設立
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■事業拠点の特徴
タイに事業拠点を設立する場合、 民商法典、 外国人事業法(1999年改正、2000年3月施行)に準拠し、どのような形態で拠点を設置するかが重要になります。
タイにおいては、現地法人、支店、駐在員事務所の設立が認められており、進出の目的によりこれらを選択することができます。
■現地語法人
■株式会社
タイの会社制度は、日本と同様に、株式会社制度を採用しています。株式会社(Limited Company)は、すべての株主が間接有限責任を負う形態であり、株式の譲渡制限の有無により非公開会社と公開会社に分けられます。
・ 非公開株式会社(Private Limited Company)
・ 公開株式会社(Public Limited Company)
非公開株式会社は、定款によりすべての株式に譲渡制限を設けている会社のことを指します。
公開株式会社は、株式上場を前提とした株式会社で、株式の募集を証券取引所を通じて行い、資本調達は公衆から株主を募ります。タイ証券取引所(Stock Exchange of Thailand、通称SET)の上場会社は、20220年時点タイの上場会社数 は 743 社です。
[非公開株式会社と公開株式会社の比較]
非公開株式会社と公開株式会社の設立に関する要件は、以下の通りです。
非公開会社の発起人数及び株主数は、従来3名(株主)必要となっており、合弁会社を設立するときなど、2社の株主及び、もう1名株主を探す必要がありました。しかし、2023年2月7日より、法改正(民商法1097条)が行われ、最低2名(株主)と変更されました。
【非公開会社株式会社と公開株式会社の比較】 | ||
項目 | 非公開会社 | 公開会社 |
発起人の最低人数 | 2 | 15 |
株主の最低人数 | 2 | 15 |
取締役最低人数 | 1 | 5 |
株式の公募 | 不可 | 可能 |
社債の公募 | 不可 | 可能 |
メリット | 財務情報の開示義務が少ない | 社会的信頼度が高い |
デメリット | 公衆からの資金調達が不可 | 上場維持のコストがかかる |
2.駐在員事務所
駐在員事務所とは、主として情報収集等の限られた「非営利活動」を行うことを目的として登録される事務所です。また租税条約上「恒久的施設(PE:Permanent Establishment)」とみなされず、法人税課税を受けない代わりに、収入を得ることや、タイ国内の個人や法人と商談を行う権限も持てず、いわゆる商行為を行うことができません。
限られた「非営利活動」とは、以下の通りです。
・ 本社のための商品またはサービスの手配
・ 本社から仕入もしくは請負製造した商品の品質及び数量の調査及び管理
・ タイで代理店や消費者に、本社が販売した商品に関する助言の提供
・ 本社の新製品・サービスに関する広報
・ タイにおけるビジネストレンドの本社への報告なお、2017年6月9日の公示・施行により法改正が行われました。
外国人事業法(FBA:Foreign Business Act)の規制業種から、
外国法人の駐在員事務所が外国人事業法の対象から外れることが決まり、
外国人事業許可書(FBL:Foreign Business License)の取得が不要となりました。
省令前においては、FBL取得に際し3カ月以上の期間と、手続きに時間を要し、運用開始まで約半年間、また親会社の資本金の0.5%(最高で25万バーツ)の手数料がかかっていました。また、最低300万バーツ以上の事務所経費の持ち込みが条件として規定されており、当該経費は3年以内に全て持ち込まなければなりませんでした。しかし、省令により、駐在員事務所設立においてはFBL取得が不要となったため、商務省へ必要書類を提出するだけで、企業登録番号(TAX IDと同じ)の取得ができるようになりました。また、書類等に不備がなければ、即日発行も可能となっています。なお、企業登録番号証明書の申請・発行手数料はかかりません。FBLの取得のために最低300万バーツ以上の事務所経費の持ち込みも不要となりましたが、駐在員事務所へ、200万バーツの資本金相当の送金が必要となっております。(外国人事業法14条により)また、下記事項が商務省により指定されている駐在員事務所として禁止活動です。
1. 商品調達
本社もしくは関連者に代わっての商品の注文及び商品代金の支払いを行うこと。
2. 商品の発送
本社または関連者の製品の発送や発送手配。
3. 第三者のための検品業務
タイの会社により販売される製品の検品作業(本社もしくは関連者を除く)。
4. アフターサービスの提供
据え付け及びメンテナンスに係るサービスの提供。
5. 第三者のための製品情報説明
本社もしくは関連者以外の製品に関する情報提供。
6. 商品・サービスの受注
本社もしくは関連者に代わって商品もしくはサービスの受注を行うこと。
7. 商流のコーディネーション
本社もしくは関連者に代わって仕入れ及び販売のコーディネーションを行うこと。
8. 広告宣伝活動
タイにおいて既に販売されている製品またはサービスの宣伝及び情報提供。
9. 仲介役・代理人活動
本社もしくは関連者とタイの顧客の仲介役または代理人活動を行うこと。
10. 事業計画の策定
本社もしくは関連者に代わって他の会社等と事業計画の策定や調整。
11. 契約の締結
本社もしくは関連者に代わっていかなる契約を締結する活動を行うこと。
12. 情報提供サービス
本社もしくは関係会社ではない第三者に対し情報提供を行うこと。
当該外資規制の緩和及びCovid-19の終息に伴い、22年ごろから駐在員事務所の進出案件は増加傾向にあります。目的としては、タイに駐在員事務所を設立し、タイのみに限らず、ASEAN他国においても市場調査などを行うことを目的とし、インフラや、日本人の住みやすさ、物価などが考慮され、タイに駐在員事務所をたてる企業が増えてきております。なお、駐在員事務所の事業範囲は認可されたものに限られるため、それ以外の営利活動を行った場合には、PE認定され、法人所得税が課税されるリスクがあります。また、駐在員事務所は納税額がなくても法人の納税者番号を取得し、決算書を作成の上、確定申告書を税務署に提出しなければなりませんので、注意が必要です。
3.支店
支店とは、主に本店から遠隔にある地域において、本店と同様の営業展開をするために必要に応じて設置された事務所であり、営業活動が可能な進出形態である点が、駐在員事務所と異なります。外国企業の支店が事業の認可を受けるには、活動資金として最低300万バーツをタイ国内に持込むことが必要となります。また、外国人事業法による制限があり、銀行等の金融業以外の設置が認められるケースが少ないのが現状です。その他、建設業でプロジェクトごとのジョイント・ベンチャー(JV:Joint Venture)による進出の場合、支店を設置するケースが認められています。
その上、支店の税務、法務などの責任がタイと日本の両国にまたがり複雑です。外国企業の本社がタイ国内から直接収入を得た場合は、歳入局(Revenue Department)によってタイ国の課税対象であるとみなされる可能性があります。
このような法的責任が本社へ及ぶリスクがある点がデメリットとしてあげられるため、他国と比べタイでの支店の進出はあまり使用されません。
4.その他の事業形態
タイに進出する場合は、ほとんどの企業が現地法人を設立する、あるいは駐在員事務所を設立することになりますが、民商法典ではその他の事業形態も認めていますので、参考に記載していきます。
■ 個人事業
個人事業(Sole Proprietorship)とは、一人の個人が所有する企業で、法人格のない事業体を指します。タイでは、日本人名義での個人事業は認められていません。従って、個人事業形態で進出する場合、信頼できるタイ人の友人や、タイ人配偶者名義で事業を行うことになります。ただし、個人と企業が同一視される可能性があるため、事業主のすべての事業用及び個人用の資産は、その事業に関連して、差押さえなどの法的行為の対象となる可能性があるため留意が必要です。
■ パートナーシップ
パートナーシップ(Partnership)とは、「利益を得る目的で2人あ るいはそれ以上の人が結合し、共同事業体を形成するための契約であ る」と定義されています。日本の持分会社に近いイメージです。
・普通パートナーシップ(RegisteredOrdinaryPartnership)
・有限パートナーシップ(LimitedPartnership)
普通パートナーシップとは、すべてのパートナーが無限責任(パー トナーの責任が出資額に限定されない)を負う形態です。商務省に登 記することにより、構成員たる各パートナーとは別の分離した法人格 を持ちます。日本で言う合名会社に近い企業形態です。 無限責任が前提であることから、日本で合名会社がほとんど利用さ れていないのと同様に、タイでもほとんど利用されていません。 有限パートナーシップとは、無限責任パートナーと有限責任パー トナー(パートナーの責任が出資額に限定される)で構成されます。 「有限(Limited)」とあるので、パートナーすべてが有限責任のよう な印象がありますが、日本の合資会社に近い形態です。法律上は、登 記が完了するまで普通パートナーシップとみなされ、すべてのパート ナーは無限責任を負わなければならないというリスクがあります。 2008年7月1日より株式会社設立の発起人が7名から3名に緩和 されたため、有限パートナーシップ設立のメリットはほぼなくなり、 近年ではあまり利用されていません。
■ 非登記普通パートナーシップ
非登記普通パートナーシップ(Unregistered Ordinary Partnership) とは、登記していないため法人格を有さず、パートナー間の契約は私 的なものとなるため、すべてのパートナーがすべての債務に対し連帯 して無限責任を持つ形態と定められています。
■ ジョイント・ベンチャー
ジョイント・ベンチャー(JV)は、一般的に特定の事業を実行す るために、複数の企業が自社の得意分野である技術力や営業力、ブラ ンドなどを持ち寄って作られる企業のことをいい、民商法典においてジ ョイント・ベンチャーはまだ法人としては認められていません。 しかし、内国歳入法のもとでは、法人格がなくても会社同様に課税されるため、法的に完全に否定されている訳ではありません。 また、ジョイント・ベンチャーは、双方の合意契約のもと、プロジ ェクト単位で事業を展開する場合などに利用され、片方が外国企業の 場合、プロジェクト期間中は一時的に支店を登録して活動します。
■Latest News & Updates
【駐在員事務所設立について】
2017年6月9日の公示・施行により、外国人事業法(FBA:Foreign Business Act)の規制業種から、外国法人の駐在員事務所が外国人事業法の対象から外れることが決まり、外国人事業許可書(FBL:Foreign Business License)の取得が不要となりました。
省令前においては、FBL取得に際し3カ月以上の期間と、親会社の資本金の0.5%(最高で25万バーツ)の手数料がかかっていました。また、最低300万バーツ以上の事務所経費の持ち込みが条件として規定されており、当該経費は3年以内に全て持ち込まなければなりませんでした。
