労務
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労務
+ .1 .労働環境
労働環境の概要
■ 就業人口
ブラジルの人口は2億1,332万人(IBGE ブラジル地理統計院 2021年推計値)であり、そのうち生産年齢(15歳から64歳)までの人口の割合は、2021年時点で69.88%となります。
■ 産業別就業人口
就業者の就業構造を産業別にみると、卸売・小売業、自動車及びオートバイ修理業(15,581万人))が18.7%と最も多く、製造業(967万人)が11.4%と続きます。不次いで、農林水産業(819万人)が9.7%、教育(610万人)が7.2%となっています。
ブラジルでは高学歴化が進んでおり、2003年から2008年までの5年間の学歴別の就業者数の変化をみると、次の2つの傾向がみられます。
1つは小学校を卒業していない労働者の絶対数が減っているという傾向と、もう1つは高校卒業者の絶対数が増えているという傾向です。結果として小学校卒業未満が50%から40%に減少し、高校卒業者が25%から32%に増加しています。大学学部卒業以上の労働者数も同期間に7.8%から10.2%に増加しています。
ただし、ブラジルの教育水準は他国と比べても特段高いわけではなく、一定以上の教育水準に達した労働者を雇用するようになったものの、依然として労働者の質の管理に注意が必要です。
■ 失業率
ブラジル地理統計院(IBGE)の発表によると、2024年第二四半期(4~6月)の失業率は第1四半期(1~3月)の失業率より1ポイント下がっており、失業者の数は約750万人となっています。
一方で、4~6月期の被雇用者数は約1億183万人(前期比で1.6%増)となり、2012年の統計開始以来、最多の結果となりました。
また、下のグラフからも見て取れるように、失業率については、減少のトレンドとなっています。
ブラジルの失業率の傾向
参照:Dashboard of Indicators | IBGE
■ 賃金比較
サンパウロの月額賃金水準を周辺の南米諸国と比較してみると、ワーカークラス、エンジニアクラス、中間管理職のすべての職位において、最も高い水準であることがわかります。
【周辺諸国との月額賃金水準比較(単位:USドル)】
都市 | ワーカー(製造) | エンジニア(製造) | 中間管理職(製造) | 一般スタッフ (非製造) | 営業スタッフ (非製造) | マネージャー(非製造) |
サンパウロ | 567 | 3,221 | 3,921 | 619 | 712 | 3,619 |
ブエノスアイレス | 749~1,098 | 2,577~3,137 | 3,247~4,313 | 852~1,152 | 852~1,152 | 4,058~5,374 |
サンティアゴ | 1,270 | 3,089 | 6,491 | 1,203 | 1,817 | 6,491 |
リマ | 509 | 819 | 2,454 | 540 | 991 | 3,289 |
メキシコシティ | 406 | 1,804 | 7,119 | 1,660 | 1,619 | 6,407 |
出所: JETRO投資コスト比較(2023年)より作成
ブラジルの賃金は、勤続年数に応じて上昇する仕組みとなっているケースが多いため、計画的な雇用が重要となります。ジョブ・ホッピングの傾向が強く、優秀な人ほど他の会社に移るリスクも高くなります。雇用に関して、ブラジルは欧米に近い発想を持っています。 雇用契約が終了することに抵抗はあまりなく、就職は次のキャリアを見越しての手段ととらえる傾向にあります。
そのため、自社にいることのメリットは何かを明確に提示し、キャリアプランや教育の仕組みを構築する等、優秀な人材の囲い込みを行う必要があります。
また、ブラジルでは 労働組合の影響力が強く、会社が昇給を自由に決定することが難しくなっており毎年の労使交渉によって昇給率等が決定されるケースが多くあります。特に産業別の 労働組合が主張する昇給率が労使交渉のベー.として多大な影響を与えるため、自社の経営成績が思わしくない場合でも、産業全体が好調であれば、他社の水準と同様の昇給を余儀なくされます。
更に、ブラジル特有の給与体系として、クリスマス手当というものがあります。従業員に対して年間で月給の13カ月分の給料を支払うことが義務付けられており、月給の他に最低1カ月分をクリスマス手当として支払います。クリスマス手当は2回に分けて支払うこととされ、1回目の支払いは2月1日から11月30日までに、2回目は12月20日までに支払いを行う必要がございます。
労働組合と労働争議
ブラジルでは労使間のトラブルが多いといわれています。主な原因として、ブラジルでは労働者の権利を重視、保護する傾向が強く、労働者に有利な法整備となっていることから、他国と比べて従業員が労働者の権利を主張しやすい点があげられます。
■ 労働組合等
ブラジルの労働組合は業種別に構成されており、各社の事業内容によって従業員が加入する組合が変わってきます。また、従業員を対象とした組合だけでなく、雇用者側にも組合が存在し、加入することができます。 労働組合の構造は、下部組織から順に「組合」、「連盟」、「連合」から成り、連盟は5つ以上の組合が集まった組織体を、連合は3つ以上の連盟が集まった組織体を指します。連盟は通常州単位、連合は連邦単位の業種別組合です。これらの組織体はブラジルの労働法に定められています。
その一方で、中央統一労働組合(CUT:Central Única dosTrabalhadores)、中央総労働組合(CGT:Confederação Geral DosTrabalhadores)、 労働組合の力(FS:Força Sindical)、独立労働組合ユニオン(USI:Uniao Sindical Independente)などの全国労働組合が存在します。これらは法令で定められた組織ではなく、あくまで自主的な団体ですが、ほとんどの組合がいずれかの組織に加盟しており、特にCUTは全国組織として政権政党である労働者党(PT:Partido dos Trabalhadores)に強い影響力を持っています。
■ 労働争議の発生状況
日本とブラジルの労働慣習の差異や、法律で具体化されている労働者権利の相違から、日本人経営者にとっては思わぬところでブラジル人労働者と紛争になるケースがあります。特に、勤務時間やブラジル人労働者への指導、解雇をめぐる問題がトラブルの原因となりやすく注意が必要です。
■ 労働争議解決の手続
ブラジルには、労働者と雇用者の間の紛争を解決するための特別裁判所として、労働裁判所が設置されています。 統一 労働法(CLT:Consolidação das Leis do Trabalho)は労働者を弱者、雇用者を搾取者とみなしており、労働訴訟においても労働者と雇用者の力の非対称性に着目して、労働者の権利が保護されるように裁判をすすめます。そのため、雇用者側に立証責任が課され、労働者に有利な判決が出される傾向があります。
個人が労働訴訟を起こす場合、労働裁判官が第一審となり、次いで労働地域裁判所、最後に労働高等裁判所での判決となります。訴訟の数が裁判官の人数より圧倒的に多いため、ブラジル裁判制度では訴訟の遅れが問題点としてあげられます。その問題解決のために、裁判制度外の組織である事前仲裁委員会による仲裁を受けるという仕組みが作られています。
労働紛争となった場合、あるいは労働紛争に発展する可能性が高い場合は、雇用者側は労働問題に詳しい弁護士と相談しながら、十分な証拠を用意して万全の態勢で訴訟に臨むように留意する必要があります。
雇用慣行と労務管理
■ 福利厚生
ブラジル人労働者を雇用する場合に、雇用者が一般的に支給する法定外の諸手当は下表の通りとなります。控除項目としては、個人所得税や 社会保険負担の算定基準から控除されるものがあります。また、
下表以外についても労使間の協約により、雇用主に支給が求められる場合があります。
ブラジルの雇用コストは、一般的に賃金以外の労務コストが総支給額の70 ~ 100%であるといわれています。福利厚生費として、安全担当推進者の設置と、医者の常駐などが法定の項目として定められています。
