税務
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カンボジアの租税体系
カンボジアの現行租税法は2003年改正税法(LALoT:Law on Amendment on the Law on Taxation)に基づいています。
この改正税法はもともと1997年税法(LoT:Law on Taxation)に由来します。2000年には1997年税法をより明確化するために、経済財務省(Ministry of Economic and Finance)による事業所得税(Tax on Income)に関する大臣令(Prakas)が発せられました。その後、2003年に改正大臣令を発することで現在に至ります。
■税目の種類
カンボジアの国内法においては、以下のような種類の税金が定められています。これらの税目には、日本のように、国税・地方税という区分はなく、全て国が徴収する国税となっていて、税務総局(General Department of Taxation:GDT)が管轄しています。その中で、徴収・負担の方法により「直接税」と「間接税」に分かれています。
【主な税金の種類】
| 税目 | 科目 |
直接税 | 所得税類 | 事業所得税(Tax on Income) |
給与税(Tax on Salary) | ||
資産税類 | 資産譲渡税(Property Transfer Tax) | |
その他 | その他(特許税、印紙税など) | |
間接税 | 所得税類 | 源泉徴収税(Withholding Tax) |
関税類 | 付加価値税(Value Added Tax) | |
特定商品・サービス税(Specific Tax on Certain Merchandise and Services) | ||
関税類 | 輸出入関税(Import and Export Duties) | |
その他 | その他(宿泊施設税、公共照明税など) |
■直接税と間接税
【直接税】
直接税とは、税金を納める義務がある納税義務者と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。カンボジアにおいては個人の給与税(Tax on Salary)、法人の事業所得税(Tax on Income)などがこれに該当します
【間接税】
間接税とは、直接税と異なり、税金を納める人と実際に負担する人が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接ではなく他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。カンボジアでは、付加価値税(Value Added Tax)、源泉徴収税(Withholding Tax)などがこれに該当します。
【年次報告書提出のオンライン化について】
商業省より発表された大臣令(Prakas № 107 dated 5 April 2017)では、現地法人、外国法人駐在員事務所、外国法人支店の年次報告書の提出方法に関して規制をしています。以下内容をお伝えします。
年次報告書の商業省への提出は、カンボジア税法上、強制されており、株主構成の変化、取締役の変更、住所変更などの種々の変更は常に商業省に報告され、データベース上更新されている必要があります。2016年初めのオンライン登録システムの登場の前までは、1年に1回、紙面により商業省に提出しなければなりませんでした。
この大臣令では、2016年度年次報告書の提出期限は商業省によって決定され、商業省のオンラインシステムに登録した時から11か月目の月に各々の事業体に伝えられるということを示しています。大雑把には、年次報告書はオンラインシステムを通して、システム登録から1年経過後3か月以内に提出されなければならないという時期の明示はされています。この期限を守れなかった場合、およそ250USDの罰金が課されることになります。
【社会環境基金の創設について】
政府は社会環境基金の創設に関する閣僚会議令(Sub-Decree No.238 dated 21 November 2016)を出しました。この閣僚会議令は環境保護や維持、生態系の保護のために社会環境基金を管理、使用、組織することに関係したすべての活動に適用されます。社会環境基金は以下の手段から集められることになります。
・環境保護協定および環境影響評価の計画に基づいたプロジェクトからの収益
・環境保護、環境に優しいサービス、生態系保護より生じた収益
・慈善組織、開発機構、私的機関から受けた寄付
・その他環境分野からの生じる収益
社会環境基金の口座はカンボジア国立銀行か、経済産業省が承認した他の銀行に開設をしなければなりません。
【小規模経営体の税務登録の要否に関する通達について】
2017年3月25日、政府は通達(Notification 5186 on the 25th of March 2017)を出しました。その内容とは、1年間の収益が2億5000万リエルに満たず、定義上、「小規模経営体(Small Taxpayer)」未満の経営体は税務登録を行う必要がないということを再度確認するものです。
そもそも、こういった確認を政府が行っているのは、税務局の役人やその他個人の中に、税務調査を行うという口実のもと、本来、税金を納める必要がない小規模経営体(Small Taxpayer)未満の経営体に対して、金銭を取り立てている人たちがたくさんいるという事実を把握しているためです。このような取り立ては違法であるので、毅然と拒否するべきであるといえます。なお、法人形態である場合は収益の多寡にかかわらず「中規模経営体」に該当するので税務登録を行う必要は出てきます。
【2017年月に発表された未登録中小企業に対する税務優遇措置に関する追加の通達】
政府は2017年2月に税務上未登録の中小企業に対して、適正な税務登録を促すために、この措置が発表された2017年2月7日から2018年12月31日の2年間弱のうちに適正に税務登録を行った場合、起点を、その中小企業が最初に収益を獲得した年か税務登録を行うべきだった年、いずれか早い年からとして、2年間、利潤税と前払利潤税が免税となるという措置(Notification no. 5251 on 27 Mar 2017)を発表しました。しかしながら実務上この規定に関して間違った解釈が多くみられています。すなわち、すべての中小企業がこの税務優遇措置を受けることができるという誤解です。しかし、この優遇措置を受けられるのは、この措置が発表された2017年2月7日から2018年12月31日の2年間弱の間に初めて税務登録を行う中小企業だけです。
また、この規定で免税になるのは利潤税、前払利潤税のみであります。加えて、中小企業は免税になるかどうかにかかわらず、月次、年次において申告自体は行う必要があるという点も再確認されました。
この規定に関して、未登録のまま登録を失念していた中小企業のみ、税務優遇措置を受けることができ、正しく処理を行っていた他の中小企業が税務優遇措置を受けることができないという点について、不公平な規定といわざるを得ませんが、カンボジアでは適正な状況を促す方法として良く活用される方法であります。その文化、方法論を理解しておくことが大切になるかと考えられます。
二重課税防止条約 |
二重課税防止条約(租税条約)には、国家間取引における源泉徴収税率など、重要な規定が含まれています。
現在カンボジアと正式に二重課税防止条約を結んでいる国は、トルコを除く10カ国です。
関連当事者 | 有効日 | |
カンボジア | シンガポール | 2018年1月1日 |
タイ | 2018年1月1日 | |
ブルネイ | 2019年1月1日 | |
中国 | 2019年1月1日 | |
ベトナム | 2019年1月1日 | |
香港 | 2020年1月1日 | |
インドネシア | 2021年1月1日 | |
マレーシア | 2021年1月1日 | |
韓国 | 2022年1月1日 | |
中華人民共和国マカオ特別行政区 | 2024年1月1日 | |
トルコ | 未定 | |
カンボジアとフランス、日本、アラブ首長国連邦(UAE)、その他のASEAN諸国との間でも、新たなDTA締結に向けて活発な話し合いが続けられています。
二重課税防止条約は、国境を超えるような商品の売買やサービスの提供にかかる、それぞれの国の税金の二重課税を防止し、納税者の負担を軽減し取引の活性化を目的として締結されます。
二重課税防止条約で適用されるカンボジアの税目は、下記の通りとなります。
・法人税
・配当、利息及びロイヤリティにかかる源泉徴収税
・給与税 など
カンボジアの納税者にとって重要となる事項は、配当、利息、ロイヤリティ、その他技術的サービス等にかかる源泉徴収税の減税を活用できることです。カンボジア納税者でない国外企業からのサービス提供等にかかる源泉徴収税率は一律14%となりますが、二重課税防止条約下では、ほとんどの場合10%まで減税されます。
カンボジア税務総局は2018年3月26日に発効されたInstruction 4084にて、二重課税防止条約適用の規定及び手続きについて規定しました。Instruction 4084によると、企業はカンボジア居住証明を取得することとされており、有効期限は1年間で毎年更新が可能です。カンボジア居住者の定義は以下のとおりです。
・カンボジアに主たる住居又は居所がある、又は課税年度の12ヶ月間のうち182日(連続している必要はない)以上滞在する個人
・カンボジア国内にて組織され又は運用されている、又はカンボジア国内に主たる事業拠点がある法人又はパートナーシップ
二重課税防止条約の適用を希望している、上記に該当する個人又は企業は、カンボジア税務総局内の法務・課税政策・国際税務協力部門にて事前の承認を受けなければなりません。承認のために必要となる書類は、下記の通りとなります。
