投資環境
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
■ベトナムの投資環境
2025年ベトナム総人口は約1億2百万人[oo1.1]となりました。平均年齢は33歳[oo2.1]と約10 年前の平均年齢20 代後半よりも少しずつ上がってきていますが、まだまだ若い人材が多いため、働き盛りの人材が豊富で す。ベトナムの一人当たりGDPは近年も力強い伸びを維持しており、2024年には4,717米ドルに到達しました。依然としてタイやマレーシア、インドネシアなどの主要ASEAN諸国を下回る水準ではありますが、中所得国入りに向けた成長余地が大きい市場として注目されています。[oo3.1]
また、中国やタイに比べて安価な労働力が得やすいことや、政情が 安定していることに加えて、親日的な国柄で、日本語を話せる人材が 比較的多いことなどもあり、日本からの投資が非常に伸びています。
■日本企業(製造業)を対象としたアンケートより
国際協力銀行(JBIC)が毎年実施している「わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査」(2024年度調査)では、中期的に事業展開が有望な国としてベトナムは2年連続で第2位にランクされています。ここ数年にわたり上位を安定的に維持しており、日本企業にとって最も重要な投資先の一つとして認識されていることが分かります。
ベトナムの現在の人口ピラミッドを見ると(P.12 参照)、人口のボ リュームゾーンが20 代後半から30 代前半にあり、この世代が結婚 をし、子供を産み、車や家を買い、子供を学校に行かせるなどし始め ており、、ベトナム国内での消費需要が今後も拡大することは予想できます。この人口構成は、1980 年代の安定成長期を迎えた日本の人口ピラミッドと酷似しており、ベトナムはしばらくは安定して経済が 伸びていく段階にあります。
今後のベトナムは生産拠点としての投資だけでなく、国内マーケットを意識した投資がさらに増加していくも のと考えられます。すでに進出している日系企業もベトナムでの事業 展開を「強化・拡大」させるフェーズに突入しています。米中摩擦による中国からベトナムへの生産移管や新型コロナのサプライチェーン 再編の受け皿としてここ最近人気が高まった印象があるが、実際には 過去数年にわたり直接投資額が堅調に増加してきました。
また比較的「安価」で、「勤勉」な労働力があり、中国の約4 7%、タイの約52% の人件費なので、人ビジネスとして魅力的です。また国内小売販売に おいて、規制緩和によって、外資100%で参入ができるようになりました。いまだに業種によっては規制がありますが、このような規制 緩和が行われてゆけば投資環境としては伸び代があります。
その一方、課題としては2020 年時点の最低賃金は5.1 ~ 5.7% に下落し、カンボジアやミャンマーなどとの労働コスト競争が厳しくな る可能性もあります。また、中国やタイに比べて現地での部品調達率 が低く、裾野産業が未成熟であるという難点もあります。業種によっ ては、多くの部材を日本や他の国から仕入れる必要があり、部材コス トが高くなる傾向があります。ベトナムの投資環境の改善を目的とし て合意された「日越共同イニシアティブ」の枠組みでは、インフラ整 備だけでなく裾野産業の育成が大きな柱となっています。今後も両国 の協力関係を背景とした裾野産業の発展が期待されるところです。
その一方で、課題も依然として存在します。まず、最低賃金は2024年7月の改定で約6%上昇しており、かつてのような「極めて低い人件費優位」は徐々に縮小しています。依然としてカンボジアやミャンマーよりは高く、中国やタイよりは低い水準にあるものの、労働コスト競争が以前より厳しくなってきているのが実情です。
また、中国やタイに比べて現地での部品・素材調達率は依然として低く、裾野産業が発展途上である点は課題です。業種によっては多くの部材を日本や他国から輸入する必要があり、部材コストが高くなりやすい傾向があります。このため、ベトナムの投資環境の改善を目的とした「日越共同イニシアティブ」では、インフラ整備と並んで裾野産業の育成が主要テーマとなっています。両国の協力を背景に、今後もサプライヤー層の拡大が期待されます。
【最低賃金の推移(ハノイ・ホーチミンの都市部)】
【中長期的(今後 3 年程度)有望事業展開先国・地域(複数回答可)】
■ビジネス環境の現状2020」(アンケート)より
世界銀行と国際金融公社(IFC:International Finance Corporation) が共同で行っているアンケート調査では、ベトナムの投資環境の課題 が浮き彫りになっています。この調査で、ベトナムは投資環境ランキングの総合順位が190 の対象国・地域中70 位です。近隣のマレーシア(15 位)と比べると比べると大きな開きがあり、世界的に見てもまだ低いランクにあります。一般に、行政手続の不透明さ、法制度の未整備・運用変更などを懸 念する声は多く、ベトナムでの投資リスクと考えられています。今後の改善が最も期待されるところです。
【ベトナムのビジネス環境ランキング】
■金融(株式)市場
ベトナムには、ホーチミン証券取引所(HOSE)とハノイ証券取引所(HNX)の2つの主要取引所があります。ドイモイ以降に制度整備が進んだため、市場としての歴史は比較的新しく、HOSEは2000年、HNXは2005年に開設されました。その後、国有企業の株式会社化(Equitization)が継続的に進んだことも追い風となり、2024年時点では両取引所合計で約840社が上場する規模へと拡大しています。
HOSEは時価総額が大きく、ビングループやビナミルクといった大企業の株式が中心で、市場の指標性が高いのが特徴です。一方、HNXは中小企業株式や債券、デリバティブ取引の比率が高く、補完的な役割を担っています。
ベトナムはMSCI Frontier Marketの主要構成国として位置づけられており、外国人持株規制や売買インフラの改善が進めば、将来的な“Emerging Market”格上げの有力候補ともされています。ただし、取引システムの遅延、情報開示基準のばらつき、ガバナンス強化の必要性など、制度面の課題は依然残っています。
こうした課題に対応するため、政府は**「証券市場開発戦略(2021〜2030)」**を掲げ、国有企業のさらなる上場促進、コーポレートガバナンスの高度化、取引インフラの刷新(KRXシステム導入)、派生商品の拡充などを重点施策として明確にしています。これにより、ベトナム証券市場は今後も規模と質の両面で成長が期待される段階にあります。
※ホーチミン証券取引所の上場全銘柄の時価総額の加重平均指数。2000年7月28日=100[oo10.1]
出所:Bloomberg
為替レート
