会計
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会計制度
■会計制度
ベトナムの会計制度は、2003年に制定された会計法(Law on Accounting 03-2003-QH11)によって規定されていましたが、2017年1月1日より有効となる新たな会計法88/2015/QH13(2015年会計法)が施工されました。
ベトナムで事業を行う法人は、会計法に基づきベトナム会計システム(Vietnamese Accounting System)、ベトナム会計基準(Vietnamese Standardson Accounting)を適用しなければなりません。
したがって、ベトナムで経理処理を行う場合には、これらの法規に準拠しなければなりません。
ベトナム会計制度の大きな特徴は、1995年よりベトナム会計システムが定められている点にあります。これは、統一された勘定科目コードをすべての企業に義務付け、財務諸表の様式の特定、会計帳簿、証憑書類の分類方法等、細部に至るまで規定されており、企業で作成する経理マニュアルのようなものです。
以前のベトナムでは、企業は国際会計基準などの一般に公正妥当と認められる会計基準をそれぞれ選択し、財務省(MOF:Ministry of Finance)から認可を得て適用していました。また、一般の企業でも複式簿記によって会計処理を行うといった慣習が確立していなかったため、財務諸表間の比較可能性の確保や税務上の公正性を確保することが課題とされていました。
そこで財務省は、国際会計基準に基づいた会計基準の整備とともに、勘定科目体系や財務諸表の様式、証憑の管理方法までを定めた経理マニュアルのようなものをベトナム会計システムとしてまとめ、会計業務のレベルの引き上げを図りました。
ベトナムの会計制度は、2003年に制定された会計法(Law on Accounting 03-2003-QH11)によって規定されていましたが、2017年1月1日より有効となる新たな会計法88/2015/QH13(2015年会計法)が施工されました。
【会計関連の法規】
項目 | 内容 |
2015年会計法 | 会計に関する最も基本となる法律原則として全ての事業体を対象とする |
ベトナム会計基準 | 国際会計基準をベースとして作成。ベトナムで事業を行う者は同基準に基づき会計処理を行う |
ベトナム会計システム | 勘定科目体系財務諸表の様式、仕訳の方法、証憑の分類まで規定する経理マニュアルのようなもの。外国企業であっても同システムに従う必要あり |
証券法 | 公開企業の場合、上記に加え、証券法およびその細則に従う必要あり |
証券取引所の規定 | 上場会社の場合、上記に加え、上場している取引所の規定に従い開示の必要あり |
ベトナムで事業を行う企業はこの規定に従うことになります。
■会計関連法規
ベトナムの会計制度で基本となる法律は、2015年会計法です。会計法では、ベトナム会計基準に準拠した会計処理を行うこと、またベトナム会計システムに従って経理業務を行うことが義務付けられています。それぞれの特徴は上表のようになっています。
■会計期間
ベトナムにおける会計期間は、原則として、1月1日から12月末日までの暦年とされています。
ただし、事前に税務当局への届出を行えば、3月、6月、9月末日も決算日として認められます。実務上は、日本の親会社の会計期間と合わせるため、3月末日に変更するケースも多くなっています。
会計期間を変更する場合、法定監査および年次の法人所得税の申告期限が決算日より90日以内となるので注意が必要です。ただし、会計期間を変更した場合であっても個人所得税の確定申告は企業の会計期間とは関係がなく、申告期間は1月1日より3月31日までとなります。
現状、多くのベトナム企業は、12月末決算で、法定監査および法人所得税の申告期限は、3月末までとなっています。そのため、この時期に企業の監査が集中します。ベトナムは慢性的に監査法人の数が不足しており、監査法人の手が回らず、監査が間に合わなかったという話も聞きます。日本では考えられませんが、こういったことが実際に起きています。実際に2018年時点で監査人の資格を持った人は3,784人いますが、理想は7,000以上必要だといわれています。企業が決算日を12月末以外に設定する理由として、監査業務が間に合わないといったリスクを避けることも挙げられます。
また、会計期間は原則12カ月とされますが、設立初年度および最終年度(閉鎖時)に限っては、最大で15カ月を会計年度とすることができます。たとえば、会計年度が12月決算で2022年11月に設立が完了した企業は2022年度の法定監査および年次法人所得税の申告の必要がなく、2023年度分と合算して法定監査および法人所得税の申告を行うことになります。
■会計帳簿
会計法により、ベトナムにおける企業は、会計帳簿を作成し、保存 する義務があります。会計帳簿とは、仕訳帳、総勘定元帳等で構成さ れ、帳簿はベトナム語での表記が必要となります。
