税務
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税務
+ .1 .メキシコにおける税務
メキシコの租税体系
メキシコに居住している場合、またはメキシコ企業と取引を開始する場合や、メキシコ国内においてビジネスを行う場合、必然的に税金の問題が発生してきます。この認識がない状態で取引を行えば、後で思わぬ税負担が発生することも珍しくありません。この章では、メキシコにおける税制の全体像、個別の税目の解説から、国際間での税務問題までを解説します。
■税目の種類
メキシコにおける主な税目については、以下のとおりとなります。
| 直接税 | 間接税 |
連邦税 | 法人所得税(ISR) | 付加価値税(IVA) |
個人所得税(ISR) | 輸入関税(IGI) | |
| 生産・サービス特別税(IEPS) | |
| 新車税(ISAN) | |
地方税 | 給与税(ISN) 不動産取得税(Impuesto de Sobre Adquision de Inmuebles) 不動産所有税(Impuesto Predial) 宿泊税等(ISH) | |
[連邦税]
メキシコの税金はほとんどが国税であり、法人・個人所得税(ISR:Impuesto Sobrela Renta)、付加価値税(IVA:Impuesto al Valor Agregado)などがこれに該当します。国税の課税主体は連邦政府となります。
[地方税]
地方税とは、個人および法人に対して課される税金であり、その課税主体は州政府もしくは地方自治体となります。メキシコの地方税の税目としては、給与税、不動産取得税、不動産所有税、宿泊税などがこれに該当します。
■税法の体系
メキシコの税法の体系は、下記の図のとおり、憲法および租税条約が各個別税法の上位概念として存在しています。また、税法の改正の内容を含んだ歳入法が毎年改定されるため、毎年何らかの税制改正が行われます。なお、当該税制改正が違憲と考えられる場合には、納税者はAMPAROと呼ばれる異議申立書を提出することが可能となります。
■メキシコ税制の特徴
メキシコにおける税制の特徴をまとめると、下記のとおりとなります。
+ .2 .メキシコ進出に係る税務
進出の際の税務
■拠点を設けずにビジネスを行う場合
メキシコに拠点がない場合でも、メキシコにある会社と取引を行う際には、その取引に付随して税金の問題が生じてきます。メキシコ国内に拠点が存在しない場合には通常「非居住者」とされ、メキシコにおいて発生した所得にのみ、メキシコの租税法に基づき、課税が行われることになります。また、拠点がない場合であっても、メキシコにおいて恒久的施設(PE:Permanent Establishment)認定という形で課税が行われるケースがあるため、注意が必要です。
■拠点を設置してビジネスを行う場合
メキシコでの取引が本格的になってくると、現地に拠点を設けてビジネスを展開していくことになります。以下では、駐在員事務所、支店、現地法人など、進出の形態ごとに関連する税務規定を検証していきます。
[駐在員事務所を設けて活動する場合]
駐在員事務所(Oficina de Representación)については、民法2736条において「メキシコ国内に常態では商行為を行わない外国法人」と規定されているため、基本的に所得が発生することはありません。
よって、駐在員事務所自体に対する直接的な所得課税のリスクが生じることはありませんが、この駐在員事務所がPEとして認定される場合には、メキシコに営業拠点があるものとみなされ、外国法人として、そこで発生したとされる所得に対して法人所得税(ISR)が課されることとなります。
[支店などの営業拠点を設けてビジネスを行う場合]
支店(Sucursal)については、外資法17条において「メキシコ国内において常態で商行為を行おうとする外国法人」と規定されており、基本的にメキシコを源泉地国とした所得が発生します。上記の駐在員事務所との間には、これ以外に明確な違いはなく、常態で商行為を行うか否かによって判断されることとなります。外国法人がメキシコにおける支店で活動する場合、税法上は非居住者に該当し、メキシコ国内で発生した所得に対して課税(源泉地国課税)されます。
[現地法人を設けてビジネスを行う場合]
現地法人を設立した場合には、メキシコの内国法人となるため、メキシコを含むすべての国で発生した所得に対して、メキシコにおいて課税されます(全世界所得課税)。また、メキシコ以外の国で発生した所得につき、当該他の国において既に課税がなされ、メキシコとの二重課税となる場合には、外国税額控除の規定を適用することにより、その二重課税部分につきメキシコにおいて納付すべき法人所得税額から控除することになります。日本、メキシコについては両国間の租税条約において外国税額控除が定められているため、これに従って二重課税部分を調整する形になります。
■投資還流方法についての検証
メキシコへ進出し、現地での活動を通じて利益が発生した場合、この利益を留保して再投資するか、親会社に還流するか、という問題が発生してきます。現地において再投資をする場合には、税務上の問題は特段生じませんが、日本にある本社または親会社へ利益を還流する場合には、その還流方法により税務上の取扱が異なります。
[支店➡本店への還流]
日本企業がメキシコに支店を設置し、そこで発生した利益を日本の本店へと還流する場合、メキシコには利益送金に対する課税はありませんので、特段課税がない状態で本店へと利益を還流することが可能となります。
[子会社➡親会社への還流]
メキシコの子会社で生じた利益を日本の親会社へ還流する場合、その方法としては以下のものがあります。
①配当により親会社へ還流する方法
②親会社との取引を通じて還流する方法
①を行う場合、メキシコ子会社からの配当金支払時における源泉税率は原則10%となります。日墨租税条約上では、配当金にかかる源泉税率は、親会社への配当であれば5%(関係会社以外への配当15%)と規定されていますので、租税条約を適用することで有利な源泉税率により親会社へ配当を行うことができます。
また、配当を受け取る日本の親会社にとっては、配当は所得として法人税の課税対象になります。しかし、外国子会社から受け取る配当については、配当額の95%分を益金不算入とする「外国子会社益金不算入制度」があります。適用を受けられる対象は、以下のとおりです。
【外国子会社からの配当に係る益金不算入制度の対象となるための要件】
②を行う場合、親会社に対しての経営指導料やシステム使用料の対価、ロイヤルティなどの支払時に、国内法では非居住者に対する源泉税率25%または30%の税率が適用されます。ただし、日墨租税条約で源泉税率10%の適用が認められているため、実際は上記の国内法に比べて有利な租税条約の税率を適用することとなります。
+ .3 .国内税務
個人所得税
メキシコに居住する個人や日本から派遣されている現地駐在員について、個人所得税(ISR)を計算する場合、まずその対象となる人がメキシコの個人所得税法上、「居住者」であるか「非居住者」であるか、つまり対象者の居住性が重要となります。この居住性により、課税される所得の範囲が異なってきます。
■居住者の定義
メキシコでは、以下の要件を満たす場合に居住者として区分されます。
・メキシコに住所を有する個人
・課税年度内に 183日以上メキシコに滞在している者
また、「居住者」「非居住者」の区分により、課税される所得の範囲は以下のように異なります。
メキシコの居住者の場合はメキシコ国内の所得だけではなく、その他の国において発生した所得のすべてがメキシコで課税されます。いわゆる、全世界所得での申告が必要となります(所得税法153条)。
■短期滞在者に対する給与所得(日墨租税条約15条)
租税条約においては、給与所得について、実際の勤務が行われている国でのみ課税されると記載されています。つまり、給与の発生源泉である“勤務”が行われていない場合には、給与所得に対してその国で課税が行われることはなく、実際の勤務地において課税されることとなります。日本からメキシコに出張する場合、以下の3要件を満たす場合には、支払われる報酬または給与に対してメキシコ側で課税されません。
■役員報酬に係る課税(日墨租税条約16条)
給与等に関しては、原則としてその国において勤務していない場合には、課税されません。つまり、日本からメキシコへ従業員が出向した場合、日本で勤務しない限り、日本側で給与に対して課税問題が生じることはありません。しかし、日本の会社から役員報酬を得ている役員等がメキシコに居住者として駐在する場合は、日本非居住者かつ日本国内の勤務実態がなくても、役員報酬に対して日本側で課税(源泉徴収)が発生するため、注意が必要です。
■課税期間
課税期間は、メキシコ税法に基づき、例外なく1~12月(暦年課税)が適用されます。営業開始月が1月以外の場合においても12月で当該年度の課税期間を締切ります。
■メキシコにおける所得税額の計算
メキシコにおける所得税計算については、次の図の手順で計算します。
まず、その年におけるすべての収入を課税される収入(課税所得)と非課税とされる収入(非課税所得)とに区分する必要があります。以下において、課税所得および非課税所得、所得控除、税率等について記載します。
[課税所得の範囲]
所得税の計算対象となる課税所得については、次表のとおりです。
[非課税所得]
所得税の課税対象については、個人が受けた収入がすべて所得とされる訳ではなく、所得税法(LISR:Ley del Impuesto Sobre la Renta)上、非課税と規定されている所得もあります。主な「非課税所得」については、次表のとおりです。
[所得控除額]
所得税が課税される所得金額については、収入金額から、その収入を得るために支出した金額を控除して算出します。所得金額から控除することができる費用には、以下のようなものが挙げられます。また、銀行の残高入出金明細を支払事実の証憑として準備したとしても、それだけでは控除の根拠とはならないことに留意する必要があります。
【所得控除項目】 | |
控除可否 | 費用項目 |
控除可能な費用 | ・利息 |
控除不可の費用 | ・所得に貢献しない費用 |
実際には、各所得の種類によって所得控除項目が変わってきます。
一般的に、上表に記載している費用項目等を、所得の種類に合わせて、所得金額から控除することとなります。
また、LISR147条において、所得控除を受けるための詳細な要件が次のとおり定められています。
所得控除の要件(LISR147条)
・所得を獲得するために必要不可欠な費用であること
・投資金額のうち、建物の取得価額の5%、設備の取得価額の10%、コンピュータ等の備品の取得価額の30%、それ以外の資産については取得価額の10%までを所得控除額の上限とすること
・リース契約の場合には、LISR38条に該当するリース契約であること
・2,000ペソを超える支払は、小切手やクレジットカードなどの電子システムを利用していること
・納税者登録番号を取得していること
・所得控除は、契約を定め、税務要件を満たした領収書、インボイス、その他の証憑(メキシコ社会保険庁〈IMSS〉への支払証憑など)を根拠に行われていること
・小切手の支払であれば、それが取りつけられた課税年度において所得控除が行われていること
・輸入品に対する支払の場合には、関税やIVAの支払、その他の法的要件を満たしていること
・その他各種控除の要件を満たしていること
なお、LISR148条に掲げる各種支払については、所得金額から控除することはできません。列挙されている所得控除不可の支出項目は以下のとおりです。
所得控除不可支出(LISR148条)
・納税者による所得税の支払
・第三者に対する助成金等の支払
・社会保険料の雇用主負担分
・自己都合目的のための支払
・寄附金等の支払
・ペナルティや損害賠償の支払
・所得に貢献しない各種支払
・IVAおよびサービス税の支払
・臨時的、偶発的な損失
・交際費の支払
・その他一定の支払
規定の立付としては、これらLISR147条および148条が、所得控除に関する前提条件としてあると考えられます。この前提条件を満たした支出のうち、所得控除の規定に該当するものが所得金額から控除される費用として認められます。
■税率
所得税法上の個人所得税が課される居住者に対しては、上記から算出された総収入金額から各種所得控除額を差引いた課税対象となる所得の額に応じて、11段階の累進税率が適用されます。非居住者の税率はその所得の内容により異なり、LISR153条~175条に基づき、多くの場合には25%の税率が適用されることになります。
【居住者の課税所得における税率】
2021年1月1日以降の適用税率
■申告・納付手続
個人所得税の申告期限は、年次申告の場合と月次申告の場合とでそれぞれ定められています。年間の収入合計が40万ペソ、金利収入が10万ペソ超の場合、年次申告が義務付けられています。また、家賃収入が月に約1万9,687ペソ以上ある場合、3カ月ごとに予定納付義務が生じます。
年次申告の申告納付期限は4月15日であり、納税義務者はそれまでに申告書を提出し、税金を納める必要がありますが、電子申告を行っている場合には、その期限が4月30日まで延長されます。月次申告の申告納付期限は所得が発生した月の翌月17日であり、納税義務者はそれまでに申告書を提出し、税金を納めなければなりません。なお、17日が休日の場合は休日の翌営業日までに申告、納付を行う必要があります。また、所得が給与所得のみの場合には、給与支払時に個人所得税が源泉徴収されるため、申告、納税を行う必要はありません(詳細は次項「源泉徴収制度」を参照)。
また、年間給与合計額がわかる源泉徴収票の作成義務化、電子給与明細の発行が求められています。
■個人所得税に係る罰則規定
個人所得税において、3回目の不払いをしてしまった場合、例外なく残額の支払が求められます。それらを一度に支払えなかった場合には、差押手続が始まってしまいますので、毎月の支払額は期日どおりに支払うことが望ましいです。
■雇用補助金(Subsidio al Empleo)について
メキシコでは、日本と同じように個人の所得税(通称 ISR:Impuesto de Sobre la Renta)を 雇用主(企業側)が、預り金として源泉し収めることになっております。但し、メキシコの税制度が、日本と違うところは、ある月において所得が低い従業員に対しては、雇用補助金 (Subsidio al Empleo)が、発生し所得税と相殺させることが出来ます。 その結果、従業員が受け取る手取り額を増やすことが出来ます。
1. 雇用補助金(Subsidio al Empleo)とは何か?
