会社法
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+ .1 .事業形態と会社の種類
事業形態と会社の種類
インドネシアで現在有効な会社法は、2007年法律第40号です。また、一部がオムニバス法(2020年法律第11号)で改正されています。当該会社法によれば、会社とは株式会社(PT:Perseroan Terbatas)を指し、「契約行為に基づき設立され、株式の形に分割される授権資本金を持って企業活動を行い、この法律と施行細則に定められた条件を満たしている法人」と定義されています(1条1号)。インドネシアにおいては、日本の会社法上の合名会社、合資会社および合同会社に相当する会社は規定されていません。株式会社は、日本法と同様、間接有限責任の範囲で株主の責任が規定されています。ただし、例外的に、①会社が法人として要件を満たしていない場合②株主が個人の利益のため、会社を利用する場合、③会社の行った違法行為に個人が関与する場合、④株主が法令に反して会社資産を利用し、債務超過に陥らせた場合には、株主個人に対する責任追及が認められています。
駐在員事務所を含めて、外国資本による事業形態をまとめたものが次の図です。支店の形態もありますが、銀行など業種に制限があるので、株式会社、駐在員事務所の2つの形態が一般的です。
■現地法人の設立
外国企業がインドネシアに現地法人を設立する場合、株式会社(PT)の形態でなければなりません。外国企業によって設立された株式会社は外国投資企業(PMA:Penanaman Model Asing)と呼ばれます。
■株式会社の分類
株式会社は株主の数、最低授権資本金の額および株式市場への登録の有無によって以下の3つに分類されます。
[非公開会社:PT Tertutup]
株式会社の最低株主数は2人と規定されています。会社法上では、銀行業、保険業など法律に定められた特定分野を除き、株式会社の最低授権資本金は5,000万ルピアと規定されていましたが、オムニバス法による変更後は創設者の任意の金額を定めることが可能です(32条2項)。
[公開会社:Perseroan Publik]
公開会社については、最低株主数は300人、最低授権資本金は30億ルピアという条件が規定されています。公開会社には、多くの株主を保護するために、会社法以外にも金融サービス庁(OJK:Otoritas Jasa Keuangan)の規制も適用されます。
[証券市場に登録済の会社:Emiten]
証券市場に登録済の会社の場合は、金融サービス庁に対し、一般に株式を販売するために、登録届出書を提出しなければなりません。証券市場に登録済の会社であって、金融サービス庁が当該登録を有効であると認めた会社のみが、証券取引所に上場することができます。
株式会社の特色は、下記のとおりです。
+ .2 .株式会社の機関体系
株式会社の機関体系
インドネシアの会社法上の機関体系は、株主の意思決定機関としての株主総会と、株主総会の選任を受けた取締役(会)、ならびに監査役(会)から成ります(1 条 2項)。各機関は、その設置が義務付けられているという点で共通していますが、公開会社か非公開会社か、一般向けに社債を発行しているか否かなどの違いにより、各機関の人数の要件が異なっています。また、日本の会社法と同一の呼称であっても、その役割が異なる機関もあります。特に監査役(会)については、日本の会社法上の監査役の役割と比べて、強い権限を有しているという特徴があります。したがって、これからインドネシアへ進出する日本企業は、自社で検討した機関設計がインドネシア会社法を遵守するものであることを確認するとともに、各機関の役割を十分に把握した上で、適任者を選ぶ必要があります。
株主総会
インドネシア会社法上、株主総会は年次株主総会と臨時株主総会から構成されます(78条1項)。年次株主総会は、会計年度(通常は12月末)終了後から6カ月以内に開催することが義務付けられています。一方で、臨時株主総会は議案が発生した段階で、適宜開催することができます。
年次株主総会では、取締役・監査役の選任および解任および報酬の決定など、会社法で決められた事項の決議を行います。
