閉鎖・撤退
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
撤退
中国に進出した日本企業が、さまざまな理由で事業の継続が困難となり、撤退を余儀なくされる場合があります。撤退の主な理由として、競争激化による業績悪化に伴う経営の行き詰まりや、合弁相手との経営理念や経営方針の食い違いが浮き彫りになる等があります。中国からの撤退には実務的に多くのハードルがあり、スムーズに進まないのが実情です。
撤退を想定せずに中国進出を行った企業が、撤退する際に予想をはるかに超える損害を負うケースもあります。このような事態を招かないためにも、万一の場合に備えて、撤退に関する戦略をあらかじめ立案することが重要です。
本章では、中国から撤退する際の手続上の流れや留意点・問題点等について述べていきます。
現地法人の主な撤退方法として、持分譲渡、事業譲渡、解散・清算、破産の4つが考えられます。それぞれの法的要件、効果等を考慮し、どの方法を選択すべきかを判断します。
持分譲渡
持分譲渡とは、外国投資者が、外商投資企業の出資持分を譲渡し、外商投資企業から撤退する方法です。この方法は、撤退だけでなく、グループ内の中国事業再編を行う際にもよく利用されます。
持分譲渡のメリットは、清算等の煩雑な手続が必要ない点です。現地法人は既に外国企業として認可を受けて設立された会社なので、譲渡先の第三者が中国企業やその他外国企業を問わず、譲渡認可が下りない可能性は低いと考えられます。
一方で、譲渡相手の会社が見つからなければ、譲渡を行うことはできません。譲渡価格やその他の条件面での合意が必要であるため、希望する条件を満たさなければ撤退が先送りになるというデメリットもあります。合弁企業であれば、譲渡価格などの条件について、董事会の承認を取り付けなければならないという点にも注意が必要です。
外国投資者の持分譲渡の根拠規定は、対外貿易経済合作部(現商務部)および国家工商行政管理局より公布された外商投資企業投資者の持分変更についての規定です。
持分譲渡の手続
持分譲渡を行うための流れは次のとおりです。
■譲渡の決議、譲受側の確定…❶
譲渡価格を算定し、譲渡契約書を作成したら、董事会の決議を行います。
■出資者の同意…❷
持分譲渡を行うには、他の出資者の過半数の同意が必要です。通常、合弁企業や合作企業では、一方の当事者が持分譲渡を行う場合、相手方にその持分の優先購入権があることが多いため、合弁・合作相手以外の第三者が持分を譲り受ける場合は、相手方の持分譲渡に対する同意と優先購入権の放棄の両方について記載した文書を作成する必要があります。
■対象会社の決議、譲渡契約の締結…❸
当決議は定款の変更に当たるため、3分の2以上の董事が出席する董事会で出席董事全員の同意が必要です。譲渡契約は、譲渡人と譲受人が持分譲渡の条件(金額や譲渡のタイミング等)を譲渡契約書にまとめ、締結します。
■審査認可機関への申請…❹
会社を設立した時の審査認可機関へ出資者の変更を申請します。申請後30営業日以内に認可の判定が行われます。
■登記機関の変更登記…❺
企業は認可機関が持分変更を認可した日から30営業日以内に、認可機関で外商投資企業の認可証書(批准証書)の変更手続を行う必要があります。中国側出資者が企業のすべての持分を譲り受けた場合、認可機関が持分譲渡を認可した日から30営業日以内に認可機関に批准証書を返却し、取消の手続を行わなければなりません。
出資者名は営業許可証の記載事項で、持分譲渡をするときには、法律上、変更登記をすることが義務付けられています。
企業は、外商投資企業の認可証書を変更または返納ならびに取消した日から30営業日以内に、工商行政管理局で関連規定に従って登記の変更手続を行う必要があります。
申請書類
持分譲渡を行う際、外商投資企業は認可機関に以下の書類を提出します。
・出資者の持分譲渡申請書
・合弁・合作契約書、定款およびその変更に関する董事会決議書
・企業の認可証書および営業許可証(コピー)
・出資者の持分譲渡に関する董事会決議書
・出資者が持分を譲渡した後の董事会の構成員名簿
・譲渡する側と譲渡を受ける側が締結し、かつその他の出資者による署名またはその他の書面による同意を得た持分譲渡契約書
・譲渡先が外国法人の場合、その所在国の公証機関による公証を経た、所在国の中国大使館または領事館の認証済みの資格証明書類
・認可機関が要求するその他の書類
国有資産を出資した中国側出資者が持分譲渡を行う場合は、外商投資企業は認可機関に以下の書類を提出する必要があります。
