労務
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
カンボジアの労働環境
■労働力人口
本章の第1 項「基礎知識」(1 6 頁参照)でも述べたとおり、カンボジアの人口は約1,693 万人です(CIAの「The World Factbook」より)。その中で、労働人口(1 5 歳~ 64 歳)は65.23 % で1,104 万人となっており、内訳は男性が約537 万人、女性が約567 万人です。年齢別では0 ~ 14 歳までの人口が30.18 %、65 歳以上の人口が4.59 % となっており、若い労働力が見込まれます。2030 年の将来推計人口は約1,839 万人と増加が予測されています。
地域別に見ると、最大都市プノンペンの人口が約208 万人(2020 年)で、全人口の12 % を占めています。地方に住む人は仕事を求めてプノンペンなどの都市部に移動し、また一部にはタイ、マレーシ ア、韓国などに出稼ぎに行く人も見られます。
■産業別就業人口15 歳以上の就業者数の産業別構成比を見ると、2019 年時点で、第1 次産業(農林漁業)が34.5 %、第2 次産業(製造業、建設業など)が27.9 %、第3 次産業(サービス業など)が37.5 % となっています。6 年前(2013 年)と比較すると、第1 次産業が15.0 % 減、第2 次産業が8.7 % 増、第3 次産業が6.3 % 増となっており、第2 次、第3 次産業へ推移していることが見て取れます。こうした数字の推移は、製造業および観光業を中心としたサービス 業の興隆が主な原因と考えられます。
■失業率
15歳以上の失業率は2008年の1.6%と比較し、2013年では2.4%となりと増加傾向にありましたが、他のアジア諸国と比較すると低水準にあります。この理由として、就業人口の多くが農業に従事しているため失業状態になりにくいことが挙げられます。また、2017年には失業率は0.3%にまで減少しています。
■産業職業別賃金
IMFの統計によると2017年度の一人当たり国内総生産(GDP)は約1,308 米ドルと依然として低い水準ではありますが、2015年の1,144 米ドル、2016年の1,229 米ドルと比較すると6%以上の増加率です。今後も増加が続くと見込まれており、2020年には1,600 米ドルを超えると予測されています。
特にプノンペン市内においては1カ月あたりの世帯収入は400米ドルを超える家庭が78%存在するなど、中間層が拡大しています。またプノンペン市の1人当りGDPは約2,000米ドルといわれています。
しかし、実際の給与水準は、業種や役職によって異なっており、業種別賃金は以下のようになっています。
【業種別月額賃金】
| 職業 | 月額賃金(米ドル) |
製造業 | ワーカー(一般工職) | 170 |
エンジニア(中堅技術者) | 351 | |
中間管理職(課長クラス) | 885 | |
非製造業 | スタッフ(一般職) | 387 |
マネージャー(課長クラス) | 1,005 | |
店舗スタッフ(アパレル) | 120 ~ 180 | |
店舗スタッフ(飲食) | 120 ~ 220 |
出所:JETRO『投資コスト比較調査』(2017年12月)
労働組合と労働争議
労働組合 |
■労働組合の構造
労働組合は、現地労働組合、労働組合連合、労働組合総連合の3層で形成されています。企業または組織内の労働組合は、同時に、労働組合1つのみに加盟する権利を有しています。
[現地労働組合]
現地の企業や組織内における従業員によって共同かつ任意に組成された職業団体のことをいいます。企業や組織内の従業員10人以上により設立されます。
[労働組合連合]
同様または類似の職業または経済活動を行う現地労働組合によって共同かつ任意に組成された職業団体のことをいいます。登録された現地労働組合7組合以上により設立されます。
[労働組合総連合]
労働組合連合によって共同かつ任意に組成された従業員の職業団体をいいます。登録された労働組合連合の5連合以上により設立されます。
■労働組合の登録
カンボジアの従業員と雇用主は、差別なく道徳的関心や物質的関心、学習、権利の保護を目的として、「労働組合」を結成することが認められています。労働組合は、法律で規定された権利と便益を享受するために労働職業訓練省(以下、労働省とします。) に組合の法規と運営管理者のリストを提出しなければなりません。リストの提出後2カ月以内に労働省から連絡がない場合は、労働組合は登録されたものとみなされます。
労働組合の登録をするには、8名以上の従業員が参加し、代表委員を3名以上選任して、申請しなければいけません。
カンボジアの労働組合についての概要は、以下のとおりです。
・ 労働組合と雇用主組織は、法律、公的秩序に違反しない範囲で、法規と管理規則を作成し、代表者を自由に選ぶことができる。
・ 労働組合の運営管理責任者は、25 歳以上で、クメール語の読み書きができ、有罪判決を受けたことがなく、1年以上の職務経験を持つ者である必要がある。
・ 労働組合のすべての構成員は、必要条件を満たす場合、組合の管理・運営に参加することができる。また、規定を満たせば、外国人が労働組合を管理することも可能となっている。
・ 労働組合への参加と脱退は自由にできる。
・ 労働組合は、規定を満たせば法人格を得ることができる。法人として、労働組合はそれ固有の名称で裁判所に訴え、資産および不動産を獲得し、契約を締結する権利を持っている。
・ すべての労働組合は、学習、研究、昇進、道徳的関心や物的関心の保護に関して自由に討論することができる。
・ 労働組合は、解散する場合、組合の法規に基づき資産を分配することができる。
労働組合が解散する際に、労働組合法規に資産の配分に関する規定がない場合、組合は、国会で決定された規定に従い、資産を配分する必要がある。そうした規定がない場合、組合の資産は、同様な法的に根拠を持った組合、もしくは慈善団体に寄付することができるのみとなっている。
一方、雇用主は「雇用主組織」を結成することができます。この法では、雇用主と従業員の双方を含む労働組合・組織の設立は禁止されており、双方の関係性を明確に分けるよう明文化されています。
■労働組合数
労働省実績報告によれば、2004年から2006年までの期間に4つの組合連合を含む534の労働組合、12の労働組合連合会および518の地方組合が省庁に登録されました。
2017年時点における主な労働組合はカンボジア労働組合連盟、カンボジア労働組合連合、カンボジア労働総連合、ITUCカンボジア協議会の4つで、31連合、509組合が参加しています。
■雇用主団体
労働組合法では、すべての雇用主は差別されることなしに雇用主団体の組成、加盟・非加盟および雇用主団体の指導や管理業への参加・脱退を自由にすることができます。
雇用主団体は、企業や組織レベルの雇用主団体と雇用主連合の2層で形成されています。1つは、雇用主団体です。これは、9以上の企業や組織により設立されます。もう1つは、労働組合連合です。これは、雇用主団体によって共同かつ任意に組織された職業団体をいい、登録された6以上の雇用主団体により設立されます。
雇用主団体の登録
雇用主団体が組合法上の権利や利益を享受するためには、その団体組成者は、労働省において登録を行う必要があります。労働省において登録された雇用主団体のみが、法人格および適法性を有しており、労働裁判所に対して訴えを提起する権利、有償または無償で動産および不動産を取得し、契約を締結する権利があります。
これに対して、登録されていない、または登録の延期や取り消された雇用主団体は、法人格および適法性を有さず、雇用主団体活動を行う場合、その活動は違法な活動だとみなされます。
登録申請に関しては、以下の書類を提出します。
・ 登録申請書 1通
・ 組成の目的を含めた雇用主の定款の原本 3通
・ 管理規則の原本 3通
・ 雇用主団体の指導運営者および管理責任者の名簿 3通
・ 雇用主団体の指導管理者および管理責任者の書類 ※
・ 会計帳簿および会計記録が保管される住所
・ 登録後45日以内に銀行口座情報を提供することを保証する宣誓供述書
・ 雇用主団体の組成に関する決議の議事録
※クメール語の読み書きができる最低限度の教育レベルおよび軽罪または重罪の刑事事件で処されたことがないことについての申告書を含んでいます。
上記の登録申請書類を提出できる者は、指導畝医者および管理責任者のみです。労働省登録担当局は登録申請受理後30日以内に雇用主団体に対して登録されたものとみなされ、登録担当役職人は、その該当する雇用主団体に対して登録証明書および登録確認書を発行しなければいけません。
また承認された登録を有効に維持するため、雇用主団体は会計帳簿または保管された記録に基づき会計報告と年次活動報告書を作成しなければなりません。さらに、翌年3月末までに労働省の登録担当局に提出しなければなりません。
組合法が執行される前のすでに登録された雇用主団体は、登録されたものとみなされ、任期が満了するまで自動的に組合法を取得するものとされます。また、現状維持をするために、該当する雇用主団体は会計帳簿または保管された記録に基づく会計報告および年次報告書、銀行口座情報、定款および指導者運営者と管理責任者の情報を提供しなければなりません。
■雇用主団体の指導運営者と管理責任者の条件
条件に付いて、組合法ではカンボジア人である場合と外国人である場合とそれぞれについて、規定をしています。
カンボジア人の場合の要件
・ 満18歳以上であること
・ 明確な住所を申告すること
・ クメール語の読み書きができる最低限度の教育レベルを申告すること
・ 軽罪または重罪の刑事事件で処されたことがないことを申告すること
外国人の場合の要件
・ 満18歳以上であること
・ クメールの読み書きができること
・ カンボジアにおいて少なくとも連続して2年間働いたことがあること
・ 軽罪または重罪の刑事事件で処されたことがないことを申告すること
■雇用主団体の財務
組合法によると、雇用主団体は資金源を指定しなければならないと規定しています。具体的には以下から寄付されるものとしています。
・ 雇用主団体の会費
・ 本法の規定に従った収益好意からの収入
・ 法的活動を行うための雇用主団体の会員またはその他の者からの寄付および資金援助
上記の雇用主団体の資金および資産は、指導運営者および管理責任者ならびにすべての会員の資金および資産と関連させることが禁止されています。また、他者への預金、送金、基金の投資ならびに適法な取引の実施などといった資金および財産の利用は、組合法および雇用主団体の定款に従ってのみ行うことができます。
さらに、すべての雇用主団体は労働担当省令において定められる様式に従って、資金記録を保管しなければならず、また、当該雇用主団体の定款に基づいて会員に報告し、労働担当省に対して報告書の写しを提出する必要があります。
■雇用主団体および雇用主の義務
雇用主は、従業員の名前、労働契約の状況および職業の分類にういて明記した名簿を保管し、これを月次にて更新する義務を負います。これは、労働組合が最大代表となることを申請する際に即時の審査を行うために組合法で規定されています。
またすべての雇用主団体および雇用主は、諸規則および労働条件の決定にあたり自己の会員の利益を代理する目的で、かつ当該規則および合意された条件または権利が尊厳されることを保証する目的で労働組合とその代表者と切実に交渉する義務を負います。
■雇用主による不当労働行為
以下の行為は、組合法の第64条より、雇用主の不当労働行為に該当します。
A) 雇用、役職、配置、昇進、地位、報酬、給付、懲戒処分、手続違反の解雇または契約の不更新を含む契約終了について判断する際に、労働組合の指導運営への参加、従業員の労働組合活動への参加を理由とすること
B) 労働組合を組成する権利の行使に際して、何らかの方法で従業員に干渉すること
C) 従業員が組合にかにゅうしてはならないこと、会員である労働組合から脱退することを労働証券または雇用継続条件とすること
D) 労働組合の会員が果たしているサービスまたは役割に関して、外部にこれを委託し、行為が従業員の労働組合を組成する権利組成の凝視に干渉すること
E) 労働組合、創設者または支援者への資金援助を含む労働組合の組成や指導運営または労働組合の提携の支援や干渉などの支配を行うこと
F) 労働組合への加盟を奨励または抑圧するために、賃金、労働時間、諸規則またはその他の雇用条件に関して差別すること
G) 本法の適用やその関連法令の適用に関して証言、証拠や関連情報を提供したこと。あるは、提供する予定である従業員を解雇し、差別すること
H) 本法に定められている団体交渉の義務に違反、または定款、労働契約、覚書、労働協約、法令に違反すること。またあるいは、労働協約の適用を妨害すること
I) 法的手続きに反するロックアウトを行うこと
J) 企業または組織の門または入り口を封鎖、またはストライキに参加したことや参加しようとする従業員に対して脅迫またはば宇力を加えることによってこれを妨害すること
K) 企業または組織を閉鎖する際に、労働セクターに関する義務を完全に果たさないこと
■雇用主団体の解散
雇用主団体は、組合法第28条より、以下の場合に解散されます。
A) 雇用主団体の定款に従って解散された場合
B) 労働組合が、企業または組織が完全に閉鎖されたことにより、自動的に解散された場合
C) 裁判所によって解散された場合
裁判所によって解散される場合、関連当事者または雇用主団の50%の構成員が最場所に対する訴権を持っています。また裁判所は、以下の事由に基づいて雇用主団体を解散することができます。
・ 雇用主団体組成または活動が法律または定款に違反すること
・ 雇用主団体の指導運営者や管理責任者が重大な不正行為または犯罪行為を行ったこと
上記の場合において、雇用主団体が解散されるとしても、その指導運営者および管理責任者は、正式に解散が宣告されるまで、会員または関連当事者に対する責任および義務を免れることはできません。さらに、裁判所によって解散された場合の指導運営者および管理責任者は、裁判所の決定が出された日から5年の間、新たな雇用主団体を指導し、または管理業務を担当することはできません。