雇用補助金は、その名の通り給与が低い従業員の手取額を増やすための法制度になります。 下記にて具体的に雇用補助金がある場合とない場合の給与支払時の仕訳を記載いたします。
【雇用補助金(Subsidio al Empleo)がない場合】
借方 | 貸方 | ||
給与 | 110 | 預り金 | 20 |
|
| 現預金 | 90 |
【雇用補助金(Subsidio al Empleo)がある場合】
借方 | 貸方 | ||
給与 | 110 | 預り金 | 20 |
補助金 | 10 | 現預金 | 100 |
給与とそれに対する源泉所得税(預り金)は変わりませんが、雇用補助金(Subsidio al Empleo) が付くことにより、従業員への支給額が多くなります。
また源泉所得税の支払時は、以下の計算となります。
借方 | 貸方 | ||
預り金 | 20 | 補助金 | 10 |
|
| 現預金 | 10 |
補助金で相殺することが出来るため、会社が支払う現預金だけを見れば、変わらないという 事になります。
2.雇用補助金(Subsidio al Empleo)の計算方法
雇用補助金(Subsidio al Empleo)の具体的な計算方法を下記にて解説していきます。 まず個人の所得税の計算は下記の式となります。
(課税所得 ― 下限額)× 税率 + 固定税額 = 所得税額
次に雇用補助金(Subsidio al Empleo)の計算を行います。
メキシコ法人所得税法(通称 ISR:Impuesto de Sobre la Renta)の 10 条(SUBSIDIO PARA EL EMPLEO)では、下記の様に記されております。
Los contribuyentes que perciban ingresos de los previstos en el primer párrafo o la fracción I del artículo 94 de la Ley del Impuesto sobre la Renta, excepto los percibidos por concepto de primas de antigüedad, retiro e indemnizaciones u otros pagos por separación, gozarán del
subsidio para el empleo que se aplicará contra el impuesto que resulte a su cargo en los términos del artículo 96 de la misma Ley. El subsidio para el empleo se calculará aplicando a los ingresos que sirvan de base para calcular el impuesto sobre la renta que correspondan al mes de calendario de que se trate, la siguiente:
2021年の雇用補助金の詳細となります。下限及び上限の金額内に該当する場合、雇用補助金の一番右列の金額となります。
月間での課税所得が 7,382.33MXN 以下であった場合、上図に該当する範囲内で雇用補助金(Subsidio al Empleo)が決定されます。
下記に実際の給与所得税の計算例を記載いたします。
設定:月間給与 5,000MXN
まず所得税の計算を行います。
上記の給与の場合、月に5,000.00MXNのみになりますので、月に324.87MXNの雇用補助金が発生することとなります。
そのため総合的にみると下記のとおりです。
この雇用補助金(Subsidio al Empleo)は、5年間有効であり、所得税額と差し引かない限りImpuesto a Favor(支払超過税金)の項目として企業の資産に計上されることとなります。またこの雇用補助金(Subsidio al Empleo)は、月間において途中入社の従業員にも該当することが可能になります。
雇用補助金(Subsidio al Empleo)は、上記にも記載しました様に還付はできず相殺させることのみに使用できますが、相殺させることにより企業にとっての「預り金」を減らし、従業員が納めるべき所得税を減額させることが出来ます。
源泉徴収制度
源泉徴収制度とは、一定の取引について代金を支払う際に源泉徴収し、支払者側が当該源泉徴収した税額を国に納付する制度です。日本とメキシコとの間には租税条約が締結されており、配当、利子、ロイヤルティに関して、租税条約の軽減税率を適用することが可能となります。なお、前述のとおり配当金については、2014年度の税制改正において配当金額の10%の源泉税が新たに課されることとなりました。従来の配当金の源泉税については0%課税とされていましたので、実質的な増税となります。
配当金に係る源泉税の計算についてはCUFIN(税務上の未処分利益)を計算の根拠としますので、2013年までのCUFINの金額および2014年からのCUFINの金額とその区分を明確にする必要があり、法人税の確定申告書で確認する事ができます。また、租税条約における国外関連者への配当については、5%を超えない範囲内とありますので、租税条約を適用した場合には5%の源泉税率により、国外関連者への配当を行うことが可能となります。ただし、日本でこれら取引(配当を除く)の受取金額が非課税扱いとなる場合には、当該メキシコでの支払金額について、メキシコで損金の額に算入することができません。メキシコでの支払金額を損金の額に算入するためには、日本でこれらの取引が課税されている旨の書類が必要となり、さらにその書類に日本の法定代表者による署名等がなされていなければなりません。また、当該書類をメキシコにおいて保存することが求められています。
■居住者および非居住者に係る源泉徴収税
給与等の支払者は、従業員がメキシコ居住者であれば、全員の給料から源泉税を徴収し、申告します。また、従業員が非居住者であれば同一州内での報酬額を申告します。(LISR96条)
■源泉税の納付と申告スケジュール
毎月17日に前月分の源泉税をSATへと申告しなければなりません。申告については、オンラインでの申告が可能です。ただし、納付は別途、SATに行う必要があることに留意しなければなりません。また、給与に係る源泉税については、日本の年末調整と同様に、年末に年間の総所得額に基づいた所得税額を算出し、既に納付している源泉徴収額との調整を行います(LISR97条) 。その際に過不足があった場合には、当該過不足は、翌年の2月末までに管轄のSATに申告し、不足額については納付を行う必要があります。また、還付請求もSATに対して同様に行います。ただし、給与所得以外の所得がある場合や国外源泉所得がある場合、年の途中で退職したり、複数の雇用主のもとで働いている場合、また年間の給与所得が40万ペソを超える場合は、確定申告を行う必要があります(98条)。また、雇用者は2月15日までに各従業員に対し、年間の源泉徴収票を交付する必要があります(99条)。
■源泉徴収に係る罰則規定
法律に定める手続に基づき、適切に税務当局 に源泉税等の申告・納付を行わなかった場合には、虚偽報告として処罰を受けます。この場合には、支払をしなかった税金の70%~100% が利子やインフレ率などを考慮して罰則金額が決定されます。
法人所得税
■納税義務者と課税対象所得
メキシコにおける、法人所得税については所得税法に規定されており、法人所得税の課税対象となる納税義務者は、内国法人と外国法人に区分され、それぞれの区分に応じて課税される所得の範囲が異なります。
内国法人とは、メキシコの法律に基づき設立または登録された法人をいい、外国法人とは、メキシコ国内で事業を営んでいるが、メキシコ国内では設立または登録が行われていない法人をいいます。内国法人については、全世界所得に対して法人所得税が課されます。そのため、メキシコ国外で発生した所得についてメキシコで二重課税となる場合には、外国税額控除により、税額が調整できる仕組みになっています。
[内国法人]
課税年度中に獲得した国内および国外源泉所得を含む、すべての所得に対して課税(全世界所得課税)されます。
[外国法人]
課税年度中に獲得したメキシコ国内において発生した源泉所得に対して課税(源泉地国課税)されます。ただし、以下の要件を満たす企業については、外国法人ではありますが、税務上は居住企業としてメキシコ国内において課税されます。
・収入の50%以上がメキシコにおいて生じている企業
・主要な活動場所がメキシコである企業
その他の場合であっても、メキシコ国内において当該企業を実質的に管理していると認められる場合には、メキシコの居住企業とみなされます。この居住企業については、財務省の規則に多くの附則が定められていますが、当該企業のマネジメントを行う者がメキシコにおいて税務登録されている場合や、メキシコに事務所を有している場合には、居住企業と認められる可能性が高くなります。
■課税期間
課税期間は、メキシコの所得税法に基づき、例外なく1~12月(暦年課税)が適用されます。事業開始が1月以外の場合においても、12月で当該年度の課税期間を区切り、税額計算を行う形になります。
■損金計算(益金と損金)
[益金]
益金とは、税務上の収益のことを指し、具体的には、メキシコにおいて別段で定められた益金不算入項目に該当する収益以外のすべての収益を含みます。
益金不算入項目
・資本等取引
・インフレ会計による資産および負債の再評価益
・メキシコ企業からの受取配当金
[損金]
メキシコの法人所得税の所得計算において、支出した費用の額のうち税務上損金の額に算入するための要件は、以下のとおりです。
損金算入のための要件
・ビジネス活動を行う上で必要不可欠なものであること
・請求書は税務上の要件を満たすものであること
・請求書は税務当局認可印刷者により印刷されたもの、もしくは税務当局の認可を受けたものであること
・会計上、費用として帳簿に記載されていること
・2,000ペソを超える支払については、小切手または電子マネーにより支払うこと
・福利厚生費については機会均等の要件を満たすこと
・個人または専門サービスを提供する企業により提供されたサービスおよび個人への賃料の支払については、実際に現金が支出されていること
・海外からの輸入品については、関税が支払われていること
・レストラン経費(飲食費)を100%計上するためには、飲食した場所が納税者の登録地より50km超離れた場所であること。50km以内の場合は8.5%までの損金算入。
請求書の税務上の要件について
・氏名、企業名、住所、納税者登録番号が記載されていること
・連番が付されていること
・発行された場所、日付が付されていること
・請求書発行者の納税者登録番号が付されていること
