労務
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
労働環境
労働者
■労働力人口
中国国家統計局による2023年末時点の国勢調査では約14億0,967万人です。これは日本の約11倍、世界人口の約5分の1にあたります。第二次世界大戦後急激に人口が増加したため、1979年から2014年まで、政府は「一人っ子政策」を導入しました。その結果人口増加は収まり、その後は横ばい状態が続きました。なお、2023年には世界一の座はインドにとって代わられました。
■失業率
中国統計局によると2022年の失業率は4.2%です。日本ではハローワークに求職者として登録している人のみを対象として失業率を算出しているように、中国でも登録失業者のみを対象に算出した名目上の数値であるため注意が必要です。実際には、多くの農村戸籍を持つ出稼ぎ労働者は登録をしないケースが多く、中国の失業率は公式に発表された数字の約2倍といわれています。
■中国での採用の留意点
中国で現地のスタッフを採用する前に留意しなければならないのは、天津市等の地域では、募集を開始する際に行政に届出の必要があることです。届出を怠ったことに対する罰則規定はありませんが、地域の行政と良好な関係を築くために、事前に報告をしておいた方が望ましいです。
実際に現地のスタッフを採用する際には、都市戸籍または農村戸籍、出身地、学歴、職歴などを確認します。中国の場合、履歴書の詐称がとても多いため、身分証明書や大学卒業の証明書を提出させる必要があります。
また、身分証明書の偽造も多いため、有料で身分照会を行っている機関などで確かめることが望ましいです。調査の可能な企業としては、例えば北京国政通網絡科技有限公司の身分網(http://www.id5.cn/)などで確認することができます。
中国で優秀な人材を採用するためには、労働条件を明確にするだけでなく、企業の持っているビジョンや、その企業での活動がどのように中国社会に貢献するかなどの理念を明確に説明することが重要です。具体的には、重要なポストに中国人を起用し、公平性を重視した人事制度、賃金体系など明確なキャリアパスを構築することが求められます。中国では「日本企業には見えない天井がある」といわれることがあります。それは、現地の中国人がどれだけ努力しても幹部には昇進できず、日本から赴任してきた日本人が必ず幹部になることへの不信感を表しています。優秀な中国人に対しては、国籍に関わらず幹部に登用することで将来に可能性を感じさせ、中国人にとって魅力のある企業にすることができます。
賃金
■産業別、職業別賃金
中国での平均月給は次の表のとおりです。製造業の作業員の賃金水準は月給7,279.6元、非製造業のマネージャーは月給1万9,289元となっており、日本と比べると役職に応じた賃金の格差が大きいことがわかります。また賃金上昇が問題視されていますが、中国の賃金は低水準です。各地方政府は2023年も最低賃金の引き上げを行っており、今後も中国での賃金の上昇は避けられないものと予想されています。
■周辺諸国の平均賃金比較
上海の平均基本給与月額を周辺諸国と比べると、タイ、インドネシア、ベトナムより高くなっていますが、台湾(台北)、韓国などと比べると低いです。しかし、非製造業・マネージャーの賃金は、台湾、韓国に及ばないまでもかなり高い水準となっています。
今後、さらに賃金の上昇が見込まれることから、多くの国外企業が、人口14億人の中国市場に注目しています。生産拠点として進出をする場合には、より安い労働力を求めて他のアジア地域に工場を移転するという選択肢も考えられます。中国は、今後の賃金上昇と連動したマーケットとして注目を集めています。
■中国の賃金体系の変遷
社会主義国家である中国は、1952年から1978年に改革開放が行われるまで、画一的な賃金体系を保持していました。等級賃金制度によって地域別、職種別の賃金が定められ、職務等級賃金制度によって、職種の中での階層に応じて賃金が定められていました。国有企業に対して統一的な賃金制度を構築することで、賃金総額を政府が管理し、合理的な労働力の管理と中国国民の生活の保障を目的としていました。
しかし、賃金が平均的に支払われるようになると労働者の生産意欲が下がり、経済発展を阻害する要因となりました。1975年に中国の財政が赤字となったことにより、統一的な賃金制度の廃止が望まれるようになりました。1978年ごろから賃金制度の見直しが始まり、出来高払い制や、奨励制度が認められました。1985年には企業の業績と賃金が連動するような賃金体系が作られ、賃金体系が徐々に変わりました。
現在中国では、国有企業以外の企業は最低賃金を守れば自由に賃金を定めることができます。その中でどのように賃金体系を構築するかが重要です。中国では社内で給与明細を見せ合うことは一般的であり、さらには近隣の同業種に従事する者の給与の額を確認し、「同じ仕事をしているのに給料が安い」を理由に賃上げを要求されることも珍しくありません。このような要求に対し、企業は給与水準についての合理的な理由を持ち合わせていなければなりません。仮に、労働者に対して明確な回答ができなければ、労働者は不満を持ち転職をする可能性もあります。さらには労働争議に発展し、企業が多大な損害を被ることになる可能性もあります。
中国に進出する場合、誰もが納得できる人事評価基準を作り、労働者に不満を抱かせないようなシステムを構築することが求められます。給与交渉や労働争議への具体的な対応策として、はじめに給与や評価に対する明確なルールを作成し、社内に周知させることが重要です。
【出典:中華人民共和国国家統計局】
賃金の著しい上昇に伴い、現在雇用している労働者の賃金水準と新たに雇う労働者の賃金水準を常に意識して賃金制度を構築する必要があります。現在雇用している能力のある労働者よりも能力の低い労働者を雇う際に、現在雇用している労働者よりも高い水準の賃金を提示しなければ雇えないという状況に陥ることが考えられるためです。このような給与の逆転が生じれば、能力のある労働者が、企業からの評価に不満を抱き、退職してしまうリスクも考えられます。
中国は広大な国土を有する国であるため、地域によって経済状況や賃金水準が異なります。企業が中国に進出する際には、地域の経済状況や賃金水準に留意する必要があります。
【出典:中华人民共和国人力资源和社会保障部「全国各省、自治区、直辖市最低工资标准情况」】
具体的には、沿岸部三大経済圏の中核都市である北京、上海、広州などの都市の人口は総人口の4%を占めており、内陸中小都市(中部・西部に集中)の人口は総人口の68%を占めています。この沿岸部と内陸部の1人当たりのGDPを比較すると、沿岸部の労働者は内陸部の労働者の5倍以上となります。
労働組合
中国には労働組合にあたる組織として「工会」と呼ばれる組織があります。中国の労働組合である工会は中国共産党の下層執行組織であり、党中央の政策の影響を受けます。党が直接的に企業の意思決定等に参加することはありませんが、工会を通じて企業のガバナンスを行っています。工会は中国工会法に基づいて運営され、中国共産党をトップとした縦割り組織が特徴で、末端組織は企業内組合となります。
