税務
※ 本要約はAIが本章の内容のみをもとに自動生成しています。正確な内容は本文をご確認ください。
ベトナム進出に係る税務
■ベトナム進出に係る税務
ベトナムに進出して事業を行う場合またはベトナム企業とビジネスを行う場合には、ベトナム側、日本側においてさまざまな種類の税金がかかわってきます。どのような取引を行うと、どのような税金が発生するかを考慮しないと、思わぬ税務上のリスクが発生し、結果として余分な税コストを自らが負担することになります。特にベトナムには、他国には見られないような特殊な課税制度もありますので注意が必要です。
本章ではベトナムにおける税制を中心に、ベトナムと日本の間に発生する二国間税務の問題を含め、事例を交えながら解説していきます。
■ベトナム進出における税務規定
日本企業がベトナムとの取引を開始する場合またはベトナムに進出してビジネスを行う場合、それぞれにおいて関連する税務規定が異なります。日本からベトナムへの輸出販売やベトナムの販売代理店を通じた活動など、日本企業がベトナムに事業拠点(PE:Permanent Establishment)を設けずにビジネスを行う場合は、PE認定課税および外国契約者税などに留意する必要があります。また、ベトナムに拠点を設けてビジネスを行う場合は、進出の形態ごとに関連する税務規定が異なるので、どのような規定が絡むのかに注意しなければならないこと、およびベトナムで生み出された利益をどのように還流していくのかが論点になります。
■拠点を設けずにビジネスを行う場合
ベトナム国内に拠点を設けず、ベトナムの会社と取引を行う場合であっても、税金の問題は発生してきます。
ベトナム国内に拠点が存在しない場合、通常ベトナムでは非居住者または外国法人とされ、ベトナムにおいて発生した所得にのみ、ベトナムの税法に基づき課税されます。
また、外国法人がベトナム企業と契約し、ベトナム国内でサービスを提供する場合には、所得に対して外国契約者税が課されます(外国契約者税は、ベトナム国内拠点の有無にかかわらず発生します)。
ベトナム国内に拠点がない状態であっても、ベトナムにおいて社員を派遣して長期間継続してサービス提供を行っている場合、ベトナムにPE(支店)を有するとみなされ課税されるケース(PE認定課税)があるため注意が必要です。詳細については、P.282のPE認定課税を参照してください。
■拠点を設置してビジネスを行う場合
ベトナムビジネスの拡大に伴い、ベトナム国内に直接投資を行いビジネスを行う場合、その投資形態(拠点の設立形態)ごとに関連する税務規定の項目が異なってきます。
以下、進出形態別に関連する税務規定を見ていきます。
ベトナム側
ベトナムにおいて現地法人を設立する場合は、ベトナム企業と同様に法人所得税法の適用を受けることになります。現行の法人所得税率は、2016年1月より、20%となっています。
ベトナム現地法人および日本の親会社との間において親子間取引が発生する場合には、租税条約、国際源泉課税、移転価格税制などの規定が関わってきます。
日本側
ベトナムに現地法人を設立する場合、日本側は租税条約、移転価格税制、源泉課税、その他出向者に係る給与負担などの税務上のリスクに留意する必要があります。
ベトナム側
ベトナムに駐在員事務所を設置する場合、駐在員事務所における活動内容は市場調査または情報収集のみに制限されます。そのため、一切の営業活動を行うことはできません。駐在員事務所において営業収入が発生することはなく、税務上のリスクが非常に限定的な形態といえます。つまり、駐在員事務所は法人所得税の対象とはならず課税義務が課されるのは原則として個人所得税のみとなり、税務上のリスクは現地法人と比較して低くなります。
ただし、駐在員事務所において所得が発生しているとベトナムの税務当局が判断した場合には、駐在員事務所に対してベトナムの法人所得税が課されるリスクがあります。
日本側
ベトナムの駐在員事務所で発生した経費については、日本側の所得に合算して課税所得の計算が行われます。
■投資還流方法についての検証
日本企業がベトナムへ進出し、ベトナムにおいて利益を獲得した場合、この利益を留保するか、親会社に還流するかについて検討する必要があります。
利益を再投資する場合は、特に問題は発生しませんが、親会社に還流する場合には以下のように処理することになります。
■ベトナム現地法人 → 親会社への還流
ベトナム子会社で生じた利益を日本の親会社へ還流する場合、その方法としては、次のようなものがあります。
・配当により親会社へ還流
・親会社との取引(経営指導、管理等のコンサルティングなど)を通じて還流
-親子ローンによる利息の還流
-ロイヤルティによる還流
なお、配当により還流を行う場合、ベトナム子会社において、繰越欠損金がない、かつ税引後利益が発生している場合は親会社へ利益配当を行うことができます。
ベトナムにおいては利益送金課税等の制度はなく、支払配当金は課税対象にはなりません。これが他の国と比較した場合、大きなメリットとなります。
日本の親会社側においては、「外国子会社配当益金不算入制度」に より所得金額の計算上、一定額を益金の額に算入しないことができます。
[適用対象]
内国法人(日本の親会社)が外国法人(ベトナム子会社)の発行済株式の10%以上以上の議決権付株式等を、配当等の支払義務が確定する日以前から6カ月以上継続して直接に保有している場合、これに該当する外国法人(特定外国子会社等)が適用対象となります。
[計算方法]
ベトナム子会社から日本親会社へ配当する場合、ベトナム子会社側 については、日越租税条約上10% の源泉税を課すことができるよう規定されていますが、ベトナム国内法に基づき、実際には源泉税は徴 収されません。対して日本側では外国子会社配当益金不算入制度によ って、日本親会社がベトナム子会社から受ける配当は配当額の95% が益金不算入とされます。そのため残りの5% が益金算入となり、日本の法人税の課税対象となります。日本の法人税実効税率を約30% とした場合、以下の計算でベトナム子会社からの配当に対する支払税 額を求めることができます。
