会社法
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会社の機関
非公開会社および公開会社に共通して民商法典(以下、法律名を挙げていないものは民商法典を指す)が適用されますが、公開会社については、さらに公開会社法(以下、会社法)が特別法として制定されています。すなわち、公開会社には公開会社法が優先的に適用され、公開会社法に規定のない部分については、民商法典が適用されます。これらの会社形態の会社の機関については株主、取締役、会計監査人で構成されることに違いはありません。なお、上場企業の場合には証券取引所の規制により監査委員会の設置が強制されることになります。
株主・株主総会
株主数
タイでは、非公開会社の場合には2名以上の株主(1237条4項)、公開会社の場合には15名以上の株主を確保することが義務付けられており、これを下回ることは許されていません(会社法155条)。
これを下回った場合には、裁判所により解散命令が下される可能性がありますので常に株主数を確保しておく必要があります。
日本では株主1名でも株式会社を設立することができますが、タイでは2名以上の株主を集められない場合には、株式会社の設立をすることができず、パートナーシップなどの形態を利用せざるを得なくなるという特徴があります。
株主の権利
■自益権
株主は、会社から株式数に応じて利益の配当を受けることができます。ただし、優先株式を発行している場合は、株主ごとに異なる配当額を決定することが可能です。
■共益権
共益権の代表格は、株主総会における議決権の行使です。会社の経営は取締役(会)に委任されますが、その取締役の選任、解任は株主総会の専決事項とされています。また、取締役以外の役員の決定や、定款の変更、配当の決定、増資・減資、決算書の承認などの基礎的重要事項についても、株主総会の決議によるものとしていて、株主は議決権を行使することにより、会社・株主の利益を確保することができるようになっています。
少数株主を保護するための規定も定められていますが、日本の会社法と比べると議決権比率などの行使条件が厳しく定められていることが特徴です。
[少数株主権]
株主の権利には、保有株式が一株の株主でも行使できる単独株主権と、一定の数または割合の株式を有する株主のみが行使できる少数株主権があります。
資本多数決の原則のもと、多数派株主により支配された会社は、その運営が一部の株主の利益に偏ったものとなり、個々の株主の利益が害される場合があります。これを是正するため、日本の会社法では個々の株主でも取締役を監督し、是正することが認められています。しかし、むやみにこれらの権利を行使することを許容すると、権利の濫用の恐れがあるため、これらすべての権利を単独株主権とはせず、少数株主権として一定の要件と期間が定められています。
タイの会社法においても、資本多数決の原則のもと、多数派株主の専横の危険性を排除するため、単独株主権および少数株主権を保障しています。これにより少数株主であっても、会社に対して影響力を行使することができます。
タイの会社法では少数株主権を付与する基準として、20%以上の株式保有を目安にしていると考えられます。たとえば、株主総会招集請求(1173条、会社法100条)、株主総会決議取消請求(1195条、会社法108条)、登記官に対する検査役選任請求(1215条、会社法128条)などでは20%の持株要件が求められています。
株主総会
株主総会については、民商法典1171条~1195条、公開株式会社法98条~108条に定められています。
民商法典1177条では「1178条~1195条に定められる項目は、会社の定める規則に反しない限り適用する」とされており、株主総会に関する規定のうち一定の事項については、会社の附属定款が民商法典に優先することが認められています。
■株主総会の種類
タイにおける株主総会は、会社設立登記前に行われる創立総会、会社の登記日から6カ月以内に開催され、その後、1年に1回開催される定時株主総会、取締役が必要と認める場合や閉鎖・清算の場合などに開催される臨時株主総会の3つの種類があります(1171条)。