また、作成された会計帳簿・証憑の保存年限は、文書の種類により5年・10年・永久保存に区分されます。これらは会計処理の 元となった請求書や納品書、領収書といった証憑書類と一緒に保存する必要があります。
保存期間に違反がある場合や、虚偽記載があった場合には、2,000 万ドン以下の過料が科されます。
会計書類は、外部企業との取引に関する義務的書類と内部の取引に 関する任意書類の2 種類があります。
ベトナムにおいては、帳簿・伝票類登録は事前認可制度となっています。日本企業は、採用する会計原則の登録または補足について、財 務省に申請しなければなりません。申請は自社で行うかまたは会計事 務所に依頼することが可能です。
申請書の様式は財務省のウェブサイトからダウンロードできます。
■証憑書類
ベトナム会計システムには、証憑書類の作成手順や管理方法、ファイリング方法に関する事項に至るまで、細かく規定されています。
証憑は大きく、①現預金に関するもの、②売上に関するもの、③棚卸資産に関するもの、④固定資産に関するもの、⑤賃金に関するものの5つに分類されます。
証憑の作成や保存に関しては、2018年に制定されたDecreeNo.41/2018/ND-CPによって罰則が定められており、証憑の内容が一部不十分な場合には300万~500万ドンの罰金、証憑への署名が不適切、またはインボイス等の会計伝票の不足などがある場合には2,000万~3,000万ドンの罰金、証憑に会計帳簿と一致しない偽造がある伝票がある場合などには5,000万~10,000万ドンの罰金が科されることになりますので、証憑の管理を日頃から適切に行う必要があります。
特徴的なベトナムの証憑として、VATインボイスがあります。企業が物品を販売した、もしくはサービスを提供した場合に発行するものです。ただし、金額が20万ドン以下の場合には、発行しなくてもよいという例外規定があります。2020年以降は原則金額に関係なくインボイスの発行が義務付けられています。
企業は、物品を購入する、またはサービスを享受する際に、取引先からVATインボイスを必ず入手しなければなりません。仮に、入手できなかった場合には、その支払の金額分は、仮受VATとの相殺ができないばかりか、法人所得税の算出時に損金への算入ができなくなります。ベトナムのローカル企業との取引で金額が大きくない場合、相手企業が、VATインボイスを発行できないといったケースが起こります。そのため、相手企業に事前に発行可能かどうか、確認する必要があります。また、VATインボイスに記載漏れまたは誤記がある場合(特に「会社名」「住所」「税コード」等の重要事項の記載漏れおよび誤記入)には、税務調査の際に指摘を受けると、この費用に対する損金算入が認められなくなる可能性が高いため、VATインボイスの入手には細心の注意を払う必要があります。
なお、Decree 123/2020/ND-CP と Circular 78/2021/TT-BTC に基づき2022年7月1日より電子インボイスの使用が義務化されています。
■記帳通貨
記帳通貨に関しては、原則としてベトナムドン建での記帳となります。ただし、輸出加工型企業および外国との取引が多い企業については条件を満たしていれば、所轄の税務署に通知を行うことにより、外貨建にて記帳を行うことも認められています。この場合、会社の設立後すぐに所轄の税務署に通知を行う必要があります。また、外貨建記帳 を行った場合は、決算日におけるベトナムの中央銀行の換算レートに より、ベトナムドンによる財務諸表を作成します。
■記帳言語
記帳言語に関しては、ベトナム語にて記帳することが必須となります。ただし、英語、日本語などのベトナム語以外の言語を併記することが認められています。
また、年次決算書および監査報告書などの会計関連書類はもとより、税務申告書類および行政手続に関する書類はすべてベトナム語にて作成しなければなりません。したがって、外国企業にとっては、日本人駐在員または親会社が理解するためにも、社内報告用または内容確認に翻訳する必要が生じ、少なからず負担となっています。
【VATインボイス】
ベトナムの会計・税務に関して特徴的なものの1つとして、VATインボイスが挙げられます。記載事項および書式は厳密に法定化されています。VATインボイスの使用に際しては、所轄税務署に登録を行う必要があります。さらに、支払VATおよび受取VATの情報を四半期ごとに所轄税務署に報告する義務もあります。紛失、内容の修正に関しても手続方法が法定化されており、取扱は慎重に行う必要があります。
また、付加価値税額の計算および法人所得税の損金計算に際してもVATインボイスおよび他のインボイスは非常に重要となります。
インボイスには、次の3種類が規定されています。
・輸出商品、サービスの輸出用インボイス
・国内における通常のVATインボイス
