために必要な許可証
■ ビザの取得手続①(就労ビザ)
日本人の場合、観光目的以外で30日を超えてタイに滞在する場合はビザが必要です。就業目的でタイへ入国する場合には、まず駐日タイ王国大使館または領事館でノンイミグラントBビザ(Non Immigrant-B Visa)を取得する必要があり、ノンイミグラントBビザによる滞在可能日数は90日間となっています。
日本でのノンイミグラントBビザの申請に必要な書類は以下のとおりです。
日本でのノンイミグラントBビザの申請に必要な書類は以下のとおりです。
・ビザ申請書1枚(大使館ウェブサイトで入手可能)
・写真(3.5×4.5cm)2枚カラー(申請書に貼付)
・パスポート(有効期間が6カ月以上残っていて、査証の余白が1ページ以上あるもの)
・パスポートコピー
・航空券または予約の確認書
・英文経歴書の原本(大使館ウェブサイトで入手可能)
・タイの会社からの英文招聘状(原本)1部(特に申請者のタイでの滞在目的、役職、在職期間、給与等を明記し、会社のレターヘ ッド用紙使用。ない場合は、会社登記簿を添付し、申請者名、会 社名、入国予定日、滞在予定期間、代表者の直筆署名等が必要)
・タイ側会社登記簿のコピー(資本金、会社代表者名簿が記載され ているもの。タイ語で可)
・タイ労働許可書のコピー(タイで就労経験がある者のみ)
・申請料シングルエントリー10,000円
■ ワークパーミットの取得手続
ノンイミグラントBビザでタイ国に滞在許可を受けた外国人は、投資奨励法またはその他の法令に基づいて、関係当局部署が許可する期間に従い、必要に応じた期間の労働許可を取得できます。最長有効期間は2年です。
労働許可証の申請に必要な書類は以下のとおりです。
・パスポート
・写真3枚
・雇用・職歴証明書
・卒業証明書(英文)
・タイ人医師による健康診断書
・会社登記謄本
・納税者登記証
・工場設置許可証(製造業の場合)
・会社の業務内容の説明(会社案内等)
・会社所在地の地図、組織図、従業員数等
・直近の会計監査資料(新設会社の場合は不要)
・申請者の予定給与
・申請者の日本およびタイ国内の住所
・会社ですでに労働許可証を所持する社員がいる場合はそのリス ト
・法人税と付加価値税、個人所得税の申告書とその領収書(新設会 社の場合は不要)
・申請者の役職、職務に関する説明
上記の他、別途追加書類の提出を求められるケースもあります。
ワークパーミットは許可期限が切れる前に、労働許可の更新申請をしなければなりません。期限内に申請した場合には、申請の結果が登 録官から通知されるまでは引続き就労することができます。
ワークパーミットは常に携帯するか、就業場所で管理しなければなりません。退職した場合には、退職した日より15日以内にワークパー ミットを返還する必要があります。また、就労形態、雇用者、就労場 所などの条件に変更が生じた場合には、直ちに登録官に申請しなければなりません。
■ビザ取得手続き②(帯同家族)
タイ王国で正規就労する外国人(日本人を含む)の配偶者 及び 扶養家族がタイへ入国・滞在する場合に取得が必要なビザとなります。
就労者と別々で入国する場合、以下の申請書類が必要となります。
1. パスポート原本 と パスポートの顔写真ページのコピ
2. 申請書と証明写真
3. 経歴書(Personal History)
4. ビザ発行を要請するタイ側の会社発行の英文もしくはタイ文招聘状原本(Invitation Letter)
5. タイ招聘状発行の会社登記簿謄本コピー(タイ商務省発行)
6. 就労者が所属している日本の会社からの英文もしくはタイ文推薦状原本(Recommendation letter)
7. 日本国籍の場合は戸籍謄本 原本 (発行から 3 か月以内のもの)
8. 就労者のパスポート全ページコピー(滞在許可証 : Stay Permit が確認できること)
9. 就労者の労働許可書(Work Permit)全ページコピー
10. 航空券(Eチケット)または航空会社発行の予約確認書コピー
※ただし、同時に入国・渡航を希望する場合(就労者がタイ国内において、既に上記の 8. と 9. を取得している場合は除く場合)は、上記の書類 8. と 9. は不要となります。
