会社法
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会社法
+ .1 .会社の機関
メキシコにおける主な会社形態
メキシコで一般的に選択されている会社形態は、商事会社一般法(LGSM:Ley General de Sociedades Mercanitles)により、株式会社、合同会社、合名会社、合資会社、株式合資会社、協同組合の6つとされています。
株式会社および合同会社のみ が、出資者の責任をその出資額のみとする有限責任会社であるために、メキシコへの新規進出はこの2つの形態の採用事例が圧倒的に多くなっています。
■株式会社(S.A.:Sociedad Anónima)
株式会社の場合は会社名の後にS.A.が付きます。また特に資本の増減が比較的簡単に行える可変資本制を採用したS.A. de C.V.という形態は日系企業でもよく見られます
(詳細は後述を参照)。
■合同会社(S de R.L.:Sociedad de Responsabilidad Limitada)
合同会社の場合には会社名の後に S. de R.L.が付きます。有限責任会社とは、出資額を支払う義務のみを負うパートナー間で設立される会社です。なお譲渡可能な証券、注文、または無記名株式があっても、合同会社表であるとは限りません。(58条、209条)株式の譲渡および新しいパートナーの加入については、基本的に株式資本の過半数を代表するパートナーの同意が必要です。(65条)アメリカからの投資等一定の条件を満たす場合には合同会社が選択されることもあります。また、株式会社と同様に可変資本制を採用することができます。可能なパートナー数(出資者数)は50名までです。中小企業向けといえるでしょう。
なお、株式会社と有限責任会社の違いについてはⅢ章「設立」の「株式会社と有限責任会社の違い」をご参照ください。
■可変資本制(C.V.:Capital Variable)
メキシコでは、定款の変更をすることなく資本増減が可能な可変資本制という会社形態(C.V.)があり、会社を設立する際にはこの形態を選択するケースが多く見られます。可変資本株式会社は会社名の後にS.A. de C.V.が、可変資本合同会社はS. de R.L. de C.V.が付きます。
メキシコにおいて、可変資本会社が認められたのは1884年の商法典(Código de Comercio)においてです。合名会社、合資会社および株式会社(商法典355条)の3つの会社に追加する形で、例外的な規定(同法356条)に従う会社として認められたことから可変資本という形態が登場しました。
実務上、少額の資本金で可変資本株式会社を設立し、設立後に増資を行うケースが多く見られます。これは、会社設立に携わる公証人に対し、資本金に応じた報酬を支払う必要があるためです。1億円の資本金で会社を設立する場合、公証人によっては100万円以上の報酬を請求される可能性もあります。ただし、以前は増資の際に公証手続が不要であったものが必要になったことから、トータルで見れば公証料金は変わらないという場合もあります。
+ .2 .株式会社
株式会社
株式会社は商事会社一般法に基づき事業運営を行う必要があります。
株式会社とは、出資者である株主から資金を調達し、株主から委任を受けた業務執行者(Administrador)が事業を行い、事業により生じた利益を株主に分配する構造を持つ会社形態です。
株式会社のメリットは、資本と経営が分離している会社形態であることから、将来のパートナーとのアライアンス(株式の持合、JV設立、出資受入など)に機動的に対応することができる点です。また、株式の公開が可能であり、出資者となる株主を公募できることもメリットとされています。株式会社における株式の上場、非上場の区分は、当該会社が発行する株式が証券取引所または店頭において取引が認められているか否かによって決定されます。
機関設計
株式会社の機関設計に必要なものとしては、以下が挙げられます。
①株主
②株式
③法定代理人
④資本金
⑤株主総会
⑥取締役会
⑦監査役
それぞれの項目についての詳細は以下のとおりです。
■株主……①
メキシコにおける会社設立では、基本的に発起人と株主は同一の者となり、当該発起人によって設立手続が進められます。
商事会社一般法における会社設立に際しては、株主は2名以上でなければならないと定められています。株主になるための特段の制限はなく、法人・個人およびメキシコの居住者か否かは問われません。そのため、日本から出資を行う場合、日本法人とその社長個人といった株主構成にするケースも見られます。また、株主間の持株割合に関しても特段の規定はなく、99.99%と0.01%というような極端な持株の割合も認められています。
日本企業とアメリカ企業がメキシコにおいて合弁会社を設立する場合、税務上、株主のマジョリティを日本にした方が良いか、またはアメリカにした方が良いかという問題が考えられます。この場合、両国ともメキシコと租税条約を締結しており、その内容についても酷似しているために、有利不利はほとんどありません。そのためにどちらをマジョリティとするかについては、税金的な観点からではなく、ビジネスの観点から決定する必要があります。