創立総会は、株式の引受が行われた後、つまり会社の設立登記前に行われなければなりません。創立総会では、発起人の行った設立手続の承認を行い、会社定款の承認や取締役・会計監査人の選任、株式の数や内容について決議をします(詳しくは第3章「設立」を参照)。
創立総会において違反・報告懈怠があった場合には、裁判所は会社を解散させることができる(1237条)ため、必ず議事録の作成と報告をしなければなりません。
定時株主総会について、会社設立が完了した後6カ月以内に最初の定時株主総会を開催しなければならず、その後は、1年に1回以上開催する必要があります。
設立後6カ月以内に開催される定時株主総会の議題は特に定められていません。会社の登記だけをして実体のない会社の設立を防止することに立法趣旨があるようです。
定時株主総会では、株主への決算報告や取締役・会計監査人の選任が主な決議事項となります。決算書の株主総会への報告が決算日以後4カ月以内とされているため(1197条)、通常は決算日以後4カ月以内に開催されることになります。臨時株主総会は、取締役が必要であると認めるときにはいつでも開催することができます。また、会社の損失が資本金額の半分以上となったときには株主へ伝達するための臨時株主総会を開催しなければなりません(1172条)。
株式総数の20%以上を有する株主が総会開催の要求をした場合には、取締役は臨時株主総会を招集しなければなりません。この要求があるにもかかわらず取締役が招集義務を怠り、要求された日から30日以内に開催しない場合には、株主自らが招集することができます(1173条・1174条)。会計監査人に欠員が生じた際にも臨時株主総会の開催が義務付けられています(1211条)。
■開催場所
開催場所は、非公開会社は明文規定がありません。公開会社は本店の所在地または近隣地とされていますが、定款で別段の定めをすることが認められています(会社法101条)。
従って株主総会招集に際して、取締役が決定し、招集通知に記載をして株主へ周知することになります。これは日本の制度と同様です。
■招集権者と招集通知
タイにおける株主総会の招集および通知に関する法律は、2022年11月8日に改正され、2023年2月7日より施行されています。
招集権者については明文規定がありませんが、通常は取締役が招集を決定することになります。
招集通知の方法については、記名式株式を発行する会社であれば、株主名簿に記載されている全株主に対し、総会開催日の少なくとも7日前(普通決議)または14日前(特別決議)までに配達記録付き郵便で株主総会の招集通知を送付する必要がありますが、従来必要だった新聞公告が不要となりました。
ただし、無記名式株式を発行する会社の場合は、総会開催日の7日前または14日前までに、地域の新聞に1回以上公告するか、省令で定められた方法に従って電子的手段で公告する必要があります。
招集通知には場所、日時、議題を記載します(1175条)。
日本では招集の通知は株主への通知のみで済みますが、タイでは新聞での公告が必要になるという点が異なります。
また、招集の公告を怠った場合は、会社に対して最大2万バーツ、取締役に対しては5万バーツの罰金が科されますので注意が必要です。
【招集権者と招集通知に関する規定】
| タイ | 日本 |
招集権者 | 取締役 | |
招集通知発送 方法 | 配達記録による株主への通知 新聞での公告(不要) | 書面または電磁的方法 ※会社の形態により口頭も可 |
招集通知発送 期限 | ・普通決議事項は7日前まで ・特別決議事項は14日前まで | 原則2週間前まで ※会社の形態により短縮可 |
■株主総会の議長
日本の株式総会では、議長に「総会の議事運営を整理」し、「秩序を乱す者を退場させる」権限が与えられています(日本会社法315条)。
議長の選任方法については、会社法には明文規定がないため、定款に定めがあればそれに従い決定することになります。実際に日本の多くの企業では「社長を議長とする」のように定款に規定して対応しています。
一方タイでは、議会の議長は議事の運営に加えて、決議の票数が同数であった場合に決定票を投じる権利を有すると規定されており、日本と比べて大きな権限が与えられています(1193条)。原則として取締役会の議長がすべての株主総会の議長を務めることとし、取締役会の議長がいない、もしくは開会予定時刻を15分過ぎても出席しない場合には、株主総会において互選により選出します(1180条)。
