閉鎖・撤退
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会社の清算及び撤退
主な清算手続きの流れ
本章では、現地法人の清算手続きについて解説します。支店や駐在員事務所の手続きも、本社での閉鎖決議をフィリピン大使館で認証し提出する以外は、現地法人の手続きとほぼ同じです。
フィリピンでの法人設立は約3~6か月ほどで完了しますが、清算手続きには完了まで通常2~3年かかります。設立の手続きと比べると、完了までに長い時間を要するため注意が必要です。場合によっては4~5年ほどかかることもあります。 期間を要する理由の一つとして、BIRで過去3年分の税務申告について税務調査を受けることが挙げられます。この税務調査開始から完了までの待ち時間および反証に要する時間が長期間におよぶことを認識しておく必要があります。
1.従業員への解雇手続き
[解雇通告]
フィリピンでの閉鎖業務で最初に行うのは、従業員への解雇通告です。これは、会社清算日の30日前に行う必要があります。その際、従業員だけでなくフィリピン労働雇用省(DOLE: Department of Labor and Employment)にも解雇の旨を知らせます。30日前に行う理由としては、従業員側に失業へ備えさせ、当該解雇に関して反対する機会を与えるためです。また、DOLE側では整理解雇を行う合法性を調査する期間ともなります。
[Separation Pay(解雇金)の支払い]
企業は従業員を解雇する際、解雇金として最低1か月分の給与、または勤続1年あたり最低1/2か月分の給与に勤続年数を乗じた額のいずれか多い金額を支払います。企業の就業規則に従って、それ以上の待遇を付与することは可能です。また、清算する企業が深刻なビジネス上の損失を理由に解雇をする場合は、この解雇金を支払う必要がないケースも認められます。解雇金にかかる個人所得税等の税金についても、フィリピン国歳入庁であるBIR(Bureau of Internal Revenue)で必要書類の提出を従業員または雇用主が行うことで免除され非課税となります。
2.LGUにおける手続き
従業員への解雇通告が完了し問題なく手続きが進んだら、企業が所在するフィリピンの地方自治体であるLGU(Local Government Unit)にて手続きを開始します。下記の通り、必要書類を当局の窓口に持参し手続きを行いますが、地域毎のLGUによって要求される書類が異なる場合があるため、事前に確認しておく必要があります。
[必要書類の例]
・ 閉鎖理由と期日の口述書
・ 秘書役証明書と取締役会決議書
・ 最新の営業許可書原本
・ 直近最後に支払った領収書(オフィシャルレシート)
・ バランガイ閉鎖証明書
・ VAT返還/販売売上の証明書
・ 3年前からの監査済財務諸表
3.SSS等の社会保険機関への手続き
LGUでの閉鎖手続きの完了後、会社清算をする旨を各社会保険機関へ通知します。通知が遅れることで、社会保険等の支払い義務が継続してしまいます。もし、支払いの滞納があると、清算手続き以外でも問題が発生するため、LGUでの清算手続きが完了次第後速やか実施する事が必要です。
[SSS(社会保障システム)での必要書類]
・ SSSフォームNo.R-8
・ SSSフォームNo.R-3(最終支払フォーム)
・ SSSフォームNo.R-5 (最終回収リスト)
・ LGUからの閉鎖証明書
・ 閉鎖を決議した取締役会決議書
出所:Social Security System (https://www.sss.gov.ph/)
[Phil Health(健康保険公社)での必要書類]
・ Phil HealthフォームNo.ER-3
・ LGUからの閉鎖証明書
・ 閉鎖を決議した取締役会決議書
出所:PhilHealth(https://www.philhealth.gov.ph/ )
[HDMF/Pag-Ibig(持家促進相互基金)での必要書類]
・ LGUからの閉鎖証明書
・ 閉鎖を決議した取締役会決議書
出所:Pag-IBIG(https://www.pagibigfund.gov.ph/)
4.BIR(Bureau of Internal Revenue)における手続き