■株式……②
メキシコにおける株式とは、日本と同様に、株式会社における社員権(ここにいう社員とは、主に出資者および投資者)のことを指します。
株式会社における株式は、種類ごとに均一に細分化された構成単位を取る点に特徴があります。そのために、株式会社が事業に必要な資金を調達する際に資本を細分化し、少額の出資を多数の出資者から募ることが可能となるのです。
また、株式を標章する有価証券が株券と呼ばれ、メキシコにおける株式の種類には以下のようなものがあります。
[株式の種類]
A株:議決権制限株式で議決権を持つが、メキシコ人のみが取得可能
B株:普通株式で議決権を持ち、メキシコ人、外国人のいずれもが取得可能
C株:外国人投資家の議決権を制限した議決権制限株式
L株:議決権を制限した議決権制限株式
U株:複数の種類の株式を合わせた株式。たとえば、UBC株はBとC株を合わせた株式となる
[株券の発行]
商事会社一般法には法定要件を満たす上記の株券を発行する旨が記載されており、現行法制において株券は一律、記名式としなければならないとされています。
ただし、実際の慣行としては、株券未発行による具体的な罰則があるわけではないため、新規会社設立に当たって株券を発行しない企業も多くあるという現状です。
[自己株式]
メキシコにおける自己株式については、会社が債務者に対して訴えを提起して、債務者が持つ自社の株式を競売により取得する場合を除いて、株式会社が自己株式を取得することは原則として禁止されています。
また、上記の場合、会社は株式を適法に処分できる期日より起算して、3カ月以内に売却するものとし、この期間に売却しない場合は株式は消滅し、減資手続がなされます。なお、株式が会社に帰属する間、当該株式にあっては株主総会で議決権を行使することはできません(商事会社一般法134条)。
[株式の発行価額]
メキシコにおける株式の発行価額については、既存株主への影響を考慮し、会社は額面以下で株式を発行することができません(商事会社一般法115条)。
[配当の決定方法]
配当を議決権制限株式に割当てる前に、普通株式に割当てることはできません。
当会計年度に配当がない、または、配当還元率が5%に達しなかったときは、定められた優先順位により、次年度以降に支払われるものとすることが定められています(商事会社一般法113条)。
■法定代理人……③
メキシコにおいて新規で会社設立を行う場合には、ほとんどのケースで 法定代理人を定めることとなります。法定代理人としての資格を持つ者は 、メキシコ国籍の者、もしくはFM3ビザ(テンポラリーレジデントカード)以上のステータスを持っている外国人に限られます。
発起人は、当該法定代理人に会社設立(およびその後のビジネス)を委任します。法定代理人の権利の範囲は会社公正証書の中において限定することができ、委任の範囲を会社の設立に限定するのか、その後のビジネスに関する範囲まで委任するのかを選択する必要があります。
ここで注意したいのは、FM3ビザはすぐに取得できないということです。メキシコに新規で会社を設立したとしても、法定代理人の存在がなければビジネスを遂行することができません。たとえば、「唯一代表取締役」はFM3ビザ所有者でなくてもメキシコにおける代表権を得ることができるので会社は設立できますが、法定代理人を設定しなければ、会社に代表者はいるけれども、各種書類にサインするサイン権者(サイン権者はFM3ビザが必要)がいないという事象が起こってしまうのです。
■資本金……④
メキシコにおける最低資本金の制限は、2012年1月に廃止となり、現在は1ペソからでも会社を設立することができるようになりました。一般的には、1万ペソ程度で会社を設立し、その後に増資をするケースが多くなっています(前述の通り慣習として公証人の手数料が設立資本金の額をベースに決定されるため)。
また、機械設備などを現物出資として扱うためには、下記の条件を満たしている必要があります。
- 各株主が総資本金額の20%以上を現金で出資している
- 現地法人の定款内に実際に現物出資として扱う設備及びその評価額が記載されている
注意しなければならない点として、“各株主が”20%以上を現金で出資している必要があるということです。例えば、株主が2名(AとB)であったならば、AとBがそれぞれ20%以上を、つまりこの場合は少なくとも総額の40%が現金で出資されなければならないということになります。
メキシコの会社設立においては、株主は2名以上必要という制度上の問題で、形式的に株主を2名にしているケースが多くあります(【例】A:99%とB:1%)。この様な場合、資本金総額の40%は現金で出資されているかもしれませんが、Bが20%以上の現金出資をしていないため、現物出資を行うことはできないということになります。
■株主総会……⑤
