税務
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税務
+ .1 .税務の概要
租税の体系
ブラジルに居住している個人またはブラジル企業と取引を開始する場合、もしくはブラジル国内においてビジネスを行う場合、必ず税金の問題が発生します。そのような認識がない状態で取引を行えば、後で思わぬ税負担が発生することも珍しくありません。
この章では、ブラジルにおける税制の全体像、個別の税目の解説から、国際間での税務問題まで含めて解説します。
■ 税制の歴史
ブラジルの税制の歴史は古く、ブラジル全土がポルトガルの植民地だった時代から税制が設けられていました。
2007年には税務署と定年退職署が統合され現在の財務省が編成されました。その趣旨は、管理体制の再編成により徴税と監督プロセスの簡素化を図ることでした。
事実、ブラジルの税制はデジタル簿記公共システム(SPED)を取り入れるなどして税収確保を順調に進めています。
今後もブラジルの経済状況、社会情勢などの影響により、随時税制改正が予想されるため、常に最新の税制の動向、実務上の取扱いを確認することが重要です。
ブラジルの租税法
ブラジルの租税法体系は、ブラジル憲法、通常法令、補足法令、法令コードなどの階層からなっており、これは、日本の税法において、税目単位で本法、施行令、施行規則、通達が定められていることと類似しています。
ブラジルにおける、税務処理の手順、罰則などの概要については、国の定める各法律に記載されており、個別具体的な取扱については、各税法細則で規定されます。
また、租税法にかかわる諸規定のうち、暫定措置法の規定により、詳細な税率やその取扱が決定されることがあります。しかし、これらの暫定措置は120日以内に立法化されなかった場合は無効になります。
以下はブラジルの税に関連する主要な法律です。これらは、連邦、州、市によって管轄されています。実務上、特に重要となってくる 直接税及び 間接税の個別の税法の詳細については、個別税務にて解説します。
ブラジルにおいては、それぞれ税目ごとに、IRPJ(法人所得税法)やIPI(工業製品税)等と税目を省略して記載していることが一般的です。たとえば「IRPJ 26」であれば、「法人所得税法26条」と読み替える必要があります。同様に ICMS( 商品流通サービス税)、ISS(サービス税)など、頭文字をとって記載されているものが多くあります。以下に、頻出する税の略称の例を記載します。
■ 税目の種類
ブラジルにおける税金の種類は、大きく「連邦 税」と「 地方税」に区分されます。
ブラジルでは税法のみならずその他の法令も、可決された年度や可決された累積の法令番号をベースに正式名が決定します。つまり、法令の内容によってではなく、可決された順番によって法令番号が決定されるので、法律の検索や抽出には法令番号が重要となります。
■ 連邦 税と地方税
[連邦税]
ブラジルの税金は多くが連邦 税であり、所得税、付加価値税、輸入税、金融税などがこれに該当します。
[地方税(州税と 市税)]
地方税は、州税と市税の2つに区分されます。州レベルでの付加価値税で代表的なものに、商品流通サービス税があります。また、市税のレベルでもサービス税などのサービスの役務提供のみに課される付加価値税があります。
州税・市税の概要や適用方法は、州税・市税に関する法律により定められており、州や地方行政により決定されます。申告に使用するシステムも異なるため、拠点を設置する州や地方政府の税務当局に確認する必要があります。
■ 直接税と間接税
[直接税]
直接税とは、税金を納める「納税義務者」と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。ブラジルにおいては所得税、特別財源税などがこれに該当します。
[間接税]
間接税とは、直接税と異なり、 納税義務者と実際に負担する者が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接納付するのではなく、他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。付加価値税などがこれに該当します。
■ 納付書(DARF)の見方
ブラジルではどのように税金を納めるのかといますと、DARFという納付書をオンライン上で作成いたします。サービス税(ISS)以外は以下のような書式になっております。
01: NOME / TELEFONE
会社名・個人名 / 電話番号
02: PERÍODO DE APURAÇÃO
該当日(日/月/年)
03: NÚMERO DO CPF OU CNPJ
CPF番号 または CNPJ番号
04: CÓDIGO DA RECEITA
対象税金番号(4桁)
05: NÚMERO DE REFERÊNCIA
レファレンス番号(なくても可)
06: DATA DE VENCIMENTO
納付期日(日/月/年)
07: VALOR DO PRINCIPAL
金額(罰金、遅延損害金を含まない)
08: VALOR DA MULTA
罰金
09: VALOR DOS JUROS E / OU
ENCARGOS DL - 1.025/69
遅延損害金
10: VALOR TOTAL
合計金額
11: AUTENTICAÇÃO BANCÁRIA
(Somente nas 1ª e 2ª vias)
銀行窓口で支払う際に必要なバーコード、ならびに納付書番号(48桁)
+ .2 .進出にかかわる税務
進出の際の税務
海外でのビジネスを行う場合、取引についてさまざまな税金の問題がかかわってきます。事前に検討すべき税務上の留意事項としては、以下の項目があげられます。
・ 取引国との 租税条約の有無、内容についての確認
・ 現地国の税制の把握(どういった税目、内容の税金が存在するか)
・ 投資に対する優遇制度等の有無、その内容
・ 取引に対する課税制度(取引を行うに当り、どのような税務リスクがあるか)
・ 現地国で生み出された利益の還流スキーム
現地に拠点を設けずに日本から輸出販売、代理店を通じた事業活動などを行う場合には、関連してくる税金の種類も少ないのですが、現地に拠点を設けてビジネスを行う場合には、ブラジルの内国法人として、ブラジルの 租税法に基づき課税が行われることになります。
以下、ビジネスの形態ごとに税務の取扱を検討していきます。
■ 拠点を設けずにビジネスを行う場合
特段拠点を設けず、ブラジルの会社と取引を行う場合でも、その取引に付随して税金の問題が生じます。
拠点が存在しない場合には、ブラジルにおいては通常「外国法人」とされ、ブラジルにおいて発生した所得にのみ、ブラジルの租税法に基づき、課税が行われることになります。
また、拠点が無い場合であっても、ブラジルにおいて 恒久的施設(PE: Permanent Establishment)認定という形で課税が行われるケースがあるため、注意が必要です(詳細は「租税条約」を参照)。
■ 拠点を設置してビジネスを行う場合
取引が拡大し、ビジネスの規模が大きくなってくると、現地に拠点を設けてビジネスを行うことになります。以下、進出の形態ごとに関連する税務規定を検証していきます。
[支店などの営業拠点を設けてビジネスを行う場合]
支店形態で事業を行う場合は、支店で発生した利益に対して課税されます。また、支店で発生した利益は、本店所在地国において合算課税されます。
[現地法人を設けてビジネスを行う場合]
現地法人を設立した場合には、その現地法人はブラジルの内国法人となるため、ブラジル、その他すべての国で発生した所得に対して、ブラジルで税金が課されることとなります。また、法人税率は、15%(+付加税10%)の税率が適用されることになります※。この場合、その他の国の所得につき、当該他の国において二重課税となるときは、外国税額控除の規定によりその二重部分の税額につきブラジルにおいて納付すべき法人税額から控除することになります。
※ 更に法人の利益に対する社 会負担金(CSLL)が9%課税されるため実効税率は34%となります
投資還流方法についての検証
ブラジルへ進出し、現地での活動を通じて利益が発生した場合、この利益を留保して再投資するか、親会社に還流するか、という問題が発生します。
現地において再投資をする場合には、税務上の問題は特段生じませんが、日本にある本社または親会社へ利益を還流する場合には、その還流方法により税務上の取扱が異なってきます。
■ 子会社➡親会社への還流
ブラジル子会社で生じた利益を日本親会社へ還流する場合、その方法としては、以下の2つの方法があります。
[配当により親会社へ還流する方法] … ❶
配当により還流を行う場合、ブラジル子会社からの配当金支払時に源泉税は課税されません。1967年に結ばれた日伯 租税条約においては、税率12.5%と記載されていますが、ブラジルの国内法においては、配当に対する課税はないものとされているため、プリザベーション・クローズを適用して 租税条約よりも税法を優先させることができます。
また、 配当を受取る日本側の親会社にとっては、 配当は所得として、法人税の課税対象になります。しかし、外国子会社から受取る 配当については、2009年度の税制改正において、 配当額の95%部分を益金不算入にできる「外国子会社から受ける 配当等の益金不算入制度」が導入されました。適用を受けられる対象は、以下の通りです。
外国子会社から受ける配当等の益金不算入制度の対象となる海外子会社の要件
・出資比率 … 国内親会社が海外子会社の発行済 株式等の25%以上の株式等を保有していること(二国間の租税条約で特例が定められている場合は、その出資比率を適用。ブラジル:10%以上)
・ 株式保有期間 … 上記の株式等を配当の支払義務が確定する日以前6カ月以上引続き直接に保有していること
なお、2015年の税制改正により、外国子会社配当益金不算入の対象となる配当から、外国子会社において損金算入されている配当は、本制度の適用対象外とされることになりました。その為、2016年4月時点ですでにブラジル進出している企業において、2018年4月以降、日本で受け取ったブラジルからの利子配当は課税対象となります。
[会社との取引を通じて還流する方法] … ❷
親会社に対しての経営指導料やシステムの使用料の対価、ロイヤルティ等により利益還流を行う場合、ブラジルからの支払時には、通常は特定財源負担金(CIDE:Contribuições de Intervenção no Domínio Econômico)10%が課されます。よって、支払総額から10%を控除した残額が親会社へ振り込まれることになります。また、この場合は源泉税15%も課税されることになります。(日本への送金の場合、租税条約によって12.5%)
実務において、上記❶の配当によって還流する場合と、❷ロイヤルティにより還流する方法について、負担する税金額の違いを見ていきます。
■ 配当、取 引還流による税金負担額の検証
100円を❶配当、❷ロイヤルティにより還流する際の条件を下記の通りとします。
・ 子会社株式の保有割合は100%とする
・ ブラジルの法人所得税率を25%とする
・ 日本の法人税の実効税率を40%とする
・ 便宜上、日本法人の(子会社からの還流前)利益を0とする
・ 還流額についての合理性、客観性は確保されているものとする
・ 通貨はすべて円換算しているものとする
・ その他の事項は考慮しないものとする
[ケース❶:利益100 円を配当によ り、ブラジル子会社から日本の親会社へ還流する場合の税額検証](※合算税額の計算上、全て円建てで記載)
日本側
日本の法人税 ( 100 円-95 円※)×40%=2 円
※外国子会社等の受取配当金の益 金不算入額 100 円×95%=95 円
日本とブラジルの合算税額
上記(B)配当に対す る源泉税は、日本側では9 5%税額控除可能なため税額は2円です。従って、ブラジルの法人所得税と日本の法人税を合算すると、以下の通りとなります。
50 円(ブラジル)+2 円(日本)=52 円
結果として、上記例の場合、52円が配当として 100円を還流した際のブラジル、日本の納付税額の合計となります。
[ケース❷:利益100 円をロ イヤルティにより、ブラジル子会社から日本の親会社へ還流する場合の税額検証](※合算税額の計算上、全て円建てで記載)
ブラジル側
①ブラジルの法人所得税
(A)税引前利益100 円 × 25% = 25 円
②ロイヤルティに対する源泉税
(B)100円 ×(10% + 12.5%) = 22.5 円
③①+②
25円 +22.5円 = 47.5 円
日本側
日本の法人税
100 円×40%=40 円
40 円 - 22.5円(外国税額控除額) =17.5円
日本とブラジルの合算税額
上記(B)子会社からのロイヤルティに対する源泉税は、日本側では外国税額控除により、税額控除が可能です。従って、ブラジルの法人所 得税と日本の法人税を合算すると、以下の通りになります。
47.5円(ブラジル)+ 17.5円(日本)=65 円 (合計)
結果として、上記例の場合、65円が100円をロイヤルティとして、還流した際の納付税額となります。
結果、今回のケースにおいて設定した前提条件の下では、配当とロイヤルティによる還流を比較した場合、配当による還流の方が税負担が少ないという結果になりました。大きな原因としては、ブラジルと日本の法人税率の格差と、日本での海外子会社からの配当が非課税とされている点があげられます。つまり、税率の高い日本で課税される所得の割合が増えれば増えるほど、税制メリットが少なくなります。
今回のケースはあくまで一例であり、実際の取引条件や規制によって結果が異なることもあります。また、ロイヤルティなどの親子会社間の取引を通じた還流については、移転価格税制の対象となるため注意が必要です。
ブラジルからの利益還流については、還流方法によって負担すべき税額が異なるため、実際に行う際には、包括的なメリット、デメリットを検討し還流方法を選択することが重要となります。つまり、実務上は高度な判断を要することになるため、合理性や客観性をもとに、慎重に検討していくことが重要です。
+ .3 .国内税法の個別論点
個人所得税
■ 個人所得税の概要
ブラジルに居住する個人や日本からの現地駐在員についての個人所得税額を計算する場合、まずその対象となる人がブラジルにおいて「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまりその対象者の居住性を判定する必要があります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なってきます。それぞれ区分ごとの定義については、以下の通りとなります。
