税務
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+ .1 .インドネシアにおける税務
インドネシアにおける税務
インドネシアに居住している個人、またはインドネシア国内の企業と取引を開始する場合、もしくはインドネシア国内においてビジネスを行う場合、何かしら税金の問題が発生してきます。そのような認識がない状態で取引を行えば、後で思わぬ税負担を要求されることも珍しくありません。本章では、インドネシアにおける税制の全体像、個別の税目の解説から、国際間での税務問題まで含めて解説します。
税金の体系については、大きく国税と地方税に分かれており、その中でさらに直接税と間接税に分かれています。
租税法
■国税と地方税
[国税]
インドネシアの税金は大部分が国税であり、所得税、付加価値税、土地・建物税、印紙税などがこれに該当します。
[地方税・地方賦課金]
地方税・地方賦課金の制度は、地方税・地方賦課金に関する法律により定められており、州や地方行政により決定されます。地方税とは、個人や法人などに対する税金で、地方自治体への納付を義務付けている制度です。税目としては、州税として自動車税、船舶税、県および市税としてホテル税、レストラン税などがあります。地方賦課金とは地方自治体が個人や法人などの事業体へ提供する特定のサービスや許認可を対象として徴収する賦課金のことです。具体的には液体廃棄物処理賦課金、建物建築許可賦課金などがあります。
■直接税と間接税
[直接税]
直接税とは、税金を納める「納税義務者」と、税金を実際に負担する者が同じである税金をいいます。インドネシアにおいては所得税、資産税ほか建物税などがこれに該当します。
[間接税]
間接税は直接税とは異なり、納税義務者と実際に負担する者が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接納付するのではなく、他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付します。付加価値税、奢侈品販売税などがこれに該当します。
■インドネシアの税収推移
インドネシアにおいては、近年の経済成長の鈍化から、例年税収不足が問題となっています。
出所:世界経済のネタ帳
2024年におけるインドネシアの税収の内訳を見ると、約半分が所得税による収入となっており、その他については付加価値税(間接税)の割合が34%と高いことが挙げられます。
■税制の歴史
現行のインドネシアの税制度は、アメリカ型の税制度を採用し、1983年に確立されました。それ以前は、オランダ植民地時代から継続されていた賦課課税方式(納付すべき税額を税務署などが決定する方式)が採用されており、税目や税率が複雑でした。2002年に、賦課課税方式から申告納税方式(納税者自身が、納付すべき税額を計算し申告する方式)に変更され、以前に比べて税目や税率が簡素化されています。賦課課税方式から申告納税方式へと変更された背景の1つに、インドネシアにおける石油埋蔵量の減少が挙げられます。将来的に石油が採掘できなくなっても、国家運営を円滑に行えるよう、税収を確保することが求められ、アメリカ型税制度を導入しました。その後、経済環境や政策を反映した改正を行い、現在の税制度に至ります。2021年にオムニバス法により、大幅な税制改正が行われましたが、いまだに煩雑な手続きが求められることもあり、今後もインドネシアの経済状況、社会情勢などの影響により、随時税制改正が予想されるため、常に最新の税制の動向、実務上の取扱いを確認していくことが重要です。
さらに、2024年1月より、インドネシア税務当局(DJP)は、税務行政の近代化を目的として「Core Tax Administration System(通称:コアタックス)」の運用を開始しました。これは、納税者登録・申告・支払い・還付といった一連の税務手続きをデジタルプラットフォーム上で一元化するもので、従来の複雑な手続きや帳票類が簡素化されることが期待されています。今後は、納税者ポータル(DJP Online)での操作が主流となり、帳票形式や申告方法の変更、税務調査の自動化・電子化も進むことが予想されるため、制度面だけでなく運用面でも最新情報の把握が必要不可欠です。
■インドネシアの租税法
インドネシアの租税法は、以下の法律の階層から成り立っています。このうち法的拘束力があるのは国税総局長規定までで、国税総局長通達、書簡については、国税総局内の税務実務上の内部通達の意味合いが強いとされています。
インドネシアの租税法については、法律、特別政令、政令、大統領令、規定・通達、書簡という階層になっており、これは、日本の税法体系において、税目単位で法律、施行令、施行規則、通達が定められているのと類似しています。
以下はインドネシアの税に関連する主要な法律です。
・国税一般通則法
・所得税法(PPh:Pajak Penghasilan)
・付加価値税法/奢侈品販売税法(PPN:Pajak Pertambahan Nilai/PPnBM:Pajak Penjualan atas Barang Mewah)
・土地・建物税法(PBB:Pajak Bumi Dan Bangunan)
・印紙税法(BM:Bea Materai)
・輸入関税法/輸出税(BeaMasuk/Pajak Ekspor)
インドネシアにおいては、税目をPPhやPPNのように略称で記載するのが一般的です。そのためPPh26は所得税法26条と読み替える必要があります。同様にPPNは付加価値税、PBBは土地・建物税の略称です。
インドネシアにおける税務処理の手順、罰則などについては、国税一般通則法により定められており、個別具体的な取扱いについては、各税法で規定されています。また、前記の表に記載されているように、財務大臣や国税総局長は規定により、各税目の詳細な税率や取扱いを決めることがあります。
インドネシアの所得税法については、日本のように所得税法(個人所得税)と法人税法(法人所得税)といった切分けがなく、両税目を含んだ法令となっています。
以下は、頻出する税の略称の例となります。
+ .2 .インドネシア進出にかかわる税務
進出の際の税務
海外に進出する上で、事前に検討すべき税務上の留意事項は以下のとおりです。
・現地国の税制の把握(どのような税目が存在するか)
・投資に対する優遇制度等の有無、その内容
・取引国との租税条約の有無、その内容
・取引に対する課税制度(取引を行うにあたり、どのような税務リスクがあるか)
・現地国で生み出された利益の還流スキーム
現地に拠点を設けずに日本からの輸出販売、代理店を通じた事業活動を行う場合には、関連する税金の種類も少ないですが、現地に拠点を設けてビジネスを行う場合には、インドネシアの内国法人として、インドネシアの租税法に基づき課税されます。
■拠点を設けずにビジネスを行う場合
拠点を設けずにインドネシアの会社と取引を行う場合でも、その取引に付随して税金がかかります。拠点が存在しない場合には、インドネシアにおいては外国法人とみなされ、インドネシアにおいて発生した所得にのみ、インドネシアの租税法に基づき課税されます。
また、拠点がない場合であっても、インドネシアにおいて恒久的施設(PE:Permanent Establishment)認定という形で課税されるケースがあるため、注意が必要です(P.321「インドネシアにおける租税条約」を参照)。
■拠点を設置してビジネスを行う場合
現地の取引が本格的に開始すると、現地に拠点を設けてビジネス展開を行うことになります。以下、それぞれの進出形態ごとに関連する税務規定を検証していきます。
[駐在員事務所を設けて活動する場合]
駐在員事務所については営業活動が禁止されており、基本的に所得は発生しないため、税務上のリスクが生じることはありません。ただし、この駐在員事務所がPEと認定される場合はインドネシアに営業拠点があるものとみなされ、外国法人として所得税が課されます。
みなし利益に対する法人税(pph15)
特定事業会社および一定の商業省管轄の駐在員事務所に課せられます。
注1:本社が日本の駐在員事務所の場合、租税条約に基づき実効税率は0.37%。
原則、駐在員事務所は営業活動を禁じられているため、法人税が発生することはありませんが、国税局側から一部の駐在員事務所に対し、実際は営業活動をしているものとして、みなしで法人税の納税義務を課しています。
課税対象額は、海外の本社からインドネシア向けに輸出されたCIF価格です。原則、駐在員事務所は、当該CIF価格に実効税率をかけて納税額を算出し、輸入のあった翌月15日までに納税する義務があります。撤退までに1度も納税を行っていない場合は、撤退手続きの際に厳しく税務調査が行われます。
[支店などの営業拠点を設けてビジネスを行う場合]
インドネシアに支店を設置して活動を行う場合、支店で発生した利益については通常の法人税率が適用されます。また、支店の税引後利益に対しては、支店のみなし配当課税が適用されます。これは、支店の税引後利益を送金する場合、送金額に対して20%の源泉税を課すものです。なお、日本とインドネシアの間では租税条約を締結しており、所定の手続きを行うことにより源泉税について軽減税率が適用され、源泉税率は10%となります。かつては支店のみなし配当課税については、支店の税引後利益をインドネシアの新設法人に資本参加の形で再投資する場合には、支店の税引後利益に対する源泉税を免除するという規定がありましたが、財務省規則2011年PMK第14号が発行され改正が行われ、上記規定に加えて次の再投資項目について、いずれかに該当する場合も免除の対象となりました。
[新設法人に再投資する場合]
新設法人に利益を再投資する場合には、その新設法人は設立から1年以内に実際に事業活動を始めなければならず、また、その新設法人の事業開始から少なくとも2年間はその投資について他に譲渡することはできない。
[既存法人に再投資する場合]
投資対象の法人は、インドネシアにおいて事業活動を現に行っているものでなければならず、少なくとも3年間はその投資につき他に譲渡することはできない。
[固定資産および無形固定資産を購入する場合]
固定資産等の取得日から、少なくとも3年間はその資産を他に譲渡することはできない。
[現地法人を設けてビジネスを行う場合]
現地法人を設立した場合には、その現地法人はインドネシアの内国法人となるため、インドネシア、その他すべての国で発生した所得に対して、インドネシアで税金が課されることとなります。また、法人税率は外国法人と同様で、一律22%の税率が適用になります。この場合、その他の国の所得につき、インドネシアにおいて二重課税となるときは、外国税額控除の規定によりその重複する税額につきインドネシアにおいて納付すべき法人税額を調整することになります。
投資還流
インドネシアへ進出し、現地での活動を通じて利益が発生した場合、この利益を留保して再投資するか、親会社に還流するかの判断を行うことになります。現地において再投資をする場合には税務上の問題は生じませんが、日本にある本社または親会社へ利益を還流する場合には、その還流方法により税務上の取扱いが異なります。
■支店から本社への還流
インドネシア支店から日本本社へ利益を還流する場合、まず支店の税引後利益に対するみなし配当税がありますので、資金の還流については、支店の税引後利益から、このみなし配当税を差し引いた残額を日本側に送金することになります。支店で納付した所得に対する税金については、日本側において外国税額控除の規定により、税額控除の適用を受けることができます。
■子会社から親会社への還流
インドネシア子会社で生じた利益を日本親会社へ還流する場合、以下の2つの方法があります。
[配当により親会社へ還流する方法]
配当により日本親会社へ還流を行う場合、インドネシア子会社からの配当金支払時に20%の源泉税が課されます。しかし、日インドネシア租税条約においては、軽減税率10%(出資比率が25%以上の場合は10%、出資比率が25%未満の場合は軽減税率15%)が適用されるため、支払総額から10%(もしくは15%)を控除された残額が親会社へ振り込まれます。日本の親会社側では、この配当金については、法人税額の計算上、外国子会社等の受取配当金の益金不算入※の規定により益金不算入となります。つまり、インドネシアにおいて配当に対する10%(もしくは15%)の源泉税を納め、日本側で配当収入に課税しない(益金不算入)ことで、二重課税を回避します。
CoreTax(コアタックス)制度の導入に伴い、租税条約による源泉税軽減を申請する際には、居住者証明書(DGTフォーム)に加えて、CoD(Certificate of Domicile)の申請登録番号(証明書番号)の記載も必要となりました。※日本の法人が、配当等の支払効力が確定するまでの連続する6カ月以上にわたりインドネシアに所在する関係会社の株式を直接に保有している場合に、受け取った配当額の95%が益金不算入となる規定
[親会社との取引を通じて還流する方法]
親会社に対しての経営指導料や使用料の対価、ロイヤルティ等により還流を行う場合、インドネシアからの支払時には、通常は非居住者に対する源泉税(PPh26)20%が適用されますが、日インドネシア租税条約により、租税条約適用のための手続きを行えば、経営指導料や使用料の対価は0%、ロイヤリティは10~15%の軽減税率が適用され、支払総額から控除した額が親会社へ振り込まれます。実務において、配当による還流とロイヤルティによる還流について、負担する税金額の違いは次のとおりです。
[配当・取引の還流による税金負担額の違い]
1,000万円の利益を配当とロイヤルティによりそれぞれ還流する際の条件は次のとおりです。
・子会社株式の保有割合は100%とする
・インドネシアの法人所得税率を22%とする
・日本の法人税の実効税率を40%とする
・便宜上、日本法人の(子会社からの還流前)利益を0とする
・還流額についての合理性、客観性は確保されているものとする
・通貨はすべて円換算しているものとする
・その他の事項は考慮外とする
ケース①:配当によりインドネシア子会社から日本の親会社へ還流する場合
■税額検証
インドネシア側
インドネシアの法人所得税
(A)税引前利益2,000万円×22%=440万円
配当に対する源泉税
(B)1,000万円×10%=100万円
計440万円+100万円=540万円
日本側
(C)日本の法人税
(1,000万円-950万円)×40%=20万円
※外国子会社等の受取配当金の益金不算入額
1,000万円×95%=950万円
[日本とインドネシアの合算税額]
配当に対する源泉税(B)は、日本側では95%控除可能なため税額は20万円です。したがって、インドネシアの法人所得税と日本の法人税を合算すると、以下のようになります。