適用を希望する個人
・パスポート
・締約国の権限のある当局発行の居住証明
・支払等に関わる契約書・文書
・委任状
適用を希望する法人
・締約国の権限のある当局発行の居住証明
・設立証明書
・会社定款
・支払等に関わる契約書・文書
・委任状
現在又は将来的な事業活動における二重課税防止条約条項の完全適用については、複雑で煩雑なものになる可能性が有ります。シンガポールでは、居住性を証明するために経済的実証テストを行う必要があり、二重課税防止条約が適用される相手国に必要な居住証明を入手できない場合は、免税や減税の恩恵を受けることができない可能性があります。
また、二重課税防止条約の条項は国家により異なっており、国家間による調整や交渉が必要となることがあります。例えば恒久的施設の設立、国家間取引にかかる源泉徴収税の減税率など、租税条約ごとに異なっている可能性があるため、事前に管轄の省庁や専門家に事前に相談しておくことが肝要です。
個人所得に対する税
個人所得税の概要 |
カンボジアにおける個人の所得に対する税金は、日本の所得税と異なり、「給与税(Tax on Salary)」と「事業所得税(Tax on Income)」という2種類の税金が存在し、所得の区分に応じていずれかの税金が課税される形になります。
日本では、個人が稼得した所得に対して、「所得税」という一つの税金が課税されます。一方、カンボジアでは、個人の所得のうち、給与所得のみを分離して「給与税」が課税され、その他の所得に対しては、「事業所得税」が課税される、つまり個人の所得に対して、2種類の税金が課税されることになります。
【個人所得に対する2つの税金の課税範囲(給与税と事業所得税)】
したがって、カンボジアにおいては、個人の場合で給与収入のみの者については「給与税」のみが課税され、給与以外の収入も発生している場合には、「給与税」と「事業所得税」の両方が課税される形になります。
個人所得の税率は、個人の居住地がカンボジアにあるか、日本を含む海外にあるかにより、異なります。居住者か非居住者かによって課税関係が大きく異なるため、区分を把握することが重要となります。カンボジアにおける「居住者」であることの判断は以下の要件になります。
・ カンボジアに主たる居住地を有する自然人、または、暦年においてカンボジア国内に182日を超えて滞在する自然人
・ カンボジア国内において主たる事業所を有するあらゆる法人
上記のいずれかに当てはまっていれば、居住者であると判断できます。この場合、国内外から獲得するすべての所得について、カンボジア税法により、税額計算及び納付を行う必要があります。税率は所得に応じて決まります。
2023年1月よりさらに改定された下記税率が適用されております。
〇個人事業主、パートナーシップ等の年間所得に対する課税
2023年1月以前:
0~16,000,000リエル(約4,000USD)=0% |
16,000,001リエル~24,000,000リエル(約6,000USD)=5% |
24,000,001リエル~102,000,000リエル(約25,500USD)=10% |
102,000,001リエル~150,000,000リエル(約37,500USD)=15% |
150,000,000リエル以上=20% |
変更点:
0~18,000,000リエル(約4,500USD)=0% |
18,000,001リエル~24,000,000リエル(約6,000USD)=5% |
24,000,001リエル~102,000,000リエル(約25,500USD)=10% |
102,000,001リエル~150,000,000リエル(約37,500USD)=15% |
150,000,000リエル以上=20% |
〇カンボジア居住者の月収に対する給与税
2023年1月以前;
0~1,300,000リエル(約325USD)=0% |
1,300,001リエル~2,000,000リエル(約500USD)=5% |
2,000,001リエル~8,500,000リエル(約2,125USD)=10% |
8,500,001リエル~12,500,000リエル(約3,125USD)=15% |
12,500,000リエル以上=20% |
変更点:
0~1,500,000リエル(約375USD)=0% |
1,500,001リエル~2,000,000リエル(約500USD)=5% |
2,000,001リエル~8,500,000リエル(約2,125USD)=10% |
8,500,001リエル~12,500,000リエル(約3,125USD)=15% |
12,500,000リエル以上=20% |
それに対し、上記の居住者の要件のいずれにも当てはまらない場合、非居住者となり、一律20%の給与税率が適用されます。非居住者の給与税の対象は、カンボジア国内での所得についてのみ、上記税率により税額計算及び納付を行う必要があります。
居住性の判定 |
個人の所得に対する税額を算定するにあたって、まずその対象者の居住性を確認する必要があります。その個人が「居住者」であるか、「非居住者」であるかによって、給与税が課税される収入の範囲が異なってくるためです。
この居住性の定義は、各国が定める税法によって若干の違いがあります。カンボジアの場合、それぞれの定義は、以下の通りとなります。
【居住者の定義】 カンボジアにおける居住性の区分は、以下のいずれかの要件を満たす場合に居住者として区分されます(第3条1項a、b)。
・ カンボジアに主たる居住地を有する自然人、または、暦年においてカンボジア国内に182日を超えて滞在する自然人
・ カンボジア国内において主たる事業所を有するあらゆる法人
【非居住者の定義】上記の居住者の定義のいずれにも該当しない場合、非居住者として区分されます(3条2項)。
【カンボジアにおける居住性の判定】
上記の判定フローにより、「居住者・非居住者」が決定されますが、どちらに区分されるかに
よって、課税される所得の範囲は以下のように異なってきます。
【課税所得の範囲】
| 居住者 | 非居住者 |
カンボジアにおいて発生した所得 (国内源泉所得) | 課税 | |
カンボジア以外の国で発生した所得 (国外源泉所得) | 課税 | 非課税 |
カンボジアにおける「居住者」と判定された場合には、国内外で発生したすべての所得が課税対象となります。一方で、「非居住者」と判定された場合には、カンボジア国内で発生した所得のみが課税の対象となります。
給与税(Tax on Salary) |
給与税とは、雇用関係から生じる給与に対して課される税金です。上述の通り、個人所得に対する税金は給与税と事業所得税という2つの形態で課税されますが、事業所得や不動産所得等の給与所得以外の所得を得ている納税者はそれほど多くないこともあり、給与税が個人に対する税金の中心的存在となります。
給与税の課税対象は支給給与と付加給付(Fringe Benefit)であり、それぞれに別々の税率が適用されます。また、日本のように納税者が課税年度終了後に確定申告をする必要はなく、雇用者が給与支給時の翌月に申告・納付することで納税が完了します。
■課税対象となる給与額の算定
給与税の課税対象となる給与は、通常の雇用契約に基づき支払われる給与・賃金のほかに、雇い主が従業員に対して無償、又は安価な価格による商品・サービスの提供や、個人的な目的のために使用する車・住宅・旅行費用・教育費用などを会社が負担した場合にも、給与税の課税対象となります。
つまり、会社から個人が受けた経済的便益(ベネフィット)は全て課税の対象となるため、単純に給与額のみを課税所得としてはならないという点に注意が必要です。
また、もう一つの注意点としては、①純粋な給与額と、②その他の付加給付には、異なる税率が課される点です。したがって、別々に所得金額を集計する必要があります。
上記①、②それぞれの範囲は、以下のように規定されています(改正条8項)。
① 支給給与金額
報酬、賃金、ボーナス、残業手当、補償金が含まれます。
・給与支給額に対する税率(第47条)
給与支給額については超過累進課税の対象となります。税率は以下に示す通りです。
0~1,500,000リエル(約375USD)=0% |
1,500,001リエル~2,000,000リエル(約500USD)=5% |
2,000,001リエル~8,500,000リエル(約2,125USD)=10% |
8,500,001リエル~12,500,000リエル(約3,125USD)=15% |
12,500,000リエル以上=20% |
②付加給与(Fringe Benefit)
付加給与とは、給与所得者が本来の給与のほかに受ける経済的利益をいいます。簡単に言えば、会社が経済的な負担をして行う福利厚生のことです。例えば、以下のようなものが含まれ、一律20%の税率が課されます(第48条)。
・社用車の個人使用
・私的な飲食費や宿泊費、水道光熱費
・個人への住宅手当の支給(施設や使用人の費用も含む)
・優遇利率の貸付金や社内割引販売
・社員教育費(業務に関係がないものに限る)
・一定の保険料の会社負担分(全従業員に均等に付されるものを除く)
・社会保険料(全従業員に均等に付されるものを除く)
・その他の福利厚生費
■非居住者に対する給与(第49条)
非居住者に対する給与については、上記の①、②の区別がなく、一律20%の税率が課されます。
※非課税所得(第44条)
一方、収入であっても給与税法上、「非課税扱いとなる給与所得」が規定されており、以下に該当する収入は、課税の対象とはなりません。
・労働法に規定される上限額の範囲内で支払われた一時解雇手当
・無償、あるいは安価な価格により提供された就業中に使用するユニフォーム又は特別な専門器具
・業務に関連した一定額の海外派遣費用又は旅費
・出張旅費(証憑の提出が必要)
■所得控除