前述の通り、賃金は毎年産業別組合の決めた昇給率を前年の賃金に適用して決定され、原則として賃金の引下げは認められていません。
このような特殊な賃金設定環境にあるため、企業によっては従業員の採用計画を短期で設定し、一定以上賃金が上昇した従業員については雇用契約が終了した時点で解雇し、次の従業員の採用を行い、人員の循環を徹底して行うことにより賃金の上昇を抑えているケースも見られます。ブラジルでは就職は次の段階へのキャリアアップと考える傾向が強いため、雇用契約が終了することに対する抵抗はあまりありません。
+ .2 .労働法
労働基準関係法令
ブラジルの労働法である 統一 労働法(CLT)は、正式には 労働法集成といい、新しく法典として編纂されたものではなく、主として1930年代から1940年代始めに制定された労働者保護法規をひとつの法律にまとめたもので、1943年5月1日に公布され、以降頻繁に改正が加えらてきました。
統一労働法の特徴は、「労働者保護」の傾向が強いということです。
このことからブラジルでは労使間におけるトラブルが頻繁に発生します。その際には、労働法を専門とする弁護士に相談の上、解決することが望ましいでしょう。
■ 労働法の基本原則
統一労働法を理解するためには、以下の原則を把握しておく必要があります。
・ 労働者保護優先の原則
・ 労働者の権利放棄無効の原則
・ 事実優先の原則
・ 雇用関係継続の原則
[労働者保護優先の原則]
前述の通り、ブラジルの統一労働法は労働者保護の傾向が強くありますが、特に以下の観点において、労働者保護を優先させる原則がみられます。
「疑わしきは労働者の利益に」の原則
労働法の適用に当たって疑義が生じるときは、労働者の利益になる解決が優先されます。
労働者有利な条件尊重の原則
法改正や新法の施行があっても、労働者に有利な既得権は揺るぎません。
法律のヒエラルキー無視の原則
異なる法規に異なる規定がある場合、労働者に有利な法規が適用されます。憲法で保証されている年間30日の有給休暇の規定と異なり、労働協約で45日間の有給休暇を定めればこの協約が優先されます。
法文の解釈における労働者の利益優先の原則労働法の規定が明確でない場合、労働者に有利に解釈されます。
[労働者の権利放棄無効の原則]
労働法に明示される例外規定がある場合を除き、労働契約による労働者の権利の放棄は無効であるという原則があります。これは、労働契約の中で、 労働法を下回る労働条件を労働者が任意で認め、労働法に定める権利を放棄した場合でも、実際は労働者の権利の放棄は認められず、雇用者は労働法上の取扱をしなければなりません。
[事実優先の原則]
労働契約に賃金の下限を明記しても、事実としてこれを超える賃金を支払っていれば、この事実が優先し、その後も継続して実際に支払っている賃金を引続き支払わなければなりません。このように、法律、労働協約、 就業規則などの書面での規定よりも、実態が上回っている場合には、実態を優先させる必要があります。
[雇用関係継続の原則]
労働契約は、具体的に契約期間が明記されていない場合は、期間に定めのないものとみなされます。
■ 労働基準に関連する法規
上の図は、ブラジルの労働基準に関する法令・規定の階層順を示しており、一番上が最上位の憲法であり、下にいくほど個別的な法令・規定となっています。
労務管理上は、特に統一労働法が重要な法令となります。以下に統一労働法の概要を記載します。
[統一労働法]
定義
統一労働法では、雇用者とは個人または団体の企業で経済活動におけるリスクを負担し、労働機会の供与、指揮命令、給与の支払を行うものと定義しています。その他、自由職業、福祉団体、レクリエーションの社団またはその他の営利を目的としない団体で、労働者を従業員として雇用する者も、雇用者とみなします(CLT2条)。一方、従業員は雇用者に従属し、継続的な労務を提供し、賃金を受領する者はすべて従業員とされます。
労働基準
日本やその他各国と比べて、ブラジルの 労働法は残業や休日出勤、女性労働者や年少者の保護規定が多くみられます。
労働時間
労働時間に関しては、1日の労働時間は8時間(昼食時間及び休憩を含まない実働時間)を超えてはならず、1週間当たりの労働時間が44時間と規定されています(CLT 58条)。ただし、労使協定によって週40時間と規定されているケースもあるため、 統一労働法だけでなく、労使協定も考慮する必要があります。
また、時間外労働については1日2時間までと規定されています(CLT 59条)。従って、1日当たりの労働時間は10時間が上限となっています。ただし、2017年の改正により、新たに、『12/36時間制度』というものが導入されました。これは、12時間の連続勤務後、36時間連続で休息する制度となります(CLT 59-A条)。また、2017年の改正により新たに導入されたもので、『テレワーク労働制度』や『断続的労働制度』が導入されました。
さらに、勤務時間の振替に関しては、『相殺制度』と『勤務時間ストック制度』の2種類がございます。
相殺制度:時間外労働を行った場合、時間外労働の手当の支給に代わり、他の日の勤務時間を短縮して相殺する制度
[2017年の改正による変更点]
・個別の合意書により、この制度を施行できるが、口頭でも同等の効力を持つ。
・相殺期限が1週間以内から1か月以内に変更となる。
・超過勤務を習慣的に実施している場合でも、この振替制度の利用が可能となる。
勤務時間ストック制度:時間外労働を行った分、他の日に勤務時間を振替えた場合、時間外労働の手当を免除する制度
[2017年の改正による変更点]
・半年以内の振替の場合は、組合協約・協定の必要がなく、個別の合意書のみで実施が可能となる。
(1年以内の振替の場合は、引き続き組合協約・協定が必要。)
・超過勤務を習慣的に実施している場合でも、この振替制度が利用が可能となる。
[2017年の改正による変更点]
【変更前】
従業員が雇用企業の指示に従う体制にあり、命令を「待機または実行」している時間は勤務時間とされます。
企業の通常の勤務時間は最高1日8時間、週44時間となっています。
1回5分、1日10分までのタイムカードへの記録の差異は許容されますが、
その差異を越えた分や、休息時間に働いた場合は超過勤務の対象となっていました。※1
さらに改正前は、1回5分、1日10分までのタイムカードへの
記録の差異の許容範囲を超えた分は、それが更衣、昼食、個人の衛生ケアその他を含
めた活動の場合であっても、すべてが勤務時間として扱われていました 。※2
【変更後】
従業員が公衆道路の危険から身を守るため、悪天候から身を守るため、宗教活動、休息、レジャー、勉強、食事、社会活動、個人衛生ケア、
ユニフォームまたは作業着への更衣(企業で着替えを行う義務がある場合は例外)の
理由で、自己選択により(強制的にではなく)雇用企業の施設内に入り滞在する場合は、
タイムカードへの記録の 1回5分、1日10分間の差異を超えた場合でも、雇用企
業による拘束時間とは見なされず、勤務時間とされなくなりました。※3
[出展]
※1憲法7条XIII、CLT 58条
※2CLT 58条1項
※3CLT 4条2項
相殺制度と勤務時間ストック制度の補足説明
勤務時間の振替に関わる制度、主に2つの制度があります。
- 相殺制度
- 勤務時間ストック制度
勤務時間を相殺した・振替えた場合、超過勤務手当の支払いは行わなくてよい、というのがどちらの制度にも共通するものとなります。細かな点については、一部決まりごとが異なります。
制度名(日) | 相殺制度 | 勤務時間ストック制度 |
制度名(葡) | Compensação | Banco de horas |
概要 | 超過勤務時間があった場合、超過勤務手当の支払いをする代わりに、別の勤務日に時間を短縮し、相殺する制度。 | 超過勤務時間を他の勤務日に振替た場合、超過分の手当の支払いが免除される制度。もし、超過勤務分を振替えられない場合は、超過分を残業代として支払う必要がある。 |