■ 居住者の定義
ブラジルにおける税務上、以下の要件のいずれかを満たす場合には、居住者として区分されます。
・ ブラジルに定常的な住居を有する者
・ ブラジルに定常的な住居を有していないが国内で 雇用契約を結んだ者(Permanent and Temporary)
・ 12カ月以内に183日を超えてブラジルに滞在している者
ブラジルにおいて「居住者」となった場合には、ブラジル国内の所得だけでなく、どこで受取ったかにかかわらず、その他の国において発生した所得のすべてがブラジルにおいて課税されることになります(いわゆる、全世界所得の申告が必要になります)。
つまり、日本からの駐在員で、ブラジルの居住者となった者が、日本において不動産などを有していて、そこから賃貸収入などが発生している場合、ブラジルでの所得を合算して、ブラジルにおいて所得税課税が行われることになります。
この場合に、ブラジルと日本の両国で課税が行われたときは、ブラジルの確定申告において、外国税額控除の規 定により、二重に課税されている分の税額を控除することができます。
一方、非居住者となった場合には、ブラジル国内で発生した国内源泉所得のみ、ブラジルにおいて課税されることになります。それ以外の国外所得については、ブラジル以外のそれぞれの国において課税がされます。
前述のように、ブラジルの税法では、税務上の居住者をブラジル国内に183日を超えて滞在する者または、ブラジル国内に住居を有する者、もしくは国内 雇用契約を結んだ者と定義しています。
一方、日本の所得税法では「居住者」を、国内に住所を有し、または現在まで引続き1年以上居所を有する個人、と定義していることから、日本とブラジルの双方で居住者の認定を受け、所得税が両国で二重に課税されるケースもあります。
設立間もない製造子会社の立ち上げ支援などで、ブラジルの子会社等に派遣される場合、あるいは業務のために頻繁に出張する必要があり、結果としてその滞在日数の累計が183日に達する場合、この二重課税に該当するケースは少なくありません。仮に、両国で居住者に該当する場合には、両国間で締結されている租税条約に基づき、いずれかの国でのみ当該国の居住者として決定されることになります。
また、日本からの短期の出張や現地視察の場合などで、滞在日数等一定の要件を満たす場合には、海外勤務分の所得については 租税条約に基づき 免税となります。
■ 個 人所得税の税額計算
課税対象となる所得は、税額の計算方法により、3つに区分されます。日本からの駐在員は通常給与所得が発生するため、下記のうち総合課税となる所得の税額計算方法を理解しておく必要があります。
[総合課税となる所得の計算方法]… ❶
課税対象となる所得の範囲
個人が稼得するほとんどの収入が課税の対象となります。駐在員のケースを考えると、給与やボーナスはもちろんですが、会社が従業員の代わりに負担したアパートの家賃や扶養者の教育費などはフリンジベネフィットとして、課税の対象となります。課税対象としては以下のものがあげられます。
・ 給料、諸手当、ボーナス
・ ロイヤルティ及び権利使用料
・ 外貨レートの為替差益
・ 金融所得
非課税となる所得
一方、収入であっても、所得税法上課税がされないと規定されている主な「非課税所得」については、所得形式や業界によって異なります。
ブラジルでは連邦、州、市レベルで税金について各自法律が存在しますので100%免除される項目もあれば、段階的に免除あるいは税率が軽減される項目もあります。主に以下のものが含まれます。
・ 配当金
・ 贈与・相続により取得した権利や財産
・ 社会保険から支払われる身体障害者や重病患者への支給金
・ 死亡保険金
・ 失業保険
・ 海外銀行口座為替差益及び海外資産譲渡為替差益
所得から控除できる経費
所得税が課税される所得金額については、収入金額から、その収入を得るために支出した金額を控除して算出します。ただし、事業を営んでいない個人については、経費として控除できる金額が少なくなります。
所得控除
上記により算出した所得から、一定の所得控除額を控除することができます。確定申告の方法には簡易申告と完全申告の2つの方法があり、それぞれ所得控除額が異なります。
簡易申告の場合、課税対象所得の一律20%の基礎所得控除が適用されます。ただし、上限額の設定があり、2022年度はR$ 16,754.34となります。簡易申告の場合は、所得控除を証明するための証憑類は不要となります。
一方、完全申告の場合は以下の金額を所得控除することができます。
【所得控除一覧】
控除対象 | 年間控除額 |
連邦、州、市に支払う社会保険料 | 原則全額 |
企業年金 | 年間課税総所得の 12% まで控除控除 |
配偶者・扶養控除(1人当たり) | 2,275.08 |
教育費(1人当たり) | 3,561.50 |
医療費(保険金から支払われた額を除く) | 原則全額 |
弁護士費用(裁判費用) | 原則全額 |
税率
税務上の居住者に対しては、上述のように総収入から各種所得控除金額を差引いた課税所得の額に応じて、5段階の累進税率が適用されます。毎年、課税所得の範囲が少しずつ修正されており、2017年度のものは、以下のようになります。
【個人所得税率(2018年度)】
【個人所得税(2022年度)】
年間課税所得 | 税率 |
~ 22,847.76 | 免税 |
22,847.77 ~ 33,919.80 | 7.5% |
33,919.81 ~ 45,012.60 | 15.0% |
45,012.61 ~ 55,976.16 | 22.5% |
55,976.16 ~ | 27.5% |
[分離課税所得の計算]… ❷
分離課税とは、他の所得と合算せずに、分離して課税されることをいいます。つまり、個人の所得税確定申告の際に、課税所得として合算する必要はありません。分離課税の対象となる所得として、以下の項目が規定されています。
・ 預金利息、社債・国債の利息、 個人会員の組合への預入金に対する利息
・ くじ引き、賞金による所得
・ 宝くじ及びその他の賞金
・ 証券取引所における株式 ・その他証券 取引、デリバティブ取引、株式の売却・出資金の譲渡による所得
・ 土地・建物などの資産譲渡、建設サービス業、不動産業、土地・建物の賃貸所得
・ その他政令で定める所得
これらの所得は、他の所得とは分離され、それぞれの所得ごとに定められた税率を乗じて、税額が算出されます。キャピタル・ゲインについては、原則15%の税率が適用されますが、一部例外があるので注意が必要です。
■ 個人所得税の申告・納付手続
所得税額の算定を行った後、個人所 得税の申告、納付手続を行うことになります。
個人の課税対象期間は暦年(1月1日から12月31日)とされており、申告・納付期限は翌年の3月1日から4月30日までとなります。
会社から支給される給与については、会社が源泉徴収をして毎月納付する義務がありますので、確定申告において算出される税額から毎月の源泉徴収により前納した税額との差額を確定申告時に納付することになります。
確定申告の際には、所得だけではなく、ブラジル国内外に保有する不動産、株式 、自動車などの資産の購入価額や、入国時及び12月31日時点の銀行残高を提出する必要があります。
一方、ブラジル国外所得や、国内で受取った受取家賃、個人からの収入、ブラジルにおける個人事業主や一部の専門家(医者、弁護士等)、企業が支給時において所得税を源泉徴収しない所得については、個別に月次申告が必要となり、適時納付を行う必要があります。適時の申告、納付が行われていない場合、個人所得税の確定申告時に、正しい申告時期および税額を計算し、申告漏れに対するペナルティと、納付漏れによる利息が加算された金額を納付する必要があります。
なお、「所得控除一覧」で記載されている所得控除額以上の収入があるすべての個人は、納税者番号(CPF:Cadastro de Pessoas Físicas)を取得し、確定申告をしなければなりません。
納税者番号の登録義務があるにもかかわらず登録を怠っている場合には、ペナルティが科されるため注意が必要です。
法人所得税
■ 法人所得に対する課税の概要
ブラジルの法人税率は、15%(もしくは、付加税10%をあわせた25%)と一般的にいわれていますが、実際の実効税率は、法人の利益に対する社会負担金(CSLL)9%をあわせた34%になります。ブラジルでは、社会保障目的の財源として、さまざまな社 会負担金制度が定められています。従って、法人税だけでなく、法人の利益に対するCSLLについての理解も同時に必要となります。
■ 納税義務者
ブラジルの法人所得税の 納税義務者は、すべての法人及び個人事業者と定められています(所得税法146条)。法人とは、内国法人だけでなく、外国法人の支店も含まれます。
個人事業者の範囲は、所得税法150条に定義があり、個人企業として登録されている者、営利を目的に事業を行う者(ただし、医師、会計士などの一部の専門家は除く)、個人の名義で不動産開発を行う者、とされています。
一方、以下の法人については、法人税課税にそぐわない団体であるという理由により、法人税課税の対象外とされています。
・ 宗教法人
・ 非営利団体(学校、社会福祉または公益団体など)
・ ブラジル連邦政府、地方公共団体、政府の直接管理下にある施設
■ 課税所得の範囲
ブラジルで設立された法人・事業体は税法上の「内国法人」として扱われ、ブラジル国外で発生した所得についても課税対象となる、いわゆる全世界所得課税が行われます。ただし、国外源泉所得に関しては、源泉地国ごとに所得を計算し、損失の生じた国に関しては課税所得の計算から除外します。
一方、外国法人の支店については、国内源泉所得のみが課税の対象となります。
■ 3つの課税所得の計算方法
ブラジルの法人税を計算する方法としては、3つの方法が規定されています。
[実質利益法]
1つは、実質利益法(Real profit system)と呼ばれる方法であり、会計上の利益に法人税法上の調整項目を加減算して、税務上の課税所得を算出する方法です。日本の法人税計算と同じ方法であり、最も多く利用されています。
以下に該当する企業は、実質利益法により申告を行わなければなりません。
・ 前年度の総売上高、その他すべての収入の合計が7,800万レアル以上
・ 公開会社
・ 金融、保険業
・ 不動産売買、分譲、建設業
・ 公社・ 外国法人の支店
・ 法人税の減免措置を受ける企業
・ 予定納付を行わなかった企業
[推定利益法]
2つ目は、推定利益法と呼ばれる方法です。これは、小規模の企業にのみ認められている、いわゆる簡便法です。極めて小さい規模で事業を行っている企業にとっては、すべての取引を帳簿記入し決算処理をすることは、手間がかかり合理的ではないケースもあります。そのため、売上額に一定の率を乗じた金額を利益とみなして(推定して)、課税所得を計算する方法です。つまり、最終利益が赤字であっても、推定利益法では売上額から簡易的に最終利益を計算するため、法人所得税が発生することになります。
推定利益法を使用することができる企業は、以下の要件を満たした企業となります。
・ 前年度の総売上高及びその他すべての収入の合計が7,800万レアル以下であること
・ 金融機関や保険会社以外であること
・ ブラジル国外からキャピタル・ゲインやその他の収入を得ていないこと
・ 減免措置を受けていないこと
・ 債権買取業務及びファクタリング業務を行っていないこと など
推定利益法を用いる場合は、会計帳簿の記帳を行う必要が無く、現金出納張及び棚卸品在庫帳の記帳のみが義務付けられます。発生主義または現金主義のいずれかを採用することができますが、通常、推定利益法を用いる企業は、より簡便である現金主義を採用しています。
推定利益法で用いる推定利益率は、業種ごとに規定されており、以下の表の通りです。売上額に以下の推定利益率を乗じた金額が課税所得となり、それに法人税率を乗じて税額が算出されます。実質利益法との主な差異は、売上に掛かる社会負担金であるPISとCOFINSの課税率が異なる点(推定利益法はPIS:0.65%、COFINS:3%)と、利益計算方法の性質上、費用概念がないことにより、損金算入や、繰越欠損金、クレジットによる税額控除等が不可となる点が挙げられます。
[裁定利益法]
3つ目は、裁定利益法という方法です。これは企業が自主的に採用する方法ではなく、企業が行った税務申告に不備がある場合に、税務当局の判断によって罰則的に利用される方法です。
帳簿や申告手続に不備がある場合には、業務内容において妥当とされる利益率をベースに裁定されます。実務上では上記の推定利益法における推定利益率に20%を加算した率によって、課税所得が算定されることになります。
■ 課税期間
法人所得税の課税期間は、原則として暦年ベースで1年間、もしくは3カ月間とされています。日本をはじめとする多くの国では、1年間を課税期間とすることが多いため、課税期間を3ヵ月に設定することは、ブラジルの税法の一つの特徴となっています。この場合、3カ月に1度決算処理を行い、確定申告納付を行う必要があります。
実質利益法を採用して課税所得を計算する場合は、1年間を課税期間とすることが認められており、実務上はこの方法が最も一般的に利用されています。
■ 課税所得の計算方法
前述の通り、ブラジルの所得税法には3つの課税所得の計算方法が規定されていますが、これ以降の解説においては実質利益法によることを前提とします。
課税所得の算定については、一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて算出された利益をベースとして、損金不算入項目や繰越欠損金等の税務上の調整項目を加減算することによります。
[税務上の収益認識基準]
税務上の収益認識については、基本的に会計上の収益認識時期と同様のタイミングで行います。しかし、工事契約などの長期請負工事については、会計上は工事の進捗度に応じて収益を認識しますが、税務上は1年未満で引き渡しを行う契約については、工事完成基準により益金を認識することになっているため、会計と税務で認識時点が異なることがあります。
以前は、サービスの収益認識について、税法基準、すなわち税務上のインボイス発行時を税務上の収益認識時点とするだけではなく、同時に会計上の収益認識時点とみなしてきました。今後は会計 基準による収益認識時に税務上の収益認識時点を合わせることになります。