また上記の加え、 ①必ず就労者とその家族は同時にビザの申請をすることや②必ず就労者とその家族は同時にタイに渡航すること、そして③就労者の航空券(e チケット)または航空券予約確認書コピーを提出することが必須となりますので、ご注意ください。
※申請場所・担当官の判断によっては、上記以外に追加資料の提出を求められる必要もございますので、ご渡航の際は早めに申請・取得を推奨いたします。
■ その他、VISA・WP・駐在員入国時のトラブルとその対処法
最近、入国スタンプの押し間違いがあるケース等が多々見受けられます。
万が一、そのまま放置してしまった場合、その後の90日レポートやビザの更新等の際に指摘を受ける可能性がでてしまったり、日を跨いだ時点で不法滞在者となってしまう可能性があります。
その場合、イミグレーションにて入国スタンプの修正手続き等が必要となりますので、B-VISA取得後、タイへの入国時はその場で、正しいスタンプが押されているかの確認を行うようにしてください。
■Form TM30(外国人の居住報告)について
Form TM30 とは、入国管理法(1979年)第38条(Section 38 of IMMIGRATION ACT, B.E. 2522)では、外国人の居住報告についての規定を示します。
土地の保有者、アパートメント、ホテルその他の住居の保有者(オーナー)は外国人を滞在させる場合に、外国人が施設に入居してから24時間以内にイミグレーション(移民局)又は居住地区にイミグレーションが無い場合には警察署に報告をする義務があるという内容です。
■TM30の重要性
2019年3月以降、このTM30のコンプライアンス強化の目的で、外国人が保有するVISAの延長手続きや「90日レポート」の提出を行う際に、直近のTM30の添付が必要となります。
良くお伺いするトラブルとして、VISAの延長手続き時に担当官よりTM30の提出がされていないということで、指摘されるケースが頻出しており、未申告だった場合、
最悪のケースとして、ビザ延長申請の拒否やペナルティが発生するケースがありますのでご注意ください。
また2023年9月15日より登録サイトや登録方法、受領の紙が変更があったため、通常より発行に時間がかかる可能性があります。
オーナーによっては新しい方式に慣れていないため、通常より発行に時間がかかる可能性があります。
つきましては、入国後、ご自身のビザ延長や90日レポート等でTM30が必要な場合、早めのご準備・オーナーへの発行依頼が必要です。
■Latest News&Updates
【商用ビザ免除制度2024年~】
2023年12月12日、日本人がビジネス目的でタイに短期滞在する場合に、商用ビザの取得を免除することを閣議承認しました。
概要として、日本人が商用目的でタイに入国し30日以内の滞在をする場合の商用ビザの免除として2024年1月1日から2026年12月31日までの3年間の時限措置となります。
商用目的の渡航とは、タイの会社との事業展開に関する会合や商談を目的とした渡航の事を指し、タイにある日本の子会社・グループ会社・工場・取引先との会議、視察、短期緊急業務(技能者、技術者、監査、研修、公共もしくは民間事業に携わる者など)が含まれます。
商用ビザ免除は、入国時にタイ側の会社からの招聘状や証明書など商用目的を証明できる書類をタイ入国管理局に提示することで適用されます。
ただし、上記以外の目的の場合は、入国時に必ず入国目的に合ったビザを取得している必要がありますので、ご注意ください。
【スマートビザ対象業種の改正】
スマートビザは、タイにおいて以下のターゲット産業に従事 する高度技術専門家、投資家、上級幹部、スタートアップ企業 の起業家向けに特別に創設された新しいタイプのビザです。 スマートビザ保有者には最長 4 年間の滞在許可、就労許可の 免除のほか様々な恩典が付与されます。2022年3月BOIは、スマートビザと特別長期居住ビザ [special long-term residence visa (“LTR Visa”)] の発給について、適用業種の追加変更を発表しました。
新しい適用範囲については以下となります。
【スマートビサ】
- 自動車
- 電気
- 高所得者向け旅行産業(医療ツーリズム等)