ベトナムの通貨ドン(VND)については、かつて高インフレによりデノミが議論された時期もありましたが、現在は状況が大きく変化しています。政府が2011年以降に本格的な金融引き締めとマクロ安定化政策を進めた結果、近年のインフレ率はおおむね3%前後で推移しており、通貨は比較的安定しています。
国内需要の拡大に対し生産能力が追いつかない、資源依存度の高さから貿易赤字になりやすいといった構造的な課題は残るものの、かつての二桁インフレは沈静化したと言えます。今後も政府・中央銀行は物価と為替の安定を優先する方針を維持しており、金融・財政運営の改善によってマクロ経済の安定度は以前より高まっていると評価されています。[oo11.1]
ベトナムにおいては、中国などと同様に管理フロート制が採用され ており、ベトナム中央銀行が介入しレートを安定させています。
2016年に導入された新しい公定レート算定方式によって、為替は過度に固定されることなく、市場実勢を反映しやすい仕組みとなりました。
近年は米国金利動向や資本フローの影響を受けつつも、貿易黒字と外貨準備の積み上がりを背景に、ドンは比較的安定した推移を保っています。2023〜2024年は一時的にドル高の影響で上昇したものの、SBVの柔軟な介入により、為替の急変動は抑制されています。現在のベトナムドンは、かつてのような大幅切り下げ局面ではなく、緩やかな変動の下でマクロ安定を優先する政策運営が続いています。
【対円為替レートの推移】
外国直接投資額(FDI)
1990 年代、ベトナムの外国直接投資は、ドイモイ政策の実行とアメリカからの経済制裁の解除以降、順調に伸び始めました。アジア経済危機により大きく後退しましたが、21 世紀に入り再び上昇に転じ、2008年には100 億USドルを超えるに至りました。しかし、世界金融危機とその後の世界経済の低迷と、2011年の金融引き締め政策への転換により経済成長は鈍化し、2009年からはやや低迷しています。
その後、世界金融危機や国内の金融引き締め政策の影響で成長は鈍化しましたが、ベトナムは市場開放と製造業誘致を継続し、長期的なFDIの流れは堅調に推移しています。
近年はコロナ期に一時的な減速があったものの、2023〜2024年にはFDI実行額が過去最高を更新するなど、依然として活発です。とりわけ日本からの投資は安定しており、長年のODA協力により港湾・電力・交通などのインフラが整備されたことで、投資環境は大きく改善しました。現在では、電気電子・自動車・二輪産業を中心に、ベトナムを生産拠点と成長市場の双方に位置づけた投資が継続的に行われています。
また、チャイナプラスワンの加速や地政学リスクへの対応を背景に、ベトナムは日本企業にとって重要性を増しており、両国の経済関係は今まで以上に緊密になってきています。
直接投資受入額を国別・地域別に見てみると、韓国、香港、中国などアジアからの投資が多く、欧米に比べてアジア各国の投資意欲は相 対的に高いといわれています。数年前までは日本が最大の投資国でし たが、最近は韓国、シンガポール、香港、中国などからの投資が活発 です。
部門別に直接投資を見てみると、ベトナムの産業構造に見合った加工生産をしている製造業が64.2% を占めています。次いで、急速に整備されつつあるインフラ(電力や上下水道など)整備に関連して、 不動産などが多くなっています。近年は、人口ボーナス時期に入ったため、生産拠点としての投資から、国内マーケットを期待する内需向けの投資も多くなり、小売・流通の新規の投資が相次いでいます。今後のインフラ整備状況の進捗にもよりますが、さらに多様な投資が見込まれるといわれています。
インフラ
世界経済フォーラムが行う、「世界競争力レポート(Global Competitiveness Report 2019)」によると、ベトナムのインフラの総合評価は140 カ国中67 位です。他のASEAN諸国と比べてみる と、シンガポール(1 位)、マレーシア(2 7 位)、タイ(4 0 位)、インドネシア(50 位)、フィリピン(6 4 位)となっており、ベトナムは中位に位置しています。各インフラの評価は、それぞれのカテゴリーでランク付けされています。公共施設89 位、インフラ整備77 位、情報通信技術41 位、マクロ経済の安定性64 位、健康面71 位、スキル面93 位、製品市場79 位、労働市場83 位、金融システム面60 位、市場拡大26 位となっています。
■電力
ベトナムの電力供給はかつて不安定といわれていましたが、近年は発電設備の増強や送配電網の拡張により、状況は大きく改善しています。一方で、経済成長と生活水準の上昇により電力需要が急増しており、EVN(ベトナム電力公社)によれば、過去10年で電力需要は約2倍に拡大しました。このため、引き続き発電容量の確保と電力インフラの整備は重要な課題となっています。
また、ベトナムは依然として水力発電の比率が高い国で、発電構成における水力依存は世界平均を上回っています。ベトナムには、山岳地から沿海部に流れ込む9つの主要河川があり、もともと水力発電に適した環境があるため、総発電量に占める水力発電の割合が高くなっています。水力は環境負荷が低い一方で、降雨量に左右されるという弱点があり、渇水が起きた年には電力供給が逼迫するケースも見られます。近年の大規模停電は減少したものの、地域によっては供給制約のリスクが残っており、電力の安定供給はベトナム経済の持続的成長に向けた重要テーマとされています。
こういった状況を改善するために、ベトナム政府は新規の発電所建 設を優先課題として進めています。
特に電力需要が急増する南部では、今後も逼迫が続くと予測されており、石炭火力・ガス火力・LNG発電など、天候に左右されにくい電源の確保が重要テーマとなっています。また、風力発電や太陽光発電を中心に、多様な電源を組み合わせるエネルギーミックスの拡大も進められています。
過去に、ベトナムでは、東南アジアで初めて原子力発電を導入する 予定でしたが、財政難や今後の需要、人材不足、首相の交代など様々な理由によって、現在では白紙となっています。そのため、現在の国家電力計画では原子力発電は導入せず、再生可能エネルギーとガス火力を中心に電源構成を整備する方針が取られています
政府は最新の「国家電力開発計画PDP8(2021〜2030)」の中で、経済成長に必要な電力を安定的に供給するため、発電容量を現在の約2倍規模まで引き上げることを目標としています。送電網の強化や再エネの統合なども並行して進められており、電力不足を解消するための取り組みは今後も継続していく見通しです。
■道路
ハノイからホーチミンを縦断する国道1号線は、依然としてベトナムの最重要道路の一つであり、世界銀行・ADB・日本のODAなど国際支援を受けながら拡幅や路面改良が進められてきました。中部の交通の難所であったハイバン峠は、ODAで整備されたハイバントンネル(2005年開通)により通行時間が大幅に短縮され、中部地域の物流効率に大きく貢献しています。また、中国国境との接続道路の整備が進んだことで、北部から中国への陸路輸送は以前よりスムーズになり、国道1号線の国際物流上の重要性も高まっています。