経営者側と労働者側の区分はなく、主に福利厚生の増進と労使紛争防止の役割を持つ利益共同体と捉えられています。労働争議が発生した場合には工会が問題解決機関としての役割を担うことになっていますが、実際にはその役割は形骸化し、従業員の福利厚生のための活動がほとんどです。
■労働組合結成
中国では人民はすべて労働者であるという考え方から労働に携わる人全員が工会に所属することが望まれており、企業経営陣も工会メンバーとなることが要求されます。1992年施行の工会法では、「企業・事業・国家機関で組合員が25名以上いる場合は、労働組合委員会を設立できる」としています。
ただし、25人未満でも2つ以上の企業が連合したり、組織員1名を選出し会員を組織したりして、工会活動を展開することができるため、理論上は従業員1人の企業でも工会を設立することができます。
企業は毎月従業員給与総額の2%を工会に納付しなければならず、工会加入者は毎月本人給与の0.5%を工会経費として納めます。
労働争議
■争点
労働契約法の施行、仲裁費用の無料化、景気刺激策により一部産業が収益増だったにもかかわらず、労働者への反映がなかったなどの理由により、2008年より労働争議が急増しました。
2010年9月には中国最高人民法院が受理する労働争議の範囲を拡大することを示し、労働者を直接雇用する企業でなくても出資関係にある企業も当事者として取扱われる可能性がでてきました。これにより企業が被告となる可能性が高くなっています。
近年では、特にコロナ禍以降の不安定さ、不況も背景に、労働争議発生件数が増加傾向にあります。
■労働争議の解決
労働争議の解決手順は以下のとおりです。
①和解協議
②調停(工会等の調停組織)
③調停(労働仲介委員会)
④労働仲裁委員会による裁決
⑤人民法院に起訴
和解協議は当事者同士・組合や第三者を加えて雇用単位(中国国内の企業、個人経済組織、民営非企業単位などの組織)で成立させることができます。
和解協議が成立しない場合は調停に移ります。調停は企業内・地域の工会などの調停組織によって行われ、調停裁決書は当事者同士の合意によるサインで効力を有します。不調に終わった場合は労働仲裁委員会に仲裁を申請し調停が行われます。
上記調停も不調であれば、労働仲裁委員会が事実を勘案したうえで裁決します。この裁決に不服であれば人民法院に提訴することができます。
手順としては上記のとおりですが、労働争議の調停組織はまず企業内に労働争議調停委員会を設置することを勧めています。通常、工会の首席が労働争議調停委員会の委員長に就任し、労働者側と企業側の意見を調停することになります。しかし、実態はうまく機能しておらず、企業側で新たに労働争議解決チームを設置して問題解決にあたらせるケースが多くなっています。
労働争議に遭遇した場合は企業内に労働争議解決チームを設置します。その際は弁護士、通訳など、労働争議の解決を経験したことのある現地の人をチームに加えることが望ましいです。
■ストライキ
ストライキが行われる場合には必ず、労働者をストライキへ扇動している中心的な人物がいるはずです。中には陰で人を使ってストライキを主導する首謀者もいます。労働争議の早期の解決を図るためには、首謀者の要求などについて直接話し合いを持つ必要があります。首謀者の特定に時間がかかる場合は、その分、事業の再開が遅れることになるため、信頼のおける中国人労働者に首謀者の特定を依頼するなどの対応をします。
また、ストライキの解決策を経営陣と話し合って決定し、政府関連機関、地方労働組合へ経緯および解決策について報告して理解を得ます。その後、ストライキの首謀者と労働条件などについての話し合いの場を持ち、合意を経てストライキを収束させます。同時に、今後同様の問題が起きないように防止策を構築することも重要です。
労働争議多発地域
労働争議発生状況を地域別に見ると沿岸部、特に華南地域で多発しています。2008年の労働契約法の施行により、争議件数は2007年の35万件から2008年には70万件と急増しました。
また、人社部より公表された「2023年度人力资源和社会保障事业发展统计公报」によると、2023年時点での争議件数は385万件(2022年316.2万件、21.76%増)に至ります。
労働争議増加の主な原因は、労働者の権利意識の向上と労働者保護の強化、労働者の自己利益追求欲求の芽生え、賃金格差に対する不満を持つ者の増加が挙げられます。
近年はインターネットの普及により、他の労働者と情報を交換することが容易になったことで、同業種間での賃金水準の差を認識し、SNSを利用してデモやストライキを呼びかけるケースも増えています。
労働法
労働契約
■労働契約の種類
一般的な労働契約として以下のものが挙げられます。
・有期労働契約
・無期労働契約(正社員での契約)
・業務上の一定の任務の完了をもって契約期間とする労働契約(労働契約法12条)
有期労働契約において、日本の場合は更新の回数に明確な上限はありませんが、中国の場合には更新の回数に上限があり、有期労働契約を2回以上更新した場合、その労働者が希望する場合にはその労働者を無期労働契約で雇用しなくてはなりません。
また、勤続年数が10年以上の労働者が希望した場合も同様に無期労働契約を結ぶ必要があります。日本で有期労働契約を結ぶ場合、一回の契約で設定できる有期契約期間の上限は原則として3年(ただし専門的な業務に就く場合等は5年)と定められていますが、中国の場合には有期労働契約の期間に上限はありません。
その他、日本と異なる点として、定年年齢が挙げられます。日本では、男女共に65歳(または60歳以降継続雇用等)と定められているのに対し、中国では男性が60歳、女性が50歳とされています。
特殊な労働契約として以下のものが挙げられます。
・集団契約
・労務派遣契約
・パートタイム契約
[集団契約]
集団契約とは、雇用者と従業員がそれぞれの代表者を選出し、報酬や労働時間等の主な労働条件について集団協議のうえ締結する契約です。これとは別に個別契約を結ぶ場合、その条件は集団契約の条件を下回ってはなりません。
[労務派遣契約]
労務派遣契約は労務派遣組織(派遣元企業)と労働者が締結します。労働者を受入組織(派遣先企業)に派遣して働かせ、労務派遣組織が報酬を支払います。日本の労働者派遣契約に相当します。
2013年7月1日改正の、労働契約法により、労務派遣が可能な要件が以下のように明示されました。
・在職6カ月を超えない場合
・派遣先企業において補助的な業務を行う場合
・派遣先企業の労働者の病気休暇、産休、研修などの一時的な代替の場合
さらに2014年3月1日より労務派遣暫定規定が施行され、労務派遣比率は全従業員数の10%を超えてはならないと定められました。これにより、労務派遣で労働力を補ってきた多くの企業が対応を余儀なくされています。現状労務派遣比率が10%を超えている企業については、2年間の猶予期間の中で労務比率を基準内にしなければならないと規定されています。
[パートタイム契約]
パートタイム契約とは、労働者の1日当たりの平均労働時間が4時間を超えず、1週間で24時間以内の時給制の労働契約をいいます。