上記で算定された給与所得から、一定の所得を控除して、税額を算定することができる制度があり、これを所得控除といいます。カンボジアでは、給与所得に対する所得控除は、居住者に対する扶養控除のみが認められています。したがって、扶養者がいる場合には、上記で算定された給与所得金額から以下の扶養控除額を差し引いた金額が課税される給与所得の金額となります(第46条)。
【扶養控除】
項目 | 月額(リエル) |
子供一人当たり(14歳又は学生の場合は25歳まで) | 150,000 |
皮膚用配偶者(専業主婦/主夫に限る) | 150,000 |
ただし、両親が共働きの場合で、子供が両方の被扶養者となっている場合には、両親のうち、どちらかの給与所得からしか控除することができません。
■税額の計算
前述のとおり、給与支給額とフリンジベネフィットとでは、異なった税率が設定されているため、税額については別々に計算することになります。
【給与税計算の流れ】
■給与税の申告・納付
カンボジアにおいては、個人で確定申告書を税務署へ提出する制度はなく、給与税の月次申告として、給与支払月の翌月25日までに税務当局に対して申告・納付を行う形となります。つまり、年次での確定申告の義務はありません(41条)。
現状のカンボジアにおいては、給与税の納税については雇用者と従業員による共同責任となっていますが、納税義務が負わされているのは雇用者側とされています。
事業所得税(法人税)(Tax on Income) |
■事業所得税の概要
事業所得税とは、給与収入以外の収入に対して課税される税金です(詳細については、後述「法人所得に対する税」を参照)。
法人所得に対する税
事業所得税の概要 |
法人の得る収入については、全て事業所得税の対象となります。日本では法人の所得に対する税(法人税)と個人の所得に対する税(所得税)は明確に区分されており、それぞれが別々の法律によって規定されています。
しかし、カンボジアでは法人・個人を問わず、事業活動等から得た所得は事業所得税の課税対象となります。
以前は、実務上、申告納税方式(Real Regime)、推計課税方式(Estimated Regime)の2つに納税の方法が分かれており、法人と一定規模以上の個人事業者のみ申告納税方式をとっていました。その一方で、実務上に関しては、大多数の個人事業者が推計課税方式(Estimated Regime)をとっていました。
しかし、2016年1月1日から施行された財政法(The Law on Financial Management)により、これまでの納税制度が大きく改正され、申告納税方式に一本化されました。そのため、これまで推定課税方式を適用していた個人事業者も実質的に法人事業者と同様の税制をとることになり、会計の記帳を行い、正確な記帳に基づいて申告納税を行うこととなりました。この施行に伴い、税務当局の取り締まりも一層厳しさを増していることから、相当程度の個人事業者に新たな申告納税義務が課されることになりました。
また、新しい方式の下では、納税者は売上高や事業形態等によって3つに区分されます。
■小規模納税者(Small Taxpayer)
個人事業主またはパートナーシップであり、以下のいずれかを満たすもの
・ 年間売上高が2.5億リエル(約62,500USドル)超、7億リエル(約175,000USドル)以下
・ 業年度内に終了するいずれかの連続する3カ月間の売上高が6千万リエル(約15,000USドル)超
・ 翌月以降3カ月間の予想売上高が6千万リエル(約15,000USドル)
■中規模納税者 (Medium Taxpayer)
下記のいずれかを満たすもの
・ 法人
・ 年間売上高が7億リエル(約175,000USドル)超、20億リエル(約500,000USドル)以下
・ 地方政府、商工会、協会、非政府組織等
■大規模納税者 (Large Taxpayer)
下記のいずれかを満たすもの
・ 外国法人の支店
・ QIP認定企業
・ 農業部門の年間売上高が40億リエル(100万ドル)以上
・ サービスおよび商業部門の年間売上高が60億リエル(150万ドル)以上
・ 産業部門の年間売上高が80億リエル(200万ドル)以上
・ 外国の大使館及び領事館、国際機関、政府機関等
納税義務者と課税対象所得の範囲 |
カンボジアにおいて「法人」とはカンボジア国内で事業を行っているすべての企業・団体を指します。したがって、任意の政府機関、宗教団体、慈善団体、又は非営利団体なども含まれます(第3条)。
また、事業所得税においても給与税と同様に、まずその対象となる者が「居住者」であるか「非居住者」であるかの判定を行い、その判定により課税の範囲が異なります。
【居住者である法人】
「居住者」である法人は、カンボジアの国内法により設立・運営されている企業、又は主要な事業所(恒久的施設:PE)をカンボジア国内に有している法人を指します。課税所得の範囲は、カンボジア国内において発生した所得に加えてカンボジア国外で発生した所得についても課税所得に含まれます。
【非居住者である法人】
「非居住者」である法人は、「居住者」である法人以外の法人を指します。課税所得の範囲は、カンボジア国内で発生した所得のみが課税対象となります。
課税所得の計算 |
課税所得の計算は、会計上算出した利益額に対して個々の収益が、税務上も収益として益金の額に含める(益金算入)か、含めない(益金不算入)かの判断を行います。同様に費用についても損金の額に含める(損金算入)か、含めない(損金不算入)かの判断が非常に重要な点となります。
【益金計算】
益金の額の範囲は、事業活動から生じたすべての収益に加えて、企業を清算する際に発生する収益も含んだ、様々な活動の結果から得られる収益とされています。また事業活動と関係のない財務又は投資活動から得られたキャピタルゲイン、利息、賃貸収入なども益金の額に含まれます。
【損金計算】
損金の額の範囲は、原則として事業を運営する上で発生した原価・費用・損失の額とされますが、損金算入額に一定の制限があるものや、全額が損金算入できない費用もいくつかあるため注意する必要があります。
・ 減価償却費
事業の遂行上で使用される資産(土地を除く)に係る減価償却費は、税法に定められた償却率・償却方法に従って計算された範囲内で損金の額に算入することが認められています(第13条)。
償却可能資産は以下のようにクラス分けされ、資産分類ごとに定められた償却率で償却されます。
【減価償却資産の償却方法及び償却率】
| 資産分類 | 償却方法 | 償却率 |
クラス1 | 建物および構築物 | 定額法 | 5% |
クラス2 | コンピュータ、電子情報システム・ソフト
ウェア、およびデータ処理装置 | 定率法 | 50% |
クラス3 | 自動車、トラック、事務所器具及び装置 | 定率法 | 25% |
クラス4 | その他のすべての有形資産 | 定率法 | 20% |
期中に追加取得した資産の減価償却費は、月割りの償却計算を行わず1年間分の償却計算を行います。
クラス2のソフトウェアについては、無形資産のコンピュータ・ソフトウェアとは区別されており、電子情報システムと不可分のものとされています。例えば事務所で使用するコンピュータを購入した際に付属するオペレーティングシステム等が、クラス2のソフトウェアに該当します。
無形資産については耐用年数に応じた償却率によって償却することができます。無形資産には創立費及び開業準備費、研究開発費、特許権、著作権、商標権、及びコンピュータ・ソフトウェア、営業権などが該当します(第14条)。無形資産の耐用年数を合理的に見積もることが困難である場合は、税務上、定額法により10%の償却率を用います。
天然資源の調査及び開発費用(利息を含む)は資産に計上し、当該資源の見積り合計生産量に基づく生産高比例法により償却しなければなりません。
・ 役員報酬
役員報酬は、金額的合理性のある範囲内で損金の額に算入することができます。
・ 支払利息
支払利息は、会社が受け取る受取利息と純利益(受取利息・支払利息考慮前)の合計の50%を上限として、損金の額に算入することができます(第12条)。
・ ビジネスに関連しない個人的な支出
ビジネスに関連しない個人的な支出は基本的に損金算入することができません。また前述したフリンジベネフィット税20%がかかるため、法制度上、損金算入しないがゆえの事業所得税20%と合わせて40%の税金が課税され、二重課税のような状況になってしまうことになります。
・ 寄付金
寄付金については、特定の組織に支払われた寄付金のうち、寄付金損金算入前の課税所得の5%を上限として損金の額に算入することができます(第16条)。
・ 交際費
娯楽、レクリエーション、得意先の接待のために要した費用などは損金の額に算入することはできません。
・ その他の費用項目
その他、関係会社間での資産の売買・交換により発生した損失や、税務上のペナルティ(罰課金、加算税及び延滞利息等)については、全額損金の額に算入することはできません。
・ 繰越欠損金の控除額
所得金額の計算上、欠損が生じた場合には、発生した課税年度以後5年間の繰り越しが認められています。5年を超えて控除しきれなかった部分の金額については、残額が切り捨てられることになります(第17条)。
税額計算 |
事業所得税の税率は、通常20%が適用されます。その他、特定の産業については特別税率が設定されています(第20条)。
原油又は天然ガスの生産分与契約(Production Sharing Contract)、木材、鉱石、金そして宝石を含む天然資源の開発からの課税所得に対しては、30%の税率が適用されます(第20条)。
生命保険、損害保険又は再保険業を行う保険会社は、カンボジアで受領した総保険料収入を課税所得として5%の税率が適用されますが、非保険収益については、通常税率である20%が適用されます(第21条)。
【事業所得税の税率】
課税区分 | 税率 |
一般法人
(投資優遇措置により軽減税率が適用されている場合を除く) | 20% |