- 農業・食品・バイオテクノロジー
- 自動化・ロボット産業
- 物流産業
- 石油・化学産業
- デジタル産業
- 医療
- 防衛関連
- 循環型経済産業関係
- 航空宇宙産業
- 科学技術分野における人材開発産業
- 再生エネルギー関係
- 代替エネルギー・環境マネジメント
- ターゲット産業に関する技術の開発
- 国際ビジネスセンター (IBC)
- 紛争外解決手段
*スマートビザについては以前の13業種から18業種に増えています。
【特別長期居住ビサ】
- 自動車
- 電気
- 高所得者向け旅行産業(医療ツーリズム等)
- 農業・食品・バイオテクノロジー
- 自動化・ロボット産業
- 航空宇宙産業
- 植物燃料・生物化学
- デジタル産業
- 医療
- 防衛関連
- 循環型経済産業関係
- 物流産業
- 石油化学
- 国際ビジネスセンター (IBC)
- その他の外国人によって行われる以下の業務
- ターゲット産業向け研究開発
- 科学技術分野における人材開発
- AI、自動化、ロボット関連事業の遂行
- 生産効率化に関するデジタル技術導入
- 金融市場分析・コンサルティングサービス
- 環境エネルギーマネージメント
- 新規事業創設等に関わるマネージメント・アドバイザリー業務
- 紛争外解決手段
- 経済投資振興関連機関
*LTR ビザについては、石油化学、IBCの産業が追加されたことと、15のその他の業務が詳細に規定されるようになりました。
■ 外国人の就労禁止職種
ワークパーミットの取得に関し、以下の39業種については、外国人職業規制法により、その地域を問わず外国人が就労することが禁止されています。
■ ワークパーミットの取得条件 日本企業のような外国法人が外国人労働者(日本人労働者を含む) のワークパーミットを取得するためには、雇用者である企業は労働 者1名につき最低200万バーツの払込済資本金の登録をする必要が あり、登録した企業は10名までの外国人労働者の雇用が可能です。 ただし10名を超えて外国人労働者を雇用するためには、1名につき 200万バーツの資本金払込の他に以下のいずれかの要件を満たす必 要があります。
・雇用者が前年度に納めた法人税が最低300万バーツであること
・雇用者が輸出業を営み、前年度に最低3,000万バーツ相当の外 貨をタイにもたらしていること
・雇用者が観光業を営み、前年度に最低5,000人の外国人観光客 をタイに呼び寄せたこと
・雇用者が最低100人のタイ人を雇用していること
上記のいずれかの要件を満たしていない場合であっても以下のいず れかの要件を満たしていれば、ワークパーミットを取得できる人数は制限されません。
・タイ人を使用することができない、また使用することのできるタ イ人が非常に限られている技術を使用できる外国人であること。 ただし一定期間中に少なくとも2人のタイ人に技術の移転を行う ものとする
・時間制限のあるプロジェクトを達成するための専門技術を持つ 外国人であること
・一時的な契約でエンターテイメント・ビジネスに従事する外国人 であること
■ ワークパーミットおよびビザの更新 ワークパーミットを更新する際には、同時にビザも更新する必要が あります。ビザの更新に当たっては以下の項目が基準となるので、事前の確認が必要です。
①月給が5万バーツ以上であること
②会社の払込資本金が外国人1人につき200万バーツ以上である こと
③前年度の財務諸表によって事業が健全に継続できる状況である ことが明らかであること
④外国人1人につき、常勤のタイ人従業員が4人いること
※ただし、支店や駐在事務所に関しては、上記②③は適用せず、④に関しては外国人1 人につきタイ人1人の比率
なお、③については、具体的には以下の基準により判断されます。
・監査人が、財務諸表に対して事業の継続に関する限定意見を表明 していないこと
・ 貸借対照表、損益計算書によって、事業に動きがあることが明確 に示されていること
・ 付加価値税または特定事業税の申告を毎月行っていること
・ 源泉所得税の申告を毎月行っていること
・ 社会保険料の申告を毎月行っていること
■駐在員の社会保険
■ 社会保険
[社会保険の被保険者資格の継続・喪失]