臨時株主総会では、取締役が必要と判断する場合に、あらかじめ定款で株主総会の決議事項とされている事項、あるいは会社法において、決議事項となっている事項について決議します。
また、議決権の10分の1以上の株式を有する株主、監査役会が要求する場合には、株主総会を開催しなければなりません。具体的な決議事項としては、取締役の急な退任に基づく選任決議や、合併・買収等の組織再編行為、会社の解散、清算による法人格の消滅にかかわる事項等が挙げられます。
■株主の権利・義務
株主は、会社法上、出資金額に応じて議決権を行使し、配当を受領する権利を有します。かかる権利に対しては、定款により制限を加えることが可能です。
また、株式の共有も可能ですが、 かかる場合には株主としての権利行使は、指名された代表者により行われます。
1株でも株式を保有している株主は「社会的に保証されている権利」として、株主総会における決定事項に対する公平性や適切性に正当性を認めることができず、損害を被った場合は地方裁判所に会社を提訴する権利を有しています。(61条)
その他少数株主保護のために、以下のような規定が設けられています。
■招集方法
[招集の時期]
株主総会の招集は、開催日の14日前までに行うと規定されています(82条1項)。この規定は株主の利益の保護のためであり、定款でこの日数を短縮することはできません。
株主総会の招集通知は書留郵便もしくは電子公告またはその両方によって行います(同条2項)。
[開催場所]
株主総会は、会社の本店所在地または会社の主要な事業を行っている場所にて開催されます(76条1項)。全株主またはその代理人が出席する株主総会において全会一致で決議した場合には、インドネシア国内の任意の場所で株主総会を開催することが可能です(同条4項・5項)。
実務上、株主が実際に同一の場所に集まることなく、電子媒体(電話会議、ビデオ会議)を通じて開催されることが多くあります。この場合でも、定足数や決議要件については通常の株主総会と同じです(76条2項・3項)。のちに議事録を作成しますが、この場合、当該議事録には全参加者が署名しなければならないとされています(同条4項)。
[招集権者]
原則的に、株主総会の招集権者は取締役(会)です(79条1項、81条1項)。一方、10%以上の議決権を有する株主および監査役(会)も、取締役(会)に対して株主総会の招集の請求が可能です(79条2項・3項)。取締役(会)は株主もしくは監査役(会)から要請を受けた日から15日以内に株主総会の招集を行わなければなりません(79条5項)。もっとも、取締役(会)が招集を行わない場合、それが株主の要請による招集であれば、当該株主は監査役(会)に対し、招集請求ができます。また、監査役(会)も招集請求に応じない場合、当該株主は地方裁判所に招集請求を求めることができます。
[招集通知]
招集通知は書留郵便もしくは新聞公告で行い、株主総会の日時、開催場所および株主総会での議題を記載します(82条3項)。
■決議要件
株主総会において株主は、本人が出席するか委任状を有する代理人を出席させるか、いずれの方法でも議決権の行使が可能です(85条1項)。ただし、会社の取締役、監査役または社員は株主の代理人になることはできないため(85条4項)、たとえば、株主が現地駐在社員に対して委任状を発行しても議決権を行使できません(85条5項)。したがって、この場合、改めて株主総会の議事録を作成の上、欠席した株主が署名をする必要があります。
株主総会の議事進行については、会社法上の特別の規定がないため、議事運営や投票の方法等、一定の事項を定款に定めておく必要があります。
会社法に規定する株主総会の決議事項とその定足数・議決数は下記のとおりです。いずれも定款により条件を加重することは可能です。
※ムシャワラの精神(87条)
インドネシアには、ムシャワラ(インドネシア語で話し合い)の精神が会社法に定められております。そのため、会社法上の規定に則り過半数の決議がされていたとしても、例えば合弁会社のパートナーが承諾に応じなかった場合、無効となる場合があります。種類株決議よりも、このムシャワラ(話し合い)による決議の全会一致の精神が優先されることがあることを理解しておく必要があります。