・外国契約者税のみなし課税方式で、直接付加価値税を負担する会社が国内で提供する商品・サービスにつき使用する販売用インボイス
この他、電子インボイスの作成も認められており、政府はこちらの使用を推奨しています。政令123/2020/ND-CPによれば、2022年6月30日までは紙媒体の領収書の発行が認められますが、2022年7月1日以降電子インボイスのみの使用が認められることになっています。また、電子インボイスの場合、200,000ドン以下の金額のサービスであっても請求書を発行しなければなりません。さらにVATインボイスを発行する際には、税務当局から発行された税務コードを記載されている必要があります。
取引先よりVATインボイスを取得した場合に、記載内容に誤りがあったときは、税額計算上、控除が認められないことや、法人税の計算上も費用として損金算入が認められないこともあります。ベトナムに進出した日系の製造業の多くは、ベトナムにて製造後、日本を中心とした他国への輸出を行っていますが、そういった企業の多くは支払VATが多く計上されることから、VATの還付を申請するケースがあります。VAT還付の申請の際には、税務署員によって該当する証憑の直接の監査が行われるのですが、この監査の際にもVATインボイスの保管および内容、関連証憑について非常に厳しくチェックされます。
■勘定コード表
ベトナムにおいては会計法により企業の記帳の際に使用される勘定科目はすべて指定されています。財務省指定の勘定コード表(ChartofAccount)と呼ばれるものです。日本では、企業ごとに業種に合わせた勘定科目を設定することができますが、ベトナムにおいては、全業種で統一された勘定科目を使用しなければなりません。これは、同一の勘定コード表により、業種の異なる企業間の比較を容易にすることを目的としています。勘定コード表の勘定科目にはすべて番号が振られています。たとえば、現金は111となります。細分として、ベトナムドンによる小口現金は1111となり、外国通貨による小口現金は1112になるといった具合です。
ただし、勘定科目は標準体系をベースに、企業は必要に応じて補助科目の追加が可能です。
実務上も勘定科目名ではなく、勘定科目に振られている番号で科目を呼びます。たとえば、企業の会計担当者が顧問会計事務所に会計処理方法を質問する場合、「この費用は、142(前払費用)もしくは211(有形固定資産)のどちらで会計ソフトに入力しますか」といった会話がされています。
概してベトナムの4桁までの勘定科目は日本の勘定科目と比較すると、大まかな分類になっています。たとえば156は商品ですが、国内仕入なのか、輸入仕入なのか、もしくは関係会社からの仕入なのか、下請からの仕入なのかを区別することができません。これらを区別して仕訳を切る場合、156の下の桁に任意の数字を足し、補助コードとして使用することができます。一般的な会計ソフトであれば補助コードの機能がついています。
さらに会計ソフトのデータ上で特定の条件の項目を集計する際に、まずは3桁の勘定科目の勘定コードでしぼり、その後、適要を見ながら集計をすることになり、非常に不便です。先ほどの例でいえば、商品の詳細を調べる際に、一度156の勘定コードでしぼった後に摘要を見ながら、国内仕入なのか、輸入仕入なのかを確認するといった作業が必要になります。よって、補助コードを設定し、たとえば国内仕入は1561、輸入仕入は1562に設定することにより、会計ソフトの機能を使用し、一度で国内仕入1561、輸入仕入1562の集計が可能になります。
■会計主任(チーフ・アカウンタント)
すべての外国企業は、チーフ・アカウンタントと呼ばれる資格を保持する人を置かなければなりません。ただし、企業の設立1年目に限っては、チーフ・アカウンタントを任命する代わりに、会計責任者を指名することができます。
このチーフ・アカウンタントは直接雇用するだけではなく、会計事務所に委託することもできます(会計法56条)。
チーフ・アカウンタントは、企業の会計に関する責任を負い、企業の会計部門のマネジメントを行います。たとえば、支払に際して承認をしたり、会計部門のスタッフのトレーニング、決算書類の作成・管理監修を行います。
また、会計帳簿、決算書、小切手、銀行口座の開設などの必要書類にはチーフ・アカウンタントの署名が必要になります。
チーフ・アカウンタントになるためには、最低2年以上の会計の実務経験を持ち、大学や専門学校などの専門機関のトレーニングを受け、資格試験に合格している必要があります。外国人がチーフ・アカウンタントになることはかなり難しく、ベトナム国内での経理経験が1年以上あることに加え、ベトナム政府により会計専門家として認められなければなりません。
ベトナムにおける日本企業もチーフ・アカウンタントを任命する必要がありますが、外国企業の増加に伴って採用が難しくなっています。特に5、6年以上の実務経験を持つ人材が不足しています。