しかし、省令により、駐在員事務所設立においてはFBL取得が不要となったため、商務省へ必要書類を提出するだけで、企業登録番号(TAX IDと同じ)の取得ができるようになりました。また、書類等に不備がなければ、即日発行も可能となっています。なお、企業登録番号証明書の申請・発行手数料はかかりません。FBLの取得のために最低300万バーツ以上の事務所経費の持ち込みも不要となりましたが、駐在員事務所へ、200万バーツの資本金相当の送金が必要となっております。(外国人事業法14条により)
投資規制
■投資規制
タイでは、自国資本の保護・育成のために、外国人事業法(Foreign Business Act :FBA)による規制があります。
タイ政府は、外資誘致政策と自国資本保護政策の相反する2つの目的を「投資奨励法」と「外国人事業法」の2つの法律を使い分けることで実現し、自国の経済発展を促しています。
■外国人事業法による外資規制
■外国人事業法
外国人事業法は、1972年に軍事政権下で外国人の営む事業を規制する目的で制定されましたが、
外国の資本・技術の導入を促進すべく1999年に抜本的に改正され、2000年3月から施行されました。
外国人事業法は、タイへ進出する際の出資比率に大きな影響を与えるため非常に重要な法律です。
同法では、規制業種を3種43業種に分け、それらの業種に対する「外国人4 4 4 」(外国人の定義は後述参照)の参入を規制しています。
■規制対象業種
上述のとおり、外国人事業法においては、規制業種を第1種、第2種、第3種の3つのグループに分けています。
製造業は基本的に規制の対象とはなりませんが、サービス業については、第3種のリストにおいて「その他のサービス業」とされていることから、
すべてのサービス業が同法の規制対象になります。これは 現地法人の場合だけではなく、支店、駐在員事務所にも適用されます。
タイで行おうとする事業が規制業種に該当する場合は、外国資本50%以上では、原則として事業を行うことはできません。
ただし、第2種、第3種に該当する場合には、商務省(MOC:Ministry of Commerce)の外国人事業許可証を取得するか、
タイ投資委員会 (BOI)の認可を取得すれば、外国資本50%以上の会社を設立するこ とも可能です。
詳細は以下の通りです。
[外国人事業法における規制業種]
第1種
第1種は、特別な理由により「外国人」に対し禁止された業種となっており、原則として「外国人」が参入することはできません。
・新聞事業、ラジオ放送局事業、テレビジョン放送局事業
・畜産
・稲作、畑作、園芸
・営林および自然林の木材加工
・タイ国の領海および経済水域における漁業
・タイ薬草の加工
・タイ国の古美術品またはタイ国の歴史的価値のあるものの販売
および競売
・仏像および鉢の製造
・土地取引
第2種
第2種は、国の安全または保安に関する事業または、タイの伝統文化、工芸、自然遺産、環境に影響を及ぼす業種です。
これらは外国事業委員会の承認を伴う商務大臣の許可、またはBOIの許可を取得すれば「外国人」が事業を行うことができるとされていますが、参入障壁は高いといえます。
国家の安全、安定に関する業種
・以下の製造、販売及び修理
・銃、銃弾、火薬、爆発物
・銃、銃弾、爆発物の部分品
・戦闘用の武器、軍用航空機及び車両
・各種戦場用機器、部分品
・国内における陸上、海上、航空機輸送並びに国内航空業
芸術、伝統、工芸に影響を与える業種
・タイ国の芸術、工芸品の取引
・木製彫刻の製造
・養蚕、タイシルクの製造、タイシルクの織物またはタイシルク布の捺染
・タイ楽器の製造
・金製品、銀製品、細工品、象眼金製品、漆器の製造
・タイの伝統工芸である椀、皿または陶磁器の製造
天然資源または環境に影響を与える業種
・サトウキビからの製糖
・塩田での製塩
・岩塩からの製塩
・爆破、砕石を含む鉱業
・家具、道具を製造するための木材加工
第3種
第3種は「外国人」との競争力がまだついていない業種で、外国人事業委員会の承認を受け事業開発局の局長より認可を受けるか、
BOIの奨励を受けることで、「外国人」が事業を行うことができます。
・精米、米及び穀物からの製粉
・養魚
・植林
・合板、ベ二ヤ板、チップボード、ハードボードの製造
・石灰の製造
・会計事務所
・法律事務所
・建築事務所
・技術事務所
・建設(以下を除く)
- 外国人の最低資本金額が5億バーツ以上で、特別の機器、機械、技術、専門性を要するもので、公共施設または通信運輸に関する国民に基礎的なサービスを提供する建設業
- 省令で定めるその他の建設業
・仲介業、代理業(以下を除く)
- 証券売買仲介、代理業。農産物または金融証券の先物取引
- 同一企業内における製造に必要な売買、商品発掘の仲介、代理、または、製造に必要なサービス、技術サービス
- 外国人の最低資本金額が1億バーツで、タイ国内で製造されたか外国から輸入された製品を売買するための仲介または代理業、国内、国外の市場開拓、販売業
- 省令で定めるその他の仲介、代理業
・競売業(以下を除く)
- タイの美術、工芸、遺物で、タイ国の歴史的価値のある古物、古美術品、または美術品の国際的入札による競売
- 省令で定めるその他の競売
・法律で禁止されていない地場農産物の国内取引
・すべてを含む最低資本金額が1億バーツ未満、または1店舗当たりの最低資本金額が2,000万バーツ未満の全種類の小売業
・1店舗当たりの最低資本金額が1億バーツ未満の全商品の卸売業
・広告業
・ホテル業(ホテルに対するサービスを除く)
・観光業
・飲食店
・種苗、育種業
・その他のサービス業(省令で定める業種を除く)
■規制対象となる「外国人」の定義
規制の対象になる「外国人」の定義を理解することが一番重要になります。
外国人事業法では「外国人(コン・ターンダーオ)」の定義を以下のように規定しています(外国人事業法4条)。
・タイ国籍を有していない自然人………………………………①
・タイ国内で登記していない法人………………………………②
・タイ国内で登記している法人であるが、以下の形態に該当するもの…………………………………………………③
- ①または②に該当する者が、資本である株式を半数以上保有する法人、あるいは①または②に該当する者が、全資本の半分以上を投資した法人
- ①に該当する者が業務執行社員または支配人として登録された合資会社または合名会社
・ ①②または③に該当する者がタイ国内で登記し、資本である株式を半数以上保有する法人、あるいは①②または③に該当する者が全資本の半分以上を投資した法人………………④
つまり、総資本のうち50%以上を外国資本が占める場合は、「外国法人」とみなされます。
一方、タイ51%、日本49%の出資比率で合弁企業を設立した場合は「タイ法人」となり、「外国法人」に該当しないため、外国人事業法の規制を受けることはありません。
タイで展開する予定の事業が規制業種に該当する場合、50%以上の出資形態で進出する場合には当該規制を受けることになるため、
事前のチェックが必要になります。また、規制業種のほとんどは製造業以外の業種ですので、製造業以外で進出をする場合には、特に慎重に検討しなければなりません。
■資本金に関する規制
外国人事業法では、外国企業が上述の規制業種に対する特別の認可を取得して事業を行う場合は、原則として最低資本金は300万バーツ以上が必要です。
ただし、規制業種に該当しない場合で外国企業の最低資本金は200万バーツ以上となっています。
また、外国法人、タイ法人問わずに外国人1人の労働許可を取得するには200万バーツが必要となります。
なお、BOIの奨励を受ける法人に関しては別途最低資本金の要件が加わり、土地代、運転資金を除き100万バーツが必要となります。
■土地所有に関する規制
土地法(1954年制定、1999年・2008年改正)では、外国人もしくは外国法人(外国人が資本金の49%超を有する場合または外国人株主が半数を超える場合)が、土地を所有することを原則として禁止しています。
ただし、後述するBOI奨励企業や、タイ国工業団地公社(IEAT:Industrial Estate Authority of Thailand)認定の工業団地に立地する企業の場合は、外資比率にかかわらず土地取得が可能となります。なお、1999年改正により、外国人が4,000万バーツ以上を外国から投資した場合、1ライ(1,600m2=約485坪)以下ならば住居用の土地を所有できるようになりました。このように、徐々に規制緩和されていますが、依然として外国資本による土地所有の規制は厳しいのが実状です。
なお、留意点としては、タイ法人として設立した場合だとしても、土地法は外資規制より、実態がタイ法人としてみなされるかの調査が入ります。主な調査項目としては、取締役(Director)のタイ人と外国人の比率(過半数以上がタイ人となっているか)、また実際の株主となっている企業の株主などに対しての調査が入ることがあるため、土地の取得を目的とした法人を設立する場合、より注意が必要となります。
■工場法による規制
工場法(1969年制定、1975年・1979年・1992年改正)の目的は、労働者の安全の確保と公害の防止であり、概ね50馬力以上の動力源を使用する工場はこの法律の規制対象となり、操業前に許可証(有効期間5年)を取得する必要があります。
一般的に工場新設の際には、建築業者が許可取得手続を代行していますが、その代行業者がしっかりと許可を取得しているかどうかを確認する必要があります。また工場内での設備の変更、拡張をする場合にも許可申請が必要になります。
■ 外国人の就業規制
■外国人の就業規制
外国人就労法(Working of Aliens Act 1978年制定、2008年改正)は、タイで外国人の就労が禁止される39業種を定め、また外国人の労働許可証(ワークパーミット)取得の際の根拠法になっています。また近年、近隣各国からの労働者の増加により、不法就労などの問題が起こっており、そのような外国人労働者の取り締まりの強化を目的として制定されています。
■現地人の雇用義務
タイで現地法人を設立し、外国人が労働許可証を取得するためには、外国人1名に対し、タイ人4名を雇用することが義務付けられています。
従来は、規定だけがあり実務上の運用はさほど厳しくはありませんでしたが、近年になってオフィスのデスクの数や従業員名簿などを抜打ち調査されるような例もでています。
小規模で運営する会社の場合には、タイ人4名を雇用することは難しい場合が多いため、対応策として、秘書、メイド、運転手、メッセンジャーボーイなどを正社員として雇用することで当該規制の回避を行っている企業もあります。
一方で、BOIの奨励業種やIEATの工業団地において事業を行う場合には、外国人の労働許可証の取得要件が緩和されています。
■外国為替管理法等による規制
■ 外国為替管理の法的根拠
タイでは1942年 外国為替管理法(Exchange Control Act.B.E.2485)と1954年財務省省令(Ministerial Regulations No.13 B.E. 2497)、中央銀行通達などにより規制を設けています。
■ 貿易取引
決済方法として、前払い送金、輸入信用状、取立手形(D/P、D/A)、後払いという方法があり、受取、支払ともに決済通貨は指定されていません。
[輸出]
外貨建の5万USドル相当以上の輸出については、輸出者は外貨受取後すぐ、もしくは輸出日から360日以内に決済することが義務付けられており、居住者は、輸出及びその他取引によって外貨を取得した場合、外貨の取得後360日以内に、外貨を売却するか、外貨預金に入金しなければいけません。
受取金額が1件50万バーツ相当額以上の外貨建輸出を行う場合は、輸出者は税関に所定の届出を行う必要があります。
[輸入]
輸入者は実需を証明できる書類があれば、外貨を自由に購入し、または外貨預金から自由に引き出し送金できます。