親会社への利益の還流方法の1 つに、親子ローンによる借入の利息の支払によるものがあります。累積損失が計上されている場合は、配 当自体を行うことはできませんが、利息の支払は累積損失が計上され ていても行うことができます。ただし当該利息については、ベトナム 側で外国契約者税の適用を受け、利息額の5% の法人所得税が課されることになります。
ロイヤルティ等の取引を通じて親会社に利益を還流する場合は、親 子ローンによる利息と同様に外国契約者税の課税対象となり、法人所 得税率は10% です。また、日本とベトナム両国の移転価格税制の適用を受けるため注意が必要です。
■各種優遇税制
ベトナムに進出する企業には、さまざまな税制上の優遇規定が設けられています。
進出を検討する上で、これらの優遇規定を考慮することは必須であり、この恩恵を受けることができれば、それはベトナムでのビジネスに大きく寄与することとなります。
移転価格税制
■ベトナム移転価格の概要
移転価格税制とは、関係会社間での取引における取引価格を通じて、その所得を国外に移転することを防止するために定められている税制です。取引上の価格設定については、企業の自由意志に委ねられることが自由取引の大原則です。ただし、企業グループ内での取引価格を調整することで、結果として税負担を自由に軽減することが可能になるとすると、価格設定を変動させることにより各国の税負担を恣意的に操作できることになります。
国外への所得移転を回避するためには、関連会社間の取引価格と独立企業間の取引価格が異なる場合に、独立企業間価格に基づいて所得金額を算出して課税します。
現在、ベトナムの移転価格税制を規定する最も重要な法令は政令132号(Decree 132/2020/ND-CP)となります。
■関連者の定義
移転価格が適用される関連者については条文上その範囲が広く設定されており、以下のような例が挙げられます。
・一方の会社が他の会社の持分を直接または間接的に25% 以上保有している場合
・共通の第三者がそれぞれの会社の持分の25% 以上を直接または間接に保有している場合
・一方の会社が直接または間接的に保有する他の会社の持分が10% 以下であっても、その会社にとって唯一の主要株主である場合
・一方の会社の役員の過半数が他の会社より出向している場合
・一方の会社が他の会社の有する重要な無形資産を保用している 場合
■独立企業間価格の算定方法
ベトナムにおける独立企業間価格の算定に当たっては、財務省令において以下の算定方法が規定されています。
・ 独立価格比準法(CUP法:Comparable Uncontrolled Price Method)
・ 再販売価格基準法(RP法:Resale Price Method)
・ 原価基準法(CP法:Cost Plus Method)
・ 利益比準法(TNMMに準ずる方法)
・ 利益分割法(PS法:Profit Split Method)
それぞれの手法は、OECDによるものと共通しており、適用に当たっては、比較可能性が高く、取引実態に適しているものを採用することになります。
■事前確認制度
事前確認制度(APA:Advance Pricing Agreement)とは、法人が取引価格を決定する際に、事前確認を希望する場合には、歳入局に対して申請を行うことができるという制度です。日本と同様に、ベトナムにおいても導入・活用されています。申請を行った場合には、その事前確認により示された条件等に従って、実際の取引を行わなければなりません。
■移転価格文書
移転価格文書の作成の免除規定に該当しない場合、「政令132号(Decree 132/2020/ND-CP)に基づき」により、以下の3 層構造の移転価格文書の整備が会社に求められるようになりました。
⎝㆒⎠ マスターファイル:親会社グループ全体の情報
⎝㆓⎠ ローカルファイル:納税義務者の取引の詳細情報
⎝叅⎠ 国別報告書(CbCR):グループごとに分けて売上高や従業員数をまとめた情報
なお、国別報告書は、⎝㆒⎠納税者がベトナム国外に最終親会社を有している場合と⎝㆓⎠最終親会社がベトナムの場合にのみ、作成する必要があります。
移転価格文書は、税務当局から掲示を求められた際、税務調査によ る場合には15 営業日以内に、それ以外の場合には30 営業日以内に 提出しなければなりません。
[ 移転価格文書作成における免除規定]
政令20/2017/ND-CPにて、以下のいずれかの要件に該当する場合は、移転価格文書の作成が免除されることになりました。
・売上高が500 億ベトナムドン未満であり、かつ関連者取引総額が300 億ベトナムドン未満であること
・事前確認制度(APA)に基づき、合意書へ署名しており、かつ年次報告書を適正に提出している場合
・売上高が2,000 億ベトナムドン未満で次の要件を満たす場合
-単純な機能のみを有し、無形資産を使用していない
-売上高EBITDA(利息支払・税引前利益)が業種ごとに
定められた下記の割合以上である
EBITDA ÷ 売上高 ≧ 販売業 5%、製造業 10%、加工業 15%
[ 関連者への支払利子の損金算入制限]
政令132号における重要な規定の一つに、関連者への支払利子に関する損金算入制限があります。これは、企業が関連会社から過大な借入を行い、支払利子を損金として計上することで、ベトナムでの課税所得を不当に圧縮することを防止するためのルールです。
具体的には、支払利息から受取利息を差し引いた純支払利息の合計額について、損金に算入できる金額がEBITDA(税引前利益+支払利息+減価償却費)の30%を上限としています。ただし、政府開発援助(ODA)融資や政府による各種優遇融資、国のプログラムや地方の社会保障政策を実施するための融資を含む、特定の種類の融資に係る支払利息は、この制限から除外されます。
国際税務の個別規定