日本企業によっては、経験豊富なチーフ・アカウンタントをコストをかけて採用するのではなく、経験がない経理スタッフを一から教育して、会計関連の管理職を育て、チーフ・アカウンタント業務に関しては、会計事務所に委託するといったケースも見受けられます。
実務上、ある程度の規模の企業では、チーフ・アカウンタントを採用しているケースも多く見受けますが、規模の小さい企業の中にはチーフ・アカウンタントを外部委託しているケースが多くなっています。
■ベトナムの会計ソフト
代表的な会計ソフトとしては、FAST、MISAなどがあります。。ERPを前提とした大企業向けのBRAVOやその他はSAS INNAVA、3T SOFTWARE、VACOM、ASIA、EFFECT、multibook、GLASIAOUSなどがあります。原則、記帳言語は、ベトナム語を使用しなければならないことが原因と考えられます。また、ベトナムでは会計ソフトを使用して、税務申告書類の作成を行うことはできません。財務省が配布している税務申告ソフトを使用して、各種申告書の作成を行います。
■固定資産の計上方法
ベトナムの会計および税務上、次に挙げた固定資産の計上方法には法律の定めがあります(通達147/2016/TT-BTC)。
・将来的に便益がもたらされる資産
・取得原価が独立して計算できる資産
・1年を超えて使用できる資産
・3,000万ドン以上の資産
【ベトナムの特殊な会計処理】
日本とベトナムでは会計・税務のさまざまな相違点があります。 間違いの起こりやすい点としてベトナムの未払費用勘定が挙げられます。 法令により、勘定科目コード番号は 335、Chi phí phải trả としてベトナム語表記されています。日本語だと未払費用、英語だと Expenses payable または Accrued expense となります。
日本の場合は、未払費用とは、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける際、既に提供された役務に対して未だその対価の支払が終わらないもの、といった名目に使用します。一方、ベトナムの場合は、使用できる名目は日本に比べて限定的となり、①従業員の有給休暇に係る給与、②固定資産の修繕費用、③季節的な休業に係る費用などが挙げられます。
なお、上記に該当せず役務提供が終わっていて未払の名目に関しては、すべて331買掛金を使用し会計処理を行います。
実際、日本企業のベトナム人会計スタッフも間違えて記帳しているケースが散見されます。日本人の管理者はこの点に気をつけるとともに、ベトナム財務省公認のベトナムの会計指針に関しては‶Chế độkế toán doanh nghiệp Việt Nam”という勘定科目についての仕訳ルールをまとめた便利な本があるので、会計担当スタッフに参照してもらうことをお勧めします。
■Latest News&Updates
【小口現金の管理において】
ベトナムの会計業務において小口現金の管理は経費として計上するために非常に重要となります。小口現金の管理で注意していただくことは以下のようなものがございます。
- スタッフの食事手当
スタッフの食事手当を小口現金から支払う際にはインボイスが必要となります。
例えば、1人100,000VND分の食事を購入した場合、購入した際のインボイスを保管する必要がございます。
インボイスがなく、現金支給の場合は損金不算入(法人税20%)となりますので、小口現金より食事手当をお支払いいただくことはお勧め致しません。食事手当を付ける場合は雇用契約書に記載が必要ですが、非課税となる上限金額は月に730,000VNDとなりますので、食事手当を雇用契約書に追加し、給与支払いの際に銀行よりお支払いいただくのが良いかと存じます。 - タクシー代
乗車した際のレシートを保管していたら、タクシー会社に頼めば後からでもインボイスを発行していただけます。インボイスもレシートもない場合に関しては損金不算入(法人税20%)となります。毎回レシートを保管するのも面倒なので、
VINASUNやMAILINタクシーと法人で契約することをお勧めいたします。クレジットカードのようなものがあり、下車する際にVINASUN / MAILINカードで支払っていただくことができます。月末にインボイスが発行され登録した法人の口座より翌月に1ヶ月分まとめて支払われます。カードを忘れてしまった場合は、レシートを保管し、タクシー会社がインボイスを発行する前にレシートの金額もインボイスと請求に入れて欲しいとお願いすることができます。 - 銀行からの引き出し
銀行から引き出されたお金を小口現金に追加する場合は
1)どこの銀行で 2)いつ 3)いくら引き出した
のか記載いただく必要がございます。インボイスは必要ございません。
【電子インボイス】
電子インボイスの使用を規定したDecree No. 119/2018/ND-CP (政令119)が、2018年11月1日より施行となりました。
Decree 51/2010/ND-CP(政令51)