■ 貿易外取引
タイへの送金(受取)の場合、バーツでの送金であれば制限はありません。外貨での受取が5,000USドル以上で、それが輸出代金の受取でない場合は、為替銀行経由でタイ中央銀行に報告する必要があります。
タイから外国への送金(支払)は、バーツ、外貨建を問わず原則自由です。ただし、外貨での送金額が5万USドル以上で、それが輸入代金の支払でない場合は、為替銀行経由でタイ中央銀行に報告する必要があります。
[資本取引]
タイ国内企業への直接投資、間接投資、タイの子会社への貸付は原則自由です。直接投資資金の証拠書類があれば、外国からの回収、貸付金の回収、利息、利益の回収が自由にできます。ただし、外貨建で5万USドルを超える場合は、為替銀行経由で中央銀行へ報告する必要があります。
タイ国内から外国企業へ直接投資をする場合、外国企業の持分を10%以上保有していれば投資額の上限はありません。また、海外グループ会社への直接投資と貸付についての規制はありません。海外グループ会社以外への貸付については、年間で5,000万USドルまでの貸付に対してはタイ中央銀行からの認可が必要ありません。
なお、上記の投資、貸付については、ベトナ.やタイ近隣諸国の一部との取引を除き、原則外貨での取引に限定されています。
■ 外貨の受入
外貨の受入は自由ですが、3カ月以内で滞在する旅客、大使館、国際機関を除いて、360日以内に外国為替銀行に売却するか、外貨預金に預け入れなければなりません。
■ 外貨預金
居住者は、タイ国内の外国為替銀行に外貨預金口座を開設することができ、入金の原資についても、外国から受領したものの他、国内で保有しているバーツに関しても実需取引が証明できればバーツから外貨に交換して充てることができます。
非居住者についてもタイ国内の外国為替銀行に外貨預金口座を開設することができます。ただし、タイ国内からの入金や、国内銀行からの借入等については実需を示す書類の提出等を行う必要があります。
投資インセンティブ
■投資インセンティブ
タイには、投資促進のためにいくつかの投資インセンティブがあります。代表的なものとしては、投資奨励法(Investment Promotion Act)に基づくタイ投資奨励委員会(BOI)によるインセンティブと、タイ国工業団地公社法(Industrial Estate Authority of Thailand Act)に基づくタイ国工業団地公社(IEAT)によるインセンティブがあります。
法人税の減税や関税の減免といった税制面のインセンティブの他、外資には通常認められていない土地の取得が可能になる等の多くのメリットがあるため、タイへ進出する場合は、これらの優遇措置を利用するかどうかを検討する必要があります。
■新投資奨励策
新投資奨励策導入
新投資奨励策では投資奨励業種の数を減らしています。従来まで対象としていた奨励業種の中から、「タイの経済構造改革にとって非常に重要な業種」に絞り込んだ形となっています。
奨励される分野としては従来と変わらず農業および農産品、製造業、鉱山、セラミックス、基本金属、軽工業品、金属製品、機械、運輸機器、電子・電気機器、化学工業、製紙およびプラスチック、サービス、公共事業となりますが、これらの分野の中でも奨励対象から除外される業種が多数あることに注意が必要です。
具体的に新投資奨励案で新たに加わった対象業種および対象から外された業種は以下のとおりです。
■ゾーン別の恩典制度の廃止
従来のBOIの税制上の奨励策は、全国を3ゾーンに分けて、ゾーン ごとに奨励策が定められていました。しかし、新投資奨励策(2015~2021年)ではこのゾーン制が廃止され、業種により恩典内容を 変える方法への変更がなされています。
■奨励業種の絞り込み
新投資奨励策では投資奨励業種の数を減らしています。従来まで対象としていた奨励業種の中から、「タイの経済構造改革にとって非常に重要な業種」に絞り込んだ形となっています。 奨励される分野としては従来と変わらず農業および農産品、製造 業、鉱山、セラミックス、基本金属、軽工業品、金属製品、機械、運 輸機器、電子・電気機器、化学工業、製紙およびプラスチック、サー ビス、公共事業となりますが、これらの分野の中でも奨励対象から除外される業種が多数あることに注意が必要です。
具体的に新投資奨励案で新たに加わった対象業種および対象から外された業種は以下のとおりです。
タイでのビジネスを検討している日系企業および外国企業は、自社の事業が今後奨励業種に該当するのかどうか、また、奨励業種に該当する場合にどの程度の恩典が得られるかについて注視する必要があります。
■BOIとIEATの主な違い
前述の通り、大きくBOIとIEATによる投資インセンティブがありますが、これらのインセンティブを利用することによるメリットと留意点をまとめると以下のようになります。
[メリット①外資の出資割合]
タイに販売会社やサービス業の会社を設立する場合は、外国人事 業法の規制により、外国資本の出資割合が50%未満に制限されます。 しかしBOIの奨励を受けることができれば、ほとんどのケースで外国資本100%での参入が認められます。
[メリット②土地の取得]
タイでは、土地法の規制により外国資本49%超の会社が土地を取得することはできません。しかし、BOIもしくはIEATの認可を得ることができれば、外国資本49%超の会社であっても土地を取得することができます。
[メリット③~⑤税制面での優遇]
BOIの認可を取得できれば、法人税や関税についての減免を受けることができます。また、IEAT管轄の工業団地(フリーゾーンに限る)に進出した場合には、関税面での恩典を受けることができます。
[留意点①利用できる業種の範囲]
BOIの奨励は、タイ国にとってメリットがある事業に対して認可されます。従って、新技術の導入や雇用の拡大、外貨の獲得などの趣旨に適う事業である必要があります。
[留意点②報告義務の増加等によるコスト増]
BOIの奨励を受ける場合は、上述の通り多くのメリットがありますが、一方では管理コストを増加させるというデメリットがあります。たとえば、通常の決算であれば財務諸表を作成すればよいのですが、BOI認可を受けた企業は生産報告書などを作成した上で、事業が当初の計画通り適切に運営され管理されているかのチェックを受けなければなりません。その分、管理コストが上昇することになります。
これらの優遇措置の活用は、投資回収期間の短縮による投資リスクの低減のみならず、タイで事業展開するための事業活動環境の整備に大いに役立つ一方、管理コストの上昇というデメリットもありますので、進出の際には、必ずこれらのインセンティブの効果を検討する必要があります。ここでは、BOIとIEATの奨励を受けるための要件及び恩典の内容について記述します。それぞれの申請手続については後述します。
■BOIによる投資奨励政策
■投資奨励法とは
投資奨励法(1977年制定、1991年・2001年・2017年改正)は、タイの産業振興を目的とするもので、新規事業を奨励しており、条件を満たす投資について恩典を付与しています。恩典には税制上の恩典のほか、事業立ち上げの際の土地の所有、外国人労働許可等の便宜供与も含まれています。
外資企業による新規事業の立ち上げに限らず、国内企業の新規事業にも平等に適用されますが、奨励対象は法人に限定されています。また、奨励を受けるためには、BOIへ申請を行い、審査を受けた後、認可を取得しなければなりません。
投資奨励法の条件に適合していれば、さまざまな恩典(税制面及び非税制面)を享受できるため、多くの外国企業がまずBOIに投資奨励申請を行います。外資が50%以上の資本を保有する場合、特定の業種については外国人事業法による参入規制、事業規制の対象となりますが、BOIが認可する事業については規制外となり、外資100%での進出が認められるというのも大きなメリットとなります。
このBOI恩典の内容は、IEATの運営する工業団地であるか、BOIの認可を受けた民間が運営する工業団地であるか、あるいはいずれの認定も受けていない工業団地に進出するか否かにより程度が大きく変化します。特に、タイ政府は公害など工場が近隣住民へ及ぼす影響を考慮し、工業団地内での操業を奨励しているため、工業団地外で操業する場合、恩典は極めて薄いものとしています。そのため、後述する個々の詳細を吟味し、うまく投資奨励を利用する方法を考える必要があります。
■BOI(タイ投資奨励委員会)の概要
投資奨励法の実施を担当しているのが、タイ投資奨励委員会(BOI)です。BOIは、タイへの投資を促進するためのインセンティブを提供する政府機関で、首相を委員長とし、工業大臣が副委員長、ほかに経済関係閣僚とタイ工業連盟、主要民間団体等の代表、顧問委員で構成されています。
BOIは、投資奨励法に基づく奨励対象業種、投資条件、恩典の決定・変更を行い、BOIの実働組織である投資委員会事務局(Office of the Board of Investment)がBOIの決定事項を具体的に執行し、投資案件を委員会、小委員会へ提案するための事前審査、認可事業の指導、監督、投資環境の調査、普及、内外の投資誘致活動、認可事業、これからタイヘ進出する企業への支援活動など、幅広い活動を行っています。
■対象業種
2023年1月現在、投資奨励の対象となる業種は10類409業種です。対象業種と業種数については以下の通りです。
■BOIによる奨励を受けるための要件
BOIの恩典を受けるための要件は、3つの観点から以下のように定められています。
タイでは、過少資本税制はありませんが、BOIの認可事業については、「最低投資金額及びプロジェクト可能性の観点」の2にあるように、借入による資金調達は、資本金の3倍の金額までしか認められていませんので、注意が必要です。
■BOIによる優遇措置の内容
優遇措置の内容は、大きく税制面のものと非税制面のものに分けられます。
なお、旧制度では業種ではなく、以下のようにゾーンによって恩典内容が異なっていました。
■IEAT(タイ国工業団地公社)の概要
■タイ国工業団地公社とは
タイ国工業団地公社(IEAT)は、工業団地の開発に責任を持ち、工 業団地の運営を行うことでタイ全国に工業の発展を広める目的で設立 された工業省管轄機関です。 タイ国工業団地公社法に基づいて運営されている工業団地内への投 資に限り、奨励政策を実施しています。
[ワンストップ・サービス]
IEATは工業省の直轄機関として、工業省と密接な関係をもってお り、早くから工場設立許可や工場操業許可などについて本来工業省工 場局が行う一連の業務を代行するワンストップ・サービスを提供して います。
具体的には、IEATはワンストップ・サービス・センターを設置し、 土地の購入や賃貸、適切な工場建設地に関する相談、工場設立の際に 必要なさまざまな許可・認可申請、および工業団地の共同開発など、 IEATと関係するすべての手続を、ワンストップで行えるようにして います。
[一般工業区とフリーゾーン]
工業団地のエリアは、一般工業区(GIZ:General Industrial Zone)とフリーゾーン(IEAT Free Zone)の2種類に分けられます。
■IEATによる奨励を受けるための要件
IEATによる奨励を受けるためには、IEATの管轄する工業団地に進 出する必要があります。また、上述のとおり、IEATが管轄する工業 団地は一般工業区とフリーゾーンに分かれており、両工業区に共通す る要件のほか、フリーゾーンへの進出に関しては個別の要件が存在し ます。
■IEATによる優遇措置の内容