さらに公開会社においては、議長は招集通知に定められた議案の順序に従って議事を進めなければならないとされ、議案の順序の変更は出席株主数の3分の2以上の賛成が必要とされます(会社法105条)。
■株主総会の決議
株主総会は会社の最高意思決定機関であり、役員の選任や決算書の承認、配当の決定、増資・減資など、会社にとっての重要事項は取締役ではなく、株主総会決議により決定しなければなりません。
この点は日本と同じですが、定足数や決議条件などの点で異なります。
【普通決議と特別決議の比較】
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[定足数]
非公開会社の場合、総株式の25%以上の株主が出席しなければ決議を行うことができません(1178条)。特別決議事項についてはさらに要件が厳しくなり、総株式の75%以上の株主の出席が必要となります。これを下回った場合の決議は有効とはなりません。
一方、公開会社の場合、「25人以上の株主が出席する」「全株主数の半数以上かつ発行済株式数の3分の1以上の株式を有する株主が出席する」のいずれかの要件を満たす必要があります。
議決権ベースだけではなく、人数ベースで要件を設けているところが大きな特徴です。
[ 議決権]
日本の会社法では、株主を資本貢献度に応じて平等に取扱うという大原則が貫かれているため、会社の形態を問わず1株につき1議決権が付与されます。
しかしタイの民商法典は、決議の方法によって議決権の付与方法が異なります。決議方法は原則として挙手によるものとされますが、挙手により決議が行われる前に2人以上の株主が投票による決議を要求した場合には、投票により決議が行われることになります(1190条)。挙手により決議が行われる場合の特性は、出席株主1人につき1議決権が付与されることです(1182 条)。
出資比率で過半数を保有していたとしても、挙手によって決議される場合には、不利な決定がされるリスクがあることに留意しなければなりません。
ここでは、そのリスク回避方法をご紹介します。
自己資本割合が過半数を占める場合:
自己資本が過半数を占めている場合は、あらかじめ定款に「株主総会決議は投票による」旨を規定しておくことで、株主総会で不利な決定を被るリスクを回避することができます。
タイ法人の出資割合が過半数を占める場合:
① 優先株式を利用する方法
タイでは普通株式と優先株式の2 種類の株式を発行することができます。
日本で優先株式というと配当額(残余財産分配額)を優先的に受取る権利が付与される株式を指しますが(日本会社法108 条1 項1 号・ 2 号)、タイの民商法典には優先株式に関する明文規定がないため、配当だけでなく議決権についても普通株式と異なる取扱を定めることができます。
タイでは、外国資本が過半数を占めることができない制限業種が多く存在します。これらの業種では、タイ人資本が過半数を占めることになるため、タイ人が結託して、日本側の取締役の解任を決議してしまうといった、不利な決定をされる可能性があります。
あらかじめこのようなリスクを排除するために利用されてきたのが、この優先株式を利用する方法です。外国資本が過半数を占めるように議決権を制限する優先株式を発行し、タイ人株主に渡しておきます。この方法によれば、必ず決議の際に過半数を獲得することができます。
しかし、近年、優先株式を利用して、少数株主が実質的に支配権を獲得するこの方法は、外国人事業法の趣旨を没却するものとして、タイ政府は規制する動きがあります。現状では、まだ有効な方法ですが、今後は規制される可能性がありますので、実際にこの方法を利用する際には専門家に相談した上で行うのが望ましいでしょう。
②決議は52%以上の賛成による旨を定款に定める方法
優先株式を利用して支配権を獲得する方法が規制される可能性が出てきたため、議決権の過半数を獲得することは困難になるかもしれません。