Decree 04/2014/ND-CP(政令04)
Circular 32/2011/TT-BTC (通達32)
上記が、電子インボイスに関する現行の法令ですが、政令51および政令04は、2020年11月1日より失効となります。
政令119の概要について、ご紹介いたします。
- 適用対象
ベトナムの法律に基づき設立され、活動している全ての企業は、商品販売・サービス提供の際、取引金額にかかわらず、購入者へ電子インボイスを発行しなければなりません。(現行規定では、200,000VND未満の取引に対するインボイスの発行義務は免除されていました)
- 経過措置
・既存企業:2018年10月31日までに、税務当局に注文印刷インボイスもしくは自社発行インボイスの発行の届け出をしている、または税務当局インボイスを購入している企業、すなわち紙インボイスを使用している企業は、2020年10月31日まで、紙インボイスを継続して使用することができます。
・新設企業: 2018年11月1日から2020年10月31日の期間に設立された企業は、2020年10月31日まで、紙インボイスを継続して使用することができます。
※紙インボイスの使用は、引き続きDecree 51/2010/ND-CPおよびDecree 04/2014/ND-CPの規定に準拠します。
※別途税務当局から税務当局識別コード付き電子インボイスの使用義務通知を受け取った場合には、従う必要があります。発行条件を満たせない企業は、インボイス使用データを税務当局に提出しなければなりません。
- 税務当局識別コードのないインボイスおよび識別コード付きのインボイス
・識別コードがないインボイス(電子インボイスサービスサプライヤー発行)使用企業:
電力、ガソリン、郵便、通信、航空運送、道路運送、水路運送、生活用水、金融・信用、保険、医療、電子商取引、スーパーマーケット、貿易の事業を行う企業、ならびにソフトウェア、情報伝達、データ保存の条件を満たす電子手段にて税務当局との取引を行う企業。
※高い税務リスクを負う企業については使用できません。
・識別コード付きインボイス(税務当局発行)使用企業:
上記以外の企業。
- 電子インボイス使用時の紙インボイスの取り扱い
・電子インボイス使用開始以降、使用していない残りの紙インボイスは破棄しなければなりません。
・電子インボイスの紙インボイスへの変換は、会計規則に従った記録および管理のためのものであり、取引または決済のために使用することはできません。
2018年11月1日より本政令が施行となりましたが、今後、電子インボイスについてより細かく規定する関連法令が公布されていくと思われます。
移行期間として、施行前に紙インボイスの使用を税務当局に届け出ている既存企業は、2020年10月31日までは引き続き紙インボイスを利用することが可能となっていますが、電子インボイスに移行することにより、経費削減や時間短縮、管理の効率化等、様々なメリットがあります。
会計基準
■ベトナム会計基準の主な特徴
2015年に制定された会計法により、ベトナムで事業を行う法人は、ベトナム会計基準に従わなければならないとされています。
現在は26の会計基準から構成されており、特徴的な会計処理は次のとおりです。
[土地]
ベトナムでは、土地は国有のものと捉えられており、土地の使用権を得た場合でも、長期前払費用として計上した上で、最大50年間にわたり、費用化することになります。
[為替差損益]
為替差損益は、通常発生した期において損益処理をしなければなりません。しかし、工事建設に関する債権債務から生じる為替差額であって、営業開始前に発生した為替差損益については、貸借対照表の純資産の部に計上し、営業を開始した時点から最大5年間で償却をすることができます。(165/2002/QD-BTC)
[創立費、開業費]
事業登録証明書を取得する前の費用(創立費)や事業登録証明書を取得して営業を開始する前に発生する費用(開業費)になります。
例えば、調査費用、移転費用、設立費用、教育費用、設立前の広告費用、特許費用、技術ライセンス費用、商標費用などがこれにあてはまります。これらの費用は3年以内に償却する必要があります。原則、償却開始時期は営業を開始後となります。ただし、実務上は、発生時に費用処理をするケースが多いです。
さらに、創立費に関しては親会社が負担するケースも多いです。理由としては、ベトナムには税務上の損金算入の条件があるためだと思われます。進出直後に利益が見込めない場合は、繰延償却処理を選択することで、売上と対応させることができます。
■国際会計基準および国際財務報告基準との差異
ベトナムの会計基準は、国際会計基準および国際財務報告基準に基づいて作成されており、基本を理解することは難しくありません。
しかし、減損会計、資産除去債務に係る規定、退職給付会計、金融商品に係る会計基準などが未発効となっている点や、国際会計基準および国際財務報告基準に対応しているベトナムの会計基準であっても、完全には、整合しないケースもあります。さらに、ベトナム会計基準では、依然として取得原価主義を採用しており、国際会計基準にあるような公正価値や市場価値についての基準はまだほとんど適用されていないのが現状です。
