会社法
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機関の体系
ラオスの会社法(以下、本章では会社法の条文番号のみを記載します)では、非公開会社(一人会社を含む)(Limited company, including one-person limited company)、公開会社(Public company)、合名会社(General partnership enterprise)と合資会社(Limited partnership enterprise)という4つの会社形態が定められています(11条)。
本章では、公開会社と非公開会社を中心に解説します。
公開会社と非公開会社の会社形態は、出資は株式の形をとり、出資者である株主は、その出資額を限度とした有限責任を負い、出資者は個人でも法人でもなることができるという共通点があります。一方、機関設計に関し、株主数などに相違点があることに注意しなければなりません。
株主(株主総会)
■株主数
ラオスの会社法上、非公開会社の株主数は2~30名とされています。一方、公開会社の場合は発起人である株主が9名以上必要となり、上限は規制されていません(2条)。
非公開会社の株主が30名を超える場合には、株主総会の特別決議を行うことによって、非公開会社としての形態を維持できます。(85条)。特別決議を行わない場合は、会社を解散するか、公開会社に変更しなければいけません。
また、ラオスでは、1人会社(Sole-Trader Enterprises)という概念が会社法上存在し、株主が1名でも会社を設立することが認められています(2条)。この1人会社と通常の非公開会社は別々に定義されていますが、実質はほとんど変わりません。個人、法人のどちらでも株主となることが認められています(78条)。複数の出資者を持つ場合には、非公開会社へ社名変更をして、非公開会社の規定に従わなければなりません(173条)。
■株主の権利
[自益権]
ラオスの株主は株式数に応じて利益の配当を受け取ることができます。ただし優先株式を発行している場合は、株主ごとに異なる配当金が設定されます。また、普通株主(普通株式を保有する者)は会社が解散した場合に残余財産を受け取る権利を有します(99条)。
[共益権]
共益権の主たるものは、日本と同じように株主総会の議決権の行使です。
また、会社の経営は取締役に委任されますが、取締役や監査役の選任・解任も株主総会で行われることによって、株主の利益が確保できるようになっています(99条)。
少数株主権
少数株主権とは、株主の権利の1つであり、一定以上の株式を持つ株主が行使できる権利のことをいいます。少数株主権の趣旨は、多数派株主や取締役が少数株主の利益を害するような業務執行を行うことを防止することにあります。ラオスの会社法では、取締役の解任請求権(118条)、株主総会招集請求権(136条)、議題提案権(139条)、などが定められていますが、持株数要件が比較的厳しく設定されているのが特徴です。
■株主総会
■株主総会の種類
株主総会については、136条から149条に定められています。株主総会の種類は、定時株主総会、臨時株主総会、創立総会の3種類があります(136条)。
定時株主総会は、最低年1回開催しなければならず、開催回数は定款に記載します。
臨時株主総会は、取締役が必要と認める場合にいつでも開催することができる他、下記の事項が生じた場合には、取締役は臨時株主総会を開催しなければなりません(136条)。
・ 取締役の過半数が臨時株主総会の開催に同意した場合
・ 株主が裁判所に申し立てを行い,、裁判所の開催命令があった場合
・ 発行済株式の20%以上の株式を保有する株主が開催を要求した場合
臨時株主総会の開催を要求する株主は、取締役(会)に対して書面を用いて目的を提示しなければなりません。この要求を受け取った取締役(会)は、要求書を受領してから30日以内に臨時株主総会を招集する必要があります。
創立総会は、株式引受人をもって構成される設立中の会社の意思決定機関であり、定款の承認、株式の種類や内容、取締役の選任などを決議します。ラオスの会社法の場合、創立総会は非公開会社、公開会社を問わず、開催する義務がありますが、それぞれ開催時期や招集期間、定足数の点で、異なります。
非公開会社の場合、会社の設立登記前に創立総会を開催します。その後、株式が全額払込まれた日から30日以内に設立登記しなければなりません(86条)。また、創立総会が開催される10営業日前までに、すべての株主に招集通知を送る必要があります(90条)。非公開会社では、株主の過半数が出席することによって創立総会の決議が有効となります(91条)。