■租税条約
■租税条約の概要
租税条約とは、二重課税の排除と脱税の回避などを目的として、国 家間で締結される成文による合意(条約)です。その適用に当たって は、それぞれの国が定める国内法に優先して適用されることとなりま す。つまり、国内法において課税とされる場合でも、租税条約におい て非課税とされている場合には、非課税として扱います。
しかし、租税条約を適用することにより、国内法に比べて不利に なってしまう場合には、国内法の規定を優先適用することが可能です
(プリザベーション・クローズ)。
また、租税条約以外の条約にも、相手国の居住者などの日本におけ る特定の税目上の扱いを定めるものがあります。
ベトナムは約80 カ国と租税条約を締結しており、日本もその中に含まれています。なお、日本とベトナムの間では租税協定という形で 締結されています。
ベトナムが締結している租税条約・協定については、基本的にOECDモデル条約をベースに規定されています。
■OECDモデル条約
OECDモデル条約とは、経済協力開発機構(OECD)が加盟国各国に対して採用を勧めるもので、具体的には、加盟国やOECDモデル租税条約の政策に賛同する非加盟国との二国間租税条約の新規締結や、既存の租税条約を改定する場合の雛型等を指します。OECDモデル条約には、所得および財産についての租税条約モデルと相続税・遺産税についての租税条約モデルの2つが存在します。日本とベトナムの間で締結されている租税協定も、他の諸外国と同様にOECDモデル条約をベースに規定されています。
また、日本企業のグローバル化に伴い、内国法人(日本の親会社)との直接取引でなく、日本以外の海外子会社とベトナムの子会社との間で取引が行われることもしばしばあります。その場合には、日本・ベトナム間の租税協定ではなく、その海外子会社の所在地国とベトナムとの租税条約の内容を検討する必要があります。
以下、日本とベトナム間で締結されている租税協定のうち、主要な項目について内容を見ていきます。
■日越租税協定(要約)
[PEに対する課税(5条)]
日越租税協定5条において、恒久的施設(PE:Permanent Establishment)の定義が定められており、事業を管理する事務所、支店、事務所、保管のための倉庫などのほか、以下のようなものもPEとして規定されています。
・ 建設工事などに関連する監督活動で、6カ月を超える期間存在する場所(建設PE)
・ 日本の企業がベトナムにおいて使用人その他の職員を通じて役務提供(コンサルタントの役務提供を含む)を行う場合で、このような活動が単一の工事または複数の関連工事について12カ月間に合計6カ月を超える期間行われる場合
・ 代理人PE
従属代理人の定義は、以下の3点となり、これに該当する場合にはベトナムにPEを有するものとされます。
-ベトナム国内で、日本企業に代わって契約を締結する権限を有し、かつこの権限を反復して行使している場合
-契約締結の権限はないが、ベトナムにおいて日本企業に属する物品または商品在庫を反復して保有し、かつこれらの在庫を日本企業に代わって注文に応じ、または引き渡している場合
-契約締結の権限はないが、ベトナムにおいて日本企業またはその関連会社のために反復して受注している場合
ただし、次のような場合はPEとはされない旨が租税条約に記載されています。
・ ベトナムにおいて日本企業に属する物品または商品を保管する、または展示のためにのみ施設を使用する場合
・ 物品等を展示のためにのみ保有する、または他の企業による加工のためにのみ保有する場合
・ 日本企業から独立した地位を有する仲立人、問屋などの代理人を通じてベトナムで事業を行っている場合
・ 支配関係という事実だけの場合
ベトナムビジネスにつき、特に現地に支店、法人を設置しないで行う場合には、ビジネス内容によってはPEがあると認定され、税務当局より所得課税されるので注意が必要です。
PE認定の例
・現地において駐在員事務所を設けているが、この駐在員事務所において、本来行ってはいけない営業活動を行っているものとみなされ、これを支店と認定され課税されるケース
・ 日本とベトナムとの間の業務契約で、日本からベトナムへ人員を派遣し業務を行う場合に、その期間が6カ月を超えることにより、税務当局より実質的にPEに準じると認定され、課税されるケース
PE認定では、税務当局によりPE帰属利益が認定され、それに対して税金が課されるだけでなく、場合によってはペナルティ等も発生してきます。このような認定課税を回避するためには、ビジネス内容について、事前にPEに該当するかどうかを検討し、リスクが高い場合には現地に拠点を設けて申告・納付を行うという選択肢もあります。
[特殊関連企業(9条)]
移転価格税制に関する規定は、財務省令だけでなく、日越租税協定上にもあります。
内容としては、一方の締約国の企業または同等の者が、他の締約国の企業経営、支配または資本に直接もしくは間接に参加している場合に、その取引条件が独立企業との間での取引条件と異なるときは、その条件がなければ一方の締約国の企業等が本来得られたであろう利益について、一方の締約国で課税をする、というものです。つまり、関連会社間で取引を行う場合には、第三者取引条件によらなければいけないということです。また、同条2項には、移転価格課税後の相互協議についても、両国の権限のある当局同士が合意した場合には、課税された税額について適当な調整を行う旨が記載されています。
[使用料(ロイヤルティ等)に対する課税(12条)]
日本とベトナムとの間で、ノウハウなどの提供の対価として使用料(ロイヤルティ等)が収受されることがあります。この使用料に対して、租税条約12条では「当該使用料が生じた国において課税することができる」とされています。つまり、日本からの技術提供により、ベトナムから日本へロイヤルティが支払われる場合には、その支払の際に源泉徴収により課税されることとなります。