そこで考えられる別の方法は、あらかじめ定款に「株主総会決議は議決権の52% 以上の賛成がなければ効力を生じない」旨を記載する方法です。この方法によれば、タイ人株主が51% の株式を保有していても、日本側が49% を保有していれば単独で決議を成立させることができなくなるので、不利な決定をされるリスクを回避することができます。
この方法は規制の対象にならないため一般的によく利用されます。
③複数のタイ人出資者を集める方法
タイ資本を51% 以上にしなければならない場合、単独のタイ人株主にその出資を委ねた後で両者の関係が悪化した場合、自社の経営に支障をきたす可能性が生じます。そのような事態を防ぐために、複数のタイ人出資者を集めて、合計51% を保有してもらう方法があります。その際の複数の出資者は、互いに利害が一致していない関係性が望まれます。この方法であれば、複数の出資者の意見が一致しない限り決議が成立することはなく、不利な決定をされるリスクを回避することができます。
[ 議長の決定票]
日本では馴染みが薄いですが、議長に決定票を付与する制度があります。この制度により、決議の結果、対抗する案の票数が同数となった場合には、議長に決定する権利が委ねられることになりますので、議長の選出は安易に行ってはならないことに注意が必要です。
[ 議決権が付与されない場合]
原則的にすべての株主に議決権が与えられますが、①払込催促を受けているにもかかわらず払込が完了していない株主(1184 条)、②決議の内容に特別な利害関係を有する株主(1185 条)など、一定の要件に該当する株主には議決権が認められません。①について、日本では引受けた株式の全額を払込まなければならない(全額払込制度)のでこのような状況は起こり得ませんが、タイでは会社設立時に引受けた株式の25% 以上を払込めば良く※、残りの未払込部分は取締役の催促があったときに払込めば良いとされています。
このような株主の投票により有効となった決議は、後に取消される恐れがありますので、株主総会開催前の段階で確認をしておく必要があるでしょう。
※ BOIの奨励を受ける企業は、操業開始前までに資本金の全額を払込む必要がある
■書面投票と議決権の代理行使
日本の会社法では、株主の議決権行使の機会を保障するために、書面投票や議決権の代理行使を認めています。
タイでは書面投票についての明文規定はありませんが、代理人を任命した上での議決権の代理行使を認めています。
代理行使をする場合には、会社法で定められた様式の委任状を作成した上で株主総会の開始時より前に会社に提出しておく必要があります(1187 条・1189 条、会社法102 条・103 条)。実務上は株主が出席できないケースもありますので、代理行使の方法を採用する場合もあります。
■株主総会決議の瑕疵
株主総会決議に瑕疵がある場合には、株主は裁判所へ取消を求めることができますが、決議があった日から1 カ月以内に行う必要があります(1195 条)。
取締役・取締役会
取締役
■取締役の人数
民商法典においては取締役の人数の規定がないため、非公開会社では最低1 名以上いれば良く、国籍の制限もないため日本人のみで取締役を占めることが可能です。
しかし、非公開会社であっても、業種(運送業・倉庫業等)によってタイ人取締役の割合が規定されている場合があるため注意が必要です。
■取締役の居住地と国籍
非公開会社の場合は取締役の居住地と国籍の規定がないため、国外居住者が取締役となることができますが、役所手続等をタイ国内で行わなければならないことがあるため、タイ居住者が取締役になるケースが一般的です。
一方、公開会社では 5 名以上の取締役が必要とされ、かつ半数以上がタイ国内に居住地を有している者でなければなりません(会社法 6 条・7 条)。
なお民商法典、公開株式会社法上国籍についての規定はありません。
■取締役の選任・解任
株主総会に取締役を選任・解任する権限が与えられているのは、日本と同様です。非公開会社では選任・解任ともに普通決議で行いますが、公開会社では解任を行うために特別決議が要求されているという違いがあります(会社法76 条)。これは、株主権の濫用を抑制する趣旨に基づいていると言われています。
■取締役の任期
日本の場合、取締役の任期は原則として2 年以内です。これは取締役としての適否を株主に確認するためと解されています。ただし、非公開会社の場合は10 年まで伸ばすことが可能となります。株主の変動が少なく、緊密な関係にあることが想定されるためです。
