会計
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
カンボジアの会計制度
会計制度の概要 |
カンボジアは、その歴史的背景からフランスの影響を強く受けており、会計制度についても、1973年にカンボジア経済財務省(MEF:Ministry of Economy and Finance)がフランス会計基準の適用を公表しました。しかし、その後はカンボジア国内で内戦が勃発したため、カンボジア独自の会計制度の構築には至りませんでした。
1992年、カンボジア会計法が制定されましたが、当時は内戦の混乱から抜け出したばかりの状況であり、会計主体である企業も少なく、会計制度を構築するには国自体が未成熟であったと言えます。
2002年になると「企業会計・監査に関する法律(Law on Corporate Accounting, Audit and Accounting Profession、以下「会計法」)」が制定され、これが会計、監査制度の基盤となります。続けて2003年には、「国家会計評議会の機能に関する政令(NAC:Sub-Decree on the functioning of the National Accounting Council)」、「カンボジア公認会計士協会に関する政令(KICPAA:Sub-Decree on the Kampuchea Institute of Certified Public Accountants and Auditors)」の公布により、会計基準設定、および監査監督の主体について規定がなされました。
国家会計評議会(NAC)は経済財務省により管轄され、カンボジア会計基準と会計関連規則について、作成改定の権限を有しています。国家会計評議会の役割については、下記の通りとなります。
・ 諮問委員会
・ 企業及び経済活動の会計業務に関連する規則等に対する調査及び意見
・ 概念的枠組み及び会計基準の開発、改善
・ 会計技術改善のための方法提案
・ 会計に関する国際フォーラム、会議及び討論会への参加
一方カンボジア公認会計士協会(KICPAA)は、職業会計士の間で結成され、経済財政省の援助のもと運営される民間団体となっています。具体的には、以下の目的から結成されています。
・ 会員を代表し、会計専門職に関する権威及び利益促進保護のため国家専門家委員会を組織
・ 国家会計評議会のメンバーとして参加
・ 会計専門職に関する規則と義務の作成及びその運用
・ 公認会計士および監査人を目指すカンボジア市民のために会計専門教育の提供
■会計期間
カンボジアにおける会計年度については、会計法上特段の定めがありません。税務上の課税年度は、原則として1月1日から12月31日までの12カ月ですが、カンボジア税務当局に申請して承認を得ることで、暦年以外の課税年度を採用することが可能です。
■会計帳簿
企業は、会計帳簿の作成、記録、保管について責任を負っており、全ての会計資料は、原則としてクメール語での表記が定められています。外資企業の場合は英語での言語表記も認められていますが、クメール語での翻訳が添えられなければなりません。
一方、企業内で保管される会計帳簿とは異なり、経済財務省に提出する財務諸表は、必ず言語はクメール語、通貨はリエルで表記する必要があります。
また、会計年度末から少なくとも10年間は、財務諸表、帳簿及び関連証憑類を保存しなければなりません。帳簿類は、仕訳帳、会計帳簿及び棚卸表が含まれます。
会計法上の保存期間は10年間とされていますが、税法上に規定はなく、また会社精算時には税務調査未完了の全ての年度に対して税務調査が行われます。そのため、10年以上前の帳簿類を破棄しており、税務当局よりその期間の調査のために資料の提出を求められた際に、トラブルになる可能性がありますので、注意が必要です。
【カンボジア会計制度まとめ】
項目 | 内容 | 留意点 |
関連法 | 会社法、会計法など |
|
担当行政機関 | 経済財政省(MEF) |
|
会計法適用の対象 | 全事業体 | 法人、個人を問わずすべての事業体に適用される |
会計通貨 | リエル | 外資企業には外貨での記帳を認めている |
記帳言語 | クメール語 | 外資企業には英語での記帳を認めている |
記帳保存期間 | 10年 | ただし税法上は規定なし |
会計期間 | 12ヶ月間 | 税務当局による承認があれば、その他の期間を会計年度と定めることができる |
財務諸表の作成義務 | 決算日以後3ヶ月以内 |
|
カンボジア会計基準(CAS) |
ASEAN諸国の大部分は国際会計基準(IFRS:International Financial Reporting Standards)に沿って自国会計基準を作成しており、カンボジア政府も国際的に通用する自国会計基準の策定を2002年以前から開始しています。
会計基準設定主体であるNACにより、IFRSに準拠した会計基準として、2002年に15項目のカンボジア会計基準(CAS:Cambodian Accounting Standards)が公布され、そして2009年1月、NACは中小企業を除くカンボジア国内で活動を行う全ての法人に対しIFRSの全面適用することを宣言し、IFRSのクメール語翻訳を進めました。