租税条約には、税率は使用料の額の10%を超えないものとあるため、支払時にその範囲内で源泉課税されることになります。
[短期滞在者に対する人的役務所得(15条)]
給与収入については、勤務実態がある国でのみ課税されます。つまり、給与の発生源泉である勤務が行われていない場合には、給与収入に対してその国で課税されることはなく、実際の勤務地において課税されることになります。
日本からベトナムに出張する場合、次の3つの要件を満たす場合には、支払われる報酬または給与についてベトナム側での課税はされません。
ただし、この規定の適用を受けるためには、税務当局への届け出が必要です。
[役員報酬にかかる課税(16条)]
給与等に関しては、原則としてその国において勤務が行われていない場合には、税金は課されないとされています。つまり、日本からベトナムへ従業員が出向した場合、日本で勤務が行われない限り、日本側で課税問題が生じることはありません。
しかし、日本側の法人の役員がベトナムに居住者として駐在する場合、日本の会社から役員としての報酬を得ているときは、仮に日本では非居住者、かつ国内勤務がない場合であっても、日本側において課税されるため注意が必要です。
[二重課税に対する二国間協議(24条)]
日本またはベトナムのいずれかの国の税法に基づき、この租税条約の規定に適合しない課税を受けた場合、居住国において権限のある当局に対して申立てを行うことができます。
この場合、各国の権限のある当局は、この租税条約の規定に適合しない課税を回避するため、当局同士が連絡を取り合い、相互に協議を行うことになります。
この規定が租税条約に定められていない場合、またはベトナムと租税条約が締結されていない国については、それぞれの国で定められている税法に基づき課税されることになります。
タックス・ヘイブン対策税制
■第三国を経由した投資
近年のアジア圏の経済成長は目を見張るものがあり、日本企業の進出件数も年々増加しています。広くアジア圏に拠点展開している日本企業の中には、日本からの直接投資ではなく、他の海外拠点からの投資の形態により、ベトナムに進出するケースも出てきています。
具体的には、アジア圏に複数国にわたって拠点展開している企業などは、その各国の海外子会社を統括するため、シンガポールや香港に地域統括会社(RHQ:Regional Headquarters)を設置し、これらの国からさらにアジア各国に投資をするというケースも増えています。このような形態をとるメリットとしてさまざまな要素が考えられます。特に大きなメリットは、シンガポールや香港がタックス・ヘイブン(低税率国)であるため、所得に対する税負担が他の近隣諸国に比べ低く、これらの国に利益を集約させることにより、グループ全体の租税負担を大きく引き下げることができるということにあります。日本の法人実効税率は約30%と、諸外国に比べて租税負担が重いため、多くの日本企業はこのような投資スキームを採用しています。しかし、そのような利益集約によりメリットを享受できるのは企業側だけで、国側には利益の海外流出による税収の減少という深刻な問題が発生しました。この問題への対応策として、課税逃れを目的にシンガポール、香港といった低税率国に子会社を設立し、利益を不当に海外に留保した場合には、日本側においてその留保利益に課税するという制度ができました。これがタックス・ヘイブン対策税制です。
■タックス・ヘイブン対策税制の概要
ベトナム投資においても、日本からの直接投資ではなく、RHQを通じて孫会社化して管理を行うケースも十分に考えられます。
シンガポールや香港に統括拠点を設置することにより、最大限税制メリットを活かして、各子会社から集約した利益を留保することが可能となります。
しかし、このRHQについて、日本側において実体のないペーパーカンパニーとして税務当局より認定された場合には、そのRHQで留保されている利益について、日本側の所得と併せて合算して、日本の法人税が課されます。
日本の法人税法に規定されているタックス・ヘイブン対策税制(外国子会社合算税制)とは、内国法人等が特定外国子会社等(低税率国に所在する外国関係会社)を有する場合に、その特定外国子会社等が留保した利益のうち、その内国法人が保有する当該子会社株式の所有割合に対応する部分の金額をその内国法人等の収益とみなして、日本で合算して課税する制度です。
つまり、日本では会計上「収益」が認識されていないにもかかわらず、税務上「益金」を認識することにより、海外の留保所得について日本において課税する税制です。
この税制の適用対象となる会社は、日本の居住者または内国法人によって直接および間接にその株式の50%超(議決権、配当請求権のない株式を除外して行う判定も併用する)を保有される外国子会社等で、法人の所得に対する税が存在しない、または20%以下の国・地域に存在する会社が対象となります。
外国関係会社が独立企業としての実体を備え、かつその所在地国で 事業活動を行うことにつき十分な経済合理性があると認められるなど 一定の場合には、租税回避が目的ではないとして、同税制の適用は行 われないこととされています。
同税制の適用を回避するためには、税務当局から指摘をされる前 に、RHQにおいて現地での活動実態を整備する必要があります。
ベトナムの税制度
■税目の種類
ベトナムの国内法では、以下のような種類の税金が定められています。
※法人所得税部分(直接税の性質)と付加価値税部分(間接税の性質)を含む
これらの税目は、日本のように、国税・地方税という区分はなく、すべてが国税です。主な租税は表のとおりで、財務省歳入局や関税局が管轄しています。さらに徴収・負担の方法により直接税と間接税に分かれます。
■直接税と間接税
[直接税]
直接税とは、納税義務者と税金を実際に納付する者が同一である税金をいいます。
ベトナムでは個人所得税、法人所得税などがこれに該当します。
[間接税]
間接税は、直接税と異なり、納税義務者と実際に納付する人が異なる税金をいいます。税金の負担者が直接ではなく他の納税義務者を通じて間接的に国に税金を納付するため、間接税と呼ばれます。