[損金計算]
課税所得の計算に当たっては、会計上で計上した個々の費用につき、税務上も所得から控除できるか(損金算入)、できないか(損金不算入)の判断が重要になります。
以下、主な項目について、損金算入の有無を見ていきます。
売上原価
棚卸資産の評価については、平均法、先入先出法のいずれかを選択することができます。会計上は、棚卸資産の期末における正味売却価額が帳簿価額を下回る場合に評価損を計上することが要求されますが、税務上は、当該評価損の計上は認められていません(189条、法令8981/95)。また陳腐化や品質劣化による廃棄損などは、国税局の承認に従い、損金処理することが容認されます(290条、291条)。
固定資産
固定資産の取得価額
税務上、固定資産の取得原価に加えて、固定資産の取得に直接要した費用を取得価額とします。運賃や関税 、保険料、据付費用などが取得価額に含まれます。
減価償却費
税務上、固定資産の減価償却費については、基本的に定額法により耐用年数表で定められた期間で減価償却を行うこととされています。
有形固定資産の減価償却費
原則として、耐用年数が1年を超えるものを有形固定資産として取扱います。ただし、取得価額が1,200レアル以下の少額資産については、取得年度に費用処理することが認められています。取得価額を償却基礎額として、下表の分類に従い定額法により償却を行い、算出された償却費が税務上の損金算入限度額になります。
また、中古の資産を取得した場合には、以下のいずれかの長い方の耐用年数を使用することが可能です。
・ 通常の耐用年数の半分
・ 中古品の取得時における残存耐用年数
工場などで機械を使用する場合、通常の稼働時間を超えて操業をする場合、資産の減価が進んでいると考えられます。この経済的実態に合わせて、通常の操業時間を超えて使用された資産については、通常の償却に割増した償却率を使用することができます。ただし、割増減価償却を適用するためには、会計上、当該金額を減価償却費として計上しておかなければなりません。
[繰延資産]
税法上、繰延資産とされている項目は、「特許権・著作権」、「公共的なサービスを提供する事業権利の行為のために使われた事業投資」、「契約上の権利の取得・更新等のための支出」、「賃借した資産や第三者の資産の上に行われた建築や設備」、「森林資源開発事業権の取得に要した支出」などであり、これらは契約期間に基づき償却することが要求されます。
創立費
会社の設立時に直接必要された支出額は、税務上一括損金処理が認められていません。よって繰延資産として5年以上10年以下で償却する必要があります。
開業準備費
開業準備費には、会社を設立後、営業を開始するときまでに支出された従業員トレーニング費、従業員の給料、オフィスの賃貸料などが含まれます。開業までに支出されたすべての費用は、税務上は、繰延資産として5年以上10年以下で償却する必要があります。
[役員報酬・役員賞与]
役員報酬は原則として全額の損金算入が認められています。しかし、毎月の報酬以外に賞与として支払われる場合には、損金不算入となります。あらかじめ、賞与分を月額の報酬に含めておく必要があります。
[租税公課]
法人所得税を除く税金については、原則として損金の額に算入されます。ただし、追徴などにより発生する罰金は、損金不算入となります。
[交際費等]
経営者や 株主の飲食代や、得意先などに対する贈答費用などは、原則として損金不算入となります。
[寄付金]
寄付金は、一定の寄付金を除き、原則として損金不算入となります。
[引当金]
税務上引当金の損金算入は認められていますが、以下の3項目に制限されています。
従業員有給休暇引当金
従業員に付与される有給休暇権利日の日数に対応した金額を引当金として計上した場合、税務上の損金として認められます。ただし、各個人に対して計算した金額が認められるだけであり、有給休暇権利日に基づかない予想額で計上していた場合は損金計上が認められません。
13 カ月給与引当
年末に行う13カ月給与の支払に備え、毎月一定額の金額を引当金として計上していた場合、損金計上が認められます。
貸倒引当金(貸倒損失)
支払が滞っている債権、回収が不可能となった債権に関しては、一定の基準を満たした場合に貸倒損失の計上が税法上認められますが、ブラジル会計基準は国際会計基準と類似している点が多く、金融資産などを除く通常の債権に関しては貸倒引当金を計上する引当法ではなく、税務上の規定に基づき発生時点において直接貸倒損失を計上する直接減額法で処理します。税法上貸倒損失の計上が認められるのは、以下の4つの基準を満たす場合に限られます。
・取引が5,000レアル以下で6カ月以上支払がない売掛金や、取引が5,000レアル超3万レアル以下で1年以上支払がない売掛金等で支払保証がない売掛金
・取引額が3万レアル以上で、1年以上の支払遅延が生じ、司法を通じた取立の手続が行われている場合
・2年以上の支払がない支払保証付債権で、司法を通じて取立手続を行っている場合
・債務者が倒産した場合
・債務者の支払不能宣告が裁判所からあった場合
[ロイヤルティ]
技術援助等に対して支払われるロイヤルティは、国立工業所有権院(INPI)に登録していること、及び純売上高の5%を上限とする上限比率に従っていることが損金算入の条件とされています。日系企業の場合、親会社へロイヤルティを支払う場合が多いですが、事前に損金算入の要件を確認しておく必要があります。
[為替差損]
会計上、毎期継続して適用する方法によって計上した為替差損は、税務上も損金の額に算入されます。
[繰越欠損金]
税務上算出された損失は、翌事業年度以降の課税所得の30%を限度として繰越控除が認められます。残額がある場合、その損失額は繰越すことが可能です。なお、1995年1月1日以前は繰越控除期間の限度がありましたが、現在では繰越控除期間の限度はありません。従って、一度算出された損失は、将来の所得と相殺されるまで、繰延べられることになります。
また、繰越欠損金の繰戻還付制度は、ブラジルにはありません。
■ 税率及び税額計算
上記により算出された課税所得に対して、原則15%の法人税率が適用されます。ただし、年間の課税所得が24万レアルを超える額については、追加的に10%の付加税が加算されます(この場合の実効税率は25%となります)。
課税期間を3カ月としている企業の場合は、各課税期 間における課税所得が6万レアルを超えると、付加税も合わせて課税されることになります。
なお、実務上は、更に社会負担金の9%が追加されるので、実際の法人所得に対する実効税率は34%となります。
■ 申告・納付
ブラジルの税法上、3つの方法による課税所得の計算が認められていますが、各方法により申告・納税方法に差異があります。
[実質利益法の場合]
確定申告・納付
税法では、原則として1 ~ 3月、4 ~ 6月、7 ~ 9月及び10 ~ 12月の各3カ月間をそれぞれ課税期 間としています。この場合、3カ月ごとに決算を行い課税所得及び法人税額を算出し、課税期 間末日の翌月末までに納付を行います。あくまでも課税年度は暦年で締め、確定申告を行います。
一方、任意で1年間を課税期 間とすることができます。
上記いずれの課税期間を採用する場合であっても、確定申告書の提出は、原則翌年の6月末には申告書の提出が義務付けられています。
ただし、通達などによって若干の変更が行われることがあるため、事前の確認が必要です。
月次予定納付
3カ月を課税期 間として採用する場合には予定納付の必要はありません。一方、1年を課税期 間とする場合は、月次の予定納付が必要になります。月次の予定納付額の算定方法は2つの方法が認められています。
1つ目は、各月の売上高に対し、以下の表の一定の比率を乗じて算出される推定利益に対して15%の法人税率を乗じて算出する方法です。算出される月次の推定利益が2万レアルを超過する場合には、10%の付加税も合わせて課税されます。
2つ目は、1月から当月までの累積期間を1つの課税期 間とみなして、当該期間における損益を基にした課税所得を算定し、それに税率を乗じることで予定納税額を算出する方法です。損益がマイナスになる場合や、前月までの予定納付額が超過している場合には、予定納付を行わないことも認められます。この方法の場合は、損益状況を税務当局に知らせる必要があることから、課税台帳(EFD-IRPJ:Escrituração Fiscal Digital - IRPJ)の記入が義務付けられます。
これら2つの方法は、期中において変更することができます。実務上は損益が発生しないと見込まれる場合には、予定納付は行わないことも認められます。
上記いずれかの方法により算定された予定納付額は、当月の翌月末までに納付しなければなりません。
[推定利益法及び裁定利益法の場合]
推定利益を用いて納付する場合、各3カ月の課税期間を確定納付として一括で翌月末日までに納付します。申告は1月から12月を1年とした納税申告を原則翌年の6月末までに提出します。申告日程は実質利益法と同様に、通達や法令の改正で若干異なることがあります。
法人の利益に対する社会負担金(CSLL)
■ 法人の利益に対する社 会負担金(CSLL)の概要
ブラジルには、日本ではなじみのない法人の利益に対する社 会負担金(CSLL)という制度があります。国民の年金や健康の保護を目的とした社 会保険の財源確保のために、取り入れられている制度です。
この法人利益に対するCSLLだけではなく、法人売上に対する社会保険融資負担金(C OFINS)など、担税力に応じて財源の負担を求めるものとなっています。
福祉団体など一部の団体を除き、すべての法人及び事業者が納税義務を負います。
前述の通り、法人税法上の法人税率は25% {基本税率15% + 付加税10%(年額24万レアルを超える場合)}ですが、法人の利益に対する社会負担金が、課税所得に対して9%の税率(金融、保険業等は15%)で課税されるため、これを加味した実効税率は34%になります。
■ 納税義務者
国内に住所を有する法人もしくは法人格の扱いを受ける者は、納税義務者となります。ただし、福祉団体、協会、財団などの場合は免税の対象となります。
■ 課税期間
CSLLの課税期間 は、法人所得税の課税期間と同様になります。
■ 法人の利益に対する CSLLの計算方法
[対象となる利益の計算方法]
CSLLの 課税標準は、基本的に法人税の課税所得と一致します。所得の計算方法は、法人税の計算方法として選択した方法(実質利益法、推定利益法、裁定利益法のいずれか)により計算します。
ただし、推定利益法を利用する場合には、推定利益率は、サービス業を除き一律12%となっています(サービ.業に関しては32%)。
[税率]
上記の項目で調整されて算出された金額に、CSLLの税率(一般法人の場合9%、金融・保険業などは15%)を乗じた額が、CSLLの納付税額となります。
■ 申告・納付
法人税申告書の社会負担金納付計算明細欄にCNPJ等の企業情報、課税所得、申告額等を記入します。
なお、申告期限については法人税と同様の期日となっています。
+ .4 .間接税
間接税の基礎知識
ブラジルの間接税は、「世界一複雑である」といっても過言ではありません。 間接税の基本的な考え方を理解していないと、理解が困難なケースが多々あります。そこで、 間接税の基本的な考え方をまず解説し、その後にブラジルにおける 間接税を解説していきます。
■ 間接税とは
間接税とは、国や地方自治体に税金を納める 納税義務者と、実際に税金を負担する担税者が異なる税金のことを指します。日本の消費税のように、物品やサービスに税額を上乗せし、次段階に転嫁することで、最終消費者が担税者となり、納税義務者と担税者が異なります。
■ 付加価値税方式と取引高税方式
多くの国では付加価値税方式を採用しているために、 間接税=付加価値税という考えになりがちです。しかし、実際には付加価値税方式以外に取引高税方式という課税方法もあります。
[付加価値税方式]
間接税の一般的な課税方式は、日本の消費税のような「付加価値税方式」と呼ばれる方法です。価値が付加される段階で税が転嫁され、最終消費者が実質的な担税者となる方法です。 納税義務者は、受取った税から支払った税を控除した金額を納付することになります。
ブラジルでも、この付加価値税方式が原則的な方法となりますが、法人税の課税所得の計算方法などにより、課税方式が異なることがあります。
[取引高税方式]
取引高税方式とは、取引額を 課税標準とする点は、付加価値税方式と一致するものの、前段階までの課税額が控除されないために税負担が累積していくという点で異なります。簡単にいえば、仕入税額控除を行うことができないという特徴を持ちます。
■ インボイス方式と帳簿方式
付加価値税の計算方法には、インボイス方式と帳簿方式の2つがあり、日本では帳簿方式が採用されています。帳簿方式は、一 課税期間中の売上の合計額に税率を乗じた額から、同期間中の仕入合計高に税率を乗じた額を控除して算定する方式なので、前段階取引における税額が転嫁されない分、正確な税額を把握するのが困難となります。
一方、EU諸国ではインボイス方式が採用されており、取引ごとのインボイスを使い税額を算定することで、前段階取引においての税額も把握できるので、正確な 仕入税額控除額の算定が可能となります。
ブラジルにおいては、EU諸国で採用されているインボイス方式を原則的な方法として採用していますが、一部の 社会負担金については帳簿方式を取り入れています。物品の購入やサービスの提供を受けた際には、納税番号や税額が正しく記載されたタックスインボイスを取引先から入手して確実に保管しておかなければなりません。
ブラジルの間接税の概要
1つの取引に対し複数の間接税が課されるなど、日本と違いブラジルの間接税制度は非常に複雑です。主な特徴は以下の通りです。
■ 複数の税目
ブラジルは提供されるサービスの内容等によって、課税される税金が変わります。1つの取引に対して複数の税金が同時に課されることも少なくありません。また社会保障の財源確保を目的とした 社会負担金も課税されるので、合わせると課税負担が上昇することになります。
■ 税込金額あるいは税抜金額
ブラジルの間接税は日本と違い、税込金額に対して税率を乗じて税額を算定します。たとえば、日本で100円の商品を購入した場合、消費税課税前の100円に対して消費税5%が課税され、購入者の消費税負担額は5円となります。
