会社法
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フィリピン会社法改正
2019年2月20日に改正会社法が成立し、同年2月23日に正式に施行されました。
改正会社法では現行の取締役5名というルール及びフィリピンの居住者要件が撤廃され、1人の発起人で現地法人の設立を行うことが可能となります(取締役が最低1株を所持するという点は継続)。
設立発起人の定義は法定年齢に達した自然人、パートナーシップ、組合もしくは法人とされています。
また、改正会社法では「取締役におけるフィリピン居住者要件」が完全に撤廃となりました。
なお、代表取締役、財務役及び会社秘書役(フィリピン国民かつフィリピン居住者)の選定要件について変更はなく、改正会社法においても同様に適用されます。
旧会社法において、財務役の選定要件は明示されていませんでしたが、改正会社法では「取締役である必要はないものの、フィリピン居住者でなければならない」ということが明示されました。
旧会社法にて、外資40%以下で法人を設立する場合の資本金が規定されており、最低5,000 ペソを払込資本金として必要とする旨が記載されています。改正後はこの最低払込資本金の要件が撤廃となります。
しかし、留意すべき点は、この資本金の規制撤廃はあくまでフィリピン会社法上においてであるということです。
フィリピン会社法以外で資本金について規定がある場合はその法律に準じて、資本金を設定する必要があります。
また公益企業に対する規制も新たに追加され、別途会社内にコンプライアンスオフィサーの選定、及び取締役の内20%は独立取締役であることが求められます。改正会社法において、以下の要件に該当する企業は公益企業とみなされます。
・ 証券取引員会(SEC)に公益企業として株式登録されており、株式上場しているか、少なくとも5,000万ペソの資産と200人以上の株主がおり、各々が最低でも100株以上保有している会社
・ 銀行、または銀行に準ずる金融機関、金融ビジネス、保険、信託を行う会社
・ 上記に類似する事業を行っているとSECが判断した会社
また、旧会社法においては法人の存続期間は最長50年と定められていましたが、この度のフィリピン会社法の改正を受けて、定款に別段の定めを置いてない限り、永久に法人を存続できることとなりました。
<GISの改正内容>
GISとは、General Information Sheetといい、日本でいうところの登記簿謄本です。
GISの提出は年次コンプライアンスの1つに数えられ、フィリピン現地法人の場合、GISは年次株式総会から30日以内に、フィリピン支店や駐在員であればSEC登録書の発行日から起算して30日以内にGISをSEC(Securities and Exchange Commission:証券取引委員会)へ提出する必要があります。
2019年2月28日にGISのフォーマットについて改正する旨がSECより通知され、新たにBeneficial Ownership Disclosure というページが追加されました。本改正内容の順守はOwnership(会社の保有者)との記載からもわかる通り、フィリピンにおける内国法人(現地法人の株式会社及び非株式会社)が対象となります。
Beneficial Ownership Disclosureとは具体的に何かといえば、その会社における所有権を保持している人間の①氏名②現住所③国籍④TIN(納税者識別番号)及び⑤保有割合(パーセンテージ)を記載することになります。
会社機関の体系
フィリピンの株式会社の機関設計は、株主(フィリピン会社法5条(以下、 本章においては条文番号のみ記載))、 取締役(Director)(22条、 23条)、社長(President)、財務役(Treasurer)、秘書役(Secretary) (24条)から構成されます。株主や取締役の最低人数が日本の会社法と異なるほか、財務役、秘書役といった日本には存在しない機関もあるため、体系的に理解しておく必要があります。
また、最大の特徴は、機関設計はアンチダミー法の影響を受け変化することにあります。つまり、 ネガティブリストの規制業種に該当する場合は、機関設計の内容が原則と異なるため、注意しなければなりません。
具体的には、ネガティブリストの規制業種に該当する場合には、外資の出資比率までしか外国人の取締役を選任できませんが、外資規制を受ける業種ではない場合、引き続き、代表取締役(社長)がフィリピンに居住する必要は無く、更に秘書役はフィリピン居住のフィリピン人でなければいけません。しかし、会社法改正に伴い、財務役はフィリピン居住者に限られることとなりました。
株主(株主総会)
株主数
フィリピンの場合、最低株主数について直接規定する条文はありません。ただし、2019年2月のフィリピン会社法改正を受けて、フィリピン会社法上1名以上の取締役の設置が必要であり(115条から132条)、取締役は最低1株以上を保有することが義務付けられているため(10条及び22条)、必然的に株主数は、法人株主の場合最低2名以上(自然人1名のみが株主の場合は当該1名のみでも設立可能となり、1人株主会社:One Person Corporation(OPC)と呼ばれる)へと変更になりました。
また、会社設立を遂行する法定年齢に達している発起人(Incorporator)も、最低1株以上を引受ける義務を負うため(10条)、通常、設立後に取締役となる者を発起人として選任し、定款にその旨記載します(5条)。ただし、ネガティブリストや外資規制の対象業種については、60:40などの資本比率に応じて取締役/株主の構成を編成する必要があります。