■試用期間
日本と同様に中国にも試用期間がありますが、日本と比べて複雑な仕組みとなっています。労働契約法の制定ならびに施行により、試用期間内の解雇に適切な理由や根拠がなければ無効となります。
中国の試用期間は、労働契約期間に応じて以下のように規定されています。
雇用契約期間 | 試用期間上限 |
一定の業務を完成するために 締結したSPOT的な雇用契約 | 試用期間設定不可 |
3か月未満 | 試用期間設定不可 |
3か月以上1年未満 | 1か月 |
1年以上3年未満 | 2か月 |
3年以上の固定期間 | 6か月 |
無固定期間 | 6か月 |
試用期間は1度のみ設定することが可能であり、試用期間中の給与は、労働契約が成立した場合の給与の80%以上かつ最低賃金以上でなければなりません。
■労働者を雇用する際の義務
2008年9月に公布された労働雇用法実施条例により、企業が労働者を雇用した場合、1カ月以内に書面で雇用契約を結ばなければならないことが明確に定められました。その際、労働者の氏名、住所、身分証明書番号、戸籍、勤務開始日、雇用形態、労働契約期間などを記載した従業員名簿を作成する義務があります。労働管理局より提出を求められる場合があり、従業員名簿を作成していない場合または提出を拒んだ場合には罰金が科されることもあります。
労働者が雇用契約の締結を拒んだ場合、企業は書面によって労働関係を終了させ、その労働者が就業した期間の賃金を支払う義務があります。
日本の場合、労働契約法6条に「労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立する」と定められており、労働契約は労使間の合意によって成立すると規定されています。つまり、書面がなく口頭でも労働契約は成立します(雇用時の労働条件の通知は義務付けられています)。これに対し中国では、「口頭での合意による成立」は認められておらず、必ず書面が必要となります。
■秘密保持義務と競業避止義務
中国の場合、日本よりも秘密保持や競業避止概念が希薄な労働者が多いため、企業は秘密保持義務や競業避止業務についてより厳しい対策を立てる必要があります。
■雇用形態
中国での雇用形態には、直接雇用、間接雇用、出向などの形態があります。日本とは異なる点があるため留意が必要です。
直接雇用
直接雇用とは、短期間、期間の定めに関わらず労働契約で勤務時間、労働条件、労働報酬、社会保険等を定めて、書面で締結することによって雇用する形態をいいます。雇用後1カ月経過しても書面で労働契約を締結しない場合は、書面による労働契約を締結するまで、労働者に対して毎月2倍の賃金を支払わなければなりません。
労働契約期間が3カ月未満の場合は試用期間を設けることができず、社会保険に加入する必要があります。会社側の都合により直接雇用の労働契約が終了するときは、勤務期間1年あたり1カ月給与相当分の経済補償金を支払わなければなりません。日本では労働契約終了時の経済補償金を支払う規定はありません。
間接雇用
間接雇用とは、会社が労働派遣組織を経由して間接的に労働者を雇用する形態をいいます。この形態は日本の労働者派遣契約と特に異なる点はありません。
中国では「派遣先企業は、実際の必要性に基づき、派遣元企業と派遣期間を確定しなければならず、連続した雇用期間を数回の短期労働派遣協議を分割して締結してはならない」(労働契約法59条22項)とされており、実態の必要性と乖離した派遣期間を設け、短期的に契約更新を行うことを禁止しています。
出向
中国には法律上出向という概念はなく、明確な規定もありません。したがって、出向する従業員の賃金は出向元企業か出向先企業のいずれが負担するのか、労働契約はいずれが締結するのか、社会保険料はいずれが納付するのか等を事前に協議し、明確にしておく必要があります。
外国人の雇用
中国で外国人が中国国内で就労するためには、就業許可証および居留許可証の取得など、労働行政部門で手続をする必要があります。
就業規則の作成義務
中国労働契約法4条において、「使用者は、労働報酬、労働時間、休憩休暇、労働安全衛生、保険福利、従業員の研修、労働規律及び労働定量の管理等に関する、労働者の密接な利益に直接関わる規則制度または重要事項を制定、修正または決定する場合、従業員代表大会または全従業員による議論の上、試案及び意見を提出し、労働組合または従業員代表と平等な協議の上確定しなければならない」と定められています。
つまり「労働者の密接な利益に直接関わる」基準となる事項を、労働者や労働組合と使用者側で決める必要があります。ほかにも採用、退職に関する規定を定めなければなりません。
一般的に用いられる就業規則の記載事項の例は以下のとおりです。
・総則
・労働時間および休憩、休暇に関する事項
・賃金の決定および支払方法に関する事項
・適用される労働者の範囲に関する事項
・退職に関する事項
・労働安全衛生事項
・福利厚生に関する事項
・労働者の労働規律に関する事項
・労働者の研修に関する事項
日本の就業規則の作成義務は、常時雇用する労働者が10人以上になった時、労働基準監督署長に届けなければならないと労働基準法89条に定められています。しかし、中国では労働者を1人でも雇えば作成義務が発生します。また、日本では事業所の過半数を代表する労働組合がある場合は労働組合、ない場合は過半数の労働者の代表する者の意見を聞かなくてはならないと規定されています。これに対し、中国では以下のように規定されています。
①使用者は労働者代表大会または全労働者と討論をする
②使用者は①に基づき就業規則の原案および意見を提出する
③使用者は②の原案・意見に基づき労働組合または労働者代表と平等に協議する
④使用者は③に基づき、就業規則を制定する
⑤使用者は制定した就業規則を労働者に開示する
就業規則を作成する際に、中国においては日本より慎重に作成する必要があります。
賃金の支払
■賃金支払に関するルール
中国での賃金支払に関する規定は賃金支払暫定規定に定められており「賃金は少なくとも毎月一回支払わなければならず、週休制、日給制、時給制を実行する場合、週、日、時間ごとに支払うことができ、また、賃金は使用者と労働者が約定する日に支払わなければならない」(賃金支払暫定規定7条)と規定されています。ただし、賃金の現物給付は中国では一切認められていません。
■割増賃金
中国における割増賃金は、時間外労働、休日労働(代休が与えられない場合のみ)、法定休日労働の3つに分けられます。これらの割増率は以下のとおりです。
・時間外労働をさせる場合は、賃金の150%を下回らない賃金報酬を支給する
・休日に労働をさせ、かつ代休が与えられない場合は、賃金の200%を下回らない賃金報酬を支給する
・法定祝日に労働させる場合は賃金の300%を下回らない賃金報酬を支給する
日本の賃金制度との大きな違いは、中国には深夜労働に関する割増賃金の規定がないことです。日本では、夜10時以降の労働に対して平均賃金の125%を支払う義務がありますが、中国では深夜労働に対して割増賃金を支払う義務はありません。また中国では、残業は緊急時などの特別な場合でも1日3時間が限度とされ、残業時間の上限を設けることにより労働者の保護を図っています。日本では休日労働に係る割増賃金は平均賃金の135%ですが、中国の場合は平均賃金の200%と大きく乖離しています。