一方、ブラジルにおいては税込方式を採用しているため、一度100円を5%で割戻して 課税標準額を計算します100 ÷ (1 - 5%)。この課税標準額に税率を乗じて税額を算定する方法を採用しているため、計算が複雑なものとなっています。
COFINS(社会保険融資負担金)
社会保険融資負担金(COFINS: Contribuição para Financiamento da Seguridade Social)とは、社会負担金の一つであり、法人の売上に対して課されます。社会負担金とは、福祉や社会保障のための財源確保として利用されるものであり、ブラジルでは企業や個人などに広く負担が求められています。原則として、物品の販売やサービスの提供時に、税込売上額の何%という形でサービスの受手に請求され、算出した受取COFINSから支払COFINSを控除した差額を納付することになります。
■ 納税義務者
一部団体や財団を除き、原則として税法上の法人が納税義務者となります。担税者は最終消費者となり、納税者と負担者が異なる点は日本の消費税と同様です。
■ 課税標準額
COFINSは税金とは異なりますが、その他の間 接税と同様に 課税標準額が定められています。 課税標準額は、法人等の総売上高(すべての収入または売上高を含む)と規定されています。
また、ブラジルの間接税の課税標準額の考え方は特殊であり、基本的には他の間接税を含んだ金額を課税標準額とします。COFINSは税金ではありませんが、その 課税標準額は他の間接税と同様の取扱となります。
具体的には、COFINSの他、ICMS(商 品流通サー ビス税、詳細はP. 284 )、PI S(社会統合基金、詳細はP. 268 )の税額を含んだ総売上高を課税標準額とします。ただし、この総売上金額には、IPI (工業製品税、詳細はP. 270 )は含まれません。
【課税標準の求め方】
<基本計算式>
課税標準=商品価格÷(1-間接税率の合計)
<100の物品を販売した場合>
課税標準=100÷{1-(18%(ICMS)+7.6%(COFINS)+1.65%(PIS))}
=100÷(1-0.2725)
=100÷0.7275
≒137.46
■非課税
下記の項目については、COFINSの規定上、非課税として扱われます。
・ 返却、キャンセル、割引料
・ IPI (工業製品税)
・ 一部のICMS(商品流通サー ビス税)
・ 引当金戻入額、貸倒損失戻入額
・ 投資評価益(持分法)
・ 配当収入額
・ 収入として計上された金額のうち、他の法人へ転嫁された金額
・ 恒久的施設の売却額
・ 行政により規定されている収入(マナウス・フリーゾーン内の製造者への販売、金融収益等)
・ 商品、製品の直接輸出額及び商社等を通じた間接的輸出額
・ 輸出目的のために 清算販売者から開発産業貿易相に登録する輸出商社への販売
・ ブラジル国外の法人や個人に対するサービスでその対価を外貨で受取る場合
・ 国際航空、国際航行による収入
・ 造船業を営む法人の登録済の建造、修理、改造収入
・ 一定の貨物運賃収入
またその他の規定により、特定の物品については減免措置が適用されることがありますが、対象物品については変更が生じる可能性があるため、最新の情報を確認する必要があります。また マナウス・フリーゾーンなど特定地域に対する減免措置もあります。
■ 課税方式
間接税の一般的な課税方式は、日本の消費税のような「付加価値税方式」と呼ばれる方法です。価値が付加される段階で税が転嫁され、最終消費者が実質的な担税者となる方法です。 納税義務者は、受取った税から支払った税を控除した金額を納付することになります。ブラジルでも、この付加価値税方式が原則的な方法となりますが、法人税の課税所得の計算方法などにより、COFINSの課税方式が異なります。
[付加価値税方式(多段階非累積型課税方式)]
最も一般的な課税方式となります。法人税の計算方法として推定利益法(P. 232 参照)を採用している会社や金融機関等に該当する場合を除き、当該付加価値税方式を用います。売上時に受取ったCOFINSから仕入時に支払ったCOFINSを控除した金額を納付します。
税率は7.6%であり、COFIN Sの負担額はICMSやIPIと異なり、売上税務伝票に負担額が記載されない場合がありますので注意が必要です。
仕入税額控除(クレジット)
仕入等に含まれる支払COFINSについて、仕入税額控除(クレジット)することができます。ただ、すべての支払についてクレジットが認められる訳ではなく、以下の取引に含まれるCOFINSの額がクレジットの対象となります。
・ 再販売用商品の購入
・ 販売目的製品に係る原材料、中間財、第三者サービスや包装材、その他製造消耗品
・ サービス提供のために必要とした財やサービス
・ 家賃、リース料、賃借物件の修理、内装費、その他賃借料
・ 2004年5月以降購入した機械等の減価償却費
・ 2004年5月以降取得した事業の用に供される建物等の減価償却費及び改造費
・ 電力料
・ 販売目的のための販売者負担の運送費、倉庫費用
原則として、支払が行われた時点でクレジットが認められますが、特定の機械装置、建物の取得費などは耐用年数2年、その他の機械装置4年として、支払ったCOFINSを総月数(2年の場合:24カ月、4年の場合:48カ月)に分割してクレジットを計上することも認められています。
ただし、事業者がCOFINSを次段階取引に転嫁していないと考えられる場合には、その事業者自体が最終消費者とみなされるため、当該COFINSのクレジットは認められません。
事例
質問:A社は、C社から物品を600で仕入れ、同物品をB社に1,000で販売しました。この場合のA社におけるCOFINSの納税額はいくらになるでしょうか。
COFINS:7.6%PIS:1.65%ICMS:18%
※COFINSの課税標準額の計算以外については、他の間接税は考慮しないものとする。
回答
A C社からの仕入額 600.00
B 課税標準額 824.74 600/(1-18%-7.6%-1.65%)
C 支払COFINS 62.68 B×7.6%
D B社への販売額 1,000.00
E 課税標準額 1,374.57 1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)
F 受取COFINS 104.47 E×7.6%
G A社が納付すべきCOFINS 41.79 F-C
1.課税標準額の算定税額算定の元となる課税標準は、COFINSとPIS、ICMSを含んだ金額となります。従って、販売価格1,000をCOFINS等の間接税率で割戻した金額を課税標準額として算定します。
1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)=1,374.57
2.受取COFINSの算定上記で算定された課税標準額にCOFINSの税率(7.6%)を乗じて負担額を算定します。
1,374.57×7.6%=104.47
3.仕入税額控除(クレジット)の算定付加価値税方式を採用している会社の場合、支払ったCOFINSを納付額から控除することができます。
600/(1-18%-7.6%-1.65%)=824.74
824.74×7.6%=62.68
4.納付すべきCOFINSの算定
2.で計算した受取COFINSから3.で計算した仕入税額控除額を控除した金額が、A社が納付すべき金額となります。当該金額を、翌月20日までに納付します。
104.47-62.68=41.79
[取引高税方式( 多段階累積型課税方式)]
取引高税方式の対象となる事業者は、法人税の計算に 推定利益法を採用している法人(P. 232 参照)の他、金融機関、保険会社、年金会社、警備個人会社、現金輸送請負会社、及び零細企業課税方式※ を選択した法人、その他以下のような業種です。
※零細企業・小企業に対して適用される優遇された課税方式
・ 電話通信サービス
・ 医療サービス
・ ホテル業
・ 動力燃料用エタノールの売上
・ 納税代行品目の売上
取引高税方式の場合の税率は3%となります。前述の通り、取引高税方式では仕入税額控除を行うことはできません。仕入時に支払ったCOFINSは仕 入原価あるいは費用として認識されることになります。
事例②
質問:取引高税方式を採用しているB社が、付加価値税方式を採用しているA社から仕入を行った場合の、仕入税額控除の金額はどのように算定するでしょうか(付加価値税方式の税率7.6%、取引高税方式の税率3%とし、COFINS以外の間接税は考慮しないものとする)。
回答
A社は、商品の販売代金に7.6%を加算してB社へ請求をします。この場合、B社は取引高税方式を採用しているため、支払ったCOFINSについて仕入税額控除することはできず、原価(費用)として認識することになります。
質問:
付加価値税方式を採用しているC社が、取引高税方式を採用しているB社
から仕入を行った場合の、仕入税額控除の金額はどのように算定するでしょうか(付加価値税方式の税率7.6%、取引高税方式の税率3%とし、COFINS以外の間接税は考慮しないものとする)。
回答
B社は、商品の販売代金に3%を加算してC社へ請求をします。この場合、C社は仕入税額控除をいくらの金額にするかが問題となります。C社は支払った3%のCOFINSではなく、付加価値税方式に基づき請求されたものと仮定して、
7.6%を控除することができます。B社に支払ったCOFINSはC社の原価(費用)となることはありません。
[特別課税方式]
特別課税方式とは、特定の取引について、付加価値税方式や取引高税方式のどちらを採用しているかにかかわらず、業種や取引を行う物品ごとにあらかじめ定められた税率や課税標準を用いることをいいます。具体的には以下のようなものがあげられます。
金融、保険業の会社
課税標準額の計算が、総売上高から一定の金額を控除して算定されます。税率は4%となります。
特定の物品の場合
車両関連のもの(車両、車両燃料、車両部品及び付属品、タイヤ)や特定の機械(土木建設機械や一部の農業機械)、煙草、飲み物、飲料水容器、一部の医薬品、香水、バイオディーゼル、航空機用燃料などの特定の物品については、品目ごとに税率が定められており、国内流通の最初の段階で一括して課税される方式(流通初期段階集中課税という)が採用されています。
これらの物品のサプライチェーンに入る場合、輸入業者や製造業者などのブラジル国内流通の最初の段階となる者が 納税義務者となり、物品ごとに定められている税率を適用して納税を行い、課税は完結します。従って、その後の卸売業者や小売業者はCOFINSを納 税する必要はありません。
事例③
質問:
以下の取引を行う場合、それぞれの課税関係はどのようになるでしょうか(自動
車部品Zは、流通初期段階集中課税の対象であり、COFINS税率は10.8%とする。COFINS以外の間接税は考慮しないものとする)。
1.部品製造A社が自動車部品Zを輸入し、卸売業者B社へ販売する場合。
2.部品製造A社が自動車部品Zを輸入し、自動車製造C社へ販売する場合
回答
1.取引される自動車部品は、流通初期段階集中課税の対象品目となります。
従って、これの仕入を行う卸売業者B社は、COFINSの納税義務はありません。また、仕入を行った際に支払ったCOFINSは、仕入税額控除の対象とはなりません。一方、A社は、自動車部品Zの販売時にCOFINSの税率10.8%が課税され、当納税額を納付する義務を負います。
2.取引される自動車部品は、流通初期段階集中課税の対象品目となりますが、この場合、C社は自動車の製造会社であり、A社とC社の取引は流通の末端へつながる取引ではありません。従って、C社が付加価値税方式を採用している場合には、A社からの仕入時に支払ったCOFINSを仕入税額控除(クレジット)として処理することができます。一方、A社側でも、流通初期段階集中課税の特別税率は適用されず、通常のCOFINSの税率7.6%が課税されることになります。なお、自動車製造業者から部品製造業者への支払は、源泉徴収の対象となる点に別途注意が必要です。
■ 納付
付加価値税方式による場合及び 取引高税方式による場合を問わず、課税対象取引を行った月の翌月20日(20日が休日の場合には、20日以前の最終平日)が納付期限となります。なお、輸入時に発生するCOFINS(後述)については、輸入通関時が納付期限となります。
■ 還付
免税、非課税の対象となる製品の販売を行った場合においても、仕入時に課税されたCOFINSがあれば仕入税額控除(クレジット)が認められます。この場合、売上時に課税された受取COFINSの額 が、仕入時に課税された支払COFINSの額を下回る場合があります。このような場合には、当該支払COFINSの翌 月以降への繰越、売上に係るCOFINSへの充当、その他の連邦税に充当または還付請求を申請することが可能です。
輸入取引に課されるCOFINS
物品やサービスを輸入した場合にも、国内取引と同様にCOFINSが課税されます。
■ 納税義務者
原則、物品及びサービスの輸入者が 申告・納付義務者となります。
■ 課税標準額の算定
課税標準額は、COFINSやその他の間接税を含んだ税込金額となります。課税標準額の算定方法は物品の輸入であるか、サービスの輸入
であるかにより異なります。
[物品の輸入の場合]
物品の輸入については、以下の金額が課税標準額とされます。
他の間接税と同様にPIS やCOFINS自体を含 んだ金額を課税標準 額とします。税込金額を課税標準額とすることから、上記の計算を厳密に行うことは非常に複雑になるため、実際には、細則572/2005により定められている以下の公式を用いて課税標準 額を算定します。
原則として上記の公式により算定しますが、販売目的の農業用機械、トラクター、自動車等の特定の物品の輸入については、課税標準額が減額される場合があるため、事前に確認が必要です。
[サービスの輸入の場合]
サービスの輸入については、以下の金額が課税標準 額とされます。
物品の輸入の場合と同様に、計算が複雑となることから課税標準額
を求めるための公式が国税庁から通達されています。
■ 税率
付加価値税方式と取引高税方式のいずれを採用しているかを問わず、国内取引と同様の7.6%の税率を適用します。
■ 仕入税額控除
付加価値税方式を採用している会社の場合は、国内取引と同様の基準でCOFINSの仕入税額控除(クレジット)を行うことが認められています。一方、取引高税方式を採用している会社の場合には、仕入税額控除(クレジット)は認められません。