組合協定・協約の必要性 | 不要 | 必要 (ただし、半年以内の振替については不要。※4) |
改訂による変更点 | ・書面による合意だけでなく、口頭での合意でも効力をもつ。※1 ・相殺期限は、1か月以内。※2 ・習慣的な超過勤務がある場合でも、この制度の適用可能。※3 | ・左項の※3 ・上記の※4 |
なお、米印(※)の箇所については、原文を下記に記載しておりますので、併せてご確認いただければと存じます。
※1 O não atendimento das exigências legais para compensação de jornada, inclusive quando estabelecida mediante acordo tácito, não implica a repetição do pagamento das horas excedentes à jornada normal diária se não ultrapassada a duração máxima semanal, sendo devido apenas o respectivo adicional. [CLT 59-B条]
※2 É lícito o regime de compensação de jornada estabelecido por acordo individual, tácito ou escrito, para a compensação no mesmo mês. (NR) [CLT59条6項]
※3 A prestação de horas extras habituais não descaracteriza o acordo de compensação de jornada e o banco de horas. [CLT 59条 単項]
※4 O banco de horas de que trata o § 2o deste artigo poderá ser pactuado por acordo individual escrito, desde que a compensação ocorra no período máximo de seis meses. [CLT 59条5項]
統一労働法の改正により、改正前よりも、勤務時間の振替はより柔軟に対応できるようになりました。一方で、振替が行いやすくなった分、管理の手間がかかり、特に、口頭でのやり取りに関しては、「言った・言わない」のやり取りが発生しないよう、書面にてやり取りを残しておくのが良いと考えられます。
[2017年の改正による変更点]
テレワーク制度
ブラジルでは、2017年の労働法の大きな改正に伴ってテレワークについてのルールも設定されました。(CLT 75-A条、75-B条、75-C条、75-D条、75-E条)
テレワークとは以下の定義に基づく働き方の事です。
・業務は基本的には、テレワークで行うが、出社して業務を行っても問題ない。
・従業員の業務を記載した個別契約書の締結が必要である。
・出社制度とテレワーク制度は、双方の合意書があれば変更できる。
・テレワーク制から出社制への変更のみに関しては、通知から 15日間の猶予をおけば、雇用企業 の一方的な指示で変更できる。
・テレワーク労働には勤怠管理はなく、また超過勤務手当は支給されない。
・自宅で自由な時間に勤務できる。
・テレワークにより発生する取り決め(PCなどの必要設備提供やインターネット環境の設定)については、契約書を取り交わすこと。
・雇用企業は労働災害、労働病の予防に関する注意事項を文章で示し、従業員の 「確認」を取り付ける必要がある。その際、従業員は、雇用企業が示す注意事項 を厳守するという宣言書に署名しなければならない。
テレワークを実施している企業は、雇用契約書だけでなく、就業規則等にも詳細なルールを記載しておかれる事を推奨します。
休日/ 休憩時間
1日の労働時間が終了した時点から翌日の労働開始時間まで連続11時間の休憩を与えなければならないとされています(CLT66条)。この規定に違反した場合、違反の種類、その程度などを考慮した上で、罰金が科されます。
また、すべての労働者は1週間につき24時間の連続休憩時間が休日として保証されています(CLT67条)。
連続して6時間を超えて労働させた場合には、休息または食事のための休憩を与えなければならず、休憩時間は、1時間以上とされています(CLT71条)。労働が6時間を超えない場合であっても、継続して4時間以上労働させた場合は、15分以上の休憩を与えなければなりません。機器使用事務(タイプライター、簿記記帳、計算など)の恒常的業務においては、連続90分ごとに、10分の休憩を与えなければならず、この休憩時間は、労働時間から差引くことはできません(CLT72条)。
深夜勤務
深夜勤務は、22時から翌朝5時までとされ、20%以上の割増賃金の支払が必要となります。また、深夜勤務については52分30秒を1時間として割増賃金を計算することとされています。
年次有給休暇
年次有給休暇は、1年間以上就業した労働者に、1年間の欠勤日数に応じて付与されます。1年間の欠勤日数が5日以内の場合は30日、6~ 14日の場合は24日、15 ~ 23日の場合は18日、24 ~ 32日の場合は12日の年次有給休暇の権利が発生します(CLT130条)。
有給休暇を消化させられない場合は、会社はその時間を所定の給与の2倍で買戻す必要があります。労働者が自己都合により1年未満で退職する場合には、年次有給休暇の権利はありませんが、企業が労働者を解雇する場合には、退職日までの勤務期間に応じて按分計算で年次有給休暇の権利が発生します。
女性及び未成年労働者の保護
施行当時の 統一 労働法は、女性に対する差別的な規定がありましたが、1988年憲法の施行とともにこれらの規定は廃止され、現在では女性に係る労働時間の延長、非衛生的労働、危険労働、夜間労働、地下労働、鉱山労働、石工、建設などの労働禁止規定は削除されています。
ただし、女性の保護規定のうち、差別的ではないもの、特に妊婦に関する保護規定は残っています。1988年憲法と 統一 労働法では、出産のための120日間の休暇と、妊娠後から出産後5カ月までの解雇制限を規定し、女性の雇用の安定を保障しています。
年少労働者については、16歳以上1 8歳未満の労働者の夜間労働、危険労働、非衛生的労働は禁止され、未成年者の道徳に有害な場所での就業は禁止されています。16歳未満の者の労働は、原則禁止とされておりますが、1 4歳以上は、例外として見習としての就業が許可されています。
産休についての詳細
ブラジルでは、120日間の産休が認められています 。※1
産休期間は出産予定日の 28日前から出産日までの期間に開始されます。※2
産休の権利は養子の場合にも適用されます。※3
①産休期間の給料
INSS が負担します。
雇用企業は通常通り従業員に給料を払い続け、同額を雇用企業の INSS への積立額から差し引きます。
②180日の産休
企業が「市民企業プログラム」(Programa Empresa Cidadã)に登録して、
妊婦が出産後1 ヶ月以内に申請すれば、 通常120日ある産休を 60日間延長することができます 。※4
③雇用保証期間
妊娠の開始から出産後5 ヵ月までは解雇できません。※5
解雇予告通知交付後の妊娠の発覚 解雇予告期間中に妊娠が発覚した場合は、解雇予告を取り止める必要があります。
⑥妊娠検診
妊娠期間中、6回の検診のための時間が与えられます 。※6
⑦育児休暇
ブラジルの法律に「育児休暇」は存在しません。
[出典]
※1憲法7条XVIII、CLT 392条
※2 CLT 392条1項
※3 CLT 392-A条
※4 法律11,770/2008号
※5 憲法移行措置10条II-B
※6 CLT 392条4項II
労働安全衛生