540万円(インドネシア)+20万円(日本)=560万円(合計)
1,000万円を配当として還流するとインドネシアと日本で納付する法人税の合計金額は560万円となります。
ケース②:ロイヤルティにより、インドネシア子会社から日本の親会社へ還流する場合
■税額検証
インドネシア側
インドネシアの法人所得税
(A)税引前利益1,000万円×22%=220万円
ロイヤルティに対する源泉税
(B)1,000万円×10%=100万円
計220万円+100万円=320万円
日本側
(C)日本の法人税
1,000万円×40%=400万円
400万円-100万円(外国税額控除額)=300万円
[日本とインドネシアの合算税額]
子会社からのロイヤルティに対する源泉税(B)は、日本側では外国税額控除の対象となります。したがって、インドネシアの法人所得税と日本の法人税を合算すると、以下のようになります。
320万円(インドネシア)+300万円(日本)=620万円(合計)
1,000万円を配当として還流するとインドネシアと日本で納付する法人税の合計金額は620万円となります。
2つのケースにおいて設定した前提条件の下では、配当による還流の方が、税負担が少ないという結果になりました。主な理由として、インドネシアと日本の法人税率の差と、日本での海外子会社からの配当が非課税であることが挙げられます。つまり、税率の高い日本で課税される所得の割合が増えるほど税制メリットが少なくなります。
これらはあくまで一例であり、実際の取引条件や規制によって結果が異なることもあります。また、ロイヤルティなどの親子会社間の取引を通じた還流については、移転価格税制の対象となるため注意が必要です。
インドネシアからの利益還流については、還流方法によって負担すべき税額が異なるため、実際に行う際には、包括的なメリット、デメリットを検討し還流方法を選択することが重要です。実務上、高度な判断を求められるため、合理的かつ客観的に慎重に検討する必要があります。
+ .3 .インドネシア国内税法
個人所得税
インドネシアの個人所得税は、所得税法17条2b項に規定されています。インドネシアでは、自己算定方式を採用しており、納税者自らが課税対象所得を計算して納税額を申告します。その際に基準となる所得は、全世界所得となります。
納税者番号(NPWP)は、財務省税務総局が納税強化のために納付者に対して発行する番号で、納税者は納税者番号の取得および保管が義務付けられています(国税一般規定および手続に関するインドネシア共和国法律1983年第6号規定)。納税者番号は、一度取得すればその後の更新等の手続きは不要です。原則として申請は本人が行いますが、必要書類はインドネシア語で作成しなければならないため、代行業者に依頼することも可能です。
下記に該当する場合は、居住者とみなされ申告・納税義務が生じます。
・インドネシアに住所がある。
・インドネシアに、12ヶ月以内に183日超滞在している(183日ルール)
・課税年度内にインドネシアに滞在し、インドネシアに居住する意志がある
実務上、1年以上のITAS(居住許可)を持っており、NPWP(税務番号)を取得している場合は、居住者として扱われます。インドネシアでの滞在期間が6カ月(182日)内の場合はNPWPの取得義務はなく、個人所得税の確定申告を行う必要はありません。
また、租税条約を締結する国の国民に対しては、2国間での条約の内容に従い、居住者が定義されます。その他の場合は、以下のとおりです。
・インドネシアに定常的な住居を有する
・連続する12カ月以内に183日以上インドネシアに滞在している
・課税年度内にインドネシアに滞在し、インドネシアに居住する意思を持つ
インドネシアにおける個人所得税の課税年度は暦年(1月1日から12月31日)とされています。実務上は、1年以上の滞在可能な滞在ビザ(KITAS:滞在許可証)を取得しているかどうかが、税務上の居住者(の場合はPPh21、PPh25)と非居住者(の場合はPPh26)を区分する判断基準になっています。課税される所得の範囲は以下のとおりです。
インドネシアにおいて居住者となった場合には、インドネシア国内の所得だけでなく、所得を受け取った場所にかかわらず、発生した所得のすべてがインドネシアにおいて課税され、全世界所得での申告が必要になります。日本からの駐在員で、インドネシアにおいて居住者となった者が、日本国内に不動産等を有していて、そこから賃貸収入などが発生する場合には、日本とインドネシアの両所得を合算して、インドネシアにおいて所得税が課されることになります。インドネシアと日本の両国で課税されたときは、インドネシアでの確定申告時に、外国税額控除の規定(PPh24)により重複する税額を控除することができます。
駐在員が非居住者である場合には、インドネシア国内で発生した国内源泉所得のみインドネシアで課税されます。それ以外の国外所得については、インドネシア以外の各国において課税されます。
インドネシアの税法上では、居住者は、インドネシア国内に183日を超えて滞在または、インドネシア国内に住居を有するもしくは移住する意思のあるものと定義しています。しかし、日本の所得税法では、国内に住所を有する、または現在まで引き続いて1年以上居所を有する個人を居住者と定義しています。日本から1年未満の出張でインドネシアへの滞在日数が183日を超えるような場合は、日本とインドネシアの双方で居住者の認定を受け、両国で所得税が課されることになります(二重課税)。
なお日本において居住者は、居住期間により永住者と非永住者に区分されます。
永住者
原則として、10年以上継続して日本に在留している者
非永住者
居住者のうち日本国籍がなく、かつ過去10年以内に日本に住所または居所を有する期間の合計が5年以下の者
設立間もない製造子会社の立上げ支援などで、インドネシアの子会社等に派遣される場合、あるいは業務のために頻繁にインドネシアに出張する必要があり、結果としてその滞在日数の累計が183日を超える場合、この二重課税に該当するケースは少なくありません。仮に、両国で居住者に該当する場合には、両国間で締結されている租税条約に基づき、いずれか一方の国の居住者となります。また、日本からの短期の出張や現地視察などにより滞在日数等が一定の要件を満たす場合には、海外勤務分の所得については租税条約に基づき免税となります。
■所得税額の計算
インドネシアにおける所得税額は、次のように算出します。計算するにあたり、その年におけるすべての収入から、課税される所得と非課税とされる所得とを区分します。
①課税年度におけるすべての収入のうち非課税とされる収入以外の総課税金額を集計
②総課税所得から所得控除額を控除して、課税対象となる課税所得を算出
③②の課税所得に所得税率を乗じて、所得税額を算出
④③の所得税額から税額控除を差し引いた納付税額を納付
■課税対象となる所得の範囲
所得税額の計算上、課税対象となる所得は、納税者の経済力が増加する、あらゆる収入をいいます。主なものとして、以下のものがあります。
・給与、諸手当、賞与
・配当
・ロイヤルティおよび権利使用料
・外貨のレートの為替差益
・くじ引き賞金
・会社負担の家賃、車など
収入であっても所得税法上課税されないと規定されている主な非課税所得は以下のとおりです。
・寄付金
・事業関係または支配関係のない者からの贈与または援助
・相続財産
・健康保険、傷害保険、生命保険、総合保険、学資保険等、保険会社から個人に支払われる保険金
・財務大臣が認可した年金基金を受け取る雇い主、従業員の双方からの掛金、これらの年金基金を、財務大臣が定めた事業分野に投資した結果得た利益
・奨学金(財務大臣規則に定められた要件を満たすもの)
・教育、調査、開発の分野で活動し、すでに所管に登録された非営利法人が受け取る収入で、それらを受け取った後4年以内に、教育、調査、開発の活動手段、設備の形で再投資されるもの
・社会保障機関(BPJS:Badan Penyelenggara Jaminan Sosial)から特定納税義務者に支払われる援助金または保険金
■課税対象外となる所得の範囲
2022年以降の課税期間において、2021年10月29日制定の国税規則調和法(No.7/2021/HPP)により、限定された例外を除き、現物支給は課税対象となりました。そのため、会社負担の家賃や車などは個人の所得としても扱われることとなります。
〈例外一覧〉
・全従業員に提供される食品と飲料
・特定の地域での現物支給
・仕事を遂行するために必要な現物支給
・地域/州の歳入予算を財源とする現物支給
・一定の基準を満たす特定の種類の現物支給
■経費として控除されるもの
個人所得税が課される所得金額については、収入金額からその収入を得るために支出した金額を控除して算出します。ただし、事業を営んでいない個人については、経費として控除される金額は少なくなります。
■所得控除
上記により算出した所得から、以下の所得控除額が控除されます。インドネシアでも、日本と同様に各種所得控除が認められていますが、日本の所得税と比べると少額であるのが現実です。
■最終分離課税(ファイナル・タックス)
最終分離課税(ファイナル・タックス)とは、確定申告時に、全体の収入から分離して計算されるものをいいます。通常の個人の所得税確定申告の際に、課税所得として合算する必要はありません。主な最終分離課税所得として、以下の項目が規定されています。イメージとして、日本における銀行預金に対する利息(源泉分離課税)と同じような取扱いをするものになります。
・定期預金や貯金の金利収入、社債、国債の金利収入および個人会員の組合への預け入れ金に対する利息
・くじ引きの賞金による所得
・証券取引所における株式、その他証券取引、デリバティブ取引およびベンチャーキャピタル会社による保有株式の売却や出資金の譲渡取引による所得
・土地、建物などの資産譲渡、建設サービス業、不動産業、土地または建物の賃貸による収入
・その他政令によって定めるもの
■税率
税務上の居住者は、総収入額から各種控除額を差し引いた課税所得の額に応じて、5段階の累進税率が適用されます。
また、2009年11月より、退職金と政府認定の年金基金や社会保障制度からの老齢保障の貯蓄型退職金における一時払形式の所得については、優遇税率が適用されるようになりました(2年以内に支払われる退職金が対象)。
また、2年以内に支払われる政府認定の年金基金や、社会保障制度からの老齢保障貯蓄型の一時払形式の所得には以下の優遇税率が適用されます。
なお、3年目以降の申告時には通常の税率が適用されます。
■申告・納付
所得税額の算定を行った後、個人所得税の申告ならびに納付手続を行います。個人の課税対象期間は暦年とされているため、申告・納付期限は翌年の3月31日となります。インドネシアにおける申告・納付について、所得控除一覧に記載されている所得控除額以上の収入があるすべての個人は、納税者番号を取得し、確定申告をしなければならない旨が規定されています。確定申告では、個人の給与所得、資産運用、資産売却収入、その他のすべての所得を申告する必要があります。各税務申告等を怠った場合には税法上の罰則規定があります。納税の遅延については月次2%(インドネシア財務省が定める利率)の遅延利息がかかるほか、月次申告書の遅延については1回の遅延につき10万ルピアの罰金が科されます。
■納税者番号の取得・登録
所得控除一覧に示されている、所得控除額以上の年間所得のある個人納税者は、国税総局において、納税者番号(NPWP:Nomor Pokok Wajib Pajak)を取得・登録し、所得税の確定申告をしなければなりません。NPWPはIMTA/ITASを持っている人でなければ、取得することができません。その際には、全世界所得を合算し、個人の資産、負債の要約リストの添付が必要です。納税者番号の登録義務があるにもかかわらず登録を行っていない場合には、ペナルティが科せられるため注意が必要です。納付手続については、年間課税所得が所得控除額を超える場合、申告納税を原則として、月次で予納申告し、年次の確定申告において税額の過不足の精算を行います。納税義務者の家族は同一税務報告単位として取り扱われるため、配偶者および子供の所得と合算する形で確定申告を行います。
法人所得税
インドネシアにおける法人所得税については、所得税法に規定されています。個人所得税とは異なり、法人の課税期間は企業が自由に決めることができます。
■納税義務者
インドネシアで設立された法人、事業体は税法上の居住者として扱われ、全世界所得を合算して課税されます。ただし、国外源泉所得に関しては、源泉地国別に所得を計算し、損失の生じた国に関しては、課税所得には算入されません。インドネシアに恒久的施設(PE)を有する外国法人は、PE自体に帰属する所得について、税務上の居住者と同等の納税義務を負います。
法人が納税者登録などを行わない場合、国税総局長はその職権によって納税者番号を発行することができるとされています。
■課税所得の算出
課税所得は、一般に公正妥当と認められた会計基準に基づいて計算した利益を課税所得の基礎として、損金不算入項目や繰越欠損金等、税務上の調整項目を加減算して算出されます。
■税務上の収益認識基準
各種の収入に対する税務上の収益認識については、基本的に会計上の収益認識基準と同様です。
サービス提供の場合は完了時が収益認識となりますが、取引形態によって、サービス完了前にインボイスの発行があるような場合には、そのインボイスの発行時点が収益の認識時点となります。
■非課税収入/収益
インドネシアの税法では、課税所得の計算上、非課税になる収入/収益が規定されています。以下が主なものです。
・インドネシア政府の許可を得ている協会などからの寄附金
・相続による収入
・インドネシアの内国法人が、他の内国法人へ出資した場合の受取配当金(ただし、留保利益からの配当であること、25%以上の株式を保有していることが条件)
■損金不算入の経費
事業遂行上必要な経費は、損金算入が認められていますが、中には損金算入が認められない経費も存在します。損金不算入の主な経費は次のとおりです。
・株主、パートナー、役員の個人的な用務のために支出される費用
・従業員への現物支給自社製品・商品を低額もしくは無料で支給した場合、借上げ社宅の賃料、会社提供の乗用車および携帯電話関連費用(50%部分)
(ただし、職場においてすべての従業員に提供される飲食物、ユニフォームなどの業務上必要とされる従業員への支給、通勤費などは除く)
・利益の分配
・法人所得税の配当金
・税務上の追徴課税および罰金
・各種引当金、準備金の繰入額(ただし、銀行・リース会社の引当金、保険会社の積立準備金、預託保証協会の保証準備金、鉱業会社の準備金、林業会社の再植林積立準備金、産業廃棄物処理会社、その他財務大臣の定める条件を満たす積立金は除く)
・非課税所得に関連する費用(所得税が非課税とされる受取配当金を得ることを目的として、株式を購入するために用いられる借入金の支払利息など)