株主は株主総会を通じて会社の活動や方針などを決定します。株主総会の決議において、取締役会または唯一代表取締役の義務や活動範囲が決定されます。株主総会については商事会社一般法の178条~206条に定められています。
[株主総会の種類]
株主総会には、通常総会と特別総会があります。通常総会については、発行済株式(議決権)の過半数を有する株主
の参加により、法的に招集が認められ、当該参加株主の過半数の賛成により決議されます(商事会社一般法189条)。
特別総会については、発行済株式(議決権)の75%超を有する株主の参加により、法的に招集が認められ、当該参加株主の過半数の賛成により決議されます(190条)。
通常総会による決議事項については商事会社一般法181条において、以下のように列挙されています。
・決算の承認
・役員の変更
・役員報酬の決定
一方特別総会による決議事項については商事会社一般法182条において、以下のように列挙されています。
・会社の存続期間の延長
・会社の期限前の解散
・会社資本の増加もしくは減少(可変資本制度不採用)
・会社の事業目的の変更
・会社国籍の変更
・会社の組織変更
・他会社との合併
・優先株式の発行
・自己株式の会社による消却、および享益株式の発行
・社債の発行
・会社契約の、いずれを問わない他の変更
・法律もしくは会社契約が特別の定足数を要求する、その他の事項
ただし、上記に列挙された事項を主としながらも、実際には特別総会決議事項以外の事項については、通常総会によって定められるという位置付けのようです。
上記以外の決議事項としては、代表権の授権・撤回、可変資本の増減等があります。
[開催時期]
通常総会は少なくとも年に1回、事業年度終了後4カ月以内(12月決算のため4月末まで)に行わなくてはなりません(商事会社一般法181条)。
[開催場所]
通常総会と特別総会のいずれにおいても、会社の登記住所で開催します。
[招集権者]
株主総会は、少数株主等によって招集される場合を除き、取締役会、議長、秘書役、取締役、または監査役により招集されるものとされています(商事会社一般法183条、185条)。
[招集通知]
株主総会の招集通知は、開催の15日前までに、官報または会社所在地で広く流通している主要新聞(官報がない場合)で公告するものとされています(商事会社一般法186条)。
また、通知には、総会の議題、開催日時および場所を記載するものとし、招集者の署名がなされていなければならないものとされています(187条)。
ただし、会社の所在地外に在住する株主がいる場合には、会社名簿に記載された連絡先に、国際郵便、Eメール、FAX等の各方法により、株主総会の開催の15日前までに通知するものとされています。
[株主総会の議長]
定款に別段の定めがあるときを除き、株主総会では、取締役または取締役会(これらの両者が欠ける場合には出席株主)が指名した者が議長となります(商事会社一般法193条)。
[議決権の代理行使]
株主は、事前に代理人を選任することで、代理人を通して総会での権利を行使することができます。ただし、代理人が持つ代理権は、定款が定める形式により付与されなければなりません。
また、取締役または会社の監査役は代理人となることができません(商事会社一般法193条)。
■取締役会……⑥
取締役が2名以上いる場合は取締役会が構成されます。ただし、取締役を一人だけとする唯一代表取締役を置くこともできるため、進出間もない日本企業の多くは取締役会を置かずに唯一代表取締役を選任して対応しています(商事会社一般法142条~163条)。
[取締役の要件]
商事会社一般法において、取締役に選任できない者は「法律によって事業を行うことが認められない者」とだけ記載されており、実際にはメキシコにいない者(非居住者)であっても取締役になることが可能です(商事会社一般法151条)。
なお、取締役(唯一代表取締役を含む)は株主である必要はありません。
[招集通知]
取締役会の招集は、一般的に当該取締役会の5日前までに、書面による通知等の適切な方法で、開催日時および場所、議題の通知が行われます。
ただし、取締役全員が会社内に存在する等の一定の状況によっては招集手続は要求されません。
[開催場所]
基本的には当該会社の住所において開催されますが、取締役会の決定により、支店、代理店、その他メキシコ内のいかなる場所においても開催することができます。
[決議]
取締役会については、取締役会構成員の過半数の取締役の参加により、法的に招集が認められ、当該参加取締役の過半数の賛成により決議されます(商事会社一般法153条)。
[取締役会の権限の範囲]
取締役会は株主総会に干渉する権限はありません。これを前提として、取締役会は、連邦民法2554条に従い、会社の業務を推進・指揮する権限を有し、会社の目的達成に関するすべての契約・行為・取引を執行または履行し、すべての行政または司法当局における訴訟・債権回収・管理および所有権に関する行為のために必要な権限を持つものとされます。
また、これらの業務を執行するに当たり、同法2587条に基づく特別な定めを要する以下の権限についても有するものとされます。
[取締役会における特別な権限]