労働環境の安全、衛生及び医療に関する問題は、 統一 労働法162~ 164条に規定されています。 統一 労働法では、労働省の規則に従い、企業の業務に応じて労働安全に関する専門家または労働関係の専門医を選任する必要があると義務付けています。また、労働省の規定する事業所または作業現場などにおいては、 統一 労働法164条に規定されている安全委員会(CIPA:Comissão Interna de Prevenção de Acidente do Trabalho)を設置しなければなりません。安全委員会は労働者と雇用者の代表で構成され、事業場における安全について検討する機関となります。
安全医療に関して災害防止のための防具の提供について 統一 労働法166条に規定されており、168条には採用時の健康診断書の提出、更に職種によっては6カ月ごとの聴覚検査等の細則もあります。防具の提供、入社時の健康診断書の提出に係る規定は、労働裁判、特に労働災害、職業病にかかわる労働裁判に大きな影響を持つため、注意を払う必要があります。 労災を防ぐための防具については、事故が発生した場合、管理不十分として雇用者側が責任を問われるケースもあるため、単に防具を従業員に提供するだけではなく、企業がその使用を徹底させなければなりません。入社時の健康診断書の提出の重要性は、入社時点で既にあった病気であるか、もしくは入社後の就業によって発病したものなのかを裏付けるデータとして非常に重要となります。
断続的労働制度
・時給及び支払い期限を記載した契約書の締結が不可欠、その際、時給は同じ職場 の正規従業員より低くできない。
・断続的労働制度の活用についてを、労働手帳に記載する必要がある。
・従業員は複数の雇用企業と契約できる。
・雇用企業は連続3日前までに勤務時間を指定して召集する必要があり、従業員は召集を受けてから 24時間以内に回答しなければならない。回答がない場合は拒 否とみなされるが、拒否の場合でも命令不服従とはみなされない。
・勤務場所、召集及び回答の方法、キャンセル料の支払いについて両者が交渉した 後、契約書に記載することができる。
・雇用企業は従業員と契約で決めた時期に、給料、年次有給休暇手当の比例分、 13 ヶ月特別給料の比例分、週休手当その他の手当を支給する義務があり、その 際にそれらを各項目別に記載した領収書を取り付ける。1 ヶ月以上の勤務に召集 された場合、賃金の支払いは、1 ヶ月毎に行なう。
・12 ヶ月毎に次の 12 ヶ月間中に消化すべき 1 ヶ月間の年次有給休暇が付与され、 休暇消化中は、召集をかけてはいけない。また休暇の 3分割の制度を適用する ことができる。
・休息時間は拘束時間ではないため、報酬はない。休息時間に対し報酬が支払われ た場合、拘束したとみなされることになるので、断続的労働の契約は無効となる。
・契約締結後、または最後の勤務日から召集なしで 1年が経過した場合、雇用契約 は自動的に解約される。解約金のうち、解雇予告期間の買い上げと FGTS解雇ペ ナルティーは「理由なき解雇」の半額になるが、それ以外の解約金は全額になる。 FGTS口座からの引き出しは総額の 80%に限定され、失業保険は申請できない。 解約金は、断続的労働契約期間中に受給した賃金の平均額をベースとして計算さ れる。平均額の計算は、直近12 ヶ月あるいは雇用期間が 12 ヶ月未満の場合は、 契約期間中受給した月のみが対象となる。
・2020年12月31日までに解雇された従業員は、同じ雇用企業と解雇日から数え て 18 ヶ月以内に断続的労働の契約を結べない。
※なお独自の法律を持つ航空業界は例外 とされています。
・ 賃金に関する法制度
日本の賃金支払5原則に該当するような賃金に関する法制度がブラジルにも存在します。以下は、ブラジルの統一 労働法の賃金に関する規定です。
[457 条]
賃金には、雇用契約に規定する基本給だけでなく、雇用者が支払う手数料、歩合給、賞与、日当、特別手当なども含まれる。ただし、報奨金や経費の精算、日当は、賃金に含まれないものとする。
[458 条]
現金で支払う給与だけでなく、企業が契約に従い、あるいは習慣として食料、住居、衣服、その他の現物支給で労働者に支給するものも賃金に含まれる。ただし、いかなる場合でもアルコール飲料または有害な薬品による支給は禁止する。
[459 条]
労働の形態にかかわらず、賃金の支払は1カ月を超える期間で行ってはいけない。つまり、1カ月に一度は賃金の支払を行わなければならない。ただし、手数料、歩合給及び賞与については、この限りではない。また、月給の場合は、遅くとも賃金締日の翌月の5営業日までに支払わなければならない。
ブラジルの賃金の締日から支払日までの期間は、他国と比較して非常に短くなっているので、注意が必要です。
[461 条]
同一生産性で、同一の技能的完成度で、同一の雇用企業への勤務期間が4年を超えず、同一の職務の勤務期間の差が2年を超えない労働者に対しては、同等の賃金を支給する。
[462 条]
企業は、労働者の賃金からいかなる減給も行ってはならない。ただし、前払した賃金に係る減給、法律の規定または団体協定の定めにより生じた減給についてはこの限りではない。
[463 条]
現金による賃金の支払はブラジルの現地通貨であるレアルによって行う必要がある。
[最低賃金]
最低賃金は、統一 労働法81条で規定され、労働者は法律に定める全国一律の 最低賃金以上の賃金を受給する権利を有しています。ブラジル政府は2023年5月1日から、最低賃金を月額1,302レアルから1,320レアルへ引き上げました。
ブラジルの最低賃金は近年急激に上昇しています。1988年に 統一労働法によって制定され、1994年の現通貨であるレアルの導入以降、上昇が顕著となります。
最低賃金は、前々年の経済成長率と全国消費者物価指数を基準として毎年改定されています。ちなみに、消費者物価指数とは、全国の世帯が購入する各種商品(財・サービス)の価格の平均的な変動を測定するものです。すなわち、ある時点の世帯の消費構造を基準に、これと同等のものを購入した場合に必要な費用がどのように変動したかを指数値で表しています。
年 | 2016 | 2017 | 2018 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2023 5月 |
最低賃金額 | 880 | 937 | 954 | 998 | 1,045 | 1,100 | 1,212 | 1,302 | 1,320 |
上昇率 | 11.68% | 6.48% | 1.81% | 4.61% | 4.71% | 5.26% | 10.18% | 7.42% | 1.38% |
賃金の上昇は、基本給与以外にも影響を及ぼします。従業員を雇用した場合、基本給をベースに社会保険負担金、勤続期間補償基金、クリスマス手当等が計算されます。従って企業が負担すべき実質的な労務コストは、かなりの幅で引上がってしまいます。
実際に労働者に支払われる賃金は、 最低賃金の上昇率を参考とし、毎年産業別組合の決めた昇給率をもとに決定されます。また、前述の通りブラジルでは 統一労働法において賃金の引下げが原則的には認められていません。このようにブラジルが特殊な賃金設定環境にあるため、企業によっては一定以上賃金が上昇した一般労働者レベルの従業員については契約更新を行わずに解雇し、次の従業員の採用を行うケースも見られます。
雇用契約と就業規則
■ 雇用契約の締結
統一 労働法では、就労の前提として労働者との個別雇用契約の締結と、併せて労働・社会保障手帳(CTPS:Carteira de Trabalho ePrevidência Social)の記入が義務付けられています。
雇用契約の締結と労働・社会保障手帳の記入をすることで、労働時間と休息時間及び休日・有給休暇、労働組合とストライキ、女子・若年労働者の保護、賃金(最低賃金)規定などの労働法及び社会保障の適用を受けることになります。
なお、2019年9月20日に施行された“Lei 13.874 2019 Lei da Liberdade Econômica” 経済的自由権宣言(法令第13.874/2019)により、これまで労働契約の中で、雇用主が新たな従業員を採用した際に、48時間以内に手帳への記入が義務とされておりましたが、この新たな法令により、手帳そのものは電子化され(一部の条件を除く)、48時間以内の申告という制約があったものから、5営業日以内に期限も延長いたしました