・金額、その支出内容が記載されていること
・単一の通貨、金額により記載されていること
・商品が輸入された場合において、通関番号および日付が付されていること
・税務当局認可印刷者の証明データ、印刷日が付されていること
・電子請求書であること
・支払方法(Forma de pago)が記載されていること
・支払状況(Metodo de pago)が記載されていること
・処理方法(USO CFDI)が記載されていること
・コンセプト(Clave Unidad SAT)が記載されていること
ただし、以下の項目は損金の額には算入できません。
損金不算入項目
・引当金の計上および繰入額
・法人所得税、資産税等の一定の税額
・17.5万ペソを超過する社用車の減価償却費(電気自動車・ハイブリッドカーは25万ペソまで可)
・日額200ペソを超えるレンタカー代
・のれん代およびその償却費
・非課税福利厚生費の内、47%もしくは53%を超える金額(対象となる福利厚生費によってどちらかが適用)
・後入先出法での原価算定
■損金計算の個別留意点
[棚卸資産]
評価方法
棚卸資産の評価方法(Metodo de Pago)は、先入先出法(PEPS)、平均原価法(Costo Promedio)、売価還元法(Detallista)、個別法(Costo identificado)の選択適用が可能となります。但し、一度適用させた評価方法は、最低5年間の適用が義務付けられております。2014年度の税制改正により後入先出法による原価算定は認められなくなりました。シリアル番号で識別可能な資産であり、かつ、5万ペソを超える製品・商品については個別法が強制適用となります。
評価損等の損失については、以下の項目について税務上の損金算入の要件が厳しく、手続も厳格に規定されています。ただし、現在のメキシコでは明確になっていない項目もあります。
[減価償却費]
減価償却資産にかかる減価償却費については、以下の算式で算出されます。
税務上
減価償却費=取得原価×法定償却率 ×インフレ調整係数
会計上
減価償却費=取得原価×法定償却率
会計上の法定償却率は、所得税法 で定められている法定償却率以内で調整することが可能です。但し、一度、設定した償却率は、最低5年間は適用しなければなりません。
インフレ調整係数とは、当年度末における全国消費者物価指数を固定資産取得月の全国消費者物価指数で除したものをいいます。
減価償却に関連する代表的な償却率については以下の通りです。
また、減価償却費の計算に関連する事項のうち、その他留意すべき点は以下の表のとおりです。
【その他の留意点】
留意点 | 内容 |
取得原価に関する規定 | 税務上は会計上の取扱を踏襲する。なお、資産取得に伴う借入金にかかる借入利息を取得原価に算入する必要はない。また新規取得資産については、原則的には、使用開始した翌月から減価償却を開始しなければならないが、いつ使用を開始したかを証明することは難しいため、一般的に取得月(Facturaベース)の翌月から月単位で減価償却を開始することとなる |
少額資産に関する規定 | 資産の金額の大小には関係なく、1年以上使用する資産は固定資産に計上し、減価償却を行うことが原則となる。なお、企業の中には管理事務を簡素化するために、資産計上する基準額を定めている企業もあるが、税務調査で否認される可能性がある。 |
中古資産に関する規定 | 中古資産に関する耐用年数の規定等はない |
会計上と税務上の関係 | 減価償却費について、会計上と税務上の数値の一致は要求されていない。そのため会計上は法定耐用年数ではなく、経済耐用年数を使用することも可能。ただし、多くの企業は法定耐用年数により計算をしている |
残存価格に関する規定 | メキシコには残存価格に関する規定はなく、残存価格ゼロまで償却が可能 |
無形資産の償却 | 営業権以外の無形資産は償却を行うことが可能。なお、無形資産は繰延資産として取り扱われ、耐用年数7年での償却が必要となる |
[引当金]
税務上、損金の額に算入することができる引当金は以下に限定されており、退職給付引当金や製品保証引当金、有給休暇引当金などは損金の額に算入することができません。
[配当金の支払]
配当金の支払を行う企業は、その配当原資が税引前利益か税引後利益かにより、法人所得税の取扱が異なります。税引前利益を配当原資として配当を行う場合、配当額に対し、法人税率をグロスアップした金額に法人税率を乗じて計算された税額を、配当等が行われた月の翌月17日までに納付する必要があります。なお、配当による追加税額については、配当年度以後3年にわたり発生する法人所得税と相殺することができます。税引後利益を原資とする場合は、既に法人所得税が控除された後の利益であるため、特段の追加納税は必要ありません。
[繰越欠損金 ]
メキシコにおいて発生した繰越欠損金については、発生した年度以降、10年間の繰越控除が認められています。繰越欠損金は、発生した翌年度から毎年インフレ調整を行う必要があります。
また合併した結果生じた欠損金を他社に対して移転することは出来ません。
■税務上のインフレ会計
メキシコにおける法人所得税の課税所得を計算する上では、インフレの影響を考慮する必要があります。課税所得の計算方法は以下のとおりであり、この算式により計算した金額を、税務上の益金項目または損金項目として取扱うことになります。
[計算方法]
月次平均貨幣性資産額および月次平均貨幣性負債額の算出
= (各月の月末の会計上の資産又は負債対象項目の残高合計 ) ÷ (事業年度における月数)
各対象項目は、以下の通りです。
資産の対象項目
・預金
・売掛金
・その他未収金
・貸付金
・未収還付税金
負債の退職項目
・買掛金
・借入金
・預り金
・未払税金
・その他未払金
・未払費用
上記、課税年度の平均額から超過分に対して以下のようにインフレ調整の計算が行われ、益金算入又は損金算入が行われます。
月次平均貨幣性資産 > 月次平均貨幣性負債
=超過分 × インフレ調整係数 を損金算入
月次平均貨幣性資産 < 月次平均貨幣性負債
=超過分 × インフレ調整係数 を益金算入
尚、インフレ調整係数は、毎月SATが公表するINPC(Índice Nacional de Precios al Consumidor:消費者物価指数)によって割り出されます。
■税率
メキシコの法人所得税は課税所得金額に対して30%の税率を乗じて税額が算定されます。
■税務申告
[法人所得税の年次申告]
メキシコの課税年度は暦年(1月1日~12月31日)であり、年次申告については通常(Normal)と修正(Complement aria)と税務監査修正(ComplementariporDictamen)の提出があり 、通常(Normal)の年次申告については課税年度終了後の翌年3月31日までに提出しなければなりません。年次申告については、月次申告の12カ月分の総額と一致する必要があり、一致しない場合は月次申告の修正が必要となります。
[法人所得税の月次予定納付]
月次申告の申告納付期限は所得が発生した月の翌月17日であり、納税義務者はそれまでに申告書を提出し、税金を納める必要があります。なお、17日が休日の場合は休日の翌日までに、該当する税額を納付する必要があります。納付すべき税額は、前年度の利益に基づいて計算されます。また、上半期後の予定納税額については、資金繰りの都合上、当局の承認を得た場合に限り予定納税金額を減額することができます。
■税務監査
前年度の実績数値が以下のいずれかの要件を満たす場合には、独立した会計士が年間の税務監査報告書(DictamenFiscal)を作成し、6月末までに提出することができます。以下の要件に1つも当てはまらない場合は堤出できません。
①総資産が7,900万ペソを超える場合
②総収入が1億ペソを超える場合
③各月の従業員数が300名を超える場合
④メキシコに所在する関連会社が上記①~③のいずれかの要件を満たす場合
メキシコではこの税務監査制度を適用した納税者に対して、税務調査はほとんど行われることがありません。これは税務当局から税務監査を行った会計士に対し直接質問がなされるためですが、税務監査を行った会計士が当局の質問に答えられないなどの一定の場合には、会計士への質問後に納税者への税務調査が行われることもあります。
付加価値税
■IVAの概要
メキシコにおける付加価値税(IVA)は付加価値税法(LIVA:Ley del Impuestoal Valor Agregado)に規定されている間接税であり、以下のような特徴を有しています。
・物品、サービスの消費に対して課される間接税である
・税金の負担者は最終消費者である
・中間業者は税負担しないが、納税義務を負う
・毎月申告、納付する義務がある(IVAが発生した月の翌月17日までに申告書の提出および必要に応じて納税を行う)
日本における消費税のように、メキシコにおいても物品の販売、役務の提供に当たって、原則として16%の付加価値税が課税されることとなります。
■納税義務者
IVAの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのはIVAの課税対象品の販売およびサービスの提供を行う事業者、並びに物品の輸入者(課税貨物の引取に係るIVA)であり、個人および法人を問わずに納税義務が発生します。営業を目的として商品の販売、製造、輸入、輸出またはサービスの提供など、メキシコ国内でいわゆる営業活動を行うすべての事業者は、納税者登録番号に登録をする必要があります。
■課税対象取引
IVAの課税対象取引については、以下のとおりです。
・資産の譲渡(但し一部の不動産等の資産においては、非課税)
・役務の提供
・資産の貸付
・課税貨物の輸入
メキシコ国内において、営業を目的とする事業者が対価を得て行う上記の取引については、IVAの課税対象となります。
「資産の譲渡」には、商品および製品の販売はもちろんのこと、事業用設備の譲渡、パテントや商標権等の無形資産の譲渡が含まれ、さらに現物出資や代物弁済についても資産の譲渡となります。
「役務の提供」は、飲食、運送、修繕、工事、保管、仲介、広告、宿泊、情報等のサービスの提供をすることをいい、弁護士、会計士等の専門的知識に基づく役務の提供も含みます。
「資産の貸付」とは、他の者に資産を使用させる一切の行為をいい、その対象には、物品の貸付はもちろんのこと、無形財産権等の貸付けも含まれます。
「課税貨物の輸入」とは、保税地域からの外国貨物の引取りをいいます。
■非課税取引
以下の取引については、非課税項目となり、IVAは課税されません。
・土地と住居用建築物の譲渡等
・書籍と新聞の譲渡等
・株式移転
・中古家財の譲渡等
・宝くじの譲渡等
・その他一定の食料品、医療、教育等の取引等
■免税取引