・実体のないロイヤリティや経営指導料等の親会社からの提供されたサービス
・寄付金 ※一部例外を除く
■損金計算
課税所得の算出にあたっては、会計上で計上した費用につき、税務上、損金の額に算入することができるか否かの判断が非常に重要になります。以下、主な項目について損金算入の有無を見ていきます。
[創立費]
会社の設立時に直接要した支出額は、税務上、繰延経理もしくは一括損金経理が認められています。たとえば、会社設立時の定款作成費用などが該当します。
[開業準備費]
開業準備費には、会社を設立後、営業を開始するまでに支出された支払利息、従業員の給与、オフィスの賃料などが含まれます。開業までに支出されたすべての費用は、会計上、税務上ともに発生年度の費用として処理されます。したがって、開業準備費は発生年度の損金の額に算入されます。
[新株発行費]
新株発行の際に発生する費用は、会計上、税務上ともに発生年度の費用として処理されます。したがって、発生年度の損金の額に算入されます。
[棚卸資産]
棚卸資産の評価方法は、平均法および先入先出法が選択できます。棚卸資産の廃棄損を損金の額に算入するためには、棚卸資産を廃棄した際に政府職員から認証を取得する必要があります。
[貸倒引当金]
大半の業種(銀行、リース会社を除く)では、税務上貸倒引当金は否認され、実際に貸倒が発生した際に貸倒損失として損金算入が認められます。銀行、リース会社については、財務大臣が非常の場合の条件を定めており、当該規定に則して処理をすれば貸倒引当金の額は損金の額に算入されます。
[貸倒損失]
税務上、貸倒損失を損金として処理するには、次の4つの要件のすべてを満たす必要があります。
①会計上、損金経理をしていること
②裁判所または債券管理・競売機構に債務者名と債権額を報告すること
③債務者名簿を公告すること
④貸倒債権一覧表を法人所得税の年次申告書に添付し、税務署に提出すること
なお、1件当たりの金額が500万ルピア以下の貸倒損失については、②③を省略することができます。債権者と債務者との間で公正証書により債務免除が合意された場合には、当該公正証書の写しを援用することが可能であり、その際は、②③は必要ありません。
[交際費]
交際費のうち、ビジネス遂行上必要な経費であり、かつ以下の記録のあるものについては損金として認められます。
・発生した日付
・接待等を行った場所
・業務との関係性(支出対象者の氏名、社名、業種、職位)
[リース(借手の場合)]
固定資産をリースした場合には、支払リース料が損金として認められます。ファイナンスリースの要件は下記のとおり定められており、会計上と税務上の取扱いが異なります。
・リース期間満了時に割安購入選択権があること
・借手のリース料の総額と、リース物件の残存価額の合計に、当該資産の取得価額と貸手の収益が含まれていること
・リース期間が最低2年以上あること
ファイナンスリースの場合、会計上は、資産計上後に減価償却を行いますが、税務上は支払リース料を損金として処理することができます。
[租税公課]
法人所得税を除く税金については、損金の額に算入されます。
[為替差損]
会計上、毎期継続して適用する方法によって計上した為替差損は、税務上も損金の額に算入されます。なお、ファイナルタックスに関連する為替差損は損金不算入となります。
[有価証券]
所有している株式や資産等の市場価格が下がった際に、評価損として費用計上した場合、インドネシア税法の原則は実現主義、原価主義であるため、評価損は損金として認められず、売却など実際に損益が確定した際に評価損益として計上することになります。
[退職年金]
財務大臣の認可を受けた年金基金への掛金は、損金の額に算入されます。インドネシアでは退職金など引当金ベースで損金算入することはできず、実際に支払をしたタイミングにより損金算入となります。ただし、外部の年金機構などに積立をしている場合などは、毎月の積立のタイミングにより損金の額に算入することが可能です。
[旅費交通費]
出張等の旅費交通費は、ビジネスに関連するものであれば損金の額として認められますが、ビジネスに関連するという証明が難しいため、出張報告書(Business Trip Report)を作成し、保存しておく必要があります。
[寄付金]
寄付金は基本的には損金不算入ですが、政府規則2010年第93号第1条で例外的に損金算入ができる寄付金が規定されています。また、前年度の税引前当期純利益額の5%を超えない範囲で損金算入が可能ですが、以下の条件を満たす必要があります。
・前年度が赤字でないこと
・寄付金を損金算入しても、当期が赤字にならないこと
・寄付金についての証票を法人税申告時に提出すること
・寄付金を受け取る団体がNPWPを持っていること
■有形固定資産の減価償却費
法人が取得した資産につき、耐用年数が1年以上のものは有形固定資産とみなされます。取得価額を償却基礎額として、下表の分類に従って定率法または定額法のいずれかを選択し償却していきます。これら償却方法、償却率に基づき算出した償却費が税務上の損金限度額になります。ここで選択した償却方法は、毎期適用を継続する必要があります。償却開始は通常取得に際して支払いが行われた月からとなりますが、国税総局長の許可を得れば、使用を開始した月または実際に収益を計上した月から開始することが可能です。
税務上、固定資産の減価償却費については、定額法または定率法により耐用年数表で定められた期間で償却することとされています(建物は定額法のみ)。定率法を採用している場合、残存簿価は耐用年数の最終年に一括して償却します。
■無形固定資産
無形固定資産の取得に要した支出額のうち、効果が1年を超える無形資産は、その効果の及ぶ期間にわたって償却を行います。償却率については、有形固定資産の場合に準じて行います。
[減価償却方法の例]
インドネシアの原価計算は建物にかかる減価償却資産分類と建物以外の減価償却資産分類に大きく分けられます。特に商社やサービス業の場合には、通常の事務用品については耐用年数4年ないしは8年の区分に該当するものと考えられます。進出当初、オフィスのリノベーション等を行っている場合には、リノベーションにかかる費用は建物として区分されます。通常のオフィスであれば恒久的な建物として耐用年数20年で減価償却対象となります。また、進出当初に事務用品をまとめて購入している場合であっても、机、コンピュータ等の個別の資産については建物以外の減価償却資産分類に応じてそれぞれ減価償却処理されます。
[資産の再評価]
インドネシア内国法人は、ルピアでの会計を行っている場合に限り固定資産を時価で評価することができます。当該限度は5年に1回となります。
再評価は、会社が所有しインドネシアに所在するすべての事業関連資産(土地と建物は再評価の対象外とすることも可)を含めることが要求されています。資産を再評価しようとする会社は、納税者に未納付の租税債務がないことが証明されなければなりません。具体的な再評価は、公認の鑑定士が評価を行い公正価値によって決定されます。もし、その鑑定価額が公正価値であるとは認められない場合には、国税総局はその評価額を修正できるとされています。再評価をした場合のメリットとして、再評価後の価額が当該固定資産の取得価額となることが挙げられます。すなわち、新規に資産を取得したのと同等の取扱いができることで、再評価益を減価償却費として費用化することが可能になります。再評価を行った場合には、減価償却分類表(P.270を参照)における、第1分類と第2分類に入る固定資産は、最低でもその耐用年数が終了するまでその資産を保有する必要があり、土地・建物と第3分類と第4分類に入る資産は、その再評価日から最低10年は保有する必要があります。
[繰越欠損金]
欠損金については、5年間の繰越が認められています。さらに特定の地域において特定の事業または特定の優遇措置に従い、欠損金の繰越期間が最長10年まで延長されるものもあります。なお、インドネシアでは欠損金の繰戻還付は認められていません。
■税額の算出
法人所得税額は、算出された課税所得に対して、原則22%の法人所得税率を適用し、計算されます。またインドネシアでは内国法人と外国法人との区別がなく一律22%の税率が課されます。ただし、年間総売上高500億ルピア以下の中小企業は、48億ルピア以下の課税所得に対して、半減された税率(11%)が適用されます。
注意すべき点は、法人所得税の年間総売上高500億ルピア以下の中小企業の場合の特例で48億ルピア以下の課税所得の基準は、売上高ベースではなく、課税所得ベースであることです。48億ルピアの課税所得にかかる税率にかかる軽減税率になります。予定納税や源泉税により納付した税額を控除する場合の課税所得の算出例は次のとおりです。
また、年間売上額が48億ルピア未満の場合、売上に対し外形標準課税(税率0.5%)の適用が可能です。
所得課税を適用するか、外形標準課税を適用するか判断は、課税期間終了時に行います。すなわち、課税期間が終了した段階で、48億ルピア以上の売上か否かを判定します。課税期間の途中で設立したような場合は、数ヶ月分の売上を1年分の売上に引き直して計算し、48億ルピア以上か否かを判定します。法人所得税の計算は、課税期間終了後4ヶ月以内とされていますが、当該、外形標準課税の適用は、課税期間の数値が締まった段階で行う必要があるため注意が必要です。また、外形標準課税が適用される間は、繰越欠損を利用することができませんので、48億ルピア以上の売上となった課税期間の翌期以降まで持ち越すことになります。
■納付・申告
法人所得税の納付・申告は、前年度の所得税総額から源泉徴収税額を控除した金額の12分の1を毎月予定納税することになります(下図①)。そして、年度末に確定申告を行います。確定申告は、課税期間を法人の会計期間として、課税対象期間終了後4カ月以内に行います(同②)。納付については、確定申告書の提出前までに行うことが義務付けられています。
[月次申告]
法人・個人所得税について、納税者番号(NPWP)を有する者は、前年度の実績に応じて、毎月法人所得源泉税を予定納付(PPh25)する必要があります。PPh25は、前年度の税務上の利益から為替差損益ならびに輸入の際の前払法人所得税(PPh22)を差し引いた額を今年度の予定納税額とみなし、その12分の1を対象月の15日までに納付します。
[確定申告]
年度末の確定申告の際に、毎月の予納額と確定した年税額の差額を精算することになります。この際に、予納額よりも確定年税額の方が多い場合、つまり、納付に不足があった場合、その不足PPh29)を追加して納付することになります。PPh29は決算日後の4カ月後の末日までに納付しなければなりません。なお、確定申告の際に、納付額の方が確定年税額よりも多い場合、つまり納付超過の場合、当該超過分の還付(PPh28)を受けることができます。還付申請を行う場合は、必ず税務調査が行われます。
付加価値税
付加価値税(PPn/VAT:Value AddedTax)とは、インドネシア国内における経済的付加価値を課税対象とする税金であり、以下のような特徴を有しています。
・物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・税金の負担者は最終消費者である
・中間業者は税負担しないが、納税義務を負う
・毎月申告・納付する義務がある
(VATが発生した月の翌月末までに申告書を提出し、申告書提出前に納税をする)
付加価値税率については、2022年4月1日から「税制調和法(UU No.7/2021)」に基づき10%から11%に引き上げられ、さらに2025年1月1日からは「財務相規則(PMK No.131/PMK.03/2024)」に基づき原則12%に改定されました。ただし、同規則により、12%の適用は奢侈品税(PPnBM)の対象となる高級品に限定されており(自動車、高級住宅、飛行機、ヘリコプター、ヨット等)、その他の一般的な物品・サービスについては、税込価格から「12/112」を用いて逆算する方式が定められ、実質的には11%相当のVAT率が適用されています。
■納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、VAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、ならびに物品の輸入者であり、個人・法人を問わず納税義務が発生します。営業を目的として、商品を製造、輸入、輸出あるいはサービスの提供、売買取引など、いわゆるビジネス活動を行う事業者は、事業活動の本拠地を管轄する税務署において、納税事業者として、納税事業者認証番号(PKP:Pkppengusaha Kena Pajak)を取得・登録する必要があります。なお、年間売上高が48億ルピア未満の事業者は、すべて付加価値税法における小規模事業者とみなされ、付加価値税課税業者(PKP)として登録するかしないかも選択することができません。
(インドネシア共和国財務大臣規則No.197/PMK.03/2013)。
■VATの非課税取引
法律等の別段の定めがない限り、すべての物品とサービスは課税されますが、付加価値税法上のネガティブリストにおいては、以下に分類される物品とサービスについて、非課税として明記されています。
[非課税物品例]
・原油、天然ガス、地熱エネルギー、砂・採石、未加工の石炭、鉄鉱石、錫鉱石、銅鉱石、銀鉱石、ボーキサイト等、鉱脈から直接採集される鉱産物
・生活必需品(米、食塩、トウモロコシ、大豆、サゴ(原生林から採取する食用粉))
・ホテル、レストラン等で提供される飲食物(持ち帰りかどうかを問わず、ケータリング業者によって持ち込まれた飲食物も含む)
・貨幣、金、有価証券
[非課税サービス]
・医療
・福祉(孤児、葬儀など)
・切手を使用する郵便
・金融
・保険
・宗教
・教育
・芸術、エンターテイメント
・無広告のテレビ、ラジオ放送
・陸海の公共輸送、国際航空
・マンパワー
・ホテル
・政府機関による公共事業
・駐車場
・硬貨を使用する公共電話
・郵便為替の送金
VATの免除
非課税取引とは別に、以下の物品およびサービスについては、政府の戦略的目的によりVATの免除が認められています。
[戦略的物品のVAT免除]
2022年12月12日付政府規則2022年第49号および財務相規則2023年第157号において、戦略的物品として規定される課税物品の輸入・国内供給はVATが免除されます。戦略的物品の指定は政府規則によって定められており、以下の物品が指定されています。
・製造業に必要な機械および工場設備(部品は除く)
・農産物、栽培品、漁獲物、養殖品、家畜およびその種子や苗
・牛、鶏、魚類の飼育用の飼料とその原材料
・林業、農業、酪農業に用いる種子や苗木
・国防目的に使用される武器、弾薬、特殊車両、レーダー機器およびその部品