その後、IFRSと整合させるための改訂作業が続けられ、現在では、一部未発行の基準もありますが、IFRSとほぼ同等のカンボジア財務報告基準(CIFRS:Cambodian International Financial Reporting Standards)が整備されました。
■IFRS適用へ
2012年1月より、金融、保険、上場企業については、IFRSを適用した、CIFRSの完全適用が義務化されました。その他の会計監査の対象企業は、中小企業向け会計基準(CIFRS for SMEs:Cambodian International Financial Reporting Standards for Small and Medium-sized Entities)を適用し、CIFRSに自主的に準拠することも認められています。
■国際会計基準(IFRS)とは
国際会計基準(International Financial Reporting Standards、IFRS)とは、国際財務報告基準とも呼ばれ、ロンドンを拠点とする民間団体の国際会計基準審議会(International Accounting Standards Board、IASB)が設定する会計基準のことをいいます。「世界共通の会計基準」を目指して始まり、2005年にはEU域内上場企業に適用義務化され、現在は110以上の国と地域で採用されており、今後も広がっていくといわれています。
カンボジアにおいては、IFRSとほぼ同等のカンボジア財務報告基準(CIFRS:Cambodian International Financial Reporting Standards)が既に整備されています。
一方カンボジア周辺国におけるIFRSの導入は、2019年1月時点ではまだされていない国が多く存在します。
タイでは、会計基準が公的説明責任を負うか否かによって区分された2つの会計基準が設定されています。1つは、TFRS for PAEsという上場会社などの公的説明責任を負う会社に対して適用される会計基準です。もう1つは、TFRS for NPAEs(NPAE基準)という中小企業などの公的説明責任を負わない会社について適用される会計基準です。前者のTFRS for PAEsは、ほぼ主要なIFRSを基にして作られている会計基準で、後者のNPAE基準はタイ独自の会計基準になります。また、ほとんどの日系企業は上場企業に該当しないことから、NPAE基準を用いています。つまり、タイの日系企業の多くは、国際会計基準に基づかない会計基準を用いているということになります。現在、NPAE基準に代わってTFRS for SMEsという中小企業向けのIFRSの導入が検討されています。しかしながら、導入は延期されており、いまだ中小企業はNPAE基準を用いている状況です。
ベトナムでは、IFRSに基づいて一部作成されている会計基準を用いています。現存、減損の認識、資産除去債務にかかる規定、退職給付会計、金融商品にかかる会計基準などが未発行になっている点や、IFRSに対応しているベトナム会計基準であっても、完全に整合しない場合があります。また、ベトナムの会計基準は取得原価主義を採用しており、公正価値基準や市場価値などのIFRSのもつ基準については、まだ2018年時点で適応がされておりません。
ラオスでは、2016年に新会計基準が公表されています。この新会計基準では、公益企業と呼ばれる上場企業や商業銀行などの公共に大きな影響を与える企業には、IFRSの適用が求められるようになりました。しかし一方で、公益企業に該当しない企業に対しては、会社の規模に応じて異なる会計基準となっており、これはIFRSと異なるものとなっています。
■国際会計基準(IFRS)と日本会計基準(JGAAP)の主な違い
ここでは、2018年時点でのカンボジアで適用されている国際会計基準と日本の会計基準の相違点を紹介します。
現在世界で主に用いられている会計基準は、以下の3つになります。
・IFRS:欧州をはじめ、アジアでも採用されている国際会計基準
・JGAAP:日本の会計基準
・USGAAP:米国の会計基準
カンボジアにおいて会計制度が整備される以前は、米国会計基準であるUSGAAPも使用されていましたが、会計制度が整備された今日では使用されていません。
日本会計基準と国際会計基準の考え方の違いは、大別すると下記の2点になります。
1.細則主義と原則主義
2.損益計算書重視と貸借対照表重視
1.細則主義と原則主義
細則主義とは、細部までしっかりと規定し、恣意性をなるべく排して判断することを想定しています。一方原則主義は、細則主義とは反対に基本的な枠組みのみを規定し、細部についてはケースバイケースで判断することを想定しています。日本会計基準では細則主義を採用しており、会計処理のための判断基準や規定の内容を細部まで厳密に定め、企業会計の透明性を高めるように設計されています。