法的には時間外労働や割増賃金に関して制限が定められていますが、実際は、運用上労働法を順守していない企業も少なくありません。しかし、中国での個人の権利意識の高まりにより、無報酬による時間外労働や劣悪な就業環境の中での労働に関する批判は高まっています。中国に進出する際には、コンプライアンスに関して注意が必要です。
■時間外労働に関する規制
中国における変形労働時間制は、1日につき1時間を超えてはならず、特別な理由により労働時間を延長する場合、労働者の身体の健康を保障するという条件のもとで、1日につき3時間を超えない範囲で労働時間を延長することができます。ただし、1カ月の延長時間の合計が36時間を超えてはならないと定められています(中国労働法41条)。
■賞与
中国における賞与は日本とほとんど同じです。ただし、就業規則や労働契約に賞与の支払をする規定を定めた場合には支払義務があり、法律的に使用者が労働者に賞与を支払うことを義務付けているわけではありません。中国での賞与の支払は、就業規則や労働契約の規定に委ねられています。
中国の日本企業ではほとんど見られませんが、中国の現地企業では賞与を現物で支給するケースもあります。酒をはじめ各種カード(プリペイドカードやガ㋞リンカードなど)が支給されることは一般的で、中には自動車や家を支給される例もあります。
休暇
■年次有給休暇
中国でも日本と同じように法定で定められた有給休暇制度があります。中国では「労働契約や就業規則で規定した年次有給休暇日数が法定基準を上回る場合、使用者は、その労働契約や就業規則等で定めた日数を与えなければならない」と規定されています(企業従業員年次有給休暇実施規則13条)。
[法定日数]
日本と中国では年次有給休暇を取得するための要件が異なります。
中国での年次有給休暇の定義は「雇用労働者を有する個人事業者などの組織の従業員が連続して12カ月以上勤務した場合に、通常の勤務期間と同一の賃金収入を得ながら取得することができる休暇」とされています。勤務が1年に満たない従業員であっても、前職での勤務期間を含め連続して12カ月以上勤務していれば、現在勤務している企業から年次有給休暇取得の権利を有します。
日本では、同一企業に連続して8割以上勤務かつ6カ月以上勤務することで有給休暇が取得できますが、中国では、会社が異なっても12カ月以上連続して勤務していれば取得できます。
従業員年次有給休暇条例で定められている年次有給休暇の日数は以下のとおりです(3条)。
[中途採用の場合の有給休暇日数の算出方法]
中国では中途採用の場合、前述のように前職務経歴も含めた有給休暇日数を算出します。これは前職の勤務期間との調整を図るためです。具体的には、従業員が新たな企業に中途として就業しかつ有給休暇の付与対象者の場合、その年度の有給休暇日数は、当該使用者における暦上の残日数によって換算して確定されます。算出方法は以下のとおりです。
ただし算出の結果、日数が1日未満の場合は有給を付与する義務はありません。
[未消化の有給休暇]
中国では未消化の有給休暇の取り扱いが日本とは異なります。
・就業規則等で定めた日数が法定日数を上回る場合の有給休暇日数
・年度ごとに付与された有給休暇を使用せずに残った場合の有給休暇日数
・労働関係を解消した場合の有給休暇日数
上記に該当する場合、当該年度中に、従業員の未消化の年次有給休暇日数について、その日額賃金収入の300%の基準で、未消化の年次有給休暇の賃金報酬を支払わなければならないと規定されています。この日額賃金とは、従業員の1日の賃金額のことで、従業員の月額賃金を月額賃金計算日数で除することで求めることができます。未消化の有給休暇は次のように算出します。
[使用者の拒否権の有無]
中国の労働法では、特に労働者の有給休暇取得の拒否の有無について定めておらず、労働者の有給休暇取得を使用者が拒否しても労働法違反にはなりません。ただし、労働者との協議の上が望ましいとされています。
これに対し日本では、使用者の労働者年次有給休暇取得について拒否は認められていません。ただし、時期的に多忙な場合等は時季指定権が認められています。
■病気休暇
中国では労働法に病気休暇という制度があります。日本の健康保険法の傷病手当金と類似しています。この制度は、労働者が業務外で病気や怪我を起こしたときに使用者が労働者に対し賃金を支払う制度です。
日本には労働関係法令上この規定はなく、社会保険によって同様の規定があります。ただし、日本の健康保険の傷病手当金は業務外の傷病により3日連続して働くことができず欠勤した場合、4日目から全国健康保険協会または健康保険組合から賃金が支給されるのに対し、中国の病気休暇は、業務外の傷病により欠勤した1日目から支給され、支払を義務付けられているのは使用者です。
留意すべき点は、この病気休暇の支払金額は最低賃金の80%を下回ってはならないこと、また通常の労働者の賃金ではなく、地域ごとに定められている最低賃金の80%の支払が義務付けられていることです。
治療期間は、過去に勤務した企業のすべての勤務年数を合計した勤務年数および業務外で傷病を受けた際に勤めていた現在の企業での勤務年数に応じて定められている制限期間中のものでなければ認められません。
勤務年数等に応じた治療期間、制限期間は以下の通りです。
■出産休暇
中国での出産休暇は「女性労働者は、出産に当たり少なくとも90日の休暇をとることができる」と定められています(中国労働法62条)。日本とは異なり、中国には補充規定があります。女性従業員労働保護特別規定では、出産休暇を最長98日とし、さらに難産の場合は別途15日間の休暇が付与されます。
■春節期間中の従業員出勤対応
春節期間中に従業員を出勤させた場合、雇用者(会社)はその対応方法に注意しなくてはなりません。こちらは、その出勤日が一般休日或いは法定休日期間のどちらに該当するかにより、その具体的な取扱いが異なります。
①出勤日が一般休日の場合
出勤日が一般休日の場合は、企業側は従業員に対して、代休手配或いは残業代を支払う必要があります。
・会社が代休を手配できない場合の、残業代給与額(日割)(労働法44条)
日給(8時間)=基本給与×2倍
・時間割にする場合
時給=基本給与×2倍/21.75日/8時間
②出勤日が法定休日の場合
出勤日が法定休日の場合は、代休の手配に関わらず、加給割合が3倍となり、企業側は従業員に対して残業代を支払う必要があります(中国労働法44条)。
③一般休日と法定休日の見分け方
最後に、同じ春節期間中でも一般休日と法定休日が混在しているため、注意が必要となります。見分け方は、中国国務院が規定で定める日が「法定休日」、それ以外が「一般休日」として扱われます(全国年节及纪念日放假办法、国務院カレンダー)。
退職
■労働契約解除の種類
労働契約の解除の種類には以下の3つが挙げられます。
・合意による労働契約の解除
・自主退職
・解雇