・国営企業が輸入または調達する防衛産業用部品・資材で、政府機関へ供給されるもの
・地図作成、測量、航路図、航空写真作成に用いる特定の機器およびその部品
[その他のVAT免除]
特定の国家目的の達成を支援するため、以下の課税対象物品、サービスの輸入、供給についてVATが免除されます。
・軍隊や警察に使用される兵器、弾薬、運搬車両や装具
・法定予防接種用の小児麻痺ワクチン
・教科書、宗教関係書籍
・国内の商業用、漁業用船舶と部品類
・国内航空会社による航空機と部品類
・PT Kereta APi Indonesia社による鉄道車両とその維持・修繕サービスならびに部品類
・低価格の住宅と低層アパート、学生用住居
・国内の商業船舶会社や国内の漁業会社が受けるサービス、船舶レンタルや港湾サービス、船舶修理やドックサービス
・国内の商業航空会社が受けるサービス、航空機レンタルや修理サービス
・低価格住宅、低層アパート、宗教上の礼拝目的の建物の建設サービス
・低価格住宅のレンタル
■インボイス発行のタイミング
VATインボイスは、以下の時点で発行しなければいけないとされています。
・課税対象の物品やサービスが引き渡された時点(課税対象の物品やサービスの引渡し前に支払いが受領された場合には、支払いが受領された時点)
・作業段階で部分的引渡しがある場合、契約条件に基づく支払いが受領された時点
・財務省やその他行政の規則などで規定されるような場合、その規定される時点
■課税標準額
VATは課税標準額にVATの税率を乗じて算出されます。課税標準額は当事者間で合意された取引価額で、製品の販売やサービスの提供について、受領する価格を意味します。課税標準額として使用される主なものは以下のとおりです。
・市場価格
・売上原価(自家消費や課税物品の無償提供、支店間や本店支店間における社内引渡しなど)
・輸入品は、運賃・保険料(CIF:CostInsuranceandFreight)と輸入関税の合計額
■アウトプットVAT
納付すべきVATについては、アウトプットVATとインプットVATの差額で算出されます。売手は、課税商品や課税サービスを販売した際、買手にVATを請求します。このVATは、売手の立場からはアウトプットVAT(仮受VAT、売上VAT)となります。
■インプットVAT
買手は、課税商品や課税サービスを購入した際、売手にVATを支払わなければなりません。これは買手の立場からは、インプットVAT(仮払VAT、仕入VAT)となります。購入した課税商品や課税サービスが、買手の事業に関連している範囲の場合、このインプットVATは買手のアウトプットVATと相殺できます。同様に、売手もアウトプットVATと課税商品や課税サービを購入したときに支払ったインプットVATとを相殺することができます。
■控除方式(インボイス方式)
控除方式(インボイス方式)とは、毎月受け取ったアウトプットVATから、支払ったインプットVATのうち、控除可能なVATを控除した差額を納付する方法です。
納付税額=アウトプットVAT-インプットVAT※
※控除可能なもの
VATは月次ベースで国税総局に納付・申告しなければなりません。特定の課税期間(月)のインプットVATは、基本的には同じ課税期間のアウトプットVATに対して相殺控除する必要がありますが、その特定の課税期間の終了後3カ月以内であればアウトプットVATと相殺することができます。従来、税務調査開始後に認識されたインプットVATは、控除対象とすることができませんでした。しかし、オムニバス法により税務調査中に認識された未申告のインプットVAT及びSPHPによるインプットVATも相殺可能となりました。
VATインボイスが有効(適切に作成されている)であることは、インプットVATを相殺するために重要なポイントとなります。VATインボイスには、最低限、以下の情報が記載されている必要があります。
・課税物品またはサービス提供者の氏名(社名)、住所、納税者番号
・課税物品またはサービス購入者の氏名(社名)、住所、納税者番号
・課税物品またはサービスの種類、数量、販売価格、料金、割引額(ある場合のみ)
・VAT徴収額
・奢侈品販売税の徴収額(対象品のみ)
・VAT用請求書のコード番号、連番、発行日付
・請求書に署名権を持つ管理者の氏名、役職名、署名
以上の記載要件を満たしていないと、そのインプットVATインボイスは相殺控除に使用することができません。
■申告・納付
1カ月間のアウトプットVATの累計額が、同期のインプットVATの累計額を上回った場合、納税者は対象月の翌月末日またはVAT申告期限の前までに、その上回る差額(超過分)を納税する義務があります。また、特定月のインプットVATの累計額が同期のアウトプットVATの金額を上回った場合は、納税者は過払VATを翌月以降に繰り越すことができ、年度末なら払戻還付の請求ができます。また、VATを計算して0だった場合、PKPを所持している場合にはゼロ申告が必要となります。未申告の場合は500,000ルピアが1か月につきペナルティとして課せられます。
■VAT徴収義務者
VAT徴収義務者(VAT Collector)とは、VAT対象物品の販売およびサービス提供者から、請求されたインプットVATを当該請求元へは支払わず、直接政府へ納付する義務を負う納税者を示します。具体的には国庫(State Treasury)またはPT.Pertamina社を含む生産分与契約(PSC)のいずれかとなっています。課税物品や課税サービスの引渡しに従事する会社は、VATの過払いになる可能性もあるので、その際は還付申請が必要です。
■納税方法
VATは、指定された納税受付銀行(Bank Persepsi)を通じて国庫へ納付します。その後、納税申告書を税務署に提出して納税明細が発行されます。税額の決定については控除方式(インボイス方式)を採用しています。すなわち、納税者が事業関連支出に係るインプットVATと、売上に係るアウトプットVATを相殺する仕組みとなっています。このように毎月のVATを相殺し、納付税額が有る場合(アウトプットVATが多い場合)は、翌月末までに不足額を当局に納付および申告する必要があります。一方、相殺の結果、還付額が発生した場合は、会計年度末に一括して国税総局に対して還付請求をするか、もしくは翌月のアウトプットVATと相殺することができます。国税総局は還付申請を受理すると、税務調査を経た上で、12カ月以内に還付決定を行うこととなっています。
VATの還付
VATの還付申請は、基本的には任意のタイミングにて行うことができます。国税総局は、要件を満たした還付申請を受けた場合は税務調査を行い、12カ月以内にVAT還付申請に関する事項を決定し、還付の有無が判明します。12カ月以内に決定が出ない場合は、当該申請は承認されたものとみなします。VAT還付のための関連する証拠資料は、申請日から1カ月以内に国税総局に提出する必要があります。1カ月を過ぎて国税総局に提出されたすべての書類は効力が無いため注意が必要です。国税総局は、税務調査前の早い段階でVATを還付することができます。基準を満たした還付申請を受領した後、1カ月以内に還付の実行をすることになります。また、早期還付については「優良納税者」という優遇資格があります。これは、納税義務を円滑に履行している納税者に対し国税総局から付与される資格であり、税務調査前の早い段階でVAT還付を受けることが可能です。
優良納税者に指定されるためには、次の要件のいずれかを満たしていなければなりません。
・一定の期間内に納税申告書を遅滞なく提出していること
・犯罪関与がないなど、一定の基準を満たした納税者に対して国税総局から資格付与された地位であること
なお、この措置を適用する必要がない場合には、国税総局に対し書面にて通知する必要があります
優良納税者の指定は、毎年、国税総局が行っています。いったんこの資格を付与されると、早期VAT還付の申請をするとみなされます。この特権を利用しない場合は国税総局に書面で通知をしなければなりません。還付を行った場合でも、国税総局は税務調査を行うことができます。その際、納税者が本来還付されるべき金額よりも多くVAT還付を受けていたことが判明した場合には、その超過金額に対して100%の罰金が科せられるため還付申請には細心の注意が必要です。
■VAT申告
たとえば、ある日系部品メーカーがVATの課税番号(PKP)の取得を終え、当月よりVATを計算する際の管理上の注意点を挙げてみます。
VATは、タックスインボイス(FAKTURPAJAK)という書類に基づき算出します。VAT申告書にはタックスインボイスの通し番号や、発行者の納税者番号、所在地、社名等の情報を記載します。税務当局はタックスインボイスを厳格に運用するため、住所や通し番号等にまちがいがあると申告が承認されないことがあります。そのため、日頃よりミスをしないように管理するスタッフの教育が重要になります。
■E-Fakturと今後の電子税務行政の行方
2015年7月1日より租税局長規則KEP-136/PJ/2014により、すべての会社のVAT申告において、E-Fakturが導入されましたが、2025年1月からは、Core Tax Administration System(CoreTax)への完全移行に伴い、E-Fakturアプリの利用は終了し、VATインボイスの作成・送信・申告はすべてCoreTaxを通じて行うことが義務化されました。
将来的に、オンラインで各社が繋がれ、Faktur Pajak自体の作成が必要なくなることが期待されています。一方で、電子化の仕組みは、BKPMや、イミグレーションといった各省庁で行われておりますが、システム移管の際には、トラブルが起きるのが通常ですので、特にVATの還付の請求をする際などは注意が必要です。そのため、従来通り紙ベースでのFakturPajakの管理を引き続き行い、当局が保管する電子化されたデータとの照合が取れるようにしておくことが必要と言えます。
■サービスの輸出に関する付加価値税の免除
2019年3月29日「サービスの輸出にかかるVATに関する財務大臣規則No.32/PMK.010/2019」
(以下、“PMK-32”)により、サービスの輸出(インドネシアの事業会社が国外事業会社にサービス提供をする場合)については、VATの税率は0%と規定されています。従来の適用では、2010年の財務大臣規則第70号などにより実務的には0%の適用取引は下記3つに限定されていました。
・委託製造サービス
・国外使用物品のメンテナンスサービス
・建設サービス
新たに交付されたPMK-32では「サービスの輸出とは、インドネシアの課税区域内で提供するサービスを課税区域外の事業者により利用されるもの」と規定しています(PMK-32第2条4)。その後、税制調和法(UU No.7/2021)および財務相規則PMK No.73/PMK.03/2022により、サービス輸出に対する0%VAT制度が再確認・整理され、対象サービスの範囲が明確化されました。
本規則により、サービスの輸出には0%のVATとなり(VAT負担が生じない)ことになり国内サービス業の価格競争力向上へと繋がります。これはつまり、これまでインドネシアからサービスを購入する際に日本にある会社がVAT10%をインドネシア事業者から徴収され、これはコストとして負担していたもの(日本での相殺不可)が、VATが徴収されなくなることで税金負担が軽減されることになります。
下記、PMK-32に、新たにVAT0%と明記されたサービス
(1) インドネシア課税区域外で利用される動産に関連するサービスで、輸出用物品に関する貨物輸送サービス
(2) 海外のサービス利用者からの要請に基づき提供され、そのサービスがインドネシア課税区域外で利用されるもののうち以下のサービス
情報技術サービス(コンピュータシステム分析、コンピュータシステム設計、ウェブサイト作成、ITセキュリティ、コンタクトセンター、テクニカルサポート、クラウドコンピューティング、ウェブホスティング、コンテンツ作成サービスなど)
相互接続、衛星、及び/またはデータ接続サービス
研究開発サービス
国際輸送を対象とした航空機及び/または船舶のレンタルサービス
輸出目的で課税区域内の物品調達業者をあっせんする貿易サービス
コンサルテーションサービス(ビジネス・マネジメント分野、マーケティング分野、人事分野、法務・税務・会計・財務監査関連、インテリア・建築分野、エンジニアリング分野)
VATゼロ%の適用を受けるためには以下の要件が全て満たされている必要があります。
① 書面による契約書があること。契約書には、合意されたサービスの種類とその詳細、および価格が明記されていること
② 海外相手方からの支払いを証明する根拠資料があること(取扱い金融機関の確証など)
上記に不備がある場合、サービスはインドネシア関税地域内で提供されたとみなされて、通常のVAT10%が課税されます。
税務上の留意点としては、売上invoiceとともに、サービス輸出申告書(PEJKP/Pemberitahuan Ekspor Jasa Kena Pajak)の発行が義務付けられていること、VAT月次申告書(SPT Masa)において課税サービス輸出としての申告が必要です。(VAT非課税の取扱いとは異なります)委託製造サービスから生じた課税物品についても、既存の税関規則に基づき物品輸出申告書を作成しなければなりません。なお、サービスの輸出のための仕入にかかる仮払いVAT(VAT-IN)は、相殺対象となります。
奢侈品販売税
奢侈品販売税(PPnBM:Pajak Penjualan atas Barang Mewah、高級品売上税ともいう)とは、財務大臣が定める奢侈品(高級品)に対して品目に応じた税率で課される税金です。
奢侈品販売税は付加価値税法に準拠します。インドネシアの課税地域において、奢侈品を製造する企業が、その企業の通常業務として奢侈品を引き渡したとき、または奢侈品を輸入したときに通常のVATに加えて1回限り課される間接税です。
■納税義務者
奢侈品の輸入業者または製造業者が納税義務者となります。これらの課税以降の流通段階においては課されない税金であるため、消費者レベルでの課税はありません。
■税率
税率は、最高税率が200%とされていますが、現在は、10~75%(10%、20%、30%、40%、50%、60%、75%)となっています。自動車・二輪車についてはその排気量により、また自動車・二輪車以外についてはその容量、サイズ、価格等により税率が異なります。特定品にかかる奢侈品販売税の非課税化などが進められており、すでに乳製品、ジュース類、炭酸飲料、化粧品、写真フィルム、絹以外の敷物などが非課税となっています。なお、その他の税率の確認については、関連するHSコード(物品に対する固有分類番号)に照らし合わせて関税率表を確認する必要があります。
■納付・申告