また、中国ではベトナムとの国境に南友道路という高速道路が2005 年に完成して国道1号線とつながったため、中国との交易ルートとしての重要性がより一層増しました。
近年は高速道路網の建設が進展し、かつて長距離移動に数日かかっていたハノイ—ホーチミン間も、南北高速道路(N-S Expressway)の区間開通により移動時間が大幅に短縮されつつあります。今後の全線開通を見据え、国道1号線は従来の幹線としての役割に加え、高速道路を補完する地域道路として整備が続けられています。
一方、北部の主要港であるハイフォンとハノイを結ぶ国道5号線は物流の大動脈であり、渋滞緩和のためにバイパス整備や高速道路の建設が進み、ラチチャン—ハイフォン高速道路など新路線が稼働しています。
また、ベトナムを横断する東西回廊(EWEC)は、ダナンからラオス・タイ・ミャンマーを結ぶ重要な国際物流ルートで、ASEAN域内の貿易自由化を背景に、今後ますます戦略的重要性が高まるとみられています。[
- 港湾
南北に長い海岸線を持つベトナムには多くの港湾があります。主要 な港湾の多くは、ハノイ経済圏のある北部と、ホーチミンなどのある 南部にあります。また、中部の中心都市ダナン港も重要な港湾ですが コンテナ設備がないため、南部と北部で合わせて9 割近いコンテナ貨物を扱っています。
■港湾
南北に長い海岸線を持つベトナムには多くの港湾があります。主要 な港湾の多くは、ハノイ経済圏のある北部と、ホーチミンなどのある 南部にあります。また、中部の中心都市ダナン港も重要な港湾ですが コンテナ設備がないため、南部と北部で合わせて9割近いコンテナ貨物を扱っています。
従来、ベトナムの主要港は河川港が多く水深が浅かったため、大型船が寄港できず物流効率に課題がありました。しかし近年は、国際金融機関や日本のODAなどの支援により深水港の整備が進展しています。
北部には、石炭の一大積み出し港であるカムファー港があり、最大 の商業港であるハイフォン港があります。また、ハイフォン港を補完するラックフェン国際港(LMIT)が稼働し、深さ14m級の大型船も直接寄港できるようになったことで、北部の国際物流能力は大きく向上しました。
南部ではホーチミン近郊のサイゴン港群に加え、カイメップ・チーバイ深水港(CMIT・TCIT・SP-PSA等)が急速に発展し、欧米向け貨物をシンガポールや香港を経由せずに直接大型船で輸送できる国際ハブ港としての役割を果たしています。複数の世界的ターミナル運営会社が参画し、現在ではベトナム最大の国際コンテナ港湾クラスターへ成長しています。
海運はベトナムの貿易を支える最重要輸送手段であり、政府も港湾インフラを戦略的に整備しています。道路や鉄道と比べて遅れが指摘されることもあるベトナムのインフラですが、港湾設備は国際基準に近づきつつあり、アジアの主要物流拠点としての競争力が高まっているといえます。[
■空港
ベトナムの主要国際空港は、ハノイのノイバイ空港、ホーチミン市のタンソンニャット空港、そして中部のダナン空港です。ノイバイ空港では、旅客増加に対応するため日本のODAで整備された第2ターミナル(T2)が2014年に開業し、国際線の受け入れ能力が大幅に拡大しました。
南部では、急増する旅客需要によりタンソンニャット空港の混雑が深刻化しており、ホーチミン市中心部から約40km東のロンタインで新国際空港の建設が進行中です。第1期では年間2,500万人を受け入れる計画で、将来的には複数滑走路を備えた大規模ハブ空港として運用される見通しです。開港後は、タンソンニャット空港が国内線中心の役割を担うことが想定されています。
日本とベトナムの航空ネットワークも拡大し、現在は東京・大阪・名古屋・福岡からハノイとホーチミンへの直行便が運航されています。観光需要の高まりを受け、ダナンやニャチャンなど中部・南部都市への直行便も増加しており、今後も路線拡大が期待されています。
■鉄道
ベトナムには総延長2,600 ㎞(日本の約10 分の1)の鉄道がありますが、ほとんどすべてが単線で電化されておらず、設備の老朽化も進んでいます。ベトナムでは、南北の輸送は船舶、東西や中近距離ではトラックが利用されることが多く、全体に占める鉄道輸送の割合は、旅客・貨物ともに1 割に満たない状態です。
そんな中でも主要な路線は、ハノイとホーチミンを結ぶいわゆる「統一鉄道」(南北線)です。列車運行は1日に数本で、ハノイからホーチミンの所要時間は約30 時間といわれており、貨物は数日かかることもあります。これまで円借款などにより橋梁や線路の補修が進められてきましたが、抜本的な高速化は実現していません。[oo29.1]
南北高速鉄道(Shinkansen方式)については、2000年代後半から議論が続いてきたものの、財政負担の大きさから国会承認に至っていません。ただし政府は、経済成長と物流需要の増加に対応するため、段階的な高速鉄道構想の検討を継続しています。
また、都市鉄道の整備も進んでおり、ハノイでは都市鉄道2A号線(カットリン〜ハドン)が2021年に開業し、ベトナム初の都市鉄道として運行されています。ホーチミン市でもメトロ1号線(ベンタイン〜スオイティエン)が2024年に開業し、都市部の渋滞・環境問題の緩和に向けて重要な役割を担い始めています。これらの都市鉄道は、今後の拡張によりベトナムの都市交通の主軸となることが期待されています。
■通信
情報通信省によると、ベトナムのインターネット利用率は近年大幅に伸び、人口約1億人のうち約78%がインターネットを利用しています。1日の平均オンライン利用時間は約6~7時間と高水準で、SNSや動画視聴、オンライン学習など幅広い用途で利用されています。携帯電話契約数は引き続き多く、登録ベースで1億3,000万回線を超え、普及率は100%を大きく上回る状況にあります。
スマートフォン普及率も上昇しており、2024年時点では約70%に到達したとされ、若年層を中心に日常生活のデジタル化が急速に進んでいます。こうした人口規模・利用率の高さから、ベトナムは東南アジアで最も成長が期待されるデジタル経済市場のひとつと位置づけられています。[
外資規制と投資インセンティブ
■外資規制
ベトナムに投資を検討する際、最初に留意すべき点は、外国投資に対する規制となります。どれだけベトナムマーケットに魅力があった としても、外国投資の規制業種になっていれば、進出することができ ません。現在の外資規制は、投資法(2020年改正)および「外資ネガティブリスト」に基づき運用されており、WTO加盟以降の市場開放に加え、CPTPPやEVFTAなどの自由貿易協定により、多くの分野で参入自由度が高まっています。