株主総会
株主総会とは、株主によって構成される会社の最高意思決定機関です。フィリピン会社法上、定時株主総会(Regular Meetings of Stockholders or Members)、臨時株主総会(Special Meetings of Stockholders or Members)の2種類があります(49条、及び50条)。
定時株主総会は、 1年に1度、附属定款に定めた日に開催します。 附属定款に定めていない場合は、4月15日以降のいずれかの日に毎年開催しなければなりません(49条、及び50条)。 一方、臨時株主総会は、 必要と認められる場合には随時、または附属定款に定められた日に開催することができます。
■ 株主総会の開催場所
日本では株主総会の開催場所について特に規制はありませんが、原則定時または臨時にかかわらず、株主総会は会社の本店所在地の市または町において、可能であれば会社の本店にて開催しなければなりません。
なお、マニラ首都圏、セブ首都圏、ダバオ首都圏及びその他大都市圏は市または町と同様の扱いとなります(50条)。ただし、2019年2月のフィリピン改正会社法により、株主総会への遠方のため参加が難しい場合、遠隔的な通信手段を用いた株主総会の実施も認められています。
■ 株主総会の招集
日本では、株主総会の招集については、原則として取締役(取締役会設置会社の場合は取締役会)が決定し、取締役(取締役会設置会社においては代表取締役)が招集します。
フィリピンの場合には、取締役は、定時株主総会の少なくとも21日前までに、登録されているすべての株主に対して定時株主総会の招集通知を電子メールもしくは書面により送付しなければなりません。また、臨時株主総会の場合には、1週間前までにすべての株主に招集通知を電子メールもしくは書面により送付します。
招集通知には総会が開催される期日及び場所を記載しなければなりません(50条)。ただし、付属定款に別段の定めがある場合は、定款の定める方法に従います。
招集する権限を有する者が不在であり、かつ正当な理由を示した株主からの招集請求があった場合には、証券取引委員会(SEC)は総会を招集する権限を請求した株主に対して付与することができます。召集を請求した株主は、出席した株主の過半数により議長が選任されるまで、当該総会の議長を務めなければなりません。
すべての株主、もしくはその代理人(Duly Represented)が出席している場合、総会が不適切に開催または招集された場合であっても、会社の権利または権限の範囲内であれば、株主総会におけるすべての手続及び決議は有効となります(50条)。
■ 株主総会の議長
日本では、株主総会(定款に定めがあれば定款に従う)において議長を選任しますが、フィリピンにおいては、原則として社長(附属定款において別段の定めがある場合を除く)が株主総会の議長を務めなければならない、とされている点が異なります。ただし、臨時株主総会においては社長以外が議長になる場合があります(53条)。
■ 株主総会決議
[定足数]
附属定款に別段の定めがある場合を除き、発行済株式の過半数の出席がなければ決議を行うことができません(51条)。
[決議要件、決議内容]
原則として、出席した株主の議決権の過半数の賛成によって決議が行われます。また、一定の重要事項については、発行済株式の3分の2以上の賛成をもって決議しなければならないと規定されています。なお、発行済株式の3分の2以上の議決権が必要なものは以下の通りです。
・ 取締役の解任 (27条)
・ 取締役と会社間の契約の承認(32条)
・ 利益相反取引の追認(33条)
・ 株式配当の宣言(42条)
・ 附属定款の変更、または廃止、もしくは新たな附属定款採択権の取締役会への委譲(47条)
また、以下のような一部の重要な事項については更に慎重を期すため、取締役の過半数の同意と、発行済株式の3分の2以上の議決権が必要となります。なお、経営管理契約(43条)については取締役の過半数の同意と発行済株式の過半数を保有する株主の承認が必要です。
・ 定款変更(15条)
・ 会社存続期間の変更(36条)
・ 増資及び減資、並びに社債の発行(37条)
・ 重要な営業財産の譲渡、リース、抵当設定その他(39条)
・ 自社の主目的以外を目的とする会社への投資(41条)
・ 経営管理契約(子会社の一定の重要事項について持株会社等の承認が必要である契約)(43条)
・ 無額面株式( No-Par Value Shares)の発行価額決定(ただし、 定款に定めがある場合)(61条)
・ 合併の承認(76条)
・ 任意解散(134条)
[決議方法]
株主総会決議は、通常株主本人が出席して投票することになりますが、フィリピン会社法においても日本と同じように代理人(Proxy) による投票ができます。この場合には委任状によって代理人を出席させて決議を行います。委任状は株主が署名を行った上で、 総会予定日までに秘書役に提出しなければならず、原則として指定された総会でのみ有効です。委任状の有効期限は5年となります(58条)。
また、議決権信託(Voting Trusts)というものがあります。これは、5年を超えない期間を限度として受託者に議決権及び株式に付帯するその他の権利を与える制度です。議決権信託を契約する際には、書面をもって行い、契約書には条件を記載し、公証人の認証を受けなければなりません。
なお、議決権信託を契約する際には、当該契約書の正式なコピーを会社または証券取引委員会に提出しなければなりません。この提出を怠った場合は当該契約が無効となり、受託者を名義人とする新規の株券が発行されるため注意が必要です(58条)。