IEATの管轄する工業団地に進出すると、BOIによる認可取得の有 無に関係なく、進出企業はIEATからの恩典を享受できます。また、 一般工業区とフリーゾーンの両方に認められる恩典のほか、各工業区 にそれぞれ異なる恩典があります。
フリーゾーンにある事業者にはIEATより権利、恩典を与えられ、関税、付加価値税、および物品税などの免税措置を受けることが認められています。
フリーゾーンの所在地を例として挙げると、ナワナコーン工業団地、ポートートー・シーラチャ県、サンティ林、アマタナコン工業団地、イスターンシーボード工業団地、ハイテック(バーンワー)工業団地などがあります。
当該工業団地における恩典の詳細は以下のとおりです。
2016年6月17日に財務省より新たな税関通達により、フリーゾーンに立地する企業がフリーゾーン内で製造・加工した製品をタイ国内向けに販売する場合で、出荷額に占めるタイでの付加価値分(原産率)が40%を超える場合は国内搬入の際の関税が0%となります。また、タイでの付加価値に、他のASEAN諸国の原産材料・部品の価値を加算することも可能となりますが、ASEAN域外から調達した材料は、たとえタイが自由貿易協定(FTA)を締結している国からであっても非原産扱いとなります。
[IEAT工業団地進出時に留意する点]
IEATの申請を行う企業は、BOIへの投資奨励申請も併せて行うのが 一般的です。BOIの認可を受けると、外国人事業法による出資比率の制 限が免除されることや、当該工業団地に進出する企業が同時にBOIによ る奨励業種にも適合している業種の場合、より多くの恩典を享受できる などのメリットがあることから、進出申請を行うと同時に、BOIにも投 資奨励申請をするほうが望ましいです。
事業形態ごとに見る進出スキームの検討
■事業形態ごとに見る進出スキームの検討
前述したように、外国企業がタイで事業を行う場合、外国人事業法 による規制業種、タイ投資委員会(BOI)の投資奨励法による奨励や 恩典、タイ国工業団地公社(IEAT)による恩典の取得可否などを考 慮し、進出形態を検討する必要があります。「製造業」と「非製造業」 とでは検討事項や留意事項が異なるので、具体的なケースを想定し て、進出形態の選択方法を確認していきます。
■製造会社を設立する方法
製造業が進出する場合、原則として外国人事業法の規制対象とはな りません。したがって、ほとんどのケースで100%外国資本の現地 法人を設立することが可能です。販売会社やその他のサービス業のよ うに出資構成について特に留意する必要はありません。 製造業の場合には、BOIの優遇措置を利用するか否かを検討する必 要があります。
■BOIの優遇措置を利用する場合…❶
多くの場合、BOIの投資奨励法による法人所得税の免税、機械輸入 関税の免税、原材料の輸入関税の免税などの恩典をどのように取得す るかが検討事項として挙がります(優遇措置の内容は前記参照)。 BOIの認可を受けるためには、雇用拡大、技術移転など、タイにメ リットがある事業であるかどうかが最も重要な審査基準となります。 そのほか、付加価値率が20%以上であるといった外形的な要件を満 たすことも要求されます(BOI認可取得の要件は前記参照)。
BOIの申請時には、3年間の詳細な事業計画の提出が求められます。 搬入予定の機械、人員、取引先の確保など含めた事業計画を作成する 必要があります。
[工場の立地]
取引先との距離や主要交通機関(空港、港など)との距離を考慮し て工場の場所を決定する必要があります。 内需型の事業であれば、バンコク周辺や主要取引先の近く、輸出型 の事業であれば、スワンナプーム空港やレムチャバン港の近隣や、高 速道路へのアクセスが便利なバンコク南東部の工業団地を検討する傾 向があります。また、工業団地検討の際には、地盤や土地の状況の 他、物流、価格、サプライヤーや労働力確保など多面的な検討が必要 となります。最近では、2011年に起こった大洪水を考慮し、洪水被 害の可能性の少ない地域を検討する企業が増えています。
しかし、こういった人気のある地域の工業団地の物件はすぐに完売 となり、希望する立地条件に合致した場所を確保することが困難になってきています。また、分譲価格の上昇や人材の不足などの問題も起 きていますので、事前に最新の状況を確認することをお勧めします。
工業団地検討の際には、地盤や土地の状況の他、物流、価格、サプライヤーや労働力確保など多面的な検討が必要となります。
■IEATが管理する工業団地に進出する場合…❷
BOIの優遇措置を利用しない企業もあります。その場合、IEATが 管轄する工業団地に進出するか、しない場合は、恩典等をまったく受 けずに事業を営むことになります。BOI奨励事業会社は、BOIに対し て毎年の報告義務があるため、管理が煩雑になりやすいことから、比 較的小規模な会社はあえてBOI申請しないケースもあります。
BOIの奨励を受けない場合であっても、IEATの工業団地に進出す れば、外国人労働許可の取得や土地の取得が可能になるなど、非税制 面での恩典を受けることができます。 IEAT管理のフリーゾーンに進出する場合には、関税などの税制面 での恩典を受けることができます。
■BOI、IEATのいずれの認可も受けない場合…❸
BOIの奨励を受けず、かつIEAT管理の工業団地に進出しない場合には、民間が運営する工業団地に進出することになります。優遇措置がないだけでなく、設備などインフラレベルもIEATが管理する工業団地と比べて劣るというデメリットがありますが、その一方で、BOIの奨励を受けた企業に比べ、設立時の各種申請手続や毎年の報告義務が少なくなるため、管理コストを削減できます。加えて、労働者の確保が容易になるというメリットもあります。
■販売会社(卸売、小売)を設立する方法
次に販売会社を設立する場合を検討します。
ここでは有形の物品を販売する卸売業と小売業を「販売会社」とします。広告やサービス業など、物品の販売以外のサービス業について は、「販売会社以外のサービス会社を設立する方法」を参照してください。
販売会社は、外国人事業法の規制対象業種になっていますが、最低資本金1億バーツ以上を出資すれば、外資100%会社を設立することが可能です。
上記の最低資本金の要件を満たせない場合でも、外国人事業許可を取得する、もしくはBOIの認可を取得することができれば、外資 100%会社を設立することができます。
■資本金1億バーツ以上の外資100%会社を設立する方法…❶
資本金1億バーツ以上を出資すれば、外国人事業法の規制の対象とはならないため、外資100%出資の会社を設立することができます。
ここで言う資本金については、「登録資本」であるか「実際の払い込み資本」であるか議論がされていましたが、事業開発局は「実際に払い込まれている必要がある」と、明確な見解を示しています。 また、卸売業と小売業を同時に行う場合には、資本金2億バーツ以上の払い込みが必要であると解釈されています。
通常の会社設立手続のみで事業を開始できるため、下記のその他の方法に比べて簡便です。
■外国人事業許可を取得して外資100%会社を設立する方法…❷
❶の資本金要件を満たせない場合でも、外国人事業許可を取得すれば、外資100%会社を設立することができます。 ただし、外国人事業許可は実務上取得が難しいといわれています。外国人事業許可を取得するためには、タイの国益になること、既存の国内企業の利益を毀損しないこと、雇用創出、技術革新、タイ国内の 外資企業向けあるいは海外向け事業であること、などの点で審査基準をクリアする必要があります。 外国人事業許可の取得手続は後述します。
■BOIの認可を取得して外資100%会社を設立する方法…❸
商社等の卸売事業を行う事業者のために、BOIは2018年末までITCとい国際貿易センター (ITC:International Trading Center)という制度に対して、許可を出しておりましたが、現在新規発行は廃止されております。
現在、商社等の卸売業を外資100%で行うことができるBOIライセンスとしては、国際ビジネスセンターIBC(International Business Center)及び、国際調達事務所IPO(International Procurement Office)の使用を許可しています。
IBC[国際ビジネスセンターとは]
国際ビジネスセンターは、IHQ,ITCといった地域統括会社機能をもつIHQ,
国際貿易センターとして、商社機能を持つ、ITCが2018年末で申請不可となり、2つのライセンスを統合した形で1つのライセンスとして発行されるようになりました。
IBCの詳細は下記の通りとなります。
◇条件
事業範囲
<IHQ事業>
タイ国外の最低1社の関連会社に対し、役務の提供を行う。
(例:管理サポート、研究開発や研修、財務アドバイス、市場調査)
※関連会社とは、25%以上の株式を直接、間接的に保有していることを定義する。
<ITC事業>
三国間貿易、輸入、輸出、国内卸取引を行う。
*IBCでは、IHQ業務とITC業務を行うことができるが、ITC業務を希望する場合、IHQ事業のうち、最低 1つの業務を必ず行う必要がある。
資本金
1,000万THB以上
従業員
3年以内にIBC事業下で勤務する従業員 10 名以上の雇用が必要。
(金融サービスを行う場合は、従業員5名以上)
※10人の中には、外国人、タイ人が含まれているが、外国人だけというのが原則許可されていません。
経費
歳入局の恩典を取得したいようであれば、IBC事業にかかる経費(従業員給与等)が6,0000万THB以上。
*歳入局の恩典を取得しない場合、経費の制限はなし。
◇恩典(BOI恩典)
外国人就労
IBC事業下の外国人従業員に対し、ビザ延長、労働許可証(WP)の取得の簡易化
土地所有
土地所有可能
機械輸入税
研究開発および研修用の機械の輸入関税の免除
※輸出用製品製造のための原材料の輸入関税は免税対象外となる。
◇恩典(歳入局恩典)
法人所得税
IBC の業務に必要な経費の支出額により、
以下の通り、法人所得税の軽減税率が適用される。
・6,000 万バーツ以上の場合:8%
・3 億バーツ以上の場合:5%
・6 億バーツ以上の場合:3%
源泉所得税
タイ国外の関係会社に支払う配当金、および借入利息の源泉税を免除
特定事業税
関係会社からの受取利息に対する特定事業税を免除
個人所得税
IBC 事業下の外国人社員の個人所得税を15%に軽減
IPO[国際調達事務所とは]
国際調達事務所は、タイの投資奨励委員会(BOI)が、約3年前ITCなどのライセンス(現在は、ITCは廃止)が使用される前に運用されていたIPOを再度、認可する正式決定を行い、2021年1月にIPOの詳細が開示されました。2014年に一度、IPOに対する新規ライセンスの発行が停止され、
ITC(国際貿易センター)の発行が開始されましたが、OECDより移転価格などの指摘を受け、現在、ITCはIHQ(地域統括センター)と統合され、上記で記載したようにIBC(国際ビジネスセンター)とされ運用をされています。ただ、このIBC,当時のITCやIHQの認可と比べ、従業員の雇用規制(3年以内に10人以上)などの要件や、必ず地域統括機能(貿易センターのみの機能では不可)を持たなければならないなどの要件が、加わったため、申請数は思ったより、伸びていないのが現状となっており、申請をしている日系企業もITCが承認されていた時と比べ、格段に少なくなっていました。ただ、タイ政府としては、国際的な貿易センターをタイに増やしていきたい意向もあり、2021年より再度、IPOが認可された流れとなります。
IPOの事業内容、また主な認可要件は下記の通りとなります。
・資本金:1千万THB以上