■議決権
・1株1議決権の原則
株主は、原則として1株につき1議決権を有します。もっとも、定款で規定することで、議決権を有しないとする種類株式を発行することが出来ます(84条1項)。ただし、以下の株式は議決権を行使することが出来ません(同条3項)。
① 自己株式
② 自己の子会社が保有する株式
③ 自己が株式を保有する他の会社が保有する株式(いわゆる相互保有株式)
■議事録作成
株主総会が開催された場合には、議事録を作成し、株主総会の議長と議長に指名された株主総会の出席者のうち1名が連名で署名します(90条1項)。これは議事録が、総会の内容を正確に反映したものであることを確認するための規定です。ただし、議事録を公正証書の形式で作成する場合には公証人の署名により内容が正確なものを反映しているとみなすことができるため、上記の連名は不要です(同条2項)。
■書面決議(91条)
会社法上、持ち回りによる書面決議が認められています。決議事項に関し、署名による全ての株主の同意があれば、通常の株主総会で決議を得たものと同様の効果を認めることが出来ます。
取締役(会)
取締役(会)は、株主総会により選任された、会社の意思決定機関です。
国籍等の要件はありませんが、それぞれ、人数、任期、資格等、詳細 について定款にあらかじめ定めておく必要があります。
(注)
・取締役が1名の場合には、その1名で取締役会が構成されます。監査役の場合も同様です。
・具体的な任期は明文規定がありませんが、再任は可能です。
・選任や解任の方法、手続などは定款で定めます。
■取締役の選任・解任
先述のように、取締役の選任および解任は、株主総会において決定されます(94条)。ただし、取締役が不適当と認められる場合、監査役は、取締役の権限を一時的に停止する権限を与えられています。その間に、新たに、株主総会を開き、既存の取締役の解任、新たな取締役を選任することが可能となります。
以下に該当する者は取締役にはなることが出来ません。
① 法人
② 行為無能力者
③ 5年以内に以下の事由に該当した者(93条)
・自己破産した者
・自己が取締役または監査役であった会社が破産し、当該破産の責任がある旨、認定された者
・国家の財政とそれに関連する金融部門の双方又はいずれかに損害を与え、刑事罰を受けた者
この要件に該当する取締役が選任された場合は、他の取締役または監査役がその事実を知った時点から法的に無効となります(95条1項)。この場合、取締役会または監査役会は、その事実を発見してから7日以内に、その取締役選任の取消しを新聞に公告するとともに、法務人権省に報告しなければなりません(同条2項)。
■会社と取締役の関係
取締役には、会社に対する善管注意義務・忠実義務が要求されますが、同様に利益相反関係となる場合にも、当該取締役は会社を代表することができません。
■取締役の報酬
取締役の報酬額は株主総会の決議によって規定されます。当該決議には、金銭による報酬の他、手当・賞与、住宅など一切の報酬が含まれます。なお、会社と取締役の関係はあくまで委任・準委任契約となります。従って、取締役には労働法上の規定が適用されません。
■取締役の責任
取締役には善管注意義務・忠実義務が要求されますが、これに反して会社に損害を与えた場合には、会社に対し損害賠償責任を負います(97条3項)。もっとも、以下に該当する取締役には、当該責任が免除されます(97条5項)。
① 当該損害が、取締役の任務懈怠によるものではないこと。
② 当該取締役が、信義に基づき、かつ会社の設立趣旨及び目的に従って、会社の利益のために業務執行を行ったこと
③ 当該損害の原因となった業務執行に関し、直接・間接的に利益相反関係になかったこと
④ 当該損害発生を防止する措置をとったこと
なお、会社法上は取締役の第三者に対する責任は明記されていませんが、民法上不法行為責任が成立する場合には、当該責任を連帯して負うことが裁判例により認められています。
■外国人取締役の常駐の必要性