・中国側出資者が持分譲渡契約書に署名することに関する当該出資者の主管部門の意見書
・譲渡持分の発行する国有資産評価機構の資産評価報告書
・資産評価報告の発行に関する国有資産管理部門の確認書
持分譲渡契約書
持分譲渡契約書には以下の事項を記載します。
・譲受側の名称、住所、法定代表人氏名、職務、国籍
・譲渡持分額およびその価格
・持分引渡しの期限および方法
・合弁契約書、定款に記載される譲受側の権利と義務
・違約責任
・適用する法律、紛争解決方法
・契約の効力の発生・終止条件
・契約の成立日と場所
持分譲渡契約書および合弁・合作契約書、定款変更に関する協議書は、外商投資企業の批准証書の変更が認可された日から発効するという点に注意が必要です。認可を得て初めて、変更後の契約書や定款の規定が効力を持つことになり、関連する権利と義務が発生します。
譲渡価格
外国出資者側から他の外国側出資者に持分を譲渡する場合には譲渡価格についての規制はありません。
ただし、国有資産を保有し投資を行っている中国側出資者の持分比率が変更されるような持分譲渡は、国有資産管理部門に登録された資産評価事務所による評価を受ける必要があります。評価の結果については、国有資産管理部門に確認してもらわなければなりません。評価結果は、持分の譲渡価格の根拠となります。
事業譲渡
事業譲渡とは、会社の法人格をそのまま存続させる一方で、その事業を別の会社に譲渡することをいいます。日本では、事業再編などでこの手法を用いますが、中国では事業譲渡について明確に定めた法律がありません。そのため、一般的に会社財産の個別譲渡になります。
■株主会または董事会決議…❶
事業譲渡は、会社の重要な意思決定事項となるため、最高意思決定機関である株主会または董事会にて、譲渡対象財産、譲渡相手、譲渡価格についての決議を行います。
■譲渡価格の確定…❷
譲渡価格を決定するためには、財務デューデリジェンス、法務デューデリジェンスの他、必要に応じて譲渡対象事業特有のリスク評価などを行い、譲渡側・譲受側との交渉を経て価格を確定します。譲渡対象資産に国有資産が含まれる場合は、国有資産評価も必要となります。
■雇用関係の変更に伴う協議…❸
譲渡事業とともに従業員も譲受側企業との雇用関係になる場合は、雇用主が変更となるため、従業員との協議の上、合意を得る必要があります。事業譲渡によって従業員との雇用契約を解除する場合についても協議を行い、合意を得て経済補償金を支払う必要があります。
特に、譲渡側・譲受側の双方からも雇用される予定のない従業員を契約解除とする場合や、勤務地や賃金等の労働条件が変更となる場合は交渉が難航する可能性があるため十分に注意すべきです。
■譲渡契約書の締結…❹
譲渡側・譲受側との間で、譲渡対象財産およびその詳細、譲渡日、譲渡価格、譲渡金額の支払方法などを定めた契約を締結します。
■債権者への通知・協議…❺
譲渡会社が第三者に対して債務を負う場合、この債務を譲受会社に承継させるためには、債権者の同意を得る必要があります(契約法84条)。その他、第三者と締結していた契約の承継などについても、必要に応じて三者間で協議の上、契約を結びます。
解散・清算
解散・清算とは、会社法および外商投資法に基づき、外商投資企業から撤退する方法です。外商投資企業の解散・清算は行政プロセスによる清算、司法プロセスによる清算に分類できます。行政プロセスによる清算手続は、さらに普通清算手続と特別清算手続に分類されます。
合弁企業を含む外商投資企業の清算は主に商務部(旧対外貿易経済合作部)が公布した外商投資企業清算弁法が適用されます。また、民法通則、民事訴訟法の清算に関する規定等も適用されます。
解散・清算の事由
会社法や外商投資法上、解散・清算の手続を行うためには、一定の要件が必要です。各事由により清算・解散のプロセスが異なります。
行政プロセスによる清算
通常の清算プロセスとして、行政プロセスによる清算があります。このプロセスでの清算事由として以下のようなものがあります。
・定款や合弁契約・合作契約上の解散事由が発生した場合
・経営の継続が困難になるほどの重大な瑕疵が発生した場合
・自然災害や戦争などの不可抗力により重大な損失を被り、事業の存続が困難になった場合
・経営目的が達成できず、また発展する見込みもない場合
・合弁や合作の相手方の契約違反によって、合弁・合作企業の経営存続が困難になった場合
・株主会が解散の決議を行った場合
・会社合併・会社分割のため解散が必要となった場合