基本的には奢侈品販売税もVATと同様に納付・申告することになります。すなわち、月次単位で発生した奢侈品販売税を、支払った日または請求した日の翌月末日までに国税総局に納付・申告します。この場合、納付を先に行ってから申告書を提出します。2025年1月1日施行の財務大臣規則No.131/PMK.010/2024により、標準VAT税率は12%に引き上げられましたが、一般的な物品・サービスには実務上実質11%が適用されるのに対し、奢侈品販売税が課される品目には12%が適用されます。
その他の税目
■印紙税
印紙税は、10,000Rpの1種類のみとなります。以前は3,000ルピアまたは6,000ルピアの2種類がありましたが、2021年12月末をもって失効されています。
■土地・建物税
インドネシアにおける不動産税としての土地・建物税は、ネガティブリスト形式を採用しており、公共の福祉利用の施設等、免税が認められない限り、すべての不動産について課税されます。課税対象となる土地・建物について、土地の特定の区画に対する実際の税額は、土地、建物の税務売価(NJKP:Nilai Jual Kena Pajak)にその税率に応じて計算されます。税務売価は、特定の土地の不動産課税評価額(NJOP:Nilai Jual Objek Pajak)にあらかじめ決められた割合となります。現在、税務売価は原則40%が適用され、地方政府の裁量により不動産課税評価額の最大0.3%の範囲で税率が設定されます。
・不動産課税評価額10億ルピア未満の物件は、その20%が課税対象額
・不動産課税評価額10億ルピア以上の物件は、その40%が課税対象額
上記の課税対象額に対して、一律0.5%の税率が課されます。つまり、納付税額は不動産課税評価額の0.1%または0.2%となります。また、政府は税務売価の比率を不動産課税評価額の100%にまで増加させることができます。
なお、以下に該当するものについては土地・建物税が免除されます。
・宗教、社会福祉、医療関係、教育と文化の分野で公共の福祉だけを目的として使われ、利益の稼得を目的としないもの
・墓地や考古学的遺跡等のために使われるもの
・大使館・領事館として使われるもの(相手国も同様の措置をとることが条件)
・財務省によって決定された特定の国際組織の事務所や駐在員事務所
・保護森林、自然保護地区、観光のための森林、国立公園、その他の国有地を構成するもの
■不動産取得税
インドネシアにおいて土地・建物を取得する者は、不動産取得税(BPHTB, DAL&BR, Duty on the Acquisition of L&G Rights)を支払う義務があります。課税対象となる土地・建物の権利の移転の主な取引には、売買取引、贈与や相続、会社への寄付、合併、事業結合、拡張や商品の授与などが含まれます。
宗教的な寄付や、宗教サービス提供が目的の取得など、一定の非営利事業目的の移転として土地・建物の権利を取得した場合は、不動産取得税を免除されることがあります。不動産所得税は、課税対象取得価額(実際の市場取引価額)、もしくは対象となる土地不動産の不動産課税評価額のいずれか金額が大きい方となります。特定の取引での税額は、その対象となる課税対象取得価額から、課税免除価額を差し引いた金額に税率(5%)を乗じて算出されます。
課税免除価額は各地方政府によって定められ、地域により異なります。相続取得については、上限3億ルピアの範囲内で地方政府が決定します。また、政府規定により、政府は免除価額を変更できるとされており、それに伴い国税総局は不動産取得税を減免する権利を有しています。減免する率については取引の内容によって異なりますが、公共目的で政府プロジェクトのための土地・建物の権利の譲渡や、M&Aの際の土地・建物の権利の移転に関しては、50%まで減免措置を受けることができます。特定の非営利目的の土地・建物の権利の移転の場合には、国税総局はその税額の25%、50%、75%のいずれかの税率で減免処置を講ずるとされています。いずれの場合も、納税者が国税総局に対して申請する必要があります。
基本的に、事業者は公証人の前で関連する土地建物移転証書に署名した日が納税期日となります。ただし、事業合併、結合、拡張の場合はその契約書の署名日、入札の場合には権限者による入札報告書の署名日が納税期日となります。
輸入関税
輸入関税とは、輸入品の関税評価額に対して課される税金です。適用される税率は、0~150%となっています。関税評価額は、コストおよび保険料、運賃費用(CIF)に基づき算出されます。インドネシア政府は、貿易自由化政策として輸入関税の引下げを段階的に実行中です。安全保障、国内産業の保護、文化的・社会的な観点から、一部の保護産業・物品については、引き続き高率の輸入関税が適用されています。
2010年7月12日をもって、インドネシア政府はASEAN物品貿易協定規則を批准し、2010年1月1日まで遡って発効しました。ASEAN調達品を最低でも40%含み、相互原則にかなうASEAN諸国からの輸入品については一定の軽減税率を適用することが可能になりました。
また、2010年1月1日、ASEAN物品貿易協定(ATIGA)によりASEAN6カ国(ブルネイ、インドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ)においてほとんどの品目の関税が撤廃されました。一部センシティブ品目を除き、2015年1月1日より域内の関税も撤廃されています。
■関税の減免・猶予措置
インドネシア政府は国内および輸出産業の発展を促進するため、国内外投資家に関税の減免と関税猶予措置を設けていています。そのような措置には、特定の資本財の輸入関税減免措置(マスターリスト)、保税地区(BondedZone)、保税倉庫(Bonded Warehouse)やKITE制度(KITE:Kemudahan Impor Tujuan Ekspor)、などがあります。
[輸入関税減免措置]
輸入関税減免措置(マスターリスト)では、条件を満たした機械や原材料の輸入関税の免除を受けることができます。
[保税地区]
保税地区(BondedZone)とは、輸出促進(工業団地・保税倉庫)のために設けられた地域です。ライセンスを取得することによって、保税地区内における課税の優遇措置が受けられます。完成品の50%または半物品の40%以上を輸出する保税地区内の企業については、資本設備と原材料の輸入関税および、その他輸入に係る以下の税金が免除されます。
・付加価値税(VAT)
・奢侈品販売税(PPnBM)
・所得税22条の前払税(PPh22)
[保税倉庫]
保税倉庫(Bonded Warehouse)へ搬入された輸入品については、その物品が実際に国内市場へ供給されるまでは輸入関税の支払いが繰り延べられます。これらの物品は製造業に対して供給される必要があります。
[KITE制度]
KITE制度(Kemudahan Impor Tujuan Ekspor)とは、将来的な製品の輸出を前提とした、原材料の輸入について税務的な優遇を与えるものです。これは、関税および以下の税金を免除するという制度です。
・付加価値税(VAT)
・奢侈品販売税(PPnBM)
■輸出のための輸入納付金の免税および還付措置
[輸入納付金免除]輸入納付金免税とは完成品のほぼすべてを輸入することを条件とし、その製品の生産用原材料輸入に対する関税とVAT/PPnBMが免除されることとなる制度です。
[輸入納付金還付]
輸入納付金還付とは原材料輸入時に課された関税を、後日、完成品を輸出した際に還付請求することができる制度です。
+ .4 .インドネシアにおける税務調査
インドネシアにおける税務調査
■税務調査の流れ
インドネシアにおける税務調査は、税務署からのレターから始まります。
以下は、税務調査のフローチャートとなります。
■税務調査の概要
インドネシアにおける税務の時効は原則5年(2008年度以降)です。この期間内で国税総局はいつでも税務調査を行う権限を有しているため、税務調査で遡及修正を求められるなどの税務リスクが存在することになります。納税者は、税務更正の内容に不服がある場合には国税総局に対して異議申立てを行うことができます。
■税務調査の種類
インドネシアの税務調査には、通常税務調査と特別税務調査の2種類あります。
通常税務調査とは、還付申請や税務番号のキャンセル等の事由を発端とした税務調査をいい、特別税務調査とは、過去に税務調査を受けてない年度に対して実施されます。
通常の税務調査の場合、税務署は納税者の税務申告時点から1年以内に税務調査を完了させなければならないとされています。また、通常税務調査、特別税務調査ともに法人税・VAT・源泉税全てを調査範囲としています。
■税務調査の実態
毎年挑戦的な税収目標が掲げられ、税務署毎に目標金額が設定されています。
各税務署で税収目標に対する目標管理が行われており、かつ進捗が共有されているためにライバル所轄の成績如何によって厳しさが変わり、また達成率により配属が変わるために果敢な税務調査が行われます。
日本との違いとしては、課税事案を第三者的に審理・監督する税務署外の部署が不在のため、署長に全権限が委譲されている点、税務調査官の税制に関する知識・経験が限定的でバラツキがあり、レベルが高いとも言えません。
参考:DGT Annual report 2012-2017;APBNP 2019;
■税務査定書
税務調査が行われる際は税務査定書が発行されます。これは特定の一税務期間もしくは年度に対する特定の一税金について発行され、そこには次の内容が含まれます。
・要納税額
・税額控除額
・要納税額と税額控除額との差額の正味残高(過払、差引ゼロ、または未納)
・罰金(遅延利息や追徴税額)
なお、税務査定書には、要納税額と税金控除額との間の正味残高に関連して、以下の税務査定書があります。
・過払税務査定書(要納税額が税金控除額を下回る場合)
・支払不足税務査定書(要納税額が税金控除額を上回る場合)
・ゼロ税務査定書(要納税額が税金控除額と同額の場合)
支払不足税務査定書が発行される場合には、次の項目が追徴されます。
・月利2%(財務相が毎年告示する利率)の遅延利息(最大24カ月分)
・所得税債務では本税の50%
・源泉税では本税の100%
・VATとPPnBM債務は本税の100%
上記のうちどの項目を追徴されるかは、納税義務違反の内容によって決まります。
■税務調査のタイミングと内容
法人に対する税務調査は、課税年度のうち特定の期間につき特定の税金だけを対象とする場合と、すべての税金を対象とする場合があります。税務調査は会社の現場、税務署内、またはその両方で実施されます。
納税者が税金の還付請求をすると、税務調査が行われることになります。国税総局は還付請求について、12カ月以内に決定を下す義務があるため、それに対応する税務調査は還付請求日から起算して数週間から数カ月以内に開始されることになります。
法人所得税の還付請求の場合は、すべての税金を対象とする税務調査が行われます。その他の税金の還付請求の場合、一般的に特定の税金を対象とする税務調査が行われます。主に以下のような場合、税務調査を受けるリスクがありますので、あらかじめ注意が必要です。
・納付税額が過払いになっている場合
・年次法人所得税申告書において税務損失を計上している場合
・税務申告書が規定の期間内に提出されなかった場合
・無差別によるサンプリング調査
[1カ月ルール]
税務調査の対象となる納税者は、税務調査官から要求された書類と情報を、要求日から1カ月以内に提出しなければなりません。納税者に関係会社との取引がある場合には、これらの要求資料には移転価格関連書類が含まれることもあります。1カ月以内に書類と情報を提出できなかった場合は、国税総局の税務調査官により、その裁量範囲内で税務債務が強制的に決定されることがあります。そのため、迅速に対応できる体制を構築しておくことが重要です。書類と情報が1カ月以内に提出されない場合には、納税者は決定された税金額を後日不服として申し出たとしても、それらを証拠書類および情報として使うことはできません。
[最終検討会議(クロージング・カンファレンス)]
税務調査の最終段階では、税務調査官は税務調査を受けている納税者に対し、税務更正を含む税務調査の発覚事項を書面により通知します。
税務調査の発覚事項について合意できない場合、納税者は、その通知に対して7営業日以内に書面で回答することが求められており、税務調査の発覚事項についての最終検討会義に税務調査官とともに出席する義務があります。これは、納税者側が主張を行うことができる最後の機会となります。最終検討会議は、当初の招聘状の日付から最長でも3週間で完了しなければなりません。
最終検討会議の結果は、その後、最終検討会議書類にまとめられます。納税者は、そこに提示された税務更正の各項目について「同意する」または「同意しない」と記載することになります。その書類には、納税者の主張のどの部分が税務調査官に受理されたか、また、それに従って税務更正が取消または減額となったかどうかも記載されます。
なお、最終検討会議の終了時に、税務調査官と納税者は最終検討会議書類に署名することが義務付けられています。
[税務調査の終結]
税務調査の法律上の最終書面は、主に以下の書類から成ります。
・税務査定書(納税者に対する各種納税に対する決定通知)
・税務追徴書(納税者に対し、納税を求め、あるいは遅延金利など罰則金の支払いを求める通知)
その他、徴税令状という書類があり、これは罰金を徴収する法律上の手段ともなります。徴税令状は、国税総局が当期中に特定の税務期間の要納税額に遅延利息を加えたものを徴収するために使われます。
[異議申立]
更正決定通知書(SPK)に不服がある場合、納税者は3ヶ月以内に国税総局(DGT)に対し異議申立をすることができます。異議申立書には、納税者の計算に従った要納税額を記載しDGTの税額査定書に同意しない旨を記述する必要があります。
国税総局(DGT)は異議申立を受領した日から12ヶ月以内に決定を下す必要があり、12ヶ月以内に決定が下されなかった場合、納税者側の申立てが自動的に国税総局によって認められたものとみなされます。
[税務裁判]
税務裁判の勝率は全体で約60%、法人では70%~80%となっております。
日本での勝率が約10%であることと比較しても、インドネシアの税務調査が担当官の知識不足や強引な指摘によって行われていることが伺えます
参考:DGT Annual report 2012-2017
■修正申告
納税者は税務調査が実施されていないことを条件に、課税年度末から3年以内であれば修正申告書を提出することができます。しかし、この制度を利用して還付申告を行ったとしても、還付金が全額否認されるケースがあります。
■会計帳簿の保管義務