■ 雇用契約書
労働者との個別の 雇用契約は、一方を自然人たる労働者、他方を雇用者とする契約であり、労働者が労働を供与し、雇用者がその対価として賃金を支払うこととする契約です。書面での契約は義務付けられていませんが、前述の通り労働・社会保障手帳の記載が必要となるため、通常は併せて書面での契約締結としているケースが多くなっています。
雇用契約は、原則として期間の定めのない契約であるとされます。
ただし、以下の場合には、期間の定めをした 雇用契約を締結することができます。
・ 業務の性格とその臨時性によりあらかじめ期限を定めることが正当である場合
・ 企業の事業が一時的なものである場合
・ 試用契約(期間は最長90日。なお、契約を、1回あたり45日の計2回に分け定めることも可能。)
期間の定めをした 雇用契約は最長2年まで、契約の更新は1回までとされ、この期間を超える場合や1回を超えて延長される場合には、期間の定めのない 雇用契約として扱われます。期間の定めのある 雇用契約は期間満了時に自動的に解雇となり、解雇予告は必要ありませんが、事前に契約の更新をしない旨の通知をするのが一般的です。
なお、ブラジルでは、通常労働組合との労使協定に基づき、就業規則の作成を行いますが、労使協定がない場合でも、特に日系企業をはじめとする外資企業では会社のルールを定めるために任意で就業規則を作成しているケースが多くなっています。
補足といたしまして、派遣労働者の場合、最長契約期間は9か月と決められております。期限付き雇用同様に、業務上の性質や臨時性を加味すること、また期間が限定されることが正当化される必要がございます。
■ 職務記述書
職務記述書は雇用主、従業員に認識の際が無いよう、記載をするのが一般的で望ましい。ブラジルは労務訴訟が比較的多い国と言われ、そのため保守的に考えると、職務記述書で役割を明確にしたいと考える企業は、日系企業含め外資企業に多い傾向にある。しかしながら、企業のステージや状況によって、適切な対応は変わってくると考えるのが良い。例えば、設立して間もない企業や企業規模が小さい場合、職務記述書の内容が適時変化することもあり、そのたびに給与を変更する、ということも実務上難しい(あるいはできれば、何度も昇給の対応するのは避けたい。)ということもあり、あえて明確にしないケースもある。
■ 労働契約の解約
期間の定めのある雇用契約を締結している労働者を正当な理由なく契約満了前に解雇する場合には、残りの雇用契約期間に支払うべき賃金の半分に相当する金額を労働者に支払わなくてはいけません。
一方、労働者が雇用契約の満了前に自身の都合により退職する場合には、残りの雇用契約の期間に支払われるべき賃金の半分に相当する金額を上限として、損害賠償の責任を負うことになります。
また、解雇は正当な理由に基づく解雇と正当な理由に基づかない解雇に分かれます。
正当な理由に基づく解雇は、労働者の不誠実、行状不良、企業の業務との競業行為、刑事訴訟における判決でもたらされた勤務不能、怠惰、常習的酩酊、守秘義務の違反、規律違反、職場放棄、勤務時間中の同僚、上司に対する暴力、名誉毀損行為、国の安全に対する侵害などが理由としてあげられます。
正当な理由に基づく解雇の場合には、雇用者は解雇予告を行う必要がなく、また、ボーナスの支払、年次有給休暇の付与、退職積立金の支払などの義務もありません。
一方、正当な理由なく解雇する場合には、雇用者は雇用年数が1年以下の労働者には解雇の30日前までに、また、1年以上の労働者には雇用年数(1年未満は切捨て)× 3日+3 0日の日数前(最長で90日前)に予告を行う義務があります。また、ボーナス、年次有給休暇相当額の支払と、その雇用者に勤務していた期間の退職積立金の40%相当額を追加で支払う義務があります。
上述のように解雇理由によって退職時の処遇に大きな差が生じるため、解雇の原因となった事由の当否を争って労働者が労働裁判所に企業を訴えるケースが多くみられます。この場合、企業側には労働紛争における訴訟負担が係るほか、敗訴のリスクも高くなるため、正当な理由に基づく解雇理由と根拠の準備をしておき、慎重な対応をとることが必要となります。
また、解雇における種類をまとめた内容を下記に記載いたします。
- 従業員都合による自主退職
<解約金>
① 退職する該当月の給料 全額控除
② 消化権利のある有給休暇手当の未消化分
③ 権利取得期間中の有給休暇の比例分
④ 13ヶ月特別給料の比例分
<FGTS>
・企業側のFGTS解雇ペナルティはなし。
・退職する従業員はFGTS口座にある残額を引き出すことはできない。
<失業保険>
・退職者は失業保険を申請することができない。
※補足※
本来、従業員都合による自主退職する際、企業へ30日前に伝える必要がある。もし、30日前に行わなかった場合、解約金から30日分、あるいは退職までの30日から退職までの残りの残数を引いた日数分、金額が引かれる。
- 「理由なき解雇」(企業都合による解雇)
<解約金>
① 退職する該当月の給料 全額控除
② 消化権利のある有給休暇手当の未消化分
③ 権利取得期間中の有給休暇の比例分
④ 13ヶ月特別給料の比例分
⑤ 勤続年数に応じ、最低30日、最高90日の猶予期間を設ける必要がある。もしその期間勤務を続けさせない場合(即日解雇)は、その分を雇用企業が買い上げる義務がある。
⑥ FGTS解雇ペナルティとして、積立金総額の 50%(このうち 40% は従業員の口座に入金され、10% は政府が徴収する)。
<FGTS>
・退職する従業員はFGTS口座にある残額を引き出すことができる。
<失業保険>
・退職者は失業保険を申請することができる。
- 正当な理由のある解雇
<解約金>
① 退職する該当月の給料 全額控除
② 消化権利のある有給休暇手当の未消化分
<FGTS>
・企業側のFGTS解雇ペナルティはなし。
・退職する従業員はFGTS口座にある残額を引き出すことはできない。
<失業保険>
・退職者は失業保険を申請することができない。
- 間接的解雇
妥当な理由があり、裁判での判決にて「理由なき解雇」(企業都合による解雇)と同等の賠償金を求めることができる。
- 合意解雇
<解約金>
① 退職する該当月の給料 全額控除
② 消化権利のある有給休暇手当の未消化分
③ 権利取得期間中の有給休暇の比例分
④ 13ヶ月特別給料の比例分
⑤ 解雇予告期間を買い上げる場合は、通常「理由なき解雇」の半額。
⑥ FGTS解雇ペナルティとして、授業員支給分は「理由なき解雇」の半額(20%)、10%は政府が徴収する)。
<FGTS>
・退職する従業員はFGTS口座にある残額を80%まで引き出すことができる。
<失業保険>
・退職者は失業保険を申請することができない。
■ その他の雇用形態
2017年11月の法改正により、自営業者契約(Contrato de Autônomo)の雇用形態について記載がされるようになりました。なお、自営業者に対する支払いは、RPA(RECIBO DE PAGAMENTO A AUTÔNOMO)と呼ばれる領収書(以下画像参照)をもって支払いをすることで、会計上・税務上適切な処理を行うことができます。
+ .3 .社会保障制度
社会保険法
■ 適用範囲
ブラジルの社会保障制度は、大きく3つに分けられており、一般社会保障制度(RGPS)、公務員社会保障制度(RPPS)、補足保障となります。
一般社会保障制度とは、国家社会保障院により運営されている強制加入社会保障制度となります。加入対象は、民間企業の労働者や、公的部門の一部である政治家、公務員などが該当します。
公務員社会保障制度とは、連邦政府により運営されている強制加入社会保障制度となります。加入対象者は、上記の一般 社会保障制度に該当しない労働者や公務員となります。
なお、補足保障とは一般社会保障制度を補足する目的で定められたものであり、民間の企業や組合などが運営する任意の社会保障制度です。
■ 保険料
ブラジルの一般社会保障制度は、国民健康保険、雇用保険、 労災保険及び老齢年金、家族手当等が個別に分かれているのではなく、これらが一体となって制度化されています。