公開会社の場合は、会社の設立登記後90日以内に創立総会を開催します。もし、この期間内の開催ができない場合は、登記官に対して、10日以内に通知をしなければなりません。この場合には、延期通知から30日以内に創立総会を開催する必要があり、それでも開催できなければ公開会社の設立は無効であるものとし、株主が支払った資本金をすべて返還しなければなりません。公開会社の創立総会は株式総数の3分の2以上保有する株主が出席したうえで、本社にて開催されます(181条)。
■招集権者と招集通知
取締役は、普通総会または臨時総会ともに招集日の5営業日前に、日時、場所及び議題等をすべての株主に通知し、招集通知を送付しなければなりません(137条)。
■開催場所
株主総会は、定款に別段の定めがない限り、株式会社の本社で開催されます(140条)。したがって、定款に定めることで、本社以外での開催ができるものと解釈されます。
■株主総会の決議
株主総会は会社の最高意思決定機関であり、役員の選任・解任や決算書の承認、配当の決定、増減資など、会社にとって重要な事項を決議します。この点については、日本と同じですが、定足数や決議要件などの点で異なります(143条)。2023年3月30日施行の法改正により、会社分割が新たに追加されました(160条)。会社分割は特別決議事項に分類され、決議を行った日から10日以内に公告が必要です。
[定足数]
会社は株主総会における定足数を定款に記載しなければなりません。定款に記載をしないとき、普通決議の場合は、発行済株式総数の過半数を所有し、かつ、2名以上の株主の出席をもって定足数となります(138条)。特別決議の場合には要件が加重され、発行済株式総数の80%以上の株主の出席をもって定足数要件となります(144条)。
なお、総会開始から2時間たっても定足数に満たない場合、議長は総会を中断する権利があります。この場合、延期された株主総会は、総会の中止後15日以内に開催されます(140条)。
[決議要件]
株主には、1株1議決権が与えられ、出席した株主の資本多数決により決議が行われます。ただし、決議の内容に特別な利害関係を有していると認められる者など、以下の要件に該当する株主には議決権は認められません(141条)。
・ 定款に規定されている場合
・ 会社と別段の合意がなく、株主が株式の一部に未払いがある場合
・ 株主が無記名株券の保有者である場合 (ただし、株主総会を開催する前に株主総会の議長や取締役に当該株券を提示する場合を除く)
・ 利害関係を有する株主の場合
普通決議の場合、株主総会に出席した株主の過半数の賛成によって決議が成立します(143条)。一方、特別決議の場合には、株主の80%以上が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上が賛成した場合に特別決議が有効となります(144条)。
[株主総会の議題]
議長は事前に承諾された議題順に沿って、会議を進めなければなりません。もし、順番を変更する場合には出席者の過半数の承認が必要となります。発行済株式総数の3分の1以上の株主から追加議題が提案された場合は議題の追加がなされます。また、議題内容の決定に時間がかかる場合は議題の検討を延期することも可能です(139条)。
[代理人による投票制度]
株主は株主総会の出席に代理人を任命することができます。しかし、株主総会を招集する前に当該任命が書面でなされる必要があり、その書面には、以下の項目を含みます(142条)。
・ 代理人の氏名、及び委任をした株主の氏名
・ 委任をした株主の保有している株式数
・ 株主総会の名称、期間、会場、代理投票の範囲
■株主総会決議の瑕疵
株主総会が法律に準拠して決議された場合、株主総会の決議は有効です。しかし、当該決議が会社に実質的な損害を与えた場合は、株主と取締役は裁判所に株主総会決議取消しの訴えを提起することができます。
株主総会決議取消しの訴えは、当該決議が承認された日から60日以内に提起しなければなりません(148条)。その後、裁判所は株主総会の決議の取消しを決定します(147条)。
取消の訴えとなる原因には、定款や会社法上の契約が違法であった場合、決議の採択の手続が違法であった場合、株主総会の通知に関して違法があった場合、などが含まれます。さらに、当該決議に反対した株主は、会社に損害賠償を請求することができます(146条)。
取締役
ラオスの会社法上、取締役は、会社の業務執行を行うために設置を義務付けられた機関です。取締役については、会社法116条から128条に定められており、非公開会社、公開会社ともに同様の条文を用います。取締役は、株主総会の監督の下、会社定款によってその職務内容が決定されます。
■取締役の人数
取締役の人数は、公開会社、非公開会社とも1名設置すればよく、会社の必要性に応じて、複数の取締役を設置することができます。また、株主も取締役になることができます(116条、120条)。
■国籍・居住性
ラオスの会社法上、公開会社、非公開会社ともに取締役の国籍、居住地に関して明文規定はありません。そのため、外国人でも取締役になることが可能です。取締役が現地で居住する必要もありません。