輸出取引は、免税取引に該当します。これはIVAの考え方が消費地課税主義に基づくためであり、メキシコのIVA、日本の消費税、諸外国の付加価値税を含む多くの間接税が、対象となる物品等の最終消費地において課税されます。
IMMEX(Industria Manufacturera, Maquiladorayde Serviciosde Exportacion:輸出向け製造・マキラドーラ・サービス産業)企業が行うIMMEX対象品の輸入取引についても免税取引となります(引取りに係るIVAの免税。ただし、2014年度の税制改正により原則廃止へ)。その他、非居住者間での資産の譲渡等など一定の取引が免税取引となります。
■課税標準額
課税対象資産の譲渡、課税対象サービスの提供などの対価の額がIVAの課税標準額となります。課税標準額は、当事者間で合意され、インボイスに記載された取引価額となります。
また、課税標準額の計算上、メキシコではインボイス方式が採用されているので、IVAの計算(控除や還付)の根拠としてインボイスは非常に重要になります。その他、IVAはキャッシュフローベースで課税されるため、立替金および仮払金等によるキャッシュの移動があった場合においても、IVAが課税される可能性があるので注意が必要となります。メキシコにおけるインボイスは、Factura(請求書 )と呼ばれていますが、この章では引き続きインボイスという文言を使用して説明します。
[インボイス方式と帳簿方式]
IVAの計算方法には、インボイス方式と帳簿方式の2つがあります。メキシコを含むラテンアメリカ地域やEU諸国等ではインボイス方式が採用されており、取引ごとのインボイスを使い税額を算定することで、恣意性が排除された正確な仕入税額控除額の算定等が可能となります。一方、日本では帳簿方式が採用されています。帳簿方式は、一課税期間中の売上の合計額に税率を乗じた額から、同期間中の仕入の合計額に税率を乗じた額を控除して算定する方式であり、売上および仕入の合計額から税額を推定するために、正確な税額を把握することが困難となります。
■納付税額の計算
IVAの納付税額は、商品の販売やサービスの提供の課税標準額に16%の税率を乗じて算出されます。IVAは間接税であり、基本的にアウトプットIVAからインプットIVAを控除した残額を納付します。
[アウトプットIVA]
売り手は、課税対象の物品や課税サービスを販売した際、買い手にIVAを請求します。このIVAは売り手の立場からは、アウトプットIVA(仮受IVA、売上IVA)となります。
[インプットIVA]
買い手は、課税対象の物品や課税サービスを購入した際、売り手にIVAを支払わなければなりません。このIVAは買い手の立場からは、インプットIVA(仮払IVA、仕入IVA)となります。購入した課税対象の物品や課税サービスが、買い手の事業に関連している範囲の場合、このインプットIVAは買い手のアウトプットIVAと相殺できます。同様に売り手もアウトプットIVAと課税対象の物品やサービスを購入したときに支払ったインプットIVAとを相殺することができます。
[インプットIVAの相殺]
IVAは毎月、税務当局に申告及び納付をしなければいけません。特定の課税期間(月)のインプットIVAは、基本的には同じ課税期間のアウトプットIVAと相殺・控除されなければなりません。IVAインボイスが適正に作成されていることが、インプットIVAの相殺を行う上で特に重要であり、IVAインボイスには最低限、以下の情報が確実に記載されている必要があります。
IVAインボイス記載要件
・氏名、企業名、住所、納税者登録番号が記載されていること
・連番が付されていること
・発行された場所、日付が付されていること
・請求書発行者の納税者登録番号が付されていること
・金額、その支出内容が記載されていること
・IVA徴収額が記載されていること
・単一の通貨、金額により記載されていること
・商品が輸入された場合において、通関番号および日付が付されていること
・税務当局認可印刷者の証明データ、印刷日が付されていること
・電子請求書であること
■申告・納税
1カ月間のアウトプットIVAの累計額が、同じ期間のインプットIVAの累計額を上回った場合、納税者は、その超過分の差額を納税する義務があります。そのため IVAの申告納付は毎月行わなければなりません。納税義務者は前月の課税額について翌月の17日までに申告納付する必要があります。なお、ISR(法人所得税)と同様に翌月17日が休日の場合には、休日の翌日までに当該申告納付を行うこととなります。
■還付
1カ月間のインプットIVAの累計額が、同じ期間のアウトプットIVAの累計額を上回った場合、納税者はその差額分の還付(IVAの還付は年次申告ではなく、基本的に 月次申告の段階で行う)を受けることができます。IVAの還付は申請に基づき行われるため、IVAの還付がある場合には、税務当局に対し、遅滞なく還付請求を行う必要があります。なお、諸外国では、付加価値税の還付が行われない国も多くありますが、メキシコではIVAの還付は適正に行われます。実際に還付されるまでの期間は2~4カ月程度です。
また、還付を行わずに当該税額を翌月以降の支払額と相殺することも可能です。但し源泉IVAと相殺することは出来ません。
上記の様な還付又は、相殺処理は、納税申告されてから5年間までとされています。
2019年より税制改正があり、インプットIVAの超過分の処理方法に変更がありました。
これまでは以下の3つの選択肢がありましたが、2019年1月より1又は2のみ可能となっています。
- 還付(Devolucion)
- 翌月以降の超過したアウトプットIVAとの相殺(Acreditamiento)
- 未払ISRとの相殺(Compensacion)
上記の改正が適用されるのは、2019年1月以降に発生したインプットIVAの超過分に限ります。そのため2018年12月以前に発生したインプットIVAの超過分は、これまで通り上記3つの選択肢の中から選択することができます。
■ペナルティ
納税義務のある者が納税者登録を怠った場合、納付額×1.42%(※1)×インフレ調整の計算のもとで罰則を支払う義務を負い、また、登録の要請に1年以上応じなければ、3カ月から3年以下の禁錮刑が科される可能性があります。
(※1)2018年データ
■2014年度税制改正による変更点
2014年度の税制改正により、国境地域の税率がそれまでの11%から16%へ引き上げられ、メキシコ全土でIVAの税率が一律16%となりました。また、都市圏外への陸上公共交通機関のサービスに対し、課税されるようになりました。さらに、以下の項目についてはIVAの免除規定が廃止されました。
・IMMEX適用企業に係る一時輸入におけるIVA
・マキラドーラ(保税加工制度)適用企業に係る一時輸入におけるIVA
・自動車関連企業に係る一時輸入IVA
・保税倉庫に係る一時輸入IVA
・戦略的保税施設に係る一時輸入IVA
・メキシコに在庫を持つ外国企業からIMMEX適用企業への販売に係るIVA
上記からわかるようにIMMEX、マキラドーラに関するIVAの免除特典が大幅にカットされることとなりました。IMMEXについてはその適用要件および継続要件が複雑であるために、IMMEXを利用した場合に係る管理コストをしっかりと把握した上で利用するか否かの意思決定が必要となります。ただし、IVA免除についてメキシコ税務当局の承認を得るための条件を官報にて公示した日より1年以内にIMMEXの対象企業となった場合には、当該IMMEX企業に対する恩典はほとんどが継続して適用することができます。
■2019年からの環太平洋パートナーシップ包括推進協定及びその付属書に関する規定の適用に関わる一般規則を定める決議
□北部国境地域における課税優遇策を定める政令
2019年1月1日より施行となる首題の大統領辞令が公示され、2019年度及び2020年度に適用されることとなる。概要は以下のとおりです。
北部国境地域と称される行政区
バハ・カリフォルニア州のPlaya de Rosarito、Tijuana、Tecate、Mexicari、
ソノーラ州のSan Luiz Rio Colorado、Puerto Penasco、General Plutarco Elias Calles、Caborca、Altar、Saric、
Nogales、Santa Cruz、Cananea、Naco及びAgua Proeta、
チワワ州のJanos、Ascension、Juarez、Praxedis D Duerrero、Guadalupe、Coyama de Satol、Ojinaga及びManuel Benavides
コアウイラ州のOcampo、Acuna、Zaragoza、Jimenez、Piedras Negras、Nava、Gurrero及びHidalgo
ヌエボレオン州のAnahuac、
タマウリバス州のNevo Laredo、Guerrero、Mier、Miguel Aleman、Camargo、Gustavo Diaz Ordaz、Reynosa、Rio Bravo、Valle Hermoso及びMatamoros
所得税の税務恩典が受けられる納税者
メキシコに居住する個人経営者、個人専門家及び法人企業、メキシコに 施設を所有する国外居住者、並びに個人納税者によってのみで構成される法人企業の所得の累積ができるものの場合には、北部国境地域においてのみ収入に対して、年度に発生する所得税または予定納税の税額の3分の1相当の税額控除が、同じ税務年度に発生する所得税または同年度の予定納付に対し、各々に応じて適用できるものとし、その比率は、税務年度もしくは予定納税を行う期間に既述の北部国境地域で納税者が得た所得に対応したものとなります。
この比率は、係る期間に既述北部国境地域で得た総所得を、同納付者が同じ期間に得た所得の合計額で割って算出します。得られた数値に100をかけ、その結果がパーセンテージとして表されます。比率計算に当たっては、北部国境地域の総所得には無形資産から派生する収入は除くものとし、またインターネット取引に関わる収入も当政令の恩典対象外とされます。
関税
関税については大蔵公債省(SHCP:Secretaríade Hacienday Crédito Público)、経済省(SE:Secretaríade Economía)の協議によって定められており、両省に設定権限があります。原則は従価税(輸入金額に応じる課税)ですが、特定品目によっては従量税(輸入重量に応じる課税)であり、CIF価格(価格、保険料、運賃の3要素から構成される価格)に基づいて算定されます。税率については、HSコード(Harmonized System Code)に定められている税率に基づいて計算されます。メキシコの関税制度は複雑であり、輸入を行う際には輸入業者登録を申請する必要があります。また、輸入申告は通関士によって行われなければなりません。この通関士はメキシコ国籍を持つ人しかなることができず、その数も限られているため、輸入を行う企業にとっては憂慮すべき事項となっています。通常の輸入に関しては、HSコードに基づいて税率を算出するため、輸入品ごとにその税率が異なっています。また、関税だけではなく課税貨物の引取りに係るIVAや0.8%の通関手数料、通関士に対する謝礼金も必要となります。