一方、タイの会社法上、非公開会社および公開会社の取締役の任期は原則1 年であり、定款に別段の定めがある場合は最長3年となります(1152 条)。また毎年3 分の1 ずつの改選が必要であり、任期の長い取締役から辞任の対象となりますが、再任は可能です(1153 条、会社法71 条)。
■代表権とサイン権
タイでは代表取締役という概念がありません。そのためサイン権をどのように設定するかという問題があります。複数名にサイン権を付与することも可能ですが、その場合にはサイン権の範囲、単独か連名かなどを決定します。銀行での決済手続や商務省、税務局などの省庁手続などさまざまな場面でサインが必要となります。
タイ法人の取締役にすべての権限を付与する場合には問題がありませんが、たとえば、現地法人の社長がタイを出張ベースでカバーし、日常業務はタイ人従業員が行っている場合に、まったくサイン権を付与しないとすると日常業務に支障をきたす可能性があります。そのため、ある一定の金額制限をつけた銀行決済権や税務申告書などへのサイン権を現地従業員に付与する方法が考えられます。また銀行口座自体を本口座とは別に少額の銀行口座を作成し、その口座に関してのみ従業員に権限を与える方法もあります。
またタイ法人との合弁会社の場合には、複数の者の連名でないと効力を生じない設定にすることも考えられますが、この方法は機動性に欠けるというデメリットがあります。
■ 取締役会
非公開会社の取締役は1 人でも良く、取締役会を設置する義務はありません。
一方、公開会社では取締役会を必ず設置しなければならず、3 カ月に1 回以上取締役会を開催しなければなりません(会社法67 条・79条)。
取締役会の決議は取締役の半数以上の出席により、1 人1 議決権の頭数多数決で行います。ただし、日本の会社法と同様に、決議する事項に特別な利害関係を有している取締役には議決権は認められていません。
議長は取締役による互選により選出されます(会社法78 条)。上述のとおり得票数が同数となった場合には、議長が追加の1 票を投じる権利を有するキャスティングボート制度がありますので、議長の選任は慎重に行う必要があります(会社法80条)
公開会社においては、取締役の活動に関する情報公開の必要性から、取締役と会社との取引および自社・同系列会社の株式・社債の所有について取締役会に報告することが義務付けられています(会社法 88 条)。
会計監査人
日本では上場会社や会社法上の大会社のみに会計監査人設置義務がありますが、タイでは会社の規模・業種を問わず外部監査が必須とされており、すべての会社が会計監査人を設置しなければなりません(1209条、会社法120条)。
■監査人の要件
会計監査人は(一部の要件を満たすパートナーシップを除き)タイ国公認会計士でなければなりません。また民商法典上、会計監査人は会社の株主となってもよいとされていますが、会社との間に利害関係を有する者、取締役、従業員などは選任することができません(1208条、会社法121条)
■監査人の選任方法
会計監査人の選任は株主総会の決議によって行われ、また報酬も株主総会で決定されることになります(1210条)。会計監査人に空席が生じた場合には直ちに臨時株主総会を招集し、新しい会計監査人を任命しなければなりません(1211条)。また再任も可能です(会社法120条)。なお、会社設立後最初の会計監査人の選任は創立総会にて決議されます。設立段階では正式な監査人が決定していない場合も多くありますが、そのような場合は、仮の監査人を登記しておき、正式な監査人が決定した後に臨時株主総会の決議により変更をすることができます。この臨時株主総会開催の要否については、慣習的に開催が不要で あると言う弁護士もいますが、民商法典では、株主に選任権があると解釈することができますので、コンプライアンスを重視すれば臨時株主総会を開催すべきと考えられます。
■監査人の権限
会計監査人は会社が作成する決算書の監査を行い、監査報告書にて決算書の適正性について意見表明を行います。監査人には監査を実施するために会計帳簿・証票類の閲覧や質問をする権限が与えられており、会社は監査人の求めに応じて資料の提供や質問への回答をしなければなりません。