外国親会社がインドネシアへ進出するため法人設立を行う際、外国人取締役が常駐する必要性については会社法上では明確に示されていません。ただし、最低一名の取締役はインドネシアに常駐する必要があります。
税務申告書などの毎月発生する税務書類へのサインは、居住者でNPWP(納税者番号)を持つ取締役のみが可能です。居住者であれば国籍は問わないため、インドネシア人の取締役がいる場合には、外国人取締役が常駐する必要はありません。
また保税工場・保税倉庫の認可取得および更新、輸入業者であれば輸入業者認定書のサイナーなど、取締役にしかサインできない書類が多々あることと、併せて取締役本来の役割である会社の経営を行うことを全うするためにも、常駐する必要があると考えられます。
監査役(会)
インドネシア会社法上の大きな特徴として、コミサリスと呼ばれる監査役の存在が挙げられます。
日本における監査役と同様の位置づけですが、前述のように、取締役の権限を一時的に制限したり、業務差止権を有するのが特徴です。
監査役の選任・解任は、取締役と同様に、株主総会での決議によります。
■監査役の人数
監査役の選任人数は、1 名以上です(108条3項)。
国籍や人数等は問いません。
■監査役(会)の責任
監査役(会)の名目上の役割は、会社経営の監督および取締役へのアドバイスです。そのため、取締役に対して、その業務を監査する責任を負います。
加えて、管理監督下にある取締役に、不適切な経営上の行為があるような場合、業務の差し止め、権限の一時的停止処分を行います。
■監査役(コミサリス)の報酬について
監査役の報酬は、株主総会決議によって定められます(113条1項)。理由としては、取締役会からの独立性を維持するためです。
■監査役会(コミサリス会)
監査役会は、全ての監査役によって構成され、取締役会に対する助言や経営を監督する機関です。監査役会の具体的な手続については会社法上規定されておらず、専ら定款によって規定する必要があります。なお、株主総会から権限移譲があった場合には、取締役の報酬を決定することが出来ます。
また、一定の事由がある場合には、取締役の業務執行を一時停止させることが出来ます(106条1項)。もっとも、当該取締役には弁明の機会が付与され、後の株主総会によって業務執行の停止や解任が正式に決定されます。
■イスラム法監督評議会
イスラム法に基づいて事業を行う会社については、監査役会とは別にイスラム法監督評議会を設置しなければなりません(109条1項)。これはインドネシア特有の機関であって、取締役会にアドバイスや提案をするほかに、会社がイスラム法の原則に則った活動を行っているかを監督する機関です(同条3項)。この評議会は、イスラム学者評議会の推薦に基づいて、株主総会で選出された1名以上のイスラム法専門家で構成されます(同条2項)。
会計監査人
日本では、金融商品取引法上の公開会社、会社法上の大会社に該当する会社は、公認会計士の監査を受けることが義務付けられています。インドネシアでは会社法および商業大臣決定により、以下に該当する会社に対し決算報告書についての公認会計士監査が義務付けられています(会社法68条1項、2020年商業大臣決定第25号)。また、会計監査人はインドネシア国の公認会計士でなければなりません。
・一般との間で資金を調達ないしは資産運用する事業を営む会社
・一般向けに社債を発行している会社
・銀行債務を有する会社
・公開会社
・国有会社
・外国投資企業
・資産が250億ルピア以上の会社または売上が500億ルピア以上の会社
+ .3 .株式
株式と株式の種類
株式とは株主としての地位を証する書面のことで、会社が株主に対して一定の証書を発行します(51条)。株式には保有者の名前を記載し(48条)、インドネシアルピア建で額面金額を記載(49条2項)する記名式、額面株式です。ただし、会社が株主に対して発行する株式の保有者であることの証書は形式について特に指定があるわけではありませんので、これは必ずしも株券の形式をとる必要はありません。その中でも、①額面価格、②株主名、③表章する株式の種類および株式数等の株式の情報を記載する必要があります。
会社は定款で定めた場合には複数の種類株式を発行することができます(53条1項)。種類株式について下記のとおり例示しています(同条4項)。