国際会計基準で採用されている原則主義は、原則のみを統一した基準のため、企業間での基準の認識の違いから、細部の比較可能性が損なわれてしまう可能性があります。また、企業の経理担当者が会計処理に対して、自ら基準適用の判断を行い、判断の根拠を示さなければならないという点において、経理担当者又は責任者が会計基準について精通している必要があります。また、原則主義であるため、どの会計基準を採用したか、なぜその採用を判断したか、どのように測定したか等、詳細な情報を開示する必要があります。
2.損益計算書重視と貸借対照表重視
日本会計基準で採用されている収益費用アプローチとは、損益計算書を重視した考え方で、一会計期間の収益と費用の差である当期純利益を利益と考えます。一方国際会計基準で採用されている資産負債アプローチとは、貸借対照表を重視した考え方で、資産と負債の差を「利益」として考えます。
収益費用アプローチでは、企業の収益力を明確にすることを目的としています。つまり、一会計期間に区切って算出される純利益によって企業がどれだけの利益獲得能力があるかを明確にします。それに対し、資産負債アプローチは企業価値を明確にすることを目的としています。つまり、一会計期間での期首の残高と期末の残高を比較してどれだけ増加したかという企業の存続性、成長性を明確にします。
日本で収益費用アプローチが採用されてきた理由としては、成長経済過程にあり、ものを作れば売れるという成長経済が続いていたために存続性、成長性は暗黙の前提として存在し、重要なのは一会計期間でどれだけの利益を出したか、という部分に債権者や投資家が注目していたためです。しかし、日本やほとんどの先進国で成長に限界が見え始め、債権者や投資家にとって重要な要素が利益を生み出す能力から存続性、成長性といった企業価値となっていき、単年度の利益よりも長期的な企業価値を重視する考え方に変わっていきました。そのため国際会計基準では、企業価値の開示を目的とする資産負債アプローチを採用しています。
次に、日本会計基準と国際会計基準の、一般的な論点、貸借対照表、損益計算書項目等の違いについて紹介します。
[一般的な論点の相違]
論点 | 国際会計基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
公正価値の測定 | 公正価値とは、測定日時点で市場参加者間の秩序ある取引 において資産を売却するために受け取る価格また は負担を移転するために支払う価格と定義されている。
公正価値の測定は、評価の対象となる資産または負債が取引される主要な市場(主要な市場がない場合には、当該資産または負債に関する最も有利な市場)を参照する。 | 公正価値が使用される複数の会計基準において、それぞれ時価が定義されている。
時価評価するにあたって参照すべき市場についての一般的な考え方は示されていないが、1つの金融資産が複数の取引所に上場されている場合には、当該金融資産が最も活発に取引されている取引所の取引価格を用いるものとされている。 |
会計方針の統一 | 親会社及びグループ企業において類似の状況における同様の取引は、統一された会計方針を用いて連結財務諸表を作成しなければならない。 | 同一環境下で行われた同じ性質の取引等について、親会社及び子会社が採用する会計処理の原則及び手続は原則として統一しなければならない。
ただし、在外子会社が国際会計基準または米国会計基準で財務諸表を作成している場合、当面の間、特定の項目について重要性が乏しい場合を除き日本会計基準に修正することを条件として連結手続上利用することが認められている(会計方針を統一する必要はない)。 |
外貨建取引の
換算レート | 原則として外貨建取引を取引日の為替レートで当初認識するが、為替レートが著しく変動している場合を除き、平均レートを用いることができる。
決算日の為替レートで換算する項目に対し、特定の平均レートを用いることは認められない。 | 原則として外貨建取引を取引日の為替レートで当初認識する。平均レートを用いることもできるが、為替レートが著しく変動している場合においても、平均レートの使用は禁止されていない。
決算時の為替レートとして、決算日の為替レート以外に決算日前後の一定期間の為替レートに基づいて算出された平均レー トを用いることができる。 |
[貸借対照表項目関連の相違]
論点 | 国際会計基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
有形固定資産の
範囲 | 交換部品等有形固定資産の定義を満たす場合は、有形固定資産として会計処理される。 | 国際会計基準のような明確な規定はない。 |
耐用年数及び
残存価額 | 会計上の見積りによって決定される。 | 会計上の見積りによって決定される。ただし不合理と認められる事情のない限り、法人税法の規定に基づいて決定することが、実務上認められている。 |
有形固定資産取得の
借り入れコスト | 有形固定資産かが格資産に該当する場合、借入費用を取得原価に算入する。 | 原則費用として計上する。ただし、自家建設の場合、建設に要する借入資本の利子で稼働前の期間に属するものは、取得原価に算入することができる。 |