■質権設定者等の議決権
フィリピン会社法には、質権設定者(Pledgors)、抵当権設定者(Mortgagors)及び管財人(Administrators)の議決権という規定があります。
株式に質権が設定されている場合、質権設定者(債務者)が会社の株主名簿(Corporate Books)に記録されている当該権利を書面に明示していない限り、質権設定者は株主総会に出席し、議決権を行使する権限を有します。なお、抵当権に関しても同様となります。裁判所から指名された管財人についても、書面による委任状なしに株主総会に出席し、議決権を行使する権限を有するものとされています(54条)。
株主の権利と責任
株主に対しては日本と同様 、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利及び株主総会における議決権が与えられています。
なお、株式会社は定款において株式の権利を種類別に規定することができ、各々の権利は優先株(Preferred Shares)を設けることで制限することはできます。
また、株主は発行された株式の引受価額を全額払込まなければならず、払込んだ金額以上に責任を負うことはありません(株主有限責任の原則)。
取締役(会)
取締役
取締役は、自己が取締役となっている会社の株式を1株以上自ら保有し、自らの名で株主名簿に登録しなければなりません。これは、もともと取締役の役割として 、会社の所有者である株主の中から選ばれた経営の受託者として、法人が株主の資産を適正に運営するよう監督することが期待されているためです。いわば、株主の代表として取締役がいるため 、取締役は当然のことながら株主である、という趣旨に基づきます。
よって、自らが取締役となっている会社の株式をすべて手離した場合には、取締役を辞任しなければなりません。
取締役の欠格事由として、禁固6年以上の刑を言い渡された者、または選任日以前の5年間にフィリピン会社法に違反した者が定められています。 これらの事由に該当する場合、会社の取締役または役員になることができません(26条)。
※1人株式会社の場合は、取締役は1名でも可 ネガティブリストに該当する場合には、 アンチダミー法の適用を受けます。
■ 取締役の人数
フィリピンの場合、取締役の人数は定款に記載しなければならず、2019年2月のフィリピン会社法改正により、改正前の5名以上15以下の規定が見直され、取締役の人数は2名以上15名以下とすることが新たに規定されました。上限が設定されている点が日本と異なります(10条)。
また、同会社法改正により取締役1名での1人株主会社(One Person Corporation)という形態での会社設立が可能となり、よりフィリピンに会社が設立しやすくなりますが、ネガティブリストや資本金規制の対象業種での進出は、これまでと同様のルールが適用されます。
■ 取締役の国籍と居住地
フィリピンの改正会社法上、会社の取締役のフィリピン居住性は撤廃されました(24条)。
■ 取締役の選任と兼任規定
取締役の選任は、株主総会の普通決議により行います。 発行済株式総数の過半数の株主が、自らまたは委任状により代理権を与えられた代理人を通じて出席しなければなりません。なお、決議を行う株主のいずれかより申出があった場合 、選任は投票により行うことができます。
投票の基礎となる株式数は、株主名簿に記載されている発行済株式数のみであり、自らまたは代理人により議決権を行使することができます。なお、株式数は附属定款により定められた時点、または附属定款に定めがない場合は選任時点においての数となります。
投票による場合、株主は選任される取締役の数に株式数を乗じた累積数を投票することができます。なお、1名の候補者に累積数すべてを投票することも、累積数を複数の候補者に分散して投票することもできます。ただし、株主の投票数は、株主名簿に記載された当該株主の持株 数に取締役候補者数を乗じた数を超えてはなりません。
このようにして投票が終わると投票数の多い順に候補者が選任されます。選任決議が行われなかった場合には、理由を問わず、選任を目的として招集された株主総会は日時を定めた上で延期することができます(23条)。過半数の発行済株式を保有する株主、または議決権を有する株主、もしくはその代理人が総会に出席しなかった場合についても同様です。
なお、選任された取締役及び役員は、法令及び会社の附属定款により定められている職務を遂行する義務を負います。取締役は選任後直ちに取締役会を開催し、社長、財務役、 秘書役、その他附属定款に定められた役員を選任しなければなりません(24条)。
■ 取締役の解任
発行済株式の3分の2以上を保有する株主の投票により、取締役を解任することができます。解任決議は定時株主総会またはこの目的のために招集された臨時株主総会において行います。ただし、いずれの場合においても事前に株主に対して当該総会において解任が議題となる旨を通知しておかなければなりません。
取締役の解任を目的とする会社の臨時株主総会は、社長の命令または発行済株式の過半数を保有する株主による要望書に基づき、秘書役が招集します。しかし、当該要望に対して秘書役が臨時株主総会を招集しなかった場合または 招集を拒否した場合など、秘書役が任務を怠った場合には、要望書に署名した会社の株主が、直接、株主に対して招集を通知することができます。
また、この場合の総会の時間、場所、並びに解任議案に関する通知は、フィリピン会社法の定めに従い公示または通知書により行います。
解任の結果、欠員が生じた場合には同じ総会にて、またはその後の定時株主総会や臨時株主総会にて後任の選任を行います (27条)。