用主団体の財産については、定款または総会決議の決定に基づいて処分されなければなりません。なお、定款かつ総会決議において定めがない場合、労働裁判所によって処分されることになります。
労働争議 |
■労働争議に関する背景
市場経済導入後、カンボジアは外国を含めた投資家からの投資を受け入れる環境が整備され、カンボジア経済の発展に大きく寄与しています。特に縫製、靴の製造および観光分野の労働市場には多くの労働力が供給されています。全体としては、1994年に24,015人しかなかった縫製、靴の製造および観光分野の労働力は、10年後の2004年には10倍以上の285,000人にのぼり、2010年では400,000人以上となっています。しかし、これらの従業員が十分働ける機会は不足しており、経験が少なく、労働生産性の水準はまだ低い状況にあります。
1990年以前、労働組合は政府の監督下にあり、自由な活動をすることができませんでしたが、民主的な労働組合が1996年に誕生し、従業員の権利および利益を保護しています。1997年に労働法が施行され、2008年から国による労災保険制度が導入されていますが、依然として労働環境や労働条件の交渉のため、雇用主と従業員の間で対立が生じています。
また、最低賃金については2012年から2015年の間で平均して前年比約28%上昇を続け、その後も平均10%の上昇を続け、2019年の上昇率は7%となりました。しかし、労働環境や福利厚生に関しては依然として多くの課題が残る状況です。特に、安全衛生面や超過勤務手当の未払いなどは未だに解消されていない工場や会社が多くあります。
■労働争議
労働争議には2つのタイプがあり、個別労働争議と集団労働争議に分類されます。
個別労働争議は、雇用主と1人ないしそれ以上の従業員・実習生との間で個別に生じるものであり、労働契約、団体協約の条項、または効力のある規制や法令についての解釈や履行に関するものと規定されています。一方、集団労働争議は、1社ないしそれ以上の雇用主と一定数の社員との間での、労働条件、労働組織の認可された権利の実行、企業内の労働組織の認可および労使関係に関する問題についての紛争であると規定されています。
このような紛争は長期的に、企業の効率的な運営、社会的秩序に悪影響を与える危険性があります。集団労働争議は、ストライキとして実施されるのが一般的です。
ストライキは、以下のように規定されています。
・ ストライキをおこなうには少なくとも7労働日の事前通告を必要とし、企業や団体および労働省に提出されなければならない。
・ ストライキは平和的に行なわれなければならない。ストライキ期間中において暴力的行為を行なうことは、深刻な違法行為とみなされ、出勤停止や懲戒的一時解雇を含む罰則の対象となり得る。
合法的、非合法的ストライキどちらの場合であっても、ストライキ期間中の給与を支払う必要はありません。また合法的なストライキの場合、皆勤手当の10 米ドルからストライキ日数に比例して以下の計算方法によって出される金額を控除することができます。
【例】
2日間ストライキを実施した従業員の皆勤手当から控除できる金額 (ひと月の労働日数を26日とする。)
2日 × 10 米ドル | = 0.77 米ドル |
26日 |
すなわち9.23米ドルの皆勤手当を支払うことになります。
ただし非合法的なストライキの場合は皆勤手当を一切支払う必要はありません。
雇用主はストライキを実施する従業員に対して罰則を課してはならず、基本的にはストライキ後に従業員の職場復帰を容認しなければなりません。ただしストライキ中の暴力行為は禁止されていることから、暴力を振るった従業員については、解雇することができます。また、ストライキ期間中にストライキ実施者の代替として新規採用活動を行ってはいけません。
労使争議は個別労働争議と集団労働争議のそれぞれで処理方法が異なっていいます。
個別労働争議は、労働法の条項によれば一方の当事者が労働監督官に対し調停を申請することができます。申請を受理した労働監督官は3週間内に両当事者から意見を聴取し、当事者間の調停を試み、合意に達すれば法的拘束力を有し、不調に終われば2カ月以内に裁判所に訴訟を提起することができます。2カ月を過ぎると訴訟は却下されます。労働監督官は調停の結果を報告書に記載し、それには労働監督官と当事者の署名がなされなければなりません。
一方集団労働争議については、両当事者は労働監督官に当該争議の報告をしなければならず、労働省は、当該紛争を調停に付します。労働大臣は報告を受けた後48時間以内に調停員を任命し、調停員任命日から15日以内に調停が開かれなければならないとしています。調停が合意に至った場合、労働協約と同等の効果を持ちます。調停が不調に終わった場合は、調停員は報告書を作成し、調停終了後48時間以内に労働大臣に送付され、各当事者にも交付されます。
その後、労働協約における仲裁手続か、全当事者が合意する手続または労働法上の仲裁手続に入ります。調停員からの報告を受けた労働大臣は3日以内に仲裁委員会に付託し、受理した仲裁委員会は3日以内に仲裁手続きを開催しなければなりせん。
仲裁手続中、従業員はストライキを、雇用主はロックアウトを行ってはなりません。これに反する場合、仲裁委員会よりストライキ・ロックアウトの中止命令が出され、それでも継続される場合は仲裁委員会での手続が中断されます。
労働争議解決のためのあらゆる手続によって合意に至らない場合、従業員には、従業員の権利を保護するためにストライキを実施する権利が認められています。
2016年ではストライキとデモが合計220件発生し、前年比で34.5%の減少となりました。しかし、工場閉鎖により従業員1万2,646人が影響を受ける結果となりました。
■労働争議の主な原因
カンボジアの労働争議の発生原因としは、以下のようなものが挙げられます。
・ 経営者の変更
・ 賃上げなど様々な要求
・ 短期労働契約の利用
・ 職場での協力関係の不足
・ 労働組合の権利に対する妨害
また、労働組合の資金不足などにより労働組合活動に関する教育が不十分な状況にあるケースや、投資家が外国人であるため、言葉や文化の違いから労使関係があまり良くないために労働争議が発生するケースもみられます。
労働争議を発生させないことが、会社にとっても個人にとっても長期的には有益ですので、労働争議になってから対応するのではなく、労働争議にならない為の未然の防止として、以下のような取り組みが必要となります。
・ 短期的な利益指向ではなく、長期的な成長戦略に基づいた視点を持ち、その中で経営者と従業員がしっかりと関係を深めていける体制をとること
・ 職場の問題を解決するために、経営者と従業員が協議する場を持つこと
・ 生産性の改善および仕事の安定的な確保について協議を行い、団体交渉を通じて労働協約を締結すること
・ 経営者側または経営者協会と従業員が交渉を行い、仕事をよりスムーズに行うためにカンボジア人を経営に参画させること。
カンボジアの労働法
労働基準関係法令 |
■カンボジアの労働法体系の概要
カンボジアでは、1992年3月に労働法が制定され、その後1997年3月に改定されました。1997年労働法は、社会主義的色彩の濃かった1992年労働法に大幅な修正を加えたもので、自由主義的で、従業員や組合の権利を尊重したものとなっています。しかし、社会主義的な内容が残されているという評価もあり、また、規定に関して不明な点も存在していることや十分に労働法を支える細則も整備されていないため、細則が順次公表されているような状況です。
カンボジアの労働関連法令としては、労使関係、雇用、賃金、休暇などの労働基準を定める労働法(Labor Law 1997年)と、従業員の社会保険を規定する労働社会保障法(Law on Social Security Schemes 2002年)の2つがあります。また、その他の細則として、行政規則、習慣法、ILOによって批准された国際法などがあげられます。
労働省が指定する書類お管理、記録および掲示については以下のものが上げられます。
- 事業所開設申請
雇用主は、事務所の掲示場所(従業員にとってアクセスしやすい場所)に、①祝日、②労働協約、③就業規則、④労働衛生および安全に関する規則、⑤最低賃金、⑥労働組合および従業員代表に関する報告などを掲示する必要があります。
■従業員代表の選出
8人以上の従業員を雇用する全ての雇用主は、当該事業所における全ての従業員を代表する従業員代表およびそのアシスタントを選出しなければなりません。実務上、従業員数が8人未満の場合、従業員代表を登録することはできません。従業員代表の任期は2年間と規定されており、再選が可能です。25歳以上で、勤続6カ月以上の従業員は従業員代表候補者になることが可能です。
従業員代表の選出は、会社設立後6カ月以内に実施される必要があります。
【従業員代表とアシスタントの必要人数】
従業員数 | 従業員代表数/アシスタント数 |
1 ~ 7 | 0 |
8 ~ 50 | 1/1 |
51 ~ 100 | 2/2 |
101 ~ 200 | 3/3 |
201 ~ | 従業員が100人増えるごとに1人ずつ追加 |
従業員代表選出の選挙実施は、雇用主の責務であり、その段階で従業員代表が存在しない場合は、労働組合または労働監督官の要求を受けてから15日以内に選挙を行うことを決定し、その旨の公告をしなければならず、45日以内に選挙を行わなければなりません。
従業員代表選出の投票は、労働時間中に行われなければならず、選挙は秘密選挙でなければなりません。選挙権は、18歳以上で、勤続3カ月以上の従業員に認められます。
就業規則策定時、雇用主は従業員代表とその内容について協議を行わなければらず、従業員代表は、これに対して意見書を提出しなければなりません。また、雇用主は、従業員集団解雇を行う場合、従業員代表に助言を求めなければなりません。
なお、従業員代表を解雇するためには、労働監督官の許可を経る必要があります。
雇用ブックの申請 |
雇用ブックは、就労する際に必要となるものです。外国人従業員に関しては、2019年には発行されておらず、現地従業員に発行されています。就労において、外国人従業員は雇用カード、現地従業員は雇用ブックがそれぞれ必要という認識となっています。企業は、従業員の就労権利も管理しなければならず、雇用カードを所持していない現地従業員の雇用は原則禁止です。
雇用カードを持っていない現地従業員には、雇用カードを企業より申請する必要があります。下記の書類を用いて、申請を行います。
労働基準比較 |
カンボジアの労働法は、個人、法人、民間企業、または国や地方公共団体と雇用契約を締結し、雇用主の指揮命令下で働き、賃金を受け取る従業員の全てに適用されます(軍人、航空・海運、裁判官、公務員は対象外)。
また、カンボジアの労働法では、原則として正社員と非正社員(臨時工等)が従業員として同等の義務、権利を持つと規定されています。
日本の労働基準法との主な比較は以下の通りになります。
【日本とカンボジアの労働基準比較】
| 日本 | カンボジア |
労働契約 | 口頭でも有効 | 口頭でも有効 |
労働時間 | 1日8時間
1週間40時間 | 1日8時間
週48時間以内 |
休憩時間 | 連続して6時間を超えて労働する場合には45分以上、8時間を超える場合には60分以上の休憩 | 1日あたり1時間以内 |
休日 | 週1日以上の休日 | 週1日の休日
原則日曜日 |
割増賃金 | 時間外労働:1.25倍
*月60時間を超える時間は1.5倍の例外あり 深夜労働:1.25倍 休日労働:1.35倍 | 深夜、休日労働以外の時間外労働:1.5倍
深夜、休日労働:2倍 *1日の時間外労働時間は2時間以内 (緊急時を除く) |
年次有給休暇 | 6カ月以上:10日以上
1年6カ月以上:11日以上 2年6カ月以上:12日以上 3年6カ月以上:14日以上 4年6カ月以上:16日以上 5年6カ月以上:18日以上 6年6カ月以上:20日以上 *上記期間の出勤数要件あり 通常悠久の持ち越しは2年間 | 年間18日
*全ての従業員には最低でも連続する雇用の 1カ月に1.5日の割合で雇用主により付与 勤続3年につき1日の割合で増加 *従業員は1年間勤務したのちに有給休暇を 利用する権利が発生 |
解雇事前通知 | 30日前の解雇
もしくは30日分の賃金の支払い | 以下の期間もしくはどう期間に相当する賃金の支払い
6カ月まで:7日 7カ月以上2年未満:15日 3年以上6年未満:1カ月 6年以上10年未満:2カ月 11年以上:3カ月
試用期間中の解雇に対する事前通知期間の定めなし
従業員は事前通知期間を通じ、新しい仕事を探すため1週間毎に2日間の有給休暇を取得可能 |
■労働時間
労働時間は、以下のようになっています。
・ 男女ともに作業員の労働時間は1日8時間又は1週間に48時間を超えることができない
・ 作業工程がシフト制による場合は、企業経営者は通常、朝シフトと午後シフトの2シフト制のみをとり得る
・ 未成年の就業時間は1日8時間を越えてはならず、また就業時間の間隔には最低13時間を与える必要がある。
■深夜労働
労働法144条によれば、深夜労働時間とは、たとえば20時から7時または19時から6時というように、22時から5時までの間に休憩を含む11時間以上の勤続労働時間のことをいうと定められています。また従業員が労働法に定める深夜時間に就業を終える場合は、雇用主は睡眠場所もしくは家までの交通手段を提供しなければなりません。
■時間外労働
時間外労働は特別な場合と緊急な場合のみ認められています。時間外労働を強制することはできず、従業員の任意によるものでなければなりません。雇用主は、時間外労働を行なわないことに関して、従業員に対していかなる罰則をも与えることもできません。雇用主は、従業員に時間外労働をさせる場合は、事前に労働省から許可を得る必要があります。