司法プロセスによる清算
行政プロセス以外の清算には、人民法院(中国の裁判所)による解散を命じる判決を得て行う手法があります。このプロセスでは以下のようなものが清算事由として挙げられます。
・会社が株主会または株主総会を2年以上開催できず、会社の経営管理に著しい困難が生じた場合
・株主による議決において、法廷または会社定款に定める客足数に到達することができず、かつ連続2年以上有効な株主会または株主総会決議を行うことができず、会社の経営管理に著しい困難が生じた場合
・会社の董事が長期にわたり対立し、かつ株主会または株主総会によっても解決できず、会社の経営管理に著しい困難が生じた場合
・経営管理において、著しい困難が生じ、会社を引き続き存続させることが株主の利益に重大な損失を与える場合
上記の事由があれば外商投資企業の持分、株式の10%以上を保有する株主は、人民法院(中国の裁判所)に対して会社の解散を請求することができます(会社法181条5項、183条)。このプロセスでの清算の要件立証は非常に困難で、認められるのは実務上かなり難しいとされています。
事前の認可を不要とする事由
以下の事由においては、事前の認可は必要ありません。
・経営期間の満了
・営業許可証が取り消され、会社の閉鎖や取消が命じられた場合
清算委員会
会社法181条1項(会社定款で定める期間が満了したときまたは会社定款で定めるその他の解散事由が生じたとき)、2項(株主会または株主総会で解散を決議したとき)、4項(法により営業許可証の取消、閉鎖命令を受けまたは廃止されたとき)、5項(人民法院が司法プロセスによる申立によって解散させたとき)の定めにより解散するときは、解散事由が生じた日から15日以内に清算委員会(清算組)を設置し、清算を始めなければなりません(同法184条)。
普通精算と特別精算で若干内容が異なります。外商投資企業清算弁法に基づき、企業の董事会が清算委員会を組織できるか、また大きな支障があるかにより、普通清算手続または特別清算手続のいずれかが適用されます。
企業が自ら清算委員会を組織して清算が可能な場合は、普通清算手続を採用します。一方、企業が自ら清算委員会を組織して清算ができない場合は企業の董事会等の意思決定機関、投資者、債権者は、審査認可機関に特別清算を申請します。これは普通清算の規定に従って行う清算では、深刻な障害(企業が重大な法的責任に問われるなど)が生じる場合も同様です。
■普通清算手続
ほとんどの企業の清算手続は普通清算の方法で行われています。これには、外商投資企業の審査認可機関による審査認可が必要です。会社設立時とほぼ同じ手順ですが、申請理由により提出資料が異なります(会社法181条1項~4項)。
清算期間は、外商投資企業清算弁法で180日以内と規定されていますが、商務局等の認可を得ることで90日延長することができます。清算期間中にある企業は新たな経営活動を行うことはできません。清算開始前180日間に以下の行為を行った場合は無効となります。
・財産の無償譲渡、低廉譲渡
・担保の設定
・債務の期限前返済
・債権放棄
[董事会決議]…❶
清算は企業の3分の2以上の董事が出席した董事会で出席董事の全会一致による決議が必要です。
[清算委員会の設立]…❷
清算開始日から15日以内に董事会は3人以上の構成員による清算委員会を組織しなければなりません。清算委員会の構成委員には外部の専門家を入れることもできます。清算開始日は、経営期間満了日、認可期間の清算認可日、人民法院または仲裁機関の裁決日のいずれかになります。
[行政機関等への清算通知]…❸
清算開始日から7日以内に以下の機関に清算事由等を書面で通知します。
・主管部門および審査認可機関
・税関
・外貨管理局、口座開設銀行
・財務、税務機関
・工商行政管理局
[債権者保護手続]…❹
清算委員会は清算開始日から10日以内に書面で既知の債権者に通知をし、それと同時に、全国1紙と当地の省または市の新聞1紙で公告しなければなりません(第1回公告)。その後、50日以内にさらに最低1回の公告が必要です。
債権者は通知書の受領日から30日以内に、通知書を受理していない債権者は第1回公告日から90日以内に、債権に関する証明書を添付した上で清算委員会に債権を申告します。
[債権確定と弁済順位の確定]…❺
債権確定