■取締役の要件
取締役になるためには、自然人であることや、過去に一定の犯罪歴などが無いことが条件となります。会社法上の要件は以下のとおりです(117条)。
・ 法人ではないこと
・ 法的能力を有するものであること
・ 事業の実施期間において破産者ではないこと
・ 資産の横領や流用などの犯罪歴がないこと
■選任・解任
最初の取締役は創立総会で選任され、以後は株主総会で選任・解任が行われます(118条)。取締役の任期は株主総会で合意した期間となり、再選も可能です(123条、120条)。
株主総会における取締役の選任・解任の投票手続は、普通投票もしくは累積投票の2つの方法によって実施することができます(119条)。
累積投票とは、取締役選任に関する投票数を、1株につき、選任される取締役の人数分だけ割り当てて行う投票方法です。株主は、持っている議決権を、一人に集中しても、数人に分散して投票しても良く、少数株主の意見を反映しやすくするという趣旨があります。
■取締役の職務と責任
[一般的な職務]
取締役とは、対内的に会社の業務執行を行い、対外的に会社を代表する必要的常設機関です。また、株主総会の招集、役員や社員の管理等、会社の多くの業務を行います。取締役の職務は以下のとおりです。
[競業避止と利益相反取引の制限]
取締役は、その職務において会社の経営・経理・技術等の企業機密を知りうる立場にあることから、会社の事業に関するノウハウを持っていることが多く、会社の機密保持についても重要な役割を果たしています。したがって取締役自身が、会社と同じ業種の事業を営むと、会社に大きな損害を与える可能性があるため、そのような事業を行なう場合には、事前に株主総会の承認を受ける必要があります(125条)。
また、取締役が、自身が所属している会社と取引を行なう場合には、自身の利益を図るために、会社に不利な取引を行なう可能性があるため、このような取引には制限が設けられています。取締役が会社から財産を譲り受けたり、会社に財産を譲渡するときなどは、定款で定めておく必要があります(125条)。
■取締役の報酬
公開会社、非公開会社ともに、取締役は、株主総会で決定された年間報酬を受け取ります(116条)。
■取締役会
取締役会については、会社法129条から134条に定められており、非公開会社、公開会社ともに同様の条文が適用されます。
2名以上の取締役を有する株式会社は取締役会を設置することができ、資本金が500億キープ以上の会社は取締役会の設置が義務付けられます(129条)。
取締役会の機能としては、取締役の業務執行を監督し、会社の基本方針を策定するほか、定款で定められた権利義務を有します(130条)。
・ 取締役の業務を監督
・ 次の株主総会の開催までに取締役に欠員が生じた場合の取締役の選任
・ 経営基本方針の策定
・ 定款で定められた権利義務の行使
■取締役会の定足数
取締役会の定足数は取締役の過半数であり、取締役が2名の場合は2名必要となります。取締役に欠員が生じて定足数に満たない場合、取締役会は定足数を満たすまで活動ができなくなります(131条)。
■取締役会の会長及び副会長
取締役の中から取締役会議長と副議長を選任します。議長は取締役会、株主総会を先導し、定款に定められた職務を行います。副議長は議長を補佐し、実際の業務を遂行します(132条)。
■取締会決議
取締役会の決議は会議に出席した取締役の過半数によって決議されます。取締役1人につき1議決権となりますが、賛否同数の場合、取締役議長が決定します。
また、特別利害関係を有する取締役は取締役会において議決権を行使することができません。
取締役会議事録を作成し、会社の本社にて保管することが義務付けられ、株主は議事録を閲覧することができますが、会社の企業秘密に関連するものは閲覧できません(134条)。
監査役
■監査役の設置義務
ラオスの監査役は、日本と同じように会社経営の業務監査および会計監査によって、違法または著しく不当な職務執行行為がないかどうかを調査し、不正を阻止・是正することに責任を負います。
監査役の設置義務は公開会社と非公開会社で異なり、非公開会社の場合、監査役を設置する義務はなく、設置は任意となります。ただし、500億キープ(約5億円)以上の資産を保有する場合は、監査役を雇わなければなりません(153条)。
一方、公開会社では、会社成立の日から監査役を選任する必要があります(179条)。
■監査役の選任・解任
監査役は、株主総会にて、選任・解任されますが、任期が無いため株主総会で解任されない限り、任期が自動的に更新されます。また、解任により欠員が生じた場合は臨時総会を開き、ただちに新しい監査役を選任しなけれなりません。監査役は、独立した立場にあることが求められ、具体的には以下の要件を満たさなければなりません(154条)。
・ 取締役、役員または株式会社の従業員ではないこと
・ 株式会社に対して直接的な利害関係が無いこと (ただし、株主は利害関係が無いものとする)