のれんの償却 | のれんの償却は認められておらず、最低でも毎年一回、同時期に減損テストを実施しなければならない。 | のれんの計上後20年以内の期間にわたって、定額法又はその他の合理的な方法により規則的に償却する。
また、のれんは固定資産の減損に係る会計基準の適用対象資産となり、減損の兆候がある場合に減損テストを実施する。 |
棚卸資産の範囲 | 販売活動及び一般管理活動において短期的に消費される事務用消耗品等の取扱いについては、基準上明記されていないため、生産過程またはサービスの提供にあたって消費される原材料等に該当するか否かで判断する。
交換部品等の取扱いは、1年を超えて使用すると予測される主要交換部品及び予備器具 は、有形固定資産に含めて計上する。
サンプル品、カタログは、企業が広告宣伝活動及び販売促進目的のために、無償で提供することを意図したサンプル品に係る製造、 購入コストは、販売用製品の製造に要したものではないため、 棚卸資産ではなく発生時に費用処理する。
企業の製品またはサービスについて記載したカタログも、広告宣伝・販売促進用資料の一種とみなされるため、棚卸資産には該当せず、発生時に費用処理する。 | 棚卸資産には、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。
交換部品やサンプル品、カタログに関しては、国際会計基準のような規定はない。 |
[損益計算書項目関連の相違]
論点 | 国際会計基準(IFRS) | 日本会計基準(JGAAP) |
収益の表示 | 収益には、企業の計算により受領したか、受領しうる経済的便益の総収入だけが含まれる。
代理人とし回収した金額は収益ではなく、手数料の額が収益となる。代理取引の判断指標が示されており、在庫リスクや価格決定権、経済的便益の流入に関するリスクの状況等を勘案して、本人か代理人かを判定することになる。 | 収益は総額によって記載することを原則とされている。
消費税に関して、税抜方式が適当とされているが、一定の場合には税込方式についても認められている。 |
物品の販売 | 5. その取引に関連する原価を、信頼性をもって測定できる以下の要件のすべて満たす場合、収益を認識する。
1. 物品の所有に伴う重要なリスクと経済的便益を買手に移転している。
2. 販売された物品に対して、通常所有とみなされるような継続 的な管理上の関与も実質的な支配も保持していない。
3. 収益の額を、信頼性をもって測定できる。
4. その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高い。 | 実現主義の原則通り、商品等の販売によって実現したものに限り売上高を計上することとされるが、国際会計基準のような規定はない。 |
サービスの提供 | 以下の要件のすべてを満たす場合、取引の進捗に応じて収益
を認識する。
1. 収益の額を、信頼性をもって測定できる。
2. その取引に関連する経済的便益が企業に流入する可能性が高い。
3. その取引の進捗度を、期末日において信頼性をもって測定できる。
4. その取引に関連する原価と取引の完了に要する原価を、信頼 性をもって測定できる。
取引の成果を、信頼性をもって見積ることができない場合には、収益は、費用が回収可能と認められる範囲内でのみ認識しなければならない。 | 原則として実現主義に従い、売上を認識するが、サービスの提供に係る収益の認識についての詳細な規定はない。 |
工事契約 | 工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることができる場合は、進捗に応じて収益を認識する。
工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることができない場合であっても、発生した工事原価のうち回収される可能性が高い範囲でのみ収益を認識する。
工事契約の成果を、信頼性をもって見積ることを妨げていた不確実性が存在しなくなった場合には、進行に応じた収益を認識する。
また、工事契約から識別される履行義務は、一時点において充足されるのではなく、あくまで一定期間にわたり充足されると見なすため、工事完成基準は適用されない。 | 工事契約の途中において、成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適用し、確実性が認められない場合には工事完成基準を適用する。
工事進行基準の適用要件を満たさないために工事完成基準を適用している工事契約について、その後に工事が進捗し、事後的に成果の確実性が増した場合であっても工事進行基準への変更は行わない。
ただし、本来工事の着手に先立って定められるべき工事契約の基本的内容が、事後的に決定された場合などは、その時点から工事進行基準を適用する。 |
[損益計算書表示の相違]
国際会計基準 | 日本会計基準 |
収益 | 売上高 |
売上原価 | 売上原価 |
売上総利益 | 売上総利益 |
その他営業収益 |
|
販売費及び一般管理費 | 販売費及び一般管理費 |
その他営業費用 |
|
営業利益 | 営業利益 |
金融収益 | 営業外収益 |
金融費用 | 営業外費用 |
| 経常利益 |
| 特別利益 |
| 特別損失 |