■ 取締役選任の報告
取締役の選任から30日以内に、 秘書役またはその他の役員は、選任された取締役、役員の氏名、国籍及び居住地を証券取引委員会(SEC)に提出しなければなりません。取締役の死亡、辞職、その他の理由により辞任した場合にも、遅滞なく証券取引委員会に報告する必要があります(25条)。
■ 取締役の任期
フィリピンでは、取締役の任期はその後任が選任されるまでの1年間とされています(22条)。
■ 代表権
フィリピン会社法上、取締役は選任後直ちに取締役会を開催し、 社長を選任しなければならず(24条)、選任された社長は会社の代表権を有します。社長は取締役の中から選任しなければなりません。
なお、社長は、 秘書役、 財務役と兼務することはできません(24 条)。
■ 取締役の報酬
附属定款において報酬が定められていない場合には、取締役は日当以外の報酬は受取ることができないとされています。ただし、この場合でも定時株主総会または臨時株主総会において発行済株式の過半数を保有する株主の賛成が得られた場合には、取締役は日当以外の報酬を受取ることができます。
なお、上記の場合においても、取締役全員の年間報酬総額は 、会社の前年度税引前純利益の10%を超えてはならないという規定があります(29条)。本条の違反に対する罰則は、10,000ペソ以上1,000,000ペソ以下の罰金(170条)と定められています。
■ 取締役の責任
明らかに違法な会社の行為について意図的かつ故意に賛成の票を投じ、またはこれに同意した取締役は、その行為により会社、株主、その他の者が被ったすべての損害に対して個別にまたは連帯して責任を負わなければなりません。なお、会社の運営上、重大な過失または背任を犯した取締役、取締役としての職務に反して個人的または金銭的利益を得た取締役も同様の規定に服することになります。
また、取締役が信任され、信義則上自己の名の下において取引してはならない事項につき、その職務に反して、会社の利益に相反する利益を得た場合または得ようとしていた場合には、当該取締役は会社の利益の受託者としての責務を負い、会社が得るはずだった利益に関して責任を負うことになります(30条)。
■ 取締役の背任
取締役がその地位を利用して 、本来会社に帰属すべき事業機会を自らが取得し、これにより利益を得て、会社に損害を与えた場合は、当該取締役は会社に対して当該利益を全額返還しなければなりません。
この場合において、発行済株式総数の3分の2以上を保有する株主の投票により追認があれば返還の義務はありません。なお、取締役が当該事業機会の追求において、自己資金をもって行ったか否かにかかわらず、本規定が適用されます(33条)。
■ 取締役と会社の取引
以下に示す条件が満たされていない場合、会社は取締役との契約を取り消すことができます。
a. 当該契約が承認された取締役会において、当事者である取締役の出席を除き定足数に達していること
b. 当該契約の承認において、当該取締役の投票が必要とされなかったこと
c. 契約が公正かつ適切であること
d. 役員の場合、当該役員との契約が事前に取締役会で承認されていること
a、bが満たされていない場合、その目的のために招集された総会において、発行済株式総数の3分の2以上を保有する株主の賛成により、当該取締役との契約を追認することができますが、当該総会において取締役による利益相反の内容が完全に開示され、かつ契約が当該状況下において公正かつ適切である場合に限ります(31条)。
■ 兼任取締役を有する会社間の契約
詐害行為がなく、契約が当該状況下で公正かつ適切である場合には、兼任取締役(Interlocking Directors)を有する2以上の会社間の契約は、兼任取締役の存在のみを理由として無効とされることはありません。ただし、兼任取締役が一方の会社において実質的持分※を有し、他方の会社では名目的な持分しか有していない場合、当該取締役は当該他方の会社に関して取締役と会社との取引(31条)の規定に従う必要があります(32条)。
※ 兼任取締役が発行済株式総数の20%超を有する株主である場合には、兼任取締役の判定に関して、実質的持分を有するものとされます。
取締役会
フィリピン会社法では、原則として、株主より選任された取締役会は、フィリピン会社法に基づき設立された会社の能力を行使し、事業を遂行し、会社の資産を管理し保有する権限を有します(22条)。取締役会は、株主の代表として会社の重要な事項について審議・決定する重要機関です。会社定款の変更や増資・減資、会社の根幹にかかわる重要事項など、株主総会の議決が必要なものを除き、多くの事項が取締役会で決定されます。
取締役会の決議事項には、以下のような事項があります。
・ 役員の選任、役員報酬・退職慰労金規定の管理
・ 配当、財務政策の決定
・ 業務執行委員会、社長及びその部下に対する管理権限の委譲
上記の他、会社全般にかかわる重要事項を決定するのが取締役会です。なお、日本と違い取締役会の設置は、公開、非公開を問わず義務付けられています。
■ 取締役会開催のための定足数及び決議要件
日本と同様、フィリピンにおいても、取締役会の定足数は、原則として、取締役の過半数としています。ただし、定款または附属定款において過半数以上を必要とする旨が規定されている場合は除きます。
また、決議要件に関しても日本の場合と同じく、定足数を満たした取締役会において出席した取締役の過半数の賛成があった場合には有効となります。(52条)。
なお、取締役会において代理人を出席させることができないのは、日本の会社法と同様です。
■ 取締役会の開催