■監査役の権限と役割
監査役は、役員や従業員に対する業務に関する質問、帳簿の閲覧、などの権利を有し、その結果を、株主総会で報告しなければなりません(156条)。監査役の権限は以下のとおりです(156条)。
・ 監査報酬の受領
・ 会計監査の実施
・ 取締役、役員または従業員に対する質問
・ 株主総会への会計監査報告書の準備
株式
■株式の種類
日本では、様々な種類の株式を発行することが会社法上認められていますが、ラオスでは、普通株式と優先株式の2種類のみです(94条)。定款に特段の定めがない場合は、そべて普通株式として扱われます。
優先株式とは、普通株式よりも優先的に配当を受け取れる等の優位性が与えられた株式をいいます。その優位性については、様々であり、優先株式ごとに決定します。主な優位性には、以下の項目があります(100条)。
・ 普通株主よりも優先して一定の配当を受ける権利
・ 定款で定めたその他特別な権利
■株式の譲渡
非公開会社では、定款の定めに従い、株式譲渡が可能になります(104条)。株主以外の第三者へ株式を譲渡する場合には、他の株主に 事前の通知がされなければなりません。また、株式の譲渡は登録事項であり、株主名簿に譲受人の氏名と住所を記録しなければなりません。
一方、公開会社の場合、株主もしくは第三者へ株式を譲渡することが可能です。株式は譲渡人が株券に譲受人の氏名を裏書きすることで譲渡が成立します。株券は両者がサインし、譲渡人は株券を譲受人に譲渡します(185条)。
株式譲渡の要求を受けた後、公開会社が譲渡の承認を決定する場合、公開会社は要求を受けた日から5営業日以内に株式の譲渡を登記します。
また、公開会社の発起人は設立登記日後の2年間は設立時に出資した株式を譲渡することはできません(185条)。
■株主名簿
株主名簿とは、株主に関する法定の事項を記載記録する会社の名簿です。株主名簿には下記の項目を含まなければいけません。
・ 株主の氏名、住所、国籍
・ 株式の数、価額、、シリアル番号
・ 未払込部分
・ 株主として登録された日
・ 株主名簿から削除された日
株主名簿は定時株主総会で検査できるよう会社の事業所で保管されなければいけません。また、会社の役員は株主名簿の変更のあるごとに、または変更がない場合であっても少なくとも1年に1回は登記担当者に遅くとも各年12月25日までには株主名簿の写しを送らなければいけません(107条)。
■増資・減資
定款に記載された法定資本の増資、減資は公開会社、非公開会社を問わず、株主総会の特別決議により、実施することができます(110条、112条)。
増資・減資を行った場合は、変更登録を増資・減資の決議を行った日から10営業日以内に提出しなければならず、変更登録日から10営業日以内に最低1度は公告を出さなければなりません(115条)。
ただし、減資の場合は、会社資産の流出につながるため、以下の要件を満たさなければ、実施することはできません(112条)。
・ 減資後の残高が最低資本金2,000キープを下回らない
・ 減資後の資本金は登録資本金の2分の1以上かつ、関連当局の定める金額以上
・ 株主総会の特別決議による決議
・ 債権者が減資に反対しないこと
[債権者保護手続]
減資の特別決議が可決された場合、会社はすべての会社債権者に対して、資本金の額の減少に異議があれば一定期間内に異議を述べるよう、書面による通知しなければなりません。
その通知には、減資に反対をすることができる旨、減資の理由や減少した株式の価値や数を明示します。会社債権者はその通知を受けた日から2カ月以内に異議を述べなければならず、その期間内に異議を述べない会社債権者は反対意見がないものとみなされます(113条)。
■配当等
[ 配当支払の要件]
配当金の支払いにおいては、株主総会の事前承認が必要となり、別段の定めがない限り、配当は株式に応じて均等に分配されます。ただし、前年度以前からの累積損失を有している場合の配当は禁止されています。
累積損失があるにもかかわらず、配当を実施して債権者に損害を与えた場合、債権者は配当実施日から一年以内に払い戻しをさせることができます(150条)。
■積立金に関する規定
積立金には法定積立金とその他積立金があります(151条)。法定積立金は毎年累積損失を補填した後、純利益の10%を積立てます。この積立ては定款に別段の定めがない限り、登録資本金額の2分の1に達するまで続けられます。一方、その他積立金は、任意の目的のために株主総会で積立ての決定をすることができます(152条)。
■社債の発行
公開会社と非公開会社の大きな違いは、社債発行の可否です。社債は、非公開会社では、発行することができません。一方、公開会社では、株主総会の特別決議によって発行することができます(186条)。
参考文献
・ On the Promulgation of the Law on the Amendment of the Enterprise Law