IMMEXやPROSEC(Programof Sectorai Promotion:産業分野別生産促進プログラム)の対象企業は特恵関税制度を利用することができますが、2014年度の税制改正によりIMMEXの恩典を享受できる企業は、税務当局から認定を受けた企業のみとなり、また、その認定要件および継続要件は厳格化されています。
■その他の特恵関税
メキシコは、ラテンアメリカ統合連合(ALADI:Asociación LatinoamericanadeIntegración)においてさまざまな特恵貿易協定を締結しています。ALADIにおける協定はALADI経済補完協定(ACE:Economic Complementation Agreement)と呼ばれ、締結状況は以下のとおりとなります。
・ACE第6号(1987年1月、アルゼンチン)
・ACE第8号(1987年3月、ペルー)
・ACE第53号(2003年5月、ブラジル)
・ACE第55号(2003年1月、ブラジル、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ)
ACE第55号は自動車産業における特恵関税の枠組であり、特にブラジル、アルゼンチンとの間の貿易が盛んです。また、FTA(自由貿易協定)およびEPA(経済連携協定)の締結状況は以下のとおりです。
PTU(労働者利益分配金)
メキシコ進出にあたり、気をつけなければならないことの1つにPTU制度があります。PTUとは労働者への利益分配金をいい、会社の税引前当期純利益の10%を労働者に分配する制度となります。PTUは、メキシコ特有の労働者保護の観点から労働法に盛り込まれました。その後、労働法の改正はたびたびありましたが、PTUについて大きく変更されることはありませんでした。ところが、2012年12月の労働法の大改正により、初めてこのPTUの部分が大きく改正されました。具体的には、PTUを受け取る労働者の範囲について、労働法の改正前までは直接雇用されている者に限定していたものが、改正後は、直接雇用されているとみなされる者にまで範囲が広げられました。
つまり、労働者の派遣や出向という形を取っていても、派遣先企業において直接雇用しているとみなされる場合には、PTUを支払う可能性が出てきたのです。
そのため、メキシコにおいては事業会社が直接雇用する労働者の数を減らし、グループ内のサービス会社やグループ外の人材派遣会社から労働者の派遣を受けることで、企業グループ全体としてのPTU負担を軽減させるという「人材派遣スキーム」を行う企業が一定数存在していました。
2012年の労働法改正の際、人材派遣に関する規制が設けられていましたが、実際には、当該改正後も、新規に設立した会社も含めて人材派遣スキームケースが多くありました。
しかし、2021年4月の労働法改正では、メキシコで従来から問題とされていた人材派遣にまつわる違法又は不当な実務に対処することを目的とするものですが、本改正により人材派遣サービスの提供・利用が広く規制される結果、人材派遣スキームを採用している企業もその影響を大きく受けることとなります。
■総支払額の計算
以下の算式により、PTUの総支払額(損金算入額)が計算されます。
[総支払額の計算]
税務上の課税所得(※1) ± インフレ調整額 ± 配当所得・為替調整額(※2)
=PTU対象利益
PTU対象利益×10%=支払額(損金算入額(※3))
※1繰越欠損金控除前の税務上の課税所得
※2実現したものに限り、インフレ調整前の金額
※3 2005年以降、PTUの損金算入が可能となった
PTUの計算の基礎となる数字は、税務上の課税所得の金額であり、その計算については、法人所得税計算と連動します。つまり、法人税率30%とPTUの10%を合計した40%がメキシコの法人所得税等の実効税率となります。他の先進国においても実効税率40%の国はほとんど存在しません。実はメキシコは、世界有数の高税率国であるのです。
■分配方法
算定されたPTUの総支給額のうち、半分は従業員の勤務日数で按分し、残り半分については、従業員の給与に基づいて按分します。なお、PTU配分についての留意事項は以下のとおりです。
・従業員の給与に基づいて按分する場合、給与は基本給とする
・取締役等はPTUの対象外とする
・勤務日数が60日を超える従業員だけを対象とする
・業務の怪我などの理由による欠勤日は勤務日数に含める
・PTUの金額が上限を超える場合、労働者に対するPTUの支払額はその範囲に限定される
※2021年4月の労働法改正により、各労働者に対するPTUの支給額に上限が設定されました。
上限とは以下の2つの大きい額となります。
・労働者の月額給与の3倍
・過去3年間のPTU受給額の平均
■分配額の計算例
上記の計算により、PTUの総支払額が1,300,000ペソ以上だった場合には、その総支払額を各従業員に対し、下記のように分配することになります。
[条件]
・総支払額が1,300,000ペソ
[例:従業員1の場合]
総支払額1,300,000×1/2=650,000ペソ
勤務日数による按分
650,000×260/1,630日=103,681ペソ
給与による按分
650,000×58,000/360,500ペソ=104,577ペソ
店員1への分配額
103,681ペソ+104,577ペソ=208,258ペソ
■支払免除対象
PTUの支払は企業にとって大きな負担となるため、特定の企業にはPTUの支払が免除されています。免除対象となる企業は以下のとおりです。
・設立1年以内の企業
・法律で認められた新製品を製造する新設企業(2年間の免除)
・天然資源開発に関する事業を営む新設企業(探鉱期間のみ)
・法令で認められた非営利団体
・経済省と労働省により認められた一定額以下の資本金の企業
■支払期限
雇用主は期末日から5カ月以内(申告納付期限からは2カ月以内)に従業員への分配を行う必要があります。また、PTUが受け取られなかった場合、その額は翌年のPTUに加算されることになります。
■対策
2012年12月の労働法改正前のPTU対策については、前述したとおり、新規で進出する際にオペレーションを行う会社と派遣会社を設立し、その派遣会社で雇用した者を、オペレーションを行う会社へと派遣するというスキームを利用し、PTUの支払を避けていました。
ただし、労働法の改正により、別資本の派遣会社を利用することが難しくなりました。そのため、現状では、駐在員の名義を役員にする、現地の利益し課税所得を減らす、現地駐在員に分配したものを日本の賞与で調整する等、何かしらの対策を考える企業が増えてきております。
税務調査および税制改正等に対する不服申立手続
■税務調査に対する不服申立手続
税務調査の結果に対し不服の場合には、申告後45日以内に税務当局へ上申書の提出または税務訴訟を起こすことができます。なお上申書の作成は基本的に弁護士、会計士がアドバイザリーとなり行います。上申書は書面にて作成し、客観的な根拠、証拠を明確にする必要があります。その際に税務当局の意見書を上申書に添付します。
申告後45日以内に税務当局へ上記の手続を行った場合には、税務当局より3カ月以内に反論の意見書が発行されます。この意見書に対して不服がある場合には税務訴訟を起こすことが可能となります。税務裁判を行い、納税者に不利な判決であった場合には、さらに45日以内に連邦裁判所へ上告することができ、この連邦裁判所の判決が最終的な結論となります。
■税制改正等に対する不服申立手続
税制改正がなされ当該税制改正が憲法に照らして違憲であると考えられる場合には、企業は裁判所で提訴することができます。当該手続においても、弁護士もしくは会計士がアドバイザリーとしてサポートすることとなります。
なお、不服申立手続は当該法律が施行されてから30営業日以内に行う必要があり、税制改正がなぜ違憲であるかを当該訴状において明らかにする必要があります。
マネーロンダリング関連法
メキシコのインフォーマル経済に対する法令には、2014年度の税制改正前までは、現金預金税(IDE)と呼ばれるものがありました。IDEとは一定額以上を銀行に預金する際に税金(源泉税)を課し、その発生経路が不明な現金に対して取り締まりを行おうというものでした。しかし、2014年度の税制改正によりIDEが廃止され、インフォーマル経済に対する法令はマネーロンダリング関連法へ一本化されました。
■マネーロンダリング関連法の適用
マネーロンダリング関連法の適用を考える上で重要となるポイントは以下の4つです。
・対象取引
・業種
・取引金額
・脆弱性の判断
以下において、それぞれの項目について確認していきます。
[対象取引]
マネーロンダリング関連法の対象となる取引は、現金による取引だけではなく、銀行間取引、小切手の振出等を含んだすべての金融取引が対象となります。
[業種]
マネーロンダリング関連法17条において、対象となるすべての業種が列挙されています。日本企業に多い自動車等の製造流通販売業は、マネーロンダリング関連法の対象業種に該当します。
[取引金額]
マネーロンダリング関連法17条において、適用対象となる取引金額について業種と同様に列挙されています。金額の算出は最低賃金を前提と[u54] し、そこに何倍の倍率を乗じるかも、同17条にそれぞれ記載されています。自動車等の製造流通販売業では、取引金額が次の金額を超える場合には、マネーロンダリング関連法の適用対象となります。
<対象金額>
64.76ペソ(最低賃金、2013年時点)×6,420倍(マーケティング業の倍率)=415,759ペソ
したがって、当該41万5,759ペソを超える取引についてはマネーロンダリング関連法の適用対象となります。
[脆弱性の判断]
会社によってマネーロンダリングを行う可能性は異なるために、マネーロンダリング関連法においては、その異なる可能性を示す脆弱性の判断はSATが行うと定めています。そのためにSATから求められる資料の内容も会社によって違うものと考えられます。
■手続規定
マネーロンダリング関連法によると、インフォーマル経済に関与していないことを証するために、自身の登録資料(自身のアイデンティティを確認できる資料)および相手の登録資料(同様に相手のアイデンティティを確認できる資料)、アクティビティの情報、アクティビティにより経済的利益を享受する者の情報等の提出が求められます。ただし、現在は慣行として、当該資料等の保存を行い、SATからの要求があった場合にその資料等を遅滞なく提出するものとされています。これらの資料は、提出後5年間の保存が求められています。また、2014年4月よりメキシコにて新規会社設立(駐在員事務所や支店を含む)を行う場合には、マネーロンダリング関連法により以下の書類を提出することが求められ、その内容が少しずつ明確に定められてきています)。