事例④
質問:
A社は物品をブラジル国外にあるB社から1,000で輸入し、1,500でC社
に販売しました。この場合のA社が納付すべき輸入に係るCOFINSはいくらになるでしょうか。
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
II(輸入税):2%
ICMS:18%IPI:5%
※COFINSの課税標準額の計算以外については、他の間接税は考慮しないものとする
回答
A B社からの輸入額 1,000.00
B 課税標準額 1,360.99(1+2% 1,000×(1+18%×{2%+5%×)})/(1-7.6%-1.65%)/(1-18%)
C 輸入時に支払うCOFINS 103.44 B×7.6%
D C社への販売額 1,500.00
E 課税標準額 2,061.86 1,500×(1-18%-7.6%-1.65%)
F 受取COFINS額 156.70 E×7.6%
G A社が納付すべきCOFINS 53.26 F-C
1.販売時に受取るCOFINSの課税標準額の算定
税額算定の元となる課税標準額は、COFINSとPIS、ICMSを含んだ金額となります。従って、販売価格1,500をCOFINSなどの間接税率で割り返した金額を課税標準額として算定します。
1,500/(1ー18%-7.6%-1.65%)=2,061.86
2.受取COFINSの算定
上記で算定された課税標準額にCOFINS率(7.6%)を乗じて負担額を算定します。
2,061.86×7.6%=156.70
3.輸入時に支払うCOFINSの課税標準額の算定
細則572/2005の公式(P.263参照)に基づき、課税標準額を算定します。
1,000×(1+18%×{2%+5%×(1+2%)})/(1-7.6%-1.65%)/(1-18%)=1,360.99
4.仕入税額控除(クレジット)の算定付加価値税方式を採用している会社の場合、支払ったCOFINSを納付額から控除することができます。
1,360.99×7.6%=103.44
5.納付すべきCOFINS
2.で計算した受取COFINSから4.で計算した仕入税額控除額を控除した金額が、納付すべき金額となります。当該金額を、翌月20日までに納付します。
156.70-103.44=53.26
事例⑤
質問:
A社は、ブラジル国外にあるC社からサービスを1,000輸入し、対価を送金
することになりました。当該サービスの輸入時に支払うCOFINSの金額はいくらになるでしょうか。
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
サービス税(ISS):5%
※COFINSの課税標準額の計算以外については、他の間接税は考慮しないものとする
回答
A C社からの輸入額 1,000.00
B 課税標準額 1,157.02 1,000×(1+5%)/(1-7.6%-1.65%)
C COFINS 87.93 B×7.6%
F COFINSのクレジット額 87.93
1.課税標準額の計算
サービスの輸入に係る課税標準額の公式(P.264参照)に基づき、課税標準額を算出します。
1,000×(1+5%)/(1-7.6%-1.65%)=1,157.02
2.COFINSのクレジット額の算定上記で算定した課税標準額にCOFINSの税率(7.6%)を乗じて負担額を算定します。
1,157.02×7.6%=87.93
3.COFINSの納付C社は上記で算定したCOFINSを、翌月20日までに納付します。
社会統合基金(PIS)
社会統合基金(PIS: Programas de Integração Social) は、1970年に低所得者に対する金銭的な援助及び労働者に対する失業保険の財源に充てられるために施行されました。その後の憲法の改正により、社会福祉や年金の支払にも充てられることになり、社会負担金と同様の性格を有するものです。前述のCOFINSと同じく、税金とは異なりますが、企業が取引するに当たって負担を求められるものであるため、他の間接税と同様に考えておくと理解しやすくなるでしょう。
課税標準額や課税対象についてはCOFINSと同様であり、今後は、税制の簡略化のために一本化される議論が進められています。
■ 納税義務者
通常の民間会社の他、公社、宗教法人、学校法人、福祉法人等、その他人格のない社団等が 納税義務者となります。
■ 課税標準額
課税の対象となる課税標準額の算定方法は、COFINSと同様です。(P. 262 参照)
■ 税率
[法人及び公社]
法人に対しては、以下の税率が適用されます。
[宗教法人、政党、財団等]
宗教法人、学校法人、福祉法人、政党、財団等で 労働法上、雇用者とみなされる場合には次の税率が適用されます。税率に関しては、被雇用者に対する支払給与額の1%となります。
[公共法人]
税率に関しては、歳入額及び地方公共団体への交付額の1%となります。
■ 納付方法及び納付期限
納付期限は、課税標準となる取引があった月の翌月20日までとなります。
また、PIS及びCOFINSの納付者は定められた 期間(月々または半年)ごとに当該負担金の計算書を連邦国税庁に提出する必要があります。
■
PISの対象でない輸出売上や非課税売上などがある場合、支払PISが受取PISを超えることがあります。このような時は還付申請を行うことが認められています。また、還付申請を行わずPIS及びCOFINS及びそれ以外の連邦税の支払に充当することも認められています。
還付は、申請から実際に還付されるまでの期間が比較的長期となることが多いため、実務上はほとんどの場合、他の連邦税の支払に充当されます。この充当については、申請方法等を含め、細かく規定されているため個別に確認する必要があります。
工業製品税(IPI)
工業製品税(IPI )は、付加価値税の一種であり、連邦税に属します。IPI は、ブラジル国内で行われる製造行為による付加価値に対して課税しようという税金であるため、製造業で進出する企業は必ず把握しておく必要があります。
■ 課税対象取引
まずは、どの時点の取引がIPIの課税対象となるのかを明確にする必要があります。IPIの課税対象取引を大きく分類すると、以下の2つの取引が対象となります。
・ 工業製品の輸入通関
・ 工業製品の製造施設等からの搬出
[課税対象となる物品と課税ポイント(時点)]
まず押さえるべき点は、IPIは工業製品に対する課税であることです。ここにいう工業製品には「製造の一過程を経た結果得られたもの」が含まれるために、半製品や仕掛品であったとしても工業製品として取扱われます。
そして、課税の時点(課税ポイント)は、①輸入通関時、②製造施設等からの工業製品の搬出時、のいずれかとなります。
[製造施設等の定義]
ここでいう「製造」とは、通常用いられる意味より広い概念で定義されています。法令上、製造とは、以下の5つの行為を指します(1966年 租税法 法令5.172)。
・ 加工
・ 精製
・ 組立
・ 包装
・ 再生
基本的には上記5つの作業を製造と定義していますが、例外的に、修理サービス、工業施設外での組立工事、建設工事などは、IPI 規則8-14条(DECRETO Nº 7.212, DE 15 DE JUNHO DE 2010)において製造とはみなされないケースとして記載されており、課税対象から除外されます。
原則として上記5つの作業を行う場所を製造施設と定義しますが、それ以外にも、以下の施設に該当する場合は、税法上、製造施設とみなすものと規定されています。
・ 工業製品の輸入及び搬出を行う施設
・ 他の施設において輸入手続が行われた商品を、保税地域から直接受取る施設(消費者直接販売施設を含む)
・ 輸入品または他の施設で製造、外注加工に出された工業製品を販売する施設(最終消費者に対し小売を行う施設は除かれます)
・ 工業製品の販売を行う施設であっても、製造を行っている自社もしくは他社に対し、その製造に係る原材料等を供給している施設
・ 工業製品種類区分表22章に述べられる製品を取扱い、またその製造をメーカーに製造依頼して自己の商品名等により販売を行っている施設
・ 工業製品種類区分表のコード71.01から71.16までに区分される工業製品(宝石等)の卸売を行う施設
・ 工業製品種類区分表22.04、22.05、22.06及び22.08に該当するアルコール飲料等を飲料品製造業者や卸売業者、協同組合または瓶詰作業を行う業者に搬出する卸売業者、または協同組合の施設
・ 工業製品区分表コード3 3.03-33.07に該当する輸入化粧品を仕入れる卸売業者の施設
・ 工業製品区分表コード87.03に該当する乗用車の卸売業者の施設
・ 工業施設が第三者より原材料等を仕入れ、製造、再販の目的で自社の施設に搬出する施設
・ 輸入代行者により輸入された製品を仕入れる卸売業者や小売業者の施設
・ 清涼飲料水やアルコール飲料などを製造業者から仕入れ、その商品を関連会社に対し搬出する施設
製造と卸売を同じ拠点で行う場合
製造拠点を有している場合でも、製造加工を行った上で出荷する製品もあれば、入荷したものをそのまま販売するものもあります。その場合、すべての取引がIPI の課税対象になるかといえば、そうではありません。
IPI は、製造した工業製品の製造施設等からの搬出という行為に対して課税されます。そのため、たとえ製造施設等からの工業製品の搬出であったとしても再加工や再包装等せずに、そのまま販売するような場合には、当該行為は製造した工業製品とはみなされずIPI の課税は行われません。
このような場合には、仕入の際に仕入先に支払ったIPI については、次段階の取引に転嫁することができないため、仕入原価として認識することになります。
卸売業者等であってもIPI が課税されるケース
反対に製造施設等でない商業施設であったとしても、製造施設等とみなされる場合には、IPI の課税対象となります。
たとえば、工業製品を輸入し、ブラジル国内の企業または個人へ販売する輸入業者の場合には、前述のIPI 規則8-14条の「輸入を行い輸入された工業製品の搬出を行う輸入者の施設」に該当するため、製造施設等とみなされ、製品を搬出する時点でIPI が課税されることになります。このとき、輸入通関時に支払ったIPI は仕入 税額控除(クレジット)の対象となります。
[実際にモノを搬出していなくてもIPI の課税対象となるケース]
製造施設等から工業製品が搬出される時点でIPIは課税されますが、搬出については、実際のモノの搬出だけでなく、税法上において規定される特有の搬出の定義があります。
実際の搬出に関しては、文字通り搬出という行為を指しますので理解は難しくありません。一方、税法上の搬出とは、たとえば、輸入品を相手先に納品する際、自社の拠点を介さずに、輸入元から相手先に直接納品する場合などをいいます。この場合、モノの搬出自体は行われていませんが、IPIの課税を考える上では、搬出があったものとみなして課税が行われることになります。
[非課税、免税となる取引]
ブラジル国外へ輸出する場合などは、IPIの課税が免除されます。その他、マナウス・フリーゾーンなどでは、企業誘致のための税制上の恩典が与えられるケースもあります。主な免税取引としては以下のような取引があげられます。また、下記以外にも特例により非課税・免税といった措置が認められるケースもあります。
・ 輸出取引
・ リース用の固定資産の搬出
・ 工事等の遂行のための固定資産の搬出
・ マナウス・フリーゾーンへの搬出
・ 一定基準を満たす見本品の搬出
・ その他税制恩典が与えられる場合など
■ 納税義務者
IPI は間接税であるため、 納税義務者と実際の税金の負担者は異なります。税額は製品の価格に織り込まれることとなり、次段階取引に移行するため、最終的なIPI の負担者は、消費者(個人、法人)となります。
一方、実際に税金を納める者を 納税義務者といいます。 納税義務者は、当該消費者ではなく、工業製品の輸入及び製造した工業製品の搬出を行った事業者となります。
また1つの事業者が複数の製造施設を有する場合には、それぞれの施設がIPI の納税主体となります。拠点ごとにIPI の納税額を計算した結果、仕入税額控除(クレジット)の残額がある場合に、他の施設の納税額から控除することなどは原則として認められません。従って、帳簿や証憑はそれぞれの拠点ごとに分けて把握しておかなければなりません。
■ 課税標準額
IPIの課税標準額は、課税対象取引ごとに次のように規定されています。
[製造施設等からの工業製品の搬出に課されるIPI]
課税標準額となる取引額はPIS、COFINS、ICM S等を含んだ 額となりますが、IPI自体については課税標準額に含まれません。
課税標準額=取引金額※+運送費+荷造梱包費+その他の費用
※取引金額=間接税を除く取引額/(1-ICMS率-COFINS率-PIS率)
事例⑧
質問:
A社の製造拠点から工業製品ZをB社に1,000で販売しました。A社の納
付すべきIPIはいくらになるでしょうか。
税抜総収入金額:1,000
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
ICMS:18%
IPI:8%
※IPIの課税標準額の計算以外については、他の間接税は考慮しないものとする
回答
A B社への販売額 1,000.00
B 課税標準額 1,374.57 1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)
C A社に課されるIPI 109.97 B×8%
D A社が納付すべきIPI 109.97
1.課税標準額税額算定の元となる課税標準は、COFINSやPIS、ICMS等の間接税を
含んだ金額となります(IPI自体は含まない点に注意)。従って、販売価格1,000をCOFINS、PIS、ICMSの税率で割り返した金額を課税標準額として算定します。
1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)=1,374.57
2.IPIの納付額の算定
上記で算定した課税標準額にIPIの税率(8%)を乗じて課税額を算定します。
1,374.57×8%=109.97
3.IPIの納付
A社は上記で算定したIPIを、翌月15日までに納付します(一部製品を除く)。
[輸入通関時に課されるIPI]
輸入品に対し通関時に課されるIPIは以下の計算式で求めます。輸入時のIPIの課税標準額の計算式には、COFINSやPIS、ICMSなどの他の間接税を含まない点に注意が必要です。