法人税等 | 法人税等 |
当期純利益 | 当期純利益 |
・営業利益
日本会計基準と大きく異なる点は、国際会計基準での営業利益の考え方です。国際会計基準では金融収益及び費用を除いた、日本会計基準における営業外利益及び費用も営業利益に含まれます。
・経常利益
この項目は日本会計基準特有のもので、国際会計基準(及び米国会計基準)には存在しません。
・特別利益及び損益
国際会計基準では、特別利益及び損益の記載は認められていません。
■運用上の留意点
カンボジアでは、国際会計基準を適用したCIFRS又はCIFRS for SMEが適用されています。
しかしながら、カンボジアをはじめとする新興国では、法律・税制度・会計などを含めた社会的なインフラが整然と確立されたものではありません。会計のルールは、法の下で商取引が行われ、成熟した企業群が存在し、資本市場での資金調達などのルールと整合的に定め、国家の法制度や慣習を織り込み制定される必要がありますが、カンボジアにはそのような高度な社会的インフラが整合的に構築されていません。
また同時に、カンボジアでは会計に関しての人材も十分ではなく、現地の会計事務所に会計業務を委託していたとしても、後々の税務調査などで確認された際に、記帳などの会計処理が適正に行われておらず、莫大な追徴課税を課せられるということも実際に起きています。また、進出直後の企業にとって会計などの管理業務にかけられるコストは決して高くなく、低コストで経験の浅い経理担当者を雇い業務を進めるケースが散見されます。進出直後の会計記録等の不整備により、結果として数年後に修正のための追加コストや、税務調査等で不備を指摘され、莫大な追徴金を請求されるケースも散見されます。
カンボジアは国際会計基準に準拠しているとはいえ、実際に携わる人材が追いついていないため、進出直後は、本社の経理部門による監督を行う、現地の専門家をしっかり比較し信頼できる会計事務所等に依頼をするなど、留意する必要があります。
また近年では、税務当局もカンボジア企業の税務コンプライアンスに力を入れており、税務調査なども頻繁に行われているため、税務対策を重視する傾向が見られます。そのため、企業側も税務リスクに対する意識が傾倒し、社内の会計、経理関係の整備に意識が向いていない傾向にあります。しかし、税務の基本は会計となるので、適切な人材又は専門家の選択が、リスクを回避する最も有効な対策となります。
会計の基礎知識とカンボジアにおける会計
会計の基礎知識 |
■会計とは
金銭収支、財産の売買を中心とした経済的取引事象を、貨幣数値によって一定の方式により記録・計算・報告する制度又は行為をいいます。つまり、資金の流れだけでなく、資金と物の交換によって資金が増加したり、物が減少したりなどの記録も全て会計にあたります。
■経理とは
経理とは、経営管理の略称です。経営管理には明確な定義というのは存在しませんが、より企業の業務に繋がる資金の処理のことを指します。伝票の起票、帳簿記帳、請求、支払い、税金の申告、決算書の作成などが経理の仕事にあたります。また、経理が企業の資金を処理することにより、組織の目標達成のために、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)を有効活用の仕方が見えてきます。最高経営層の意思決定となる役割を担っています。
■財務とは
財務とは、企業の資金繰り、予算管理、資金調達を担当する業務のことを言います。資金調達(銀行融資、債権・株式発行など)や、資金の運用(投資、M&Aなど)計画を考え、金融機関と折衝したりするため、専門知識だけでなく企画的な要素が含まれます。
企業によっては、経理担当者が財務も担当していること場合や、経理担当と財務担当を同じ部署(経理・財務部門)に配属させていることがありますが、経理と財務は役割が異なります。
しかしながら、財務担当が資金調達を行う時には、経理担当が作成した決算書をもとに仕事が進められることが多く、この2つの業務は密接な関係にあります。
■会計の基礎知識
会計は、「財務会計」「管理会計」「税務会計」と分けることができます。これらの3つは目的が異なり、依拠する法律も異なります。
| 財務会計 | 管理会計 | 税務会計 |
会計の目的 | 会社の収益性・財政状態を適正に表示 | 会社の収益性・財政状態を適正に管理 | 税額算定の基準を作る |
保護対象 | 投資家や企業外部の利害関係者(投資家や債権者など) | 企業内部 | 国、納税主体 |
機能 | 企業の収益性を適正に投資家や債権者等の企業外部の利害関係者へ報告する。これにより、外部の利害関係者が企業に対し誤った判断を行わないようにする。 | 企業の情報を適正に管理、分析をすることで、企業内部の経営者や従業員の意思決定に資する情報とする。 | 税法を公平に反映させた会計という客観的な情報を元に、税額を計算することによって、税額徴収の恣意性を排除する。 |
[財務会計]
財務会計とは、企業の収益などの財務状況を企業の利害関係者へ可視化して伝えることを目的とする会計のことです。利害関係者は、投資家や株主、債権者、取引先、仕入先などのことをさします。外部関係者は、企業から得たその企業の財務状況の情報を元に投資や取引の意思決定を行います。