油田・ガスの生産分与契約及び木材、鉱石、金、宝石を含む天然資源の開発 | 30% |
生命保険、損害保険又は再保険業を行う保険会社 | 5% |
出所:Cambodia Pocket Tax Book
■ミニマム税(最低代替税)(Minimum Tax)
課税所得がマイナスになるなどにより、税額が発生しない場合であっても、事業所得税の代わりにミニマム税を納める必要があります。
ミニマム税とは、事業所得税とは別の税であり、VATを除く年間売上高に対して1%を乗じて算出した金額になります。
ただし、このミニマム税については事業所得税の税額をミニマム税が上回った場合にのみ適用されるため、事業所得税が年間売上高の1%を超えた場合には、事業所得税のみを納めることになります(第24条)。
また、投資優遇措置(QIP)の適用企業は、このミニマム税が免除されます。
[ミニマム税の考え方(計算例)]
売上高 10,000、費用 9,800、利益 200の一般企業A社の場合 (益金不算入項目および、損金不算入項目はないものとする。)
①事業所得税の計算方法 事業所得税の課税標準額は、収益から費用を差し引いた所得となり、これに対して20%の税率が課税されます。A社の場合、課税所得が200であるため、税額は、以下のように計算されます。
課税所得200 × 税率20% = 40
②ミニマム税の計算方法 一方、ミニマム税の課税標準額は、利益ではなく、VATを除く売上高となります。A社の場合は、10,000が課税標準となり、これに対して、ミニマム税率の1%を乗じて税額を算出します。
売上高10,000 × 税率1% = 100
③確定税額の算出 ①、②それぞれの計算から算出された、事業所得税とミニマム税のうち、金額が大きい方が、確定の税額となります。A社の場合には、②のミニマム税率が、①の事業所得税の金額を上回っているため、ミニマム税の100が確定税額となります。
①事業所得税40 < ②ミニマム税100 ∴確定税額100 |
申告・納税 |
【年次税務申告】
事業所得税の確定申告書は,課税年度の終了日から3カ月以内に提出する必要があります。また、会社が利益を計上しておらず、所得に対する事業所得税が発生していない場合であっても、上記のミニマム税を納める必要があるため、申告書の提出が必要となります(第29条)。
カンボジアの標準的な事業年度は1月1日から12月31日までとなります。電子にて年次申告を行う場合、毎年3月31日までに完了しなければなりません。また、上記事業年度でない企業の場合でも、事業年度終了後3ヶ月以内に年次税務申告を行わなければなりません。
自己申告納税者(税務総局(GDT)に登録されている納税者)のうち、支店を持つ納税者の場合は、連結TOI申告書にそれぞれの現地支店の財務諸表を添付し提出することが求められます。また、適格投資プロジェクト(Qualified Investment Project: QIP)と非QIP活動の両方を行う自己申告納税者については、それぞれ2016年10月11日付のPrakas 1127 MEF.Pに従い、年次税務申告書を提出する必要があります。
※GDTに2023年税務申告書を提出する全ての自己申告納税者は、貸借対照表、損益計算書、及び該当年度に行われた関連当事者取引の付属リストも併せて添付が必要となります。
■年次コンプライアンス証明書の申請
QIPとして認定された全ての企業は、カンボジア開発評議会(Council for the Development of Cambodia: CDC)に対してコンプライアンス証明書(Certificate of Compliance: COC)の年次申請書を提出する必要があります。また、2023年6月26日に発行されたSub-Decree 139では、QIPは、投資及び税制優遇措置の喪失を避けるため、税務申告書の提出締切日の翌日から20日以内に、半期報告書及び年次報告書をCDCに提出することが義務付けられています。投資家が半期報告書と年次報告書を受領した後は、投資家に対してCOCが発行される事になります。
※QIP企業がCOCを取得できなかった場合は、投資と税制優遇措置を失うことになりますので、ご留意ください。
【月次税務申告】
0%の投資優遇措置を受ける法人を除き、すべての法人は毎月の主たる事業活動からの売上高又は総収入額(VATを除く額)の1%に相当する金額(詳細については、後述「その他の租税:前払法人税」を参照)を、翌月の20日までに申告、納付しなければいけません。
この前払法人税額は、年度末の確定申告における事業所得税から控除されます。(第28条)。
【移転価格報告書】
カンボジアの移転価格税制では、2023年に関連者間取引(Related party transaction: RPT)を行った自己申告納税者は、2つの年次要件を遵守する必要があります;
-20223年の年次申告書に添付する移転価格申告書を作成し、税務総局(General Department of Taxation: GDT)へ提出
-2023年年次申告書に添付される2023年移転価格文書の作成
自己申告納税者が注意すべき重要な点:
- 以前の課税年度について作成された移転価格文書は、それ自体で2023年課税年度の要件を満たすものではありません。
2023年にRPTを継続または新規に行うカンボジア法人については、各課税年度ごとに独立した移転価格文書を作成する必要があります。
- 自己申告納税者は、移転価格文書に使用される移転価格ベンチマークを毎年テストし、必要に応じて更新する必要があることにも留意する必要があります。
またベンチマーク分析は、毎年行うのが好ましいですが、3 年ごとに全面的に更新することが推奨されます。
- 上記の要件に違反した場合、罰則が適用される場合があります。また、納税者の RPTを裏付ける移転価格文書が整備されていない場合、GDTは移転価格の算定が独立企業間の原則に従っていないことを容易に主張でき、それに応じて税金、罰金、利息を再測定することができるようになります。
※ペナルティ金額が発生/増加する可能性があります。
付加価値
■付加価値税の概要
付加価値税(VAT:Value Added Tax)とは、カンボジア国内における付加価値を課税対象とする税金であり、以下のような特徴を有しています。
・ 物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・ 税金の負担者は最終消費者である
・ 中間業者は税負担しないが、納税義務を負う
・ 毎月申告及び納付をする義務がある
(VATが発生した月の翌月20日までに申告及び納税)
■納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、VAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、並びに物品の輸入者であり、法人・個人を問わず納税義務が発生します(第59条)。
また、代理人や支店を通じてカンボジア国内で事業を営む外国法人にもVATの納税義務があります。
□以下は必ずVAT納税義務者となります
・ あらゆる業種の会社
・ すべての輸出業者、輸入業者
・ QIP(適格投資プロジェクト)登録事業者
□納税者の義務
・ 登録証明書の発行
・ 登録が完了した日より、消費者に対するVATの請求
・ 消費者(VAT登録事業者)に対するVATインボイスの発行
・ 消費者(VAT非登録事業者)に対する商業インボイス(Commercial Invoice)または適切な販売記録の発行
VATインボイスについては以下参照
■VATインボイス
VAT納税義務者は、適切なVATインボイス(請求書)を発行しなければなりません。毎月のVAT申告は、このVATインボイスに基づいて行われます。
□VATインボイスに必要な情報(第77条)
・ 登売主側の名前、住所、VAT番号(VAT TIN)
・ VATインボイスの発行日
・ 買主側の名前、住所、VAT TIN
・ 商品又はサービスの数量、詳細、単価
・ 特定商品又はサービス税とそれらに対するVATを除いた総価値
・ 上記における金額とは異なる場合、その総課税価格
・ 課税額(リエル表記必須、USドルとの併記可能)
・ インボイスの発行日が異なる場合、その物品又はサービスの供給日
□VATインボイスの発行日
VATの発生は、商品又はサービスの提供された日(Time of Supply)によって認識されます
Time of Supplyは、以下のうちどちらか早い日付のことを指します。
・ VATインボイスが実際に発行された日
・ VATインボイスを発行しなければならない日
VATインボイスを発行しなければならない日
・ 商品が発送された、もしくはサービスが提供された日から7日以内
または
・ 商品の発送やサービスの提供前に支払いが行われた日から7日以内
VAT認識のタイミング(例)
①会社Aが会社Bにコンピュータを販売 商品の発送日:9月15日 商品の支払い受領日:9月19日 VATインボイス発行日:9月21日
9月21日に認識 支払が商品発送の後に行われていることから、VATインボイスが発行されなければならない日付は商品発送後7日以内(15+7=22日)。実際にVATインボイスが発行されたのは21日。よってこの場合実際に発行された日にVATの発生は認識される。
②会社Aが会社Bにコンピュータを販売 商品の発送日:9月20日 商品の支払い受領日:9月16日 VATインボイス発行日:9月24日
9月23日に認識 支払が商品発送の前に行われていることから、VATインボイスが発行されなければならない日付は支払受領後7日以内(16+7=23日)。実際にインボイスが発行されたのは24日。よってこの場合、VATインボイスが発行されなければならなかったのは23日で、同日にVATも認識される。 |
■商業インボイス(Commercial Invoice)