・会社の資産の売却、租税の支払、その他の処分、抵当権または質権の設定等、所有権に基づいて行われること
・金銭の貸付、社債の発行、割賦での購入、信用貸付の実行、および流通証券の購入
・会社の事業の指揮、運営、監督、および資産の管理、並びに会社の事業を達成するためのすべての契約の履行
・法律により要求される帳票、報告書、財務諸表の準備、承認、並びに監査役および株主への提出。株主に対して行う、会社にとって有益な決議の提案および提言
・あらゆる動産、不動産、権利、営業権、フランチャイズ、ローンの取得並びに会社の事業目的のために必要または推奨されるその他のものの購入または売却、リース、抵当権や担保権の設定および譲渡を行うことに関しての、会社が従うべき計画や方針の提言
・会社役員や従業員の自由な任命および解任、権限の修正、報酬の確定および義務の履行を保証するための社債額の決定
・個人、法人、マネージャー、役員または代理人に対し、権限の全部または一部を委任すること、並びに包括代理権および限定代理権の付与および取り消し
・メキシコ法および定款により付与されている株主総会により保留されていないその他すべての権限
[取締役会の構成]
取締役会を置く場合には、各取締役の役職名は以下のとおりとなります。
•議長(Presidente)
•秘書役(Secretario)
•財務役(Tesorero)
•取締役(Ejecutivo)
これらの役職のうち、議長は必須ですが、それ以外の役職については任意となります。アメリカにおいては、これらが執行役員の役職名として使用されることから混乱を生むことがありますが、これらの役職はあくまでも取締役会内でのみ利用する役職であり、公式の役職ではありません。
また、取締役の人数に法の制限はありません。そのため、労働者利益分配金(PTU)対策および労働法7条(外国人1人に対して、現地人9人を採用するという規定)の対策として、すべての駐在員の肩書を取締役とする会社も存在します。
[少数株主による取締役の選任]
取締役が3名以上いる場合で、少数株主持分割合が25%未満の場合には、定款にて取締役選任における少数株主の権利を定めることができます。
また、少数株主持分割合が25%以上である場合には、当該少数株主は1名以上の取締役を選任することとなります。
[唯一代表取締役]
上述のとおり、メキシコでは取締役会を置かずに唯一代表取締役を置くことができます。
唯一代表者とは、取締役会を設置せずに1人の取締役に全権を委ねる経営機関です。
メキシコにおいては、現地法人を代表する者を指名し、さらに代表権の内容を公正証書に明記しなければなりません。会社の代表権は統括代表権と限定的業務のための特別代表権が存在し、いずれの場合も、公正証書への記載により認められます。
総括代表権は、下記の3つから構成されています。
・訴訟と取立行為
・経営管理
・所有権による行為
なお、統括代表権を持つのは、基本的に唯一代表取締役または取締役会であり、公正証書に代表権が記載されていない者は、取締役や社長であっても、法的に会社の代表者としては認められません。
[経営審議会]
メキシコにおける公開会社など一定の企業においては、取締役会の他に経営審議会を設置しなければなりません。経営審議会の制度は、商事会社一般法が1976年に改正された際に新設されました。
経営審議会の構成員は、株主総会により選出され、その権限は会社の業務の一般方針の決定、取締役の業務の監査などに及びます。
■監査役……⑦
メキシコにおける会社設立に当たっては、取締役の他に監査役を1名以上置かなければなりません。実務上、多くの企業においては弁護士・会計士・コンサルタント等の第三者を監査役に任命し、会社設立を行っています(商事会社一般法164条~171条)。
[選任]
監査役は株主総会が選任することと定められています。(商事会社一般法181条2)
なお、監査役の全員が欠員となってしまった場合には、取締役会は、3日以内に臨時株主総会を招集し、監査役の選任をしなければなりません。取締役会による招集ができない時は、株主は、株主の請求に基づいてその会社所在地の裁判所に株主総会の招集を委任することができます。
招集できなかった場合、または、株主総会が開催されたが監査役の選任がなかった場合には、株主の請求に基づいてその会社所在地の裁判所が監査役の選任をすることができます。
[要件]
商事会社一般法165条には、監査役に選任できない者の要件として、以下の項目が列挙されています。
・法律によって事業を行うことが認められない者
・当該会社の従業員
・株式25%以上を保有する関連会社の従業員(恣意性の介入が認められるような場合)または株式50%以上を保有する関係会社の従業員
・取締役の直系血族。四親等以内の傍系血族もしくは二親等以内の親族
株式25%以上を保有する関連会社の取締役に関しては、法律には従業員以外は監査役になることができると記載されているため、形式上は特段問題なく監査役に就任できることになります。