時間外労働は1日につき2時間までと定められており、これを超えて労働させる場合は、15日前までに労働省にこれを届け出、許可を得る必要があります。また、2カ月先の時間外労働予定まで許可を受けることができるとされています。
また、時間外労働を行った従業員に対しては1日につき食事代として2,000リエルまたは無料で食事を提供する必要があります。食事を提供する場合は労働時間の間または時間外労働が始まる前に提供する必要があります。
割増賃金の割合としては以下の表の通り、日本に比べて大きいものとなっており、残業をさせることは非常に負担が多いため、残業が多い企業は人員計画を見直す必要があります。
労働法上、管理職と非管理職を明確に定義する規定はありません。雇用主自身を除き、管理職であっても、労働法の規定が同様に適用されます。この結果、管理職に対しても残業代の支払義務が発生します。
【割増賃金】
労働時間帯 | 賃金割合 |
勤務日における時間内労働
(夜間労働でない) | 100% |
勤務日における時間内労働
(夜間労働) | 130% |
勤務日における時間外労働
(夜間労働でない) | 150% |
勤務日における時間外労働
(夜間労働) | 200% |
週休における時間外労働 | 200% |
祝日における労働 | 100%+100% |
【例】 従業員が時間外労働を行った場合の給与計算
月給100 米ドルの従業員が2時間の時間外労働を行ったとします。その2時間の給与は以下のように計算されます。(ひと月の労働日数を26日とする。)
時間給 = | 100 米ドル | = 0.48 米ドル/時間 |
26日 × 8時間 |
(2時間分の時間外労働手当) = 0.48 × 2時間 × 150% = 1.44 米ドル
よって1.44米ドルを時間外労働手当として支払う必要があります。
■祝日における労働
祝日は、有給の祝日として定められています。賃金の計算方法は、有給分(100%)に加え、100%の時間外手当を支払う必要があります。つまり、有給分は基本的に月の基本給に換算されているため、時間外手当の100%分だけを割り増しして支払うこととなります。
■休日
週当たりの休日は、1週間に少なくとも1日、24時間連続して与えなければならず、全ての従業員は、原則として日曜日を休日とします。しかし、通常の休日(日曜日)を変更することができます。ただし、すべての社員が日曜日を休日とすることで企業の通常の操業に支障がある場合で、労働省への認可申請の上で、以下のいずれかの方法による必要があります。
・ 全ての社員が日曜日以外を休日とする。
・ 日曜日正午から月曜日正午までを休日とする。
・ 全ての社員が順番に休日を取る。
雇用主は特定の状況において、週当たりの休日を延期することができます。延期する場合、雇用主は労働省の許可を得なければなりません。
休日出勤の代替として平日に休暇を与えたとしても、休日出勤の際には200%の給与を支払わなければならないので、注意が必要です。
祝日労働に対して、通常の有給分100%に加え、100%の時間外手当を支払う必要があります。
■年次有給休暇
全ての従業員には、以下の表の割合で年次有給休暇を取得する権利があります。年次有給休暇日数は、勤務3年間に1日の割合で増加します。もし、同じ会社に4年勤務した場合は、年次有給休暇は19日となります。
従業員は1年間勤務した後に有給休暇を利用する権利が発生します。しかし、有給休暇の持越しの関係上、有給休暇の日数の早期消化を促し、残存有給の日数の計算の煩雑化を防止するため、金属1年経過前に有給の取得を認められています。つまり、従業員は、勤務1年目に取得した有給休暇を勤務2年目に利用することができるとなっていますが、事実上、1年目から有給の取得が可能となっています。
また、従業員が有給休暇を利用する権利を獲得する前に労働契約が終了した場合、労働契約が終了した場合、雇用主はそれまでに発生した「有給休暇を取得する権利」を買い取らなければなりません。
【有給休暇付与日数】
所定労働時間/週 | 有給休暇数/月 |
48時間 | 1.5日 |
40時間 | 1.25日 |
32時間 | 1日 |
24時間 | 0.75日 |
【有給休暇日数】
勤続年数 | 有給休暇数/年 |
1年目から3年目 | 18日 |
4年目から6年目 | 19日 |
7年目から9年目 | 20日 |
■有給の繰り越しについて
労働法167 条4 項では、「従業員が、有給休暇の権利の一部又は全部を留保することに同意した場合、この同意は権利の放棄とはみなしません。有給の留保は、連続する3年間を超えることはできず、かつ、有給休暇日数の内、12日を超える日数分の有給休暇についてのみ適用することができる」と定めています。上記規定は、従業員側の事由によって有給休暇が消化されない場合、未消化有給は、翌3年間、年間取得有給日数から12を差し引いた日数を上限に繰り越されると解釈されています。
雇用主側の事由によって有給休暇を消化することができない場合は、有給繰越に関する上記制限は適用されず、未消化有給は全て繰り越されると判断されます。
【例】
1年目の繰越可能日数:18日 – 12日 = 6日
2年目の有給日数:6日(繰越分) + 18日 = 24日
上記例において2年目に有給を15日使用し、1年目繰越分から使用した場合:
1年目からの繰越分:6日間
2年目付与分:18日間
2年目有給未消化分:9日間
2年目繰越可能有給日数:6日間
(2年目の繰越可能日数の上限は18日 – 12日 = 6日)
3年目の有給日数:6日(2年目繰越分) + 18日 = 24日
上記例において2年目に有給を15日使用し、2年目付与分から使用した場合:
1年目からの繰越分:6日間
2年目付与分:18日間
2年目有給未消化分:3日間
2年目繰越可能有給日数:3日間
(2年目の繰越可能日数の上限は18日 – 12日 = 6日)
3年目の有給日数:6日(1年目繰越分) + 2日(2年目繰越分) + 18日 = 27日
この通り、2年目の有給はどこから消化されるかが問題となることから、就業規則等において明確にしておくことが望まれます。
■有給の買い取り
労働法上、有給の買取は全て無効とされています。一方で契約終了時に残存有給がある場合、雇用主は従業員に対して補償金を支払わなければならないとも規定されています。
つまり、労働契約の期間中の有給買取は無効である一方、契約終了時点の残存有給を買い取らなければならないということになります。
■特別休暇
労働法では、従業員の特別休暇について規定しています。
以下の事由に該当する際に取得できる特別休暇として、年間で7日間までの有給付与を規定しています。
・ 従業員本人の結婚
・ 従業員の配偶者の出産
・ 従業員の子どもの結婚
・ 従業員の配偶者、子ども、両親の病気・死亡など
ただし、年次有給休暇日数が残っている場合は、雇用主は年次有給休暇から特別休暇を差し引くことが可能です。
■出産休暇
1年以上勤続している女性従業員は90日の出産休暇を取得する権利を有しています。出産休暇中においては給与の50%を支払わなければならず、出産休暇明け職場復帰の最初の2カ月間は、軽作業のみに従事させる必要があります。
また、従業員は出産後1年間に限り、子供への授乳のために1日あたり1時間を使用する権利を有しています。授乳の時間に関する規定は、雇用主と従業員の合意により定める事ができますが、特段の合意がない場合は原則として労働時間の中間にて時間を設けることとなります。
女性従業員を100人以上雇用する場合、事業所内またはその近隣に、授乳室および保育所を設置しなければなりません。
■病気休暇
従業員は医師の診断書がある場合、6カ月間の病気休暇を取得する権利を有しています。雇用主は、病気休暇中の従業員に対して給与を支払う義務はありません。
しかし、労働省は、企業に対し、企業内の規則に以下の病気休暇に関する事項を定めることを求めています。
A)病気にかかった従業員が医師の診断書を提出した場合、1カ月目は賃金全額を支払う。
B)2カ月目と3カ月目は賃金の60%を支払う。4カ月目から6カ月目までは賃金は支払う必要はないが、勤続年数は加算する。従業員が6カ月以上病気休暇で休んだ場合、企業は法律に従い従業員を解雇できる。
その他の労働基準 |
その他、カンボジア労働法で規定されている特徴的な規定としては、以下のようなものが挙げられます。
■労働安全衛生
労働法は、従業員の安全衛生に関して規定しており、家族経営などの小規模事業を除き、すべての雇用主に適用されます。
労働法では、雇用主は、従業員に対して衛生的な作業環境を保つ必要、健康および安全性管理の規制と手順、雇用主に従業員への労働における健康を保つサービスの提供を求めています。
■外国人の雇用について
カンボジアでは、外国人の雇用に制限があり、次のような職能・職種の外国人従業員に限り雇用が認められています。
・ 事務系の職員
・ 高度の技術を有する職員
・ 熟練の職員
ただし、外国人の採用は、その職種・職能が現地人によって代替が困難な場合に限られます。原則としては、外国人に優先して現地従業員を雇用しなければなりませんので、外国人の雇用を希望する雇用主は、その理由を添えて労働省へ申請を行う必要があります。その場合でも、外国人の比率はカンボジア人の10%以下に抑えなければなりませんが、労働省の認可を得ることで、この比率を超えて外国人を雇用することが可能です。
[外国人がカンボジアで就業する場合の要件]
外国人がカンボジアで従業する場合には、以下の要件が課されます。
・ 労働省発行の労働許可証の保有
・ 合法的にカンボジアに入国している
・ 有効な移住許可を有している
・ 有効なパスポートを保持している
・ 適切な評価と規律を有する
・ 健康で、伝染病を有していない
また、外国人従業員は、労働許可証が必要となります。これを所持していない場合、カンボジアでの就業が認められません。事実上で就業している場合、多額の罰金の請求がくることがあります。
[従業員割当申請(Quota)]
企業は、外国人従業員がカンボジア人従業員数の10%を超える場合、労働省における従業員割当申請の際に、特例許可に関する手続きをとる必要があります。
この申請の際に、雇用主は雇用している現地従業員および外国人従業員の給与や職務内容などに関する情報を所定の申請書において記入し、労働省に対して提出する必要があります。なお、省令第352号第2条によると、外国人従業員を雇用している投資家、企業、企業機関は、オンラインシステムにおいて外国人従業員の雇用に関する従業員割当の申請を行わなければならないと規定されています。
すべての企業は、「FWCMS」のホームページの中の従業員割当の申請につき、以下の情報を記入し、かつ、必要書類を添付した上で登録を行分ければなりません。
A) 商業登録証明書における詳細情報(商業省で発行される商業登録証明証)
・クメール語の社名(証明証の社名と同様のもの)
・英語の社名(上記同様)
・登録番号
・登録日付
・会社の種類(私的有限責任会社、外国会社など)
・社名の省略(IBM、CNNなど)
・商業登録証明証の添付(ファイルデータは1MB以下)
B) パテント証明証の情報(税務局で発行されたもの)
・クメール語の企業主の名前(パテント内の名前と同様のもの)
・英語の企業主の名前(上記同様)
・性別
・国籍
・主たる事業内容
・VAT番号
・会社の住所
・メールアドレス(ログインするためのユーザーIDとして使用する為)
・暗証番号(ログイン時に必要な為)
・携帯電話番号
・パテント証明証の添付
C) 従業員の移動に関する申告書の情報(労働省の職業およ手工芸局)
・申告書の登録番号
・申告書の登録日付
・カンボジア人従業員の人数
・外国人従業員の人数
・従業員の移動に関する申告書の添付(ファイルデータは1MB以下)
D) 従業員割当申請Quota
・表の記入(カンボジア人従業員数と外国人従業員数)
※従業員数は、事務所員、専門的従業員、非専門的従業員のそれぞれに分けて記載します。
■従業員への物資の販売
雇用主は、以下4つの条件の下従業員家族に対して食糧その他の物資を販売することが認められています。
・ 購入を強制しないこと
・ そこから利益を上げないこと
・ 本業と区別されていること
・ 価格が表示されていること
カンボジア労働訓練職業省は、カンボジアで働く外国人に対して、オンラインにて申請可能とした「外国人労働者集中管理システム(FWCMS)」を導入しました。
このシステムを通して、ワークパミットだけではなく、Quotaの申請も可能です。
雇用主または外国人労働者が申請可能となったサービスは以下の通りです。
1. 外国人労働の使用許可(雇用主)
2. 外国人労働契約の登録(雇用主)
3. 外国人のためのワークパミット及びQuota
上記フォームと手続きは、雇用主と外国人労働者がいつでもオンラインにて申請できるよう、労働省の公式サイトに掲載されています。
賃金 |
賃金は、全ての従業員に人間の尊厳に矛盾しない生活水準を補償するものでなければならないと規定されています。
賃金には、報酬、残業代、手数料、賞与、補償金、利益分配、現物支給品、家族手当、有給などの代償などを含むと規定されています。一方、健康手当や旅費などは、賃金に含まれていません。
■賃金の支払い期間
2018年8月に新たに労働省から大臣令が交付され、2019年1月よりカンボジア国内のすべての企業に対して月2回の給与支払いを義務付けました。1回目は純賃金の50%を当月の2週目に、2回目は残りの50%およびその他と手当等を当月の4週目に支払わなければならないと規定されています。
それまでは、ブルーカラー従業員(作業者)の賃金は、最長16日間の間隔で月2回以上に分けて支払われなければならず、この場合、給与計算を2回するか、一度の計算に対して、支払を2回に分けて行うのかいずれかになりました。また、ホワイトカラー従業員の賃金は1カ月に1回以上支払う必要がありました。しかし、今後はブルーカラー従業員などを問わず、すべての企業のすべての従業員が上記の省令に従うこととなります。