フィリピン会社法上、取締役会は、附属定款に別段の定めがある場合を除き、毎月開催しなければなりません。また、社長の招集または附属定款の規定に従い、特別取締役会を随時開催することができます。
取締役の数が多いなど定足数の出席を常時求めることが難しい場合があるため、附属定款に定めがあれば、取締役3名以上で構成される経営委員会を設けることができ、この経営委員会や社長以下の従業員に、取締役会から各種権限を委譲することができます(34条)。
■ 取締役会の招集
日本の場合、取締役会は各取締役が招集権を持ち、 開催の一週間前 (定款で短くすることが可能)までに各取締役と監査役(監査役会設置会社の場合)に招集通知を行わなければなりません。
しかし、フィリピンでは、附属定款に別段の定めがある場合を除き、通常会議または特別会議の日時及び場所を記載した招集通知を会議予定日の1日前までにすべての取締役に送付すれば良いとされています。株主同様、取締役は、明示的もしくは黙示的に招集通知の送付を受ける権利を放棄することができます。
なお、取締役会はフィリピン国内外を問わず開催することができます(52条)。
その他の役職と機関
財務役
フィリピン会社法上、取締役は、取締役の選任後直ちに取締役会を開催し、 財務役を選任しなければなりません(25条)。 財務役の人数に規定はなく、1名以上選任すればよいことになります。
財務役とは、会計面などについて責任を負う会社役員をいいます。
財務役は社長を兼務することはできませんが、社長以外であれば2以上の役職(秘書役など)を兼務することができます(24条)。
秘書役
秘書役は、取締役選任後直ちに行われる取締役会において選任され、フィリピン会社法上、フィリピンに居住するフィリピン人でなければなりません(24条)。また、秘書役は財務役同様、人数に規定はなく、1名以上選任すればよいことになります。
秘書役の主な職務としては、株主総会の委任状の管理 (57条)、取締役の解任を目的とする会社の臨時株主総会の招集(27条)、選任された取締役の氏名、国籍及び居住地住所等の証券取引委員会への提出などがあります(25条)。
なお、 秘書役は社長を兼務することはできませんが、社長以外であれば2つ以上の役職を兼務することができます(24条)。
経営委員会
日本において委員会設置会社があるように、フィリピンにおいても経営委員会(Executive Committee)という制度があります(34条)。 経営委員会の設置は強制されるものではなく、取締役会が任命する3名以上の取締役からなるものであり、附属定款により任意に設置することができます。
当該委員会は、全構成員の過半数の賛成により、取締役会の管轄事項のうち、附属定款または取締役会の過半数の賛成により委員会に委譲された特定の事項について、決議することができます。すなわち、取締役の人数が多い会社等では、決議に時間がかかりますが、経営委員会を設置し経営委員会に決議を委譲することで迅速な対応が可能となります。
ただし、以下の事項は決議することはできません。
・ 株主の承認が必要な事項
・ 取締役会の欠員補充
・ 附属定款の変更及び廃止、または新しい附属定款の採択
・ 変更または廃止が許可されていない取締役会の決議を変更または廃止すること
・ 株主に対する金銭配当
会社の種類
フィリピン会社法上、会社の種類として株式会社と非株式会社とに分類されており、更に株式会社については、非公開会社と公開会社を定義し、別途異なる取扱いを定めています。それぞれの会社によって、事業運営の方法や権利能力が異なります。フィリピンにおいて事業を開始する前に、どの形態が一番適した会社の種類かを検討しておく必要があります。
■ 株式会社と非株式会社
まず、株式会社と非株式会社の分類として、それぞれの会社を以下のように定義しています。
株式会社は、日本と同様に複数の細分可能な資本(株式)を有することと営利目的(配当可能)であることが定義されています(3条)。
一方、非株式会社は、解散時を除き剰余金の分配が認められず、慈善、宗教、教育等の公益性の強い目的のために設立されることを前提にされています(87条)。
■ 非公開会社と公開会社
フィリピンにおいても、日本と同様に非公開会社という区分を設け、閉鎖的な集団による経営のための別段の取扱いを規定しています。
■ 非公開会社の定義と要件
非公開会社とは、定款において次の事項が定められた会社であると定義されており(95条)、これ以外の株式会社を公開会社といいます。
・ 自己株式を除き、株主数が20名以内と定められていること
・ 株式譲渡に際し、 譲渡制限が定められていること
・ 会社は株式を証券取引所に上場したり、公募したりしないこと
なお、上記の3点を定款に定めていたとしても、総株式数または総議決権の3分の2以上を公開会社に支配されている場合には、非公開会社とは認められません。また、採掘・石油会社、証券取引会社、銀行、保険会社、公共会社、教育会社、並びに公共の利益に資するとされた会社は、非公開会社には該当しません(95条)。
■ 非公開会社の特徴
非公開会社は、株主数の制限や譲渡制限によって特定の少数の株主によって所有されることが想定されています。このような会社では、株主間の信頼関係は強いため、株主保護のための規定を緩和して、より広範な定款自治を認め、柔軟な経営が行えるような法体系となっています。 具体的には、公開会社とは異なり、以下のような取扱いが認められています。
[株主総会への経営権の委譲]
定款に定めることで、取締役会が持つ経営権を株主総会に与えることができます (96条)。これは特定の少数の者の資本参加を前提とし、このような会社運営を認めても株主の利益を害さないと考えられるためです。
[取締役会決議の省略]