ベトナムでは、付加価値税、特別消費税などがこれに該当します。
■ベトナムの租税法
ベトナムの租税法については、各税目の法律(Law)が国会により公布され、その後、当該法律の詳細が政府内閣による政令(Decree)として規定されます。さらに実務における法律の運用指針を明示した規則が税務省令(Circular)、通達(Official Letter)として発表されます。
ベトナムでは頻繁に税制の改正が行われるため、租税実務においては常に税制の動向、実務上の扱いに注意する必要があります。
既に挙げた税目の中で特に外国企業に関係するのは、法人所得税、個人所得税、外国契約者税、付加価値税、輸出入関税です。次節では、これら税金の詳細について説明します。
法人所得税
■納税義務者
ベトナムにおいて法人所得税の対象となる納税義務者は、内国法人と外国法人に分けられ、それぞれの区分に応じて課税される所得の範囲が異なります。外国の会社を親会社として、ベトナムに現地法人を設立した場合、その現地法人は内国法人となり、ベトナムの法人税法の対象となります。近年、電子商取引やデジタルプラットフォームを通じてベトナム国内で事業を行う非居住者も納税義務者に含まれるよう規定が強化されています。
[内国法人]
・ ベトナムの投資法、企業法、国営企業法等により設立された企業
・ 職業専門家の協会等で、商品の販売やサービスの提供により課税所得を有する団体
・ ベトナム共同事業体法により組織された法人
[外国法人]
・ ベトナム国内に恒久的施設(PE)を有する、外国の法律により設立された法人
・ ベトナム国内を源泉とする所得を有する外国法人・その他の団体
■課税所得
課税所得の算定については、ベトナムにおける外国企業には法定監査が求められており、監査済財務諸表の税引前利益を課税所得計算の基礎とし、損金不算入項目や繰越欠損金等の税務上の調整項目を加減算し、課税所得が算定されます。
■税務上の収益認識基準
各種の収入に対する税務上の収益認識については、基本的に会計上の収益認識時期と同様になります。
一般的に、役務提供の場合は完了時に収益認識となります。ただし、取引形態によって、役務提供完了前にインボイスを提出するような場合には、そのインボイス提出時点が収益の認識時点となります。
■非課税所得
課税所得金額は、会計上の利益をベースに税務調整された上で算出します。一方、収益の中でも法人税が課されない非課税所得は以下のとおりです。
これらの非課税所得は、課税所得の計算上、所得金額から控除されることになります。
・組合法に基づいて設立された法人による農業等の生産物からの 所得
・農産物の栽培のための技術提供、インフラ整備等による所得
・科学技術の開発、開発された製品の販売で認可を受けたもの
・従業員の半数以上が障害者等である法人が行う販売、役務提供
・ベトナム国内企業からの配当金、分配金(株式等の保有比率と関 係なく)
・教育、文化、慈善事業、人道支援などを行う団体が受ける寄付金
■損金計算
課税所得の計算に当たっては、会計上で計上した個々の費用につき、税務上も損金参入・不参入の判断が非常に重要となります。
原則として、以下の条件をいずれも満たす場合、すべての費用は損金として認められ、課税所得の計算上控除することができます。
・ 生産事業活動に直接起因および関連する費用
・ 法律が要求する適切かつ完全な請求書および証憑を添付した費用
・ 2,000万VND以上の取引に関しては、銀行送金等の非現金決済方法による支払証憑を添付した費用
税務上、損金算入が認められている費用は、適切かつ有効な費用ま たは損失に限られます。つまり、所得の獲得に直接関与しない費用 や、関連証憑による裏付けのない費用、または関連法令の条件を満た していない費用は、税務上損金算入が認められません。
ベトナムでは、政令123号(Decree 123/2020/ND-CP)に基づき、電子インボイス(E-invoice)の使用が全面的に義務付けられています。損金算入のためには、原則として全ての取引について、規定に準拠した電子インボイスを売り手から受領し、保存する必要があります。かつて存在した『レッドインボイス』や特定の金額基準は、現在では適用されません。
収益および費用の適正性ならびに有効性の判断については、税務署 がその決定権を有しています。
以下、所得金額の計算に当たって法人所得税法上で定められている 個別規定を解説していきます。
[研究開発積立 金]
ベトナムにおける研究開発の促進のため、将来的に発生すると見込まれる研究開発コストのうち、各課税年度の課税所得の金額の10%までを損金の額に算入することができます。
しかし、積立年度以降で以下の事由が生じた場合には、それぞれに対応する部分の税額を納付する必要があります。
・ 5年以内に積立額の70%を使用できなかっ た場合 未使用額
・ 積立目的外で使用した場合 その使用額
[減価償却費]
税務上の減価償却費を計算する場合、計算の基礎となる取得価額、償却方法、耐用年数は以下のように定められています。
取得価額
有形固定資産については、まず以下のすべての要件を満たすものは、固定資産として計上しなければなりません。
・その資産を利用することで、将来にわたり経済的利益がもたらさ れるもの
・取得原価を個別単位で計算できる資産
・1 年を超えて使用できる資産
・3,000 万ドン以上の資産
資産計上をしたものについては、その資産の取得の方法により、上表のように取得価額を計算するように定められています。また、一度決定した取得価額を修正する場合には、取締役会議事録に変更理由等の詳細を記載する必要があります。
償却方法
税法上の減価償却方法については、定額法、定率法、生産高比例法の3つが認められていますが、その選定に当たっては事前に税務当局へ選択した償却方法を届け出なければいけません。
償却年数(耐用年数)