また、2019年1月の労働省通知により、この月2回の給与支払いに関する規定の適用以前に、各月の時間外手当その他の手当を計算等のため、給与の支払いを翌月の7日まで行ってきた企業については、2019年1月から1回目(給与の50%)を各月の16日から19日の間に、2回目を翌月1日から7日の間に支払うことされています。
月2回の給与支払い義務に関して、1度目の支給を第2週に行うと規定していますので、2019年1月の例では、1月12日までが第2週となります。したがって、1月12日までに支給するということになります。しかし、1月12日は土曜日のため、土曜日を祝日としている企業は、直前の営業日である11日が支給日となります。
あるいは、1週間を7日とし、2週間で14日になるので、毎月14日までに支給するという解釈も成り立ちます。14日が週末又は祝日の場合は、直前の営業日となります。この解釈の場合、1月の支給日は1月14日の月曜日ということになります。
給与税の計算については、従業員の月額賃金に対して課税されるため、この2回支給規定による影響はありません。
また、Prakas 442では1度目の支給額は純賃金の50%とされています。純賃金は、時間外手当などの追加手当を含まない賃金とされています。
ここで、1度目の支給分である純賃金(net wages)の50%の解釈について、賃金総額の50%とするか、税引後賃金の50%とするかという解釈が生まれます。
賃金税計算のための米ドルとリエルの為替レートは毎月15日に税務総局より発表されるので、実務上、税引後賃金で計算しようとすると、1度目の支給時は前月の為替レートを使用し、2回目の支給賃金計算時に当月の為替レートを使用し全ての調整を行う必要が出てきます。
この規定に従わなかった場合、労働省より約420米ドル、又は裁判所より320米ドルから600米ドルの罰金が課せられる可能性が有ります。この罰則は、従業員全員の同意を得て賃金2回支給を行っていない場合も適用される可能性がありますので、この規定に沿わない形で運用を検討する場合、個別に労働省に調整や申請が必要になると思われます。
また営業や代理店のコミッションは、3カ月以内に支払われなければならなりません。
■農業・林業・漁業従事者への手当
お米の配給、水の支給、住居の手当などが、業種毎に定められています。
■賃金からの控除
原則として、雇用主は賃金から控除をすることは認められていません。特に、罰金を科することや以下の例外を除いては、賃金控除は認められていません。
例外とされる許される賃金控除
・ 離職時に従業員が変換しない業務上の機材や設備
・ 従業員が管理または使用する品物や材料
・ 上記2点の物品を購入するための前払い金
・ 会社内の販売店での未払金
また、従業員が管理や使用する機材、設備、品物、材料の購入以外のために前払いを行った場合、雇用主はこれを賃金から差し引くことが可能です。
しかし、控除をすることによって、給与の支払い額が最低賃金よりも下回ることは許されません。
■賃金に関する説明義務
雇用主は、従業員に対して以下の2点を十分に説明する義務を負います。
・ 労働契約を締結する前または賃金に関する規定が変更される際に、賃金に関する内容について
・ 賃金を構成する項目に変更があった場合、その項目について
各種手当 |
縫製・製靴業の従業員に対しては、以下の手当てを支払う必要があります。
■健康手当
ひと月の内14日以上勤務した場合、健康手当として5 米ドル /月を支払う必要があります。ただし勤務日数が13日以下の場合は2.5 米ドル/月の健康手当を支払う必要があります。
■通勤・住宅手当
ひと月の内14日以上勤務した場合、通勤・住宅手当として7 米ドル/月を支払う必要があります。ただし勤務日数が13日以下の場合は、3.5 米ドル /月を支払う必要があります。
■皆勤手当
皆勤手当てとして最低10 米ドル/月を支払う必要があります。また、この手当は試用期間中の従業員に対しても支払う必要があります。この手当額は2012年7月に7 米ドルから10 米ドルに引き上げられました。
児童、女性、障害者の就業制限 |
■年少者の保護
年少者の保護については、労働法で規定がされています。年少者の年齢の定義は、15歳から18歳までです。
雇用に際しては、必ず年齢を証明する書類を保持する必要があります。18 歳以下の従業員については、親又は保護者の同意がなければ労働契約を締結することはできません。また、18 歳以下の従業員については、夜間労働に従事させることはできません。
以下に、雇用主が年少者の雇用に関して注意を払わなければならない労働法の重要な規定を挙げます。
A) 労働に従事できる最低年齢は15歳とされています。
ただし、12歳から15歳の年少者についても、以下に該当する場合には雇用することが可能です。
・ 作業が、健康や安全、道徳を害するものでないこと。
・ 作業が、学校や職業訓練への通学に影響を与えないこと。
B) 健康や安全、道徳を害する職種での最低年齢は、18歳とされています。
この規定の適用を受ける職種は、労働省の大臣令により決められ、労働監督委員会の諮問を受けます。ただし、労働省は、労働監督委員会の諮問の後、十分な指導や職業訓練を条件として、これらの職種においても最低年齢を15歳とすることができます。
■女性従業員の保護
カンボジアの憲法と労働法では、女性の労働に関する権利、平等な報酬の支払い、女性の搾取の禁止、出産休暇などが規定されています。
しかしながら、現実にはカンボジアの女性従業員の保護は十分ではなく、職場でも社会一般においても女性の権利が守られているとはいえません。権利意識の低さや文化から、法律と実態の乖離が生じているといえます。
■障害者雇用
カンボジアは戦争や不発弾などによる身体障害者が多いといわれており、2010年8月制定の政令にて障害者雇用を義務付けています。
これは、100人以上の従業員を雇用する雇用主は、全従業員の1%以上にあたる障害者の人数を雇用しなければならないとしています。障害者については、労働省が業務ごとに定める役割や責任を果たすことができる人となっております。
これを遵守しない企業は、障碍者の月額最低賃金の40%に相当する金額を障害者基金に支払うことが義務付けられています。
また同政令で、100人以上の従業員を雇用する企業は、毎年1月に、労働省にフルタイム従業員の総数と障害者従業員の雇用比率を報告する必要があります。
労働協約 |
■労働協約の概要
労働協約の目的は、組織を代表する雇用主と従業員の間で雇用条件を規制、決定することです。
労働協約又は団体労働協約では、
(a) 雇用主、雇用主集団、雇用主を代表する1つ以上の組織
(b) 従業員を代表する1つ以上の労働組合
との間の書面による合意が必要となります。
また、労働協約の条項は、組織内のすべてのカテゴリーの従業員に適用されることになります。労働協約の法的位置づけは、カンボジアの労働法や条例より上位ですが、法律や条例よりは下位であるため法律や条例に違反する条項は無効となります。
具体的には、以下のような規定は禁止されています。
・ 法律および規制と矛盾しているもの
・ 労働法で規定されていない賃金引下げ
・ 有給休暇に関する従業員の権利を妨げること(反面、有給休暇買い取りを認められる)
・ 関連する手当てに関する女性の権利を妨げること
■労働協約の期間
労働協約は期間を定める場合には、有効期間は3年以内としなくてはなりません。企業内に労働組合がなく、従業員の代表が雇用主と交渉を行う場合の有効期間は、1年以内となります。
また、期間を定めない労働協約の締結も可能となります。
■労働協約の終了通知
期間の定めがある労働協約は、一方の当事者が他方の当事者に対して、3カ月前までに通知を行うことで終了させることができます。期間を定めがない労働協約も終了させることができますが、通知をしてから1年間は終了させることができません。
雇用と就業規則
雇用契約 |
■雇用形態
カンボジアにおける雇用形態には、正規雇用、試用期間中の雇用、非正規雇用や見習い契約などが存在します。
[正規雇用]
正規従業員とは、恒久的に仕事に従事するものを意味します。
[試用期間中の雇用]
試用期間は、雇用主が従業員の職業適性を判断するため、および、従業員が提供される従業員状況を具体的に理解するための期間と定義付けられています。雇用主と従業員は、試用期間中は自由に労働契約を終了することができるとされており、さらに、終了には事前通知が不要とされています。
このことから、実務上、契約書などにおいて事前通知の義務を課すことで、急な退職を防ぐという方法がとられています。
期間については、正規従業員は3か月、専門従業員は2か月、非専門従業員は1か月を超えることができないと規定されています。
[非正規雇用]
非正規従業員とは、以下の契約を締結した者のことをいいます。
・ 短期間で終了する特定の仕事を行う者
・ 一定期間中、または、周期的、季節的に仕事を行う者
非正規従業員は、別途契約や就業規則などで規定されていない限り、原則として、正規従業員と同じ規則と義務に従い、また同じ権利を有します。
[見習い]
仕事内容を修得するため、雇用主と徒弟関係を締結している者をいいます。見習いを訓練する期間は、2年が最長で、それ以上超えてはいけません。また、プノンペン市内における縫製業に関しては、見習い期間は2か月以内としています。
また、見習いに対する最低賃金は、通常の従業員や試用期間中の従業員とは別途で定められております。
[派遣]
派遣とは、アウトソーシングや委託のことをいいますが、これに関してはまだ具体的法令や細則は存在しません。
■雇用契約の規定
[口頭契約と書面契約]
有期雇用契約は書面によって、無期雇用契約は書面か口頭のいずれによって締結することができます。通常は書面で契約が締結されており、労働法や地域の習慣に従って労働契約書が作成されます。口頭での契約は、明確に定義されていないとしても、就業規則で決められた条件での雇用主と従業員との暗黙の合意であると見なされます。
[雇用契約の分類]
労働法では、従業員の業務内容や勤務時間によって、雇用契約の形態や雇用契約終了に関して規定がなされています。
雇用契約には主に以下の2種類があります。
・ 有期雇用契約
・ 無期雇用契約
[有期雇用契約]
有期雇用契約を締結する際には、以下の要件を満たす必要があります。
A) 書面による契約であること。(日雇い従業員、パートタイム従業員に関する例外あり)
B) 2年以内の契約であること。
C) 正確な契約開始日と終了日が契約書に記載されていること。
D) 一時休暇を取得した従業員の補充としての雇用※
E) 季節労働
F) 突発的に発生した作業への雇用
G) 企業による不定期に生じる作業への雇用
※(ただし、労働法67条第3項によれば、契約開始日と終了日を特定の日と明記せずにそれらの期日を決める方法もあり、D以下の場合には、従業員は正確な契約終了日を知らされなくても良いことになっています。)
ただし、ひと月のうち21日以上または2カ月間以上労働した場合、正規雇用とみなされます。また短期従業員も正規雇用主と同様の手当を受け取る権利があります。
有期雇用の契約期間は、何度でも更新することができますが、更新した契約は最長でも2年を超えてはなりません。この規定に違反した場合、その契約は無期雇用契約とされます。
有期雇用契約の終了に関して、労働法では、契約法の一般原則と少し異なり、雇用主から従業員に対する契約終了の通知義務が規定されています。有期雇用契約の更新をしない場合には、雇用契約書に規定された契約終了日までに、契約更新を行わないことを通知しなければなりません。雇用主がこの規定どおりに通知を行わない場合には、契約は最初の契約期間と同じ期間の契約で自動的に更新されるか、元の有期雇用契約とその後の更新される雇用契約の期間の合計が2年以上である場合には、無期雇用契約とみなされます。そのため、雇用主は雇用契約を終了させる場合,必ず契約の更新を行わない旨を従業員に通知しなくてはなりません。
雇用主は従業員の能力や態度を評価するため、試用期間を設けることができます。試用期間は、正規従業員は3カ月、専門従業員は2カ月、非専門従業員は1カ月を超えてはいけません。
また新規従業員やスキルが乏しい従業員に対して、2年以内であれば訓練生としてトレーニング期間を設けることができます。ただしプノンペン市内の縫製業は2カ月以内とされています。
[無期雇用契約]
無期雇用契約は、契約時に無期雇用契約を結ぶか、あるいは有期雇用契約が無期雇用契約に変更されることで成立します。
有期雇用契約は、以下の場合に無期雇用契約に変更されます。
A) 有期雇用契約が書面で結ばれていない場合
B) 有期雇用契約の期間が2年以上で結ばれている場合
C) 2年以内の有期雇用契約が終了後も、暗黙のうちに業務が引き続き行われている場合
なお、有期雇用契約終了後に、無期雇用契約に移行する場合、従業員の勤続年数は、有期雇用契約と無期雇用契約の期間を合算した年数として算出されます。
■労働契約の停止
労働契約は以下の場合、停止されます。
A) 雇用主が兵役に就く、または、義務的な軍事訓練に参加するために事業所を閉鎖する場合
B) 兵役または義務的な軍事訓練のために従業員が欠勤する期間
C) 医師が診断した行基を理由に従業員が欠勤する期間
(この場合、契約停止期間は原則として最長6か月と規定されています。)
D) 労働災害または職業病の疾病によって労務を提供できない期間
E) 出産前から出産後まででの疾病のための休暇期間
F) 法や労働協約、または個別の合意に基づいて、雇用主が認めた従業員の欠勤
G) 就業規則に従って行われる正当な理由に基づく従業員の一時的な解雇
H) 付帯する旅行休暇を含む有給休暇期間
I) 有罪判決前の従業員の勾留期間
J) 不可抗力によって、契約の一方当事者が義務を行えない場合
(この場合、契約停止期間は最大3か月と規定されています。)
K) 企業が重大な経済的または物資的な困難、または特別な困難に直面し事業が中断する場合
(この場合、契約停止期間は最長3か月と規定されています。)
上記契約停止の事由がなくならない場合、雇用主は法律に従った事前通知を行うことで、労働契約を終了させることができます。
有期雇用契約の終了 |