したがって、ベトナムの子会社が連結対象となる場合には、ベトナム会計基準に基づいて作成された財務諸表をベースに、国際会計基準に基づいた財務諸表へ組み替えた上で、連結財務諸表を作成することになります。主な差異は次のとおりです。
【ベトナム会計基準と国際会計基準との差異(例)】 | ||
項目 | ベトナム会計基準 | 国際会計基準 |
財務諸表の表示 | 規定の様式を利用 | 会社ごとに定めることが可能 |
土地(借地権) | 長期前払費用として計上し、費用化 | 有形固定資産として土地に計上 |
創立費の繰延 | 繰延償却も可 | 繰延償却は不可 |
減損会計 | 未導入(政府承認を得た場合のみ、認められ) | 導入済 |
税効果会計 | 繰延税金資産・負債は固定資産・負債に計上 | 繰延税金資産・負債は流動・固定に区分 |
相続・贈与所得(取得した資産の所有権移転等がある場合) | 都度申告 | 納税通知書の受領より30日以内 |
開示制度
■開示内容
非公開会社、公開会社のどちらの場合も財務諸表である貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書、注記付属明細表の開示が求められます。公開会社は、①株式の公募を行っている、②株式が証券取引所に上場されている、③払込済の設立資本金が300億ドン以上であり、議決権付き株の10%以上が100名以上の株主によって保有されている会社(発行会社の議決権付き株式の5%以上を保有する大株主を除く)、非公開会社はそれ以外の株式会社のことをいいます。上場企業になると、年次財務諸表に加えて、四半期財務諸表の開示が必要となります。したがって、日本で作成している株主資本等変動計算書は作成する必要がありません。
また、原則として通貨単位は、ベトナムドンでの表記となります。言語に関してもベトナム語での表記が求められますが、英語または日本語など、他の言語を併記することは認められています。
なお、ベトナムの会計基準では、財務諸表の表示項目についてまで規定されています。損益計算書の区分は日本と比較すると、財務活動による損益が販売費および一般管理費より上位に位置するというのが特徴的です。つまり、ベトナムで営業利益というと、利息費用なども含まれることになる点が、日本基準と異なるので注意が必要です。
【年次決算書】 | ||
| ベトナム | 日本 |
貸借対照表 | ○ | ○ |
損益計算書 | ○ | ○ |
キャッシュフロー計算書 | ○ | △(任意) |
株主資本変動計算書 | × | ○ |
注記表 | ○ | ○ |
[損益計算書の表示区分]
1売上高
2売上原価
3売上総利益
4財務活動による収益
5財務活動による費用
6販売費
7一般管理費
8その他収益
9その他費用
10営業利益
11法人税
12税引後利益
■開示スケジュール
ベトナムにおける非公開会社の決算スケジュールはおおむね、以下のようになります。
企業は会計法に従い、決算日後90日以内に投資証明書発行機関や財務省、市統計局に対して監査済の財務諸表を提出しなければなりません。
また、法人税の申告を決算日後90日以内に行う必要があり、その際にも税務当局への監査済財務諸表の提出が求められます。
したがって、遅くとも決算日後90日以内には、決算処理と監査を完了させる必要があります。
公開会社の場合は、会計法に加え証券法に従って財務諸表を開示する必要があります。同法によると、決算日後90日以内に監査を完了し、監査終了日後10日以内に開示をする必要があります。したがって、決算日後100日以内に財務諸表を開示する義務を負うことになります。
さらに、上場企業に関しては、証券取引所の規定が追加され、四半期財務諸表の開示が求められます。
四半期財務諸表は、四半期決算日後20日以内に開示をしなければなりません
■開示に関する罰則規定
Decree No. 41/2018/ND-CPにより、開示に関して以下のような違反があった場合には、罰金が科されますので、注意が必要です。
・遅れて財務諸表を提出した場合
(3 カ月以内:500 万ドン、3 カ月以上:~ 1,000 万ドン)
・1 つの会計期間の会計データに一貫性がない場合
(1,000 万~ 2,000 万ドン)
・会計データが会計帳簿や証憑と一致しない場合
(2,000 万~ 3,000 万ドン)
・財務諸表を提出しなかった場合
(4,000 万~ 5,000 万ドン)
監査制度
■監査対象会社
ベトナムでの法定監査の対象としては、外国企業、信用機関、銀行、金融機関、保険会社、開発援助を行う投資信託会社、国営企業、特定の投資プロジェクトが挙げられ、独立監査法(67/2011/QH12)の施行細則(17/2012/ND-CP)により規定されています。