債権者が届け出た債権は、清算委員会で登記を行い、債権を査定した後、査定結果を書面で債権者に通知します。査定結果に対して異議のある場合、債権者は書面通知を受理した日から15日以内に清算委員会に再査定を請求することができます。再査定の結果に対して異議のある場合は、再査定結果の書面通知の受領日から15日以内に仲裁、訴訟を起こすことができます。
弁済順位
清算を行う際、債務の弁済順位は以下のとおりです。
・担保付債権
・清算費用(清算財産管理の弁護士費用等)
・労働債務・税金
・その他の一般債務
[残余財産の処分と清算報告]…❻
残余財産がある場合は出資比率に応じて出資者に分配されます。清算委員会は清算作業終了後、清算報告書を作成し、審査認可機関に以下の内容を届け出ます。
・清算事由、期間、課程
・債権債務の処理結果
・清算財産の処理結果
[登記抹消手続]…❼
清算報告書を審査認可機関へ提出した日から10日以内に、清算委員会は税務機関、税関でそれぞれの登記の抹消手続を行います。清算委員会は税務登記の抹消手続を終了した日から10日以内に、清算報告書および税務機関、税関の登記抹消証明書を添付して、工商行政管理局に提出します。抹消手続完了後、全国紙1紙と当地の省または市の新聞1紙により企業の終了を公告する必要があります。
■特別清算手続
企業が自ら清算委員会を組織して清算することができない場合や、普通清算を行うことに重大な障害がある場合には、商務局等に認可を得ることにより特別清算手続を行うことができます。この場合の普通清算手続との相違点は主に以下の2つです。
清算委員会
特別清算では、審査認可機関またはその委任した部門が出資者、関係機関の代表とその関係する専門家により構成される清算委員会を設立します。
清算委員会には主任を1名置き、審査認可機関またはその委任した部門が指定します。清算委員会の主任は特別清算期間中に企業の法定代表人の職権を行使し、清算委員会は企業の権力機構の職権を行使します。清算委員会は、清算に関する事務処理について審査認可機関に報告します。
債権者保護
清算委員会は、企業の権力機構の会議と債権者会議を招集し、清算に関する具体的な事項を検討することができます。
債権者会議の設置は特別清算手続の特徴の1つです。すべての債権者が債権者会議の構成員となり、議決権を有します。清算委員会は、債権者会議開催の15日前までに、書面で債権者に通知しなければなりません。債権者会議に出席できない債権者は、委任状とともに代理を出席させなければなりません。債権者会議は以下を行います。
・債権者の提出する債権に関する証明資料および債権金額、担保状況の審査
・債務の弁済状況を把握し、清算案および債務弁済清算状況について清算委員会へ債権者の意見を提出
清算方法について、普通清算では審査認可機関への報告のみですが、特別清算では認可を受ける必要があります。
破産
企業破産法(以下、破産法)は、2007年6月1日より施行され、従来の企業破産法(試行)は廃止されました。企業が期限の到来した債務を弁済できない場合、かつ資産の全部の債務の弁済に満たない、または明らかに弁済能力を欠く場合、債務を整理するときに破産法が適用されます。
破産を申立てるには、以下のいずれかの要件を満たす必要があります(同法2条)。
破産手続
破産手続は以下のように行います。
■破産申立…❶
破産申立を行うことができるのは債権者、債務者、清算の責任を負う者です(破産法7条)。破産申立書記載事項は以下のとおりです。
・申立人、被申立人
・申立目的
・申立の事実と理由
・人民法院が必要と認めるその他の書類
債務者が破産を申立てる場合、破産申立書以外に財産状況に関する説明、債務リスト、債権リスト、関連財務諸表、従業員の配置計画および従業員の給与の支払、社会保険料の納付状況に関する資料を提出する必要があります。
■破産公告・通知…❷
破産申立が受理された場合、受理の決定の日から5日以内に、申立人に通知するとともに管財人を指名します。人民法院は、受理を決定した日から25日以内に既知の債権者に通知し、かつ公告します。
不受理の場合は、5日以内にその旨を申立人に通知し、受理されなかった理由を説明します。
債務者は、申立に意義のある場合、7日以内に人民法院に異議申立を行い、人民法院は異議申立期間満了日より10日以内に受理の是非を決定します。
債務者は申立に異議がない、または債務者が自らの破産を申立てる場合、人民法院は破産申立を受理した日より15日以内に受理の是非を決定しなければなりません。特別な事由があり、決定受理期間を延長する必要がある場合は、一級上の人民法院の認可を受けて、15日まで延長することができます(破産法10条)。
■人民法院による管財人の指名…❸