ただし、法の立法趣旨から、恣意性の排除のために監査役は第三者であることが求められています。多数の株式(25%以上)を保有している関連会社の取締役に関しては、恣意性の介入が考えられ、監査役にする一定のリスクがあると解釈することができます。
そのためにメキシコ新規進出企業の多くは、弁護士・会計士・コンサルタント等の名義を借り、当該弁護士等を監査役に選任しています。
[権限および任務]
・監査役は、商事会社一般法152条で設定された取締役等の保証金の有無等をその権限により確認することとされています(商事会社一般法166条)。
これは取締役等が職務に就く前に提供しなければならない保証金に関連する規定であり、監査役はその義務が履行されたかどうか確認する必要があります。また、監査役は保証金を管理する必要もあるため、保証金が存在しないとき、滅失する危険があるとき、もしくはその他の違法行為に気付いたときには、株主総会にその旨を報告しなければなりません。
以下、監査役の具体的な権限および任務です。
・取締役に対して、月次決算書の提出を要求することができる
・監査役は、1カ月に1度、会社の帳簿や文書、および現金残高を監査するまた、監査役の調査・監査の権限は無制限であるために、当該会社のすべての帳簿および文書を監査することができる
・年度ごとに株主総会に提出する財務諸表に関する報告書を作成しなければならない取締役または取締役会は、年度ごとの財務諸表を、会計期間の末日から3カ月以内に作成し、これを証拠書類および営業報告書と合わせて、株主総会開催日の最低1カ月前までに監査役に提出する監査役はその提出を受けた日から15日以内に、作成された証拠書類および営業報告書に対する意見および提案を記載した、報告書を作成しなければならない(商事会社一般法173条)
・取締役会および株主総会の議案に相当と判断される事項を追加することができる
・取締役会等が何らかの理由により株主総会において株主を招集しないとき、またはその他相当な理由があると認められるときには、監査役は通常総会、または臨時株主総会を招集することができる
・監査役は、取締役会に出席することができる。取締役会においては、監査役の発言権は認められているが、議決権は認められていないまた、取締役は、監査役に取締役会の日時を通知する義務がある
・監査役は、会社の業務を無制限に、かつ、常時監査することが認められている
・監査役は、株主総会において株主からの告発を報告する義務がある商事会社一般法では、株主は取締役の違法行為を書面により監査役に報告することができる。監査役は、その告発を株主総会に書面により報告し、かつ、これを検討して相当と思われる提案をすることが求められる
[任期]
監査役には任期が定められており、任期を定款に記載しなければなりません。通常の任期は1年とされ、毎年監査役を株主総会にて選任する必要があります。
一方で、商事会社一般法 154条(取締役に関する内容ですが、171条にて監査役としても適用される旨が記載)において、任期満了となった場合であっても新たな監査役が指名されるまでは、現在の監査役は継続して任務を行うという旨が記載されているため、通常株主総会での再任の決議を得ないままであっても実務上は自動承認となっています。
[解任]
監査役は、株主総会によりいつでも解任することができます。
ただし、多数派株主は自らが選任した監査役だけを解任することができ、持分割合25%以上の少数派株主の選任した監査役については解任することができないとされています。
[報酬]
監査役の業務は有償とされており、定款に監査役の報酬が定められていない場合は、株主総会の決議により定めることとなります(商事会社一般法181条3項)。決議により、報酬をなしとすることも可能です。
また、定款に報酬額の定めがない場合には、株主総会の決議により定めますが、監査役は、その報酬額が不当だと考える場合には、連邦民法2607条を適用することができます。
参考:連邦民法2607条
役務の提供に対する報酬額は当事者間の話合い、およびその土地の慣習に基づいて定めるべきものである。そのため、監査役の報酬額は会社の重要性、利益の額、監査役の業務および監査役の社会的・技術的重要性を考慮して決定しなければならない。
[取締役の規定の流用]
監査役についてのその他の決まりにおいては、監査役の条項に直接定められていない場合、取締役の各条項(具体的には、商事会社一般法144条、152条、154条、160条~163条)を準用して判断するとされています(商事会社一般法171条)。
+ .3 .合同会社
合同会社
合同会社は株式会社と同様に、商事会社一般法に基づき事業運営を行う必要があります。
合同会社とは、出資者である社員から資金調達を行い、社員は自らが業務執行者として事業を行い、事業により生じた利益を出資者である自分たちに分配する構造を持つ会社形態です。合同会社は、株式会社とは異なり、所有と経営が分離されていないことが主な特徴です。
機関設計
合同会社の機関設計に必要な要素は以下のとおりです。
①社員
②持分
③執行役員・監査役
④出資持分
⑤社員総会それぞれの項目についての詳細は以下のとおりです。
■社員……①