合意による労働契約の解除と自主退職については企業側で大きな問題が発生することが少ないため、以下、解雇に焦点を当てて説明します。
■解雇の場合の留意点
中国は社会主義国家であるため、従来、企業はすべて国有企業であり、国有企業で雇用される労働者は「国から与えられた仕事をする」という立場であるため、解雇の概念はありませんでした。これは全労働者が国の労働者であり、終身雇用制度によるためです。しかし、中国経済が市場化するに従い国有企業の民営化が進んだ結果、雇用も流動化し、解雇に関する法律が定められるようになりました。
日本および先進諸国においては労働者の権利を保護するために、法律によって解雇を規制する対応が採られてきました。一方、中国では、今まで労働者が保護されていたことに対し、労働法により解雇規制を緩和する傾向があります。
中国では1995年に労働法が制定され、解雇は一定の要件を満たせば認められるようになりました。ただし、経済補償金の支払が義務付けられる場合があるためその点は注意する必要があります。
中国で認められている解雇の種類は以下の3つです。
[即時解雇]
労働者が以下の要件に該当する場合、雇用者は労働契約を解除することができます。この場合は、経済補償金の支払義務はありません。
・試用期間中に採用条件に適合しないことが明らかになった場合
・労働規律や就業ルールに大きく違反した場合
・職務を著しく怠り、または私利を図ることにより、使用者の利益に重大な損害を与えた場合
・法に基づいて刑事責任を追及された場合
[予告解雇]
労働者が以下の要件に該当する場合、30日前までに書面により労働者本人に解雇する旨を通知して解雇することができます。ただし、経済補償金の支払義務があります。
・労働者が疾病または業務外の負傷により治療期間終了後も元の業務に戻ることができず、かつ使用者が別に配属した業務に就くこともできない場合
・労働者が職場に不適格であり、訓練または職務の変更にかかわらず職務に不適格な場合
・労働契約締結の際、締結の条件とされていた客観的事実に重大な変更が発生し、労働契約の履行が不可能となった場合に、当事者が協議をしても労働契約の変更について合意に至らない場合
[整理解雇]
事業継続上大きな問題等が発生したことにより人員の削減が必要な場合は、解雇の30日前までに労働組合または労働者全体に状況を説明し、意見を聴取して労働行政部門に報告した後、労働者を解雇することができます。ただし、経済補償金の支払義務があります。
予告解雇、整理解雇であっても労働法に記載されている解雇制限に該当する労働者に対しては解雇をすることができません。労働法で規定されている解雇制限は以下の通りです。
・業務上の傷病により、労働能力の一部または全部の喪失が認められた者
・疾病または負傷により規定された医療期間に該当する者
・女性労働者で、妊娠、出産、授乳期間である者
・法律、行政法に規定されたその他の事情がある場合
企業が中国で労働者を解雇する場合、これらの労働法の規定に留意する必要があります。法律に則って手続を進めなければ、労働者の不信を招くだけでなく、2倍の経済補償金の負担や、最悪のケースでは訴訟問題に発展する可能性があります。
■退職時の補償
中国では退職時の補償として、経済補償金という日本の退職金に相当する金銭の支給に関する規程があります。定年により企業を退職した場合には養老保険から年金が支払われます。このように、労働者の退職後の生活や、次の職を探すまでの間に困らないように保償されています。
■退職金(経済補償金)
退職時には経済補償金の支払が使用者に義務付けられています。日本の場合、退職金は企業が任意に定めることができるため、支給の有無、金額ともに法定ではありませんが、中国の場合には経済補償金の支払は労働法上で規定されています。
経済補償金の額は、労働者の勤務年数に応じて定められており、1年勤務につき1カ月分の給与と同額となります。事業者の違法行為による労働契約の解除には、2倍の経済補償金の支払義務が生じます。
退職理由によっては経済補償金を支給しなくてもよい場合があります。経済補償金とは原則として労働者を保護する必要があるときに支給されるものであり、以下のいずれかに該当する場合は支給が不要です。
・労働者の意思による契約解除である場合(自主退職)
・企業による正当な理由に基づく解雇の場合
自主退職において留意すべき点は、従業員の退職申し入れによる解除後であっても従業員から経済補償金の支給を求められる可能性があることです。企業が従業員からの申し出により合意解除したことを証明できない場合、従業員からの経済補償金の支給要請を拒めないケースがあります。
ただし、従業員からの申し入れによる契約解除であってもその理由が企業の過失によるものであれば、経済補償金の支給が必要となります。
法定の経済補償金より下回った金額を支給して契約解除に至った後に従業員から法定の経済補償金の支給を求められた場合、先般の合意を理由にその支給を拒むことはできません。企業が悪意をもって経済補償金を支給しない場合に至っては、経済補償金の50%に相当する額外経済補償金の上乗せ支給を命じられる可能性もあります。
これらを踏まえて、トラブルを回避するための予防策として以下のようなものがあります。
・従業員から労働契約解除の申し出があった旨を書面で明記する
・労働契約解除の際、従業員がその経済補償金金額に同意した旨を上記書面に明記する
■退職後の競業避止義務
地方法規によってそれぞれ定められていた競業避止の規定が、2008年1月1日に施行された労働契約法によって初めて明確に定められました。同法に規定される競業避止義務の主な内容は以下のとおりです。
・退職後に競業避止を課すことができる労働者は高級管理職員、高級技術者および秘密保持義務を負う者など一定の者に限られる
・退職後に競業避止義務を課すことができる期間は2年を超えてはならない
・使用者は対象者に対して競業避止期間中の経済補償金を支払う義務がある
・使用者は対象者が競業避止義務に違反した場合の違約金を設定できる
競業避止期間中、使用者は毎月対象者に経済補償金を支払わなければなりません。使用者が対象者に経済補償金を支払わない場合、対象者は競業避止の適用を受けないこととなります。
経済補償金の額に関しては労働契約法では規定されていないため、それぞれの地方法規に応じて設定することになります。最高人民法院の司法解釈によると、契約解除前の12カ月間の平均月額給与の30%が妥当であるとしています(労働紛争案件審理における法律適用の若干問題に関する最高人民法院の解釈(四)6条)。
たとえば上海市の場合、当事者間で合意した場合は、その合意した金額を支払い、それ以外の場合は、対象者は退職前に支払われていた毎月の給与の20%から50%を経済補償金として支払う必要があります。経済補償金額は労使間の話し合いにより決定します。
使用者は違約金についても設定することができ、対象者が競業避止義務違反をした場合、対象者に対し違約金を請求することができます。
社会保険
中国の社会保険制度には、基本養老保険、基本医療保険、労働災害保険、失業保険、生育保険があります。地域による社会保障の範囲はそれほど変わりませんが、戸籍地(都市部、農村部)によっては大きく異なります。