財務会計の公表は、決算書(財務諸表)を元にして行われます。これは、貸借対照表や損益計算書、株主資本変動計算書、キャッシュ・フロー計算書などを含みます。
[管理会計]
管理会計とは、企業の内部の人が意思決定をするときに参考にする会計のことです。企業内部向けとなるため、法的な規定はなく(原価計算のみ基準となる規定があります)、企業によって自由に会計処理の仕方を工夫することが可能です。
管理会計のための資料は、作成が義務とされていないため不必要あるいは優先順位が低いと思われがちです。しかしながら、商品やサービスの価格設定や戦略、その他の費用などの企業内での資金の使い方などの意思決定をする際、管理会計は重要な資料となります。
[税務会計]
税務会計とは、企業の課税されるべき所得額を算出するための会計です。法人税法などの規定に従って行われ、国および地方自治体が課税する税金を計算するうえで用います。つまり、税務申告などで必要とされるといえます。
カンボジアにおける会計 |
■会計に関係する法律
上記までで紹介した中で「財務会計」と「税務会計」は、カンボジアで用いられている法律に従って、会計をする必要があります。
| 財務会計 | 税務会計 |
依拠する法律 | 企業会計・監査に関する法律(Law on Corporate Accounting, Audit and Accounting Profession) | カンボジア税法(Low on Taxation) |
[財務会計]
カンボジアにおいては、上場企業も極めて少ないという環境もあり、投資家の存在があまり想定されていない状況となっています。したがって、現在のところ、財務会計を意識させる局面はほとんどないというのが実情です。財務会計が必要な会社は以下の3種類の会社に絞られるといえます。
・投資優遇措置対象企業(QIP対象企業)
投資優遇措置対象企業は税金の免税などを受けるために会計監査を受けなければなりません。その際に関しては、会計監査は、財務会計の基準で監査が行われることになると思われるため、これらの企業は財務会計の基準のIFRSに依拠する必要あります。
・上場企業
カンボジア証券取引所に上場している会社は、内部規定上、会計監査を受けなければなりません。したがって、これらの企業は財務会計の基準のIFRSに依拠する必要あります。
・ある程度規模が大きい会社
① 年間売上高30億リエル(約75万USドル)以上
② 総資産20億リエル(約50万USドル)以上
③ 従業員数100名以上
この項目のうち2つ以上を満たす企業は、後述する会計監査を受ける義務が課されています。その場合は、これらの企業は財務会計の基準のCIFRS又はCIFRS for SMEsに依拠する必要があります。
[管理会計]
管理会計とは、会社内部に情報を提供するための会計です。したがって、通常、法的な縛りはありません。カンボジアにおいても同様です。例えば、原価計算における固変分解というものがあると思いますが、その情報が法的に求められることはありません。しかし、会社内部で財務状況を管理する上で、有用な意思決定資料となりますので、変動費・固定費を分解した上で費用計上を行っている会社もあります。
現在のところ、カンボジアにおいては制度会計(法的に定められている会計)自体が弱いため、会計にそれほど重きを置いていない会社が多く、管理会計までは考慮していないという会社が多くみられます。会計軽視の状況で、一見、会計にかかわる仕事量が減ったように思えると思いますが、実は、自社の財務状況や財務情報を会計から適切に取得できないという意味で、もったいない運用方法をしていると思われます。
今後、カンボジアという環境の中で利益をいかに捻出するかは、自社の財務状況やリスクを会計から的確に認識できるかどうかにかかっているため、会計を適切に分析し、意思決定のために的確に使用する行うことが重要になります。
■カンボジアの会計実務
[経理ソフトウェア]
カンボジアでも経理を行う上で、経理ソフトを利用することができます。独自ブランドでソフトウェアを提供している企業や日系企業による日本とカンボジア間で利用できるソフトウェアも存在します。
カンボジアで主に利用されているソフトウェアは、以下になります。
QuickBooks
| アメリカのIntuit社が提供。アメリカでも中小企業の8割が利用しているといわれている。
カンボジアでも最も知られている会計ソフト。外貨にも対応しており、CustomerやVendorの取引が見やすくなっている。また他のシステム(給与システムや在庫管理システムなど)と連動しやすくなっている。 もともとはアメリカ発祥で、かつ外貨対応しているという面もあり、アメリカ通貨を利用しているカンボジアでは利用しやすい会計ソフトだといえる。 |
Sage50 (Peachtree) | アメリカのSage社が提供。ブランドの統一により2012年から「Peachtree」から「Sage 50」へと名前が変更。
カンボジアでも認知度が高い会計ソフト。財務諸表のカスタマイズが可能で、レポートのフォーマットが見やすいなどとシンプルで見やすくなっている。 |