・議決権株式または無議決権株式
・取締役または監査役の候補者を立てる権利を有する株式
・一定期間経過後に消却される株式、または他の種類の株式に転換される株式
・配当(累積的または非累積的)を他の株主より優先して受ける権利を有する株式
・他の種類の株式に優先して清算時の残余財産を受領する権利を有する株式
同条に記載された種類株式は例示として認識されており、上記以外の種類株式や、上記の組み合わせも理論的に可能と解されます。ただし、種類株式自体が実務上少ないことから、判例も含めて実際に種類株式の発行が可能かどうかについては弁護士等の意見を聞くなど、最新の実務上の取扱を確認することが必要です。
■株主名簿
会社は株主名簿を作成し、保管する義務を負います。株主名簿の内容は、株主の氏名および住所、株式の種類ごとの株数・株券番号・取得日・払込額、質権状況、現物出資状況等を記載し、状況に変更があればその都度変更する必要があります。(50条1項)。
剰余金の処分
■純利益の積立と配当
会社法上、事業年度ごとに累積ベースで黒字の場合には、会社の財務上の健全性を保つために、純利益のうちの一定額を法定準備金として積み立てることが求められています(70条1項・2項)。法定準備金の積立は、法定準備金の額が払込資本額の20%に達するまで毎年行わなければなりません(同条3項)。その一方で、毎年の法定積立金額については特段の定めはなく、財務上の問題および事業戦略に直結するところでもあることから、株主総会が任意に決定できることとなっています。法定準備金が20%に達した以降の事業年度では、会社法上の積立義務はありません。
上記の法定準備金額および会社の純利益から法定準備金の積立額を控除した残額については、株主総会によってその処分が決議されることになります(71条1項)。原則としては、株主に対して配当として分配しますが(同条2項)、総会の決議で過半数を取ることができれば、将来の投資に備えた内部留保や、特別の功績のあった役員や従業員への決算賞与にすることも可能です。ただし、上記の利益処分(法定準備金および配当)は、累積で黒字になっていることが原則で、仮に赤字が出た場合は、法定準備金を赤字の解消に充当することが義務付けられています(同条3項)。
資本金の増資・減資
■増資
増資とは、会社の設立後に資本を増加させるために新株を発行する会社の行為をいいます。資金調達の手段として、一番よく使われる手法です。
新株を発行する場合には、既存株主と新たに株主になる者との利害調整が必要です。このため、インドネシア会社法では、既存の株主に対して優先的に新株予約権を付与することで、一定の既存株主保護を図っています(43条)。また増資の場合、出資比率が従前のものと変更になる可能性もありますので、外資100%が認められない一部業態については注意が必要です。
会社が増資を行う場合には、必ず株主総会の決議が必要となりますが、決議要件は増資の額により異なります(42条)。すなわち、授権資本枠内の増資をする場合には、過半数の定足数および議決で足りる一方、授権資本枠を超える場合には、3分の2以上の株式を保有する株主の出席および議決が必要です(同条1項・2項)。
なお、どちらの場合も定款および法務人権省の手続は必要となります(同条3項)。
前述のとおり、既存株主保護のため、会社が増資に際して新株を発行する場合には、株式の保有割合に応じて割り当てる旨を申し出なければなりません(43条1項)。これに対し、14日以内に既存株主が株式引受権を行使して対価を払い込まなかったときに初めて、会社は当該株式の引受を株主以外の第三者に提供することができます(43条4項)。
■減資
インドネシア会社法においても、減資は可能とされていますが、会社が資本を減少させる行為は、会社にとって財務体質に大きなインパクトを与えるとともに、債権者にとっても、債権回収という意味において重大な利害が生じることから、株主総会の決議に加えて債権者保護手続が必要となります。