福利厚生としては企業と従業員に義務付けられている住宅積立金があります。
これらの制度は原則として外国人も強制的に適用の対象になります。ただし、現状では地域によって運用の仕方や保険料などが異なるため、実際に中国に駐在員を赴任させる際は所轄の社会保険運営機関に確認する必要があります。
社会保険の適用
■適用事業所、被保険者
都市部の主な労働者に対しては基本養老保険(都市労働者基本養老保険)、基本医療保険(都市労働者基本医療保険)、労働災害保険、失業保険、生育保険への加入が義務付けられていますが、農村部においては養老保険(新型農村社会養老保険)、医療保険(新型農村合作医療)のみが加入義務となっています。
■社会保険料
[養老保険]
養老保険の保険料は地域によって差はありますが、従業員の賃金比率に基づいて計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の16%、従業員の負担は賃金総額の8%です。保険料を算定する際にもとになる賃金には上限が設定されており、従業員の前年度地域平均賃金の300%を超える場合、その従業員の賃金は前年度の平均賃金の300%として保険料を算出します。
給付については、男性は60歳、女性は50歳(管理職女性は55歳)という法定定年年齢に達した時点で保険料納付年数が15年以上あることが要件となります。要件を満たせば、毎月年金として基本養老金が支給されます。
[医療保険]
医療保険の保険料は地域によって差がありますが、従業員の賃金比率に基づき計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の9.5%、従業員の負担は賃金総額の2%です。企業と個人が共同で保険料を納付します。
給付は治療、薬剤、入院等に関する費用に対し一定の割合で給付されます。
[労災保険]
日本の労災保険制度(以下、労災)と似ていますが、中国の方が事業主の災害補償責任の範囲が広くなっています。
日本では労災により休職をしている従業員の賃金は保険給付として支給されますが、中国では事業者が労災を負担する必要があります。企業を運営する上で従業員の安全管理に注意を払う必要があります。
労災保険の保険料は地域によって差がありますが、従業員の賃金比率に基づいて計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の0.16~1.52%で、従業員の保険料負担はありません。当該比率は業種の労災リスクに応じて8段階に分類されております。一般的なサービス業は二類になります。
類別 | 業界(抜粋) | 基準比率 |
一類 | ソフトウェア及びデータ技術サービス業、貨幣金融サービス業、メディア業など | 0.20% |
二類 | 卸売業、小売業、倉庫管理業、郵政業、宿泊業、飲食業など | 0.40% |
三類 | 食品製造業、パソコン及び通信とその他電子設備製造業、機械器具製造業など | 0.70% |
四類 | 農業、牧畜業、ゴム及びプラスチック製品業、金属製品業、自動車製造業、電気機械及び機械製造業など | 0.90% |
五類 | 林業、家具製造業、製紙及び紙製品業、道路運輸業、積卸運搬業及び運搬代理業など | 1.10% |
六類 | 漁業、化学原料及び化学製品業、不動産建築業、土木工程建築業など | 1.30% |
七類 | 石油及び天然ガス採掘業など | 1.60% |
八類 | 石油採掘業など | 1.90% |
給付は日本と同じように業務上の事由による傷病に対して行われます。給付内容には治療に関するものと補償金があり、補償金は労災を受けた労働者の従前の賃金や障害の重さなどによって異なります。重度の障害に対しては、事業主が補償をしなくてはならないケースもあります。
[失業保険]
中国の失業保険は日本の雇用保険制度と似ていますが、中国では自己都合退職の場合は保険給付が受けられない点や、失業保険制度の中に医療補助金と死亡補償金の制度がある点など、日本の雇用保険制度とは異なる点があるため注意が必要です。
失業保険の保険料は地域によって差がありますが、従業員の賃金比率に基づいて計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の0.5%、従業員の保険料負担は賃金総額の0.5%となっています。
失業保険の受給要件は、事業主および被保険者による1年以上の保険料の納付があること、自己都合による退職ではないこと、失業の登録を済ませたうえで、求職の希望があることです。給付には失業保険金(保険料の納付期間に応じて1~24カ月間)、医療補助金、死亡した場合の葬儀補助金や弔慰金があります。
[生育保険]
生育保険は、日本の医療保険における出産に関する手当と雇用保険における育児休業給付を合わせた制度です。
生育保険の保険料は地域によって差がありますが、従業員の賃金比率に基づいて計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の1%で、従業員の負担はありません。
給付には、出産にかかる医療費や検査費等、出産育児手当(出産、育児期間中の所得補償)、出産休暇(出産期間、休暇を取ることができる)があります。
[住宅積立金]
住宅積立金は社会保険ではありませんが、中国では福利厚生制度の一環として企業に住宅積立金制度(住宅積立金管理条例)を義務付けている地域が農村部以外では多くなっています。
企業と個人がそれぞれ積立金を負担し、従業員が住宅を建てる際や住宅を改修する際などに使われます。住宅積立金額は地域によって差がありますが、従業員の賃金比率に基づいて計算されます。上海市の場合、事業主の保険料負担は企業の従業員の賃金総額の7%、従業員の負担も7%となっています。
中国(上海)および日本(東京)での保険料負担をまとめると次の表のようになります。中国の社会保険の事業主負担率の合計は44%で、日本の14%と比べてとても高い率になっています。中国に進出する際には、社会保険に係る費用等も考慮した上で予算計上する必要があります。
なお、外国人は住宅積立金への加入は不要です。
地域別社会保険
中国では、地域によって労働保険率、社会保険率が異なります。労災は日本と同様で従業員の負担率はありません。また、日本では出産・育児給付等が健康保険として包括されていますが、中国では生育保険というものが別途設けられており、従業員の負担はありません。地域別の詳細は次の表のとおりです。
中国では、全国的に統一された社会保険制度の構築を目指して社会保険法が2011年7月に施行されましたが、実際の運営は各地域の社会保険運営機関が担っている状況です。各地域により運営方法が異なるため、実際に現地に駐在員を赴任させる場合には、その地域を管轄する社会保険運営機関に事前に確認することが重要です。
日本人を駐在させる際の注意点
各種手続
中国に駐在員を赴任させる際には以下の手続が必要です。
・出国時の諸手続(年末調整、確定申告、転出届等)
・日本および中国での社会保険加入
・給与の決定(グロスアップ計算)
・ビザ、ワークパーミットの取得
■出国時の年末調整