Xero | ニュージーランドのXero社が提供。中小企業向けを意識している法人経理会計担当の会計ソフト。ニュージーランドをはじめ、オーストラリアやイギリスなどで事業を拡大。日本にもサービスを開始している。
PayPalなどと連動しており、複数の通貨で利用することが可能。モバイルアプリでも利用することができ、外出時に見積書や請求書の作成が可能。 |
QNE Accounting | マレーシアのQNE社が提供。フィリピンにもオフィスを構え、アジア圏でサービス展開している。
カンボジアの言語(クメール語)に対応しているため、クメール語対応が必要な際に利用されている。 |
■カンボジアの会計資格
カンボジアで取得可能な会計における資格は、主に2点となります。
・ カンボジア公認会計士(カンボジア公認会計士、KICPAA)
・ イギリス公認会計士(英国勅許公認会計士、ACCA)
カンボジア公認会計士(KICPAA)は、カンボジア公認会計士協会のカンボジア人会計士登録リストに記載されている会員の者のことをいいます。資格要件として、CPA、ACCA、CAいずれかを取得している必要があります。
イギリス公認会計士(ACCA)は、カンボジア公認会計士になる上でも条件となっていることから、カンボジアで最も有名な資格となっています。また、国際会計基準に基づく資格のため、国際会計基準に基づく会計基準になっているカンボジアでは非常に有効な資格となっています。
日本でイギリス公認会計士を取得する際、海外のイギリス公認会計士プログラムを提供している学校に在籍することを進めており、特にカンボジアの学校を進めていたりします。
イギリス公認会計士取得のための学校等の費用や取得までの期間の負担が大きく、またほとんどの人が働きながら取得を目指しているため、カンボジアではイギリス公認会計士の取得を目指すカンボジア人は多くいますが、実際に取得している人はまだ多くありません。
そのため、有資格者の賃金が高額になる傾向にあり、アジア諸国の公認会計士と比較しても数倍になります。
カンボジアの開示制度
■開示書類
会計年度が終了すると、会社は貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、注記表からなる年次財務諸表を作成し、定時株主総会において株主の承認を受けなければなりません。かかる財務諸表は不可分とされており、以下のものが含まれている必要があります(会社法224条)。
・前会計年度と当会計年度の比較財務諸表
・監査役による報告書
・定款、内部規則又は株主全員一致の合意により必要とされる財務状況又は事業に関する報告書
監査役は、個人又は公認会計事務所において業務を行う公認会計士とされています。株主は、第1回定期株主総会及び以降の定期株主総会において、普通決議によって監査役を選任します。任期は次の定時株主総会が終了するまでとされ、定時株主総会において監査役が選任されなかった場合、次の監査役が選任されるまでの間、現監査役が留任します(会社法229条)。
なお、有価証券を一般公開していない又は1人以上の者により未払有価証券を所持されていない会社の株主は、監査役を選任しないことを決議することできます(会社法230条)。監査役を選任しない旨の決議を行っていない場合、裁判所から監査役の設置を強制され、報酬の支払いを求められる可能性もあるため、注意が必要です。
監査役は、株主に会計法が要求する財務諸表について株主に対して報告するため必要な調査を行います。監査役の要求により、取締役、執行役員、使用人または代理人は、職務遂行のために必要とする情報、説明、帳簿及び記録の提供を行わなければなりません。
また監査役は、全ての株主総会招集通知を受け取り、会社の費用で株主総会に出席し、監査役としての義務に関する事項について知る権利を有しています。取締役又は株主(議決権の有無を問わない)は、定時株主総会の10日以上前に、監査役に対して招集通知書を送付した場合、会社の費用で当該株主総会に出席し、監査役の義務に関する質問に回答しなければなりません(会社法234条)
財務諸表及び監査報告書には、1人以上の取締役による署名が必要です。また、年次財務諸表が取締役によって承認され、監査役の報告書が付されない限り、当該財務諸表の写しを発行、刊行又は流通させることはできません。
株主総会において承認された財務諸表は会社及び会社所在地の登記所に保管され、株主とその代理人は、営業時間中はいつでも、この財務諸表を閲覧し、写しを入手することができます。
■開示スケジュール
取締役は会計年度終了日以後3カ月以内に財務諸表を作成し、さらに一定の要件を満たす会社は公認会計士の監査を受けなければなりません。さらに、会計年度終了日から6カ月以内に株主総会を開催して、株主の承認を受け、経済財務省へ財務諸表を提出します。
この年次報告書の提出など、行政手続の際に、本来規定にないはずの支払を求められるケースがあります。まだまだ法制度が整っているとは言えない状況もあり、このあたりの透明性確保が円滑なビジネス運営のためには解決されていく必要があるでしょう。
■ カンボジアの年次財務諸表提出について