取締役の判断による迅速な経営判断を行えるように、取締役会決議の省略が認められています(100条)。
[株主による合意文書]
非公開会社において、定款外で株主により署名された合意文書は、会社定款と相反しない限り、株主を拘束するものとなります(99条)。これも株主の変動がほとんどない非公開会社においては認められますが、株主の変動が多数起こりうる公開会社では認められていません。
議決権の行使における投票方法や会社の行為に深く関与する事項も 定めることができますが、取締役会の裁量及び権限を制限するような場合には、当該株主に経営責任が課されます。
株式
株式の種類
日本では、会社法上様々な種類の株式を発行することが認められていますが、フィリピンにおいても定款に定めることにより、株式の権利や制限に関して異なる種類の株式を発行することができます。発行することができる株式の種類としては以下のようなものがあります (6条)。
■ 優先株式
優先株式とは、配当時、清算時またはその他会社財産の分配時において、優先的にその分配を受取る権利を有する株式のことをいいます。また、券面額を保証する優先株式も発行することができます。
定款において、取締役会に権限を付与させることによって、取締役会が優先株式の条件を決定することが可能になります。当該条件は、証券取引委員会(SEC)に証明書を提出することにより有効になります。
また、優先株式については、後述の無議決権株式(Non-Voting Shares)とすることも認められています(6条)。この手法を使うことによって、会社の支配関係を維持しながら他の投資家による資本参加が容易となります。
■ 償還株式
償還株式(Redeemable Shares)とは、会社の帳簿上の未処分利 益の有無にかかわらず、定められた期限到来時に、定款及び株券に記載された条件に基づいて、会社が買戻すことができる株式のことをいいます(8条)。 また、償還株式についても無議決権株式とすることが認められており、資金の借入に近い形で資本を集めることが可能になります(6条)。
■ 無議決権株式
無議決権株式とは、株主総会において議決権を有しない株式のことをいいます。 優先株式及び償還株式についてのみ無議決権株式とすることが認められており、それ以外の株式については、無議決権株式とすることはできません(6条)。
また、無議決権株式であっても、以下の事項については極めて重大な影響があることから議決権を行使することが認められます(6条)。
・ 定款の変更
・ 附属定款の採択及び変更
・ 会社のすべてもしくはほぼすべての資産に関して、売却、賃貸借、交換、抵当権設定、質権設定及びその他の処分
・ 社債の受入、発行または増額
・ 資本金の額の増減
・ 他社との合併
・ 他社及び他事業への資本投資
・ 会社の解散
■ 創業者株式
創業者株式(Founderʼs Shares)とは、定款において創業者の株式として分類された株式のことをいいます。創業者株式には取締役の選定について独占的な議決権を付与することができます。ただし、証券取引委員会の承認を必要とし、その承認日から5年間が限度とされています(7条)。
新株の発行
新株の発行とは、株式会社が新たに株式を発行することをいい、新株の発行を行うと引受資本及び払込資本を増額させることができます。なお、 授権資本を増額させるためには、併せて授権資本金増資の手続が必要になります。
■ フィリピンにおける資本の種類
フィリピン会社法法上、資本と呼ばれるものには次の3つがあり、それぞれ異なる意味を持っています。
[授権資本]
授権資本とは、取締役会の権限で新株を発行することができる限度額のことをいいます。 授権資本額を増額させるためには、増資の手続が必要になります。
授権資本制度は、日本にも同様に存在します。その趣旨は、迅速な資金調達にあります。増資するには株主総会の決議が必要になるため、 非常に時間を要します。そこで、株主総会の決議により限度額を設定し、取締役会に権限を付与することによって、取締役会決議により資金調達を行うことが可能となり、迅速な資金調達を可能にしました。
[引受資本]
引受資本とは、実際に株式の引受契約が締結された資本の金額のことをいいます。
[払込資本]
払込資本とは、引受契約のうち実際に払込まれた(現物出資等を含む)金額のことをいいます。財務諸表上の資本金の額は、この払込資本の金額となります。
日本では、全額の払込が完了しない限り、株式引受が有効にならないため、有効な引受資本と払込資本は一致します。しかし、フィリピンにおいては、引受金額の一部の払込が完了していれば株式引受を有効とすることが可能なため、引受資本と払込資本が異なることがあります。
■ 新株の引受と払込
新株を発行する際には、まず新株の引受人と会社間で引受契約を締結します。当該契約によって、引受日、株式の種類、株式数、額面額または発行価額、払込期日等が定められることになります。
■ 引受済未払込株式と払込不履行株式
引受済未払込株式とは、株式引受日以降にその払込が完了していない株式のことをいいます。未払込株式(Unpaid Shares)は、株式としての権利はすべて行使することが認められています(71条)。
株式引受者は、会社から要求された場合には、未払込の株式に対する引受日以降に係る利息を支払わなければいけません。このときの利率は、附属定款に規定がある場合にはその利率を用いて、規定がない場合には法定利率を用います(65条)。
未払込となっている引受額及びその利息の支払は、引受契約において定められた期日または取締役会が定めた期日に行わなければなりません。