①親会社の登記簿謄本
②親会社の国税電子申告・納税システムの利用者識別番号
③新規メキシコ会社の株主となる個人の個人確定申告の利用者ID番号または当該年度の給与所得の源泉徴収票にある受給者番号
④新規メキシコ会社の株主となる個人の写真付き身分証明書(パスポートのコピー)
⑤新規メキシコ会社の株主となる個人の住民票および登記簿謄本
①により、親会社の登記上の住所および代表取締役が登記上の代表であることを証明します。
②は新設するメキシコ会社の株主となる親会社が海外で納税をしている会社であることを証明します。
③はメキシコ会社の株主となる外国人が海外で納税をしている個人である事を証明します。
※②③は法人および個人のTAX-IDいわゆる納税者番号を証明するのみで、所得や納税額などは必要とされない
※④⑤は、個人を特定するための資料となる
連邦税と地方税
■連邦税
[生産サービス特別税]
生産サービス特別税(IEPS:Impuesto Especialde Productosy Servicios)とは、特定の品目に対し課税される付加価値税であり、課税対象品目については、以下のとおりとなっています。
上記品目の輸入・販売を行う際には、品目ごとの税率を取引価格に乗じて、課税額を算出します。また、輸入のみを行う際には、対象品目の価格に、関税と税関手数料を加算し、その上で品目ごとの税率を乗じて課税額を算出します。このように計算された税額を毎月納付しなければいけません。
■地方税
[給与税]
給与税は、従業員に対する給与総額に課される税金であり、多くの州で2%の税率が設定されています(2014年度の税制改正によりメキシコ・シティの給与税は3%に引き上げられた) 。ただし、州によっては事業開始後一定期間の免税を認め、企業の誘致を図る場合があります。
[不動産取得税]
不動産取得税は、売買、贈与、相続等取得形態に係らず不動産を取得した者に課せられる税金です。課税標準の算定や税率は州によって若干異なりますが、取引価額、地籍上の価格、査定市価などのうち一番高いものに対して2%前後の税額が目安となっています。また、州によっては税額の全部または一部を免税するという投資インセンティブとしての優遇がある場合があります。
[不動産所有税]
不動産所有税は、所有している不動産に対して課される税金です。課税対象となる不動産の評価額の算出方法や税率などは市町村によって異なるため、個別に確認が必要です。
[宿泊税]
宿泊税はホテル等に宿泊した際、その宿泊料に対して課される税金です。税率は、多くの州で2%に設定されています。その他、州によって異なる税目等が存在するので、現地において確認する必要があります。
[環境税]
その他
■その他の税制改正項目
ファストフードに対して8%の税金が課され、砂糖類を含むソフトドリンクについては1リットルにつき1ペソの税金が課されます。また主食以外の高カロリー食品(100グラムにつき275キロカロリー超)についても8%の課税となります。例としてチョコレートやカカオ、プリン等が挙げられます。その他、化石燃料の輸入および販売、農薬殺虫剤の輸入および販売等においても新たに課税される範囲が定められています。
■納税者メールボックスの設置
法人に関しては2014年6月30日以降、個人に関しては2015年1月1日以降、SATとのすべてのやり取りに関しては納税者メールボックス(BuzonTributario)を通じて行われ、その他の手段(手紙や郵便物を含む)で行われた場合においても、納税者メールボックスに在る情報が優先されるようになりました。
当該納税者メールボックスの確認に関しては、SATからメールが送られた日から、3営業日以内に開封したものとみなされるために、納税者メールボックスを適宜チェックすることが必要となります。
各種還付申請についても、当該納税者メールボックスにて行われます。
税務調査が行われる場合も納税者メールボックス内にある情報を基に実施されることとなります。SATからの追加納税額の計算については、メールボックスに在る情報がすべてであるため、SATによる推計課税の可能性に備えて情報をメールボックス内に確実に残しておくなどの注意が必要です。
■CFDIのキャンセル
2022年の改正により、CFDIのキャンセルにおいて、理由と根拠資料を求められるようになりました。以下の4つの場合、キャンセルが認められています。
・データに誤りがあったCFDIを発行した場合
・CFDIに誤った RFC がある場合
・CFDIが作成されたが、取引が完了していない場合
・グローバル請求書の関連する個別な取引を顧客が求めた場合
なお、請求書のキャンセルは請求書受取人の承認が必要なものと不要なものがあります。
承認が必要なものに関しては、請求書受取人にSATのメールで通知が届き、請求書受取人が拒否することも可能となっております。ただし、3日以内に請求書受取人からなにも応答がない場合には、請求書がキャンセル受け入れられたものとみなされます。
また、年度をまたいで行うキャンセルについては、原則認められておりません。
そのため、年度をまたいでのキャンセルを行う場合、罰金(請求書金額の5%から10%)が課せられます。
Credit Noteの発行については、CFDIのキャンセルと同様に理由と根拠資料が求められます。
ただし、CFDIのキャンセルとは異なり、年度をまたいでのキャンセルは制限されておりません。
+ .4 .国際税務
国際税務
世界各国では、国際的な取引に係る税制をそれぞれの国ごとに設けています。この税制は各国が自国の課税権を確保するために設けているものであり、国際間の取引が各国の税制に従って処理されることで、国際的な二重課税の問題等が発生します。そのため、この二重課税や国際間の租税問題を回避するために、二国間で租税条約が締結されています。このような国際間での取引にかかる税務を総称して「国際税務」といいます。
この「国際税務」が必要とされる理由は、大きく分けて次の2つです。
①国際間での二重課税の排除
②各国における課税権の確保(租税回避行為の防止)
以下、国際税務と呼ばれる中での個別の税務規定を見ていきます。
外国税額控除
税金は、それぞれヒト・モノ・カネの経営資源の移動または消費(以下、移動等)することに対して課されます。国際間における取引でも同様で、国際間において経営資源を移動等した場合に、それに伴う税金も国際間で発生し、そこに国際間での課税関係が生じることとなります。
ここで問題となってくるのが、その国際間での経営資源の移動等について課される税金が、それぞれの国の独自の考え(租税法)に基づいて課されるということです。つまり、各国の税金に対する考え方の違いにより、同一の取引において、2つの国でそれぞれ課税される可能性があります。このような二重課税を排除するため、各国の租税法において「外国税額控除」の規定が定められています。外国税額控除とは、国外で得た所得に対して納付した税額を居住地国の税額から控除することにより、国際的な所得の二重課税を調整するために定められた制度です。この場合に発生する外国税額は、たとえば、国内法人の駐在員事務所などが納付した外国法人税や、取引先との間のロイヤルティや受取利息、配当などの支払時に源泉徴収される所得税などが該当します。これらは居住地国と所得の源泉地国とで二重課税が起こるため、源泉地国で発生した税額を居住地国の税務申告において調整する必要があります。メキシコが居住地国で二重課税となる場合は、外国税額控除の規定により二重部分の税額を、メキシコにおいて納付すべき法人所得税額として調整することになります。
過少資本税制
2005年にメキシコにおいても過少資本税制が導入されました。過少資本税制とは、本来資本として計上すべきものを負債とすることにより、その負債から発生する利息等を費用として損金の額に算入させて、租税負担を軽減する行為を規制するための税制です。
具体的には負債総額が純資産額の3倍を超過する場合には、国外の関連者に対する支払利息の損金算入額に制限が課されます。また、過小資本税制の対象となる場合には、 金利だけでなく、為替差損も損金算入にも制限が課されます。ただし、以下の場合には、過少資本税制の適用対象外となります。
・インフラストラクチャーの戦略的発展の建物・運営・維持に係る債務の場合
・金融機関の場合
・SATとの間で事前に価格の合意があった場合
■過少資本税制による損金不算入額の計算例
過少資本税制の適用対象となる国外の関連者に対する負債総額が純資産額の3倍を超過する場合の損金算入額の算出方法は以下のようになります。
[計算例]
期首純資産額100、期末純資産額300、月次平均負債金額1,000(国外関連会者からの借入金500)、支払利息200(国外関連者からの支払利息が100)の場合
[負債枠の決定]
期首純資産額※ | 100 |
期末純資産額※ | 300 |
合計 | 100+300=400 |
年間平均純資産額 | 400÷2=200 |
負債の純資産に対する限度比率 | 3 |
負債限度額 | 200×3=600 |
※会計上の純資産額もしくは税務上の純資産額のどちらかを選択適用することができ、一度選択した場合、最低5年間は継続適用しなければならないとされている
税務上の純資産額とはCUFIN(昨年度までの税務上の未処分利益)とCUCA(税務上の資本金)とCUFINRE(当年度の税務上の未処分利益)の合計額
[損金不算入額の計算]
月次平均負債額 | 1,000 |
負債限度額 | 600 |
負債限度額超過額 | 1,000-600=400 |
国外関連者からの借入金総額 | 500 |
超過額が国外関連者からの借入金に占める割合※ | 400÷500=80% |
国外関連者からの支払利息 | 100 |
損金不算入支払利息 | 100×80%=80 |
※超過額が国外関連者からの借入金に対して占める割合が、100%を超えた場合には支払利息の全額が損金不算入となる
PE認定課税
通常、海外に恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を設けて事業活動を行う場合には、現地国において納税義務が発生することとなります。いいかえれば、現地国にPEが存在しなければ、現地国における納税義務が発生しないというのが国際課税の原則となっています。このPEの範囲については、各国の国内法および租税条約等でおおまなか例示がされています。しかし、法的にPEを有していない場合であっても、実態として現地国において所得が発生しているとみなされる場合には、非居住者に対しても現地国側で課税権が発生することになります。この課税不在に基づいて現地国側で所得に対する課税が行われていることをPE認定課税といいます。しかし、納税者側では所得認識がない状況下で税務申告を行っているため、PE認定課税が行われると二重課税の問題が生じることになります。このPEの範囲については具体的、かつ明確に定められてはおらず、各国税務当局の判断に基づくものとなります。そのため、最悪のケースにおいては、現地国側でPEとして認定され課税がされたにもかかわらず、日本側においてはPEとして認定されず、二重課税の調整ができないということも想定されるため注意が必要です。