【会計監査人制度】
タイにおいては、公認会計士による監査がすべての会社に義務付けられていますが、2002年の商務省令の改正により、「資本500万バーツ以下のパートナーシップ」」、「総資産3,000万バーツ以下のパートナーシップ」」、「年間収益3,000万バーツ以下のパートナーシップ」に関しては、税務監査人(Tax Auditor)が行ってもよいこととされたため、公認会計士ではなく、税務監査人を選任するケースも増えています。
税務監査人には、会計、監査、税務、商法などの科目で構成されている試験を通過した者がなることができ、公認会計士も税務監査人になることができます。税務監査人は税務監査をするのではなく、あくまで会計を監査するのがその役割となっています。
株式
■株式の種類
日本では、色々な種類の株式を発行することが会社法上認められていますが、タイでは優先株式と普通株式の2種類に大別されます。
■優先株式
タイでは普通株式のほか、優先株式を発行することができます(民1108条)。優先株式を利用することによって、配当請求権だけでなく議決権などの共益権について株主ごとに優先的(または劣後的)な取扱をすることができます。
日本で優先株式というと配当額(残余財産分配額)を優先的に受け取る権利が付与される株式を指しますが(日本会社法108条1項1号・2号)、タイの優先株式については、その内容についての明文規定が民商法典上にないため、配当だけでなく議決権などの共益権についても普通株式と異なる取扱を定めることができると解釈され利用されています。
優先株式の発行は新株の発行時しか認められていないため、「会社設立時」、あるいは「増資時」に限られています。
また日本では1度発行した種類株式を株主総会の決議によって変更することができますが、タイでは普通株式として発行した株式を優先株式に変更することや、1度発行された優先株式の内容を変更することはできません(民1142条)。
議決権について異なる株式を発行することはできますが、日本で認められているような完全無議決権株式の発行は認められていません。
株式の分割もタイではすることができません。
■新株の発行
■非公開会社の新株発行
新株を発行するタイミングには、大きく「設立時の新株発行」、「設立後の増資」の2つのケースがあります。
[設立時の新株発行]
タイでは、株式総数を登録資本として定めたうえで、設立時にすべての株式を発行します。しかし、払込はそのうち25%以上で構いません。残りの未払込分については、取締役はいつでも株主に対して請求をすることができ(民1120条)、この請求を受けた株主は遅滞なく支払を完了させなければなりません。
支払期限に遅れた株主には利息を支払う義務が生じ(民1122条)、最終的には株式を没収にかける権利が会社に与えられています(民1124条)。
補足として、会社法上の取扱ではありませんが、BOIによる奨励を受けた場合には、操業開始前に全額の払込を完了させなければならないという違いがあります。
[株式の発行価額]
非公開会社では、額面より高い価額での発行は付属定款に定めていれば行うことができますが、額面より低い価額での発行(日本でいう有利発行)をすることはできません(民1105条)。一方、一定の要件を満たす公開会社では、額面価額未満での株式を発行することができます(公52条)。
非公開会社では額面価額については、1株当たり5バーツから発行できますが(民1117条))、実務上は、ローカル企業は1株100バーツ、日系企業は1株1,000バーツとすることが多いようです。出資の方法は金銭だけでなく、現物出資によることも可能となっています(民1108条)。
■増資に関する規定
タイでは外国人事業法の規制により、ワークパーミットを取得するためには外国人従業員1名につき200万バーツの資本金が必要とされるため、事業拡大により日本人スタッフを増員させる場合には、増資せざるを得ません。また累積損失が一定の金額を超えた場合などには(詳細は第8章「労務」を参照)、就労ビザ(Bビザ)の許可が下りなくなるため、この場合も増資により資本を増加する必要があります。