一般社会保障制度の保険料は、雇用者負担と労働者負担分に分かれており、雇用者が国家社会保障院に雇用者負担分及び労働者負担分を併せて納付します。 保険料は労働者の給与額に応じてそれぞれ異なります。料率はP. 316 を参照してください。
一方、保険給付は、老齢年金をはじめ 労災や失業保険など多くの給付があります。一般社会保障制度の老齢年金の主な受給資格は、男性の場合、年齢が65歳、女性の場合、年齢が60歳、 保険料納入期間が男女ともに15年以上となっています。
また、障害、疾病によって労働が継続不能になった場合も支給対象となります。疾病及び 労災の場合、社会保障制度上、支給される手当は離職の後1 6日目から開始されます。失業保険は3 ~ 5回の分割払により、労働省が定める補償額が支払われます。妊婦に対しては企業から出産休暇中(120日間)に出産給与が支払われ、企業は社会保障財源から償還を受けます。妊婦は出産後5カ月まで雇用保障があり、この雇用保障期間は更に団体協約により3カ月間延長が可能です。
なお、公務員社会保障制度の老齢年金の主な受給資格は、男性は年齢が60歳、保険納入期間が35年、女性は年齢が55歳、保険納入期間が30年となっています。補足保障は、民間企業や組合などの団体が管理運営する任意の 社会保障制度のため、年金を含めさまざまな形態を持ち、政府の一般社会保障制度を補足するものとなっています。
[年金受給資格]
年金を受給するためには、以下の要件を満たさなければなりません。
老齢年金
・ 15年以上の納付
・ 男性65歳以上、女性60歳以上
退職年金
・ 男性35年以上勤続、女性30年以上勤続
・ 早期支給は男性30年勤続、女性25年勤続
・ 危険な労働、健康に害を及ぼす労働などは、支給資格年数が減じられる(ただし5年以上負担金を支払っていること)
■ 退職積立金
退職積立金(FGTS:Fundo de Garantia do Tempo de Servico)は、労働者の権利を保護するために憲法7条3項に労働者の権利として規定されています。雇用者側である企業は、労働者のため退職手当を積立てる必要があります。
基本的には労働者が退職する場合に、退職金として支給する制度ですが、退職金のほかにも住宅購入や失業等、規定に定められた事由に基づいて支給することができます。退職金として受給する場合には、勤続年数が男性は35年、女性は30年以上、年齢が男性65歳以上、女性が60歳以上であることが要件となります。
企業は退職積立金として、労働者の月給の8%に当たる金額を退職積立金口座に毎月積立てなければなりません。また、労働者が正当な理由なく解雇された場合には、雇用者は当該積立金に50%上乗せして支払う必要があります。(このうち、40%は従業員の口座に入金され、10%は政府に徴収されます。)
労災保険法
ブラジルでは、労災保険制度は存在していませんが、業務外・業務上を問わず、公的病院での治療費は一般社会保障制度によって負担されています。
業務上の災害により負傷した場合には、最初の1カ月は会社が給料全額を支給し、2カ月目からは一般社会保障制度から給料の一部を負担します。なお、業務上災害により負傷した労働者は、負傷から1年間は解雇することができません。
+ .4 .日本人を駐在させる際の留意点
外国人労働許可
■ 就労ビザの取得義務
[就労ビザの取得]
日本企業のブラジル進出においては、ブラジルで現地法人を設立した後、日本人従業員が出向するケースが一般的となります。ブラジル国内において報酬を受ける活動を行う場合、駐在員はブラジル政府から就労ビザを取得しなければなりません。また、ブラジル現地法人の役員クラスに就任する場合には、通常の従業員クラスとは異なる投資ビザを取得する必要があります。投資ビザの申請の場合も、ブラジル政府への申請が必要となります。
ブラジルは、いかなる目的においても、日本人が入国する際にはビザが必要となります。日本人がビジネス目的でブラジルへ入国する場合のビザは、以下の種類があります。
- 訪問ビザ(商用)
- 一時滞在ビザ
[訪問ビザ(商用)]
商用ビザは、出張など短期間におけるビジネス目的のブラジル入国・滞在に際して取得するビザとなります。こちらは、2018年よりe-VISAと呼ばれるオンラインでの申請開始となり、これまで領事館での申請のみ、ビザの取得が可能となっていた状況から、ビザ手続きの大幅な簡略化が進みました。
e-VISAと呼ばれるオンラインの申請と、領事館での申請における手続きの違いをいかに記載いたします。
項目 | e-VISA | VIVIS (領事館にて取得するビザ) |
必要書類 | パスポート(データ) 写真(データ) | パスポート 写真 申請書 その他必要書類 |
申請期間 | 5営業日 | 6-10日営業日 |
申請料 | 44.24 USD (約 5,000円) | 10,400円 |
有効期限 | 2年間 | 3年間 |
滞在可能期間 | 最大90日間 | 90日間 ただし最大180日まで可能 |
商用ビザでの滞在可能期間は90日間で、期限満了前に現地ブラジル連邦警察外国人課にて延長申請を行い、これが受理された場合、更に90日間の延長滞在が可能となり、合計で最長180日間ブラジルに滞在することが可能となります。日数は、最初にブラジルへ入国した日から1年間の滞在日数合計となります。
商用ビザはあくまで出張でのブラジル滞在が取得目的であり、ブラジル国内で報酬を得る活動を行うことはできません。対応が可能な主な活動としては、現地企業の訪問、ミーティング、情報収集などに限定されています。
ただし、オンライン申請にて取得したビザは、90日間のみの滞在となり、延長することはできません。
[一時滞在ビザ]
一時滞在ビザは、ブラジル現地法人へ従業員が駐在し、現地法人と雇用契約を締結する場合に取得する一般的なビザとなります。外国企業とブラジル企業の間で締結された技術支援契約に基づき、ブラジル現地企業にて就労する場合にも、 一時滞在ビザの取得が必要になります。ビザ取得日から90日以内にブラジルへ入国した上で、ブラジル入国後30日以内に管轄の連邦警察にて外国人登録を行う必要があります。
雇用契約に基づきブラジル国内の企業で外国人が就労する場合、 一時滞在ビザの有効期間は2年間です。その後も就労を継続する場合、この一時滞在ビザから永住ビザへの申請が可能です。
原則として、 一時滞在ビザを取得しなければ、 永住ビザ保有者を除き、国内で報酬を得る活動を行うことは禁止されています。なお、 一時滞在ビザを申請する場合には、あらかじめ現地関連企業を通じて 就労ビザの申請を行い、ブラジル労働雇用省の事前許可を取得する必要があります。一時滞在ビザを保有する赴任者の扶養者であっても、報酬を伴う営業活動を行うことはできません。
日本企業の駐在員がブラジルへ赴任する場合の最も一般的なケースが、労働契約に基づきブラジル企業にて就労する場合となります。当該日本人赴任者は、申請当局にて規定されている学歴要件を満たし、従事する職務に必要とされる職業上の十分な経験を積んでいる必要があります。
労働契約には、当該日本人赴任者が従事する職務、提供する役務、就労期間、ブラジル企業から支給される報酬等を規定する必要があります。労働契約は、ブラジル雇用労働省移民局が審査を行い、承認されたものでなければなりません。また、既に承認された労働契約は、ブラジル法務省または雇用労働省の許可なしに訂正、変更を行うことは禁止されています。
ブラジルでは、ブラジル国民への雇用機会を維持するため、外国人を雇用する企業では、少なくとも事業所全体の3分の2以上はブラジル人を雇用しなければならないという現地人雇用義務を設けています。この3分の2以上という割合は、従業員数及び給与額に適用されます。つまり、企業全体で外国人従業員の給与総額を1とした場合、ブラジル人従業員の給与総額は2以上である必要があります。
外国人従業員への給与は、その提供する高度な技術や知識に見合った金額である必要があり、その基準を大きく下回ると移民局より判断された場合、その外国人への就労ビザ申請が承認されない可能性があります。