インドネシアの税務の時効は原則5年となっています。しかし、国税一般通則法28条では、会計の基礎となる帳簿、記録、書類あるいはその他の記録や書類については、インドネシア国内において10年間保存しなければならないと規定されています。
■インドネシアにおける税務実務上の留意点
インドネシアの税務実務は、関連手続きが煩雑であるため遅滞することがあります。運用上の詳細な規定が不明瞭なため、担当の税務職員の恣意的な判断で運用される場合も見受けられます。税務調査も同様の傾向があります。インドネシア進出の際には、インドネシアの税制上の特徴を事前に調べた上で運営を開始することが重要です。
■会社清算時の税務調査
税務番号の返還および税務調査の対応が、最も期間を要する対応の1つとなります。インドネシアでは、税務上の時効が5年間となります。そのため、会社清算時には過去5年間遡ってすべての税務調査が行われます。過去5年間以内に税務調査が行われていた場合には、それ以降が対象期間となります。
会社清算時には、清算人の他、税務アドバイザー、会計士を選任します。通常はこれまで顧問としていた人が選任されるか、会社清算の専門家を選任します。
会社清算を行う際には、税務調査に多大な労力・コストがかかります。インドネシアでは、会社清算時だけではなく、税金の還付を行った場合、あるいは赤字となった場合にも税務調査が入るため常時留意が必要です。
■SP2DK(Surat Permintaan Penjelasan atas Data dan/atau Keterangan)
また、正式な税務調査に移行する前段階として、納税者に対してSP2DKが発行される場合が急増しています。SP2DKは、国税総局が保有する情報と納税者の申告内容との間に乖離があると判断された場合に発行される「説明要請書」にあたり、形式上は任意提出とされていますが、実務上は税務調査開始前の警告的通知としての性格を有しています。
SP2DKが発行される典型的な事例は以下の通りです。
・銀行報告(Laporan Keuangan Perbankan)と申告売上の不一致
・取引先の虚偽申告や未登録に伴う連鎖的リスク調査
・VAT還付額が異常に高額であり、かつインボイス発行先に不審点がある場合
・グループ会社間の売掛金残高や役務費用が複数年にわたり未決済である場合
・高額な交際費・寄付金が収益水準と乖離している場合
税務当局は、調査実施の正当性を補強する資料としてSP2DKを活用しており、回答内容が曖昧で、期限内に対応でできない場合には、税務調査に移行する可能性が極めて高い点に留意が必要です。
+ .5 .源泉徴収制度
源泉徴収制度
インドネシアの税制においては、源泉税の種類が多いことが特徴です。実務上で取り扱う種類は日本の源泉税よりも多く、取引内容や取引相手の居住の有無などにより異なる源泉税率を適用しなければならないため、取引の際には注意が必要です。源泉徴収制度の対象については配当収入、利息収入に対する源泉徴収等のほかに、特定の役務の提供、物品の販売などがあります。このように対象となる範囲が広い源泉徴収制度の発達は、インドネシア税制の特徴である一方、事務負担の面からは改善の余地を含む制度といえます。以下において、インドネシア税制の特徴である源泉徴収制度について、条文別に解説していきます。
■個人所得源泉税(PPh21)
雇用側は、従業員に支給する給与から一定の所得税率に基づき、源泉徴収をする義務があります。これが個人所得源泉税(PPh21)です。雇用側は従業員に対して支払う給与から、毎月一定額を源泉徴収し、その源泉税額を、徴収した月の翌月12日までに納付する必要があります。ここでの修正が多額に及ぶと、金利2%を追徴されるケースがありますので、PPh21の計算をする場合は、毎月の給与額のみならず、賞与、レバラン手当(THR)も加味した額で前納するのがポイントです。また、2022年以降外国人への現物支給は、一部の例外を除き個人の所得としても取り扱われます。
納税者番号を取得していない個人に対して給与を支給する場合は、税法で定める源泉税率に対して20%の追加税率を適用して源泉徴収を行う必要があります。
■輸入の際の源泉所得税(PPh22)
輸入時には、以下の三つの税金が発生します。
・通関処理の際に関税局に対して支払うものとして輸入関税(BM)
・付加価値税(VAT)
・輸入に伴う所得税(PPh22)
この輸入に伴う所得税(PPh22)を法人が輸入をする際に、所得税として前払にて納める必要があります。また課税対象は下記の3種類と設定されています。
・国庫及び政府関連による物品の引き渡し時
・輸入時または特定の営業活動をおこなう特定の法人
・贅沢品販売時に購入者から税金を徴収するための特定法人
背景としては、輸入を行う会社は、インドネシア国内にて調達する会社よりも大きな利益を確保できる会社であるという認識のもと、前払にて納付する仕組みができたとされています。
当該PPh22については、年度末の確定申告の際に法人所得税の総額から税額控除ができるため、最終的には輸入に伴うコストにはなりません。
しかし利益が出なかった場合には、前払の納税額を還付申請する必要が発生し、インドネシアにおいて還付申請の際には税務調査が行われ労力を要するため、注意が必要となります。
下記の物品を輸入する際には、自動的にまたは租税総局が発行した免税証書に基づき免税となります。
・輸入納付金と付加価値税が免除される物品
・一時的に輸入された物品
・再輸入の物品等
■国内サービス(居住者)に対する源泉税(PPh23/PPh4-2)
内国法人やPEを有する外国法人、駐在員事務所、および指定された個人は、他の国内の居住者への現物の移動が伴わないサービスを受けた場合、その対価を支払う際に、受益者に代わって源泉税を徴収する義務があります。つまり「請求者の所得税を支払者が代行して納税する」という仕組みになります。
具体的には、配当、支払利息、ロイヤルティ、賞金等に対しては15%の源泉徴収を行わなければなりません。別途、土地・建物の賃貸料以外の資産レンタル料、コンサルタント料、人材派遣その他各種サービス料に対しては2%が源泉税として徴収されることになります。
居住納税者への特定種類の支払いについては、その総額に対して15%または2%の税率で課税されます(PPh23)。
一方、国内サービスの中でもFinal課税源泉税(所得税を一回限りで課税する、確定申告時に全体収入から分離されるもの)の規定があります。一つの会社のなかに、Final課税部門と通常課税部門の両方が存在する場合には、確定申告書を作成する際、収益及び費用を分割して表示して申告しなければならないため注意が必要となります。Final課税源泉税に含まれるものは土地・建物の賃貸料(倉庫賃貸・事務所賃貸・居住賃貸含む)については、賃貸料の支払時に10%、また銀行預金利息は20%などが該当し、かかる税率分が確定税額となります。また、建設業の売上もFinal課税源泉税として納税します(PPh4-2)。
コンサルティング会社であるⒶが、その顧客Ⓑに対して請求書を発行した際の例を挙げましょう。
Ⓐは毎月Ⓑに対して100万ルピアを請求しているとしたら、Ⓐが受領できる金額はそこから2%、2万ルピアを控除した98万ルピアになります。(VATは考慮していません)
一方Ⓑは、控除した2万ルピアを税務署へ納税、及び申告書も作成し提出しなければなりません。このように、所得税の金額分を費用負担する者(サービス提供者Ⓐ)と、納税義務を負担する者(サービス受給者Ⓑ)が異なり、自社が所得を得る場合でなくても発生する税務コンプライアンスなので、注意が必要です。
また、支払者が国内サービス(居住者)に対する源泉税(PPh23/PPh4-2)を控除せずに、請求者へ支払してしまった場合、支払者は正味支払額よりグロスアップ計算し、その金額に法定税率を乗じた金額を税務署へ支払う義務が生じますので併せて注意が必要です。
■予納税(税金の前払)(PPh25)
日本でいうところの中間申告、中間納付のような制度です。前年度の確定申告(PPh29)に基づいて、当該年度の法人所得税の予納(pph25)を行う必要があります。前年度の確定申告が還付の場合、翌年のPPh25は発生しません。
期間については、12月決算の会社の場合、確定申告及び納付は4月末となることから、予納税の納付は5月(4月分)~翌年の4月(3月分)までとなります。
計算方法としては、まず初めに当該年度の課税所得から、雑収入、固定資産売却損益、為替差損益等の営業外収益および費用を除外し、課税所得を算出します。それらの調整を行った後の課税所得をもとに計算された法人所得税から、次にPPh22(輸入時の源泉税)、PPh23(国内サービスにかかる源泉税)などの前払い税金を差し引き、次年度のPPh25を算出します。
営業外収益、費用について調整が行われるということは、為替差損が大きく発生してしまう年度は実際に納税した法人税よりも予納税の方が高くなる可能性もあるということです。もし1年間ではなく段階的に複数年決算通貨の為替が弱くなるようなことが起きた場合、予納税の影響により法人税の還付となる可能性が高くなります。
予納税額の減額は、年度開始から三ヶ月経過しており、その時点で利益が75%を下回った場合には可能となっております。(税務総局決定Kep-537/PJ/2000)ただし、減額されるかどうかは税務署判断によるところが多いことを起因とし、簡単には認められないケースが多いです。
■海外サービス(非居住者)に対する源泉税(PPh26)
インドネシア国内同様、内国法人やPEを有する外国法人、駐在員事務所および指定された個人は、非居住者へサービスを提供した際、非居住者に代わり代金の20%の源泉税を徴収・支払う義務があります。これがPPh26(非居住者に対する源泉)です。
価値が発生した場所での納税が、サービス等の国外取引に関わる納税の基本となります。 インドネシア課税地域内でサービス提供が行われた場合、当該サービスへの対価はインドネシア課税地域内において生じた所得と判断され、その所得に伴う税金を徴税する権利はインドネシアにあると考えます。 ただし、サービス提供者(=請求者)が海外の企業の場合、インドネシアの税金を納税するのは困難なため、請求を受けたインドネシアの会社が、売上(=請求額)から源泉徴収し、納税することになります
なお、付加価値税の際でも解説しておりますが、サービスの輸出(インドネシアの事業会社が国外事業会社にサービス提供をする場合)についてVATの税率は発生しません。
源泉徴収が行われた非居住者については、この源泉徴収によりインドネシアにおける納税義務が完了します。具体的には、配当、支払利息、ロイヤルティ、賞金、年金、給与、サービス料等の総額に対して20%の源泉税が徴収されます。当該非居住者がインドネシアと租税条約を締結している相手国の居住者の場合は、PPh26の減免を受けることができます。この場合は、相手国の税務当局が発行した居住者証明(form DGT1)をインドネシアの税務署に提出する必要があります。
日本人の非居住者の場合、インドネシアの源泉所得に対しては、通常20%の源泉税(PPh26:海外サービスに等に対する源泉税)が課されますが、租税条約を締結しているため、下表の軽減税率が適用されます。
■ロイヤルティにかかる源泉税
インドネシアに現地法人を設立した場合の利益については、親会社に還流するケースと現地にて再投資を行うケースに大別されます。近年では、日本からだけでなく、シンガポールやタイなどから投資をし、還流を検討するケースも見られます。これらの国から還流を行った場合の税率は以下のとおりです。
ただし、租税条約の適用にあたってはpph26の各国の税務当局からの居住証明(DGT)の発行が必要となります。
Q&A
Q
PPh26での源泉税(経営指導料、ロイヤルティの支払い等にかかる源泉税)は一律で租税条約12条に規定されている使用料として、20%ではなく10%の税率が適用されますか。
A
租税条約では、使用権については税率10%と規定されています。ただし、租税条約の適用を受けるためには、居住証明(インドネシア:DGT)を税務署に提示する必要があります。これは非居住者の所得が発生する年ごとに提示を求められるため、毎年更新する必要があります。また、租税条約適用前の20%で取引を完了した場合には、日本での外国税額控除は10%までの部分となり残りの10%は費用として扱われます。
Q&A
Q
インドネシア現地でインドネシア人の弁護士(個人)と顧問契約を考えていますが、留意すべき事項はありますか。
A
インドネシアでは、個人の職業専門家へのサービス料の支払の際には、PPh21に基づき源泉徴収をする義務があります。このとき、弁護士が納税者番号を取得していない場合には、20%が加算されますので、納税者番号を持っているかどうかを事前に確認する必要があります。2023年以降NIKとNPWPの紐づけが行われるため納税番号を持っていない場合はNIKを確認してください。
■親子ローンにかかる利率設定
海外子会社の資金調達手段としては以下の2つが挙げられます。
①増資による資金調達
②借入による資金調達
①②のどちらを選択するかは、それぞれのメリット、デメリットを考慮した上で判断します。
②の借入については、通常の金銭消費貸借による契約もあれば、社債の発行による調達などの方法もあります。ただし、この借入による調達については、借入先が第三者(銀行などの金融機関)なのか親会社の関係会社なのかの違いにより、税務上の規制など注意すべき点が出てきます。
[利息設定]
インドネシア子会社が海外の親会社から資金の借入れをする場合には、親子ローンにかかるローンアグリーメントを締結し、ルピア建てで借入れを行います。円建もしくはUSドル建でなどの外貨建て借入に関しては、事前に「BB-」以上の外部格付取得が義務付けられています。親会社からの債務および親会社保証付きの債務は、親会社の外部格付けを使用することが可能です。また、新設会社の場合は、商業活動開始から3暦年以内は、上記同様親会社の外部格付けを使用することが可能です。
契約締結に際しては当然、借入に対する金利の設定をする必要がありますが、特に親会社(関係会社間)での借入れの場合、移転価格上のリスクから利率を設定する必要があるため留意が必要です。特に考慮するべき点として、インドネシア子会社が日本の親会社から借入れをする際の利率が高すぎる場合、利息の支払いを通じてインドネシアの利益が過大に日本へ移転する(インドネシア側では費用が過大となり、日本側では収益が過大となる)ため、インドネシアの税務当局より利率設定の妥当性につき指摘を受ける可能性があります。一方、同様のケースで利率が低すぎる場合には、インドネシア側で税務上のリスクが発生することはないと考えられますが、日本の親会社側で利率が低すぎる(適正な利息を受け取っていない)として、適正利率と実際の利率との差額分の利息につき、インドネシア子会社に対する寄附金として指摘される場合があります。