このように日本と比べると、タイでは増資をする機会が多いため、手続を把握しておく必要があります。
非公開会社が設立後に新株を発行して増資をする場合は、既存株主の保有株式数の割合に応じて募集をかけなければなりません。増資の決定は株主総会の特別決議による必要があり、その後14日以内に商務省へ株主総会議事録を提出して増資した旨の登記を行い(民1228条)、その後株式の割当数及び申込期限を記載した通知を全株主に送らなければなりません(民1222条)。期限を過ぎても申込がない場合や引受けない旨の通知を受けた場合には取締役はその株式を他の株主に引受けさせるか、自ら引受けることができるものとされています。この引受に基づき株主からの払込が行われ、定款変更の登記をすることで増資の手続が完了します。
また、公開会社においては、第三者割当増資もできますが、その際には、事前に登録資本金まで株式が発行されているか、または未発行部分はすべて新株予約権付転換社債の新株予約権として発行されている必要があります。
■減資に関する規定
非公開会社の減資手続をする場合には株主総会の特別決議が必要となります(民1224条)。原則として登録資本金の4分の1未満に減資することはできないという点は非公開会社、公開会社共通となっています。
減資をする場合には、債権者保護を図る必要があることから、増資をする場合に比べてより多くの手続を民商法典では求めています。まず株主総会特別決議にて減資の決定を行った後、14日以内に商務省へ登記申請をします(民1228条)。次に地元新聞で減資に関する公告を行い、かつ会社債権者全員に対して通知を行い、30日以内に異議申立ができる旨を伝達しなければならず、これにより異議を申立てる債権者がいる場合には、その債務を弁済するか、担保を提供しない限り減資をすることはできません(民1226条)。期限内に異議を申立てる債権者がいない場合には減資登記を行い手続が完了となります。
減資による一番の効果は、資本金を500万バーツ以下に抑えることで、所得税の軽減税率の適用を受けられることです。タイでは、時限立法ですが会計年度末における払込資本が500万バーツ以下の会社には所得税の軽減税率が適用されます(詳細は第7章「税務」を参照)。
たとえば、利益が500万バーツだとすると、約27万バーツも節税することができます。利益が出ている会社の場合は、検討する余地があるといえるでしょう。
■自己株式
原則として会社が自ら発行する株式(自己株式)を保有することは認められていません(民1143条、公66条)。しかし、公開株式会社法では、積立利益があり財務状態が健全であると認められるなど、一定の場合には自己株式を取得することができるとされています。
しかし、この場合に保有する自己株式については議決権及び配当請求権は与えられず、株主総会の定足数にもカウントできな
■配当・準備金
■配当の決定方法
配当を行う場合は、株主総会の決議を経なければなりません(民1201条)。また付属定款に定めておくことで、会社に十分な利益がある場合には、株主総会を開催することなく期中配当を行うことができます(民1201条、公115条)。配当額は株式数に応じて決定しなければなりませんが、優先株式の内容として配当額が異なる旨をあらかじめ定めている場合には、この限りではありません。
■配当を行うことができない場合
累積損失が計上されている場合には、損失が補てんされるまで配当を行うことはできません(民1201条、公115条)。
利益がないにもかかわらず配当が行われて、債権者の利益が害された場合には、会社債権者は配当を受取った株主に対して配当の返還を請求することができますが、その配当が違法だった事実を知らなかった株主は返還する義務がありません(民1203条、公118条)。
■配当時の準備金の計上義務
登録資本の10%以上の金額に達するまで、配当金額の5%以上を法定準備金として積立てなければなりません(民1202条)。一方、公開会社の場合は、登録資本金の10%に達するまでのあいだ、配当を行うか否かにかかわらず、年間利益の5%を利益準備金として積立を行う必要があります。この準備金は取崩、または、資本組入を行うことは認められないと解釈されており、その結果、会社清算時まで取り崩すことができないものであると考えられています。