合同会社の出資者のことを社員と呼び、商事会社一般法では、合同会社の社員は2名以上かつ上限が50名とされています。
また、社員のうち最低1名の名前を合同会社の会社名に含めなければならず、さらに、会社名には合同会社を意味するスペイン語のSociedaddeResponsabilidadLimitadaまたはその略称であるS.deR.L.を含める必要もあります(商事会社一般法59条)。
社員の追加や変更は、原則として出資持分の過半数を持つ社員の同意があれば可能ですが、反対する社員がいれば、15日以内に社員総会を開催し、社員の追加・変更についての決議を行うことができます(65条、66条)。
社員は、会社の社員名簿に氏名、住所、出資持分を記載する必要があります。社員の変更があった場合も同様です。社員名簿の内容は、登記されない限り第三者に対抗することができませんので注意が必要です(73条)。
やむを得ない事由による持分の承継(地位等の承継を含む)は可能ですが、その持分を引き継ぐ者がいない場合は、合同会社は自動的に解散することになります(67条)。
社員としての身分は1人の社員につき1つまでとされています。よって、仮に追加の出資を行う、または他の社員から持分の譲渡を受けたとしても、出資持分は増加しますが、社員としての身分を複数持つということにはなりません(68条)。
■持分……②
合同会社の出資持分は、出資額に応じて社員に割当てられます。持分を分割することは原則としてできないものの、定款内で分割ができる旨を定めている場合は、分割することが可能になります。ただしこの際も出資持分の多い社員の合意が必要となり、さらに1つの持分につき、1ペソの整数倍(1ペソ、2ペソ、3ペソ……)の出資持分となるように分割しなければなりません。また、前述同様、やむを得ない事由による持分の承継は原則可能であり、この場合は他の社員の同意は不要となります(商事会社一般法67条)。
株式会社では株主としての権利を表章する株券を発行しますが、合同会社は社員としての権利を表彰するための有価証券の発行は認められておりません。ただし、有価証券ではない、社員としての証明書であれば発行可能とされています。
合同会社の配当についての規定も株式会社のそれとは異なっており、商事会社一般法85条にて1年間に出資金額の9%を上限として支払うことが可能とされています。また、利益が出なかったとしても配当を行うことはできますが、少なくとも事業を開始している状態でなければ配当を行ってはならず、また利益なしの状態での配当は3年間に限定されています。
■執行役員・監査役……③
合同会社の業務運営は通常、社員が選任する1名以上の執行役員によって行われます。合同会社の執行役員は株式会社における取締役に近いポジションといえます。執行役員は社員が兼任することも、外部から招聘することも可能で、人数、任期についての定めもありません。また、社員総会によっていつでも執行役員を解任することが可能です(商事会社一般法74条)。
執行役員を置かない場合は、社員が自ら会社の業務運営を行うこととなります。
執行役員の人数についての制限はありませんが、執行役員が複数いる場合は通常、執行役員会を開催し、多数決で業務運営に関する意思決定を行うことになります。別途、定款上にて意思決定にはすべての執行役員の賛成を必要とする旨を定めておくことも可能です。また、執行役員会において、反対票を投じた執行役員や意思決定に関わらなかった執行役員は当該意思決定についての会社に対する責任は追及されません。一方、執行役員が会社の出資持分を棄損した場合、会社および債権者に対する責任として、その損害を賠償しなければなりません。ただし、1人で4分の3以上の出資持分を持っている社員が同意すれば、その責任を免除することが可能です(75条、76条)。また、合同会社は定款にて、監査役を設置する旨を定めることができますが、これは任意であり、設置しないことも可能です。監査役を置く場合は、社員総会にて選解任を決議することになります。監査役は執行役員同様に、社員との兼任も可能であり、社外から招聘することもできます(84条)。
■出資持分……④
合同会社の出資持分については、株式会社同様に最低金額は定められておりません。また、可変資本株式会社と同じく、出資額を自由に変更することも可能であり、この形態の合同会社のことを、可変資本合同会社(S.deR.L.deC.V.:SociedaddeResponsabilidadLimitadadeCapitalVariable)と呼びます。
出資持分の金額は定款に定められ(商事会社一般法62条)、合同会社の設立時に、出資持分総額の50%以上を銀行口座へ払込む必要があります(64条)。
また、一度出資した持分は原則減額することはできませんが、可変資本合同会社の場合や定款で持分の償却を認めている場合に限り減額することができ、そのときの出資額に応じて償却金額の分配がなされます(71条)。一方で、出資持分を増額することはいつでも可能であり、この場合、定款で別段の定めがない限り出資持分に比例して各社員が新たに出資を行うことになります(70条、72条)。
■社員総会……⑤