一方で、依然として外資に対する条件や制限は残っており、業種によってはライセンス取得や出資比率の制限が課されるケースがあります。ベトナムにおける主な規制は、以下のように整理されます。
- 投資禁止分野・条件付投資分野の規制
- 出資比率による規制
- 資本金による規制
- その他規制
■禁止業種・規制業種
共通投資法およびその施行細則を定める2006 年9 月22 日政令
(Decree No. 108/ND-CP)において、投資禁止分野と条件付投資分野が定められています。投資禁止分野に該当する業種は、投資自体ができません。また条件付投資分野に該当する規制業種は、投資審査手 続が必要となり、審査なしの業種よりも許可の取得が難しく、時間が かかります。具体的な禁止業種・規制業種は以下のとおりです。
[投資禁止分野(内資・外資が対象)]
国防、国家安全および公益を損ねる投資事業
・不法薬物の製造および加工
・国家の利益および組織と個人の権利と利益を害する分野
・探偵および捜査分野
歴史文化遺産および伝統を損ねる、公序良俗に反する投資事業
・歴史および国家文化遺産の域内で建設する案件および建築と景観に悪影響を及ぼす案件
・風俗品および迷信を招く物品の製造
・危険な玩具、人格形成および健康に悪影響を与える恐れのある玩具などの製造
・売春および女性、児童の人身売買
生態環境を損ねる投資事業
・国際条約に定める化学品の製造
・ベトナムで禁止されている、または使用されていない獣医薬品、植物薬品の製造
・ベトナムで禁止されている薬品、ワクチン、バイオ医療製品、化粧品、化学薬品、殺虫剤の製造
有害廃棄物処理にかかわる投資事業
・ベトナムへ有害廃棄物を持ち込み処理する案件、有毒化学薬品を製造する案件、国際条約において使用が禁止されている有毒化学薬品を使用する案件
[ 条件付投資分野] 内資・外資共通
- 国防、国家安全に関する分野
- 金融、銀行業
- 文化、情報、新聞、出版
- 娯楽産業
- 天然資源の採掘、生態環境保護
- 教育、訓練事業
- 法律により定められるその他の分野
- 国際条約に定める分野
外資のみ対象
・放送、テレビ放映
・文化的作品の制作、出版、配給
・鉱物の探査および開発
・長距離通信およびインターネットの設置およびサービス
・公共郵便網の建設、郵便および宅配サービス
・河港、海湾、空港の建設および運営
・鉄道・航空輸送、海上・水上輸送、旅客輸送
・漁獲
・タバコ製造
・不動産業
・輸出入および運輸業
・病院、診療所
・国際条約において外資への市場開放を制限しているその他投資分野
■出資比率による規制
2007 年のWTO加盟に伴い、WTOサービス分類による12 の分野のうち11 の分野において、市場開放することを発表しました。開放される分野は、①法律、会計、監査、税務、コンサルティングサービ ス、②情報通信などのコミュニケーションサービス、③建設サービ ス、④卸売、小売、フランチャイズなどの流通サービス、⑤教育サー ビス、⑥汚水廃棄物処理などの環境サービス、⑦保険、銀行、証券な どの金融サービス、⑧病院などの健康関連サービス、⑨ホテル、旅行 業などの観光サービス、⑩娯楽サービス、⑪海上、航空、鉄道、道路 などにおける運送サービス等であり、段階的な市場開放が行われてい ます。
建設関連サービスや、流通サービス(卸売、小売、フランチャイ ズ)などでは既に100% 外資による進出が可能となっています。
WTO公約による出資比率の規制および今後の外国企業への市場開放のスケジュールは次のとおりです。
■資本金に関する規制(内資・外資が対象)
外国企業がベトナムに会社を設立する際の資本金は、一部の分野を除き、原則自由に設定することができます。ただし、分野によっては規制があり、具体的には次表のとおりになっています。上記分野でなければ、最低資本金額のルールはありません。ただ し、実務上、資本金ゼロでは投資許可を取得できません。また、資本 金額が親会社の保有する現預金額を上回っていると当局より指摘を受 ける可能性があります。
上記分野でなければ、最低資本金額のルールはありません。ただ し、実務上、資本金ゼロでは投資許可を取得できません。また、資本 金額が親会社の保有する現預金額を上回っていると当局より指摘を受 ける可能性があります。
■その他規制
■外国企業の土地所有に関する規制
ベトナムでは、土地は国民の共有財産であり、国有のものとされています(民法205条、憲法17条)。国は原則として、ベトナム国籍を有する個人・法人に土地使用権を付与しています。
したがって外国企業は、進出するに当たり土地を所有することは認められず、ベトナム政府から土地を賃貸する形となり、それに応じた使用料、賃貸料を支払うことになります。2007年12月6 日付財務省発行のCircular(14 5/200 7/TT-BTC) および2010年1月8 日付Circular(0 2/201 0/TTLT-BTNMT-BTC) に従い土地、水面、海面の使用料を算定し、賃貸料を支払う必要があります。
■外国企業の借入に関する規制
ベトナムで事業を行う場合、ベトナム国内にある銀行、また親会社 等の海外からの借入をすることもできます。利用目的等には規制があ ります。
[ベトナム国内で借入をする場合]
ベトナム国内で借入をする場合、①ベトナム国内銀行から借入をする方法と、②外資銀行から借入をする方法があります。
ベトナム国内銀行からは、ドン建での借入をすることができます。一方、外資銀行から借入をする場合は、ドン建・外貨建どちらでも借入をすることができます。しかし、外貨建で借入をする場合には、利用目的に制限があり、海外からの輸入・サービスに対する支払資金、ベトナムから外国への投資資金、対外債務の期限前返済資金などの用途に限られています。輸入の場合、ベトナム製造品や商品の海外への輸出目的、短期的な国内資金の需要から輸出売上で得た外貨で十分返済が可能な場合に限られています。輸出の場合、ベトナム国内需要に役立てる目的で、製造や販売活動のために購入する輸入物品やサービスの代金の支払いの資金とか自身の事業活動で得た外貨を用いて、十分返済が可能な場合に限られています。また借入の申請には、必ず担保もしくは保証書を提出する必要があります。
[ベトナム国外から借入をする場合]
一般的に親会社等の関連会社から、運転資金等を補てんするために親子ローンが行われます。このような海外からの借入をする場合、ベトナムでは、その借入期間によって規制の内容が異なります。
1年以内の短期借入
1年以内の短期借入による資金は、経常口座に必ず入金しなければならず、その用途は、運転資金に限定されます。この場合、ベトナム中央銀行への事前申請は不要となります。
1年超の中長期借入
借入期間が1年を超える場合には、借入の都度、ベトナム中央銀行に事前申請を行い、借入登録証を取得しなければなりません。申請書類は、申請書に加え、投資証明書の写し、借入契約書の写しなどが必要です。