VATインボイスがVAT登録事業者に対するものであるのに対し、商業インボイスは、VAT非登録事業者に対するものになります。
また、商業インボイス(領収書)は以下の規則に従わなければなりません。
・ VAT額が領収書上に別で記入されていなければ、その月のVATは売上額から計算される
・ VAT額が領収書上に別で記入されていない、または領収書が発行されなかった場合、納税者は課税対象売上と非課税売上の記録を保管しておかなければならない
■VATの非課税取引
VATは、カンボジア国内における販売やサービス提供などの行為に対して課税されますが、VATの性質になじまないものや、社会政策的な見地からVATの課税対象から外されたものが非課税取引とされています。以下は、その主な例となります(第57条)。
【非VAT課税取引】
・ 病院(医療)、クリニック及び歯科サービスとこれらサービスに使用する医薬品及び歯科製品の販売
・ 公共の郵便に関するサービス
・ 国営公共交通機関による旅客輸送サービス
・ 電力及び浄水に関するサービス
・ 未加工農産物の販売等
・ 固体または液体の産業物廃棄物処理またはそれに関するサービス
・ 保険に関するサービス
・ 主要な金融サービス
・ 教育に関するサービス
・ 個人使用目的としての物品の輸入※
・ 経済財務省認可済みの公共利益目的の非営利活動
※輸入時にVATが非課税となっていたものであっても、その当初の目的外にその物品等が使用された場合には、その物品の輸入時に遡って税関にVATを申告する必要があります。
主要な金融サービスについては、非VAT課税として税法には規定されていますが、これまで詳細な指針はありませんでした。2017年に、以下の業務より利益をえるサービスが、主要な金融サービスと定義され、下記以外の事業はVAT課税の対象となります。
①預金オペレーション、長期や短期の貸付(但し、貸付の手数料を除く)
②カンボジア証券市場への株式上場や、有価証券取引及びその他金融商品取引における売買や決済
③両替サービス
④保証業務、質屋取引
⑤宝飾品の状況まで加工していない金取引
また、電力に関するサービスについては、家庭や事業での消費に限られており、配線工事などの電気に関係する他のサービスは含まれません。また、浄水も同じく、家庭や事業での消費(飲料水の販売を除く)に限られており、配管工事などの水道サービスは含まれません。
未加工農産物とは、切断されているか収穫されているかに関わらず、最終製品へと加工されていない球根、花、葉、苗、根、及びその他構成要素のことを指します。
固体または液体の産業物廃棄物ですが、これは、もはや他の用途で使うことができない、またはすでに廃棄された固体または液体の材料(material)や物質(substances)が該当します。
■納付税額の計算
カンボジア企業が顧客から販売・サービス等の対価を受け取る場合、その対価の額に税率を乗じた付加価値税(売上VAT:VIAT Output)を徴収し、また購入・サービス等の対価を支払う場合、同じくその支払われる対価の額に税率を乗じた付加価値税(仕入VAT:VIAT Input)を支払うことになります。
納付すべき税額については、毎月受け取った売上VATから、支払ったVATを控除して算出します(控除方式)(66条2項)。
【図解】
【計算式】
納付税額 = 売上VAT - 仕入VAT
■税率
付加価値税の税率は、通常10%が適用されますが、以下の場合においては、0%※の税率が適用されます(第64条)。
・国外で提供された商品(輸出品)およびサービス
・人や物の国際的な移動、運送、またはその提供に関わるサービス
※税率0%と非課税の違い
・ 0%: VAT課税対象ではあるが、実税率は0%であるため、結果税額が生じない
・ 非課税: そもそもVATの課税対象とはならない
■申告・納税
VATの納税義務者は、原則として納付すべきVATがある場合には、翌月20日までに所轄税務署へ申告書を提出し、納税を行う必要があります(第70条)。
■自主的修正申告による優遇措置
税務申告の間違いにより、修正を行う必要がある場合があります。
2022年3月に経済財務省が発行したPrakas 217 MEF.P(「Prakas 217」)は、GDTへの自主申告を希望する納税者に優遇措置を提供することとしています。
Prakas 217に基づき、自主的に申告税額を修正し、意図しないミスにより生じた過少申告税額を納付することを選択した納税者は、以下の恩恵を受けることができます:
- 過少申告税額に対するペナルティ税率が10%に軽減
- 修正申告が当初の申告日から6ヶ月以内に行われた場合、月1.5%の遅延利息が50%減額
- 修正申告が当初の申告日から6ヶ月後に行われた場合、遅延利率(月1.5%)を20%減額
Prakas217によると、自主的な開示に基づく過少納税額は、税務規則に対する理解不足、過失、誤解から生じた意図しない誤りから生じたものでなければならないとされていますが、納税者が上記の優遇措置を受ける資格があるかどうかを判断する際には、税務総局の主観的な判断が入る可能性があります。
また、優遇措置の恩恵を十分に受けるためには、過少納税が発生した期間の税務調査通知を受ける前に行う必要があります。
税務調査の正式通知後に自主開示を行った場合、納税者には10%の追徴税と1.5%の延滞利息が課されることになり、場合によっては10%以上もの追徴税が罰則となることも有ります。また、税務調査により追徴税及び延滞利息が課された場合、納税者が初めて税務調査を受ける場合を除き、任意開示により納付した過少申告加算税及び延滞利息と相殺することはできません。
その他の租税
■前払法人税(Prepayment of Profit Tax)
事業所得税は、Profit TaxとMinimum Taxの2つに分類されており、毎年の所得に対する 20%の事業所得税、または売上高の1%のミニマム税のいずれか高いほうを事業所得税として扱います。
前払法人税とは、VATを除いたすべての税金を含む、主たる事業活動からの売上高の1%を毎月申告納付する制度をいいます。そのため、預金利息等は前払法人税の計算には含まれません。前払法人税は年度末に申告する事業所得税(Tax on Income)の算出額から差し引かれます。また、売上高の1%が基準となっているため、利益が出ていない赤字企業に対しても適用されます。これは事業所得税の支払いを年1度とすることで未徴収となることを防止するために設けられております。
また、前払法人税は毎月の売上高の1%を申告・納税するため、年間の売上高の1%であるミニマム税と同額となり混同されてしまいますが、厳密には異なる税制度です。
前払法人税の納付額は、年間の事業所得税額またはミニマム税額から控除されるため、事業所得税額がミニマム税額を超える場合は、前払法人税との差額を納付し、ミニマム税額が年間法人税額額を超える場合は、前払法人税額とミニマム税額が一致するため、年次申告時点での納付額は実質ゼロになります。
事業所得税の免除を受けているQIP事業者の場合は、前払法人税の免除を受けることができます。しかし、毎月の申告義務は免除されているわけではなく、ゼロ申告(Nil Monthly Tax Return)をする必要があります。
■輸出関税
2001年1月に商業省による省令が発出されたことにより、カンボジア企業及び外国企業は自由な貿易業務を行うことができるようになりました。カンボジアにおいて一定の物品等の輸出を行う際には、輸出関税を納付する必要があります。
【輸出に関する優遇措置、制限及び課税】
改正投資法では、保税倉庫で操業しないことを条件に、生産設備、建設資材、生産原材料等に対し輸入免税(マスターリスト)※の旨を定めています(「輸出適格投資プロジェクト(Export QIPs)」(第2章「投資環境」を参照)。
※免税輸入(マスターリスト)
改正投資法においては、適格投資プロジェクトの種類毎に、生産設備、建設材料、原材料等に免税輸入を認められています。
免税輸入許可を得るには、取引先である輸入会社はカンボジア投資委員会若しくはカンボジア経済特区委員会に対し、マスターリストを毎年提出し、年間輸入計画(種類、量、価格含む)を示す必要があります。
また、適格投資プロジェクト(QIP)による縫製業・製靴業は付加価値税(VAT)も同様に免除されます。
「輸出適格投資プロジェクト」と認定されることにより、さらにタックス・ホリデー(事業所得税免除)又は特別償却制度の利用が認められます。
半加工又は加工済の木材、ゴム、生又は加工皮革、魚類(冷凍魚又は切り身)、生きている動物、砂利・砂の輸出には以下の税率の輸出税が課せられます。
【輸出関税率】
項目 | 税率 |
ゴム等(HS40類、一部除く) | 10% |
木材及びその製品等(HS44類、一部除く) | 5%、10%又は15% |
鉱石等(HS26類) | 10% |
魚、甲殻類、軟体等(HS30類) | 10% |
硫黄、土石類等(HS25類、一部除く) | 10%又は20% |
出所:JETRO
【一般特恵関税制度(GSP)】
カンボジアは一般特恵関税制度(GSP:Generalized System of Preferences)の受益国であり、条件(原産地ルール)を充たすことにより受益国から輸出される多くの物品(原産物に限る)に対し、輸入関税を免除又は引き下げることができます。
後発途上国(LDC:Least Developed Countries)であるカンボジアは、一般特恵関税制度に関する品目を含め、より多くの物品で免税や税率の引き下げへの優遇措置を受けることができます。
■輸入関税
改正投資法ないしは他の特別規則により免税措置が認められていない限り、カンボジア入国地点において全ての輸入貨物に輸入関税が課せられます。カンボジアの輸入関税は、基本税率として0%、7%、15%、35%の4つに区分されています。