社員総会は株式会社の株主総会に相当する、合同会社の最高意思決定機関であり、1年に1回の開催が必要となっています。社員総会は、定款で別段の定めがない限り、出席社員の出資持分が全出資持分の50%以上になることで成立し、出席者の出資持分の過半数を持って、決議を行うことになります。また、定款上別段の定めがない場合、定足数に満たなければ、再度社員総会の招集を行い、2回目の決議では持分割合に関係なく、出席社員の人数によって決議を行うことになります(商事会社一般法77条)。
定時社員総会での決定事項は、商事会社一般法78条に次のように列記されています。
・年度の決算の承認
・利益分配
・執行役員の選解任
・(監査役を置く場合)監査役の選解任
・持分の増加または減少
・社員の変更・追加
・執行役員が会社に損害を与えた場合の責任追及について
・定款の変更
・会社の解散
・その他定款で定めのある決議事項
社員総会での議決権は、定款に定めのない限り、出資額1,000ペソにつき1議決権が与えられます。社員総会は定款上で定められた開催地、開催日にて行われ、招集は執行役員または出席社員の出資持分が全出資持分の3分の1以上であることをもって行われます。招集通知は開催日の8日以上前に各社員に、書面にて配達証明付きの郵便で送付されなければなりません(79条、80条、81条)。
定款において、書面による投票が可能である旨を定めている場合、配達証明付きの書面による決議も可能となりますが、この場合でも最低でも総会参加者の出資持分が全出資持分の3分の1以上であることが必要です(82条)。
なお、上記決議事項のうち、定款の変更についてのみ、決議要件が他と異なっており、参加者の持分総額が全出資持分の4分の3以上なければなりません(83条)。
+ .4 .会社の清算
会社の清算
会社の清算とは、メキシコからの撤退又は法人成り等の組織変更をした場合に、現在メキシコに存在する現地法人(支店・駐在員事務所)の資産負債を清算し、会社の法人格を消滅(支店・駐在員事務所の場合はメキシコの事務所を閉鎖)させる手続です。
会社の清算手続は、各会社の定款と連邦民法、商事会社一般法の規定によって実行されます。ただし、関連する税制等にも注意する必要があります。
ここでは商事会社一般法に定める会社の解散・清算手続の概要を述べます。会社清算に関しては、商事会社一般法の10章および11章(229~249条)に書かれており、手続の概要は以下の通りです。
①解散・清算の事由 (商事会社一般法229条)
会社は、以下の事由が発生した場合に、解散することになります。
(イ)定款に定められた存続期間の満了
(ロ)会社の主たる事業目的の遂行不能、もしくは完了
(ハ)株主の合意(特別総会決議)
(二)法律に定められた株主数数(2 名)の不足
(ホ)会社資本の 3 分の 2 の欠損
②解散・清算の手順
商事会社一般法に基づく解散・清算の手順は以下の通りです。
(イ)会社解散の取締役会および特別総会の招集
(ロ)会社解散の特別株主総会開催 (清算人の決定)※1
(ハ)解散および清算人の登記
(二)清算事務手続き開始
(ホ)清算事業年度貸借対照表の公告
(へ)清算事業年度貸借対照表の承認
(ト)残余財産の分配
(チ)清算人の保存の義務の履行
※会社解散の特別株主総会はスペイン語で、Asamblea General Extrardinaria de Accionistas de Disolucion といいます。
それではこれらの解散・清算の手順を1つずつ細かく見ていきましょう。
(イ)会社解散の取締役会および特別総会の招集
会社解散の特別株主総会の開催の前に、上記の解散事由が発生した段階で、取締役会を開催することになります。この取締役会において会社解散の特別株主総会の招集が決議され、それに基づき会社解散の特別株主総会の招集通知が発送(又は公告)されます。
この会社解散の特別株主総会の招集通知の発送(又は公告)は、当該特別株主総会開催の15日前までに行わなければなりません。
(ロ)会社解散の特別株主総会開催 (清算人の決定)
上記の招集通知の発送(又は公告)から15日以内に、会社解散の特別株主総会を開催します。
当該特別株主総会において、会社の解散の決定、清算人の任命(複数任命可)、その他必要事項を決議します。
この会社解散の特別株主総会については、通常の特別総会と同様に、発行済株式の75%を超える株式(議決権)の参加により、法的に開催が認められ、当該参加株式の過半数(50%超)の賛成により決議されます。
(ハ)解散および清算人の登記
上記の会社解散の特別株主総会の決議事項(解散の決定、清算人の任命等)は、公正証書化し、公証人によって登記が行われなければなりません。
この登記がなされることにより、会社の形態が清算会社へと変化することとなります。つまり営利活動を目的とした形態から、清算を目的とした形態へと変化するのです。清算を目的とする形態へと変化するため、会社の権利も取締役から清算人に移管されることになり、全ての帳簿類と資産が清算人に引き渡されます。