また借入れる資金は、資本金口座もしくは借入金専用口座を開設して、経常口座と区分して入出金管理をしなければなりません。
前述したとおり、外国企業に対して多くの業種が開放されましたが、法律の定義があいまいであること、法律と実態が異なることなどから、不透明な点が残ります。
■主な注意点
ベトナムでは、法律上、外国資本の規制に該当しない分野への投資であっても、実務上、規制がかかっていることもあるため、進出の際は、専門家に十分に相談する必要があります。
また、外国企業が投資許可証を取得する際に、事前に知っておくべきその他の主な注意点としては、下記のものがあります。
親会社の実績に左右される
ベトナムで投資許可証を取得する際、ベトナムで始めようとしているビジネスの親会社での実績が非常に重要になり、親会社の定款の事業目的にベトナムで予定している事業が記載されている必要があります。たとえば、ベトナムでITのソフトウェア開発の投資許可証を取得したい場合は、その親会社の定款の事業目的にITソフトウェア開発が記載されている必要があります(またはそれに近い事業目的)。
また、親会社の定款に記載されていたとしても、業種によっては、親会社の実績を示すために取引先との契約書、請求書や写真などの根拠を示す追加書類を当局より求められることがあります。こういった
追加書類を求められると手続が大幅に遅れてしまうこともあります。
流通分野は投資許可証の取得が困難である
流通分野(卸売、小売)に関しては、商務省令(10/2007/QD-BTM)によって2009年1月1日から100%外資による小売業への進出が可能になったにもかかわらず、投資許可証を取得するのが困難な状況にあります。特に2店舗目以降の開設許可についてはエコノミックニーズテスト(ENT)と呼ばれる審査を通過しなければならず、この審査手続に不透明な部分が残されており、外国投資を難しくしています。ただし、2013年6月7日から施行された外国企業の商品売買活動のガイドラインである通達(08/2013/TT-BCT)により、500㎡未満の店舗のENTは廃止されました。しかしながら法律と実態が異なるので、実際に許可が取れるかどうかは不透明な部分が残ります。
飲食店は外資規制の対象
飲食店に関しては、2015 年1 月11 日以降外資100% での投資に対する規制が撤廃されています。外資100%での投資に対する規制が撤廃されてからは特段の制約なく外資100%での飲食業への進出が認可されています。現在はマクドナルドも、5 年前に比べると少しずつ増えて、ベトナムにおいては22 店舗まで増えています(主にホーチミンにて)。その他、ピザハットやロッテリアやKFC などの外資チェーンもあり、それぞれ増え続けています。2015 年時点では、ベトナムの日本食レストランは770 件ほどでしたが、2020 年には約1,500 店となり、5 年間で約2 倍になったと言われています。
ベトナム国内販売をするためにはHS コードを取得する必要がある
ベトナム国内で販売するためには、HSコード(輸出入統計品目番号)と呼ばれる商品コードの登録が必要となります。このHSコードの中で、ベトナム政府が取得困難な品目を指定しています(商務省令1380/QD-BCT)。これらは外国資本にとっては取得が困難となり、事実上の国内販売の規制となります。
実務上の最低資本金
資本金額の設定のない業種は原則自由に資本金を設定することが可 能となっていますが、実務上、業種によってはある程度の資本金を用 意する必要があります。たとえば輸入販売をする場合は、最低30 万USドルほどの資本金を用意する必要があります。これも法律ではな い事実上の規制となります。
■投資インセンティブ
ベトナムでは、国の発展に寄与すると考えられる業種、あるいは投資地域によって、法人税、関税、土地使用料の減免等の優遇措置を定めています。
ベトナム進出に当たって優遇措置を受けるためには、投資案件が、共通投資法および政令によって定められる①奨励投資分野あるいは②奨励投資地域のいずれかに該当しなければなりません。
このいずれかに該当する場合には、共通投資法および関連法規により定められる優遇措置の恩恵を受けることができます。
■優遇制度を利用するための要件
[奨励投資分野]
共通投資法27条において8つの奨励投資分野を定めており、これらの分野に投資すると優遇措置の対象となります(共通投資法31条)。
1新素材、新エネルギー、ハイテク製品、バイオテクノロジー、IT、機械製造
2農林水産品の養殖および加工等
3ハイテク先端技術、自然環境保護、科学技術の研究開発
4労働集約型産業
5インフラ整備および大規模プロジェクト
6教育、訓練、医療、スポーツおよびベトナム文化の発展
7伝統産業の発展
8その他の製造業、サービス業
これらの奨励分野の詳細は、共通投資法施行細則(DecreeNo.108/ND-CP)の付録1に、特別奨励投資分野(リストA)と奨励投資分野(リストB)に分けて、リストA26業種、リストB53業種が次のように記載されています。
[奨励投資地域]
共通投資法28条において、①社会経済的な条件が困難な地域(奨励投資地域)、②社会経済的な条件が特に困難な地域(特別奨励投資地域)、③工業団地・ハイテク区・輸出加工区・経済特区、の3つを奨励投資地域として規定しています。
なお、①②については、共通投資法の施行細則(DecreeNo.108/ND-CP)の付録2に記載されています。
■優遇制度の内容
[法人税の優遇税率]
共通投資法施行規則25条により、法人所得税に関する優遇の内容は、法人税法に従うことになります。
法人税法は、2009年より改正法人税法が適用開始となっています。改正法人税法に規定される投資のインセンティブとして、奨励投資分野、奨励投資地域に進出する企業に対して、法人税の優遇税率10%または20%が適用されます。
そのうち、要件を満たす投資分野、投資地域に対する投資については、免税期間が付与され、さらに免税期間終了後の減税の恩恵を受けることができると規定されています。
法人税法の施行ガイドラインNo.123/2013/TT-BTCdated27/07/2012によると、次表のように優遇措置が定められています。法人税の軽減税率の適用期間は営業開始後すぐに開始されます。一方、免税期間は課税所得が発生した年度から適用されます。また免税が適用される投資プロジェクトについて、免税期間終了後に与えられる減税期間中は、当初の法人税率から50%の減税を受けることができます。
[輸入関税の優遇措置]
ベトナム輸出入関税法により、ベトナムの国境を越えて輸出入の許可を得た物品は輸出入関税の対象となります。ベトナムの関税については、標準課税、優遇税率、特別優遇関税率がありますが、共通投資法施行規則に定められる奨励投資分野、社会経済的な条件が困難な地域への投資やその使用目的、または物品の種類によって関税が免除されます。下記に輸入税が免除される例を挙げます。