■PE認定課税の例
[ケース1]
日本と現地国との間の業務委託契約等に基づいて、日本から現地国へ人員を派遣し業務を行うにあたり、その期間が一定期間を超えると、税務当局よりPEが存在するという形で認定され課税が行われる。
[ケース2]
駐在員事務所を設置して活動を行っている場合において、本来は禁止されている営業活動を行うPE(外国法人の支店)として認定されると、発生したとみなされた利益に対して課税が行われる。
[ケース3]
日本企業が現地に子会社等の関係会社を有している場合において、その子会社等の業務が、実質的に親会社が行うべき行為(親会社名での契約代理行為など)となる場合に、子会社を独立した事業体ではなく日本親会社の一部(つまり支店を有しているもの)として現地において課税が行われる。
PEの定義については、それぞれの国の国内税法のみならず、日本とメキシコの間で締結されている租税条約において定められており、事業の管理の事務所、支店、事務所などのほか、以下のようなものもPEとして規定されています。
・工場、作業場
・農場または栽培場、鉱山、石油または天然ガスの坑井、採石場など
・建築工事現場または建築もしくは据付工事で、工事期間が6カ月を超える場合
ただし、これらの拠点等が経済協力または技術協力に関する両締結国の政府間の合意に基づいて提供される場合は、「恒久的施設」には該当しません。
租税条約
租税条約とは、二重課税の排除と脱税の防止の大きく 2 点を目的として締結される、成文による国家間の合意(条約)です。この条約については、国家間での約束事となるため、その適用に当たっては、それぞれの国が定めている国内法に優先して適用されることとなります。つまり、国内法において「課税」とされていても、租税条約において「非課税」とされている場合には、「非課税」として取扱うことができます。 しかし、租税条約を適用することにより、国内法より不利になってしまう場合には、国内法の規定を優先適用することが可能であり、これを、「プリザベーション・クローズ(Preservation Close)」といいます。
メキシコと日本との租税条約は 1996年に公布されました。なお、租税条約以外の各種の条約でも、相手国に居住している日本人の日本 における特定の税目上の扱いなどを別に定める場合があります。
なお、配当金を実施する際の源泉所得税に関しては、日墨租税条約の税率を適用した方が、税率が低くなります。
[メキシコ国内法]
メキシコ所得税法に基づき、配当金の源泉税率は10%
[日墨租税条約]
第十条に基づき、株式保有比率25%以上の企業への配当金であれば、源泉税率5%となります。
それ以外の企業に対しては、源泉税率15%となります。
※源泉税率15%の対象となる場合でも、「A.メキシコ国内法」を選択し、国内法を適用する事も可能です。
株式保有比率25%以上の企業の場合、一定の条件を満たすことで0%を適用する事も可能となります。
その一つが、配当金の対象となる企業が東証一部上場しているか否かです。
・上場していない場合 ・・・・5%
・上場している場合(※①尚且つ一定の条件に該当) ・・・・0%
※①50%超の株式が以下のいずれかによって所有されている場合
A) 日本の政府、地方政府若しくは地方公共団体又はこれらの政府、地方政府若しくは地方公共団体が所有する機関
B) 日本の居住者である個人
C) 日本の居住者である法人であって、その法人の発行した株式が日本の公認の証券取引所に通常取引されているもの又はその法人の発行済株式の50%超が日本の居住者である個人によって所有されている
D) 上記 A)から C)までに掲げる政府、地方政府、地方公共団体、機関、個人、又は法人の組み合わせ
以上の条件に基づき、適用税率を決定する事になります。税務上の規定は曖昧な表現も多い事から、実例を参考に決定する企業が多いものとなります。
最終的な判断は国税局(SAT)になりますので、より多くの実例、見解を参考にしたうえで決定する事が望ましいと言えます。
移転価格税制
移転価格税制とは、関連会社間での取引における取引価格を通じて、その利益を国外に移転することを防止するために定められている税制です。企業が海外の関係会社への、資産の売買、役務の提供などの取引価格(移転価格)を第三者に対する価格と異なる金額に設定すれば、国際間での利益移動を自由に行うことが可能となります。
移転価格税制は、このような利益の移転を防止するために、その取引の移転価格を第三者が行う取引価格(独立企業間価格)に計算し直すことで、適正な国際課税を図ることを目的とするものです。なお、実務上は納税者に租税回避の意図があったかどうかは問われず、国税当局の判断に基づき更正処分等が行われることになるため、移転価格の指摘に対する事前準備や、リスク対策をあらかじめ検討、実施しておくことが非常に重要になってきます。
■対象となる国外関連者
メキシコにおいて移転価格税制が適用される国外関連者については、以下の通りとなります。
・直接または間接にマネジメントおよびコントロールしている(されている)企業
・直接または間接に株式の持ち合い関係にある企業
メキシコでは国外関連者に関する規定上、持株割合については規定されておらず、持株割合が低くても移転価格税制の適用対象法人となる可能性があるため注意が必要です。
■独立企業間価格の算定方法
メキシコでは、独立企業間価格(ALP:ArmʼsLengthPrice)の算定についてOECD移転価格ガイドラインOECDのBEPS13に沿ったかたちでの対応となっているため、他の南米や中南米諸国と比べてもきわめて高いと言えます。具体的な算定方法は、以下のとおりとなります。なお、OECD移転価格ガイドラインに従ってはいるものの、ベストメソッドルールは採用しておらず、現状はいわゆる基本三法(独立価格比準法、再販売価格基準法、原価基準法)が優先適用されます。
[独立価格比準法]
独立価格比準法(CUP法:ComparableUncontrolledPriceMethod)とは、対象となる国外関連取引とほぼ同様の条件の下、非関連者間で行われた取引(第三者間取引)の対価の額を、その国外関連取引のALPとする方法です。比較対象となる取引が物品などの場合、取引条件が事業戦略や市況などの影響により変わるため、比較可能性の担保が困難になる場合があります。また、他のALPの算定に比べ、より高い同一性が求められています。そのために、この方法は取引条件の変動が少ない金利取引や相場のある商品に多く利用され、通常の物品取引にはあまり採用されていません。
[再販売価格基準法]
再販売価格基準法(RP法:ResalePriceMethod)とは、第三者への再販売価格から、その取引から通常得られるであろう利益の額を控除した金額を国外関連取引のALPとする方法です。
この方法は、国外関連取引が輸入取引である場合に多く使用されています(輸入取引の場合、比較対象となるデータが公開データから入手できる場合が多いため)。また、比較対象について、独立価格比準法ほどの厳密な類似性は必要とされていません。
[原価基準法]
原価基準法(CP法:CostPlusMethod)とは、対象となる国外関連取引によって発生した原価の額に、その取引から通常得られるであろう利益の額を加算した金額を、その国外関連取引のALPとする方法です。
また原価に、製造に係る部分が含まれている場合は、第三者間取引の際の価格をベースとしてその原価を算定することになります。たとえば、原材料を関連者から購入している場合には、原材料の購入価格は、第三者から購入した場合の価格に置き換えて製造原価を算定することになります。この方法は、原材料の加工、輸出や役務提供取引などに採用されています。
[その他の方法]
ALPの算定にあたり、上記の方法を利用できない場合は、「利益分割法」、「取引単位営業利益法」などの方法を採用することもできます。
利益分割法
利益分割法(PS法:ProfitSplitMethod)とは、国外関連取引によって実現した営業利益の合計額を、その営業利益の実現に寄与した程度により配分しALPを算定する方法です。
取引単位営業利益法
取引単位営業利益法(TNM法:TransactionalNetMarginMethod)とは、類似の独立企業と第三者との間で同様の取引において実現した売上総利益率、営業利益率、マークアップ率などをもとに、ALPを算定する方法です。
■移転価格税制にかかる更正リスク
移転価格税制は、関係会社を通じた価格調整による租税回避を防止するための税制であるため、以下のような事項に該当する企業は、他の企業に比べて移転価格調査を受けて所得に対して更正処分が行われるリスクが高いため、注意が必要です。
■文書化制度
移転価格税制の対象となる取引を行う場合には、国外関連者間との契約書や、価格表などの文書を作成しておくことが非常に重要です。また、移転価格の実務上においては、税務調査の際に移転価格ドキュメントの提出が要求されます。企業側は将来の移転価格の調査に対応するため、移転価格の算定方法を開示するだけではなく、過年度を含めた移転価格の分析、第三者からみて合理的な価格・取引と判断できるだけの文書を作成し、移転価格リスクを可能な限り軽減する努力が必要となります。メキシコにおいては、年間収入が1,300万ペソ以上で、国外にある関連会社との取引を有する会社は、移転価格についての文書を作成し、保存する義務があります。
メキシコ法人所得税法第76条に下記のように記載があり、これは移転価格ドキュメントの作成及びAnexo9と呼ばれる電子情報の申告を意味しております。
X. Presentar, conjuntamente con la declaración del ejercicio, la información de las operaciones que realicen con partes relacionadas residentes en el extranjero, efectuadas durante el año de calendario inmediato anterior, que se solicite mediante la forma oficial que al efecto aprueben las autoridades fiscales.