労働契約の終了に関する規定は、労働法および政令等により規定されています。
従業員は雇用主に対し、労働契約が終了する場合、雇用開始日、雇用終了日、および職務内容などを記した雇用証明書を受け取る権利を有しています。雇用主は、労働者からこの要求があった場合、同証明書を発行する必要があります。この発行を拒否した場合、従業員に対して、発行しなかったことから生じた損害を賠償しなければなりません。
有期雇用契約は、契約に明記された終了日に終了します。しかし以下の通知義務を怠った場合、有期契約は同期間分のみ自動的に更新されます。また合計の雇用期間が2年以上となった場合は、有期契約は無期契約へと変更されます。
契約期間 | 事前通知期間 |
6カ月未満 | 通知の必要なし |
6カ月以上1年未満 | 10日 |
1年以上 | 15日 |
■有期雇用従業員の解雇
以下の場合には、有期雇用契約終了日前に雇用契約の解除(解雇)をすることができます。
・ 契約の両当事者が雇用契約解除に合意した場合
・ 契約当事者のいずれかによる深刻な不正があった場合
・ 不可抗力による場合
上記の定められていること以外を理由にして、契約の一方当事者が労働契約を終了させる場合、契約を終了させた当事者は、相手方当事者に対して、生じた損害について賠償を求めることが可能です。また、雇用主が上記理由な雇用契約を終了させた場合、契約残存期間中の賃金相当額の損害を賠償する必要があります。
[契約の両当事者が雇用契約解除に合意した場]
雇用主および従業員の双方が合意した場合には、契約終了日前に契約を解除することができ、契約解除により損害が生じた場合でも、互いに損害を補償する必要はありません。この場合は、書面による合意が必要で、両当事者により署名されなければなりません。
[契約当事者のいずれかによる深刻な不正があった場合]
雇用主又は従業員のいずれかに重大な過失があった場合、過失がなかった側は、契約解除することができます。一方、過失をおかした側は、契約不履行に対する損害を賠償しなければなりません。労働法では、雇用主・従業員側の重大な過失の例を、それぞれ次のように規定しています。
雇用主側
A) 従業員が理解すれば契約しないであろう状況で、契約書に署名するようにそそのかすような詐欺的な行為をした場合
B) 賃金の全部もしくは一部の支払いを拒否した場合
C) 賃金支払いの遅れが繰り返される場合
D) 暴言、脅迫、暴力、暴行を行った場合
E) 従業員に十分な作業を提供できない場合
F) 法律で要求されている職場での安全衛生措置が欠如している場合
従業員側
(a) 窃盗、横領、着服を行った場合
(b) 採用時や雇用期間中の詐欺行為(偽の身分証明の提示、労働妨害、労働契約履行拒否、機密漏洩など)を行った場合
(c) 規律や、安全衛生に関する規則への重大な違反をした場合
(d) 雇用主や他の従業員への脅迫、暴言、暴行を行った場合
(e) ほかの従業員が重大な違反をするよう扇動した場合
(f) 組織内での政治的活動、宣伝、デモ活動を行った場合
過失により従業員を解雇する場合、従業員の過失を認知してから7日以内に解雇または15日以内に懲戒処分をする必要があります。
[不可抗力による場合]
不可抗力とは、雇用主および従業員のいずれもコントロールできない事象が発生することをいいます。雇用主は、以下の不可抗力が生じた場合、雇用契約の解除をすることができます。
A) 公的機関による組織の閉鎖
B) 長期にわたり業務再開ができないほどの物的破壊を引き起こす大災害(洪水、地震、戦争など)
C) 雇用主の死亡による組織閉鎖(この場合、従業員は、契約解除通知期間に等しい賃金の補償を受ける権利を有する)
一方、従業員は以下の不可抗力が生じた場合、雇用契約の解除をすることができます。
(a) 慢性的な病気、精神疾患、身体障害(ただし、この場合も雇用主は事前に契約解除を通知しなければならない)
(b) 禁固刑を受けた場合
■有期雇用従業員の解雇に伴う支払い
[損害補償]
明確な理由なしに有期雇用契約を終了する場合には、解雇補償のほかに損害補償を支払う必要があります。従業員は少なくとも解雇補償と同額の損害補償を受け取ることができます。
補償金の計算方法
月26日勤務で26カ月間勤務した従業員が退職する場合
この従業員の直近の12カ月間の平均月給は100 米ドル、時間外手当や報酬を含めた12カ月間の合計は1768.28 米ドルでした。
この場合の解雇保証金額は以下のように計算されます。
12カ月間の平均日当 = | 1768.28 米ドル | = 5.67 米ドル |
12カ月 × 26日 |
解雇補償は30日分となるので
5.67米ドル×30日=170 米ドル
このように平均賃金ではなく、報酬や諸手当を含めた合計賃金で計算する必要があるので注意が必要です。
[退職金]
契約が終了した場合、雇用主は、契約期間と賃金に比例した退職金を支払わなければなりません。退職金の正確な額は、労働協約により定められます。ただし、労働協約で定められていない場合は、退職金額は、少なくとも契約期間中に支払われた賃金の5%としなければなりません。賃金には、時間外手当やボーナス等が含まれます。また雇用主が理由なく解雇を行った場合における退職金の計算基礎に残存契約期間中に支払われるべき賃金の合計額が加算されます。
通算雇用期間が2年を超えた結果、有期雇用契約から無期雇用契約に変わった場合は、有期雇用契約の退職金を支払う義務はありません。ただし縫製業などの製造業界においては、有期雇用契約期間満了毎に退職金を支払う慣習があります。
[支払い期限]
労働契約が終了した際、賃金およびすべての補償は、労働終了後48時間以内に支払いを行わなければなりません。
無期雇用契約の終了 |
無期労働契約は、契約の一方当事者の意思表示によって終了させることが可能です。契約終了の意思表示は、原則として、一方の当事者による書面での事前通知が要求されています。例外として、試用期間中、不可抗力、重大な契約違反が理由となる場合には事前通知不要となります。
必要最低期間は、以下の通りであり、下記期間よりも短い事前通知期間を定める労働契約、就業規則上の条項は無効となります。
【無期労働契約の場合の事前通知期間】
継続労働期間 | 通知期間 |
6カ月未満 | 7日間 |
6カ月から2年 | 15日間 |
2年以上5年未満 | 1カ月 |
5年以上10年未満 | 2カ月 |
10年以上 | 3カ月 |
従業員は求職ため1週間に2日有期休暇を取得できます。
雇用主が事前通知期間を遵守できない場合、従業員に対し通知期間に支払った賃金や諸手当を支払う必要があります。
また、従業員が新しい仕事を見つけた場合には早期退職することができますが、雇用主は事前通知期間の残存期間を補償する必要はありません。
一方、従業員が通知期間経過前に退職した場合、通知期間中に受けることができるはずの賃金は受け取ることはできなくなります。
■解雇の為の正当な理由
雇用主が無期労働契約を終了させる(解雇する)場合、従業員の技術や資格、態度、適正もしくは雇用主の経営上の必要性に基づく「正当な理由」が必要です。
「正当な理由」は上述したものでなければなりませんが、具体的にどのような事情があれば「正当な理由」が認められるのかについては、明らかではありません。これは、労働仲裁委員会においても議論があまりされていないため、今後の労働仲裁裁定および裁判所の判決の蓄積を待つ必要があります。
「就業規則への記載」および「重大な企業秩序遵守義務違反行為の有無」が過去の正当性の判断において強調されています。したがって、遵守させたい事項については就業規則に記載しておく必要があるといえます。
■解雇手当
従業員の重大な過失や不可抗力がなく法的な正当性がないにも関わらず雇用主が雇用契約の解除をする場合には、従業員は契約不履行に関する以下の補償と損害賠償を求める権利を有します。
・ 解雇に関わる賠償
・ 損害賠償
・ 事前通知に代わる補償
雇用主が事前通知なしで、もしくは事前通知期間を遵守せずに契約解除を望む場合は、雇用主は、従業員が契約期間中に受け取ることができる賃金と手当を支払う義務があります。
■解雇補償
重大な不正を行った場合を除いて、雇用主は従業員に対して解雇補償を支払う必要があります。解雇補償額は雇用期間に応じて以下のように異なります。
雇用期間 | 解雇補償 |
6カ月以上1年未満 | 7日間分の賃金と諸手当 |
1年以上 | 1年につき15日分の賃金と諸手当
(最大6カ月分の賃金と諸手当) |
*解雇補償は2018年に撤廃され、2019年からは新たに年功補償が適用されます。
<雇用契約終了に関する補償>
労働職業訓練省は、雇用契約終了に伴う補償金の支払に関する労働法及び規則に反した解釈を防ぐため、労働法に基づき、従業員は雇用契約終了後に以下の賃金及び手当を受ける権利を有するとしています。
雇用主が従業員の雇用契約を解除した場合
1.雇用主が正当な理由なく雇用契約を解除し、従業員が労働法第83条に規定する重大な飛行及び企業の社内規定に規定する重大な非行を犯していない場合。
〇有期雇用契約(Fixed Duration Contract(FDC))の場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払賃金(第116条)
-従業員が雇用契約中に受け取った賃金の少なくとも5%の支払い(第73条)
--少なくとも重要員が雇用契約終了まで受け取るはずだった賃金に相当する損害額(第73条)
〇無期雇用契約(Underterminated Duration Contract(UDC))の場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払賃金(第116条)
-残りの年次有給休暇の買取り(第166条及び第167条)
-雇用者が労働法に沿った解雇通知を怠った場合の支払い(第75条及び第77条)
-従業員が解雇された時期における年功補償、雇用契約中に受け取るはずであった年功補償と同額の年功補償金額(新法第91条)
1.2 従業員が労働法第83条に規定する重大な非行、及び企業の社内に規定する重大な非行を犯した場合、雇用者は雇用契約を解除することができます。
〇FDCの場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払分の賃金(第116条)
-残りの年次有給休暇の買取り(第166条及び第167条)
〇UDCの場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払分の賃金(第116条)
-残りの年次休暇の買取り(第166条及び第167条)
会社が倒産した場合
〇FDCの場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払分の賃金(第116条)
-従業員が雇用契約中に受け取った賃金の少なくとも5%の支払い(第73条)
-残りの年次休暇の買取り(第166条及び第167条)
〇UDCの場合、従業員は以下の権利を有することができます。
-未払分の賃金(第116条)
-残りの年次有給休暇の買取り(第166条及び第167条)
-雇用者が労働法に沿った解雇通知を怠った場合の支払い(第75条及び第77条)
-雇用者が従業員に対して賃金を支払っていない期間の年功補償額(新法第89条)
■年功補償
2018年6月に労働法第89条が改正され、これまでの解雇補償が撤廃され、無期労働契約の従業員に対する年功補償制度が導入されました。これまで有期労働契約の従業員に対し契約期間満了に伴う退職補償の支払いが規定されていたのに対し、無期労働契約の従業員に対してはそのような規定はありませんでした。
企業は、継続雇用中の従業員に、1年間の雇用に対し15日分の賃金を、6月と12月にそれぞれ7.5日分ずつ年功補償を支払う必要があります。雇用期間が6カ月未満であっても、月割りではなく7.5日分満額を支払わなければなりません。
また、遡及適用についても言及されており、2019年以前に雇用されている従業員に対する遡及的年功補償については、以下の通りと規定されています。
A) 縫製業企業(2019年より支払い開始)
過去の勤務期間各1年につき30日分の年功補償を、6月と12月にそれぞれ15日分ずつ支給
B) 縫製業以外の企業(2021年より支払い開始)
過去の勤務期間各1年につき15日分の年功補償を、6月と12月にそれぞれ3日分ずつ、年合計6日分を支給
縫製業以外の企業の遡及的年功補償支払い例
2018年1月1日雇用(無期労働契約)で、1年間の平均給与に対する日当が10米ドルの場合、企業は従業員に対し遡及的年功補償150米ドル(15日分)の支払義務を負うことになり、支払いは下記の表のようになります。
支払年月 | 支払金額 |
2021年6月 | 30米ドル(3日分) |
2021年12月 | 30米ドル(3日分) |
2022年6月 | 30米ドル(3日分) |
2022年12月 | 30米ドル(3日分) |
2023年6月 | 30米ドル(3日分) |
企業の遡及的年功補償15日分の支払い義務を、2021年以降3日分ずつ分割にて支払っていくことになります。ただし、2021年の支払い開始までの間、または支払いを開始してから支払いが完了するまでの間に重大な規約違反、定年退職及び死亡以外の如何なる理由におけても従業員が退職または解雇となった場合、企業は遡及的年功補償の全額を支払わなければなりません。重大な不正行為等の理由により退職または解雇された従業員に対しては、支払う必要はないとされています。
遡及的年功補償の最大支給額は、各年の平均準賃金の6カ月分を超えない金額となります。縫製業では過去6年、縫製業以外では過去30年まで遡って支給することになります。しかし、遡及的年功補償の支払いについては具体的にどの期間の部分から支払うかは明確に規定されてはいません。
■不当解雇
労働法は、雇用主が「正当な理由」無く従業員を解雇した場合、従業員は雇用主に対して、損害賠償金の支払いを求めることができるとしています。
労働仲裁定によると、従業員には損害賠償金の支払いだけでなく、支払いの代わりに再雇用を求めることも可能であるとされています。