日本から海外に出向する際には、日本国内の企業との雇用関係が継 続するのか(在籍出向)、継続しないのか(転籍出向)によってその取扱が異なります。
在籍出向であり、出向元から給与の一部または全部が支払われてい る場合には、海外に赴任している間でも、健康保険、厚生年金保険、 雇用保険等の被保険者資格は継続します。 一方、日本の出向元との雇用関係を終了させ、海外現地法人等との雇用関係を結ぶ転籍出向の場合、もしくは現地直接雇用の場合には、 出向元との雇用関係が継続しないため、健康保険、厚生年金保険、雇 用保険等の被保険者資格は喪失します。
[国民年金の任意加入]
転籍出向する場合には、厚生年金保険の被保険者資格を継続するこ とができません。1年以内の赴任予定であれば、日本国内の居住者と なるので、国民年金へ加入することになります。 しかし、1年以上の赴任予定の場合には、日本の非居住者となるの で、原則として国民年金に加入する必要はありません。日本の年金制 度に加入を希望する方は、国民年金の任意加入手続をすることができ ます(国民年金法附則5条3項)。
国民年金の任意加入要件は、以下の2点です。
・日本国籍を有し、20歳以上65歳未満であること
・日本国内で保険料の納付が可能なこと
※親族等による代行納付でも可
[海外で日本の健康保険制度を利用する場合]
海外赴任中に海外で医療行為を受けた場合でも、日本の健康保険の 被保険者資格が継続していれば、加入する健康保険組合等に「療養費」の申請をすることが可能です。
ただし、申請に当たっては、以下の2点に注意をする必要があります。
・療養費として申請するため、海外での医療費を一度本人が全額を 立替え、日本の健康保険組合等に申請する
・海外で受けた医療行為について、日本国内で保険診療を受けた場 合の保険診療点数に換算して算出した金額から自己負担額を差 引いた額が支給される
健康保険の海外療養費申請に必要な書類は以下のとおりです。
・療養費支給申請書
・療養内容証明書
・領収明細書
・領収書(原本)
※ただし、提出書類が日本語以外の言語で記載されている場合には、翻訳者の氏名および住所を明記の上、日本語翻訳文の添付が必要となる
[日本国内の健康保険制度の継続]
日本国内の企業との雇用関係が継続しない場合には、健康保険の被 保険者資格は喪失となります。しかし、健康保険の任意継続被保険者 制度を利用するか、国民健康保険に加入することで、日本国内の健康 保険制度に加入することができます(健康保険法37条)。
なお、健康保険の任意継続被保険者制度は資格喪失後20日以内、 国民健康保険の加入は資格喪失後14日以内に行う必要がありますの で、早急な対応が求められます。
健康保険任意継続被保険者の保険料
・退職時の標準報酬月額
・加入していた保険者ごとに定められる標準報酬月額の平均額 上記いずれか低い金額に保険料率を乗じた金額
※在職中と異なり、事業所が負担していた保険料についても自己負担となる
国民健康保険の保険料
被保険者の所得等に応じ、市区町村の規定により算出される金額
[労災保険の特別加入制度]
労災保険は、日本国内にある事業所で働く労働者が保険給付の対象となるため、海外の事業に出向する労働者は対象外になります。
そこで、海外に出向する労働者についても、海外派遣者特別加入制度を利用することで、労災保険の保険給付を受けることが可能となります(労働者災害補償保険法33条)。 特別加入者の保険料は、保険料算定基礎額に保険料率を乗じた金額で、年間で最低5,108円、最高3万6,500円(2015年3月時点)です。 特別加入対象者は以下のとおりです。
・日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣され、海外で行われる事業に従事する労働者
・日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣され、海外にある一定数以下の労働者を常時雇用する中小企業※に従事する 事業主およびその他労働者以外の者
※中小企業の規模 金融業・保険業・不動産業・小売業…50人以下
卸売・サービス業…100人以下
上記以外の業種…300人以下