減資に関する株主総会の決議は、3分の2以上の定足数・議決権を有する株主からの承認を得たのち(44条1項)、7日以内に、新聞公告により、債権者に対して通知をする形で債権者保護を図る必要があります(同条2項)。
減資には、定款の変更ならびに法務人権省からの承認が必要です(46条1項)。
資本減少は、株式の消却を行い、実際の会社財産の一部が払い戻される実質上の減資、あるいは株式の額面価格を減額し、帳簿上の資本金を減額する2通りの方法があります。
+ .4 .会社の解散
会社の解散
法人格の消滅をもたらす原因となる行為を解散といい、その後、会社と第三者との間の権利義務関係を解消し、残余財産を株主に分配し、法人格としての法人を消滅する一連の手続きが清算です。
会社の清算は次の4点を行う必要があります。
・会社法ならびに定款の記載に基づく諸手続
・債務整理
・労務上の問題(従業員の整理、解雇)
労働法に規定されている退職金清算をおこなう必要があります。
・納税者番号(NPWP)の抹消手続
会社法ならびに定款の記載に基づく諸手続きについては、株主総会による決議後、新聞公告、そして閉鎖定款を作成した上で、法務省の認可を取得します。併せて投資調整庁(BKPM)に対し外国投資認可抹消手続きを行います。
会社法89条1項には、会社の解散事由を規定しています。同条によれば、会社の解散には株主総会の特別決議が必要とされ、議決権ベースで4分の3以上の賛成による解散決議が必要とされます。特別決議の後、株主総会により選任された管財人が資産・負債整理等の一連の会社清算手続を行います。同管財人は通常、現地の弁護士の中から選任されます。
清算手続が終了すると、管財人は株主総会で清算報告を行います。その後、清算会社は官報への公告ならびに法務人権省への登記抹消を行います。その他、投資調整庁(BKPM)および商業省への登録の抹消も必要となります。
上記の株主総会の決議のほか、下記の事由により、会社は解散手続に入ります(142条1項)。
・定款に規定された会社の存続期間の満了
・裁判所の決定
・破産費用の支払ができないことを理由とした産業関係裁判所(労働裁判所)による破産手続の取消決定
・破産宣告を受けた会社の破産財団が破産および債務の支払猶予に関する法律に規定された債務超過状態にある場合
・法令違反等により会社の営業許可が取り消され、会社を清算しなければならない場合
税務番号(NPWP)抹消手続きの際には、必ず税務調査が入ります。抹消については、個人の場合は6ヶ月以内、法人の場合は12ヶ月以内に決定する旨の規定があります。しかし、12ヶ月以内に抹消手続きが終了することは稀であり、長期にわたって調査対応に追われることが多いのが実情です。また、その期間に手続き対応をおこなう外国人担当者は、インドネシア国内に居住しない場合出張ベースでの対応となるため、多大な費用と労力が必要となります。
+ .5 .オムニバス法での追加事項
零細・小規模事業者
オムニバス法では新たに零細・小規模事業者の基準を満たす個々の法人を対象に含めています(1条1項)。
零細・小規模事業者の基準を満たす法人は、インドネシア市民権を持つ個人が1名から設立することが出来ます(PP Nomor 8 Tahun 2021(細則)6条)。設立の際には、設立目的や事業活動、授権資本等の情報を記載したインドネシア語での設立声明をオンラインで登録します(153A、B条)。
原則として、外国投資企業は零細・小規模事業者には該当しないため、この方法での日本企業のインドネシア進出は現実的ではありません。
+ .6 .参考文献
参考文献
・日本貿易振興機構 (ジェトロ) https://www.jetro.go.jp/indexj.html
・中小機構 https://www.smrj.go.jp/
・KPMG https://home.kpmg/th/en/home/insights.html
・黒田法律事務所『インドネシア進出完全ガイド』カナリア書房、2009年
・PT. Fuji Staff Indonesia 『インドネシア実務法律全集1 株式会社法』PT. Fuji Staff Indonesia 、2012年12月20日(第2版)
・吉田隆『インドネシア会社経営』ジャパン・アジア・コンサルタンツ、2014年