・貿易フェアや展示会出品のため、一時的に輸入され、再度輸出されるもの
・委託加工契約のもと、輸出加工用に輸入された物品(原材料、生産や加工工程での必需品、加工品サンプルとして使用されるもの、加工のため使用される機械・設備等)
・特別奨励投資分野、奨励投資分野、または社会経済的な条件が特に困難な地域、社会経済的な条件が困難な地域への投資プロジェクトやODAプロジェクトについて、固定資産形成のために輸入された物品(設備・機械、科学技術省より認可を受けた技術ラインなどで使用される特殊な輸送用手段、労働者の移動用機器、それら設備・機械の部品・原材料、ベトナムで生産できない建設資材等)
・BOT企業やそのサブコントラクターによって輸入される物品
・石油ガス事業のサービスのために輸入される物品(設備・機械、石油ガス事業に必要なベトナムで生産できない供給品、医療機器、事務機器など)
・科学研究や技術開発活動で直接使用するために輸入される物品
(ベトナム国内では生産できない機械・設備・部品・供給品・輸送手段、科学的資料、書籍、新聞、雑誌、関連する電子情報源)
・特別奨励投資分野または社会経済的な条件が特に困難な地域へのプロジェクト、機械・電気電子部品の製造プロジェクトにおいて、生産のために輸入される原材料、供給品、部品は、輸入関税が生産開始から5年間免除※
・奨励投資分野のプロジェクトの生産のために輸入される、ベトナム国内では生産できない原材料、供給品、半製品は、輸入関税が生産開始から5年間免除。また、特別奨励投資分野または社会経済的な条件が特に困難な地域へのプロジェクトの生産のために輸入されるがベトナム国内では生産できない半製品については、輸入関税が生産開始から5年間免除
・給水装置、空調設備、消防用設備、ゴミおよび排水処理装置、輸送システム、店舗用ランドリーシステム、災害時警報装置、医療機器、現金自動預払機等、DecreeNo.87/2010/ND-CPの付録2に定められる物品の輸入については、初回輸入時のみ関税は免税
※DecreeNo.87/2010/ND-CPによると、奨励投資分野、もしくは社会経済的な条件が困難な地域への投資について、自動車、オートバイや、エアコン、ヒーター、冷蔵庫、洗濯機といった家電製品等の製造のための原材料の輸入について、5年間の関税免税は適用されなくなった
出所:輸出入関税法、DecreeNo.87/2010/ND-CP、国際協力銀行「投資環境レポート」等により作成
[土地使用に関する優遇措置]
共通投資法36条では、土地使用に関する優遇措置が規定されています。通常の投資プロジェクトの使用期間は、50年以内と定められていますが、投資額が大きく投下資本の回収に時間がかかるプロジェクト、および社会経済的な条件が困難な地域、社会経済的条件が特に困難な地域への投資プロジェクトは、50年を超える利用が必要な場合に限り土地の使用期間を70年まで延長することができます。
また同法では、土地使用権の期間が終了しても、投資家が土地法の規定を遵守し、かつ引き続き土地使用を希望する場合は、政府によって承認された土地使用計画に基づいて土地使用期間を延長することができるとされています。
さらに、DecreeNo.44/2008/ND-CPによると、奨励投資分野および奨励投資地域への投資プロジェクトについて、土地使用料の減免措置が定められており、要件に応じて20~100%の減免を受けることができます。各要件の定義は、共通投資法等の規定に従うものとされています。
ベトナムの工業団地
■ベトナムの工業団地の現状
工業団地とは、工業用の工場をバランスよく配置するために分譲された土地のことをいいます。団地内は、道路、排水路、洪水防止システム、電気、水道、電話といったインフラが整備されています。また、工業用のエリアのほかに、中央廃水処理施設などの公共施設、場所によっては、郵便局、銀行、ショッピングセンター、ガソリンスタンド、労働者の宿舎も整っています。
ベトナムでは、ハノイ周辺の北部、ホーチミン周辺の南部に工業団地が集中しており、製造業が海外に進出する際、まずは工業団地に入居するのが一般的です。現在ベトナムには300ほどの工業団地が林立しており、日系の工業団地も数多くあります。日系の工業団地はローカルの工業団地と比較すると、不動産賃借料等のコストは高いですが、インフラ設備・サービスの面ではかなり充実しています。特に日本人スタッフが窓口となって、会社設立から各種申請、工場操業までをサポートしてくれるので、初めて海外進出をする企業に人気があります。また、工業団地の中には、団地内の日本企業による日本人会を作り、従業員の賃金・待遇といった情報を共有しているところもあります。ベトナムでは一時期、従業員によるストライキが頻発していましたが、団地内での情報の共有は、ストライキを未然に防ぐことにも役立っています。
■主な日系工業団地
工業団地選びの成功の秘訣は、ロケーション、インフラ設備・サービス、コストがポイントとなります。ロケーションに関しては、部品の搬入、道路の広さ、交通状況などに加え、特に輸出入の多い企業は港や空港までの距離を考慮する必要があります。物流面のインフラが十分とはいえないため、通関や交通渋滞などで想定以上に物流に時間がかかることがあります。また、ベトナム人は、自宅から勤務先への通勤時間を重視する傾向があります。従業員採用が売り手市場であり、特に管理者クラスの不足が深刻な労働市場では、進出予定地域の通勤圏の労働供給力を把握しておく必要があります。
インフラ設備については、電力供給、上下水、工業用水、通信設備、居住用の団地の有無などが重要になります。サービス面においては、日本語対応が可能か、会社設立、工場建設に対してサポートが充実しているかどうかが決め手になります。日系工業団地は、インフラ設備・サービス面でかなり充実していることもあり、入居契約率が高くほぼ満室です。
一方、ベトナム資本の工業団地は不動産賃貸料が安いのが魅力ですが、インフラ設備・サービスの面において、日系工業団地と同様のサポートを受けるのは難しいのが現状です。
コスト面においては、工業団地への投資は決して安くないことを覚えておく必要があります。工業団地への投資は、賃貸料が発生するのはもちろんのこと、日本から製造設備を持ち込む必要があるため、費用における減価償却費の比率が相対的に高くなります。それを低賃金でカバーできなければ、採算が合いません。最近は低コストで入居できるレンタル工場もあり、初期投資を抑えたい中小企業から注目されています。採算を合わせるためには低コスト運営と慎重な事業計画を作成する必要があります。
工業団地の選定は、業績に直接影響しますので、以上のことを鑑みて慎重に意思決定をする必要があります。
■主な工業団地