再雇用を求める場合、従業員と雇用主の間では解雇通告後も契約関係が存在することになり、雇用主は従業員に対して、その期間中の賃金支払い義務を負うことになります。
集団的解雇と懲戒処分 |
■集団的解雇
雇用主が業務の現状や企業内部の再編成を理由として、従業員の集団的解雇を行うことができます。それを行う際の以下に従う必要があります。
[手続き]
従業員代表に対する書面による通知
[条件]
解雇は、雇用主と従業員代表の希望とは関係なく、以下に当てはまる従業員から解雇をしなければなりません。
・ 専門性が低いセクションの従業員
・ 在職期間の短い従業員
集団的解雇について従業員代表に対する書面による通知を行った上で、従業員の技能、在職期間、家族の有無の順で決められます。ただし、結婚している者は在職期間に1年が加算され、子供がいる者は子供一人毎に1年が加算されて判断されます。
集団的解雇によって解雇された従業員は、雇用主がその後に同じセクションの従業員を雇用する機会がある際に、解雇後2年間は優先的に雇用される権利を有しています。その際、雇用主はこの解雇された従業員に対して、その旨の通知を出し、優先して再雇用できるように努めなければなりません。
■懲戒処分
労働法では、雇用主は従業員に対して懲戒処分を下す場合、当該従業員に対して、企業秩序遵守義務違反を基礎付ける証拠を提示できるようにしておかなければならないとされています。懲戒処分を行う場合には、従業員代表に立会をしてもらい、その上で手続内容に関する議事録を作成させるなどして手続が適正に行われたことについて記録しておき、また懲戒手順について就業規則に定めておくとよいでしょう。
雇用主は従業員に対して懲戒処分を下す場合、当該企業秩序違反行為を認識してから15日以内に、懲戒解雇の場合は、7日以内にこれを行わなければなりません。
雇用主は一つの企業秩序違反行為について、複数回の罰則を課することはできず、また懲戒処分として、「罰金」処分を課することができません。「罰金」とは、従業員が得る賃金を減少させうるあらゆる手段を指すことから、減給処分や給与からの減額等、全て禁止されています。
■懲戒処分の種類
[即時解雇]
従業員に重大な不履行(企業秩序違反行為)があった場合、当該従業員を、事前通知することなく、即時解雇することができます。
[重大な不履行]
A) 窃盗、横領、着服
B) 契約締結時(偽造文書の提示)又は雇用期間中(例えば、怠業、労働契約の文言に従うことを拒否、業務上知り得た秘密や暴露等)の詐欺行為
C) 規律、安全および健康規則上の重大な違反行為
D) 雇用主又は他の従業員に対する暴言又は暴行
E) 重大な不履行を犯すよう、他の従業員を唆す行為
F) 事業所における、政治的プロパガンダ、活動、デモ活動
[事前通知を伴う解雇]
従業員の不履行に、解雇することに「正当な理由」があると認められる程度の重大性が認められる場合、法定の期間に伴った事前通知を行い、当該従業員を解雇することが可能です。
[無給の労働契約停止処分(停職処分)]
事前通知を伴う解雇の一段階軽い処分として停職処分が考えられます。懲戒処分として停職処分を下すためには、就業規則にその旨が記載されている必要があります。なお、従業員数が8名未満でかつ、就業規則を登録していない会社における停職処分の期間は6日以下とされています。
[戒告処分・譴責処分等]
労働法に詳細は規定されていないため、不履行の程度や処分については就業規則にて規定してくことが望まれます。
就業規則 |
■就業規則の規定と作成義務
労働法は、就業規則の作成手順、内容、懲戒規則および小企業の就業規則、就業規則の公布について規定しています。
日本では10人以上の従業員を雇用する事業所では、就業規則を作成しなければなりませんが、カンボジアでは8人以上を雇用するすべての雇用主は就業規則を作成しなければなりません。従業員が8人未満の場合であっても、就業規則を作成・登録することは可能です。
■就業規則採用の手順
カンボジアの就業規則の作成と労働監査官の承認の手順は以下のようになっています。
1. 企業は、従業員の代表との協議の上、企業の設立もしくは8人以上の従業員を雇用するに至った日から3カ月以内に就業規則を作成しなければなりません。
2. 就業規則は、労働監査官により承認を受けた後、有効となります。
3. 就業規則の提出を受けた労働監査官は、60日以内に就業規則を承認しなければなりません。
4. 就業規則は従業員に配布され、容易に目にすることができる場所に置くことが義務づけられています。
なお、就業規則の改訂も、同様の手順によって行われます。
■就業規則の内容と罰則
就業規則には、雇用条件、賃金・手当の計算・支払い、労働時間、休日、通知期間、安全衛生措置、従業員の義務と罰則に関する規定が含まれていなければなりません。
また、賃金は次のように定義されています。
[賃金に含まれるもの]
・ 基礎賃金
・ 残業手当
・ コミッション
・ 賞与
・ 利益分配
・ 祝儀
・ 製品購入時の割引などの対価
・ 法律の規定額を超える家族手当
・ 休日手当
・ 休日手当補償
・ 障害および出産による離職期間中に従業員へ支払われる金額
[賃金に含まれないもの]
・ 健康保険
・ 法律で定められた家族手当
・ 通勤手当
・ 従業員の作業補助のために特定の従業員に特別に支払われる手当
就業規則の規定に反して、従業員が遅刻した場合や、健康・安全措置に従わない場合などには、雇用主は、従業員に何らかの罰則を課すことができます。
しかし、その場合でも、15日以内に免職を行うことはできません。また、従業員が不正を行った後もしくは雇用主がそれを知った後、7日以内に何らかの措置を取らなかった場合には、その従業員の免職権を放棄したものとみなされます。
また、雇用主が同じ不正に対して罰金と重複して制裁を課すことは禁じられています。
労働省より発行される就業規則モデルによれば、以下の内容を含むことが推奨されています
・ 採用条件
・ 採用前手続き
・ 従業員の身上(住所、家庭)について変更があった場合の手続き方法
・ 訓練に関する規定
・ 試用期間に関する規定
・ 業務方法
・ 採用時の健康診断に関する規定
・ 採用後の健康診断に関する規定
・ 深夜労働と時間外労働に規定
・ 休日に関する規定
・ 年間休日、祝日の休み、特別休暇に関する規定
・ 女性従業員の出産休暇に関する規定
・ 傷病休暇に関する規定
・ 労働災害での休業に関する規定
・ 給与、賞与、その他の手当の決定
・ 給与の支払い
・ 給与の減額
・ 欠勤に関する規定
・ 正式な許可のある休暇に関する規定
・ 休暇許可のない欠勤に関する規定
・ 勤務中の備品などの利用に関する規定
・ 企業・機関の建物、場所の利用に関する規定
・ 企業内の出入り
・ 規則違反あるいは重大な違反行為を犯した場合の従業員への処罰
・ 処罰に当たる前の従業員の権利
・ 業務上の衛生、安全に関する命令および対策
・ 上記の命令、対策を守るための従業員の順守義務
・ 業務によるノイローゼおよび労働災害の予防
カンボジアの社会保障制度
社会保険法 |
NSSFの登録
1人以上の労働者を雇用するすべての雇用主は、NSSFへの登録が義務付けられています。NSSFへの登録手続きは、2022年7月5日に制定された労働法の規定に基づいて会社登録、従業員登録、拠出金納付の形式と手続きに関するPrakas No 168/22に規定されています。
雇用主は活動開始後30日以内に登録する必要があり、新規従業員の登録に関しても雇用開始後3日以内に雇用主が登録しなければなりません。
NSSFに登録せず、拠出金を支払わなかった場合は、基本日給の30倍の罰金が科せられることになります。2022年11月25日付の基本日給に関する省庁間Prakas No. 326の施行により、基本日給は20.00米ドルに引き上げられました。したがって 登録がなく、保険料を支払わなかった場合、最高で約600米ドルの罰金を支払う事となります。
*この罰金は、労働者の数に応じて算出されます。
年金制度の拠出
一般的に、拠出は雇用主が毎月行うことになります。
雇用開始から5年間は、従業員の賃金の4%に設定されており、配分は以下の通りです;
- 2%を雇用主が負担
- 2%を従業員が負担
拠出は、NSSFの事務所にて直接拠出する方法以外に、the Advanced Bank of Asia(ABA)のような提携銀行を通じて直接拠出することも可能です。
従業員の年金受給権
従業員は、老齢年金、老齢手当、障害年金のいずれかを受給する権利があります。
また、遺族年金は、上記の年金を受給していた者の遺族が受け取ることができます。
外国人従業員
年金制度は、Sub-Decree第32号第3条に基づき、該当する外国人にも適用され、2つ以上の仕事を持つ者も例外ではありません。
そのため、外国人従業員も保険料を支払う義務があり、年金給付を受ける権利があります。
■適用範囲(事業所と被保険者)
カンボジアでは、老齢年金、傷病手当、遺族手当を含む年金制度と、職務上の傷害を保障し職業病手当を支給する労務災害保険からなる社会保険制度が、2002年9月に制定されました(労働法の規定に対する社会保険制度に関する法律/Law on Social Security Schemes)。
カンボジアの社会保険法は、「国家社会保障基金(NSSF:The National Social Security Fund)」によって運営されています。国家社会保険基金は次のような任務を負っています。
A) 社会保険制度法に従い、労働法の規定に定める対象者のために社会保険制度を運用する
B) 老齢、身体障害、死亡、労務災害による困窮を助けるため、国家社会保険基金加盟者に対し適正な給付を与えることを保証する
C) 国家社会保険基金加盟者と雇用主からの保険料を徴収する
1人以上の従業員を雇用する事業者は、会社設立もしくは1人以上の従業員を雇用するに至った日から30日以内に国家社会保険基金に登録しなければなりません。登録後、雇用主及びよび従業員は、国家社会補償基金(NSSF)への保険料の支払いをする必要があります。
具体的には、以下の従業員がこの法律で保護される対象者となります。なお、カンボジアの労働法の適用を受ける日本企業で雇用される従業員も適用対象となります。
(a) 労働の性質、形態、雇用契約期間、受け取る賃金の額にかかわらず、カンボジア国内で雇用主の為に働く、労働法に定められた全ての従業員
(b) 公務員共通規則や外交官規則が適用されない国家公務員や公共の労働を行う者や、その他同様に一時的に公共サービスに従事する者
(c) リハビリステーション・センターに携わっている訓練生
(d) 自営業の者
(e) 季節従業員または臨時従業員
■社会保険料
国家社会保険基金の月額保険料率は、従業員の平均月額給与に基づき計算されます。月額給与には給与、時間外手当、口銭、報償、利益分配金、チップが含まれます。
カンボジアの保険料率は、労働災害プログラム0.8%、健康保険プログラム2.6%ですが、以下の表の通り、給与額により保険料が規定されています。また、保険料は全額企業負担となります。
[社会保険料(リエル)]
月額給与範囲 | 計算用想定給与 | 労働災害(0.8%) | 健康保険(2.6%) | 合計 |
200,000以下 | 200,000 | 1,600 | 5,200 | 6,800 |
200,001〜250,000 | 225,000 | 1,800 | 5,850 | 7,650 |
250,001〜300,000 | 275,000 | 2,200 | 7,150 | 9,350 |
300,001〜350,000 | 325,000 | 2,600 | 8,450 | 11,050 |
350,001〜400,000 | 375,000 | 3,000 | 9,750 | 12,750 |
400,001〜450,000 | 425,000 | 3,400 | 11,050 | 14,450 |
450,001〜500,000 | 475,000 | 3,800 | 12,350 | 16,150 |
500,001〜550,000 | 525,000 | 4,200 | 13,650 | 17,850 |
550,001〜600,000 | 575,000 | 4,600 | 14,950 | 19,550 |
600,001〜650,000 | 625,000 | 5,000 | 16,250 | 21,250 |
650,001〜700,000 | 675,000 | 5,400 | 17,550 | 22,950 |
700,001〜750,000 | 725,000 | 5,800 | 18,850 | 24,650 |
750,001〜800,000 | 775,000 | 6,200 | 20,150 | 26,350 |
800,001〜850,000 | 825,000 | 6,600 | 21,450 | 28,050 |
850,001〜900,000 | 878,000 | 7,024 | 22,828 | 29,852 |
900,001〜950,000 | 925,000 | 7,400 | 24,050 | 31,450 |
950,001〜1,000,000 | 975,000 | 7,800 | 25,350 | 33,150 |
1,000,001〜1,050,000 | 1,025,000 | 8,200 | 26,650 | 34,850 |
1,050,001〜1,100,000 | 1,075,000 | 8,600 | 27,950 | 36,550 |
1,100,001〜1,150,000 | 1,125,000 | 9,000 | 29,250 | 38,250 |
1,150,001〜1,200,000 | 1,175,000 | 9,400 | 30,550 | 39,950 |
1,200,001以上 | 1,200,000 | 9,600 | 31,200 | 40,800 |
■社会保険給付
[年金制度]