ここでいう外国企業とは、1%でも外国の個人ないし法人が出資を行っている会社と解釈されていることから、日本企業は規模などに関係なく監査を受けなければなりません。
また上記に加えて、ベトナムにおける上場企業および上場企業以外の公開会社に対しては、証券(54/2019/QH14)の規定により外部監査を受けることが義務付けられています。ベトナムにおける公開会社とは、株式の公募を行った会社であること、証券取引所または証券取引センターに上場している会社であること、出資者が100名以上であり、資本金が300億ドン以上の会社であることと定義されます。
ベトナム政府は、ベトナムにおけるすべての企業および組織は、会計監査を受けるべきであると奨励をしていますが、監査法人の数からいっても現実には難しいようです。
■監査対象期間
外国企業については、原則として1年に一度独立の会計監査人による会計監査をしなければなりません。
例外として、初年度の期間が3カ月未満で、翌年度の12カ月と合計して15カ月以内の場合には、初年度と翌年度とを合算して最長15カ月で監査を受けることができます。
この場合には、事前に初年度の会計期間を財務省に届け出る必要があります。これは、会社設立後間もない場合は、工場の建設などの設立準備に充てられるなど、最初の3カ月は事業活動が実質的に行われないと考えられることから、翌年度と合算したとしても大きな差異がないという趣旨から認められています。
■監査内容
原則として、1年に一度監査人によって監査報告書を作成しなければなりません。
監査報告書については、ベトナム語での記載が必須ですが、監査契約書に明記することによりベトナム語の監査報告書に加えて他の言語による監査報告書も作成することができます。
監査人は、監査の結果に基づき次の4種類の意見のいずれかを監査報告書に付します。
[無限定適正意見(Unqualified Opinion)]
無限定適正意見は、監査の結果、作成された財務諸表がベトナム会計基準に準拠し、適正に作成されていると監査人が判断した際に表明する意見です。
[限定付適正意見(Qualified Opinion)]
監査の結果、無限定適正意見を表明することはできないものの、問題とされる要素が企業の継続性または財務諸表の信頼性に影響を及ぼすほどではなく限定的に財務諸表が適正であるということを表明する意見です。
[意見不表明(Disclaimerof Opinion)]
意見不表明とは、監査の結果、意見を表明するに足る情報を得ることができなかったため意見を表明することができないというものです。
[不適正意見(Adverse Opinion)]
監査の結果、財務諸表がベトナム会計基準に準拠しているとは言いがたく、開示することが不適当であると判断されるということを表明する意見です。
現在有効となっている監査基準は次の36項目あり、国際基準を基礎として、部分的に変更が加えられています。
【ベトナム監査基準】 | |
番号 | 基準名 |
基準200 | 財務諸表監査の目標および基本原則 |
基準210 | 監査契約 |
基準220 | 監査の品質管理 |
基準230 | 監査書類 |
基準240 | 不正(粉飾)と |
基準250 | 違法行為 |
基準260 | 監査対象企業の役員と機密情報の取扱 |
基準300 | 監査計画の作成 |
基準310 | 経営環境の把握 |
基準320 | 監査上の重要性 |
基準330 | リスクアプローチ |
基準400 | リスク評価および内部監査 |
基準401 | IT環境下での監査手順 |
基準402 | 業務委託に対する監査上の注意点 |
基準500 | 監査証拠 |
基準505 | 外部情報の利用 |
基準510 | 初度適用 |
基準520 | 分析的手続 |
基準530 | サンプリングの手法 |
基準540 | 会計上の引当に関する監査 |
基準545 | 合理的価値の計算および表示に関する監査 |
基準550 | 関連当事者の監査 |
基準560 | 後発事象 |
基準570 | 継続企業の前提に関する監査人の検討 |
基準580 | 経営者による確認書 |
基準600 | 他の監査人の利用 |
基準610 | 内部監査資料の利用 |
基準620 | 専門家の利用 |
基準700 | 監査報告 |
基準710 | 各年度のデータの使用 |
基準720 | 監査を受けた資料の使用 |
基準800 | 監査手順 |
基準910 | 監査方法 |
基準920 | 事前に合意された財務データの監査 |
基準930 | 監査データのまとめ |
基準1000 | プロジェクトの決算報告監査 |
【ベトナム中部の中核都市ダナンについて】
ダナンは、ハノイとホーチミンの間に位地するベトナム中部の中核都市で、人口は90万人ほどです。川と海があり、道路も広く、リゾート地といった雰囲気です。海岸線には70㎞に及ぶ白浜と青い海が続き、海岸沿いに高級ホテルが軒を連ねています。