また、すべての輸入品に対して、輸入関税とは別に10%の付加価値税(VAT)が課税されます。
課税対象となる主な品目と適用税率は次の通りです。
【輸入関税率】
項目 | 税率 |
医療、教材等の免税項目 | 0% |
原材料及び第一次産品(未加工の状態で付加価値の小さい生産品) | 7% |
資本財、機器材、国内調達可能な原材料 | 15% |
完成品、アルコール、石油製品、自動車、貴金属・宝石 | 35% |
出所:JETRO
【アセアン自由貿易協定(AFTA)による特恵関税率】
アセアン自由貿易協定(AFTA:ASEAN Free Trade Agreement)による共通効果特恵関税(CEPT:Common Effective Preferential Tariff)制度においては、原産地規則を充たす場合、ASEAN諸国からの輸入物資に対して低率関税が適用されます。
■特定商品・サービス税(Specific Tax on Certain Merchandise and Services)
特定の輸入及び国内で提供される特定の商品とサービスに関しては、特定商品・サービス税が課税されます(第85条)。
[課税標準]
国内で生産された商品については、「工場渡し売価」に対して課税されます。ここでの「工場渡し売価」とは、VAT課税前かつ値引き等を適用する前の売価の65%として計算されます。輸入製品については、当該税金は関税またはCIFに含まれます。ホテルや通信サービスについては、請求書に記載された価格に対して課税されます。また航空券については、カンボジアで発行された航空券の売価に対して課税され、カンボジア国内のみならず国外の旅行も含まれます。
[税率]
品目ごとに、以下の税率を用いて税額を計算します。
【特定商品・サービス税率】
項目 | 税率 |
国内・国際通信サービス | 3% |
国内・国際航空券の販売 | 10% |
娯楽サービス | 10% |
水及び果物・野菜ジュースを除く清涼飲料の販売 | 10% |
潤滑油、ブレーキオイル、エンジンオイルの原料の輸入販売 | 10% |
エアコン、化粧品及びカメラ機器 | 10% |
タバコ、葉巻の国内製造及び輸入販売 | 20% |
ビールの国内製造及び輸入販売 | 30% |
ビールを除くワインなどのアルコール飲料の販売 | 35% |
石油、ディーゼル及びガソリン | 4、10、25、33% |
自動車及びパーツ | 15、25、45% |
出所:Cambodia Tax Booklet Update 2017
[申告・納付]
国内の売上については、毎月、翌月の20日までに特定商品・サービス税率の申告及び支払いを行う必要があります。輸入品については、輸入時に税関に支払います。また、特定商品・サービス税はCIFを含む輸入品の価格に、VATを除いた輸入関税額を加算して計算されます。
[特定商品・サービス税の考え方(計算例)]
ビールの輸入を考えてみます。 ビールのCIF価格100USドル 輸入関税率35% 特定商品・サービス税率30% と仮定します。
①特定商品・サービス税の計算方法 (CIF価格 + 輸入関税(35%)) × 特定商品・サービス税率(30%) (100 + 35) × 30% = 10.5
②VATの計算方法 (CIF価格 + 輸入関税(35%)+ 特定商品・サービス税) × VAT率(10%) (100 + 35 + 10.5) × 10% = 14.55 |
■公共照明税
公共照明税とは、輸入又は国産のアルコール飲料及びタバコ商品を課税対象とし、これらの販売に対して課される間接税です。
税率は3%であり、各月の販売価格を基準に計算されます。そして、税額については、各月、翌月の20日に納めます。この税金による税収は都市及び地方の公共照明の改善に使用されます。
■宿泊施設税
宿泊施設税は、その課税対象をホテル宿泊のサービスとして課される税金です。宿泊施設税は各月のホテル宿泊サービス料金(その他のサービス売上が含まれますが、宿泊施設税とVATは除かれます)に課される税金です。
税率は各月のサービス料の2%を翌月の20日に納めます。
□宿泊施設税は、家やアパートの賃貸を除いた以下の施設に課せられます。
・ ホテル
・ アパート式ホテル
・ スイートホテル
・ リゾートホテル
・ モーテル
・ ロッジ
・ バンガロー
・ ゲストハウス
・ キャンプ場
・ その他の宿泊施設
■遊休土地税
遊休土地税は、都市あるいはその他の定められた地域において、使用しないままで遊休状態となっている土地に対して課される税金であり、納税義務は登記上の土地所有者にあります。
なお、課税対象は1,200平方メートル超の部分のみに課税されます。
遊休土地税は、当該年の6月30日までに未開発土地評価委員会(Committee for Evaluation of Undeveloped Land)により算定された土地評価額の2%を、毎年9月30日までに納付しなければなりません。
■パテント税
カンボジアにおいて税務登録をしているすべての企業は、税務登録を行った後、毎年3月31日までに40万リエルから5百万リエルのパテント税(納税者区分に連動)を納めなければなりません。納税額を収めると税務当局によってパテント税証明書が発行されます。
納税者がいくつか異なる種類の事業を営んでいる場合は、各事業内容に対して別々のパテント税証明書が必要となります。さらに、納税者がいくつかの異なる市や州で営業している場合には、場所ごとに別個のパテント税証明書が必要となります。
パテント税率は毎年異なりますが、2024年のパテント税は以下の通りと発表されております;
自己申告納税者形態 | 2024年パテント税額 |
小規模納税者 | KHR 400,000 (約$100) |
中規模納税者 | KHR 1,200,000 (約$300) |
大規模納税者 | KHR 3,000,000 (約$750) or KHR 5,000,000* (約$1,250) |
*大規模納税者の年間売上高がKHR 10,000百万(約$250万)を超える場合、パテント税額は約$1,250となり、年間売上高がKHR 10,000百万(約$250万)未満の場合は、約$750米ドルとなります。
■印紙税
公共機関への商品やサービス提供を行う契約締結又は会社の設立・合併・解散の手続を行った場合は印紙税として10万リエルが課され、管轄する税務署へ納める必要があります。
また、新設立会社、支店ならびに駐在員事務所は各々の拠点のある州・特別市税務署へ商業省に登記してから15日以内に印紙税を納めることになります。
■資産譲渡税
資産譲渡税の課税対象は、自動車及び不動産などを個人及び法人に譲渡した場合における譲渡額であり、以下の税率で課税されます。
【資産譲渡税】
項目 | 税率 |
建物やその他の建設物、土地を含むすべての不動産の所有権の譲渡 | 4% |
乗用車を含む交通手段の所有権の譲渡 | 4% |
カンボジア企業の株式所有権の譲渡 | 0.1% |
「商品なサービスの提供に関する政府契約」の登録 | 0.1% |
出所:Cambodia Tax Booklet Update 2017
■土地・家屋賃貸税
土地・家屋賃貸税の課税対象は、土地及び家屋などを個人及び法人に賃貸した場合における賃貸料であり、当該賃借料に対して10%の税金が課税されます。
■固定資産税
固定資産税とは、不動産に対して課せられる直接税のことで、1億リエル(約25,000USドル)以上の価値がある不動産はすべて課税対象となります。該当する不動産価格に対して0.1%の税金が課税され、毎年9月30日までに納めなければなりません。
中には例外もあり、以下の不動産は課税対象となりません。
・ 農業用の土地
・ 大使館、外交施設
・ 政府所有の不動産
・ NPO所有の不動産
・ インフラ
・ 洪水、地震といった自然災害のような不可抗力なダメージを受けた不動産
・ 未使用かつ80%以下の完成度である建設中の建物
・ 生産を目的とした経済特区内の不動産
源泉徴収制度
源泉徴収税については、サービス料、ロイヤリティ、利息及び賃借料に関わるVAT事業者以外との取引が対象になり、これらの取引の対価を支払う際に、支払者が税額を計算、税額分を支払額から控除し、当該控除額を国に納付するという制度のことをいいます。
カンボジアで課税される源泉徴収税には、居住者への支払いに係る源泉徴収税と非居住者への支払いに係る源泉徴収税があります。各月に源泉徴収された税金は、翌月20日までに納税することとされています(第31条)。
源泉徴収税はサービス等の提供者が負担をおいますが、徴収・申告納付義務は対価の支払者が負います。源泉税の徴収を怠った場合、支払者は源泉税に加算税及び遅延利息などのペナルティが課されるため、注意する必要があります。
また、VAT事業者以外からサービスの提供を受け、支払いの段階で源泉徴収税の徴収を拒否されることも少なくありません。しかし、徴収・申告納付義務は支払者側にあるため、支払いを拒否されているからといって申告をしなければ、支払者側に罰則が課せられるため、支払額に税額を上乗せして、全額支払者負担になっているケースが散見されます。VAT事業者以外との取引を行う際は、事前に源泉徴収税の負担等を確認することが重要です。
■居住者への支払いに係る源泉徴収税
カンボジアにおいて事業を行う納税者が、他のカンボジア居住者に対して以下に該当する取引を行った場合、それぞれの区分に応じた税率を乗じた源泉税を徴収する必要があります(第25条)。
【源泉徴収税:居住者に対する支払用】
項目 | 税率 |
サービス料(税務登録されているものを除く) | 15% |
ロイヤリティ | 15% |
支払利息 | 15% |
動産・不動産の賃貸収入(不動産業からのサブリースを除く) | 10% |
定期預金に対するカンボジア国内銀行の支払利息 | 6% |
非定期預金に対するカンボジア国内銀行の支払利息 | 4% |