当該期日に払込が行われなかった場合には、残高に対して法定利率(附属定款に定めのある場合は、その利率)によって、当該期日から完済時まで利息が課されます。 当該期日から30日以内に払込が行われなかった場合には、取締役会が別途定める場合を除いて、引受けられていた株式は払込不履行株式として扱われることとなります(66条)。
払込不履行株式(Delinquent Stock)は、株主総会に出席することも認められていません。また、議決権を行使することも認められていません。払込不履行株式の保有者は、引受残高、未払利息及び公告費用を支払わない限り、配当権を除き株主としての権利は持ちません(70条)。
■ 払込不履行株式の売却
取締役会は、払込不履行株式の売却を決定することができます。 その際に、取締役会は各引受の未払額及びそれに伴い生じた利息額、並びに売却日時、売却場所を特定する必要があります。また、売却告知及び当該決議を行った際の議事録のコピーを払込不履行となっている株主に対して直接または書留により送付しなければならず、更に、2週間継続して本店所在地にて一般に流通している新聞に掲載する必要があります。
なお、売却日時については払込不履行確定日から30日以降60日以前でなければなりません(67条)。
払込義務を有する株主が、払込不履行株式の売却予定日までに引受の未払額、それに伴い生じた利息額及び広告費用並びに売却経費を支払わなかった場合には、払込不履行株式は最小単位ごとに競売にかけられ、未払額等の全額支払を提示した入札者に売却されます。
入札者がいない場合には、会社が入札に応じることも認められています。その際には、支払義務総残高は払込まれたものとして扱われ、会社名義となり、自己株式として会社は処分(売却)が可能です。
■ 株式の対価
発行する新株の対価としては、以下のものが認められています。ただし、対価が現金以外である場合または特許権や著作権等の無形資産である場合には、発起人または取締役会が評価を行い、証券取引委員会の承認を得る必要があります。
・ 現金
・ 有形資産、無形資産(会社にとって有用なものに限る)
・ 役務提供 ・ 会社に対する債権
・ 未処分利益の資本金振替額
・ 既存の発行済株式
約束手形または将来の役務を対価として新株を発行することは認められていません。いずれも将来的に会社に資金や役務が提供されるため、払込時点では資本の充実が達成できないことが理由です。
■ 株券の発行
引受金額の全額の払込が完了するまでは、株券を発行することができません。引受債務不履行の株式については、利息及び必要経費についても支払が完了するまでは、株券を発行することは認められていません(63条)。
株券には、社長または副社長が署名を行い、秘書役または秘書役補 佐(Assistant Secretary)が副署(Countersign)を行い、会社の印章を押印しなければなりません(62条)。
■ 株式の譲渡
株式の譲渡は、当事者間の合意に基づいて行われ、株主もしくはその他代理人等による株券への裏書とその株券の引渡によって、効力が生じます。しかし、それだけでは会社及び第三者に対しては、株式譲渡を対抗できません。
会社及び第三者に対しても株式譲渡を有効にするためには、新旧株主の氏名、譲渡日、株券の番号及び株式数を株主名簿に記載する必要があります。未払込株式については、株券発行が認められていないので、株主名簿の記載変更ができません。すなわち、株式名簿上の株式譲渡を行うことはできません(62条)。
■ 株式買取請求権
次のような場合には、 反対株主は、会社に対して株式持分の公正価値(Fair Value)による株式買取請求(Appraisal Right)を行うことができます(80条)。ここでいう公正価値というのは、当該行為による価値増減を排除した提議事項決議の投票直前における公正価値を指しています(81条)。
・ 株主または株式の権限の変更または制限
・ 既存発行済株式よりも有利な条件による新株の発行
・ 会社の存続期間の延長または短縮
・ 会社財産のすべて、またはほとんどすべての売却、貸付、交換、 譲渡、抵当権設定、質権設定
・ 合併
ただし、会社としては自己株式の取得となるため、株式の買取は未処分利益額の範囲内に限られます(40条)。
増資及び減資
増資や減資は、会社や株主にとって非常に重要な事項であるため、 その意思の決定については厳格な要件が定められています。
また、株主は有限責任であり、払込金額以上の責任は負わないため、会社債権者は会社財産のみに返済原資を求めなければなりません。減資は、有限責任である株主の責任額の減少になり、会社債権者にとって不利益が生じます。そのため、減資をする際には会社債権者の保護が求められます。
■ 増資手続
増資の具体的な手続は、以下の通りです(37条)。
❶ 取締役会決議
増資に関して、取締役会の過半数による決議をしなければなりません。
❷ 株主総会招集通知の送付
増資額、株主総会の日時、場所を記載した通知を株主名簿に記載された各株主の住所へ送付(料金前払郵便または手渡し)しなければなりません。
❸ 株主総会決議
株主総会で発行済株式の3分の2以上を有する株主の承認を得なければなりません。なお、出席した株主の3分の2以上ではありません。 増資は、重要な意思決定であるため、決議要件が加重されています。
❹ 新株の引受・払込
決議された増資について、新株の引受及び払込を行います。増資額の4分の1以上の引受、更に引受額の4分の1以上が現金で払込まれるか現物出資がされなければ、 証券取引委員会に証明書が受理されず、増資が有効となりません。なお、外資が引受けた場合には、外資引受分の全額について、払込もしくは現物出資が完了している必要があります。