日本からインドネシアへ資金を貸し付ける場合の利率は、インドネシアの市場金利よりも低く、日本の市場金利より高く、という設定が理論上は適正であると考えられます。日本の市場金利は0%に近く、2022年1月現在日本銀行の短期金利は-0.02%(FM01'STRDCLUCON無担保レート・O/N物レート 月平均/金利)と非常に低くなっていますが、実務上、日本側ではその企業の調達金利または市場の銀行金利などをベースに利率の妥当性が検証されます。これに対し、インドネシアの市場金利は約3.5%であるため、この利率より低く、かつ日本側の調達金利等より高い水準で利率を設定することで、税務リスクを軽減することができます。
なお、この利息についてもPPh26が徴収されるため、DGT-1フォームの準備ができていない場合は20%の源泉税をインドネシアで納税することになります。日本では、外国税額控除は10%までとされており、残りの10%は費用として取り扱うこととなります。
[中央銀行への報告]
海外から外貨(USD,円など)の借入れを行う場合には、インドネシア中央銀行に対しての報告義務があります(KPPK)。これは金額の多寡にかかわらず、借入れをした資金の引出しに関する情報と借入内容を、毎月それぞれ引出しを行った月の翌月10日までに報告する必要があり、報告を怠った場合に最大1,000万ルピア、遅延の場合は50万ルピア/日、最大500万ルピアの罰金が科されるため注意が必要です。ただし、報告は義務付けられているものの、現状では借入金の返済状況等についてモニタリングされるなどの制度は存在せず、返済条件等についてはあくまでも当事者間のローンアグリーメントに委ねられています。
[為替リスク]
親子ローンに係るその他の留意点としては、為替の変動があります。親子ローンを円建で締結し、1,000万円の借入れ、締結時のレートが1円=125ルピア(1ルピア=0.008円)、返済時のレートが1円=100ルピア(1ルピア=0.01円)とします。この場合にどのような影響があるか見てみます。
たとえば、契約の締結時点では1,000万円=12億5,000万ルピアですが、返済時には円安になり1,000万円=10億ルピアであったとします。特段、契約内に為替変動についての取決めがなければ、最終的に10億ルピアの返済で足り、インドネシアの子会社が2億5,000万ルピアを為替差益として計上することとなりますが、仮に円高になった場合にはこの逆のケースとなります。このような為替変動の影響をどう扱うか(為替変動に関わらず一定額を返済、あるいは為替リスクはどちらか一方が負う、などの条項等)もローンアグリーメントにしっかりと記載をしておく必要があります。
インドネシアにおいて親子ローンを検討する際には、以上の3点につき関連規定をしっかりと把握することが重要です。
+ .6 .国際税務
外国税額控除
国際間で取引を行い、ヒト・モノ・カネが動く場合には、それに伴う税金も国際間で発生すると同時に国際税務の問題が生じます。各国が独自の考えに基づいて規定した租税法に基づいて税務当局が課税を行っているため、1つの取引につき、二重に課税されるケースがあります。こうした二重課税を回避するため、各国の租税法において外国税額控除が規定されています。
外国税額控除とは居住地以外で得た所得に対して課税され、納付した税額を居住地国の税額から控除することにより、国際的な所得の二重課税を調整するための制度です。外国税務控除の対象として、国内法人の支店等が納付した外国法人税や、取引先間のロイヤルティや受取利息、配当等の支払時に源泉徴収される外国源泉所得税などがあります。このような税額が発生した場合、所得の源泉地国と居住地国とで二重課税が起こるため、居住地国の税務申告において調整します。外国税額の控除形態には、以下のような方式があります。
外国税額損金算入方式
外国で納付した税額と日本の法人税額を計算し、損金として扱う
外国税額控除方式
外国で取得した外国税額を差し引く前の所得を認識し、その所得に対して課されるであろう日本の法人税額から外国で支払った法人税額を控除する
日インドネシア租税条約において外国税額控除が定められているため、これに従って上図のように二重課税部分を調整します。
タックス・ヘイブンを経由した取引
近年のアジア圏の経済成長は著しく、日本企業の進出件数も年々増加しています。特定の国だけではなく、アジア圏で複数国にわたって拠点展開している企業などは、その各国の海外子会社を統括するため、シンガポールや香港またはタイ(一定期間のみ対象)に地域統括会社(RHQ:Regional Headquarters)を設置して活動するようなケースもあります。シンガポールや香港またはタイは、タックス・ヘイブン(軽課税国)と呼ばれ、これらの国に利益を集約させることにより、税制面でのメリットを大きく享受することが可能です。インドネシア投資においても、日本からの直接投資ではなく、地域統括会社を通じて孫会社化して管理を行うケースも十分に考えられます。
しかし、日本側においてこの地域統括会社が実態のないペーパーカンパニーとして税務当局より認定された場合には、その地域統括会社で留保されている利益について、日本側の所得と合算して日本の法人税が課されることになります(1978年度の税制改正により適用)。これをタックス・ヘイブン対策税制と呼びます。
■タックス・ヘイブン対策税制
日本の法人税法に規定されているタックス・ヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、内国法人等が特定外国子会社等(軽課税国に所在する外国関係会社)を有する場合に、その特定外国子会社等が留保した利益のうち、その内国法人が保有する当該子会社株式の所有割合に対応する部分の金額をその内国法人等の収益とみなして、日本で合算課税する制度です。日本では会計上「収益」が認識されていないにもかかわらず、税務上「益金」を認識することにより、海外の留保所得について日本で課税する税制です。
従前は、租税負担割合が20%以上であった場合には適用対象外になっていましたが、租税負担割合に関わらずその海外子会社がペーパーカンパニー、キャッシュボックス又はブラックリスト国に所在する法人である場合には、一定の場合を除き、全ての所得に対して合算課税が行われることになります。また、合算課税を行うことにより、企業の正常な海外投資事業活動が阻害されることを回避するため、租税負担割合が20%以上で下記の要件を満たす場合には適用が除外となります。
特定外国子会社等が独立企業としての実体を備え、かつ、その所在地国で事業活動を行うことにつき十分な経済合理性があると認められるなど一定の場合には、租税回避が目的ではないものとして同税制は適用されません。よって税務当局から指摘をされる前に、地域統括会社において現地での活動実体を整備する必要があります。
また、インドネシアにおいてはCFC(Controlled Foreign Corporation)税制として、インドネシア法人が直接又は間接に発行済み株式数の50%以上を保有する外国法人(上場会社を除く)を対象に、その法人が留保する所得のうち一定額を配当したものとみなして、インドネシア法人の課税所得を計算するという規定があります。
■その他の国際税務
日本においては、上記のほかには過少資本税制が定められています。一方、インドネシアでは特段法令の定めはありませんが、投資ガイドライン上では資本と借入の割合は3:1という指標があります。今後、インドネシアへの投資が増えるにつれてインドネシアにおける国際課税が強化されることが十分に予測されますので、法令への対策を用意しておく必要があります。
+ .7 .インドネシアにおける租税条約
租税条約
租税条約とは、二重課税の排除と脱税の防止などを目的として、国家間で締結される成文による国家間の合意です。この条約は国家間の約束事であるため、その適用にあたっては各国が定めている国内法に優先して適用されることになります。そのため、国内法において課税とされていても、租税条約において非課税とされている場合には、非課税となります。インドネシアが締結する租税条約においては、サービス料に対する源泉税を免除し、インドネシアが署名した租税条約の相手国の居住者によって受領される配当、利子、ロイヤルティと支店の税引後利益に対する源泉税を軽減させることで、税務的な恩恵を享受することができます。サービス料の税額免除は、収益を獲得する外国の当事者がインドネシアに恒久的施設を持たない場合のみに付与されることになっています。ただし、租税条約を適用することで国内法適用時よりも不利になってしまう場合には、国内法の規定を優先させることが可能です(プリザベーション・クローズ)。租税条約以外の条約にも、相手国の居住者等の日本における特定の税目上の扱いを別に定めるケースがあります。インドネシアは約60カ国と租税条約を締結しており、日本も締結国に含まれています。
インドネシアが締結している租税条約は、OECDモデル条約をベースにして規定されています。
OECD
経済協力開発機構(OECD:Organisation for Economic Co-Operation and Development)はフランスのパリに本部を置き、先進国間の自由な意見や情報の交換を通じて、経済成長、貿易自由化、発展途上国を支援するために発足した組織です。第二次世界大戦後、アメリカのマーシャル国務長官(当時)は経済的に混乱状態にあった欧州各国を救済すべきとの提案を行い、マーシャルプランを発表し、これを契機として1948年4月に欧州16カ国によりOECDの前身であるOEEC(欧州経済協力機構)が発足しました。その後、欧州経済の復興に伴い1961年9月にはOEECにアメリカおよびカナダが加わりOECDが発足しました。日本は1964年にOECD加盟国となりました。以下に、OECDに加盟する国を挙げます。
OECDモデル条約
OECDモデル条約とは本条約加盟国間、もしくは本条約加盟国とモデル租税条約の政策に賛同する非加盟国との間で新たに租税条約を締結したり、既存の租税条約を改定する場合の雛型のことです。OECDが加盟国各国に対して採用を勧めています。OECDモデル条約には、所得および財産についての租税条約モデルと相続税・遺産税についての租税条約モデルの2つが存在します。インドネシアが締結している租税条約は、日本も含めOECDモデル条約を基に規定されています。
OECDモデル条約は、OECD租税委員会が策定して閣僚理事会に報告された部内文書であるため、納税者に対しても加盟国に対しても、形式的には、モデル租税条約自体には法的な拘束力はありません。しかし、各国の条約交渉当局や執行当局ならびに裁判所等が租税条約の解釈適用に際してモデル租税条約コメンタリー等を参照する機会が増えており、実質的にはモデル租税条約およびコメンタリーは先進国のみならず中進国においても大きな影響力があります。
日本企業のグローバル化に伴い、日本の親会社との直接取引だけでなく、日本以外の海外子会社とインドネシアの子会社との間で取引が行われることもあります。その場合には、日インドネシア租税条約だけでなく、海外子会社の所在地国とインドネシアとの租税条約の内容を比較・検討する必要があります。
日インドネシア租税条約
日本とインドネシアにおいて租税条約が締結されており、その内容はインドネシア国内税法に優先して適用されることになります。日インドネシア租税条約の適用範囲は、インドネシア非居住者が受け取る配当、利子、ロイヤルティ、支店の税引後利益などです。租税条約の適用を受けるためには、国税総局に対して居住者証明書を提示しなければなりません。提示がない場合は当該税務上の恩恵は受けられず、インドネシア国内法に定める規定、税率等が適用されることになります。以下、日本とインドネシア間で締結されている租税条約のうち、主要な項目について内容を見ていきます。
■PEの定義と課税(5条)
日インドネシア租税条約5条では恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義が定められており、事業の管理事務所、支店、事務所などのほか、以下のようなものもPEとして規定されています。
[恒久的施設として認められるもの]
・工場、作業場
・農場/栽培場、鉱山、石油/天然ガスの坑井、採石場など
・建築工事現場または建築/据付工事で、6カ月を超える場合
ただし、経済協力または技術協力に関する両締結国の政府間の合意に基づいて提供される場合には、恒久的施設に該当しません。
[恒久的施設として認められないもの]
6カ月以内に終了するような建築、据付、プロジェクト監督作業であれば、インドネシアにおける納税者番号を取得していなくても日本の社名で事業を行うことが可能であるため、恒久的施設としては認められません。
・本店のための購入のみを行っているもの
・情報収集、その他の準備的、補助的な活動を行っているもの
一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課します。また、一方の締約国の企業が他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課すことができます(7条)。たとえば日本の会社が、インドネシアの恒久的施設を使わずに行ったサービス(例:システム開発)については、日本側でのみ課税されることとなり、インドネシアの支払側は源泉徴収を行う必要がありません。
このように、日インドネシア租税条約ではPEの定義と課税について規定されています。次のような場合はPEとみなされ、課税される可能性があります。
・駐在員事務所で、本来禁止されている営業活動を行っている場合
・日本とインドネシアとの間の契約で、日本からインドネシアへ人員を派遣し業務を行う際の期間が6カ月を超える場合
■特殊関連企業に対する課税(9条)
移転価格税制は財務省令において詳細が規定されていますが、日インドネシア租税条約9条においても別途規定があります。一方の締約国の企業または同一の者が、他の締約国の企業経営、支配または資本に直接もしくは間接に参加している場合に、その取引条件が独立企業との間での取引条件と異なるときは、その条件がないものとした場合に一方の締約国の企業等が本来得られたであろう利益について、一方の締約国で課税をすることが規定されています。つまり、関連会社間で取引を行う場合には、第三者取引条件によらなければなりません。
■配当に対する課税(10条)
10条では配当についての源泉税率を定めています。同条2項(a)において、議決権のある株式のうち25%以上を所有する法人に配当を支払う場合の税率は10%、同条2項(b)では25%未満の法人の税率は15%と規定しています。ただし同条4項において、それらの配当が恒久的施設を通じて実質的に事業を行ったとされる場合(駐在員事務所を保有している企業に対しての配当の場合)には10条で規定する税率は適用されません。該当する可能性がある法人の海外への配当金については注意が必要です。