カンボジアの年金制度には老齢年金、傷病年金、遺族年金がまれますが、民間ではまだ実施されていません。
[老齢年金]
55歳以上で、以下の2つの要件を満たす場合に受給資格を有します。
・ 国家社会保険基金に少なくとも20年間加入していること
・ 年金等の受給資格を得る直前の10年間に、少なくとも60カ月間保険料を納めていること
上記要件を満たしていてかつ55歳に到達する前に、労働に適しない状態になった場合に、国家社会保険基金の加入者は年金の申請ができます。
また、社会保険制度の保険料を60カ月未満しか支払わず、かつ失業した者が、他の老齢年金受給資格を満たしていない場合には、当該加入者は一時金として支払われる老齢手当を受給できます。
[傷病年金]
55歳以前に身体障がい者となった者は、以下の2つの要件を満たす場合に受給資格を有します。
・ 最低5年間国家社会保険基金に加入していること
・ 傷病手当金の受給資格を得る直前の12カ月間に、少なくとも6カ月間保険料を納めていること
[遺族年金]
老齢年金または傷病年金の受給資格を満たしている者、あるいは既に180カ月の加入期間がある者が死亡した場合には、その遺族は遺族年金を受給することができます。
国家社会保険基金で、死亡時までに傷病年金の受給資格がない者が、社会保険制度に180カ月間加入していたことを証明できない場合には、身体障害者であるか否を問わずその配偶者、またはその孤児が老齢年期の月額以上に相当する一時金を受給できます。
健康保険と雇用保険 |
カンボジアの健康保険は民間の保険会社によって運営されています。これらの民間の保険会社は、火災、盗難といった生命保険以外の保険も顧客に提供する総合保険会社です。保健省により開発されたカンボジア王国における社会保険マスタープランによれば、労働関係以外のリスクに関する健康保険には、主に多国籍企業や合弁企業、NGOの最高幹部などが加入しています。
カンボジアでは、失業手当も雇用保険のいずれもありません。雇用主が支払う解雇手当が失業手当の代わりに該当します。
■健康保険給付金
カンボジアでは健康保険給付金についての省令が2016年3月17日付で発行されています。これには、保険サービスおよび保険給付金のパッケージが含まれ、以下の規定がされています。
・ 保険サービスは、NSSF、国家プログラム、組織または機関および健康に関するその他の団体によって提供されます。
・ 保険給付金のパッケージには、医療・治療サービス、患者または被害者の輸送サービス、死体輸送サービスおよび日当が存在します。また医療・市長サービスは、入院治療、外来診察、緊急サービス、加熱と理学療法によるサービス、分娩サービス、出産後の治療サービス、リハビリサービスがあります。
健康保険給付金は、慢性疾患の場合においても提供されています。しかしこの場合は、広州医療拠点においてのみ行われ、必須の医薬品のみを使用しなければなりません。この健康保険給付金における慢性疾患に該当するものは、以下となります。
・ 心不全(Cardiac Failure)
・ 心筋症(Cardiomyopathy)
・ B型慢性肝炎(Chronic Hepatitis B)
・ C型慢性肝炎(Chronic Hepatitis C)
・ 慢性腎臓病(Chronic Renal Disease)
・ 肝硬変(Cirrhosis of The Liver)
・ 冠状動脈疾患(Coronary Artery Disease)
・ 糖尿病 1型及び2型(Diabetes mellites Type 1 & 2)
・ 調律異常(Dysrhythmias)
・ 神経多発性硬化症(Multiple Sclerosis)
・ 精神分裂病(Schizophrenia)
・ 全身性紅斑性狼瘡、全身性エリテマトーデス(Systemic Lupus Erythematosus)
・ 高血圧(Hypertension)
・ 地中海貧血症、セラセミア(Thalassemia)
■サービス提供条件と権利
従業員は、医療・治療サービスを受けるために、以下の条件を満たさなければなりません。
・ NSSFの健康保険制度に登録された企業に働いていること
・ NSSFにおいて自身が登録されていること
・ 2か月連続で健康保険料を支払った実績があること。あるいは、健康上の問題による休暇や出産休暇を開始する月までの直近12か月間に最低6か月分の保険料を支払った実績があること
さらに、従業員が日当を受けるためには以下の条件を満たしていなければなりません。
・ 上記の医療・治療サービス条件を満たしていること
・ NSSFの所定の様式に基づいて雇用主から休暇を取ったこと
・ 出産休暇の場合、同休暇を開始する月までに少なくとも9か月連続で保険料を支払った実績があること
上記すべての条件を満たした従業員は、以下のサービスを受ける権利があります。
・ NSSFと契約している保険医療拠点での無償治療
・ 疾病または傷害の治療のために、7日間以上勤務することができない期間における平均日給の70%の日当
・ 疾病または傷害の治療のために、上記同様期間内の雇用主からの給料
・ 患者または被害者の輸送サービス、死体輸送サービスなど
■その他の社会保険制度
カンボジアでは、失業保険制度などの上記以外の社会保険制度はいまだ整備されていません。実務上では、失業保険については、解雇時の退職金や解雇保証金の支給が代用されているというのが現状です。
労働災害 |
カンボジアにおける労働災害とは、労働に起因する、労働時間中、または通退勤中に生じた事故や病気のことをいいます。その原因や過失の有無は問われません。
雇用主は、労働災害が発生しないように予防策を講じる義務を負い、労働災害の被害を受けた従業員に対して補助や医療を提供する必要があります。また雇用主は、従業員の身体や生命の安全を確保するよう配慮する安全配慮義務や健康配慮義務を負います。
労働災害が発生した場合、雇用主は労働災害発生から48時間以内に労働省および国家社会保険(NSSF)に書面での通知を行わなければなりません。
■労働災害補償
[適用範囲(事業所と被保険者)]
カンボジアの労働法の中では、労働災害に対する補償を規定していますが、「保険」として事前に積み立てを強制する仕組みはありません。労働災害補償に該当する「労働に関連した事故」の定義は以下のとおりです。
A) 従業員の過失の有無に関わらず、労働中あるいは労働時間内に事故が発生した場合
B) 場所や仕事の内容、賃金の有無に関わらず、雇用主のために働いている従業員あるいは訓練生の身体に影響を与える事故の場合
また、通勤中の事故も、業務に関連しない理由で迂回等を行った際を除き、労働に関連した事故とみなされます。労働に関連した事故にあった従業員は、その影響により5営業日以上就労できない状態にある場合には、雇用主から補償を受ける権利を持ちます。労働法の適用を受ける日本企業の従業員も対象となります。
雇用主は労働に事故発生後48時間以内に労働省に対して書面で通知しなければなりません。
[労働災害補償給付]
労働災害に対する補償内容は次の通りです。
A) 勤務時の傷害、通勤時の事故、労務疾患が原因となる労務災害に対する医療費および薬代等関連費用すべて
B) 勤務時の傷害、通勤時の事故、労務疾患により一時的に身体障がい状態に陥った場合、就業できなかった日数により補償は以下のように異なります。
一時障がいが4日以下の場合:就業できなかった日数分の日当
一時障がいが5日以上の場合:労働省から承認されている医師が就業を許可する日までの日数分の日当
なお、この規則は永続的身体障がいが身体能力の20%以下の従業員に対しても適用されます。
C) 勤務時の傷害、通勤時の事故、労務疾患により永続的身体障がいとなった場合、身体障害が占める割合により補償は以下のように異なります。
永続的身体障がいが50%以下の場合:
1/2×年収×永続的身体障がいの割合
永続的身体障がいが50%以上の場合:
年収×[25%+1.5×(永続的身体障がいの割合-50%)]
また労働災害により生じた障がいにより、他者からの継続的な介護を必要とする場合には、補償は最大40%増加します。
D) 葬儀料または遺族年金の支給
葬儀料の総額は少なくとも死亡した従業員の平均日当の90倍または月額給料の3ヵ月分とされています。また遺族年金は年間平均賃金に基づいて以下の割合で計算されます。
扶養家族 | 利率 | 合計額 |
配偶者 | 30% | 30%% |
第一子 | 15% | 45%% |
第二子 | 15% | 60% |
第三子以上 | 10% | 70% 〜 85%* |
*合計金額は年間平均賃金の85%を超えることはできません。なお、子どもは16歳以下または未婚である場合に適用されます。
労働環境 |
50人以上の従業員を1つの場所で雇用する場合には、20平方メートル以上の清潔な医務室を設備する必要があります。医務室の看護師、医師の数および診療時間は従業員数に応じて以下のように定められています。
従業員数 | 看護師数(常在) | 医師数 | 8時間のうちの
診療時間 |
50人 〜 300人 | 1人 | 医師1人または
アシスタント1人 | 2時間 |
301人 〜 600人 | 1人 | 医師1人 | 2時間 |
601人 〜 900人 | 2人 | 医師1人 | 3時間 |
901人 〜 1,400人 | 2人 | 医師1人 | 4時間 |
1,401人 〜 2,000人 | 2人 | 医師1人 | 6時間 |
2,0001人以上 | 3人 | 医師1人 | 8時間 |
診療室内のベッド数は最大数を20床として、従業員数の平均2%を設置しておく必要があります。
従業員数 | ベッド数 |
50人 〜 200人 | 2床 |
500人 | 10床 |
1,000人 | 20床 |
また雇用主は従業員数に応じて男女別のトイレを設備する必要があります。
従業員数 | トイレ数 |
1人 〜 15人 | 1 |
16人 〜 35人 | 2 |
36人 〜 55人 | 3 |
56人 〜 80人 | 4 |
81人 〜 110人 | 5 |
111人 〜 150人 | 6 |
151人 〜 1,000人 | 50人毎に1つ追加 |
1,000人以上 | 70人毎に1つ追加 |
従業員が物品を運ぶ場合には以下の通り制限があります。
| 男性 | 女性 | ||
| 15歳 〜 17歳 | 18歳以上 | 15歳 〜 17歳 | 18歳以上 |
直接持ち上げる | 12kg | 50kg | 6kg | 25kg |
一輪車を使用 | 32kg | 80kg | 禁止 | 40kg |
三輪または四輪車を使用 | 48kg | 120kg | 24kg | 60kg |
日本人を駐在させる際の留意点
ビザおよび労働許可証 |
■ビザ
日本人(外国人)がカンボジアで働く場合、ビジネスビザ(業務ビザ)の取得が必要です。
ビザを取得するには、以下の書類を揃えて、カンボジア王国大使館(東京)もしくは名誉領事館(札幌、名古屋、大阪、福岡)で申請を行います。
[必要書類]
・ ビザ申請書
・ 2カ月以内に撮影された証明写真2枚(35mm × 45mm、背景無地)
・ パスポート原本※
※残存期間が申請日より6カ月以上、数次ビザの場合は取得期間に加え残存期間が6カ月以上
取得できるビザについては、ビジネスビザと観光ビザがあります。ビジネスビザと観光ビザは最大の違いは、カンボジア入国後の滞在延長可能日数になります。
ビジネスビザでは、入国後最長1カ月の滞在が可能で、それ以降延長する場合は、プノンペンの内務省で一時滞在の申請を行う必要があります。延長期間は1カ月、3カ月、6カ月、1年の中から選択ができます。6カ月以上のビザはマルチプルビザとなり、期間中に出入国を繰り返し行うことができます。
観光ビザにおいても、入国後最長1カ月の滞在が可能ですが、それ以降の延長可能期間は1カ月のみとなります。
現在オンラインでビザ(e-Visa)の申請、取得が可能となっていますが、これは観光ビザのみ取得可能で、ビジネスビザは取得することができないので、注意する必要があります。
カンボジアに入国した際に、ビジネスビザを取得していれば、1ヶ月以上の延長の申請が可能ですが、観光ビザを取得した場合、最長1ヶ月の延長のみとなり、その期間を超えて滞在する場合は一度国外へ出る必要があります。ビザ申請時にどの種類のビザを取得しているかの確認をしておくとよいでしょう。
また、アライバルビザと呼ばれる、入国する前に現地空港でビジネスビザまたは観光ビザを取得することが可能です。
滞在延長はカンボジア国内のみで行うことができます。在日本カンボジア王国大使館等で1年数次や2年数次といったビザを取得することができますが、これらは指定の期間であれば新たにビザを取得することなく入国できますが、それぞれの入国の滞在期限は1ヶ月間となり、それを超えて滞在をする場合、上記と同様に滞在延長の先生をする必要があります。
ビザ申請書
*ビザ申請書は、在日本カンボジア王国大使館ホームページ(http://www.cambodianembassy.jp/web2/?page_id=424)よりダウンロードできます。
■労働許可証
労働法では、カンボジアで働く外国人に対する要件について規定されており、外国人は、労働省が発行する労働許可証を取得しなければなりません。
労働許可証を取得するためには、以下の要件を満たす必要があります。
A) 合法的に入国していること
B) 有効なパスポートを所持していること
C) 有効な滞在許可を所持していること
D) 就労する職種に適格であり、伝染病に感染していないこと
また、労働許可証取得の際の必要書類は以下の通りです。
(a) 1,000リエル証紙と35mm × 45mmの4枚の写真を添付した申請用紙:1部
(b) 従業員割当許可書(Quota):1部
(c) パスポートのコピー:1部
(d) 登録料130 米ドル
(e) 労働契約書(労働省奨励モデルあり):1部
(f) 6カ月以内に出身国で発行された、その仕事に適することを証明する証明書:1部
(g) 健康診断書(政府指定病院/ヘルスデパートメント発行)