出所:Cambodia Tax Booklet Update 2017
配当に関する扱い方について、2017年に経済財務省より細かい指針が発表されました。会社が配当を行った場合も源泉徴収税の規定が定められており、国内の株主(居住性のある株主)に配当を支払った場合は、基本税率は0%となりますが、カンボジア国外に居住性のある株主に対し配当を支払った場合は、配当金額に対して税率14%を源泉徴収し、政府に税金を納める必要があります。
国外に配当金を支払った場合に、利益剰余金の資本組入等、配当と類似した制度があります。通常、配当金は利益剰余金から株主に支払われますが、利益剰余金の資本組入は利益剰余金から配当金としてまず株主が支払いを受け、またそれをもとに会社に資本注入を行ったと解釈することができ、その取引の構成要素の一部に配当金の支払があったともとれるため、そこに源泉徴収税がかかるかどうかという点が論点として挙げられています。
経済財政省の指針によると、利益剰余金の資本組入は単なる資本構成の変化に過ぎず、会社からの資本流出がないため源泉徴収税の対象とはなりません。
しかし、その後資本金の払い戻しや会社清算があった場合、もともとは利益剰余金であったものについては、名目上「資本金の払い戻し」であっても、実質上「配当金の支払」と同質の性格を持つと解釈できるため、資本金の払い戻しは源泉徴収税の対象となります。
株式配当については、配当を株式にて支払うことになるので、株主は持株数が増えることになり、会社は結果的に資本金を増やすことになり、利益剰余金の資本組入と同様の効果をもたらすことになります。この規定は日本では平成3年に消滅していますが、株式配当が行われた場合でも、この取引の本質は配当であるため、配当がなされた時に源泉徴収税の対象となります。
■非居住者への支払いに係る源泉徴収税
カンボジアにおいて事業を行う者が、カンボジアの非居住者に対して以下に該当する支払を行った際には、一律14%の源泉徴収税が控除されます(第26条)。
【源泉徴収税:居住者に対する支払用】
項目 | 税率 |
経営・技術サービス対価、ロイヤリティ、利息、配当、資産の使用に伴う賃料等、カンボジア事業者による全ての支払い | 14% |
出所:Cambodia Tax Booklet Update 2017
■源泉徴収制度の例外
税法によると、源泉徴収制度には以下のような特別な例外が設けられています。
・ 国内の銀行または貯蓄機関に支払われる利息は源泉徴収対象とはなりません。しかし、海外の銀行又は貯蓄機関に対する利息であれば源泉徴収対象となります。
・ 政府やその他行政機関に対する支払いは、以下の条件を満たす場合、源泉徴収対象とはなりません。
- 支払いが、国有財産として登録されている動産または不動産に対する支払いである場合
- 支払いが財務省によって国家歳入として証明されている場合
カンボジア進出に関わる税務規定
進出形態別の税務規定 |
進出の形態ごとに関連する税務規定について説明します。
■駐在員事務所
駐在員事務所を設立した際の税務留意点は下記の通りとなります。
[カンボジア側の税務留意点]
駐在員事務所は収益が発生する活動を行うことができませんので、税務申告を行うリスクは少なくなります。
しかし、PE(恒久施設)認定を受けてしまった場合、PE認定課税が課されるリスクが存在します。PE認定課税とは、PEが法的に存在しないにもかかわらず拠点が存在するものとして課税されることです。駐在員事務所の場合は、営業活動を行っていると認定された場合などに課税されます。PE認定された場合、税務申告の際に現地所得を切り出して申告を行う必要があります。実質二重課税となるため外国税額控除などの措置を受けることが出来ますが、日本側でPEとして認定されない場合は外国税額控除の適用が行えません。
また、駐在員の給与に係る、給与税やその他の源泉税の納付に関しても注意が必要となります。
[日本側の税務留意点]
駐在員事務所で発生した経費については日本側と合算する必要があります。また、駐在員に対する給与課税に関して、現地側の所得か日本側の所得かで課税額等が異なため注意が必要です。
■支店
支店を設立した際の税務留意点は下記の通りとなります。
[カンボジア側の税務留意点]
支店の場合、駐在員事務所と異なり課税上では「外国法人」として扱われ、課税に関しては原則的に現地法人と同様の課税義務が課されます。駐在員の給与に係る給与税やその他源泉税の納付、移転価格に関する問題などに留意が必要です。
[日本側の税務留意点]
日本側での税務留意点として、支店は独立した法人格を有さないため支店の損益が本社側で合算申告されることがあげられます。
また、二重課税となるため「外国税額控除」により税額の調整を行う必要があります。外国税額控除とは、現地で発生した所得に対して現地側で源泉税の納付を行い、日本側で法人税額を納付する際に現地側で納付した源泉税額を控除するものです。
駐在員に対する給与課税問題も留意が必要な点となります。
■現地法人
現地法人を設立した際の税務留意点は下記の通りとなります。
[カンボジア側の税務留意点]
現地法人は課税上では「内国法人」として扱われ、源泉課税されることなく配当の送金が可能です。駐在員の給与に関する給与税やその他の源泉税の納付、移転価格に関する問題などに留意が必要です。
[日本側の税務留意点]
子会社からの配当について、課税対象となる配当額の5%部分を除き原則として益金不算入となる点に留意が必要です。カンボジア側と同様に、駐在員の給与や移転価格の問題に関しても留意が必要です。
■タックスヘイブン税制
日本の法人などが、税負担の著しく低い、軽課税国(タックスヘイブン)の子会社等を通じて国際取引を行うことによって、直接国際取引した場合より税負担を不等に軽減・回避し、日本での課税を免れる事態が生じ得ます。
このような租税回避行為に対処するために、一定の税負担の水準(20%)以下の外国子会社等の所得に相当する金額については、日本での所得とみなし、それを合算して課税されます。
外国子会社等が、以下のすべての要件(適用除外基準)を満たす場合には、対象とはなりません。
・ 事業基準:主な事業が株式や債券等の保有、工場所有権または著作権の提供、船舶または航空機の貸し付けなどの事業ではないこと
・ 実態基準:(対象子会社の)本店所在地国に、主な事業を行うために事務所、店舗、工場などの固定施設を有していること
・ 管理支配基準:特定外国子会社等が、その本店所在地国で事業の管理、支配、運営を自ら行っていること
・ 非関連者基準または所在地国基準
(ア)非関連者基準:(卸売業、銀行業、信託業、証券業、保険業、水運業または航空運送行の場合)取引の50%以上を非関連者と行っていること
(イ)所在国基準(上記7業種以外の場合):主に本店所在地国で事業を行っていること
カンボジアにおける税務調査
税務調査 |
■税務当局による企業の評価方法
カンボジアでは、税務当局が企業の法令遵守度に格付けを行い、高評価企業に利益をもたらす制度が導入されています。税法を遵守し、税金を適正に納めている企業は、より良い待遇を受けることが期待されています。
新しい採点基準と分類システムの概要は、12の基準により点数をつけ、各規準につき1〜2ポイント、最高評価の納税者には最大20ポイントが付与されます。この基準には、企業が税務申告と税務アップデートを完了したかどうか、納税申告書を提出して期限内に支払ったかどうか、および必要な経理記録と法的文書がすべて保管されているかどうかが含まれます。集計された点数により、ブロンズ(1〜10ポイント)、シルバー(11〜15ポイント)、ゴールド(16ポイント以上)の3つのカテゴリーに分類され、それぞれの分類に応じて税務上のメリットが与えられます。
また、法令遵守証明書は、ゴールドのカテゴリーの納税者に授与され、シルバーとブロンズも要求することにより取得ができます。証明書は2年間有効で、税務当局は違反の疑いがある企業の証明書を再評価することができます。
税務当局は、納税者が税法の定める規則に従って税務申告を行い、会計帳簿、記録及び証憑類を保存しているか調査を行うことができます。納税者が税法の定める規則に従っていない場合は、納税者から提出された記録及び証憑類だけではなく、税務当局が入手した情報や証憑類なども含めた情報等に基づき税額の更正決定を行います(第116条)。
税務当局は更正決定を行った納税者に対して、申告後3年以内に再び調査をして更正決定を行うことができます。ただし納税者が税法の定める規則に故意に違反している事実が認められる場合は、この期間は10年以内に変更されます(第117条)。
なお、納税者が税法の定める規則に故意に違反している明白な根拠がある場合は、税務当局はいつでも税額の更正決定を行うことができるとも定められています。
税務当局は、現在3種類の税務調査を実施しています。
■書面調査(Desk Audit)
書面調査は、納税者からの申告書の内容の査閲等をするもので、窓口での申請書提出時や電話にて質問や確認がなされる事があります。書面等による通知もなく、また税務監査人が企業のオフィスや工場を訪れ質問や帳簿類の査閲をする実地調査を伴わないため、企業側がこの調査が行われているのかどうか認識していないのが通常です。
■限定調査(Limited Audit)
限定調査(Limited Audit)は、年度や税目を限定して行なわれる調査で、通常、実地調査を伴います。また、VATや給与税、源泉徴収税等、月次申告での申告内容が主な対象となっています。
以上の書面調査と限定調査は、納税者の住所地を管轄する税務署(Tax Branch)や、QIP取得企業や売上高が一定規模以上の企業を対象とする税務総局の大規模納税者課(Department of Large Taxpayer)によって行われます。
■包括調査(Comprehensive Audit)