中国での滞在日数が1年につき183日未満の海外赴任者は、中国で支給される給与に関して、中国国内で申告ならびに納税をする必要がありますが、日本で支給される給与に関しては日本で納税するため中国国内では非課税となります。
ただし中国での滞在日数が1年につき183日以上の海外赴任者は、中国国内外での支給にかかわらず、すべての所得に関して中国で所得税を納める必要があります。
中国では総経理などの高級管理職員は本来常駐職とされているため、中国の滞在期間が1年につき183日未満であったとしても国内外すべての所得に課税されることになります(中国国内に住所を持たない個人が取得した給与所得の納税義務問題に関する通知)。
実際は中国滞在期間に応じて所得を日割りで納税するケースが多くなっており、特に問題は生じていません。また、1年に183日未満しか滞在しない高級管理職員の中には、一般の職員と同じように国外での所得に関して申告しないケースがほとんどです。多くの場合が税務当局から黙認されています。
現在はあいまいな基準で運用されていますが、今後、法整備が進む上で基準が厳しくなることも考えられるため注意が必要です。
■出国時の確定申告
総合課税の対象となる所得がある場合や不動産貸付所得や国内にある資産の譲渡所得がある場合には、確定申告や納税の義務等を果たす納税管理人を選任して、日本を出発する日までに納税地を所轄する税務署長に届け出なければなりません。
■出国時の転出届
海外転出届は日本国内で住民登録されていた地方自治体の住民登録窓口にパスポートを持参して転出届出書に署名をするだけですが、その自治体における住民登録は抹消され住民票は取得できなくなります。転出届の受付は出国予定日の2週間前から可能で、転出先の住所が確定していなくても国名と都市名を明記する必要があります。
■海外赴任に伴う手続
海外に赴任をする場合には、次の表に記された事項についての手続も必要です。
■健康管理
健康診断
社員を6カ月以上海外赴任させる場合は、既往歴調査、貧血調査、尿検査、心電図検査など、事前に健康診断を受診させることが義務付けられています(労働安全衛生規則45条の2項)。
予防接種
中国をはじめとする南アジアでは、特にA型肝炎や破傷風などの感染リスクが高いため、帯同する家族とともに事前に予防接種をするべきです。
■日本人学校
海外に駐在するに当たって、家族がいる場合は家族を帯同させるかどうかが非常に大きな問題となります。
家族を帯同しない場合には、日本に残る家族が社会保険に加入する必要があるため、留守宅手当を支給することで補塡します。一方、家族を帯同する際には帯同家族手当を支給し、勤務地での生活費の補塡とします。
現地に子女を帯同するに当たっては、通学させる学校についてもあらかじめ調べておく必要があります。中国で、日本企業が集中している地域には日本人学校があります。ただし、各地域にある日本人学校は独立した私立学校であるため、地域による学費の格差は大きいです。
駐在員の給与体系
■駐在員規程
日本から中国に社員を駐在させる際には、親会社と中国子会社それぞれでの給与・手当などの待遇について、事前に決めておく必要があります。駐在員規程に記載する項目は以下のとおりです。
・規程の目的
・用語の定義(駐在員、出張者など)
・海外勤務中の所属
・駐在員としての心得、その他服務
・勤務時間、休日(本社の規程に従うのか、現地規程に従うのかなど)
・海外赴任期間(3~5年など、余裕を持たせて記載するケースが多い)
・海外赴任中の給与・手当
・旅費・支度料の取り扱い
・家族の帯同(一律禁止、家族の帯同を推奨、希望者のみなど)
■給与・手当
駐在員の給与・手当は、日本国内での給与に物価や環境、現地社会保険料・所得税率などの水準、家族が帯同するかなどを勘案して決定します。
大まかな手順は以下のとおりです。
①基本給与の決定
②各手当の決定
③日本で受取った場合の手取り額を算出
④中国で受取った場合の手取り額と、③が同等額になるようグロスアップ計算
⑤親会社、中国子会社間の給与負担割合の決定
基本給与については、大きく分けると3つの決定方法があります。
日本から欧米などの先進国に駐在する場合には、物価や生活費水準などが日本よりも高いことが多く、購買力補償方式を用いるケースが多いです。一方、中国などアジア各国では、物価や生活費水準は日本の方が高いことが多いため、併用方式で日本と同額の基本給として、以下のような各種手当を別途支給する場合が増えています。
・海外勤務(インセンティブ)手当
・ハードシップ手当
・役職手当
・家族手当
・住宅手当
・留守宅手当
・子女教育手当
ハードシップ手当は外務省の中華人民共和国基礎データ(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/china/data.html)などを参考に他国の環境と比較して決めています。
近年では外国へ赴任することを当然のことと見なしていることや、親会社となる日本企業も余裕がなくなっていることから、これまでプラスアルファとして支給されてきた手当も減額される傾向にあります。
■中国赴任者に係る所得税算出
中国の所得税計算には個人負担方式と会社負担方式があり、所得税を個人が負担するか会社が負担するかで計算方法が異なります。
各方式による税額算出は以下の税率により行います。
【個人所得税の税率】
日本の給与所得控除額および所得税率は次のとおりです。日本と中国では適用税率に差があるため、日本と同様の給与を中国で支払うと手取給与額が低くなる場合があります。
■日本と中国の所得税算出例
前提条件※
40歳男性、日本での年収648万円
扶養なし、赴任予定期間3年
※実際にはその他の控除も考慮する必要があるが、ここでは簡易的に計算するため考慮しない。
このように、年収648万円の駐在員が中国で給与を受取った場合には手取り額が5,289,710円になり、日本での手取り額の5,623,300円よりも333,590円低くなります。
■手取額を一致させるグロスアップ計算
日本と中国の手取額を一致させるためにグロスアップ計算をする必要があります。手取額を従前の5,623,300円にするには、6,924,786円の支給が必要となるため、約45万円を支給額に上乗せして調整します。設定する給与額によって上乗せすべき金額は異なるため、赴任する前に支給額の調製が必要です。
社会保険の取扱
2011年7月に施行された中華人民共和国社会保険法に基づき、中国で働く外国人労働者に対して、以下の5つの社会保険への加入が義務付けられました。
・養老保険
・医療保険
・労災保険
・失業保険
・生育保険
この5つの保険料率を合計すると上海の場合、事業主負担が約26.76%、本人負担が10.5%となります。日本人駐在員の場合、計算の基礎となる給与が中国での社会保険の基礎となる月給の上限である16,353元(約327,000円)を超えている場合がほとんどのため、327,000円×26.76%≒87,505.2円、年間では約1,050,062円の負担となります。日本の社会保険料の場合、労働者の負担率は13.5%、事業主の負担率はそれよりも少し高く、合計して30%弱で、中国の方が社会保険に対する負担率が高いということになります。