また、商事会社一般法233条には、この登記の後に新しい業務を開始してはならない旨が定められています。
(二)清算事務手続き開始
上記の登記により、通常の事業年度が終了し、清算事務年度が開始します。
清算事務年度においては、新たにビジネスは発生しませんが、現在の残余財産の分配を目的(残余財産の分配が目的であるので、清算貸借対照表を作成することが主目的)とし、清算貸借対照表の作成(資産の売却等)により、利益が発生した場合には税金の支払義務が発生することもあります。
清算貸借対照表の作成に伴い必要となる清算事務は以下の通りです。
【清算事務】
A)SATに対する開始通知(1か月以内)
B)外資登録抹消(40日以内)
C)債権回収
D)債務弁済
E)資産の売却
F)その他各種登録の抹消(RFCおよびRPPC:商業登記を除く)
G)清算損益計算書及び清算貸借対照表、清算申告書の作成
※登記の段階で全ての事業活動は終結しており、その後に新たに事業が始まることはありません。事業活動が終結するため、全ての従業員の雇用関係の終了、退職金の支払いもこの時点で行うこととなります。
(ホ)清算事業年度貸借対照表の公告
清算人は、清算の目的となる残余財産の分配案を含めた当該清算事業年度貸借対照表を官報公告しなければならない(回数は3回で、10日間ごとに行う)。
最終公告日から15日の間に限り、残余財産の分配案に異議のある株主は清算人に対し、異議申し立てを行うことができます(異議申し立てがあった場合には、清算には再度残余財産の分配案を作成し、再度官報公告を行わなければなりません)。
(へ)清算事業年度貸借対照表の承認
上記の清算事業年度貸借対照表の官報公告が異議申し立てなく終了した場合には、会社清算の特別株主総会(上記の会社解散の特別株主総会は解散のためのもので、こちらは清算のための特別株主総会)を開催して、清算事務、清算最終貸借対照表(残余財産の分配案を含む)、その他必要な事項を決議する。
なお、決議事項は、上記の会社解散の特別株主総会と同様に、公正証書化し、登記を行います。
この段階で残余財産が確定するために、清算事業年度確定申告書をSATに提出(清算終了の通知および納税含む)し、RFCの登録を抹消することとなります。
また、RPPCについても、この登記の段階で、会社の法的な消滅が認められるために、自動的に抹消されることとなります。
(ト)残余財産の分配
清算特別株主総会の決議事項に基づいて、株主へ残余財産の分配が行われます。残余財産による株券の買い戻しの位置づけとなり、買い戻された株券に関しては清算人によって破棄されます。
(チ)清算人の保存の義務
清算人は清算完了から10年間、関連資料を保管しなければなりません。
④事業譲渡等による事業の売却
清算中に事業譲渡や合併などの方法によって、事業を他社に売却するという方法も選択できます。
ただし、事業譲渡の場合は売却した事業の対価が出資先のメキシコ内国会社に支払われるので、結局この資金を外国会社の株主に分配するためには、当該メキシコ内国会社を清算する等もう1ステップ手続が必要となります。
また、合併の場合にも合併存続会社の株式が割当てられるので、これを残余財産として分配するため、事業譲渡の場合と同様に、もう1ステップ手続が必要となります。
また、統合後の人事の重要性など事業譲渡や合併にはたくさんの不確定要素が伴いますので、社員の職業安定性の問題や合併後の社員のモラル低下を招く恐れがあるために注意が必要です。
⑤支店および駐在員事務所の閉鎖
メキシコにおいては、民法2736条に、「外国法人の存在、権利、機能、形態、解散、清算、合併等については、当該本国の法律が適用される」という原則が存在する以外に、支店および駐在員事務所の閉鎖に係る明文規定は存在しません。
そのためにメキシコにおける支店および駐在員事務所の閉鎖には、一般的に、次の(イ)~(ホ)の手続きが必要と考えられています。
【必要手続き】
(イ)本国の法制に従った支店および駐在員事務所の閉鎖決議の採択、閉鎖に係る代表者の任命等の決議、当該決議事項を本国において公正証書化
(ロ)一般業務の終了
(ハ)メキシコ経済省外資局へ閉鎖通知の提出および確証の入手
(二)閉鎖の確証を含ませるよう公正証書を編集
(ホ)登録の抹消
ただし、実務上の取り扱いとしては、この様な簡便な処理とならないことが多々ありますので注意が必要です。
特に支店の閉鎖に関しては、メキシコ内国法人と同様にメキシコ国内でビジネスを行っていますので、債権者の保護等の観点から、法人と同様の手続きを経て、支店が閉鎖される場合も多くあるようです。
そのためメキシコにおいて会社の清算を行う場合にはメキシコ現地の専門家指導の下、当局と折り合いをつけながら進めることが望ましいと言えます。
+ .5 .参考文献
参考文献
・日本貿易振興機構(JETRO)
「日本からの進出(投資)に関する相手国の制度 会社設立の手続き:メキ シコ」
メキシコ・センター「メキシコにおける会社設立 ・ 清算手続き」2009 年 9 月
・中川和彦「研究ノート/メキシコの可変資本会社制度」 成城大学 經濟研究 25 号(1967 年 6 月)