・自社倉庫又はレンタル倉庫、在庫管理に特化したITシステムの保有
・適切な製品調達活動および製品管理活動(品質検査、製品梱包など)
・タイ国内を含む複数の調達先(国内調達比率制限なし)
・国内の卸販売および/または輸出を行うこと(三国間貿易は不可)
となります。
ITCとの主な違いは、三国間貿易が行えないこと、また倉庫機能を保有しないとならない、などのことが主にあげられます。
また、税務上の恩典も、関税の免税などしかなく、法人税や個人所得税に関しては付与されません。
ただ、商社機能を持つタイ法人は、ITCが廃止されてから独資で設立することはIBCの取得以外、難しい状況であったため、IPOの認可は今後日系企業のタイへの進出を促進するきっかけになるかもしれません。
認可を受けるために共通していることは、タイ企業と利益が競合しないこと、技術移転をもたらすことなどです。
したがって、タイ国内企業向けに販売するケースよりも、タイに進出している外資企業向けに販売を行うような商社の方が認可を受けやすい傾向があります。
技術移転をもたらすという点では、自社や学校などで定期的な講習を開催することなどで認可を受けることも可能です。 タイにとってメリットがあると判断されるスキームであれば、認可を積極的に活用することでビジネスを有利に進めることができます。
■販売会社以外のサービス会社を設立する方法
続いて販売会社(卸売、小売)以外のケースを考えます。 外国人事業法のリスト3には「(20)その他のサービス業」と記載 されているため、製造業以外のすべてのサービス業が外国人事業法上 の規制業種となります。したがって、サービス会社の設立は原則とし て外資50%未満出資の会社に限定されます
■外国人事業許可を取得して外資100%会社を設立する方法…❶
外国人事業法の規制業種リストでは、「外国資本が50%以上の場合 は、第2種については外国事業委員会の承認を伴う商務大臣の認可が 必要であり、さらに外国事業委員会の承認と事業開発局の局長の認可 を受ける必要がある」となっています。これは、申請すればどの業種 でも取れるというものではなく、業種によって異なる要件が定められ ているということです。
■BOIの認可を取得して外資100%会社を設立する方法…❷
BOIの認可業種は、製造業がメインですが、サービス業の中にも奨励対象業種があります。最近の事例では、コールセンターは大量の雇用を産むという点が評価され、BOIの奨励業種に加わっています。またバイオテクノロジー事業やBPO事業、研究開発なども対象に含まれつつあります。
[貿易投資支援事務所とは]
多くの日系企業がタイの工場に設備投資していますが、設備を輸入 した際の据付や保守メンテナンスサービスはハイテク企業の生産現 場では極めて重要であり、貿易投資支援事務所(TISO:Trade and Investment Support Office)がこのニーズに応える機能を果たすと 期待されています。 進出形態としては、ITCと同様に国内市場に直接参入することはな く、タイに進出した外資企業向けに、機械設備の据付・保守メンテナ ンスサービスを提供します。
TISOのメリットは外資100%会社を設立することができる点で す。ただし、要件として年間1,000万バーツ以上を事業経費として 支出しなければなりません。
■タイ企業との合弁企業を設立する方法…❸
上記のいずれの方法も採用できない場合には、タイの企業と外資マ イノリティ出資の合弁会社を設立します。これは販売会社設立の方法 と同様です。
地域統括会社を設立する方法
■地域統括会社を設立する方法
近年になって、一つの企業グループ内で多くの海外子会社を有するようになり、アジアやEU、米国などの地域ごとに統括拠点を設ける必要性が高まってきました。
アジア地域の統括拠点の設置国としてはシンガポールが断然多く、また香港がそれに続いています。これらの国に共通するのは、外資に対する規制が少なく法人税率が低い点があげられます。
現在、上述でも記載のとおり、タイに地域統括会社を設立する場合、IBCライセンスの取得が必要となります。もともと日本企業にとってタイはアジア地域の輸出拠点として活用されている面があります。製造の中心であるタイに地域統括の拠点を置くことは企業にとって一定のメリットがあるものと考えられるため、今後もタイに地域統括の拠点を置く企業は増えていくものと予想されます。
一般的に、地域統括会社を活用するに当たってのメリットは、軽課税国に設立することにより、企業グループ全体での実効税率を軽減することにあります。また為替リスクの低減、物流の効率化、資金調達の効率化などの効果もあります。
■地域統括会社の要件と恩典
タイに地域統括会社を設立するに当たっては、タイの法令により定 められた設立要件を満たす必要があります。設立要件には、提供する サービス、最低資本金、1カ国以上に対してのサービス提供等があり、 さらに特定の売上条件を満たす場合には、税制上の恩典を受けること ができます。
■恩典を受けるための要件
[地域統括会社が提供するサービス]
タイにおいて、地域統括制度の恩典を受けるためには、まず対象事 業に属しているかを確認する必要があります。詳細は以下のとおりです。
地域統括会社は上記サービスを、タイ国内外の関係会社(支店を含 む)に対して提供する必要があります。関係会社(被統括会社)は、 以下の要件を満たす会社のことを言います。
持株基準
(1)総資本の25%以上を持つ企業・パートナーシップ
(2)IHQがその総資本の25%以上を保有する、もしくはパートナーになっている企業・パートナーシップ
(3)(1)における企業・パートナーシップが、その総資本の25%以上を保有する、もしくはパートナーになっている企業・パートナーシップ
経営権基準
(1)IHQの経営を監督または管理する企業またはパートナーシップ
(2)IHQが経営を監督または管理する企業またはパートナーシップ
(3)(1)における企業またはパートナーシップが、その経営を監督または管理する企業またはパートナーシップ
■恩典の内容
上記の要件を満たす場合(新法においても旧法同様の売上条件を満たす場合)、地域統括会社は以下の恩典を受けることができます。
事業拠点の設立手続
■非公開会社の設立手続
日系企業に多い非公開会社の設立手続を説明します。非公開会社の手続の流れは以下のようになります。
■商号の予約…❶
商号の予約は、新会社の発起人によって行われなければなりませ ん。同一商号、類似商号の使用はできないため、事前に事業開発局へ 同一、類似商号がないことを確認します。 この判断には、タイ国内で登録されている会社商号すべてが対象と なり、この点において日本の商号登録と異なります。同一、類似商号 がなければ、当局に予約申請することで、新会社の商号として使用す る許可が下ります。また予約申請時には、発起人は希望している社名 のほかに2つの代替名を用意しなければならない点に留意が必要とな ります。 一般的に商号の許可がでるまでに2、3日かかります。当局に承認 された商号は使用許可から30日間有効となり、当該期間中に基本定 款の登記申請を行う必要があります。30日間の有効期間内に基本定 款を登記しない場合、商号使用の権利は消滅し、もう一度予約し直さ なければならなくなるため、注意が必要です。
[商号の決定についての留意点]
商号は英語とタイ語の併記となるため、綴りなどを確認する必要があ ります。タイ語は子音字と母音字に声調記号を組み合わせた形式で表記 され、同一の音であっても複数に綴ることが可能な場合があります。
これにより発生する問題点としては、タイに複数社の関連企業が進 出している場合、タイ語表記の商号が関連企業間で異なってしまうこ とが挙げられます。また、タイ語表記は原則として英語商号をタイ語 読みして表記するため、英語表記では発音可能であってもタイ語で表 記できない場合があります。この場合、登記官から予約を拒否される 可能性があるため、タイ語表記ができる綴りに変更し、予約申請をす るのがよいでしょう。ただし、当該措置により必ずしも申請が通ると いうわけではないので、事前に登記官に確認してもらうほうが望まし いです。 商号には「Company Limited (Co.,Ltd.)」や「Limited(Ltd.)」、 公開株式会社の場合は、「Public Company Limited」を末尾につけ なければいけません。また、商号の中に「Thailand」を使用する際 は、名称末尾の括弧内に「Thailand」を記載する必要があります。 なお、王室関連の名称、政府関連の名称、国際機関の名称、その他指 定される名称(ASEAN等)の使用は禁止されています。
[発起人について]
商務省(MOC)に会社を登録する者は会社の発起人で、登記の際に書類に署名できる20歳以上の自然人(法人以外)でなければならないと定義されています。国籍は特段問いません。
また、発起人の数は非公開会社の場合2名以上(上述で記載の通り、2023年に法改正があり、それまでは3名上となっていました)となっており、それぞれ会社登記の直後に会社の最初の株主になり、最低1株を持たなければなりませんが、その後他の株主または第三者に譲渡することができます。また、発起人になる者がタイに居住している必要もありません。
実務としては、設立時に、株主引受人に法人が入ってる場合、申請資料に法人の資料等も必要となるため、発起人が100%設立時のみ一旦株を引き受け、設立後、法人に譲渡するような方法も使用されます。
発起人に係る法的責任
発起人に係る法的責任には、登記に係る費用負担責任と株式への有限責任があります。ただし、前者の責任については、創立総会で認め た場合には、登記後、会社から発起人に対し、当該費用を支払う場合 もあります。
■カンパニーシール(会社印)の作成(任意)…❷
会社印を登記する際には、設立登記時に同時に申請が必要になるため、商号の予約の許可が下りた時点で、会社印を作成します。会社印には予約した商号(タイ語)を最低限表記しなければなりません。英語表記名やロゴを入れることも可能です。形としては、丸形、楕円形、長方形が一般的です。
また、会社間での契約や、当局に届け出る申請書等は原則、サイン権者のサイン及び社印が必要となる点に留意が必要です。また、駐在員事務所においては、社印の作成は任意になりますが、社印を求められるケースが多いため、会社の運営上、社印を作成しておくのが望ましいです。
■基本定款の作成・登記…❸
基本定款は、最低2通の原本を作成し、発起人が署名し、更に2人の証人が証明しなければなりません。作成した基本定款は、1通をタイ国内の会社の所在地となる場所にある登記所において登記が必要となります(民商法典1099条)。
発起人全員に署名された定款を事業開発局(DBD)へ登記します。定款は基本定款(Memorandum of Association)と附属定款(Article of Association)とで構成されており、社名、本店所在地、事業目的、発行株式数など、会社の基本的事項を基本定款で定め、会社の機関である取締役会の構成・権限といった細かい事項を附属定款に記載します。
なお、タイにおいては基本定款の登記と、会社登記を、別々の日に申請する必要がありましたが、2008年度の改正により、一定の条件を満たす場合は、基本定款と会社登記とを同日に行うことが可能になりました(民商法典1111条1項)。一定の条件については以下の通りです。
・ 登記を行う会社の株式引受人がすべて揃っていること
・ 民商法典1108条に基づく業務を審査するための創立総会に発起人と株式引受人が参加し、発起人と株式引受人が総会で議題に同意していること