■日本における社会保険の取扱い
[社会保険]
日本国内の企業との雇用関係を継続したままで中国へ赴任する際には、日本の企業から給与が支払われます。この場合には日本における社会保険はすべて継続します。給与がすべて中国現地の法人から支払われる場合、日本の企業に在籍しているとは認められないため、社会保険は継続しません。赴任中、国民年金に任意加入を希望する場合は別途手続が必要となります。
海外赴任中に海外で医療行為を受けた場合でも、加入する健康保険組合等に療養費の申請をすることが可能です(海外赴任中においても日本の健康保険に継続加入していることが条件)。ただし、申請に当たっては以下の点に注意する必要があります。
・療養費として申請するため、海外での医療費をいったん本人が全額を立替え、日本の健康保険組合等に申請する
・海外で受けた医療行為について、日本国内で保険診療を受けた場合の保険診療点数に換算して算出した金額から自己負担額が控除される
健康保険の海外療養費申請に必要な書類は以下のとおりです。
・療養費支給申請書
・療養内容証明書
・領収明細書
・領収書(原本)
提出書類が日本語以外の言語で記載されている場合には、翻訳者の氏名および住所を明記の上、日本語翻訳文の添付が必要となります。また、海外へ赴任する労働者が日本の労災保険の適用を求める場合は特別加入申請書を作成し、所轄の都道府県労働局長に提出する必要があります。
[海外旅行傷害保険]
海外に赴任する際には、公的な保険の他に海外旅行傷害保険への加入を検討する必要があります。海外旅行傷害保険に加入している場合、保険会社が提携する病院での治療にかかる費用は保険金で治療費が塡補されます。また、公的な保険とは異なり、契約した保険金額を限度として実際にかかった医療費の実費が支払われます。
海外旅行傷害保険の新規加入手続は、出国日までに完了しなければなりません。
中国のビザの取得
中国で就労するためにはビザの取得が必要になります。中国に入国する際に必要なビザの種類は「短期業務遂行のための外国人の入国手続に関する規定(試行)」で定められています。その他、Dビザ(中国永住者向け)やCビザ(飛行機や船舶等の乗員向け)等があります。(短期とは通常90日以内のことを指します。)
通常、中国に赴任する場合はZビザを取得します。Zビザ取得の手続は次のとおりです。早ければ2カ月で手続は完了します。
一般の商談や視察などはZビザの(1)に該当しません。15日以内であればZビザは必要ありません。
■就労許可証の取得(中国)…❶
まずZビザを取得するために「外国人工作許可通知」という就労許可証が必要になります。
就労許可証の取得(中国)については、科学技术部(https://fuwu.most.gov.cn/html/fwsx/wgrlhzq/)のシステム上へ以下の必要書類をアップロードして申請します。申請後、通常1週間後に就労許可証が発行されます。しかし許可書の発行数を政府が管理しているため、取得できなかったり、時間が要したりすることも年々多くなっています。
・中華人民共和国査証申請書
・申請者のパスポート(2ページ以上の余白必要)ならびに証明写真のページ(コピー)
・証明写真1枚(4cm×3cm、無帽で正面向いているもの)
・学歴証明書(学位がのっているもの)
・犯罪経歴証明書
・退職証明書/職務経歴書
・労働契約書(日本語版であれば中国語訳が必要)
※学歴証明書と犯罪経歴証明書は日本の外務省及び領事館認証(管轄地区)、中国語への翻訳作業が必要。
※資格証明書等で中国語以外の書類は、中国語訳も提出する必要がある。
この就労許可証では点数によりA・B・Cのランク付けがされます。それぞれの定義は下記の表に表されています。
※さらにこの表に書かれている「ランク付け採点表」は下の表です。下記9項目によって点数が与えられ60点以上でBランクとなり、許可証が取得しやすい傾向にあります。
■Zビザの取得(日本)…❷
Zビザの取得(日本)については、日本の中国大使館(中国ビザセンター)へ以下の必要書類を提出し、申請します。
・中華人民共和国査証申請書
・申請者のパスポート(原本)ならびに証明写真のページ(コピー)
・証明写真1枚(4cm×3cm、背景白、無帽で正面を向いているもの)
・被授権単位査証通知表(原本ならびにコピー)
・就労許可証(原本ならびにコピー)
■健康診断(日本または中国)…❸
健康診断については、就業許可証を取得すれば受診可能になります。つまり、中国入国前でも入国後でも受診可能です。電話またはインターネット上で指定された病院へ予約し、受診します。日本で受診した場合で未診断項目があった場合は中国側にて追加で受診する必要があります。受診の際は以下の書類が必要です。
・予約表
・同意書
・申請書
・パスポート(原本ならびにコピー)
・証明写真1~4枚(襟付きの服着用(3.5cm×5.3cm))
・現地法人の営業許可証のコピー
■外国人就業証の取得(中国)…❹
外国人就業証の取得(中国)については、各地域の外国人就業センターや出入国管理局に下記書類を提出し、申請を行います。この手続は、中国入国後30日以内に行う必要があります。
・外国人就業登記表(2部)
・現地法人の営業許可証ならびに組織機構コード(いずれもコピー)
・退職証明書/職務経歴書
・パスポート(原本ならびにコピー)
・健康診断書(コピー)
・証明写真1~3枚(いずれも4cm×3cm)
・労働契約書(日本語版であれば中国語訳が必要)
■居留許可証の取得(中国)…❺
居留許可証の取得(中国)については、各地域の出入境管理局へ下記の書類を提出し、申請します。この手続は、中国入国後30日以内に行う必要があります。
・境外人員臨時住宿登記単(㋭テルまたは管轄派出所で手続ならびにコピー)
・パスポート(原本ならびにコピー)
・ビザ(原本ならびにコピー)
・健康診断書(原本ならびにコピー)
・現地法人発行の招聘状
・現地法人の営業許可証(原本ならびにコピー)
・就労許可証
・就業許可証スキャンした際の情報ページ
・証明写真1枚(4cm×3cm)
※全ての外国語文書は翻訳会社の証明付きで翻訳されている必要があります。
参考文献
・国家统计局
・人力资源和社会保障部
全国各地区最低工资标准情况(截至2023年4月1日) (mohrss.gov.cn)
・科学技术部
首页 - 外国人来华工作管理服务系统 (most.gov.cn)
・中国签证申请服务中心
Chinese Visa Application Service Center (visaforchina.cn)
・中华人民共和国劳动法
・中华人民共和国劳动合同法
《中华人民共和国劳动合同法》(全文) (www.gov.cn)
・JETRO
就業・就労ビザの種類とその取得方法:中国 | 貿易・投資相談Q&A - 国・地域別に見る - ジェトロ (jetro.go.jp)
・全国年节及纪念日放假办法
・国務院カレンダー(国务院办公厅关于2024年部分节假日安排的通知)
国务院办公厅关于2024年部分节假日安排的通知_其他_中国政府网 (www.gov.cn)