減価償却資産の耐用年数については、資産の区分に応じて、次の表のとおり定められています。2013年6月10日に固定資産に関する新しい通達45/2013/TT-BTCが発効され、いくつかの固定資産の耐用年数に変更が生じています。
ベトナムで特徴的なのは最短、最長という形で耐用年数が定められており、その間であれば会社が任意で耐用年数を設定できることです。通常は、日本と異なり、会計上および税理上の耐用年数は同一のものが使用されます。
中古の資産を取得した場合の耐用年数については、以下の計算式により算出した年数となります。
これらの規定に基づいて算出された税務上の減価償却限度額と、会計上、費用として計上されている減価償却額を比較し、限度額を超えている部分は減価償却超過額とされ、損金の額には算入されません。
[無形資産の償却費計算]
無形固定資産(特許権、商標権等)については、財務省令において「20年を超えないようにする必要がある」と定められているのみで、税法上、個別の資産ごとに明確な償却期間は定められていないため、この範囲内で償却期間を任意で設定する必要があります。特に、法的に無形資産の期限が定められているものについては、それらも考慮した上で期間設定を行う必要があります。
[貸倒引当金]
保有する債権が以下の条件に該当する場合には、貸倒引当金の計上が認められます。
・ 契約書等により、債権金額が明確に証明できる
・ 契約書等により、回収期限が既に経過していることがわかる
・ 債務者が倒産しているなど、債権を回収できない可能性が高い
貸倒引当金として計上可能な金額は、その債権の状況により異なります。
[貸倒損失]
保有する債権について、回収できないことが確実となった場合には、貸倒損失として損失計上することにより損金の額に算入されます。しかし、要件として貸倒引当金が計上されていないものは損金の額に算入されません。つまり、回収の見込みがない債権については、必ず貸倒引当金を計上しておく必要があります。
[寄付金]
寄付金については、原則として損金の額に算入されませんが、教育その他自然災害、貧困層などに対する寄付金で特定のものについては、損金の額に算入することができます。
[その他の費用]
先に挙げた項目以外で、税務上損金の額に算入されない項目には以下のようなものがあります。
・労働契約書あるいは就業規則等に規定されていない従業員の給与等
・従業員を対象として会社が支払った生命保険料
・法令の規定に従って計算されていない各種引当金
・未払費用(期末までに実際の支払いがなく、関連証憑が不十分な未払費用)
・役員報酬(定款、労働契約、または社内給与規定等で定められていない役員報酬や、経営に直接参画していない役員への報酬)
・罰金
・支払利息のうち、その利息に係る利率が、ベトナム国家銀行
(SBV)の設定する利率と比較して、1.5倍以上となる場合の支払利息
・未実現為替差損
・外国企業よりベトナムの恒久的施設へ配分される経営管理費用のうち、関連法規の条件を満たさないもの
・商業目的のイベントなどに後援金(協賛金)を支出した場合(後援金の目的は直接的な広告宣伝等ではないという当局側の見解に基づくもの)
[繰越欠損金の控除額]
所得金額の計算上、欠損が生じた場合には、発生した年度以降5年以内の繰り越しが認められています。5年を超えて消化しきれなかった欠損は切り捨てられます。また、日本のような繰越欠損金の繰戻還付制度はありません。
■税額計算
課税所得金額に対し、20%(標準税率) の税率を乗じて税額が算出されます。
※石油ならびに天然ガス、またはその他天然資源の採掘事業に対しては、採掘の場所、環境、埋蔵量を勘案して税率32~50%を乗じます
※2025年10月1日以降下記、課税所得金額に対し、年間総収入に応じて以下の税率が適用予定。
- 年間総収入500億VND超の企業:20%(標準税率)
- 年間総収入30億~500億VNDの企業:17%
- 年間総収入30億VND未満の企業:15%(優遇税率)
■申告
法人所得税の申告については、四半期ごとの申告と年1回の確定申告が定められています。申告書の提出先は、その法人の本店所在地の所轄税務署となります。ベトナムでは地方税が存在せず、税収はすべて国が管理しているため、国内に複数事業所などがある場合であっても、申告書の提出先は1カ所です。
[四半期申告]
四半期ごとの法人税の予定納税は、各四半期の終了月の翌月30日までに行う義務があります。なお、四半期ごとの申告書の提出は不要です。ただし、第3四半期終了時点までの予定納税額の合計が、その年度の最終的な確定法人税額の80%に満たない場合には、差額に対して延滞利息が課されるため注意が必要です。
この場合、日本のように、前年の確定税額に基づいて予定納付を行うことは認められておらず、税額については、実際の所得金額を計算する方法(仮決算)と、昨年度の数値をベースに見積もられた所得に課税所得率を乗じて算出する方法のいずれでも可能です。
[確定申告]
法人所得税の確定申告については、課税年度末より90日以内に行わなければなりません。これは免税期間中の企業や損失を計上した企業においても同様です。
年度末の確定申告による年間納税額が、四半期ごとに実施した予定納税額の金額を上回る場合には、その差額につき追加納税を行う必要があります。
個人所得税
■個人所得税の概要
個人所得税を計算する場合、まずその対象となる人が居住者であるか非居住者であるか、つまりその対象者の居住性が重要となります。この居住性により、所得税が課される収入の範囲が大きく異なります。
それぞれの定義については、以下のとおりです。
■居住者・非居住者の定義
ベトナムにおける居住性の区分は、以下の要件のいずれかを満たす場合に居住者とみなされます。
・暦年、あるいは最初の入国の日から数えて12カ月の間にベトナム国内に183日以上滞在する者(入国ならびに出国の日は両方合わせて1日として計算)
・課税年度において契約期間が183日以上の賃貸住宅等を有する者(ホテル、事務所、作業場を含み、契約の名義が個人であるか法人であるかを問わない)