一方、技術支援契約に基づきブラジル国内の企業で外国人が就労する場合には、この外国人はブラジル国内の企業に対して利益となり得る技術支援を行い、給与は雇用されている外国企業より支給されることになります。外国人を受入れるブラジル国内の企業は、両企業にて署名された技術支援契約または協力協定を申請当局へ提出し、承認を得る必要があります。
技術支援契約に基づきブラジル国内の企業で外国人が就労する場合、 一時滞在ビザの有効期間は1年間となり、 雇用契約を結んで就労する場合よりも短く、更新は1度のみで有効期間は1年間となりますので、最長滞在期間は2年間となります。
一時滞在ビザは、上記の他に、短期技術支援用、緊急技術支援用が設けられています。短期技術支援用 一時滞在ビザは、外国人がブラジル企業にて技術支援を行うに当り、90日以内の滞在をする場合に限り取得が可能となります。この場合、通常の一時滞在ビザの条件を満たしていない場合でも取得が可能となり、また、申請期間についても一時滞在ビザよりも比較的早く承認が下りるとされています。
緊急技術支援用一時滞在ビザは、ブラジル企業において緊急性の高い技術を支援する外国人が取得可能となりますが、滞在可能日数は30日間のみ、また延長が不可となっています。このビザはブラジル企業が国内において緊急かつ外国人による技術支援が必要と証明できた場合のみ発給されます。
旧法にて永住ビザと呼ばれていたものは、移民法では、役員用一時滞在ビザが該当いたします。ブラジル現地法人における 業務執行者(Administrator)等の管理職に就く役員クラスの役職者がブラジルに赴任し、居住する場合に取得するビザとなります。役員用一時滞在ビザを取得するに当たって、受入先企業であるブラジル現地法人は、申請する 永住ビザ1件につき60万レアル以上の資本金を設定する必要があります。役員用一時滞在ビザにおける資本金の要件の更新は、2011年8月10日に発行された、Resolucao Normativa No 95, de 10 de agosto de 2011によって規定されています。しかし、投資登録後2年以内に10名以上のブラジル人従業員を雇用する具体的な計画を提示できた場合は、15万レアル以上の投資額でも 役員用一時滞在ビザの発給が許可されるとしています。
個人が移住して外国資本による50万レアル以上の投資を行う場合、または、ブラジル国内で雇用あるいは所得を生み出す可能性のあるプロジェクトに投資する場合、この個人投資家の一時滞在ビザの取得申請が可能となります。なお、一時滞在ビザの発給にはブラジル労働雇用省の事前許可が必要となります。
役員用一時滞在ビザの有効期間は無期限となります。有効期間内はビザ取得者と企業間の契約条件を変更することができないとしています。管轄の移民局からの特別な承認がある場合を除き、ビザ取得時に申請を行った特定の活動分野や地域を変更することはできません。移民局からの承認なく変更した場合には、ビザ取消の可能性もあります。
■ 就労ビザの取得条件
国家移民審議会決議2017年8月16日付第2号によると、 就労ビザの取得の条件は以下のように規定されています。以下のいずれかに該当する場合に、ブラジルで 就労ビザを取得することができます。
・ 修士号、博士号またはそれ以上の学位
・ 大学院卒業、(最低360時間)および1年間の専門分野における専門職経験
・ 大学生卒業、2年間の専門職経験
・ 専門学校卒業、3年間の専門職経験
・ 最低12年間の教育と、4年以上の職務経験
・ 学歴と関係なく、就業する業務に精通した芸術・文化の分野での3年以上の職務経験(技術支援契約に基づきブラジル企業にて外国人が就労する場合、最低でも3年以上の専門家としての実績を証明する必要があります)
就労ビザを取得する者は、ブラジル国内で給与を受取る必要があります。また、国家移民審議会決議2007年2月9日付74号3条により、グループ会社間の 雇用契約の場合には、原則として国外で最後に受取った給料額を上回る給与を受取る必要があります。
ブラジルで就業する赴任者がグループ会社からの出向者ではない場合には、外国人労働者がブラジルで受取る給与は、就業する現地法人における同職種内、同職位において最高額である必要があります。
就労ビザの保有者は、ブラジルに入国した日から国内居住者の資格が与えられ、納税等の義務が課されるほか、企業との雇用契約に基づく労働手帳の発給を受けることになります。
[ブラジル雇用労働省への就労ビザ申請必要書類]
ブラジルでの 就労ビザ申請の際には、以下の書類が必要となります。また、赴任者の職歴・学歴などにより、下記の書類の他に追加書類を要求されることがあります。
・ 申請書
・ ブラジル法人の会社定款
・ 税務登記番号(CNPJ)証明書のコピー
・ 雇用契約書(継続して海外で給与の一部を受取る場合は、全体金額の提示が必要である)
・ 海外で最後に支払われた給与額が明記されている明細書
・ 赴任者の最終学歴卒業証明書
・ 赴任者のパスポートのコピー
・ 現地代理人へのビザ代理取得に関する委任状(代理申請を行う場合)
[日本での労働ビザ取得必要書類]
・ パスポート(残存有効期限が6カ月以上及びビザ余白ページが見開きであるもの)
・ 在日ブラジル領事館の以下ウェブサイト上で作成され、プリントアウトされた申請書(Recibo de Entrega de Requerimento –RER)https://scedv.serpro.gov.br/frscedv/index.jsp
・ 写真(3.5×4.5cm) 1枚
・ 犯罪経歴証明書 1部(3カ月以内に発行されたもの/厳封状態のもの)
ただし、国家移住審議会決議61号の6項または7項の該当者で、かつ許可された滞在日数が最長90日までの者は提出不要
・ 申請者の戸籍謄本1部(3カ月以内に発行されたもの/英語またはポルトガル語翻訳版を添付/翻訳人の宣誓及び署名があるもの)
駐在員の社会保険
■ 社会保険
[社会保険の被保険者資格の継続・喪失]
日本から海外に出向する際には、日本国内の企業との雇用関係を継続する(在籍出向)場合と、継続しない(転籍出向)場合によってその取扱が異なります。
在籍出向であり、出向元から給与の一部または全部が支払われている場合には、海外に赴任している間でも、日本の健康保険・厚生年金保険・雇用保険等の被保険者資格は継続します。
一方、転籍出向で国内企業から給与がまったく支払われない場合や、海外現地法人とのみ直接雇用契約を結ぶ場合には、出向元との雇用関係が継続しないため、日本の健康保険・厚生年金保険・雇用保険等の被保険者資格は喪失します。
【海外勤務者の社会保険・労働保険】
要件 | 在籍出向で国内企業から給与の一部または全部が支払われている場合 | 転籍出向で国内企業から給与が支払われていない場合、もしくは現地直接雇用の場合 |
健康保険 | 継続(ただし、海外療養費として請求) | 継続適用できない(現地加入) ➡社会保障協定 |
介護保険 | 海外では適用除外。住民票を除票すれば保険料は原則不要。 | 海外では適用除外(保険料は原則不要) |
厚生年金保険 | 継続(国内給与に応じた保険料額) | 原則継続できない(現地加入) ➡社会保障協定 |
雇用保険 | 継続(ただし、帰国時のみ失業給付等を受給可能) | 原則継続できない |
労災保険 | 適用除外(特別加入制度あり) 3,831円~27,375円 | 同左 |
[社会保障協定]
転籍出向する場合において、日本での給与の支払がない場合、厚生年金保険の被保険者資格を継続することができませんが、駐在員自身が国民年金に任意加入することができます。
2010年7月に、日本とブラジルの間で社会 保障協定の署名が行われ、2012年3月1日に発効しました。この社会 保障協定の適用により、5年以内の赴任予定者であれば、元の年金制度への加入を継続することが可能です。5年を超える場合には、ブラジルの年金制度へ加入することになります。ブラジルの年金制度へ加入した場合には、日本での加入期間とブラジルでの加入期間を合わせて計算することができます。