管財人は人民法院により指名されますが、債権者会議は債権者から不服がある場合、その更迭を人民法院に求めることができます。
管財人は、関連所管部門(機関)の人員により清算チームを編成し、法律事務所、会計士事務所、清算事務所等の仲介機構により担当することができます。管財人の職責は破産財産の保管、整理、評価、処分、および分配について責任を負い、必要な民事活動を行うことにあります。
■債権者による債権届出…❹
人民法院が破産申立を受理した後、債権者の債権届出機関を決定します。債権者の債権届出の期限は、公告の日から30日~3カ月の範囲で人民法院が決定します。
債権者は債権届出の期限以内に書面により、人民法院に債権を届出て、債権額および担保の有無を説明し、関連証明資料を提出します。期限が経過しても届出がない場合には、破産財産の最終分配まで債権を追加で届出ることができます。しかし、既に分配した債権の調整は行うことができません。
■債権者集会の開催…❺
第1回債権者会議は人民法院が招集し、債権届出期間の経過後15日以内に開催します。初回以降の同会議は、人民法院が必要と認めたとき、または管財人、債権者委員会、債権総額の4分の1以上を占める債権者により債権者会議の開催を提案するときに開催します。債権者会議は債権の査定、管財人の選定、監督財産の処理と分配方法または再生計画ならびに和解案などについて検討し、決議を行います。債権者会議の決議は、すべての債権者に対して等しく拘束力を持ちます。
債権者会議は債権者代表、債務者従業員代表1名(または労働者組合代表)からなる債権者委員会を設置し、債務者の財産管理、処分、破産財産の分配を監督させることができます。
■破産宣告…❻
人民法院が破産法に基づき、債務者の破産宣告を裁定する場合、破産宣告の裁定の日から5日以内に債務者および管財人に裁定書を送付し、10日以内に既知の債権者に通知ならびに公告します。債務者の破産宣告後、債務者を破産人、債務者の財産を破産財産、破産申立受理時において債務者に対する債権を破産債権と呼びます。
■債務確定と弁済順位の確定…❼
管財人の提出した財産分配案は、債権者会議において討議・採択された後に人民法院の裁定を経て管財人が執行します。弁済順位は以下のとおりです。
①担保付き債務
②破産費用および公益債務
③労働債務
④税金
⑤その他一般破産債務
■財産分配…❽
管財人の提出した財産分配案は、債権者会議において討議・採択された後に人民法院の裁定を経て管財人が執行します。
■破産手続の終結…❾
破産財産の分配が完了した場合には、管財人が人民法院に対して破産財産の分配報告書を提出し、破産手続の終結を申立てます。人民法院は管財人による破産手続終結の申立を受理した日から15日以内に破産手続の終結の可否を裁定します。破産手続の終結後10日以内に管財人は、破産人の元の登記機関で登記の抹消を行います。
各撤退方法の比較と留意点
撤退の各手法について、その要件や効果を比較すると、次の表のようになります(法的な定めがないため事業譲渡は除く)。
撤退スキームを選定する際は、会社のガバナンスの状況や撤退完了するまでのコストなどを総合的に勘案し、どれが最も適切かを選定する必要があります。
撤退を行う際に各方法に共通して発生する問題として、労働問題や労使間の紛争が挙げられます。スムーズな撤退を実現するために、どのように解決すればよいかを知っておく必要があります。
■労働問題
撤退や事業再編においては、労働者の削減や各種の調整が必要となります。中国では労働者の雇用維持や就労機会の確保を重視する施策をとっているため、労働者自身との利害の対立が発生する可能性もあります。
撤退する際は、労働者への対応を慎重に行わなければなりません。
中国の労働者の削減・整理に関する制度は、以下のとおりです。
[労働契約の終了]
有期雇用契約者については、期間満了時に更新しなければ契約終了となります(労働契約法14条)。この場合、更新しない旨を労働者に書面で通知し、受理の確認を得る必要があります。この際に、被雇用者の勤続年数に応じて経済補償金を支払わなければなりません(同法46条)。
無期雇用契約者については、雇用者と被雇用者との合意の上で労働契約の解除を行うことができます(同法36条)。撤退は通常、雇用者側から解除の申し出を行うため、有期雇用契約の非更新時同様、経済補償金を支払う必要があります。