都市部は市内を流れるハン川を中心に発展し、街の雰囲気がカンボジアの首都プノンペンに似ています。プノンペンの街を整備して、海を配し、トゥクトゥクをなくし、人口・交通量を少し減らしたのがダナン市のイメージです。
メインの産業は、観光と漁業ですが、近年、ダナン市が製造業とIT の企業誘致に力を入れており、これらの企業が増えています。
日本企業の進出状況は、2013 年時点では、商工会登録ベースで50~60 社ほどとなり、登録していない日本企業も含めると全体では70社ほどといわれています。日本企業の進出の約半分が製造業、それ以外は IT、観光業、物流業です。ダナンの全外国企業のうち、日本企業が最も数が多く、次いで、韓国企業が 40 社ほどといわれています。
また縫製業を除くと、ダナンにある製造業のほとんどが日本企業です。
製造業の日本企業の多くが工業団地に入り、ダナン市内には、ダナン工業団地、ホアカイン工業団地、ホアカム工業団地、リエンチィェウ工業団地、産業漁業トークアン工業団地があります。また、近年では、製造業のみならず、日本の IT 企業の進出も活発です。ダナンには 2 つのIT ハイテクパークがあり、多くの日本企業がパーク内にオフィスを構えています。
ダナン進出の魅力および課題としては下記のものあります。
ダナンへの進出の魅力
・ハノイ、ホーチミンと比べ、人件費が安く、人が集まり易い(ワーカーの人件 費は、ハノイ、ホーチミンより2、3割安い)
・物価、駐在員の生活コストが安い(オフィス・アパートの賃貸料がハノイ、ホーチミンの半分ほど)
・街はコンパクトで、空港、港、工業団地、居住区へのアクセスが容易で、渋滞もない
・ハノイ、ホーチミンと比較し、行政の手続がスピーディーでクリーン(賄賂も あまり必要ない)
・日本語の学習者が増えており、日本語で会話ができる人材の確保には困らない(ただし、ビジネスレベルの日本語人材は極めて少ない)
・IT 人材の供給に余裕があり、給与もハノイ、ホーチミンよりかなり安い(ハノイ、ホーチミンはIT 人材の確保が困難で給与水準がかなり高くなっている)
ダナンへの進出の課題
・製造業の場合、現地での部材調達が困難で、労働集約的な産業でない限り、結果として、製造コストが割高になる
・輸出入が必要な業種は、船便が少なく、輸送コストが割高になり、かつ日数 がかかる。結果として、割高な部材調達・輸送コストにより、ハノイ、ホーチミンよりも製造コストが高くなることがある
・優秀な人材は、ハノイ、ホーチミンに集中し、優秀な人材、マネージャー層 の獲得が難しい
・日本-ダナン間の直行便がなく、また、日本人学校、外国人向けの病院、娯楽なども少ない
ダナン進出時の魅力・課題は各企業、各業種によって異なりますが、魅力と課題を十分に精査した上で進出を検討する必要があります。
参考文献
- ベトナム経済研究所監修、みらいコンサルティング株式会社編著『ベトナム進出・投資実務Q&A』日刊工業新聞社、2010 年
- 新日本有限責任監査法人編『ベトナムの会計・税務・法務Q&A』 税務経理協会、2011 年
- 小林英一「ベトナムにおける企業会計・監査」Emerging Markets Newsletter No.9(2008 年 4 月 30 日) http://www.dir.co.jp/souken/consulting/report/emg-mkt/newsletter/ 08043001newsletter.pdf
- 加藤耕平「IFRS in Vietnam」Deloitte、2010 年 11 月 19 日
https://www.tohmatsu.com/assets/Dcom-Japan/Local%20Assets/ Documents/knowledge/ifrs/country/jp_ifrs_vietnam_20101119_190511.pdf
- 永井義直「ベトナムにおける IFRS 対応」アジアビジネスレポート 66 号
(2011 年 1 月)
http://i-glocal.com/newsletter/mizuhoreport/AsiaBR_Vol.66.pdf
- 会計法 88/2015/QH13
- 国際会計基準 IFRS
- ベトナム会計システムのガイダンス 200/2014/TT-BTC
- 財務省「CPA.VN 監修の 2018 年パフォーマンスレポート」
- 会計分野における行政違反罰則を規定する政令 41/2018/ND-CP
- 固定資産の管理、試用及び償却に関する通達 147/2016/TT-BTC
- 6 つの会計基準に関する決定 165/2002/QD-BTC
- 電子インボイスに関する政令 123/2020/ND-CP
- 電子インボイスに関する通達 68/2019/TT-BTC
- 独立監査法 67/2011/QH12
- 独立監査法のいくつかの条項を実施するための詳細な規定及び指示 17/2012/ ND-CP
- 新証券法 54/2019/QH14