海外赴任の間に日本の年金制度に加入を希望する場合は、国民年金の任意加入手続を行うことによって加入することが可能です(国民年金法附則5条任意加入被保険者3項)。
国民年金の任意加入要件は、以下の通りです。
・ 日本国籍を有し、20歳以上65歳未満であること
・ 日本国内で保険料 の納付が可能なこと(親族等による代行納付でも可)
[海外で日本の健康保険制度を利用する際]
海外赴任中に海外で医療行為を受けた場合、日本の健康保険の被保険者資格を継続していれば、加入する健康保険組合等に「療養費」の申請をすることが可能です。ただし、申請に当たっては、以下の点に注意をする必要があります。
・ 「療養費」での申請となるため、海外での医療費を一度全額本人が立替え、日本の健康保険組合等に申請すること
・ 海外で受けた医療行為について、日本国内で保険診療を受けた場合、保険診療点数に換算して算出した金額から自己負担額を差引いた額が支給されること
なお、健康保険の海外療養費申請には以下の書類が必要であり、提出書類が日本語以外の言語で記載されている場合には、翻訳者の氏名及び住所を明記の上、日本語翻訳文を添付しなければなりません。
・ 療養費支給申請書
・ 療養内容証明書
・ 領収明細書
・ 領収書(原本)
[日本国内の健康保険制度の継続]
日本国内の企業との雇用関係が継続しない場合、健康保険の被保険者資格は喪失します。しかし、健康保険の任意継続被保険者制度を利用するか、国民健康保険に加入することで、日本国内の健康保険制度に加入することが可能です(健康保険法37条任意継続被保険者)。
なお、健康保険の任意継続被保険者制度は資格喪失後20日以内、国民健康保険の加入は資格喪失後14日以内に行う必要がありますので、早急な対応が求められます。
健康保険任意継続被保険者の保険料
以下のいずれか低い金額に保険料 率を乗じた金額が保険料 となります。また、在職中と異なり、会社が負担していた保険料 についても自己負担となります。
・ 退職時の標準報酬月額
・ 加入していた保険者ごとに定められる標準報酬月額の平均額
国民健康保険の保険料
被保険者の所得等に応じ、市区町村の規定により算出される金額となります。
[労災保険の特別加入制度]
労災保険は、日本国内の会社で働く労働者が保険給付の対象となるため、海外の会社に出向する労働者は対象外になりますが、海外派遣者特別加入制度を利用することで、労災保険の保険給付を受けることが可能となります(労働者災害補償保険法33条特別加入)。
特別加入者の保険料 は、保険料算定基礎額に保険料率を乗じた金額で、年間で最低3,831円最高2万7,375円です。なお、特別加入対象者は、以下の通りです。
・ 日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣され、海外で行われる事業に従事する労働者
・ 日本国内で行われる事業(有期事業を除く)から派遣され、海外にある一定数以下の労働者を常時使用する中小企業に従事する事業主及びその他労働者以外の者
※ 中小企業の規模金融業・保険業・不動産業・小売業…50名以下
卸売・サービス業…100名以下上記以外の業種…300名以下
・ 開発途上地域に対する技術協力事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣され、その事業に従事する者
■ 海外旅行傷害保険
[駐在員赴任時の取扱]
海外赴任をする際には、公的な保険の加入状況の他に、 海外旅行傷害保険への加入の検討が望ましいです。 海外旅行傷害保険は、保険会社が契約を結んでいる病院で治療をする場合には、現金不要で治療を受けることができます。
また、公的な保険とは異なり、契約した保険金額を限度として、実際にかかった医療費の実費が支払われます。 海外旅行傷害保険の新規加入時には、出国後に加入手続を行うことができませんので、必ず出国までに手続を済ませる必要があります。
[駐在員帰任時の取扱]
駐在員が帰任することになった場合には、その年の年末調整の対象となります。対象となる給与は、居住者となった日(帰任した日)以後に支払われた給与です。
駐在員の給与設計と計算事例
■ 日本ーブラジル間の給与格差問題
ブラジル駐在員に対して給与を支払う場合、日本とブラジルで給与計算方法、給与に対する適用税率に差があることから、日本と同額の給与を支払った場合、手取給与額が大きく異なる可能性があります。
このため、支給に当たっても一律日本と同様というわけにもいかず、給与額の設定、支給形態を事前に十分検討する必要があります。
[日本ーブラジル税率比較]
【日本 給与所得控除】(令和2年分以降)】
給与等の収入金額(円) | 給与所得控除額 |
~ 1,625,000 | 550,000円 |
1,625,001 ~ 1,800,000 | 収入金額×40%-100,000円 |
1,800,001 ~ 3,600,000 | 収入金額×30%+80,000円 |
3,600,001 ~ 6,600,000 | 収入金額×20%+440,000円 |
6,600,001 ~ 8,500,000 | 収入金額×10%+1,100,000円 |
8,500,001 ~ | 1,950,000円(上限) |
【日本所得税率】
課税される所得額(円) | 税率 | 税率* |
1,000~ 1,949,000 | 5% | 15% |
1,950,000 ~3,299,000 | 10% | 20% |
3,300,000 ~6,949,000 | 20% | 30% |
6,950,000 ~ 8,999,000 | 23% | 33% |
9,000,000 ~17,999,000 | 33% | 43% |
18,000,000 ~ 39,999,000 | 40% | 50% |
40,000,000 ~ | 45% | 55% |
*住民税を含めた実効税率
個人所得税(2022年度)】
年間課税所得 | 税率 |
~ 22,847.76 | 免税 |
22,847.77 ~ 33,919.80 | 7.5% |
33,919.81 ~ 45,012.60 | 15.0% |
45,012.61 ~ 55,976.16 | 22.5% |
55,976.16 ~ | 27.5% |
日本側では、給与所得控除(55万円)と基礎控除(48万円)がありますので、収入ベースで103万円以内であれば所得税はかかりません。ブラジルでは、連邦・州・市に支払社会保険料(原則全額)、企業年金(課税所得の12%まで)、配偶者・扶養控除(1名あたり2,275.08レアル)、教育費(3,561.50レアル/年)、医療費(原則全額)、離婚扶養費(原則全額)等の所得控除があり、また、22,847.76レアル以下の場合は税率が0%の枠が設定されています。
参考文献
・ 都築慎一著(ブラジル日本商工会議所事務局)『ブラジルの税を知る』
・ サンパウロ(Tihiro Comunicações)『改訂日本語訳ブラジル 統一 労働法(第3 版)』
・ JETRO
http://www.jetro.go.jp/world/search/cost/
http://www.jetro.go.jp/world/cs_america/br/invest_05/
http://www.jetro.go.jp/world/cs_america/br/biznews/4eeac27b2ab98
http://www.ide.go.jp/Japanese/Research/Region/Latin/Brazil/2011/201102.html
・ 海外労働時報
・ 海外職業訓練協会
・ アジア研究所『新興諸国における高齢者の生活保障システム』
・ ブラジル総領事館(Consulado Geral do Brasil em Tóquio)
ftp://ftp.ibge.gov.br/Estimativas_de_Populacao/Estimativas_2016/estimativa_dou_2016_20160913.pdf
https://ww2.ibge.gov.br/home/default.php