閉鎖・撤退
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会社の清算および撤退
清算について
インドネシアでビジネスをスタートするにあたり、結果的に上手くいかなかった場合の撤退の方法や手続きの流れは、事前に調査しておくべき項目の一つです。また、チャイナプラスワンとしての進出ブームも2017年以降鈍化してきており、ブームに乗って設立した現地法人や駐在員事務の撤退が多くなってきています。撤退に際しては、法人ではおおよそ5年、駐在員事務所ではおおよそ1年半ほどの期間を要します。本章では、インドネシアから撤退する際の流れについて解説していきます。
現地法人清算の手続
■現地法人清算のスケジュール
インドネシアにおける会社の清算は、会社法によって規定されています。
■解散及び清算人の決定 ・・・①②③
会社の清算事由については会社法第 142 条第 1 項により以下のように規定されています
・議決権のある株主の4分の3以上が出席した株主総会で4分の3以上の賛成 (会社法第 89 条第 1 項)
・定款に定められた存続期間が終了したこと
・裁判所の決定 (会社法第 146 条)
・破産宣告が取り消されたこと等
・会社の事業許可が取り消され、会社の清算が義務づけられたこと
一般的には、特別決議の後、株主総会により選任された清算人が資産・負債整理等の一連の会社清算手続を行います。
■新聞告知及び法務人権省(MOJ)の登録抹消・・・④⑤
会社法147条1項により会社の解散日より遅くとも 30 日以内に、清算人は以下に通知を行う必要があります。
・会社の全ての債権者に対して、会社の解散を新聞広告及び官報公告による通知
・所管の大臣に対して、会社が清算中であることを会社登記情報に登録することを求めて通知
上記の手続きが完了すると、法務人権省へ清算手続きの申請を行います。この手続きは公証人によって行われます。
■投資調整庁(BKPM)ライセンスの登録抹消・・・⑥
OSSに登録されている投資調整庁による事業ライセンスの抹消を行います。この時点で事業許可が抹消されるため、インドネシアでの事業活動はできなくなります。
■従業員の整理・解雇・・・⑦
会社法の手続に基づいて、清算ならびに各種ライセンスの抹消が終わった段階で従業員の整理・解雇を行います。労働法(2003年第13号)164条3項によると、会社の不可抗力を理由とせず、合理化を目的とする会社解散について、解雇手当(退職手当/功労金/損失補償金)を規定額支払うことにより労働者の解雇ができる旨を規定しています。しかし、これはあくまでも規程上の最低額であり、総じて労使との交渉の段階で決着するには、それ以上の経費と時間を要します。企業側も、労働者側の生活不安を汲み取り、交渉の段階で誠意を見せることが重要といえます。
解雇の実施は、企業側・労働者双方にダメージが強いです。したがって労務管理上、契約社員・派遣社員の併用等、労働調達源泉をうまく活用し、最小限の解雇で清算ができるよう年単位で計画を練ることが重要です。
会社の設立にあたっては、就業規則に則り、解雇事由は会社の解散である旨を記載し、労働法の規程に基づいて補償額についても言及しておく必要があります。
■納税者番号の返還と税務調査・・・⑧
従業員の整理・解雇の後、納税者番号(NPWP)を返還します。既存企業の税務関係ならびに未払源泉税や法人所得税の整理を行います。これらと同時に、税務調査の対応が必要になりますが、追徴課税のリスクが予測されるうえ、ここから先は多くの時間を要することになります。
国税通則法(2007年第28号)、2条7項によると、納税者番号の返還の申請に対し、法人納税者に対しては12カ月以内に決定を下さなければならないとされています。しかしながら、この期間内に決定が出ることはまれで、それ以上の期間を要しているのが実態です。理由としては、税務時効限度の5過年度分の税務調査が実施され、返還の申請が受領されるまでに5年以上の期間を要すこともあるためです。
また、銀行口座の閉鎖も納税者番号の返還前に行っておく必要があります。銀行口座内で1つでも新たな取引が発生すると、そこを起点に再度税務調査が行われるため、完了までの期間が再度延長します。
税務調査対応は、会社が解散した後に行うため、出張での往来を余儀なくされるなど、対応する担当者の負担という副次的な問題もあります。
税務対応は、対税務署に対するものであるため、不測の事態への対策は難しいところですが、税務上のリスクを認識し、日頃から対応策を練る必要があります。税務調査については、追求されるポイントがありますので、設立段階から日常的なコンプライアンス対策が必要です。
■会社登録の抹消・・・⑧~⑭
納税者番号の返還が終わると、清算人は報告書を作成します。株主総会が清算人の職務完了を決議した後、清算プロセスの最終結果を法務人権大臣に届出及び新聞広告を行います(会社法第152 条第3項)。この届出及び広告は、清算人による報告を株主総会が受領した後 30 日以内に行われます(会社法第 152 条第 7 項)。