包括調査(Comprehensive Audit)は、複数年度かつすべての税目を対象とした実地調査を伴う調査で、税務総局の企業監査課(Department of Enterprise Audit)が担当しています。全ての税目が対象であり、VATや給与税、源泉徴収税等に加え、事業所得税や、月次申告内容と年次申告内容の差異等が主な対象となっています。
税務調査にあたっては事前通知が原則ですが、脱税の疑いがあり証拠隠滅等の恐れがある場合には、事前通知無しで実地調査を行う事が出来るという規定もあります。税務調査に非協力的又は妨害行為を行った場合などは、税法上の税法執行の妨害とみなされ、罰則の対象となっています。
■罰則規定
税法の定める規則に違反した場合は、加算税が課されます。加算税は違反の性質により利率が異なります。
以下に該当する場合には、納税者や源泉徴収代理人には過失が認められ、罰則を受けます。
【加算税の税率(過少納付)】
適用条件 | 追徴課税 | |
納税額と再評価税額の差が10%未満の場合 | 未納税額の10% | 未納税額に対する各月2%の遅延利息 |
納税額と再評価税額の差が10%以上、あるいは納税者が納税期限までに加算税額を納税しなかった場合 | 未納税額の25% | |
税務当局から更正決定を受けた場合 | 未納税額の40% | |
また、申告書の提出や税金の納付が遅れた場合は延滞利息が課されます。(第131条)
【加算税の税率(遅延納付)】
適用条件 | 追徴課税 | |
期日までに納税しなかった場合 | 滞納税額の10% | 滞納税額に対する各月2%の遅延利息※ |
税務当局から納税の催促状を受け取ってから15日以内に納税しなかった場合 | 滞納税額の25% | |
みなし税査定を受けた場合 | 滞納税額の40% | |
※税務再査定(Tax Reassessment)期間又は再査定結果の通知書が配布された後30日以内は、遅延利息は適用されません
納税者が申告を行わない場合や、適切な書類や情報を所有していない場合には税務当局が一方的にその情報を推測し、みなしでの税の再査定を実施する権限があります。
また税法に対する違反行為(会計書類を適切に保管していない、適切なインボイスを発行していない、申告書を提出していないなど)に対しては2,000,000リエル(約500USドル)の罰金が課されます。
なお、違反に対して企業の取締役や株主などが故意に関わっていた場合は、加算税だけではなく刑事罰の対象となることもあるので注意が必要です。
Latest News & Updates
【年次報告書提出のオンライン化について】
商業省より発表された大臣令(Prakas № 107 dated 5 April 2017)では、現地法人、外国法人駐在員事務所、外国法人支店の年次報告書の提出方法に関して規制をしています。以下内容をお伝えします。
年次報告書の商業省への提出は、カンボジア税法上、強制されており、株主構成の変化、取締役の変更、住所変更などの種々の変更は常に商業省に報告され、データベース上更新されている必要があります。2016年初めのオンライン登録システムの登場の前までは、1年に1回、紙面により商業省に提出しなければなりませんでした。
この大臣令では、2016年度年次報告書の提出期限は商業省によって決定され、商業省のオンラインシステムに登録した時から11か月目の月に各々の事業体に伝えられるということを示しています。大雑把には、年次報告書はオンラインシステムを通して、システム登録から1年経過後3か月以内に提出されなければならないという時期の明示はされています。この期限を守れなかった場合、およそ250USDの罰金が課されることになります。
【社会環境基金の創設について】
政府は社会環境基金の創設に関する閣僚会議令(Sub-Decree No.238 dated 21 November 2016)を出しました。この閣僚会議令は環境保護や維持、生態系の保護のために社会環境基金を管理、使用、組織することに関係したすべての活動に適用されます。社会環境基金は以下の手段から集められることになります。
・環境保護協定および環境影響評価の計画に基づいたプロジェクトからの収益
・環境保護、環境に優しいサービス、生態系保護より生じた収益
・慈善組織、開発機構、私的機関から受けた寄付
・その他環境分野からの生じる収益
社会環境基金の口座はカンボジア国立銀行か、経済産業省が承認した他の銀行に開設をしなければなりません。
【零細経営体の税務登録の要否に関する通達について】
2017年3月25日、政府は通達(Notification 5186 on the 25th of March 2017)を出しました。その内容とは、1年間の収益が2億5000万リエルに満たず、定義上、「小規模経営体(Small Taxpayer)」未満の経営体は税務登録を行う必要がないということを再度確認するものです。
そもそも、こういった確認を政府が行っているのは、税務局の役人やその他個人の中に、税務調査を行うという口実のもと、本来、税金を納める必要がない小規模経営体(Small Taxpayer)未満の経営体に対して、金銭を取り立てている人たちがたくさんいるという事実を把握しているためです。このような取り立ては違法であるので、毅然と拒否するべきであるといえます。なお、法人形態である場合は収益の多寡にかかわらず「中規模経営体」に該当するので税務登録を行う必要は出てきます。
【2017年月に発表された未登録中小企業に対する税務優遇措置に関する追加の通達】
政府は2017年2月に税務上未登録の中小企業に対して、適正な税務登録を促すために、この措置が発表された2017年2月7日から2018年12月31日の2年間弱のうちに適正に税務登録を行った場合、起点を、その中小企業が最初に収益を獲得した年か税務登録を行うべきだった年、いずれか早い年からとして、2年間、利潤税と前払利潤税が免税となるという措置(Notification no. 5251 on 27 Mar 2017)を発表しました。しかしながら実務上この規定に関して間違った解釈が多くみられています。すなわち、すべての中小企業がこの税務優遇措置を受けることができるという誤解です。しかし、この優遇措置を受けられるのは、この措置が発表された2017年2月7日から2018年12月31日の2年間弱の間に初めて税務登録を行う中小企業だけです。
また、この規定で免税になるのは利潤税、前払利潤税のみであります。加えて、中小企業は免税になるかどうかにかかわらず、月次、年次において申告自体は行う必要があるという点も再確認されました。
この規定に関して、未登録のまま登録を失念していた中小企業のみ、税務優遇措置を受けることができ、正しく処理を行っていた他の中小企業が税務優遇措置を受けることができないという点について、不公平な規定といわざるを得ませんが、カンボジアでは適正な状況を促す方法として良く活用される方法であります。その文化、方法論を理解しておくことが大切になるかと思います。
【2016年年次申告期限の延長、未申告税金に関する優遇措置の延長について】
政府は、2016年の年次申告の期限を当初の2017年3月31日から4月30日に延長しました(Notification 5517)。これは、弊社見解といたしましては、今年初めに、未申告税金に関する優遇措置が発表されており、それに関する実務上の作業の必要性が増大し、年次申告が間に合わないという状況が散見されたためと思われます。カンボジアでは、このように、その時の状況にしたがって、申告期限が変動することが良くあります。また、先に述べた未申告税金に関する優遇措置もその期限を当初の2017年4月1日から4月30日に延長することになりました。これは過去3年間の間に申告しなかった税金をこの期間に申告すれば、罰金や遅滞税を免税するという規定になります。
【新型コロナウイルスの影響におけるカンボジア税務】
2020年の新型コロナウイルスパンデミックに関連して、カンボジアの税務にも影響が生じております。
具体的に政府より下された税務施策について記載致します。
縫製業の免税
COVID-19および(または)EBAの一時停止により引き起こされたサプライチェーンの問題による原材料の不足により影響を受けている企業に対して、6カ月から1年間の免税を受けることが可能です。
しかし、具体的に免税を受ける期間の許可などは明確になっておらず、経済財務省(MEF)へ問い合わせる事によって免税の詳細内容が決定いたします。
ツーリズム業の免税
2月25日に施行されたNotification no. 002 MEF時点では、シェムリアップのホテル・ゲストハウスの月次税務申告が一定期間免除となりました。
期間は2020年2月~5月の4か月間となります。
全ての月次申告課税が免除となっております。
また3月31日時点では、シェムリアップ以外の国内各地に拡大し、また、ホテルとゲストハウス以外に、レストラン、旅行代理店が含まれるよう税控除が拡大いたしました。
支払い義務のある源泉徴収税は控除しますが、納税は免除となります。
また、給与税に関しても、従業員へ支給する給料は、給与税控除後の金額となりますが、これも給与税も免除となります。
しかし免除となりますが、月次税務申告にて金額を正確に計算した上で記載し申告する必要があります。申告は免除となりません事をご留意ください。
参考文献
・Tax in CAMBODIA : DFDL Mekong Legal & Tax Advisers
・Cambodia Legal, Tax And Investment Guide 2011-2012 DFDL Mekong Legal & Tax Advisers
・ Cambodia Pocket Tax Book 2012 : PricewaterhouseCoopers
・メコン流域諸国の税務 あずさ監査法人 KPMG 中央経済社
・カンボジア投資ガイドブック カンボジア開発評議会
・カンボジアの投資環境 日本政策金融公庫