2022 年 1 月 27 日、通知”No. 002”が発表されました。 「独立監査人による監査を必要としない企業に対して、
会計監査規制当局(ACAR)への年次財務諸表の提出義務」が、本通知の中で定められました。
対象となる企業は、会計期間の終了日から3カ月と 15 日以内に ACAR に対し、年次財務諸表を提出しなくてはなりません。
例えば、12 月 31 日が会計期間終了日の場合、翌年 4 月 15 日までに年次財務諸表を提出する必要があります。
提出方法は、E-filing での提出とされています。 ( The use of computer technology to file documents )
また、期限内に年次財務諸表を不提出、或いは提出遅延した企業に対しては、 2020 年 6 月 1 日付けのSub-degree 79 に基づき、
KHR 800,000 (約USD 200) ~ KHR 2,000,000 (約USD 500)の罰金が科されることとなるとされております。
※金額は、担当官及び企業によって異なります。
<提出手続き>
-ACARのオンラインシステムに登録
-ACARが提供する財務諸表のテンプレートに情報を記入する
-書類のアップデート
-ACARへの書類提出
<英語使用に関する通知>
2022年7月21日以前に登録された企業は、2023年12月31日までに、会計システムにおける英語使用の申請をACARに提出する必要があります。
また、2023年7月21日以降に設立された企業は、税務総局(General Department of Taxation: GDT) への登録日から180日以内に申請書を提出しなければなりません。
※上記のACAR承認を得ない、また、財務諸表にクメール語を使用しなかった場合の罰則は、
KHR 800,000 (約USD 200) ~ KHR 2,000,000 (約USD 500) になります。
*金額は、担当官及び企業によって異なります。
カンボジアの監査制度
■監査対象企業
カンボジアでは、国内で事業を行うすべての法人(外資企業を含む)及び個人のうち、以下の3つの基準のうち2つを満たす会社は、カンボジア公認会計士・監査人協会(KICPAA:Kampuchea Institute of Certified Public Accountants and Auditors)に登録され、独立性を有している会計監査人による監査を受けることを義務づけられています(会計法第16条)。
【監査対象会社】
・年間売上高40億リエル(約100万USドル)以上
・総資産30億リエル(約75万USドル)以上(監査対象年度の資産平均価値)
・従業員数100名以上(監査対象年度に雇用する平均従業員数)
上記の要件を満たし監査対象となった場合は、その後、基準を満たさなくなった場合でも、引き続き監査を受ける必要があります。
また、適格投資プロジェクト(QIP)の適用を受けている会社は、この要件を満たしていなくとも、会計士による会計監査を受けなければならない点には注意が必要です。
なお、上記の基準を満たさない会社は、会計監査を受ける必要はありません。
■監査人の資格
独立の監査人とは、カンボジア公認会計士・監査人協会(KICPAA)の監査人リストに登録されている監査人です。この KICPAA に登録されている公認会計士は、3年間の研修を終了することで、会計と監査の分野のプロフェッショナルであることを認められます。しかし、現在KICPAA のメンバーのほとんどがカンボジア以外の国籍を持っており、自国民公認会計士は少数となっています。
■監査義務
監査対象となった企業は最低でも3年間にわたり、継続して監査を受ける必要があります。たとえ1年目に監査対象になり、2年目には監査対象外になったとしても、3年間続けて監査を受けることが定められています。
しかし、監査対象となっている企業が1年間(12か月)就業活動や営業を停止した場合は、国家会計評議会に申請書を提出しない要請をすることができます。
また、独立監査報告書の発行は、会計期間の終了日から6ヶ月以内に完了するものと決められています。これが実行できない場合、独立監査報告書の種痘を義務付けられている事業体は、適切な説明とともに国家会計評議会に独立監査報告書の取得延長を要求することができます。
監査済み財務報告書を入手する義務がある企業や団体は、会計期間の終了日から6ヶ月と15日たった後、国家会計評議会の事務総局に報告書を提出しなければなりません。
参考文献
・ 国際会計基準委員会(IASC:International Accounting Standards Committee)
・ 企業会計・監査に関する法律(Law on Corporate Accounting , Audit and Accounting Profession)
・ KICPPA(Kampuchea Institute of Certified Public Accountants and Auditors )
・ 国際会計基準委員会(IASC:International Accounting Standards Committee)
・ あずさ監査法人:IFRSと日本基準の主要な相違点