以下にベトナムの主な工業団地とそれぞれの地図について記載します。なお、表中の番号は後出の地図(北部工業団地、南部工業団地)の番号に対応しています。
■地区別工業団地情報
[北部工業団地]
北部地域には、日系工業団地のほか、外資系、地場系の工業団地をあわせると、50カ所以上の工業団地が存在します。
日系の工業団地では、住友商事系のタンロン工業団地、野村グループ系のハイフォン工業団地等があります。近年は道路網の整備も進み、ハノイ北西に位置するビンフック省や、国道18号が通るバクニン省、フンイエン省やハイズオン省など、ハノイ中心部から少し外れた幹線道路沿いの工業団地への進出が増加しています。
【タンロン工業団地】
ハノイ市中心部から北西へ16㎞、ノイバイ国際空港からハノイ市内に向かう途中のドンアン地区にタンロンⅠ工業団地があります。
この工業団地は、住友商事株式会社とベトナム建設省管轄の国営企業であるDongAnhMechanicCompanyとの合弁によって設立されました。2001年完工の第1期から第3期までの3回にわたり販売されましたが、2008年までには完売するほどの人気を博しています。
2013年10月現在、入居企業数は106社で、そのほとんどをキヤノン、パナソニック、デンソー、TOTO、ヤマハなどの日本企業が占めています。ノイバイ国際空港からハノイ市内へ向かう途中の国道3号線に沿って建ち並び、道路からでもパナソニックやヤマハ等の巨大な工場を見ることができます。
この工業団地の魅力は、電気・ガス・水道・排水路などのインフラ面が充実していることです。また、ハノイから16㎞と近い距離にあるため、質の高い労働者の確保が容易であるといった利点もあります。工業団地の入り口には、求人募集の掲示板がありますが、いつもたくさんのベトナム人が求人情報を確認しに訪れています。
そして、工業団地の管理棟には、日本人スタッフが常駐しており、運営面の充実や、自治体または政府との調整等のサポートサービスがあることも日本企業に選ばれる理由となっています。
さらに、ハノイ中心部から南に約33㎞、時間にして約45分のところにあるフンイエン省にタンロンⅡ工業団地が開発され、第1期開発分の販売では、京セラ、HOYA、豊田自動織機、信越化学工業等が入居し、空きは残りわずかとなっていて、日系工業団地の人気の高さがうかがえます。同工業団地は国道5号線沿いに立地し、ハイフォン港まで82㎞と物流の面で利点があります。現在は第2期開発が行われています。
[南部工業団地]
ベトナム南部には、多くの貿易港があり、港湾から工業団地までの距離が近いという特徴があり、国内最大の貨物取扱量を誇っています。そのため、輸出加工区や工業団地に多くの製造業が進出しています。地域別に見ると、ホーチミン、ドンナイ省、ビンズオン省に南部全体の約6割が集中していて、主要幹線道路である国道1号、13号、51号沿線に多くの工業団地が立地しています。
近年は、ホーチミン近郊の工業団地は飽和状態になっており、新たな工業団地の建設も少なくなっています。そうしたこともあり、ホーチミンから少し離れた地域では、工業団地の開発が進んでいます。
ホーチミンから北に車で1時間程離れた場所にあるビンズオン省では、ミーフック工業団地に代表されるように、特に食品関連企業の進出が目立っています。以前は、ホーチミン郊外の田舎町という印象もありましたが、既に約30カ所の工業団地が立地しており、それに伴い、サービス業の誘致も積極的に行われ、都市開発が進んでいます。
ドンナイ省では、30を超える工業団地があり、日系では伊藤忠商事が出資するアマタ工業団地や双日等が出資するロテコ工業団地、ロンドウック工業団地等があります。新しい工業団地の建設も行われていますが、空きがでている工業団地等では、工場で働く人々の利便性を向上させるために、都市開発や、工業団地の近くに住宅地を計画するなど、インフラの充実を図っています。2011年からは、工業分野でハイテク産業や裾野産業、農業分野ではバイオ応用技術、サービス分野では港湾、ロジスティック、医療、観光産業の誘致を重点的に行っていく方針を打ち出しています。ホーチミン東部に隣接していて、石油生産が盛んなバリアヴンタウ省では、大型船が着港できるカイメップ・チーバイ港が整備され、シンガポールや香港、台湾といった中間港を経由して積み直しをする必要がなくなり、この地域の大きな優位性を確立しました。新しく建設されているロンタイン国際空港へのアクセスも容易にできる場所にあるミースアンA工業団地は、誘致に積極的であり、多数の企業が視察団を派遣するなど、注目を集めています。また、ホーチミン市とロンタイン空港を直結する高速道路が開通することもあり、バリアヴンタウ省での工業団地開発は今後さらに進むと予想されます。
【ロンドウック工業団地】
ロンドウック工業団地は、ベトナム経済の中心地ホーチミン市郊外に位置する大型工業団地です。双日がこれまで培ってきたノウハウを結集し、企業のニーズに応える壮大な開発計画を推進しています。
ホーチミン市街地より約40㎞、車で約50分(2014年末開通予定の南北高速道路HCM-ロンタイン間全線開通後は車で約40分)。大型船寄港可能なカイメップ・チーバイ港まで40㎞、車で60分(2011年に4港開港、2013年までにさらに7港開港)、ベトナム南部最大港であるカトライ港まで約30㎞、車で40分。
2020年に開港予定のロンタイン国際空港から約14㎞、車で20分と抜群のアクセスに加え、なだらかな丘陵地帯に位置しているため、地盤も堅固であり、製造拠点として最適のロケーションにあります。
日本企業が事業主体の8割強をシェアする工業団地であり、日本企業を中心に誘致する予定です。
常駐の日本人スタッフによる各種申請関係のサポートをはじめ、ITサービス、天然ガス供給、人材紹介サービス、ケータリングサービスをはじめとした操業開始後の付帯サービスも充実しています。
また、電力・上下水道などの基幹インフラも「日本品質」で整備しており、安定的なインフラ供給が望めます。さらに、早期の生産開始、初期投資を抑えた進出が可能なレンタル工場も用意しており、広さも約500~1,000㎡と日系中小企業に最適な規模となっています。
参考文献
・JETRO
・国際機関日本アセアンセンター
・THE MINISTRY OF FINANCE
・General Department of Customs‘VIETNAM CUSTOMS’
・ベトナム統計局
・ベトナム法務局Bloomberg
・Viet Jo
・みずほ銀行『ベトナム投資環境2019年4月』JBIC『ベトナムの投資環境2017年8月』
・Luat Vietnam『Tổng hợp mức lương cơ sở qua các năm』
・GlobalCompetitivenessReport2018
・ベトナム財務局
Q&A
■Q ベトナム経済は今後伸びますか?