■利息に対する課税(11条)
利息の収受についても、配当と同様に税率が定められており、上限10%と規定されています(11条2項)。ただし、政府系銀行(国際協力銀行、日本銀行など)からの借入金利息については課税が免除されます(同条3項・4項)。
■使用料(ロイヤルティ等)に対する課税(12条)
使用料の定義は、文学上、美術上もしくは学術上の著作物、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式、もしくは秘密工程の使用などの権利の対価とされており(12条3項)、使用料所得においても、配当所得と同様に税率は上限10%としています(同条2項)。ただし、同条4項において、それらの使用料(駐在員事務所を保有している企業に対しての使用料)が、恒久的施設を通じて実質的に使用に対する供与が行われたとされる場合には同条2項が適用されないとされているため、注意が必要です。
Q&A
Q
インドネシア現地法人で日本法人と同一のブランドやロゴを使用していますが、親会社へのロイヤルティは支払っていません。これによる問題はありますか。
A
日本での税務調査では、ロイヤルティを受け取ることが前提であるため、本来支払うべきロイヤルティに対して課税されるケースがあります。両法人で同一のブランドやロゴを使用している場合には、ロイヤルティを支払うことが望ましいです。ただし、インドネシア現地法人側でロイヤルティの金額の妥当性が証明できない場合には、本来配当とすべきであるとしてインドネシア税務当局よりロイヤルティを否認されることもあるので注意が必要です。
■役員報酬にかかる課税(16条)
給与等に関しては、その国において勤務実態がない場合には税金は課されません。つまり、日本からインドネシアへ従業員が出向した場合、日本で勤務が行われない限り日本側で課税問題が生じることはありません。しかし、日本側の法人の役員がインドネシアに居住者として駐在する(日本の会社から役員としての報酬を得ている)場合は、仮に日本において非居住者で、かつ国内勤務がなくても、日本側で課税されるため注意が必要です。
移転価格税制
移転価格税制とは、関連会社間での取引における取引価額を通じて、その利益が国外に移転することを防止するために定められた税制です。
企業が海外の関係会社への資産の売買、役務の提供などの取引価格(移転価格)を通常の価格と異なる金額に設定すれば、一方の利益を他方の利益として移転することが可能となります。移転価格税制はこのような利益の移転を防止するために、その取引の移転価格を通常の取引価額(独立企業間価格)に換算することで、適正な国際課税を図ることを目的とするものです。実務上は納税者に租税回避の意図があったかどうかは問われないため、移転価格の指摘に対する文書作成や、リスク回避策をあらかじめ検討、実施しておくことが非常に重要です。
インドネシア国税総局は2011年11月11日付で新規則(2011年11月11日付インドネシア国税総局規則第32号)を発令し、同日より適用を開始しました。本規則は、関連会社間取引における独立企業間価格(ALP:Arm’s Length Principle/Arm’s Length Price)の適用に関する規則(2010年インドネシア国税総局規則第43号)を改改正したものです。
■関連当事者の定義
・親・孫会社(一方の納税者が、他方の納税者の株式を25%以上、直接または間接的に保有する関係)
・兄弟会社(2つ以上の納税者が、同一者により各株式の25%以上を、直接または間接的に保有される関係)
・2つの法人間の経営や技術面等により、一方の法人が他方の法人を、直接または間接的に支配している関係
・血縁・婚姻よる家族関係
*日本とは異なり、インドネシアではインドネシア国内の関連者間取引も移転価格の対象になります。 ついては、国内に所在する共同出資者や、本社が出資している兄弟会社等と取引があり、上記の要件にあてはまる場合は、移転価格文書を作成する必要がありますので注意が必要です。
■独立企業間価格の算定方法
インドネシアにおける独立企業間価格の算定にあたっては、国税総局規定において以下の5つの方法が規定されています。
伝統的価格算定方法
・独立価格比準法(CUP法)
・再販売価格基準法(RP法)
・原価基準法(CP法)
・その他の方法
・利益分割法(PS法)
・取引単位営業利益率法(TNMM法)
各算定法は、経済協力開発機構(OECD)によるものと共通しており、取引実態に照らし適しているものを比較して採用することになります。
インドネシアでは独立価格比準法による算定が推奨されています。伝統的価格算定方法による算定が難しい場合のみその他の方法を適用できるとされています。従前の規定(2010年インドネシア国税総局規則第43号)では最も適切な算定方法の選定において優先順位に従うことが求められましたが、新規定ではこの要件が廃止され、自由に選定することができるようになりました。新規定施行後の算定方法選択時には次の事項を考慮する必要があります。
・各々の移転価格算定方法の長所と短所
・機能分析により決定される、関連会社取引の特質に基づく算定方法の適正性
・選定された方法を適用するための(独立取引に係る)有効な情報の入手可能性
・比較される取引ないし企業間の重要な差異を排除するために適切な調整が必要か否かなど、独立取引と関連会社間取引との比較可能性の程度について
■文書化制度
インドネシア国税総局は2016年12月30日付で新法令(財務大臣令No. PER/213/PMK.03/2016)を公布し、同日より適用を開始しました。インドネシアの移転価格にかかる税務調査の際に移転価格文書の提出が要求されるため、対象となる国外関連者間との契約書や、価格表等を整備し、第三者から見て合理的な価格・取引であると判断できるだけの文書を作成し、移転価格の算定方法を開示するだけではなく、過年度を含めた移転価格の合理性を検証できる文書を作成しておく必要があります。遵守しない場合は罰則が適用となります。また、基本的にインドネシア語での作成となります。 国税当局より外国語および外貨建による帳簿作成の許可を得ている納税者に限り、当該外国語による作成が認められますが、インドネシア語翻訳の添付が必須となります。
下記の事項の一つでも該当する場合は、マスターファイルおよびローカルファイルを作成しなければなりません。
・関連者間取引を行っており、前年度の総売上が500億ルピアを超える場合
・有形資産の関連者間取引(原材料や物品の売買など)金額が200億ルピアを超える場合
・無形資産の関連者間取引(利子、ロイヤルティ、サービスなど)の金額が50億ルピアを超える場合
・インドネシアの法人税率(22%)よりも低い税率の国にある関連企業※
(低税率国のリストはインドネシア税務当局が公表。)
※法人税率22%以下の主な国
タイ、ベトナム、シンガポール、カンボジア、香港、台湾など
また、以下のいずれかにあてはまる企業と関連者間取引を行っている企業は、CbC レポート(国別報告書)を提出する必要があります。
【インドネシア法人が親会社の場合】
・当該年度の連結売上高が11兆ルピア超である。
・関係者間取引がない
【インドネシア法人が子会社の場合】
・CbC レポートの提出を義務付けられていない国に親会社がある
・インドネシアと租税条約を締結していない国に親会社がある
・インドネシアと情報交換協定がない国に親会社がある
・インドネシアと情報交換協定がある国にある企業だが、CbC レポートをインドネシア政府が入手でき
ない場合
さらに、以下の条件に当てはまる企業は、マスターファイルおよびローカルファイル、CbC レポートの すべての移転価格文書を用意、提出する必要があります。
・グループ会社の親会社であり、連結上の総収益が 11 兆ルピア以上かつ関連会社間取引のある在インドネシア企業
インドネシア財務省は、この「親会社」の定義について、「企業のグループ内のひとつの企業で、直接ま
たは間接的に、グループ内のその他の企業をコントロールしており、インドネシアの会計基準または/及び株式取引規制に従って連結決算書を準備する義務のある企業」としています。
そのため、CbC レポートの提出義務は、グループ全体の本社だけではなく、多国籍企業のひとつで、連結決算書を作成する義務のある会社もこの「親会社」の定義に当てはまります。
■各文書構成要素
・マスターファイル
企業グループ全体についての情報
a) 組織全体の資本関係、所在地
b) 事業活動の内容
c) 所有する無形資産
d) 金融及び資金調達活動等の財務活動
e) 親会社の連結財務諸表及び関連当事者間取引にかかる税務情報
・ローカルファイル
企業グループ内のインドネシア納税者についての情報
a) 事業活動の詳細
b) 実施した関連当事者間取引および非関連当事者の情報
c) 独立企業原則の適用
d) 納税法人の財務状況
e) 価格や利益水準に影響を及ぼす非財務的事象または事実
※納税法人が性質の異なる複数の(1つ以上)の事業活動をおこなっている場合
→事業活動事(セグメント別)のローカルファイルの作成が義務付けられている
・国別報告書
目的:租税回避のリスク評価
企業グループ内の各企業が所在する国に関する情報
ATTACHMENT-E
CbCRワーキングペーパー
ATTACHMENT-F
a) 所得配分
b) 納付済所得税額
c) 事業活動
ATTACHMENT-G
d) 構成会社等の名称や主な事業活動のリスト
■提出期日
作成基準に該当する会社は、マスターファイルおよびローカルファイルを課税年度終了後4ヶ月以内に作成、国別報告書は12ヶ月以内に作成し、法人税申告に提出準備が完了した旨を記載します。また、国別報告書は翌課税年度の申告書に添付して提出する必要があります。
また、税務当局は税務調査、異議申し立て、その他の目的で、移転価格文書の提出を要求することができるため、要求に備えて移転価格文書を準備しておく必要があります。税務当局からの要求に対して提出できなかった場合は、ペナルティが課せられます。
■事前確認制度
事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)とは、税務当局から国外関連者間での取引にかかる取引価格について、移転価格課税のリスクをあらかじめ回避する目的で、企業が税務当局との間で取引価格の妥当性について、事前に承認を得る制度です。当該制度の対象期間は、移転価格課税のリスクをほぼ回避することができます。インドネシアで事前確認制度を利用する場合は、事前相談、正式申請など、各段階においていくつかの手続きが必要です。
[事前相談・審査]
インドネシアで事前確認制度を利用する場合は、事前相談を国税総局に対して行うことが必須となっています。事前確認の必要性などが合理的に立証できない場合は申請が受理されないこともあります。この段階では事前確認の必要性の他にも、納税者が作成した国外関連者との取引についての文書や対象期間などが審査の対象となります。国税総局はこの事前相談について、税務者側の資料提出から3カ月以内に書面で回答することになっています。
[正式申請]
事前確認の申請が受理され、正式に申請をする場合、規定の申請書類および添付資料を国税総局に提出する必要があります。主な添付資料は次のとおりです。
・事前相談時の議事録
・重要な前提事項
・独立企業間価格の算定方法および根拠資料
・上記独立企業間価格の算定方法を適用した詳細な理由
審査される項目は、提出資料等に記されている独立企業間価格の妥当性や対象取引、対象年度などです。納税者は、二重課税を回避する目的で、二国間の事前確認制度である、バイラテラルAPAを申請することが可能であり、国税総局に対して書面にて相互協議を行うように要請することができます。
[対象期間]
インドネシアでの事前確認制度の対象期間は、その合意した年度から起算して最長3年です。また一定の要件を満たした場合は、過年度の取引に対して遡及的に適用(ロールバック)することが認められています。
[年次報告書の作成]
事前確認の承認を受けた納税者は、年次報告書を作成しなければなりません。これは事前確認制度の合意内容に準拠した取引を行っていたことを証明する書類となります。課税年度終了後4カ月以内に所轄の税務署に当該報告書を提出する必要があります。
■相互協議
納税者が租税条約の規定に適合しない課税を受ける又は課税に至ると認められる場合は、その課税を排除するために条約締結国の税務当局間で解決を図るための協議手続(相互協議)を行います。たとえば、日本の内国法人と国外の関連会社間のビジネス取引において、一方の国で移転価格税制が適用され、独立企業間価格と実際の取引価格との差額分について課税される場合、国際的な二重課税が生じます。こうした二重課税を排除するために相互協議をします。
相互協議は、取引当事国の権限のある税務当局間の直接協議です。しかし非公開協議であるため、納税者は協議に必要な資料を提供するに留まり、直接協議に参加することができません。なお、相互協議は税務当局間同士の合意努力義務であり、必ずしも合意する義務はありません。日インドネシア租税条約に基づき、納税者は相互協議を求めることが可能とされていますが、2010年インドネシア国税総局規定第48号によれば、相互協議の要請と、インドネシア国内法に基づく異議申立ておよび、税務裁判を同時に行うことはできません。
参考文献
・ USA International Business Publications"Indonesia Investment and Business Guide, Intl Business Pubns USA, March 20, 2009"
・ "OECD Investment Policy Reviews, Indonesia 2010”,OECD Publishing, November1,2010
https://www.oecd-ilibrary.org/finance-and-investment/oecd-investment-policy-reviews-indonesia-2010_9789264087019-en
・ 吉田隆『税務なんてこわくない初級編〈改訂版〉』エヌ・エヌ・エー、2009年
・ 吉田隆『税務なんてこわくない中級編』エヌ・エヌ・エー、2010年
・PWC 『インドネシア税務ポケットブック2025年』
https://www.pwc.com/id/en/pocket-tax-book/japanese/pocket-tax-book-2025-jpn.pdf
・JETRO 日本貿易復興機構
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/01/c4604dd7f931be8e.html