・ 発起人が取締役に対して業務をすべて引継いでいること
・ 取締役が、民商法典1110条に基づく株式の払込を請求し、請求金額が払い込まれていること
上記、要件に関しては、基本的に日系企業の進出の場合は、書面ベースのみで行われることが多く、ほとんどのケースが会社登記と基本定款の登記日は同日となります。
[会社定款記載事項]
会社定款に記載しなければならない項目は以下の通りです(民商法典1098条)。付属定款の設定事項は任意での設定が可能です。
[設立目的・会社の目的について]
基本定款の登記に際して特に注意すべき点は、会社目的の記載です。会社の目的は、会社ができる行為をすべて網羅的に記載しておく必要があります。
会社目的に含まれない行為を行った場合には、原則として、その法律行為は無効であり、法的効果は会社に帰属しません。この点はタイにおいても日本の会社法の考え方と同様です。
そこで、会社目的の記載が新会社の事業目的をすべて網羅しているかを慎重に検討する必要があります。もっとも、会社目的については、雛型があり大多数の事業活動が網羅されています。しかし、この雛型はタイ企業を念頭に作成されており、日系企業の特殊な事業活動まで網羅していないのが一般的であり、会社目的の作成に当たっては十分注意して検討する必要があります。
[会社定款の登記費用]
基本定款の登記費用は原則500タイバーツです。
[会社定款の変更]
基本定款の登録が完了すると、予約した商号は他の第三者が使用す ることが不可能となります。また、基本定款と附属定款の変更は、総会の決議後14日以内に行われなければなりません。
[資本金の設定]
登録資本金
タイは「登録資本金制度」により、設立時は発起人が会社の資本総 額を決め、登記の際に「登録資本金(Registered Capital)」として基本定款に定めます
最低資本金
非公開株式会社の資本金は、外国人事業法の「外国人」に該当しな いようなタイ企業の場合、最低資本金額は特に定められてはいませ ん。しかし、会社の目標を達成するために十分な額でなければならな いことは言うまでもありません。
なお、外国人事業法以外にも、外国人1人の労働許可を取得するために、原則的にその会社の資本金の払込額が最低200万バーツ必要 となります。当該外国人がタイ人配偶者と同居している場合には、上記資本金の払込額が50%削減されます。またタイの入国管理局では 就労ビザ(Bビザ)延長の際に提出する年度会計報告の中で会社資産 額が100万バーツ以上である必要があります。
外国企業の場合、外国人事業法において最低資本金額を規定しています。外国人事業法に準拠する外国企業とは、原則として外資が過半 数を占める会社であり、この外国企業が外国人事業法の規制業種を行 う場合は、最低300万バーツ相当、規制業種に該当しない業種の場 合は200万バーツ相当の外貨を資本金として投資しなくてはなりま せん。
■株式の引受…❹
創立総会の前に、すべての株式の引受または割当が行われる必要があります。各発起人は最低1株引受ける義務があり(民商法典1100 条)、引受が金銭、または金銭以外(現物出資)の方法によることが明確にされていなくてはなりません。
なお、金銭以外の出資を行う場合、定款に記載する必要はありませんが、後述の創立総会で承認を得る必要があります。この際に、日本 であるような検査役による調査の規定は存在していません。
また、会社が登記された後、株式引受人は、錯誤、脅迫、詐欺を理 由として裁判所に対し引受取消しを請求することができない(民商法 典1114条)のは日本の会社法とほぼ同じです。
■創立総会の開催…❺
金銭で払い込まなければならない株式がすべて引受けられた後に、発起人は創立総会を遅滞なく開催し、それぞれ必要事項を検討し、承認を得なければなりません。
少なくとも総会開催日の7日前までに、創立総会での決議事項を記載した報告書を株式引受人へ送付し、またそのコピーの一部を会社登 録官へ届出る必要があります。また、株式引受人の名簿(引受人の氏 名、住所、引受株式数)を創立総会で提出する必要があります(民商 法典1107条)。
[創立総会の決議事項]
創立総会において、決議する内容については以下のように定めら れています(民商法典1108条)。
・ 附属定款(Articles of Association)の採択(株主総会・取締役会などの会社の機関の決定)
・ 会社設立期間中における発起人の締結した契約及び支出した費用の承認
・ 発起人に対して支払が行われる場合その額の決定(発起人への報酬)
・ 株式引受人の名簿の確認
・ 優先株を発行する場合、その数・性質・範囲
・ 現物出資の対価として発行する普通株数と優先株数の決定
・ 最初の取締役・監査人の選任とそれぞれの権限の確定
ここでいう「監査人」はタイ国の公認会計士でなければならず、いわゆる日本企業における監査役ではなく、会計監査人に相当するものです。
タイでは会社の規模を問わず、駐在員事務所も含むすべての会社に対して監査人による監査義務が課されることに注意する必要があり、監査を担当するタイ人公認会計士の氏名及び免許番号を商務省に報告しなければなりません。設立時に監査人まで決定できない場合も実務上はありますが、そういった場合は仮で登録しておき、正式に決まった後に臨時株主総会の決議により監査人の変更を行います。なお、この株主総会の開催の要否については慣習的に不要であるという弁護士もいますが、会社法上は要求されているものと解釈できます。
なお、この創立総会開催後、発起人は事業を取締役に引継ぎます。
(民商法典1110条1項)。
■銀行口座開設・株式の払込(資本金の送金) … ❻❼
株式は額面より低い価格で発行することはできません(民商法典1105条)。一方、基本定款によって許可されている場合、株式を額面より高い価格で発行することができますが、その場合、超過分は最初の払込と一緒に払い込まなければなりません。
取締役は会社の設立登記前に発起人と株式引受人に対し、引受けられた株式の25%以上の払込を求める必要があります(民商法典1110条2項)。
会社設立に当たり、登録資本金(Registered Capital)に相当する株式を全額発行し、各株式の額面25%以上払い込めば、取締役が会社の登記申請をすることで会社が設立します(民商法典1111条)。残りの払込金は取締役の求めに応じて株主が払い込む、分割払込制度となっています(BOI奨励企業の場合は操業開始までに全額払込が必要)。
実務上は、会社設立登記を行い、その後銀行口座を開設して払込を行っています。
■会社の設立登記…❽
創立総会後、3カ月以内に事業開発局宛に、会社の登記申請を行わなくてはなりません。登記申請は、創立総会の決定に従い、登記申請書に次の必要事項を記入し、必要書類とともに提出することで完了します。
[登記手数料]
基本定款の登記同様に、設立登記の際にも登記料を納付することになります。設立登記料は、原則5,000タイバーツです。
[設立登記に関する責任]
創立総会後3カ月以内に登記がなされなかった場合、会社は設立されなかったものとし、取締役は連帯して、引受者から受領した金銭はすべて割引せずに払い戻さなければなりません(民商法典1112条)。金銭が創立総会後3カ月以内に払戻がなされない場合、3カ月満了の日から利子をつけて払い戻す責任を負うことになります(同条1項)。
ただし、取締役のいずれかが、金銭の不足または遅滞が自己の責任ではないことを証明した場合、当該取締役は元本及び利子に対する責任を負いません(同条2項)。
また、会社発起人は、創立総会で承認されなかった債務及び支出のすべてに対して連帯して無限責任を負うものとされ、承認された場合も、会社の登記までは同様に責任を負わなければならないとされています(民商法典1113条)。
なお、500万タイバーツ以上の登録資本金がある会社は、下記資料を事業開発局に提出する必要があります。各期限の提出が遅れた場合は、2,000THB程の罰金が科せられます。また、下記要件は、増資の場合も適用されます。
・実際に振り込まれた資本金額に基づき会社に振り込まれたことの証拠として資本金額を満たした額が記載されている銀行残高証明書(会社登記の日から15日以内に提出)
・現物出資の場合(不動産、株式、または正式な所有権の登録のある資産)には、会社は、自身がその資産の所有者になったことを証明する総会議事録や、建物の権利証等の証拠((会社登記の日から90日以内に提出)
そのため、タイでの銀行口座開設も含めてスケジュールがタイトな場合、初回の資本金額は実務上500万タイバーツを超えない範囲で一度登記し、その後増資手続きなどを行う会社もあります。
[サイン権の署名形態と範囲設定]
サイン権は単独署名か共同署名かに分かれます。取締役が1人の場合は、サイン権を同取締役に付与し、単独署名という形態になります。
一方、取締役が複数人存在する場合には、サイン権を1人に付与するか複数人に付与するかを選択することができます。また、複数人に付与する場合には、対象人数の決定やサイン権の範囲の設定などに留意が必要です。
[サイン権の設定範囲例]
たとえば、日本居住の取締役のみにサイン権を付与し、タイ居住の取締役にサイン権を付与しない場合には、税務申告書や労働許可証の取得のための書類を日本に送付して、その上でサインを行うなど手続が煩雑になることがあります。
そこで、銀行などに対する手続などは、タイ居住の取締役にその権限を付与するのが業務効率上望ましいと考えられています。
■会社設立完了/営業開始…❽
以上の手続が完了後、「会社登記証」が交付され、事業開始が可能となります。
■VAT登録…❾
VAT登録の期限は、原則として物品の販売、サービスの提供を行う前日までに行わなければなりません(歳入法85条)。
ただし、課税対象となる取引による売上が年間180万バーツ以下の場合においては、VAT登録の義務が免除されます(同条1項)。上記の非公開株式会社の設立手続は、一般的には全体を通して約1カ月で完了します。
また、別途ライセンスの取得等がある場合は、前述に加えて追加で日数がかかります。
申請に際して、申請書類の記入言語がタイ語であることや、手続が煩雑であることから、コンサルタント、法律事務所や会計事務所の設立代行サービスを使用するのが一般的で、サービスには定款の作成サポートや翻訳業務、現地当局への申請書類の提出代行等が含まれています。
■BOIライセンス申請する場合の設立及び必要資料リスト
■スケジュール
BOIへの投資奨励申請から認可後の手続を解説します。BOIが公開している認可取得手続は以下のような流れになります。
■申請書の提出
申請書は、英語とタイ語が裏表になっています。事前調査が終了、事業計画ができあがっていれば、それを申請書に移し換えることができます。申請書には、製造品目のカタログ、会社概要のほか、事業の工程表などを添付する必要があります。なお、この工程表は、奨励を受けたあと守ることが義務付けられているので、材料の入荷及び検査、そして製品の出荷及び検査までもれなく記入しておかなければなりません。担当官によって、求めてくる追加資料などが異なるため、まずは標準の申請書を作成し、なるべく早く初回の申請を行うのが望ましいでしょう。
日本の場合、申請書の提出先は、東京にあるBOIの事務所、タイにある本部の総務部、地方事務所となります。
■審査担当官によるインタビュー
申請書が受理されたあと、直ぐにインタビューの通知が申請書に記載されたタイ国内の連絡先へ送付されます。申請者は通知書に明記された部署へ連絡し、審査担当官とアポイントをとり、申請書受理から原則として10以内にインタビューが行われます。