この要件を満たしたことを証明するために、財務役の宣誓供述書(Sworn Statement)を証券取引委員会に提出する増資証明書 (Certificate of Increase of Capital Stock)に添付しなければなりません。
❺ 増資証明書の作成
以下の事項が記載された、増資証明書を作成しなければなりません。
・ 取締役会決議及び株主総会決議がなされた旨
・ 資本金の増加額
・ 実際に引受けられた金額あるいは無額面株式の株式数
・ 引受人の氏名、国籍、住所、並びに各人が引受けた金額あるいは株式数
・ 引受株式のうち、現金の払込額または現物資産の出資額
・ 株主総会日時点における会社の債務額
・ 株主総会に出席した株式数
・ 増資の承認をした投票数
増資証明書は取締役の過半数が署名し、株主総会の議長及び秘書役が連署しなければなりません。 増資証明書は2通作成し、1通は会社の本店に保管しなければなりません。もう1通は証券取引委員会に提出する必要があります。
❻ 増資証明書の提出
作成した増資証明書に財務役の宣誓供述書を添付して、証券取引委 員会に申請しなければなりません。
❼ 登録証明書の交付
証券取引委員会に増資の申請を行い、承認が得られると証券取引委員会より登録証明書が発行されます。この登録証明書の発行をもって、増資が有効となります。
■ 減資手続
減資の具体的な手続は、以下の通りです(37条)。
❶ 取締役会決議
減資に関して、取締役会の過半数による決議をしなければなりません。
❷ 株主総会招集通知の送付
減資額、株主総会の日時、場所を記載した通知を株主名簿に記載された各株主の住所へ送付(料金前払郵便または手渡し)しなければなりません。
❸ 株主総会決議
株主総会で発行済株式の3分の2以上を有する株主の承認を得なければなりません。出席した株主の3分の2以上ではありません。減資は、重要な意思決定であるため、決議要件が重く規定されています。
❹ 減資証明書の作成
以下の事項が記載された、減資証明書(Certificate of Decrease of Capital Stock)を作成しなければなりません。
・ 取締役会決議及び株主総会決議がなされた旨
・ 資本金の減少額
・ 各株主に分配される資本金額、無額面株式の株式数
・ 株主総会日時点における会社の債務額
・ 株主総会に出席した株式数
・ 減資の承認をした投票数
減資証明書は取締役の過半数が署名し、株主総会の議長及び秘書役が連署しなければなりません。 減資証明書は2通作成し、1通は会社の本店にて保管しなければなりません。もう1通は証券取引委員会に提出する必要があります。
❺ 減資証明書の提出
作成した減資証明書に財務役の宣誓供述書を添付して、 証券取引委員会に申請しなければなりません。
❻ 登録証明書の交付
証券取引委員会に減資の申請を行い、承認が得られると証券取引委員会より登録証明書が発行されます。この登録証明書の発行をもって、減資が有効となります。なお、会社債権者の権利を損ねる減資は、証券取引委員会による許可を得ることができません。
配当
株式会社では、取締役会の決定により株主に対する配当を行うことができます。配当可能限度額は、会社の未処分利益額であり(未払込の株式がある場合には、その未払込額及びそれに関する経費を配当可能額より控除します)、それを超える配当はできません。また、すべての株主に対して持株比率に応じて配当しなければなりません。
現金配当だけでなく、現物資産もしくは株式による配当も認められています。株式による配当を行うためには、定時株主総会または臨時株主総会で発行済株式の3分の2以上を有する株主の承認が必要になります。ただし、未払込の株式がある場合には、全額の払込が行われるまで配当を実行することができません。
株式会社は、以下の場合を除き、払込済資本金に相当する額以上の利益剰余金を留保することはできません(42条)。これに違反すると留保金課税の対象になるので、注意が必要です。
・ 取締役会において承認された明確な会社拡張計画がある場合
・ 会社債権者との金銭消費貸借契約書上、合意なしに配当ができない旨の制限があり、かつ、その合意が取得できていない場合・ 特殊な状況下で留保が必要であることが明示できる場合(蓋然性を有する緊急事態に対する留保金が必要な場合など)
自己株式
株式会社は、会社の目的のために、自己株式(Treasury Shares) を購入または取得することが認められています。ただし、購入または取得しようとする株式に相当する額の未処分利益があることが条件とされています(40条)。これは、自己株式の購入または取得が株主に対する払戻の性格を持っており、未処分利益を上回る会社財産の流出により会社債権者の利益を害することを防ぐためです。
自己所有の状態が続く限り、自己株式は議決権を有しません(56条)。 そのため、自己株式以外の株主数及び議決権比率によって、定足数及び決議要件を判定することになります。
また、自己株式は配当の受領権も有しません。会社自身が配当の受領者になることができないためです。
■ 自己株式の処分
自己株式は、取締役会が定めた適正な価格で処分(売却)することができます(9条)。新株の発行とは異なり取締役会決議で処分が認められているのは、自己株式の処分は会社の資産の処分の一種と考えられているためです。
そのため、新株の発行よりも更に柔軟に資本構成、資金調達を行うことが可能となります。ただし、あくまで未処分利益の範囲内での取得しか認められないため( 償還株式を除く)、利益推移や配当政策も同時に検討することが重要です。
参考文献
・ Corporation Code of the Philippines
・ フィリピン法律Q&A