X. 当該年度申告書と合わせて、直前暦年に行われた国外居住関連者と取引について、かかる目的のために税務当局が承認した公的な様式を用いて、求められる情報を提出する。
上記の移転価格の提出条件が、下記となります。
1)直前年度の収益が、1,300万ペソ以上
2)各報告対象関連社間取引が年間6,000万ペソ以上の場合
関連社間取引の例
・売買取引(商品、不動産、金融など)
・ロイヤリティ
・支払利息
・日本本社からの給与支給等
基本的には、上記の対応を毎年3月31日までに行う必要が御座います。
またAnexo9と言うのは、DIM()の一つであり、これは海外関連社間取引が発生している時点で申告する義務が発生します。
■事前確認制度
事前確認制度(APA:AdvancePricingAgreement)とは、国外関連者との取引に係る移転価格やその算定方法の妥当性を、SATから事前に確認を受けるものです。事前確認は、企業にとって高コストになるリスクがある移転価格課税を未然に防ぐ効果があります。日本においては既にAPAが導入されていますが、メキシコでは、APAが導入されているものの実績が十分とはいえない(審査に6カ月~1年必要)ため、独自に価格設定の根拠を用意しておくことが望ましいです。
■相互協議
日本とメキシコの関連会社間のビジネス取引において、一方の国で移転価格税制が適用され、独立企業間価格と実際の取引価格との差額分について課税が行われることになった場合、国際的な二重課税が生じることとなります。このような二重課税を排除する目的で、租税条約の相互協議事項に従い、条約締結国の税務当局間で解決を図る協議のことを「相互協議」といいます。
「相互協議」の特徴は、取引当事国の税務当局間による直接協議であり、非公開協議となる点です。そのため、納税者は協議に必要な資料を提供するに留まり、直接協議に参加することはできません。また、相互協議は税務当局間同士の「合意努力義務」であり、必ずしも合意する義務はないことに留意する必要があります。メキシコと日本の租税条約にも相互協議の規定があります。また、メキシコと日本以外の国との取引の場合は、その国とメキシコとの間での租税条約の有無、内容を検討する必要があります。
タックス・ヘイブン対策税制
■第三国を経由しての設立の場合
近年のグローバル化は目を見張るものがあり、日本企業の海外進出件数も年々増加しています。広く全世界に拠点展開している日本企業の中には、日本からの直接投資ではなく、他の海外拠点からの投資の形態により、メキシコに進出するケースも出ています。たとえば、ラテンアメリカ地域の複数国にわたって拠点展開している某企業は、各国の海外子会社を統括するため、チリに「地域統括本部(RHQ:RegionalHeadQuarters)」を設置しています。こうした企業は、その国からさらにラテンアメリカ地域に投資をするケースも考えられます。
たとえば、チリでは所得税法上、RHQのようなプラットフォーム事業会社は国外に所在する法人とみなされ、第三国投資で発生した所得に対してチリの所得税は課されないという優遇制度があります。チリに地域統括本部を設置するといった形態を取るメリットはさまざまな要素が考えられますが、特に大きなメリットは、チリはタックス・ヘイブン(低税率国)と呼ばれ、所得に対する税負担が他の近隣諸国に比べて低く、これらの国に利益を集約させることにより、グループ全体の租税負担を大きく引き下げられるという点です。しかし、そのような利益集約により得をするのは企業側だけであって、国側には利益の海外流出によって税収が減少するという深刻な問題が発生しました。そこで、この問題に対処するため、課税逃れを目的にチリなどの低税率国に子会社を設立し、利益を不当に海外に留保した場合に、日本側でその留保利益に対して課税するという制度ができました。これが、「タックス・ヘイブン対策税制」と呼ばれる制度です。
■タックス・ヘイブン対策税制の概要
日本の法人税法に規定されているタックス・ヘイブン対策税制とは、日本の法人または個人が、低税率国等一定の要件に該当する関係会社を有する場合に、そこに一定額以上留保された所得に対して日本側で課税を行う、という制度です。一般的に、タックス・ヘイブンは「租税回避地」という意味で用いられます。もともとは小さな島国などが、自国を貿易拠点とするために税制上の優遇規定を創設したのが始まりで、現在ではOECD(※)により、以下のとおり定義されています。
・金融、サービスなどの活動から生じる所得に対して無税としているまたは名目的にしか課税していないこと
・他国と実効的な情報交換を行っていないこと
・税制や税務執行につき透明性が欠如していること
・誘致される金融・サービスなどの活動について、自国・地域において実質的な活動がなされることを要求していないこと
※OECDとは経済協力開発機構(OrganisationforEconomicCo‐operationandDevelopment)の通称であり、フランスのパリに本部を置き、先進国間の自由な意見交換・情報交換を通じて、経済成長、貿易自由化、発展途上国の支援を達成するために発足した組織です。
■課税の対象範囲
日本におけるタックス・ヘイブン対策税制の対象は、次の3つの要件を満たす会社(特定外国子会社等)に対して、「特定外国子会社等」の株式を直接または間接に10%以上保有する内国法人または居住者となります。その場合に、「特定外国子会社等」の留保所得金額につき、適用を受けることとなります。
・法人の所得に対して課される税が存在しない会社
・事業年度の所得に対する租税負担割合が20%以下の国・地域に存在する会社
20%の判定については、現地国において定められている表面上の法人税率ではなく、以下の計算式で求めた割合により判定を行います。
・日本の居住者または内国法人によって直接または間接にその株式の50%超(議決権、配当請求権のない株式を除外して行う判定も併用する)を保有される会社
しかし、課税対象に該当する会社であっても、本来のタックス・ヘイブン対策税制の立法趣旨は、あくまで租税回避地を利用した国際的な租税回避行為について、規制を設けることです。そのため、すべての会社が適用を受ける訳ではなく、現地国においてしっかりとしたビジネス実態がある場合など一定の要件を満たす場合は適用されません。
注)上記の規定は、外国子会社側の平成30年3月31日までに開始する事業年度における要件であり、平成29年度の税制改正により、外国子会社側の平成30年4月1日以後に開始する事業年度より適用判定及び合算対象となる所得範囲等が変更となります。
<主な変更・留意点>
・外国関係会社の範囲に、「実質支配基準(残余財産請求権のおおむね全部を保有)」が加わる。
・外国関係会社の判定において、持ち分判定の50%超の判定について、間接保有割合を算定する際の計算が掛け算方式ではなく連鎖関係により判定することとなる。
・特定の外国会社(ペーパーカンパニー、キャッシュボックス、ブラックリスト国に所在)について、全ての所得を合算対象とされることになる。
・租税負担割合の判定(20%基準)が廃止されるが、企業への事務負担等を考慮し、現行の制度と同水準の税率による適用免除規定が導入される。
・合算対象となる受動的所得(現行規定の「資産性所得(利子、配当、一定の資産譲渡損益等)」)について、合算免除基準である1,000万円以下から2,000万円以下に範囲が拡大される。
・実態のある事業(地域統括会社を活用したグループファイナンスや実体のある航空機リース事業等)については、合算対象外。
一方で、メキシコにおいては、税制改正によってメキシコ国内法で定義されたタックス・ヘイブンに居住する者に対する支払は、移転価格文書によりサポートされる必要があり、サポートされていない場合は、メキシコにおいて損金算入が認められなくなりました。
その他
上記で個別に記載した税務規定以外でも、進出形態にかかわらず、国際間でヒト・モノ・カネが動く場合には、以下のような点に注意する必要があります。
■駐在員に係る給与課税問題
メキシコ国内でビジネスを行う場合、大半のケースがまず日本から駐在員が出向き、その上で現地ビジネスを拡大していくという形になります。このように、人員が国際間を行き来する場合に、日本からメキシコに駐在する者については、以下のような点に注意する必要があります。
[日本・メキシコ間での給与負担問題]
日本からメキシコへ出向する場合、給与の支払をどのように行うかも事前に決定すべき事項になります。メキシコへ出向などの形で駐在する場合、通常、出向については出向先が出向者の費用を負担するのが一般的ですが、メキシコと日本での給与格差などの理由から、全額をメキシコで負担することが難しいケースが考えられます。このような、ビジネス上の合理的な理由がある場合に限り、出向元(日本)での給与負担が認められています。ただし、この金額もあくまで「現地で同水準の人材採用を行った場合の相当額」とされ、過大な給与負担を日本側で行った場合には、日本の税務上、子会社に対する寄附金として取扱われます(海外子会社に対する寄附金は、全額が損金不算入となる)。また、給与以外の現地での出向期間の滞在費用等については、現地側で負担すべき費用となりますので、仮に日本側で負担した場合には、子会社が負担すべき費用を負担したということで、これも上記と同様に寄附金として取扱われます。
■関係会社間取引のケーススタディ
[資金貸付にかかる利息収入]
日本にある親会社からメキシコ子会社へ貸付を行って、その利子を支払う場合、まず気を付けなければいけないのが、貸付利率が適正に設定されているか、という点です。これは、前述の「移転価格税制」により、親子会社間取引について、外部の第三者と同じ取引をした場合と同様の対価設定が必要になるため、本ケースにおいては、日本親会社側では「利率が低い」、メキシコ子会社側では「利率が高い」と指摘を受ける可能性があります。
このような場合に、特に国際間取引においては市場金利が一定しておらず、「一体どちらの国の貸出利率を基準にすればよいのか?」という問題が発生しますが、一般的に、貸出側(資金の提供元)の国における適正貸出利率をベースに移転価格を検証していく形になります。
また、直接親会社からの貸付ではなく、メキシコ子会社が外部の金融機関等から借入を行う際に、日本の親会社側が債務保証などを行うケースがあります。この債務保証についても、役務提供に類似した行為として、移転価格税制の対象取引となるため、まず親子会社間で債務保証に対しての保証率を設定し、適切な対価の収受を行う必要があります。その他、メキシコから海外への貸付利息の支払の際には、30%の税率で源泉徴収を行う必要がありますが、日墨租税条約においては10%の限度税率が適用されるため、実際には10%の源泉徴収を行った上で、親会社へ利息を支払うことになります。
利息に対する課税(日墨租税条約11条)
利子所得においても、配当と同様に税率が定められており、11条2項において受益者が銀行または保険会社の場合、銀行との取引およびリース取引等については10%、それ以外の取引については15%の税率が適用されます。
[日本・メキシコ間での費用負担]
日本からメキシコへ会社立ち上げのために出張などで行く場合に、その経費負担をどのように決めるか、という点が問題になります。一般的に、会社設立前の費用については、日本側で負担、会社設立後の費用についてはメキシコ側で負担というケースが多いですが、設立当初メキシコ子会社で赤字が続くような場合に、日本側で費用負担をしてしまうケースがあります。メーカー等が製造子会社を立ち上げた際に、設立当初のサポート業務などを無償で子会社に対して行うようなケースもあります。本来、日本で負担すべきでない(メキシコ側で負担すべき)費用を日本で負担した場合には、日本側において「寄附金課税」のリスクが発生します。当該リスクに備えるためには、役務提供についてはしっかりと契約書を作成し、費用負担については一定の合理的な基準を設け、その基準に沿って各法人で負担させるといった規則正しい処理が効果的です。
ただし、当該取引についても関係会社間での取引となるため、前述の「移転価格税制」の対象取引となり、日本・メキシコそれぞれにおいて費用負担の妥当性が問われることになります。
+ .5 .参考文献
参考文献
・ 日本貿易振興機構(JETRO)「メキシコ進出に関する基本的なメキシコの制度 外資に関する奨励
Grant Thornton "Doing business in Mexico"