インタビューの目的は、委員会へ案件を上げるため、申請書では不十分な情報を得ることで、製品の詳細、製造工程などの技術的なことや申請者(法人)の現在の事業内容を約2時間程度ヒアリングされます。従って、申請者が十分に答えられない場合は、技術者も同行することが望ましいでしょう。
また、英語や(まれに日本語)を使用してくれる担当官もいますが、タイ語のみでしかやりとりしてくれない担当官もいるため、タイ人を帯同していくのが望ましいです。
■委員会による案件審査
審査担当官による案件の詳細レポートができあがると、委員会に提 案され、審議されます。審査を行う委員会は投資額により異なりま す。
投資額8,000万バーツ以下(土地代と運転資金を除く)
BOI事務局の内部委員会
投資額8,000万バーツを超え、7億5,000万バーツ以下(同上)
BOI事務局の小委員会
投資額7億5,000万バーツ超(同上)
投資額に対する輸出額の割合が80%超の場合
BOI事務局の小委員会
投資額に対する輸出額の割合が80%以下の場合
本委員会(首相が議長)
本委員会承認が必要な申請は、申請書受理から審査認可までの期間 が90営業日以内で、原則毎月1回です。これに対して、BOI事務局 内の委員会(小委員会を含む)による承認は毎週開催され、申請書受 理から審査認可までの期間も60営業日以内と短くなっています。
■認可通知とそれに対する回答
委員会で認可されると、文書により、代理人を通して通知されま す。文書の内容はBOIの政策による恩典と条件がタイ語で記載されています。この通知を受取ってから1カ月以内に通知書の内容に同意するか、しない旨の回答を行う必要があります(期限延長可)。 通知を受取ったら、早急に内容を確かめます。その際、恩典、条件が、すでに理解しているものと異なる場合は、回答を保留して、文書で問い合わせることができます。ただ、実務上は、恩典と条件はゾー ン、業種により定めているため食い違いがあることはあまりありません。
[認可通知書添付書類一覧]
・ 認可受理の回答フォーム
・ 認可受理回答期限延長の申請フォーム
・ 奨励証書(Promotion Certificate)発給申請フォーム
・ 輸入品梱包に輸入関税等減免恩典を受けることを表示する荷印 の通知
・ 機械輸入に関する告示(46/2534(1991年))、Por.3/2545 (2002年))およびタイで製造できる機械・設備リスト
・ 法人所得税免税の恩典を使用する前の事業実績報告の方法につい て(OBOI告示Por.4/2544(2001年))
・ 電子システム(MCTS)による機械品目表承認の基準と方法 (OBOI告示Por.8/2544(2001年))
・ 必要インフラ、人材に関する調査表
正式の奨励証書の発給申請には、現地法人の責任者名義で申請する ことが必要です。また、BOI認可企業の場合、操業開始までに資本金 の全額の払込が要求されます。奨励申請と並行して、これらの準備を 進めることで手続を円滑に進めることができます。
■奨励証書の発給
通知書に対する回答が終われば、次に正式の奨励証書を発給してもらうための申請を行います。奨励証書発給申請は奨励認可を引受ける旨の回答をした日から6ヶ月以内に行う必要があり、奨励証書の発給は、通常発給申請から10営業日以内に行われます。
[奨励証書発給申請書に必要な書類]
・ 奨励証書発給申請書(BOI様式FOSCT21)
・ 法人登記簿謄本(定款、株主リストを含む)
・ 法人登記証明書(上記登記簿に附属)
・ 増資の場合の法人登記簿謄本(増資の場合)
・ 会社株式登記事務所の保証書(タイ商務省)
・ 海外からの資金送金を証明する書類(外国からの資本がある場合)
・ 合弁事業契約、技術援助契約、その他の援助契約(契約がある場合)
・ 記入済必要インフラ、人材調査票
・タイ国外からの資金送金を証明するその他の証拠
■奨励証書受領後の手続
奨励証書を入手した後にも、いくつかの手続を行わなければなりません。
[事業準備の開始]
奨励証書発給を受けたら、機械のマスターリスト、原材料輸入の際にフォーミュラーの承認申請を行い、機械及び原材料の輸入申請など事業の準備を開始しなければなりません。
BOI事務局は、奨励証書発給後、正式操業許可証を取得するまでの毎年2月と7月に事業の進捗報告を行う必要がございます。報告を怠った場合、あるいは2回の報告の未提出があった場合は、BOIは奨励許可の取りけしをされる可能性がございます。(P1/2561年による)。
[土地の購入]
土地法による規制は3章2.「投資規制」で既に記載した通りですが、BOIの認可を受けた事業、あるいはIEATが管理する工業団地に進出する場合は土地の保有が可能となります。
[工場建設及び稼働許可申請]
一般的に、奨励証書発給日から36カ月以内に工場の稼働を開始しなければなりません。そのため、それまでに工場建設、機械の搬入、据付、テストを行うことが必要です。これらが終われば、工場稼働開始の許可申請手続に入ります。
[機械の輸入]
輸入関税の免税、減免を受ける機械は、プロジェクト認可後BOI 事務局へ輸入手続の申請をしなければなりません。BOI事務局の機械 委員会において、申請された機械の輸入関税減免の可否が審査されま す。 審査を通過したのち、機械を一括または分割して輸入することにな りますが、この場合の輸入審査は書類が揃っていればインベスター・ クラブで3時間以内に許可されます。その後事務局から税関宛に輸入 関税減免の要請書が発行され、申請者はこの要請書を添付して税関で 輸入手続を行うことになります。最終的には奨励証書発給日から30 カ月以内に輸入を完了し、完了したときに輸入した機械全部のリスト を添付して、文書により事務局へ報告しなければなりません。
[原材料の輸入]
輸出用製品に使用される原材料は、BOI認可事業の場合、奨励恩典 により輸入関税は免除されます。 商社を経由して輸入することは可能ですが、受取人(Consignee) はあくまでも被奨励者であることが要求されます。また、国内販売用 の製品もある場合、輸出用と国内用は、インボイスを分割して輸入 し、工場内でも保管場所を分けて区分管理する必要があります。これ らの点を事前に意識して準備しておくことが必要です。
[工場可動許可申請]
工場稼働開始の許可申請手続は、奨励証書に定めてある稼働開始期 限の15日以上前に文書によりBOI事務局へ通知し、担当官の検査を 受けます。そして、BOI事務局は、検査のあと正式に操業許可書を発行します(BOIの検討期間は45日間)。
■IEATに設立する場合のスケジュール及び必要資料等
基本的な流れは、「土地利用の許可申請」、「建設許可申請」、「操業 開始許可申請」で、各申請のたびに、IEATの事前チェックと事後チ ェックが入る仕組みになっています。
■スケジュール
基本的な流れは、「土地使用の許可申請」、「建設許可申請」、「操業許可申請」で、各申請のたびに、IEATの事前チェックと事後チェックが入る仕組みになっています。
土地使用の許可申請
投資家が工業団地内に商業目的の工場を建設する際、工業団地内における商業目的の土地利用許可の申請書をe-Permission System & Privilege(e-PP)と呼ばれる申請サイトより必要書類一式(署名が必要なものも含め)のスキャンデータを提出します。なお、オンライン提出ができない場合、トータル・ソリューション・センタ(TSC)や、IEAT本社にあるワンストップ・サービス・センター、各工業団地の事務所でも提出可能です。(申請書一式は3部同じものから構成されているが、3部とも提出します)。
■ 土地利用の許可申請
[土地利用の許可の申請者が法人の場合の必要書類]
・ 法人登録の証明書のコピー及び設立目的を示す書類(6カ月以内発行)
・ 株主リストのコピー(6カ月以内発行)
・ マスタープランによる土地の区域番号を示す図面
・ 土地の権利証のコピーまたは土地の利用権利を証明する書類のコピー
・ 委任状と印紙(代理申請の場合)
・生産工程に関する書類
・公害(汚染)防止対策/措置に関する説明書
・環境影響評価(EIA)、環境健康影響評価(EHIA)、初期環境調査(IEE)
※追加提出を求められた場合
なお、外国人の場合は、下記の書類も必要となります。
・ 法人の代表権のある者の戸籍証明書と国民IDカードのコピーまたはパスポートのコピー
IEATが書類審査を行い、関係する法律に違反しなければ、事業者に通知し、土地利用の契約書を作成させ、工業団地内における土地利用許可書及び商業許可書(IEAT01/2)が事業者に発行されます。
なお、許可書の作成に1万バーツの費用(VATは含まず)及びe-PPシステム使用料200バーツがかかります。
■建設許可の申請
[建設もしくは改築前]
建設・改築許可の申請書(IEAT02/3)を記入し、A1サイズの図面3部(決められた通りの縮尺の図面)とA3サイズの図面2部とを一緒にIEAT本社にあるワンストップ・サービス・センターもしくは各工業団地の事務所に提出します。書類に不備がなければ、許可した図面を取りに来るように、IEATから事業者に対して通知があります。その通知を受けることで、建設もしくは改築に取りかかることができます。
その際、図面評価手数料を準備します。なお、手数料の金額については、仏暦2522年(西暦1979年)の建物管理法に基づく、仏暦2528年(西暦1985年)の省令第7版で定められた計算方法に従って、申請事業者が事前に計算しておくことが必要です。
なお、IEATからの建設許可書を取得せずに建設を行いたい場合は、第39条Bis(IEAT02/3)に基づく建設希望届けを提出することになります。
[建設もしくは改築が終了した場合]
建設もしくは改築が終了した場合、建設・改築証明書の申請書(IEAT02/5)をIEAT本社にあるワンストップ・サービス・センターもしくは各工業団地の事務所に提出します。
その後、IEATは提出書類を審査し、建物の立ち入り検査を行い、許可された建設の図面の通りであれば、建設証明書(IEAT02/6)を取りに来るように事業者に対し通知を行います。証明書発行手数料は100バーツ(VATは含まず)で、建設証明書(IEAT02/6)を保管用として発行します。
■操業許可申請
事業者が工業団地内における土地利用許可書及び商業許可書(IEAT01/2)、建設許可書(IEAT02/2)及び建設・改築証明書(IEAT02/6)を取得した後、操業を開始するためには、操業開始許可の申請書(IEAT03/1)を記入し、e-Permission System & Privilege(e-PP)と呼ばれる申請サイトより必要書類一式(署名が必要なものも含め)のスキャンデータを提出します。なお、オンライン提出ができない場合、トータル・ソリューション・センタ(TSC)や、IEAT本社にあるワンストップ・サービス・センター、各工業団地の事務所でも提出可能です。(申請書一式は3部同じものから構成されていますが、3部とも提出します)。
[申請者が法人の場合]
・ 法人登録の証明書のコピー(6カ月以内に発行されたもの)
・ 株主リストのコピー(6カ月以内に発行されたもの)
・ 工業団地内における土地利用許可書及び商業許可書のコピー
・工場内機械配置図及び工場設計図
・公害防止対策の説明書
なお、外国人の場合は、下記の書類も提出が必要となります。
・ 法人の代表権のある者の戸籍証明書と国民IDカードのコピーまたはパスポートのコピー
・ 代理申請の場合、代理人の戸籍証明書と国民IDカードのコピーまたはパスポートのコピー