課税標準額=CIF価額+輸入関税+為替差額
事例⑨
質問:A社はブラジル国外にあるB社より、工業製品Zを1,000で輸入しました。
輸入品のCIF価額:1,000
輸入関税:10%
IPI:5%
※IPIの課税標準額の計算以外については、他の間接税は考慮しないものとする
回答
1 B社からの輸入額 1,000.00
2 課税標準額 1,100.00 1,000×(1+10%)
3 A社が通関時に支払うIPI 55.00 1,100×5%
1.課税標準額
課税標準額は申告額に輸入関税の税率を乗じることにより算定します。
1,000×(1+10%)=1,100
2.IPIの納税額
上記で算定した課税標準額にIPIの税率(5%)を乗じて課税額を算定します。
1,100×5%=55
[ 同一事業者の施設間で行われる製品の搬出]
同一事業者の、ある製造施設から別の製造施設への工業製品の搬出も課税対象に含まれます。ただし、製造施設から別の製造施設や製造施設とみなされる施設(卸売を行う施設等)への工業製品の搬出につき、suspensãoと呼ばれる一時的に課税を行わない形が認められています。
もっとも、搬出先の施設が小売を行っているような場合は、工業施設とみなされる施設に該当しないのでsuspensãoは適用されません。搬出先が小売を行っている場合には、卸売市場価格を下回らないことを条件に、搬出先の事業者の消費者に対する販売価額の90%に相当する額が課税標準額とみなされることになっています(IPI規則136条)。卸売市場価格を下回るなど条件を満たさない場合は製造原価、販売管理費用、通常の利益の合計、または輸入品の場合は輸入品原価、通常の利益を上乗せした価額がIPIの課税標準額と規定されています(IPI規則137条)。
■ 税額の計算
製造施設等からの工業製品の搬出に対して課されたIPI額から 、製品製造に使用される原材料、中間財、包装材等の仕入に係るIPI額を控除して計算された額が事業者の納付する額となり、毎月課税台帳に記載されているIPI額を合算し、算定します。
[仕入税額控除(クレジット)]
仕入税額控除(クレジット)とは、仕入時に支払ったIPIを、搬出時に受取ったIPIから控除して納付額を算定することができることをいいます。工業製品の搬出時に係るIPIが免除される場合において、搬出前の仕入段階にかかわるIPIのクレジットが認められるケースには以下のようなものがあります。
・ 輸出を目的とした製品の製造に使用する原料等の仕入
・ マナウス・フリーゾーンに搬出する目的の製造品を完成させるのに使用する原材料等の仕入
・ 電子部品、コンピュータ関連品の製造のうち、情報産業法に認められている部品を製造するために使用した原材料等の仕入
・ その他別途規定されている場合
事例⑩
質問:
A社は、部品製造を行うC社から製造用部品を1,000で仕入れ、A社の製造拠点にて加工を行った後、工業製品ZをB社に1,500で販売しました。このときのA社の納付すべきIPIはいくらになるでしょうか。
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
ICMS:18%
IPI:8%
回答
A C社からの仕入額 1,000.00
B 課税標準額 1,374.57 1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)
C 仕入に対するクレジット額 109.97 B×8%
D B社への販売額 1,500.00
E 課税標準額 2,061.86 1,500/(1-18%-7.6%-1.65%)
F 受取IPI額 164.95 E×8%
A社が納付すべきIPI 54.98 F-C
1.課税標準額税額算定の元となる課税標準は、COFINSやPIS、ICMS等の間接税を
含んだ金額となります(IPI自体は含まない点に注意)。従って、販売価格1,500をCOFINS、PIS、ICMSの税率で割り返した金額を課税標準額として算定します。
1,500/(1-18%-7.6%-1.65%)=2,061.86
2.受取IPIの算定
上記で算定した課税標準額にIPIの税率(8%)を乗じて受取IPI額を算定
します。
2,061.86×8%=164.95
3.仕入税額控除(クレジット)の算定仕入時に支払ったIPIを販売時に受取ったIPI額から控除することができます。
1,000/(1-18%-7.6%-1.65%)=1,374.57
1,374.57×8%=109.97
4.IPIの納付額を算定
2.で計算した受取IPIから3.で計算した仕入税額控除額を控除した金額が、A社が納付すべき金額となります。当該金額を、原則として翌月15日までに納付します。
164.95-109.97=54.98
卸売業者等が支払ったIPI の仕入税額控除(クレジット)
IPIの納税者で はない事業者が、製造を行っている事業者から仕入を行った際に支払うIPIは、仕入税額控除(クレジット)の対象とはなりません。従って、支払ったIPIは、仕入原価(費用)として認識されることになります。
製造者が卸売業者等から仕入れた場合の仕入税額控除(クレジット)
製造業者が、IPIの納税義務者ではない卸売業者等から原材料などを仕入れる場合、IPIは支払いませんが、IPIが課税されたものと仮定して算出したIPI額の50% を仕入税額控除(クレジット)することが認められています。
COFINS、PIS の みなしク レジット
みなしクレジットとは、COFINSとPISの納付方法 について付加 価値税方式を採用していない法人が、仕入時に支払ったCOFINSとPISを、国内販売において課税されるIPIの税額から控除することを認めるものです。
ただし、IPIの税率が0%である物品や課税が免除される物品を輸出する場合には、このみなしクレジットの制度は認められません。なお、クレジット額の計算方法はIPI規則の180、181条に記載されています。
固定資産についてのクレジットの可否
原則として固定資産の購入時に支払うIPIについては、仕入税額控除(クレジット)は認められません。また、固定資産を売却するときにもIPIは原則として課税されません。
ただし、例外的に、自己で使用する目的で輸入した固定資産を製造施設等から搬出する場合や、自社で製造した固定資産を搬出する場合には、輸入時、製造に係る原料や部品等の仕入時に支払ったIPIについてク レジットが認められることになっています。なお、固定資産として計上後5年を超えて搬出する場合にはIPIの課税が免除されます。5年を超えて搬出する場合には、仕入等を行った時のIPIのクレジットも認められません。
■ IPIの税率
税率は製品の種類等により複数定められており、IPI税率表により確認することができます。税率については、大半の工業製品が0 ~20%となります。ただし一部の工業製品については、金額に応じて金額を定めた従量税率が用いられています。税率については毎年更新されるTIPI(TABELA DE INCIDÊNCIA DO IMPOSTO SOBRE PRODUTOS INDUSTRIALIZADOS)をご参照ください。
【工業製品税の税率表の一部抜粋】
ブラジルでは、外国産業の参入から国内産業を保護するために、しばしば税率やそれに関連した制度を変更することがあります。製造に伴う自動車部品の国内シェアが65%を超えない場合には、IPIを最大で30%引上げるというような強行策が施行されたこともあります。
ただし、緩和制度として、2013年1月からブラジル国内での組立て、またはメルコスール域内で原材料や製造に係る機器の一定率を超えて購入をした場合、最大で30%の優遇措置を受けることができます。
■ 納付
翌月の15日までに納付します(ただし、製品区分コード表22章飲料とタバコは除く)。
■その他義務
工業製品の搬出に関しては、種々の付帯義務が発生してきます。具体的な付帯義務は以下の通りです。
・ 包装荷造品等に納税者番号、数量等の必要情報の表示を行う義務
・ 特定製品(タバコ等)に対する、印紙の添付
・ 帳簿の所持、伝票、書類の発行
商品流通サービス税
商品流通サービス 税(ICM S)は前述のCOFINSやIPIなどの連邦税と異なり、州税に分類されます。IPIが製造施設からの搬出に対して製造業者に課税されるのに対し、ICM Sは商品の流通に対して、製造業者、卸売業者、小売業者などに広く課税を行う付加価値税の一種です。
また、通信や運輸などの一部のサービス取引についても課税の対象としています。
■ 課税の対象取引
ICMSの課税対象となる取引は、以下のように規定されています。
[非課税となる取引 ]
以下の取引については、ICMSが非課税となります。
■ 納税義務者
課税対象となる取引を行う者が 納税義務者となります。たとえば、製造業、小売業、卸業など物品を扱う業種の他、通信サービスの提供者や州間や市間を結ぶ運輸サービスを行う事業者、輸入を行う者などが 納税義務者となります。 納税義務者は各州において納税者登録を行う義務があります。
ICMS は連邦税ではなく州税であるため、連邦税のように一括で国に納めるというような方式がとれず、事業施設の所在する州にそれぞれ納める方式をとっています。以前までは、各事業施設が直接州に納付していましたが、現在では立法化されていない州を除き、州内であれば1つの施設にまとめて納付することが認められています。
■ 課税標準額
[国内取引の課税標準額]
ICMSの課税標準額は、商品価格に加えて、ICMS自体やCOFINS、PIS等の間接税についても含まれます。ただし、この課税標準額には、原則として、IPIは含まれません。
課税標準額にIPI を含む場合
上述の通り、原則としてIPIは、課税標準額の算定に含まれていません。しかし、ICMS規則 によると、商品の購入者が最終取引者であり、当該取引がIPIの課税対象 となる場合にはIPIが課税標準 額に含まれるとされています。たとえば、個人やICMSの納税義務者ではない法人が、製造業者から物品を購入する場合や、当該物品の購入者がICMSの納税義務者であっても、自己消費目的であり、次段階へ転嫁されない場合には、このケースに該当します。
事例⑫
質問:
製造業者A社が、個人であるBに対して、商品を1,000販売しました。こ
の場合のA社が納付すべきICMSの課税標準額はいくらになるでしょうか。
税抜総収入金額:1,000
ICMS:18%
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
IPI:10%
回答
本ケースでは、物品の販売者が製造業者、購入者が個人であるため、商品の購入者が最終取引者となり、上述の通り課税標準額にICMSやCOFINS、PISだけでなく、IPIも含んだ金額としなければなりません。販売価格1,000をこれらの税率で割り返した金額をICMSの課税標準額として算定します。
1,000/(1-18%-7.6%-1.65%-10%)=1,593.63
[輸入取引の課税標準額]
輸入商品の課税標準額は以下の計算式で算定 します。
ICMS自身や他の間接税を課税標準額に含むことになりますので(IPIは除く)、計算が非常に複雑になります。他の間接税の金額を求めたあとに、最後にICMSの金額を計算します。
事例⑬
質問:
A社は物品をブラジル国外にあるB社から1,000で輸入しました。この場合
のA社が納付すべき輸入に係るICMSはいくらになるでしょうか。
製品価格(CIF価格):1,000
通関費用:10
COFINS:7.6%
PIS:1.65%
II(輸入税):2%
ICMS:18%
IPI:5%
回答
ICMSは、IPIを除くその他の間接税を含んだ金額を課税標準額とします。そのため、まずは、関税やCOFINSを計算する必要があります。
1.輸入関税の算定輸入関税の課税標準額は、CIF価格となります。以下の計算式で算定します。
1,000(CIF価格)×2%(関税率)=20
2.IPIの算定
IPIの課税標準額は、CIF価格に1.で算定した関税額を加えた金額となります。
(1,000(CIF価格)+20(輸入関税額))×5%(IPI税率)=51
3.COFINSとPISの算定
ICMS税額算定の元となる課税標準は、ICMSやCOFINS、PIS等の間
接税を含んだ金額となります。P.263に登場した細則572/2005の公式を用いてCOFINS、PISの金額を算定します。
1,000×(1+18%×{2%+5%×(1+2%)})/(1-7.6%-1.65%)/(1-18%)=1,360.99
1,360.99×9.25%=125.89
4.ICMSの課税標準額の算定
P.263の輸入取引時のICMS課税標準額の計算式に当てはめます。
(1,000+20+51+125.89+10)/(1-18%)=1,471.82
5.ICMSの算定
4.で算定した課税標準額にICMSの税率18%を乗じてICMSを算定しま
す。事業内容により納付期限が異なりますが、A社は原則翌月中に算定したICMSを納付します。
1,471.82×18%=264.93
[同一事業者が行う施設間の物品の移動]
同一の事業者が行う、ある施設から別の施設への物品の移動については、以下のように課税標準額が定められています。
・ 農産物等の生産者、燃料製造者 … 当該地域の卸売値
・ 製造事業者 … 出荷原価
・ 製造業以外の場合 … 第三者販売価額
■ 仕入税額控除(クレジット)
ICMSにおいても、IPI等と同様にクレジッ トが認められています。ただし、 免税となる輸出取引、マナウス・フリーゾーンへの移出、その他法律により定められているような特例を除き、仕入者が最終消費者になるような取引の最終段階の場合には、原則クレジットは適用されません。次段階へ付加価値が転嫁されない場合(最終消費者となる場合)には、クレジットは原則として認められない、という考えに基づいています。
[受取ったICMS の額をクレジット額が上回る場合]