■A 経済成長率は鈍化していると言われることもありますが、まだ伸びると言えるでしょう。未だに法律の面で不明確な点が多く残るベトナムでは、ほかのアセアン諸国(シンガポールやタイなど)と比べると、ビジネスのやりづらさを感じる傾向にあります。とはいえ様々な点で改善点がある国なのでまだ伸びしろはあります1995年に投資第1ブーム、2000年前半にはチャイナプラスワンによる投資第2ブーム、WTO加盟などによって2010年以降にも投資第3ブームが来ました。現在も法的規制緩和やアメリカと中国の貿易摩擦による中国情勢の不安、工業国を目指しているベトナム国の後押し等様々な理由が重なり、まだまだ投資は続いていく模様です。そして、中間所得層も増えてきて、少しずつ「安価な品」や「量」より「質」を求める時代にも入ってきていると思います。
■Q アセアンで言うとベトナムはどのような立ち位置にいますか?
■A 「海のアセアン」と「陸のアセアン」があります。経済の発展で言えば海のアセアンの方が進んでる傾向にあります。そしてベトナムは陸のアセアンです。つまり、アセアンの中では経済発展がどちらかというと遅れた国ともいえるでしょう。この陸のアセアンにはカンボジアやラオス、タイやミャンマーなどがあります。この陸のアセアンの中でもベトナムは特にラオスとは殖民地からの独立のための協力関係があったことで関係は良好だと言われています。ベトナムはラオスの海運の経路になったり、タイからの運送の効率を上げるためにタイと共に水平分業を成し遂げたりと、 アセアン他国との密な結びつきによって経済効果発展にも貢献しています。またアセアンの中ではシンガポールが特に投資をしている国でもあるでしょう。先に発展した国からの視点からするとまだまだ伸びていく国だと期待されている証拠でもあると考えられます。
■Q 今後伸びそうな産業は何がありますか?
■A 中間所得層が増えてきて、よりよいものを求めることや、将来の投資をする人も増えてきているので、インフラ開発、農水産業、サービス業、金融業等がこれからも質の改善をしながら伸びていくことはまちがいないでしょう。ベトナムを拠点にして国へというよりも、ベトナムの国内向けのビジネスに力を入れている傾向にあります。
■Q ベトナムへの進出の際にはどんなところに相談するほうがいいですか?
■A 今では無料で情報が入る時代なので、JETOROやベトナム大使館、外務省等が出している情報で下調べをすることも可能です。あるいは、弊社の出版しているような書籍も多数ありますので、これらを参考にするのもよいでしょう。こうした上で、ベトナム進出をサポートしているコンサルティング会社に相談することや、思い切って現地に足を運び生のベトナムを見学されることも有効です。現地のコンサルティング会社では面談や有料ですがアテンドのサービス等もやっているので、場合によっては利用してみるのもよいかと思います。最終的に進出を任せる際にはローカルコンサルティング会社と日系コンサルティング会社がありますが、それぞれの費用対効果を見極めて、最終的にどちらに任せるかを判断されることをお勧めいたします。
■Q ベトナムへの投資とビジネスで一番懸念される点はなんですか?
■A まずは、法律への対応や税金への対策が必要となることは言うまでもありません。信頼できるパートナーを見つけ、本業に集中できるように、サポートしてもらうことが賢明だと考えます。また会計担当等も必要になってきますが、設立当初の会計スタッフが自社に採用できない場合には、外部に委託するケースが多く見受けられます。そして今後懸念される点としては、人材のマネジメントでしょう。低賃金国を目指して、勢いに乗って進出をしてきた外資系企業はたくさんありますが、今後は人材の管理に悩む時期が来ます。人材のマネジメントの問題で懸念される代表例としては、賃金管理です。ベトナム経済の中でも起こりつつある賃金の上昇している現在、低賃金の人材力に任せて人を採用することが難しく、闇雲に採用することは危険とも考えられます。将来の賃金上昇のリスクを見越して、人事評価制度の導入をし、マネージャーという人による管理ではなく仕組みによる管理を徹底する企業も見受けられます。
■Q ベトナム人人財に投資する際に、どのようなことに懸念するべきですか?
■A 実際にベトナム人で働くベトナム人の特性には注意が必要です。日本人と似ている特性があるとはいえ、それを完全に信じてはいけません。代表例でいえば、よく勤勉といわれます。しかしながら日本人が頭に思い浮かべる勤勉の定義には程遠いかもしれません。確かに言われたことをやる傾向にはあります。しかしながら、創意工夫が苦手な傾向にあります。また協調性はあまりなく、報連相は苦手であり、時間にルーズであることや、短期的な思考の人が多いなどの傾向も見受けられます。ただ、悲観する必要はありません。個人レベルでは優秀な人材は多く、若い人材を長期的な目線でじっくり育てていくことで、より優秀な人財に育っていくポテンシャルをベトナム人は備えています。ただし、ベトナムでは特に、中間管理職になれる人財の不足の問題はありますので、長期的に社員に働いてほしい場合、特にマネージャーになれる人材をよく見極めて採用する必要があります。