・ベトナム国内に定常的な住居※を有する者
※恒久的住居(外国人の場合には、公安省により発行される居住証明あるいは一時的居住証明に記載された恒久的住所)を指します
居住者の定義に該当しない場合、非居住者として区分されます。区分別の課税所得の範囲は以下のようになります。
ベトナムにおいて居住者となった場合には、ベトナム国内の所得だけでなく、所得を受けた国にかかわらず、発生した所得のすべてに対してベトナムで課税されます。
つまり、日本からの駐在員で、ベトナムの居住者となった人が、日本で不動産を有していて賃貸収入が発生している場合などには、ベトナムでの所得と合算して課税されます。
この場合に、ベトナムと日本の両国で課税されたときは、ベトナムの確定申告において外国税額控除の規定により、二重に課税されている分の税額を調整することができます。
また、非居住者とされた場合には、ベトナム国内で発生した国内源泉所得のみ、ベトナムにおいて課税されることになります(それ以外の国外所得については、居住している国およびそれぞれの国において課税されます)。
ベトナムの税法では、183日以上ベトナム国内に滞在する、またはベトナム国内に住居を有する者を居住者と定義しています。
一方、日本の所得税法では、国内に住所を有する、または現在まで引き継いで1年以上居所を有する個人を居住者と定義していることから、特定の場合は、日本とベトナムの双方で居住者の認定を受け、所得税が両国で二重に課されます。
[日本、ベトナム両国から給与を受取る場合]
ベトナム居住者が日本、ベトナム両国から給与を受取る場合、給与支給対象者の居住区分等により日本にて課税されるケースがあります。その場合は外国税額控除が適用されます。
一方、ベトナム非居住者が日本、ベトナム両国から給与を受取る場合、ベトナムにて申告・納付を行った額は日本にて外国税額控除が適用されます。
設立間もない製造子会社の立ち上げ支援などでベトナムの子会社等
に派遣される場合、あるいは業務のために頻繁に出張する必要があり、結果としてその滞在日数の累計が183日に達する場合、この二重課税に該当するケースは少なくありません。
日本からの出張者などで短期間(183日未満)ベトナムに滞在する場合に、一定の要件を満たしていれば、その期間内の給与について、日越租税協定により課税されません(短期滞在者免税)。
租税条約中に短期滞在者に対する人的役務所得(15条)に関する規定があります。給与所得において勤務実態がない場合には、給与所得に対してその国で課税が行われることはなく、実際の勤務地において課税されます。
日本からベトナムに出張する場合、以下の3つの要件をすべて満たす場合には、支払われる報酬または給与についてベトナム側での課税はありません。
ただし、短期滞在者に対する人的役務所得(15条)の適用を受けるためには、税務当局への届け出が必要となります。その際に当局より提出を求められる書類は以下のとおりです。
・ 申請書
・ 日本の居住証明書の原本
・ 日本の雇用主との雇用契約書
・ ベトナムの雇用主との雇用契約書
・ パスポートのコピー
一般的に、ベトナムにおいて当局が指示する提出書類は、地方もしくは担当者により異なることが多いため、申請を行う所轄税務署の担当官に事前に相談することをお勧めします。
■課税所得
課税される収入については、個人所得税法では次の表のように区分されています。これにより、課税される金額が変わってくるため、得た収入がどの所得に該当するか判断する必要があります。各所得の内容については、次のとおりです。
所得の区分について日本と大きく異なるのは、相続と贈与による収入が所得税の枠組みの中にあり、それぞれが所得と認識され課税されるという点です(日本では、相続や贈与による収入にはそれぞれ相続税、贈与税が課されます)。
■非課税所得
収入であっても所得税法上、課税がされないと規定されている非課税所得については、以下のとおりです。
・近親者間の不動産譲渡
・住居用不動産の譲渡
・使用料が免除、軽減された土地利用権の譲渡
・近親者間の不動産の相続、贈与
・農地転用による不動産譲渡
・一次産業の事業所得
・金融機関への預金、生命保険の利子
・越僑からの外貨送金
・超過勤務手当の一部
・年金
・奨学金
・保険金、補償金
・国内外の慈善団体からの給付金
・会社名義によるゴルフ会員権
・駐在員の赴任手当および引越に係る費用
・駐在員の一時帰国に係る費用(年1回)
・駐在員の子女の教育費(小学校より高等学校程度)
・従業員の食事手当の一部
・出張手当、制服代、文房具代(法定限度額あり)
これらの非課税所得が法定限度額および非課税所得として認められるためには条件があります。
■所得控除
ベトナム所得税法において定められている所得控除については、下記のとおりです。
[基礎控除]
すべての申告対象者に対して、一律900 万ドン/月、年間にする と1 億800 万ドンが控除されます。控除額は、1 カ月当たりの所得が900 万ドンを下回る場合であっても、満額の控除が可能です。
【latest News and update】
[扶養控除]
納税者について、扶養者(配偶者、子供など)がいる場合には、そ の人数に応じた額を、所得金額から控除することができます。控除の 対象となる扶養対象者については、以下のとおりです。
控除の対象となる扶養対象者については、以下のとおりです。
・子供(養子あるいは非嫡子を含む)
・満18歳未満の者
・満18歳以上の子で、身体障害者あるいは就労困難者
・大学、専門学校、職業訓練学校等で就学中の子供で、まったく収入のない者あるいは月収50万ドン以下の者
・就労年齢以下(男性は61歳、女性は56歳6か月)の配偶者で、身体障害者あるいは就労困難者であり、かつまったく収入のない者 ※2024年現在
・就労年齢以上の両親または義理の両親で、身体障害者あるいは就労困難者であり、かつ月収100万ドン以下の者