クレジット額が、移出に係るICMS額を上回るような場合にはその差額分をグループ会社などに移転させることができます。ブラジルに進出している外国企業にとって、ICMSのクレジットの累積は非常に大きな問題となっています。ICMSは付加価値税であり、通常は非累積型の税金ですが、輸入品にかかるICMSの減少や、他州との税率の違いから、クレジットが貯まり続けるという現象が頻繁に起こります。詳細な規定やクレジット移転の可否は州によりますが、主要州であるサンパウロ州等は、累積したICMSの移転、使用を企業に促進する傾向にあり、移転手続きおよび承認の早期化を図っています。サンパウロ州においては、ICMSのクレジットは、グループ会社のICMS納付予定額から当該差額分を差引くことや、ICMSの相殺、仕入れ先への支払、製造に使用する原材料等の購入代金に補填することが認められています。当該クレジット額の移転に対しては、各州異なる制限を設けているので、事前の把握が必要となります。
■ 州をまたぐ取引に関する課税
州をまたいだ取引となる場合も当然に発生しますが、ICMSは 州税です のでどちらの州の税率を適用するか、どちらの州に納付すべきかといった問題が生じてきます。各州では、州内取引の税率と州をまたぐ取引の税率を分けて規定しており、州をまたぐ取引の方が、税率が低く設定されています。
[販売側も購入側もICMS納税義務者である場合]
州をまたぐ取引の税率を適用して税額を算出し、販売側の事業者の施設が所在する州に納付します。一方、購入者側では、当該仕入に係るICMS額を、販売時 に受取るICMS額から控除(クレジット)することができます。ただし、購入側が最終消費者(購入した商品を自ら使用する)となる場合には、購入者の所在する州の税率と仕入時に支払った州間税率との差額を納付しなければならないとされています。
[購入側がICMSの納税義務者ではない場合]
購入側がサービス業であるなどICMS納税義務者ではない場合には、販売側が所在する州の税率を適用して計算された税額を販売者の所在する州に納付します。一方、購入者側には、納付義務がありません。
■ 税率
[州内の販売に関する税率]
州内においての販売等に伴う商品の流通に対しては、州内ICMS税率が適用さ れます。
[州間をまたぐ販売に関する税率]
州をまたぐ商品の販売等に伴う流通に対しては、州間ICMS税率が適用され、移出元の州と移出先の州で分配する方式がとられています。当該税率は州間により異なり、各州の政府は企業誘致を目的としてそれぞれ税率を設定しています。
ただし、輸入品の流通に限り、2013年1月1日から移出元の税率が一律4%となったため、企業誘致の促進を目指す政府には少なからず影響を与えています。
[特定の物品に対する税率]
州内の取引において、すべて同じICMS税率が課されるわけではありません。特定の物品に対しては、7 ~ 25%の範囲で、それぞれの州で決められている税率が適用されます。
■ 納付
納付は、原則として翌月中に行われますが、州や事業内容によって異なっていますので、事前に確認が必要です。
■ 納税代行制度(substituição tributária)
ブラジルでは、各取引段階において、本来納税の義務を負う者の代わりに、納税を代行する制度が存在します。代行の方法としては、次段階取引以降の取引に対して納税義務を負う場合、前段階までの取引に対して納付義務を負う場合、前段階及び次段階以降を含めたすべての取引に対して納付義務を負う場合の3パターンがあり、中でも次段階以降の取引に対して、納税義務を負うケースが一般的です。
この代行制度には、取引の最初の段階において、すべての段階における納税額の合計を予測し、当該予測額を一括納付することにより、徴税の簡略化、徴収漏れを防ぐ目的があります。
[納税代行制度が採用できる対象物品]
州ごとに納税代行制度の対象となる物品が定められています。各州が違う物品を対象物品としてしまうと、州間の取引時に支障をきたす場合があるため、州間の協定により統一が図られます。
[納税代行制度の非適用事項]
納税代行制度は、以下の要件に該当する場合には適用されません。
・ ICMSの納税義務者ではない者に対して納税代行者が直接販売する場合
・ 納税代行者から他の製造者の製造に使用する物品
・ 納税代行者から卸売を行う支店への商品の搬出
・ 州内の次段階以降の取引が免税もしくは非課税の場合
・ 同じ商品を扱う納税代行者間の販売
[納税代行制度における課税標準]
納税代行制度を利用する場合、納税額は予測額となるので、その基準となる額が必要となります。基準については州により異なります。たとえばサンパウロの場合、平均小売価格や付加価値平均指数・付加価値額を商品に公示することにより、基準を設けています。平均小売価格が記載されている場合は、その価格自体が課税標準となりますが、付加価値指数が公示 されている場合においては、指数を乗じた計算により算定しなければなりません。計算式は以下のようになります。
サービス税(ISS)
サービス税 (ISS: Imposto Sobre Serviços ) とは、サービス提供の受取対価に対して課される市税です。また、IPIやICMSと異なり付 加価値税ではないので、原則として支払ISSのクレジットは認められていません。ただし、市によってさまざまな特例事項が定められており、その要件を満たす場合には、クレジットが認められています。ISSは2003年の補足法により、その骨格が定められており、今後はISSの全国的な制度の統一化などが求められています。
■ 課税の対象
サービス税の補足法には、課税対象となるサービスの一覧リストがあり、基本的なサービスはすべて記載されています。ただし、居住を目的とした長期間にわたる不動産賃貸などは含まれていません。また、このリストには不明確な点も多く、商標使用権の譲渡が課税対象としてリストに記載されているのに対し、同様の取引として扱われている ロイヤルティの支払に関しては、リストに記載がないなどの矛盾点が存在しています。
ISSの課税の対象は、以下の取引となります。また州税であるICMSの課税対象となる場合には、ISSは 課税されません。たとえば、市間、州間を結ぶ通信サービス、運輸サービスについては、ISSではなく、ICMSが課税されます。
・ 海外からのサービスの輸入
・ 市の課税対象サービスのリストに記載されたサービス
・ 州税の課税対象でないサービス
[非課税となる取引]
ISSが非課税となる取引は以下のように規定されています。また 市税であることから、市ごとに異なる取扱となるケースもある点に留意が必要です。
・ サービスの輸出
・ 被雇用者、役員などのサービス提供
・ 銀行預金利息、金融機関が行う貸付金の利息、 証券取引仲介など
注意点として、サービスの輸出については非課税とされていますが、具体的にどのようなサービスが非課税となるかについては曖昧な点が多く残されていることが挙げられます。たとえば、ブラジルの法人が親会社に対してコミッション料を請求するケースも多くあります。この場合は、サービスがブラジル国内で行われ、対価をブラジル国内で受取ることから、非課税に該当するとはみなされず課税の対象になると考えられます。海外へのサービスの提供は、むしろ課税されるケースが多いので、必ず事前に専門家に確認する必要があります。
[市ごとに行われる免税措置]
ISSについても、COFINSなどの連邦税に免税措置があるように、市の条例により免税や減税の要件が規定されています。一般的には、国や州や市などと共同して行われるインフラ関係サービス、政党や労働組合へのサービス等が免税対象となっています。また、サンパウロ市では、零細企業等に対する減税措置などが定められています。
■ 納税義務者
ISSの課税対象となるサービスを提供する法人及び個人が納税義務者となります。 納税義務者は、市に納税者登録を行います。
ただし、海外の法人や建設、警備、人材派遣のサービスの提供を受ける場合には、サービスの受手がサービスを行った納税者に代わって、納税義務を負います。このような場合には、サービスの対価を支払う際に、源泉徴収の方式により、ISS額を控除し、納付を行わなければなりません。
■ 税額の計算
[課税標準額]
ISSの課税標準額は、ISS自体を含んだ税込金額となります。
事例⑮
質問:
コンサルティング会社A社は、ブラジル国内の法人B社に対して、コンサルティ
ングサービスを提供しました。この場合にA社が納付すべきISSの額はいくらになるでしょうか。
税抜サービス報酬額:1,000ISS:5%
回答
1.課税標準額の算定
ISSは、ISS自体を含んだ税込金額を課税標準額とします。
1,000/(1-0.05)=1,053
2.ISS額の算定
1.で算定した課税標準額に、ISSの税率を乗じてISS額を算定します。
1,053×5%=53
[物品とサービスが同時に提供される場合]
ここまで見てくると、原則として、物品の提供についてはICMSが課税され、サービスの提供についてはISSが 課税されることがわかります。しかし、実際には、物品の提供とサービスの提供が同時に行われるケースも少なくありません。そのような場合にはどのような課税関係になるのでしょうか。
商品の提供及びサービスの提供が1つの取引において行われる場合、原則として、ICMSは商品の販売額、ISSはサービスの支払総額により税額を別々に計算し納付します。そのためには、それぞれの金額を分けて把握しておき、請求額の内訳が出るようにしておく必要があります。
ただし、機械装置等の購入と設置を同時に行った場合には、物品の購入と設置サービスの両方に対しICMSが課税されISSは課税対象外となります。ICMSの方が高税率であることから、税コスト的に不利になってしまいます。
このような取引が多くある場合には、設置サービスを行う部門を分社化することにより、設置サービスに対する課税がICMS課税からISS課税へと変更されるため、税コストの削減につながります。
[税率]
税率については、国会が定める上限税率である5%(下限税率は2%)が大部分のサービスについて採用されています。
[ISS の仕入税額控除(クレジット)]
原則として支払ったISSを、受取ったISSか ら控除することはできません。
しかし、例外として、水道、電力、土木などの建設工事については、工事に使用するための第三者からの材料の仕入について支払ったISSを控除することが連邦法で認められています。また市によっては、下請業者に対して支払ったISSについても控除を認めているところもあるため、事前にクレジットの有無を確認するとよいでしょう。
■ 納付
[納付期限]
納付期限については、各市の市条例により規定されているため、納付する市のスケジュールを確認する必要がありますが、通常は1カ月単位でまとめて翌月納付するかたちとなっています。
[納税地]
ISSは市税のため、まず納付先の市を判定しなければなりません。原則として、サービス提供を行う者の事業施設、施設がない者についてはサービス提供者の居住地であると定められています。単なる登記上の住所ではなく、実際に事業を行っている施設を基準とするとされています。
[建設サービス等の場合]
建設や土木、清掃、警備、車両・船舶・航空機等の保管サービス、港湾、鉄道、駅などでのサービスは、実際にサービスが提供される場所が納付すべき市となります。事務所の所在地とサービスの提供地が異なる場合には、実際のサービスの提供地の属する市で納税しなければなりません。
たとえば、建設会社の事業所がA市にあると仮定して、実際の工事はB市で行われている場合は、ISSはB市に納付することとなります。このときの納付形態としては、ほとんどの市で源泉徴収方式が採用されています。つまり、サービスの受け手側が、対価の支払時にISS額を控除し、サービス提供者に代わって、納税するということです。
特定財源負担金(CIDE)
特定財源負担金(CIDE:Contribuição de Intervenção no Domínio Econômico)は、国産技術開発促進負担金(CIDE-Remessaao exterior)と石油天然ガス及び派生産品の輸入、商業取引に関する負担金(CIDE-Combustíveis)の2種類に分かれます。
■ 国産技術開発促進負担金
主に海外からの技術サービスに対しブラジル国内法人が支払う対価に課税されるもので、連邦税に分類されますが、一部は州の財源に充てられることになっています。
[納税義務者]
海外から提供されるサービスに対して対価を支払うブラジル法人が納税義務者となります。
[課税標準]
源泉税控除前の金額が課税標準額となっています。ただし、課税標準額を計算する際、COFINSやPIS 、ISS な どの 間 接税を含めるか含めないかなどは法律上で明確になっていません。
また、技術サービスの定義に不明確な点が多く、技術移転を伴わない技術者の指導に対しても対象になるなどのリスクがあるため、いかなるサービス対価に対して適用されるかを事前に確認しておく必要があります。
[税率]
税率は、課税標準額に対して10%となっています。
■ 石油天然ガス及び派生産品の輸入、商業取引に関する負担金
石油や燃料用エタノール、液化天然ガスなどの輸送費や環境対策費、価格補助金などの財源ねん出を目的として連邦によって徴収される負担金です。
[納税義務者]
ガソリン、液化天然ガス、燃料用エタノールなど、ブラジル政府に製造販売を認可された以下の製品の精製業者、輸入者の輸入と国内取引について課税されます。
[対象製品]
液化石油ガス、ナフサ、ガソリン、液化天然ガス、ディーゼル油、
ケロシン、燃料用エタノール
[税額]
税額に関しては、それぞれ1㎥または1トン当たりで定められています。2017年現在、ガソリンは1立方メートル当たり860レアル、ディーゼル燃料で1立方メートル当たり390レアルとなります。
I - gasolina, R$ 860,00 por m³; (Nota)
II - diesel, R$ 390,00 por m³; (Nota)
III - querosene de aviação, R$ 92,10 por m³; (Nota)
IV - outros querosenes, R$ 92,10 por m³; (Nota)
V - óleos combustíveis com alto teor de enxofre, R$ 40,90 por t; (Nota)
VI - óleos combustíveis com baixo teor de enxofre, R$ 40,90 por t; (Nota)
VII - gás liqüefeito de petróleo, inclusive o derivado de gás natural e da nafta, R$ 250,00 por t;(Nota)
VIII - álcool etílico combustível, R$ 602,00 por m³.