前述した通り、フィリピンでの清算手続きで一番長く期間を要するプロセスが内国歳入庁(BIR)での税務調査になります。Tax Clearanceという財務清算証書を取得するために、最長3年分の税務調査が行われる可能性があり、この手続き開始までに当局で過去のコンプライアンス状況等を確認されるため早くても半年~1年以上かかります。また、通常の税務調査と同様に当該期間の調査において不正等が疑われる場合には、最長で10年分まで遡り調査される可能性もあるので注意が必要です。
[主な手続き]
*上記プロセス中にコンサルティング費用などを継続して支払う必要がある場合は、源泉税としてこれまで源泉徴収していた金額が誤っていないかが確認される。また、VATの申告・納付は引き続き発生する。
[必要書類]
・ BIR Form1905
・ 公証認証済Tax Clearance申請書
・ BIR Form2303原本
・ 清算における企業存続年数の変更の取締役会決議書
・ 期末在庫リスト
・ 未使用の請求書原本、会計書類
・ 未使用のオフィシャルレシートの在庫リスト
・ 年次登録料の支払い証明書
・ 閉鎖日から過去3年分の監査済財務報告書及び税務申告書
・ 帳簿原本
・ 会社定款のコピー
5.SECにおける手続き
BIRによるTax Clearance発行後、フィリピンの証券取引委員会であるSEC(Securities and Exchange Commission)での申請が可能となります。 このSECでの清算手続きが完了し証明書が発行された後に、最後の手続きとして銀行口座の閉鎖ができるようになります。
[主な手続き]
[必要書類]
・ 取締役会決議書
(ⅰ)定款の企業存続年数の修正、株式の再分類/分類解除/転換
(ⅱ)取締役および株主の投票結果
(ⅲ)株主総会の日付と場所
(ⅳ)署名者の名前の下に記される署名者の納税者番号(TIN)
・ 最終年度の監査済財務報告書
・ 清算が債権者の利益を害するものではなく、債権者からの反対がないことを証明する、代表取締役および財務役の署名入り証明書
・ 法人の代表取締役および会計担当者によって認証された宣誓に基づく証明書
・ BIRのTax Clearance
・ 清算についての公告証明書
・ 他の政府機関からの認可証明書
6.駐在員に関する必要な手続き
[就労ビザのダウングレード]
フィリピンの駐在員は、主に9Gビザなどの就労ビザを取得しますが、会社の清算と共に駐在員が日本へ帰国する場合は、このビザのダウングレード作業も必要となります。これには、約2カ月かかるとされているので、早めに手続きを開始することが望ましいです。また、ビザが無事にダウングレードできたとしても、出国の72時間前までにECC(Emigration Clearance Certificate)をBI(移民局)にて取得しておかないとフィリピンから出国出来ないため注意が必要です。さらに、ECC取得後は1か月以内にフィリピンから出国する必要があります。 ダウングレードをせずに帰国すると、次回フィリピンへ入国する際に入国審査で以前のビザについて問われる可能性や、再度フィリピンのビザ取得をする際に既存のビザをキャンセルする手続きが必要となるケースもあります。
[個人所得税の確定申告(BIR Form 1700)]
フィリピンでの最終勤務日から60日以内に、暦年1月~最終勤務月までの日本側で受け取った給与を含めた全世界所得で所得税を申告をする必要があります。
[各書面への署名人変更手続き]
SSS等の社会保険機関に関する書面の署名人となっている場合は、当人が帰国後も手続きが進められるように外部コンサルタント等へ依頼をし、署名人変更をしておく必要があります。 この署名人指名のための特別な条件等はありませんが、新規署名人への変更手続きの際に旧署名人のサインが必要となります。
7.注意すべき点
フィリピンで会社等を清算する際の注意点としては、以下のようなものがあります。
[人員整理]
・ 解雇対象者への通知が果たされたこと
・ 解雇手当が支払われたこと
これら上記の条件を満たしていない場合、従業員側からDOLEに訴えられたりする可能性があります。フィリピンにおいて企業と従業員の訴訟が起きても、企業側が勝訴するケースは少ないので、事前に従業員からの不服申し立てをされないよう注意が必要です。
[資産整理]
・ 債権の削減、債権回収、債務の支払い
・ 備品や設備類の売却、破棄
・ PEZA企業である場合、PEZAへの設備等の売却や破棄の許可申請
[資産分配]
・ 閉鎖日以降3年間は、訴訟の当事者となり得る
・ 清算手続き中の資産分配は、原則としてすべての債務を支払った後に行う
・ 所在不明の債権者および株主に対する資産分配は原則、国庫に帰属するものとする