・国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施に事業 (有期事業を除く)を行う団体から派遣され、開発途上国地域で 行われている事業に従事する者
■ 海外旅行傷害保険
[駐在員赴任時の取扱]
海外赴任をする際には、公的な保険の加入状況の他に海外旅行傷害
保険への加入の検討が望ましいです。海外旅行傷害保険は、保険会社が契約を結んでいる病院で治療をする場合には、現金不要で治療を受 けることができます。また、公的な保険とは異なり、契約した保険金額を限度として、実際にかかった医療費の実費が支払われます。海外旅行傷害保険の新規加入時には、出国後の手続をすることができませんので、必ず出国までに加入手続を済ませる必要があります。
[駐在員帰任時の取扱]
駐在員が帰任することになった場合には、その年の年末調整の対象となります。対象となる給与は、居住者となった日(帰任した日)以後に支払われた給与です。給与以外の所得が一定の金額以上の場合などには、年末調整のほか、当該年の確定申告を行う必要があります。
■ 駐在員の給与設計と計算事例
[日本-タイ間の給与格差問題]
タイ駐在員に対して給与を支払う場合、日本とタイで個人所得税計算方法に違いがあることから、その支給に当たっても一律で日本と同様というわけにもいかず、給与額の設定や支給形態を事前に十分検討する必要があります。
■ 日本-タイ間の税率の比較
日本側では、給与所得控除(65万円)と基礎控除(38万円)があるので、収入ベースで103万円以内であれば所得税はかかりません。 タイでは、給与所得控除の金額が非常に低いですが、そのぶん税率も 日本と比較すると低いため、納めなければならない個人所得税額にそれほど大きな差異はありません。
ただし、給与額によって変わるため、海外に従業員を赴任させる際には、タイの個人所得税を算出してから給与を設定することが望ましいでしょう。
実際に日本人駐在員がタイで給与を受取った際の課税金額を日本と比較してみましょう。
前提条件
40歳、男性、扶養なし
日本での年収:648万円
赴任予定期間:3年
※社会保険料は、社会保険料控除の対象になるが、前述のように最大でも月額750バー ツのため、ここでは考慮しない
このように、年収648万円の駐在員がタイで給与を受取った場合、32万7,500円ほど手取が少なくなります。
■ 手取額を一致させるグロスアップ計算
そこで、手取額を一致させるためのグロスアップ計算をする必要があります。手取額を従前の562万3,300円にするには、695万円ほどの支給が必要となるため、約47万円を支給額に上乗せして調整する必要があります。給与額によって、上乗せすべき金額は異なりますが、47万円近くもしくはそれ以上の上乗せをすることになりますの で、事前に支給額の検討が必要です。
■Latest News & Updates
【新法『外国人就労管理法』制定について】
タイで外国人が就労するためには、ビザとワークパミットを取得する必要があります。ビザを取得するためには、入国管理局、ワークパミットを取得するためには、労働省によりそれぞれの基準で審査されることになります。ワークパミットを取得せず、外国人を労働させた場合、不法就労とみなされます。タイにおける不法就労者の多くは、近隣諸国(ミャンマー、カンボジア、ラオス)出身者と推測されています。
外国人労働者に関する法律は、「外国人就労法(2008年施行)」と、近隣諸国からの単純労働者対象の「外国人雇用法(2016年施行)」があります。労働省は、今年6月中旬を目途に、外国人労働者及び外国人雇用者を対象とした新しい法律を施行すると発表しました。新法では、上記2つの法律を1つにまとめ、「外国人就労管理法」として制定されるとのことです。「外国人就労法」「外国人雇用法」での不足事項を拡充、また不備を改正し、刑罰を厳重化し、罰則を追加することで、不法就労対策の強化が図られます。
罰則に関しては、以下の通りです。
新法により、雇用者及び就労許可を得た外国人の義務も、より明確化されることが期待できます。損害を被った外国人労働者のための不服申し立て制度も、併せて制定されるとのことです。
参考文献
・タイ国経済データベース
・タイ国家統計局レポート
・タイ国労働法