(参考URL: http://www.planalto.gov.br/ccivil_03/LEIS/LEIS_2001/L10336.htm)
+ .5 .関税
関税
ブラジルの 関税は大きく分けて 輸入税と 輸出税の2つであり、輸入はCIF価格、輸出はFOB価格が課税対象額となります。
輸入税
輸入税(Import tax)は、ブラジルに輸入される外国製品に対し課税される連邦税です。輸入品の通関申告時に生じ、南米共同市場(メルコスール)の商品分類番号(NCM番号)の分類ごとに定められた税率が適用されます。
近年、レアル高の影響により輸入品が増加し、国内産業の衰退が政府の懸念事項としてあげられています。政府は、2012年10月から100品目に対し 関税引上げを実施しました。最大25%の引上げ、期間については12カ月となっていますが、2014年12月末までの延長が可能とされています。2017年現在では、品目により税率は0~35%と異なりますが、平均的には14~16%程度となっています。
また、ブラジルでは、輸入する際に COFINS、 PIS、 IPI、 ICMS、IIなど複数の 間接税が係るので、実効税率がかなり高くなる点にも留意しなければなりません。
輸入に関する間接税の詳細については「ブラジルの間接税の概要」 を参照してください。
■ 輸入税の減免
特定の要件を満たす場合、 ドローバック制度を利用することができます。 ドローバック制度とは、輸出する製品を製造するために輸入した部品等については 免税になるというものです。
ドローバック制度には、納税の留保方式(Suspensão)と 免税方式(Isenção)の2種類あり、留保方式を採用することが一般的となっています。留保方式部品等を輸入する際に本来課税される II、 COFINS、 IPI、 ICMSなどを1回留保し、そこから2年以内に輸入した部品や原材料を使用して輸出品を製造した場合に留保していた税金を免除する方式です。また、直接輸出した場合だけでなく間接的に輸出を行った場合にも適用されます。
免税方式
輸出する製品を製造するために使用する部品、原材料等に対し通関時に課税し、再び同じ種類、量のものを輸入した場合に 免税とする方式です。
■ 罰則等
輸入ライセンスの事前取得を怠った場合や、NCM番号(メルコスール域内共通商品分類番号)を誤って登録した場合などには、高額な罰金が科される可能性がある点に留意が必要です。
輸出税
ブラジルにおいての 輸出税は、輸出の増大による国内供給量の減少を防止する役割を果たしています。従って、常に同じ品目に対し、同じ税率が課されるわけではなく、市場の価格の変動にあわせ流動的に変化します。税率は0 ~ 150%までとなっており、南米や中南米諸国に輸出する武器や弾薬には150%の輸出税が課税されています。
+ .6 .金融取引税
金融取引税
金融取引税(IOF)は国内の通貨流通量をコントロールする手段の1つに位置付けられる 連邦税です。融資(貸付)、為替取引、保険取引、証券取引、及び金融機関の金(ゴールド)の取得といった取引に対して課税されます。
■ ブラジル国内の融資取引
ブラジル国内の金融機関や企業間、また企業と個人の間の金銭の融資に対してIOFが課税されます。納税義務は基本的に貸し手にあり、課税標準は貸付額です。
融資に係る IOFの税率は以下の通りです。
・ 対個人融資:日歩0.0082% + 固定税率0.38%
・ 対法人融資:日歩0.0041%(簡易納税者に登録する法人で3万レアルまでの融資では0.00137%) + 固定税率0.38%
[計算例]
A社は銀行から月5%の 利息で1,000,000レアルの短期融資を受ける。返済は60日後に一括返済を行う。
計算式
1,000,000 × 0.000041×60日 = 2,460 …… 日歩税額
1,000,000 × 0.0038 = 3,800 …… 固定税額
2,460 + 3,800 = 6,260 …… IOF税額
また、法人に対する金融機関の輸出前融資(ACC/ACE)や金融機関同士の融資等では IOFは0%となっており、住宅の建築・取得に関する融資にはIOF課税はありません。
■ 為替取引
外貨と国内通貨の為替交換に対し IOFが課税されます。 課税標準は、外貨額に相当する国内通貨額であり、ブラジルからの送金を受ける者や内国通貨への為替交換を行う者が納税者となります。税の徴収責任は為替交換取引を行う金融機関が負います。
近年、ブラジル政府は外貨の流出入によるレアルの変動を抑制する目的で、さまざまな対策を行っています。中でも国内企業による外貨の借入や、外国で起債した資金の国内流入に対して課されるIOFの課税対象となる借入期間の変更がたびたび行われており、2012年3月1日に2年から3年に変更され、同月に5年に延長され、更に6月には2年に短縮されています。その後も、レアル安が止まらないため、12月には1年にまで短縮されました。 その後、2014年6月より180日以内に変更され、現在に至ります。(DECRETO No. 8.263, DE 3 DE JUNHO DE 2014)
また、税率に関しても、対外的な競争力を含めた政策目的で変更が頻繁に行われます。たとえば2011年12月には、海外からの株式投資に係る IOFの税率を2%から0%に引下げる旨がブラジル政府から発表、施行されました(債権投資に係る 為替取引に対する IOFの税率は6%)。主な 為替取引のIOF税率は以下の通りです。
■ 保険取引
保険会社へ支払う保険料に対してI OFが課税されます。保険会社が税額計算を行い、徴収責任を負いますが、担税者は被保険者です。
再保険、国際運送保険、受給形式が選択可能な生命保険などではI OFは非課税、農業保険では免税となっています。
主な保険取引のI OF税率は以下の通りです。
■ 証券取引
債券や有価証券の譲渡・償還等に対しIO Fが課税されます。金融機関が税額計算を行い、徴収責任を負いますが、納税者は金融商品の取得者となります。
税率はおおよそ1 ~ 1.5%程度ですが、定期預金や投資信託を用いた短期の資金運用では高い税率が課される場合がありますので留意が必要です。
■ ローカル銀行の定期預金の見方
また、ローカル銀行の定期預金の見方についても、簡単にご説明したいと思います。
各ローカル銀行によってルールが異なりますので、あくまでも一つの銀行を一例にご説明をさせていただきます。
こちらの表が1つの定期預金に関する情報となります。
黒塗りのところは具体的な数字の情報が書かれているため、記載を隠させていただいておりますが、赤枠で囲まれたところのご説明をさせていただくと表の上から順番に以下の通りとなります。(最初に記載されているのがポルトガル語 [太字]、次が英語での説明、最後が日本語で記載をしております。)
1. Data de Emissão: the date which started to deposit (定期預金預り年月日)
2. Data de Vencimento: the date which will be terminated the deposit (払戻年月日)
3. Valor Principal: the original amount (預金額)
4. Percentual IOF: the percentage of IOF (金融取引税の税率)
5. Percentual IR: the percentage of IR (所得税の税率)
6. Valor Renta Buruta: the gross amount of interests (税引前利息金額)
7. Valor Resgate Bruto: the total gross amount (総金額)
8. Valor Resgate Líquid: the total net amount (税引後の総金額)
9. Taxa/Percentual: the interest rate (利率)
10. Valor IOF: the amount of IOF (IOFの金額)
11. Valor IR: the amount of IR (IRの金額)
9、4、5項目目の利率、IOF(金融取引税)の税率やIR(所得税)の税率についてもう少し詳しく見ていくと、9の利率のところには、表ですと、『POS – 93,25%』と記載がございます。
今回一例として用いた銀行では、ブラジル国立銀行の政策金利である、SELICをベースの数字として、ベースの%の93.25% を利率とするかたちをとっております
こちらが、SERICの%を確認できるウェブサイトとなります。
https://www.bcb.gov.br/controleinflacao/historicotaxasjuros
なお、政策金利は、2019年6月1日現在、6.5%となっております。
政策金利の%も変動いたしますし、利率を計算するための%も、ローカル銀行や定期預金の預金期間によって異なっていきます。
また、4,5項目はそれぞれ、IOFの税率やIRの税率となるのですが、今回用いた銀行では、こちらも預金の期間によって%が異なります。
■ 金融機関が行う金(ゴールド)の取得取引
金融機関が金(ゴールド)を取得する場合、その取得時に、取得額を 課税標準として固定税率1%のIOFが課税されます。
+ .7 .資産課税
資産課税
ブラジルにおける資産課税は、資産の所有に関する税金と、資産の譲渡に関する税金の2つに分類されます。
更に所有に関する資産税自動車所有税、都市部建物及び土地所有税、農地所有税の3つに分類され、譲渡に関する資産税は不動産譲渡税(有償)と相続・贈与税(無償)の2つに細分されます。
所有に関する資産税
■ 自動車所有税
法人、個人を問わず、自動車(乗用車、バス、トラック等)の所有者は毎年、所有する自動車の車種、排気量や製造年度により、州ごとに定められた納税額(1 ~ 6%)の自動車所有税(IPVA:Impostosobre a Propriedade de Veículos Automotores)を納税します。
納税は各州の財務局からの通知に基づいて行いますが、州によって税金の額に多少の差がみられます。たとえば、サンパウロ州の2017年の税率は、ガソリン車4%、電気自動車3%、バス2%、トラック1.5%となっています。
■ 都市部建物及び土地所有税
都市部建物及び土地所有税(IPTU:Imposto sobre a Propriedade Predial e Territorial Urbana)とは、不動産が都市部に所在する場合、個人、法人を問わず、不動産の所有者に対して課税される 市税です。課税の対象となる都市部とは、道路端の排水路、上水の補充、下水道、街灯等の照明設備、3㎞圏内に存在する初等学校または保健所の5項目のうち、2項目以上について公共工事が実施されている都市をいいます。
[IPTUの課税標準]
不動産の時価評価額が 課税標準額となります。不動産の時価評価額とは売買実績価格・再建築価格・家賃・地価等の評価額などから決定される基準額を指します。
税率は市によって異なりますが、おおよそ1 ~ 2%程度で、居住目的以外の不動産に負担の大きい累進税率となっています。これらの計算方法に拠った、市からの計算通知書に基づいて1年ごとに納税を行います。
■ 農地所有税
上述した都市部以外の地域が農村部と定義されており、個人、法人を問わず、農村部の土地の所有者が納税者となります。農地所有税(ITR:Imposto sobre a Propriedade Territorial Rural)は 連邦税に属します。
[ITRの課税標準]
土地の時価評価額が 課税標準となります。ただし、評価額には農村地上の建物、設備や土地の造成費用、耕作物の価額は含まれません。
税額計算には利用可能な総面積と、実際の耕地面積の2つが勘案されます。適用される税率は以下の表の通りです。
| 実際に利用している耕地面積の割合(%) | ||||
利用可能面積(ha) | 30%以下 | 30%超 ~ 50% | 50%超 ~ 65% | 65%超 ~ 80% | 80%超 |
50ha以下 | 1.00 | 0.70 | 0.40 | 0.20 | 0.03 |
50 超 ~ 200ha | 2.00 | 1.40 | 0.80 | 0.40 | 0.07 |
200 超 ~ 500ha | 3.30 | 2.30 | 1.30 | 0.60 | 0.10 |
500 超 ~ 1,000ha | 4.70 | 3.30 | 1.90 | 0.85 | 0.15 |
1,000 ~ 5,000ha | 8.60 | 6.00 | 3.40 | 1.60 | 0.30 |
5,000ha 超 | 20.00 | 12.00 | 6.4 | 3.00 | 0.45 |
納税は年1回の申告納税です。農村地の所有者が納税額を計算し、税金の納付を行います。その前提として、所有者は農村地に関する情報を国税庁に登録しておく必要があります。
譲渡に関する資産税
■ 生存者間の不動産譲渡税
不動産譲渡税(ITBI:Imposto sobre Transmissao de Bens InterVivos)は、代金支払を伴う生存者間の不動産の譲渡(権利の譲渡を含む)に対して課される市税です。不動産を譲渡した者もしくは取得した者が納税義務を負い、不動産が所在する市に対して不動産譲渡契約の締結時点から10日後までに納税を行います。ただし、以下の場合には課税対象とはなりません。
・ 減資等を通じて元の所有主に譲渡する場合
・ 合併、分割等による所有権の移転
[課税標準]
各市の決定した不動産の時価評価額、または不動産に対する権利の時価評価額が 課税標準となります。ここで、不動産評価額には当該不動産に係る負債の価格は含まれない点に留意が必要です。
また、各市の不動産譲渡税率はおおよそ2 ~ 6%程度です。 課税標準に税率を乗じた金額が年次の納税額となります。
■ 無償の資産移転税
資産移転税(ITCMD:Imposto sobre a Transmissção Caussa Mortis e Doação)は、資産の無償による贈与・相続に対し、課税される 州税です。この税制では、土地・建物等の不動産に加え、現金・金融資産・無形資産(権利など)を含むすべての動産財産が課税対象となります。
[課税標準]
課税標準はIPTUや ITRの評価額を下回らない額とされており、資産に係る負債は評価額と相殺できない規定になっています。また、使用権のみの移転や名義変更においては 課税標準に用いられる評価額の減額措置があります。
動産の場合の課税評価額は当該動産の時価であり、法令に時価の決定方法の詳細が規定されています。
また、税率に関しては、4%の固定税率となっています。納税者は課税標準に税率を乗じた納税額を税額確定日から30日以内に納税します。相続の場合には相続の開始から180日以内に納税が行われない場合、罰金と延滞利息の加算がなされるので注意が必要です。
なお、納付は12回までの分割納付(延滞利息が加算される)が認められますが、物納は認められていません。
+ .8 .その他の税金
社会保険院への負担金
社会保険院への負担金(Contribuição para Previdência Social INSS-Instituto Nacional de Seguro Social)とは 社会負担金の1つで、一定期間 保険料を納付すると給付金を受けることができる制度です。この制度には、ブラジルに一時的に派遣された日本人に対して、年金の二重加入や掛捨てなどのリスクが伴っていましたが、2012年3月より「社会保障に関する日本国とブラジル連邦共和国との間の協定」(日・ブラジル社会保障協定)が発行され、上記のようなリスクが解消される運びとなりました。
同協定7条1項によると、一時的に派遣される者(滞在期間5年以内と予定される者)で、日本の年金制度が適用される者に対しては、ブラジルにおいて 社会 保険料の負担が免除されます。
また、この免除規定は対象者が役員の場合においても適用されると定められており、以前に比べ幅広い範囲の人にとって負担の軽減となる改正となりました。
なお、給付の種類、負担率、要件は以下の通りです。
■ 給付の種類
・ 規定の年齢、身体障害などによる年金支給
・ 病気、事故など労働能力に支障が生じた場合の手当の支給
・ 被保険者の死亡による家族への手当の支給
・ 低所得者に対しての養育手当の支給
・ 出産、育児休暇期間においての給与の保障
・ 年齢や障害などの理由により所得がない者に対しての生活手当の支給