IEATが書類審査を行い、工場の立ち入り検査をします。法律に違反していなければ、操業開始許可書(IEAT03/2)を取りに来るように事業者に対し通知し、申請料の支払いをした後、操業開始許可書(IEAT03/2)を1部発行し、更に操業開始許可の申請書(IEAT03/1)のコピーを保管用として1部返却します。
■外国人事業許可(FBL)を取得する場合のスケジュール
外国人事業規制に当てはまる業種で、外資マジョリティによる設立をする場合、外国人事業許可証(FBL)を取得する必要があります。支店についても規制業種の第3種に入るため、外国人事業許可を取得することになります。
また、第3種の業種の中には、外国人事業許可を申請することで、外資100%による設立が可能になる場合もあります(規制業種リストは前記を参照してください)。
第2種に該当する業種への投資は、内閣の了承を経て、商務大臣の許可を得る必要があります。第3種業種については、外国人事業委員会の了承を経て、商業登録局長の許可を得ることで、規制業種であっても外資マジョリティでの設立が可能になります。日系企業が外国人事業許可を申請するには、以下の手続が必要です。
・ 必要書類を英訳
・ 公証役場で正規に登記された法人であることを宣誓(宣誓供述)
・ 宣誓した書類の法務局と外務省での認証
・ 在日タイ大使館における認証の手続
商務省事業開発局に提出する申請書は、外国人事業法第17条に基づく事業許可証申請書(Tor3)に基づいて作成し、以下の証拠資料及び書類とともに提出します。法律上は下記のリストの書類が必要とされていますが、実際には下記以外にも本社の過去3年間の財務諸表の提出が求められることもあるので、事前の確認が必要です。
■事業許可を申請する事業内容の申請書
仏暦2546年(2003年)官報120号の商務省告示によると、事 業内容申請書には、以下の項目を記載しなければいけません。
・ 許可を申請する事業の業種および事業の実施手順
・ 3年間にわたる各年度のタイ国における固定資産を取得するため に要する支出およびその他事業総額の見積
・ 事業規模
・申請者がタイにおいて雇用する労働者数
・海外からの技術導入並びに技術移転計画があればその計画書
・ 研究開発計画があればその計画書および実施計画の説明
・ 事業予定期間
・ タイ国に対して本事業がもたらす経済効果
上記の他に、許可審査のために必要な場合に応じて、事実関係を説 明し、担当官から求められた場合は、下記の追加情報を提出しなけれ ばいけません。
(1) 許可申請の理由および必要性
(2) 以下の要素において、事業がもたらす利点と影響
・国家安全保障
・国家経済社会開発
・国家の文化、習慣および伝統
・天然資源の保護
・エネルギーおよび環境保護
・消費者保護
(3) 本社の最新年次事業報告書(Annual Report)および海外にお いて営んでいる事業の部分訳文
(4) 貸借対照表の資産の部の要約(登録資本金が300万バーツ未 満の場合)
(5) 駐在員事務所および地域統括会社として事業許可を申請する 場合、タイ国において事業を運営する代表者の給与証明書(本 社の代表取締役が署名しなければならない)
上記(2)の内容に加え、雇用の創出、技術移転、研究開発の観点からタイ国にとっての有利不利を考慮し、許可の判断を下しています。認可は、事業開発局の認可から15日以内に許可証明証が発行されます。
なお、委員会による審議が月に1回しか開催されず、通常定められている60日の間で認可が下りなかった場合、追加で60日延長できると定められており、申請から許可証取得まで、通常3~5カ月の期間はかかります。
■外国人事業許可証取得後の義務
外国人事業許可証取得後は、以下の義務が発生します。
[ライセンスの表示]
商務省より発行された許可証明書をオフィスの見える場所に表示する必要があります。また、損傷及び紛失した際は、その事象に気付いた時点から15日以内に再発行の申請をする必要があります。
[資本及び居住性の条件]
事業で利用される負債による資金調達の合計が、株主または事業主によって保有される資本部分の7倍を超えてはいけません。
また、最低1人はタイ居住の責任者を置かなければいけません。
[持込最低資本金]
最低資本金は、3年間にわたる年間平均見込支出の25%以上となっています。最低資本金の持込は3年以内に全額タイに送金もしく
は持込む必要があり、送金、もしくは持込んだ日より15日以内に
証拠資料を事業開発局に提出する必要があります。最初の3カ月に25%、1年以内に50%、2年以内に75%、3年以内に100%持込む必要があります。しかし、事業予定期間が3年以内の場合は、6カ月以内に最低資本金の全額を送金もしくは持込む必要があります。
[申請が必要な事項]
以下の事項が発生した際には事業開発局に申請しなければなりません。
・会社の解散(解散した日から15日以内)
・移転した場合(移転した日から15日以内)
・許可事業の責任者変更
・会社名の変更
・支社の数に変更があった際
[担当官からの質問事項に対する回答及び証拠書類の提出]
担当官から要請があった場合には、許可事業の運営状況や、技術移転の実施状況などを書面にて証拠書類と一緒に提出する必要があります。
[
[参考資料①]
[参考資料②]
現地法人情報
【 必要書類】
① タイ法人発起人・取締役・会計監査人の身分証明書コピー
※株主が外国人の場合はパスポートのコピー
※株主がタイ人の場合はIDカードと住民票のコピー
② 株主が会社の場合、その登記簿謄本(英訳版)
※発行から3カ月以内のもの
※法人からの出資が20%以上の株主になる場合のみ必要
③ タイ法人登記場所の地図、物件の謄本、オーナーの連絡先および ID コピー
④ 銀行からの証明書(タイ語)
※タイ側出資者のみ
※設立時の外国人株主が40%以上の場合、または設立時の取締役が外国人のみの場合
⑤ 現地代表予定者のパスポートコピー(入国日が記載されているページ)
会社の清算及び撤退
■非公開株式会社、パートナーシップの清算
■清算の手続
非公開会社またはパートナーシップの清算に必要な手続は以下の通りです。
[清算人の選任(民商法典1251条、1259条)]…❶
清算人とは、非公開株式会社またはパートナーシップの業務を整理し、債務の清算、資産の分配を行う人を指します。破産以外で会社を解散する場合は、定款またはパートナーシップ契約に特段の定めがない限り、取締役または執行社員が清算人となります。清算人がいない場合は、裁判所が清算人を選任します。
清算人の権限
清算人には、以下の権限が認められています。
・ 非公開株式会社またはパートナーシップの名前による、訴訟行為(民事、刑事双方)
・ 清算に必要な限りの非公開株式会社またはパートナーシップの業務の執行
・ 非公開株式会社またはパートナーシップの資産の売却
・ 清算に必要な事項の執行
[解散]…❷
非公開株式会社またはパートナーシップは解散後も清算に必要な限りは存続します。この点は、日本の会社法における解散と同じです。
[債権者への通知(民商法典1253条)]…❸
清算人は、解散の日または裁判所が清算人を選任した日から14日以内に、「地方紙による周知」、「郵便による債権者への通知」を行う必要があります。
地方紙による周知
地方紙に少なくとも1回、非公開株式会社またはパートナーシップが解散したことを周知させます。
郵便による債権者への通知
債権者全員に対して、書留郵便により解散したことを通知します。
[登記(民商法典1254条)]…❹
清算人は、解散の日より14日以内に、非公開株式会社またはパートナーシップの解散及び清算人の氏名を登記する必要があります。
[貸借対照表の作成(民商法典1255条)]…❺
清算人は、貸借対照表を作成し、会計監査人による監査と証明を受けます。
[株主総会(民商法典1256条)]…❻
清算人は株主総会を招集し、取締役または執行社員が今後清算人となることの確認と貸借対照表の承認を行います。
[定期的な報告(民商法典1267条、1268条)]…❼
清算人は、3カ月ごとに会計の清算の進捗を登記所に報告し、また清算が1年以上行われる場合は各年度の末日に株主総会を招集し、清算の進捗を報告する必要があります。
[決算報告書の作成(民商法典1270条)]…❽
清算人は、非公開株式会社またはパートナーシップの清算に関する執行が終了後、直ちに清算の経緯、資産の処分状況等を記載した報告書を作成します。
[決算の承認(民商法典1270条)]…❾
清算人は、株主総会を招集し、上記報告に対する承認を得ます。
[清算の完了(民商法典1270条)]…❿
清算人は、株主総会から14日以内に、上記❾の総会の議事録を登記する必要があります。その登記が完了した時点で、会社の清算が完了したとみなされます。
■公開会社の清算
タイにおいては、外国人事業法により外資マジョリティでの進出を 規制されている業種が多くあり、日系企業においても合弁で進出して いるケースが多く存在します。合弁での進出の場合の多くは、タイの 合弁先と合弁契約書を締結することになります。進出後、事業がうま くいっている間は、この合弁契約書を見直す機会などはあまりないで すが、会社の清算時(合弁契約解消時)には、合弁契約書を再確認する必要があり、その際に思いもしない落とし穴が見つかることがあり ます。 これは、進出時に最悪のケースまで想定し、先の清算(契約解消) に至るまでの考察・協議が足りていなかったことが要因となります。
以下にタイにおける会社の清算手続の概要および、進出時における 合弁契約書作成にかかわるポイントについて会社清算(契約解消)を 念頭に説明します。
■清算手続
タイでは、会社を任意に解散および清算することができます。当該 手続は、主に以下の手順となります。
現地法人を解散させる際には、株主による特別決議が必要とされ、 株主総会に出席した議決権を持つ株主の4分の3以上の賛成多数をも って可決されなければなりません。この解散決議が可決されなかった 場合、裁判所に申立を行い、事業継続が不可能と判断された場合は解 散が認められますが、この手続には1年以上かかることがあります。 また、債務の支払や資産の分配といった事務処理の担当として清算 人を任命する必要があります。この清算人は民商法典1250条で「清 算人の義務は、会社の業務を整理すること、その債務を支払うこと、 及びその資産を分配することである」とされており、解散もしくは清 算する日系企業が、清算業務を依頼した法律事務所の弁護士を清算人 に指名するケースは多くなっています。 次に、任命された清算人は、会社の解散登記完了の日から15日以 内に解散の旨を所轄税務署へ通知する義務を負います。これを怠った 場合、会社に対して予定納税額に加え、それと同額の加算税の支払を 求められることがあります。
なお、解散日以後、タックスクリアランスが発行され、所轄税務署 からVAT登録の抹消通知が届くまでは、毎月の源泉税およびVAT申 告・納付を継続する必要があります。 したがって、上記手順を踏み、会社の解散および清算に関する法的 手続を行いますので、数カ月から数年を要する場合があります。
[進出時の注意点]
最も重要なのは、進出を検討する段階で、具体的な数値で出口戦略 を検討しておくことです。特に合弁会社でポイントとなるのが、株主 総会での決議と債務超過の場合の負担割合です。合弁先とのトラブル を防ぐためにも具体的な基準を合弁契約書に明文化しておくことが必 要となるのです。債務超過については、「出資比率に応じて債務を負 担する」という事項、株式を譲渡する場合は「資産鑑定人による評価 に従う」というように株価の基準も明記しておくとよいでしょう。
参考文献
・新日本有限責任監査法人編『タイ国の会計・税務・法務Q&A』税務経理協会(発行年月:2013/01)