上記の(b)は、企業の雇用主に、カンボジア人従業員と外国人従業員の数を申告することを求めています。これは、外国人従業員の比率が第161号大臣令で認められた割合(10%以内)を超えてはならないためです。
上記の(e)の労働契約書は2年間有効であり、2年後経過後に再度提出が必要となります。
労働許可証取得の前提として、会社は労働省への事業所開設申請および従業員割当の申請などが完了している必要があるので、注意が必要です。
上記の(g)の発行所について、主な選択肢として政府指定病院やヘルスデパートメントとなっておりますが、「その他」という選択肢もあります。これは、どのような機関を指すかは明瞭ではありません。私立病院や医療機関などの該当しない機関において適用される項目と考えられております。
私立医療機関などで健康診断は行うことができ、申請の際に「その他」を選択し、当該私立医療機関で発行された証明書を添付することとなります。しかし、その証明書は労働医療局から認証を受ける必要があります。事前にオンラインシステムによって当該局に対して20,000リエル(約5米ドル)の費用を支払う必要があります。
労働許可証の取得には3カ月から半年程度の時間を要する上、申請には労働省による健康診断受ける必要ありますがその健康診断が12月から3月頃にしか行われていない等により、許可証を所持していない外国人従業員が多いのが実情でした。しかし、近年労働省により外国人労働許可証の運用厳格化の動きが見られています。
労働許可は毎年更新する必要があり、労働省からは、毎年1月~3月末までに更新を行うよう指導が行われています。
労働許可証の申請は、カンボジア労働職業訓練省のホームページからオンラインで行うことが可能です。労働職業訓練省は、外国人の雇用・労働を管理するため、2016年9月より電子化による外国人労働のデータ管理システム(The Foreign Worker Centralize Management System、以下FWCMS)を労働省ホームページ(www.fwcms.mlvt.gov.kh)にて運用しています。事業者は、従業員割当表及び外国人従業員の労働許可の申請を、上記のホームページにより行わなければなりません。
下記の労働省ホームページより、以下の手順にて行います。なお、以下の手順は初めて労働許可証を申請する場合のものです。
1. 労働省ホームページよりFOREIGN WORKERのREGISTERを選択
2. 企業情報の入力
3. 個人情報の入力及びパスポートのアップロード
4. ビザ情報の入力及びビザ、入国スタンプ、滞在許可証のアップロード
5. 就労情報の入力及び雇用契約書のアップロード
6. 健康診断書取得日の入力およびアップロード
7. 連絡先情報の入力、パスワードの設定および写真、居住証明書のアップロード
8. 入力情報の確認、提出
1. 労働省ホームページよりFOREIGN WORKERのREGISTERを選択
2. 企業情報の入力
3. 個人情報の入力及びパスポートのアップロード
4. ビザ情報の入力及びビザ、入国スタンプ、滞在許可証のアップロード
5. 就労情報の入力及び雇用契約書のアップロード
6. 健康診断書取得日の入力およびアップロード
7. 連絡先情報の入力、パスワードの設定および写真、居住証明書のアップロード
8. 入力情報の確認、提出
最後に、入力した情報、アップロードしたファイルを確認し、提出を行えば申請は完了となります。
駐在員の給与設計 |
■日本-カンボジア間の給与格差問題
カンボジアに赴任する駐在員に対して給与を支払う場合、日本とカンボジアで給与計算方法、適用税率に差があることから、その支給にあたっても一律日本と同様という訳にはいかず、給与額の設定、支給形態等の検討が必要です。
日本とカンボジアでは適用税率に差があるため、日本と同様の給与を支払うと手取給与額が低くなる場合があります。
[日本 – カンボジア税率比較表]
日本の給与所得控除額(単位:円)
給与等の収入金額 | 給与所得控除額 |
650,000以下 | 全額 |
650,001 〜 1,625,000 | 650,000 |
1,625,000 〜 1,800,000 | 収入金額 × 40% |
1,800,001 〜 3,600,000 | 収入金額 × 30% × 180,000 |
3,600,001 〜 6,600,000 | 収入金額 × 20% × 540,000 |
6,6000,001 〜 10,000,000 | 収入金額 × 10% × 1,200,000 |
10,000,000超 | 収入金額 × 5% × 1,700,000 |
日本の所得税率(単位:円)
課税所得 | 税率 | 速算用(マイナスする) |
1 〜 1,950,000 | 5% | 0 |
1,950,001 〜 3,300,000 | 10% | 97,500 |
3,300,001 〜 6950,000 | 20% | 427,500 |
6950,001 〜 9,000,000 | 23% | 636,000 |
9,000,001 〜 18,000,000 | 33% | 1,536,000 |
18,000,001 〜 18,000,000 | 40% | 2,796,000 |
40,000,000超 | 45% | 4,796,000 |
*年収ベース
カンボジアの給与税率(単位:リエル)
課税所得 | 税率 | 給与税計算 |
0 ~1,200,000 | 0% | (月額所得 × 0%) |
1,200,001 ~ 2,000,000 | 5% | (月額所得 × 5%) – 60,000 |
2,000,001 ~ 8,500,000 | 10% | (月額所得 × 10%) – 160,000 |
8,500,001 ~ 12,500,000 | 15% | (月額所得 × 15%) – 585,000 |
12,500,001 ~ | 20% | (月額所得 × 20%) – 1,210,000 |
*月収ベース(カンボジアは毎月の給与税の申告・納付で完結し、確定申告という制度がないため、月単位で考える必要があります。)
付加給与税(Tax on Fringe Benefit)
付加給与とは、給与所得者が本来の給与のほかに受ける経済的利益をいいます。簡単に言えば、会社が経済的な負担をして行う福利厚生のことです。例えば、以下のようなものが含まれ、一律20%の税率が課されます。
・ 社用車の個人使用
・ 私的な飲食費や宿泊費、水道光熱費
・ 個人への住宅手当の支給(施設や使用人の費用も含む)
・ 優遇利率の貸付金や社内割引販売
・ 社員教育費(業務に関係がないものに限る)
・ 一定の保険料の会社負担分(全従業員に均等に付されるものを除く)
・ 社会保険料(全従業員に均等に付されるものを除く)
・ その他の福利厚生費
■日本とカンボジアの所得税計算事例
[前提条件]
40歳 男性 日本での年収:650万円 扶養:なし
*社会保険料は、ここでは考慮しません。
*ここでは1円 = 50リエルとします。
日本での所得税計算例
| 日本 | 円 |
A | 基本給与 | 6,500,000 |
B | 給与所得控除 | 1,300,000 |
C (A – B) | 総所得金額 | 5,200,000 |
D | 所得控除額 | 540,000 |
E (C – D) | 課税所得金額 | 4,660,000 |
F | 所得税額 | 244,000 |
G | 住民税額 | 343,000 |
H (F + G) | 税額合計 | 587,000 |
I (A-H) | 差し引き手取額 | 5,913,000 |
カンボジアでの給与税計算例
| カンボジア | 円 | リエル |
A | 基本給与 | 6,500,000 | 325,000,000 |
B | 給与所得控除 |
|
|
C (A – B) | 総所得金額 | 6,500,000 | 325,000,000 |
D | 所得控除額 | 0 | 0 |
E (C – D) | 課税所得金額 | 6,500,000 | 325,000,000 |
F | 所得税額 | 1,009,600 | 50,480,000 |
G | 住民税額 |
|
|
H (F + G) | 税額合計 | 1,009,600 | 50,480,000 |
I (A-H) | 差し引き手取額 | 5,490,400 | 274,520,000 |
このように、年収650万円の駐在員がカンボジアで給与を受け取った場合には、約42万円手取額が少なくなります。
■手取額を一致させるグロスアップ計算
前述のように、日本とカンボジアの所得税率の違いにより、給与がよほど高額でない限り、カンボジアに赴任することで手取額が減るケースが多くなります。
そのため、日本で受け取っていた際の手取額を補償するためのグロスアップ計算を赴任前に行うケースがあります。
上記の事例の場合でグロスアップ計算を実施すると、年間給与が約703万円の給与の場合に、手取額が約591万円とほぼ同額となり、赴任前の給与を保証することができます。
つまり、703万円 -650万円=53万円を上乗せして支給する必要があります。給与額によって、上乗せすべき金額は異なりますが、多くの場合50万円近くもしくはそれ以上の上乗せが必要となりますので、事前に支給額の検討が必要です。
■日本側とカンボジア側の分割支給
カンボジアの税法上、カンボジア居住者は国内外全ての所得を申告し、納税しなければなりません。しかし、実務上駐在員の給与設計において、カンボジア側と日本側で給与を分けて支給しているケースが多くあります。
ただし、カンボジア側の給与をあまりにも低く設定してしまうと、税務調査において、日本人駐在員の給与の低さを指摘され、みなしの給与額と実際給与額の差分に対する未払い給与税の追徴課税を受けるなど、税務務上トラブルとなる可能性が有ります。
例えば、税務当局側が認識している工場長クラスの給与市場価格が月額約3,000米ドルとなっています。そのため、月額給与額1,000米ドル等、税務当局の認識している給与額を大きく下回る金額で設定してしまうと、将来的な税務リスクとなる可能性が高くなります。
駐在員の確定申告 |
確定申告とは、個人の所得税が1年間の合計所得税を計算し、申告する制度です。日本では、1月1日から12月31日までの所得を計算し、翌年の2月中旬から3月中旬までに申告する必要があります。
■カンボジアの場合
カンボジアでは、年間の所得税を調整する確定申告の制度はなく、毎月の給与税の支払いで全て完結しています。つまり、年末または年度末調整などがありません。
■所得税の納税について
日本もカンボジアも全世界所得制度が施行されております。したがって、日本でもカンボジアでも、国内源泉所得と国外源泉所得のどちらも各国で納税義務を負っています。これをそのままにしておくと、駐在員の方は両国で納税していることとなり、「二重課税」で余分に多くの税金を払っていることになります。
この「二重課税」を避けるために、日本では「外国税額控除制度」を適用することができます。この制度を使用することにより、カンボジアで支払った税額分を日本で支払った税額分から控除することが可能となります。必要書類などについては、日本の国税庁のホームページより確認することができます。
一方カンボジアでは、カンボジア国外で得る所得に対して控除できる制度はあり、申請することは可能です。しかし、適用されている事例がほとんどないという実情があります。また、控除されたとしても、全額ではないため、二重課税は避けられません。
しかし、日本とカンボジアの両国で二重課になると個人の負担が大きくなるため、少なくとも日本では控除の申請をしておく方がよいでしょう。
確定申告を社内で処理している企業は、外国税額控除制度が適用されているかを確認し、また外部に委託している場合も、同制度が適用されているかを確認する必要があります。
参考文献
・ 総務省 カンボジア2008年人口センサス確報結果報告書全国編 統計表
・ ILO Ministry of labor and social welfare
・ ラオス、カンボジアの社会保障制度
・ OVTA カンボジア-雇用労働関係法令
・ 2011年度第63回日本人口学 カンボジアの職業別人口構造
・ Guide to the Cambodian Labor Law for NGOs
・ National Social Security Fund of Cambodia
・ 総務省 カンボジア2013年中間年人口調査分析レポート
・ Cambodian-Labour-Law-Guide-English-2014
・ 労働職業訓練賞省ホームページ(www.fwcms.mlvt.gov.kh)
雇用主は従業員を雇用もしくは解雇した場合、労働省に通知を行う義務を負います。採用時、現地従業員および外国人従業員に対して、雇用カード(Employment Card)および雇用
ブック(Employment Book)を支給する必要があります。外国人従業員に対して、労働許可証も求められますが、雇用カードと労働許可証は同じ1つのカードとなっています。
本手続は、入社後7日以内に実施される必要があり、その費用は従業員に負担させることができます。しかし現状、企業が費用を負担しているケースがほとんどです。
掲示
全ての雇用主は事業登録簿と給与台帳を3年間保管しておき、労働監督官がいつでも閲覧できるようにしておく必要があります。給与台帳には各従業員の情報、給与、実施業務、休暇を記載する必要があります。
なお給与台帳は労働監督官による番号付けとサインが全てのページされていなければ効力がないとされます。
雇用カード・雇用ブック
会社を設立しようとする者は、開業日までに労働局に届け出を行わなければなりません。但し、8人未満の従業員を雇用する場合で、且つ機械を使用しない場合は開業日から30日以内の届け出が認められています。会社を閉鎖する場合も同様に、閉鎖日から30日以内に労働局へ届けなくてはなりません。また 雇用主は新規採用または解雇を行う度、労働を管轄する省に宣言を行う必要があります。
給与台帳