撤退に際しては、労働契約法40条に定める「労働契約の締結時に想定していた企業の客観的状況に重大な変化が生じ、契約の履行ができなくなった」場合として30日前の予告か、1カ月分の賃金支払を行うことで労働契約の解除を行うことができます。この場合も、経済補償金の支払が必要となります。
[包括的な人員削減]
整理解雇
企業の破産、または労働契約の締結時に想定していた企業の客観的状況に重大な変化が生じ、契約の履行ができなくなった場合は、従業員を解雇する30日前までに労働組合や従業員全員に説明・意見聞き取りを行い、管轄の労働行政管理部門に報告をします。それにより20名以上の従業員または従業員全体の10%以上の人員を解雇することができます(労働契約法41条1項)。この場合も経済補償金の支払が必要です。
解散・清算に伴う解雇
企業が解散・清算を行う場合、その企業と従業員との労働契約も終了することとなります(労働契約法44条1項5号)。原則として認可機関への届出を行い、受理されることで解散が実現しますが、従業員の取扱について、管轄の労働行政管理部門との調整が必要な場合もあります。解散ならびに清算による解雇の場合も経済補償金の支払が必要となります。
配置転換ほか
企業の撤退に伴い、労働者の配置転換やグループ内の他社への移籍などによって労働契約の変更が必要となった場合は、従業員との合意の上で解雇することになります。雇い止めならびに解雇をすると経済補償金の支払や労働争議に発展する等のコストやリスクがありますので、こうした手法を用いて従業員との利害調整をあらかじめ検討しておく必要があります。
派遣労働者の契約解除
労働者派遣は、派遣元(派遣会社)と派遣先企業との間の労務派遣契約に基づいて労働者の派遣が行われています。撤退に伴い契約を解除する際は、労務派遣契約の内容に基づいて処理をします。派遣先が経済補償金の支払を行う義務は法的にはありませんが、労働者がその旨を理解していないことによるトラブルが生じる可能性もあります。
トラブル発生時に備えて派遣会社への対応策についてもあらかじめ確認・検討しておく必要があります。
■紛争解決
外国企業の撤退に伴う債権・債務の整理ならびに残余財産の分配の際に、関連当事者との間で紛争が起こることがあります。以下、中国の民事・商事紛争に係る訴訟や仲裁の各制度について述べます。
[民事訴訟制度]
中国では二審制度を採用しており、管轄の人民法院(裁判所)の審理を一方の当事者が不服とした場合、その上級の人民法院の判決をもって終審となります。管轄の裁判所は、一審に限り当事者間での合意によって定めることができますが、被告・原告の住所地ならびに契約を履行した地、契約を締結した地など一定の要件を満たさなければ合意が無効となります。合意管轄人民法院を定めていない場合は、事件の重大性や地域性を鑑み、管轄の人民法院が判断することとなります。
二審判決を不服として再審を請求することも可能ですが、認められるケースは稀です。そうした中で、清算を行う企業に対して相手方の当事者が悪意を持って裁判を提起し、上訴や再審要求をするなど清算手続の完了を引き延ばそうとするケースもあります。調停や仲裁制度などによりできるだけ迅速かつ低コストで紛争を解決することが重要です。
[調停制度]
民事訴訟に持ち込まれた事案について、判決が下る前に、人民法院の管理の下で、当事者同士が合意し、紛争解決を行うことを調停といいます。この制度は勝ち負けによる精神的なダメージもなく、コストと時間の削減にもなります。訴訟を終結させるために中国では多く見られるケースです。
[仲裁制度]
人民法院での訴訟によるのではなく、当事者は紛争の解決を仲裁委員会にゆだね紛争解決を図るのが仲裁です。国際的な仲裁については、日中両国とも外国での仲裁実務について定めたニューヨーク条約に加盟しているため、いずれの国の仲裁機関でも仲裁判断を行うことができます。
主な仲裁機関として、中国国際経済貿易仲裁委員会(CIETAC)、日本の一般社団法人国際仲裁協会があります。中国での仲裁は、仲裁法に基づいて行われます。通常の仲裁プロセスでは、当事者による仲裁人選定を行い、審理が行われます。その後、紛争や費用の判断が下されます。
参考文献
・中华人民共和国公司法
・中华人民共和国外商投资法
・中华人民共和国外商投资法实施条例
・外商投资企业清算办法
・中华人民共和国劳动法
・中华人民共和国劳动合同法
・中华人民共和国合同法
・中华人民共和国市场主体登记管理条例
・中华人民共和国市场主体登记管理条例实施细则
・外商投资企业清算办法
・中华人民共和国企业破产法
・劉新宇.(2012).『中国進出企業再編・撤退の実務』.商事法務