法務人権大臣は、届出を受領した後、会社の法人格消滅を登記情報に記録し、会社名を登記情報から削除します(会社法第152条第4項)。
■債務整理の注意点
会社の解散に際して債務整理が必要ですが、解散を余儀なくされる会社は債務超過となっている場合が多く、親子ローンを組んでいればその債務放棄により整理を行うこともあります。
親会社が子会社のローンを放棄すると、子会社側には雑収入として計上され、当該収入に関して追徴課税のリスクがあります。これを考慮し、会社設立時における資本金の設定、借入計画、借入の源泉について解散・撤退も視野に入れた中長期的観点から練る必要があります。
■合弁会社の撤退
合弁会社の撤退において法務上の問題が生じるケースがあります。合弁による会社設立時には、解散に必要な出資比率を念頭に、契約段階で両者の持ち分を決めておく必要があります。
特別決議の規定は定款で加重することが可能です。特にパートナーが少数株主の場合、定款において、当該議決事項を全株主の承認を要する事項等へと変更を要求される場合があります。合弁契約と定款において、特に出資割合、役員構成・選任権、株主総会の決議事項、決議要件の観点から、整合性を持たせる必要があります。
また、撤退に限ったことではありませんが、合弁にあたって出資比率等を決めるのみならず、株式の譲渡制限を付けることも重要です。これにより、議決権行使における想定外のリスクを回避することができます。この場合、両者の合意事項として、撤退を検討するトリガーとなる事由を合弁契約の段階であらかじめ言及しておく必要があります。たとえば、3会計期間連続して赤字を計上する場合は撤退を検討する、といったものです。これにより、両者の共通認識を確認すると同時に、相手に撤退リスクを認識させることにもなります。また、当該事業に対するパートナーの本気度を理解する指針ともなります。
会社設立の実務の観点からすると、合弁により現地法人を設立する場合、投資調整庁での基本許可の段階で、合弁契約書の内容を登録(株主構成、出資比率、資本金)する必要がありますので、上記の内容を盛り込んだ上で、合弁契約ならびに設立までのスケジュールを立てる必要もあります。
合弁による進出を選択するということは、撤退リスクを負うと認識し、合弁によるメリットとの比較衡量することが重要といえます。
駐在員事務所閉鎖の手続
■現地法人清算のスケジュール
インドネシアにおける駐在員事務所の閉鎖は、会社法によって規定されています。
■申請書類の作成・・・①
駐在員事務所設立時と同様に、本社が申請書を作成します。この場合は、駐在員事務所の閉鎖に伴う申請書を作成します。
■公証認証手続き及びOSSへの申請・・・②③
本社国にて公証手続き、およびインドネシア大使館で公証認証手続きが必要になります。その後原本をインドネシア現地へ郵送し、OSSシステムへ閉鎖の申請を進めます。
■社会保険登録(BPJS)の抹消・・・④
OSSシステムの申請も無事に進み、同時に従業員の解雇も進めていきます。BPJSの抹消には、OSSシステムからの閉鎖証明書の提出が求められる可能性があるため、管轄のBPJS事務所へあらかじめ確認が必要です。
■納税者番号の返還と税務調査・・・⑤⑥
納税者番号(NPWP)を返還します。通常、駐在員事務所の税務調査は法人の清算に比べ比較的短い期間で完了することが特徴です。
商事駐在員事務所(KP3A)の場合、納税者番号の返還タイミングでみなし法人税(PPh15)を徴収される事例が多くなっています。
課税対象額は、海外の本社からインドネシア向けに輸出されたCIF価格です。輸入元会社とインドネシア国内の駐在員事務の登録名で税務署が照会を行うことから、一部自社とは関係ない取引まで課税対象とされるケースもあるため注意が必要です。
参考文献
・ 外務省「各国・地域情勢―インドネシア共和国」2022年4月28日
https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/indonesia/
・ インドネシア投資調整庁(BKPM) https://www6.bkpm.go.id/
・ 国際機関日本アセアンセンター https://www.asean.or.jp/ja/
・ 日本貿易振興機構(JETRO) https://www.jetro.go.jp/indexj.html
・ 独立行政法人中小企業基盤整備機構 https://www.smrj.go.jp/
・ 在インドネシア日本国大使館 https://www.id.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
・ 東京青山・青木・狛法律事務所、ベーカー&マッケンジー外国法事務弁護士事 務所編(外国法共同事業)『アジア・ビジネスの法務と税務――進展から展開・ 撤退まで』中央経済社、2011 年