・就労年齢以上の兄弟姉妹、祖父母、義理の兄弟姉妹、孫、甥、姪、その他の扶養者で、身体障害者あるいは就労困難者であり、かつ月収100万ドン以下の者
[強制加入社会保険料]
ベトナムでは企業が従業員のために加入しなければならない強制保険として社会保険、健康保険、失業保険があります。それぞれ個人の自己負担分について所得控除が認められています。企業によっては、従業員負担分の社会保険および健康保険についても企業が負担するケースがあります。これはネット契約をしていることが原因と見られますが、ネット額(手取り額)契約の場合の給与の計算方式は、法定されているため、この計算式に従って個人所得税額を算出する必要があります。
また、ベトナム国外にて納付した社会保険料について、これまではベトナム居住の外国人がベトナム国外にて給与を受け取り、ベトナム国外にて社会保険料(健康保険、雇用保険、年金等)の自己負担分については個人所得税の控除対象となっていましたが、2023年12月29日付にて、ベトナム居住の外国人が外国受け取りの給与をベトナム法人が国外送金等で負担している場合、ベトナム国外にて納付された保険料はベトナム個人所得税の控除対象外となると税務局は公示しています。
[寄付金控除]
個人が支払った寄付金のうち、以下の団体に対するものについては、寄付金控除の対象となり、寄付金額が所得から控除されます。
・ 保護を必要とする子供、身体障害者等の養護・介護施設等であって、法律(Decree No.68-2008-ND-CP)に準拠して設立、認可された団体や組織(これらの寄付金の控除には、その団体等からの正規の受領証が必要)
・ 慈善活動、社会化事業、教育訓練などの非営利活動を目的として、法律(Decree No.148-2007-ND-CP)に準拠して設立、認可された団体、基金
寄付金控除については、支払われた賦課年度の所得から控除されますが、その年度の所得から控除しきれない部分は、翌年度に繰越して控除することが可能です。
■所得金額の計算
課税される所得金額については、収入金額から、その収入を得るために支出した金額として、以下の金額を控除して算出します。
事業所得および給与所得については、経費控除額を控除した金額を合計し、所得金額を算出します。他の所得(投資所得、投資譲渡所得、事業用の資産の譲渡を除く不動産譲渡所得)については、所得金額からその所得を得るために直接発生した経費を控除して所得金額が計算されます。
[事業所得]
事業所得の計算に当たっては、その事業主が会計帳簿等を整備しているか否かにより所得金額の計算方法が異なってきます。
会計帳簿等が整備されていない場合
事業者が会計帳簿や証憑等をきちんと整備していない場合には、収入見込額に一定の割合を乗じて計算した金額が所得金額とされます。この場合の所得見込額は、納税者の申告と税務署側の調査等により決定されることになります。
収入金額のみが記帳されている場合
事業主が収入金額のみを記帳しており、控除すべき必要経費の金額がわからない場合には、実際の収入額に一定の割合を乗じて計算した金額が所得金額とされます。この場合の収入額は、会計帳簿や請求書などと一致していなければなりません。
会計帳簿が適切に整備されている場合
事業主が適切に記帳を行っており、証憑類も整備されている場合には、収入金額からその収入を得るために発生した必要経費を控除した金額に、事業活動に付随して発生する利息、固定資産の売却収入などを加算した金額が所得金額となります。
インボイスの発行が、所有権の移転または役務提供の完了より早い場合には、インボイス発行時が売上認識時点となります。また、割賦販売、延払条件付販売など、通常の販売形態と異なる形態の場合には、それぞれ販売代金の回収時期が到来した時点で売上を計上します。
その他、事業所得の計算上、以下のような点に留意する必要があります。
・ 従業員へ商品等を支給する場合には、収入金額は商品等の支給時点の時価となる
・ 商品等を事業者が自家消費した場合には、その消費した商品等の原価が収入金額となる
・ 建設業(据付等を含む)の収入額は、工事完了後、検収・引き渡しがされた時点で収益を計上する
・ 運送業の収入金額は、輸送の際の受取額となる
・ 資産の賃貸業の収入金額は、賃貸契約に記載された期間の賃借料となる
[必要経費]
事業所得の計算上、収入金額から控除することができる必要経費の金額は以下のようになります。
・ 従業員に支払う給与、賞与等、労働法に基づいた就業規則等に従って支払われるもの
・ 製品等を製造するための材料費、加工賃その他水道光熱費など(ただし、災害等により製品等が滅失した場合の損失は必要経費に含めることはできない)
・ 事業用資産の減価償却費(事業用資産の要件については、その資産が製造その他事業の用に供されていることや、その資産を所有していることを証明するインボイスなどが保管してあること、会計上、適切に計上され、管理されていることなど。また、自家用と事業用を兼ねている資産の減価償却費については、利用の程度に応じて償却費の額を配分し、必要経費の額を算出する)
・ 事業資金の借入による支払利息(この場合の借入先は、銀行などの金融機関に限られる。また、事業開始時の資本金に相当する借入に対する支払利息は必要経費には含まれない)
・ 光熱費、電話代、事務用品、その他消耗品などの日常的に発生する管理費用
・ リース契約に基づく支払リース料
・ 事業に関連する租税公課
上記のほか、事業収入を得るために直接的に関連する費用で、インボイス等の証憑類で証明ができるものは、必要経費に算入できます。
[譲渡所得]
投資譲渡所得
資本投資持分を譲渡した場合の所得金額は、譲渡対価額から投資した元本額を控除した金額となります。また、譲渡に際して手数料等の付随費用が発生する場合には、それらの費用は合理的な範囲で必要経費に含めることができます。
証券譲渡所得
株式等の証券を譲渡した場合には、譲渡収入金額からその株式等の取得価額を控除した金額が所得金額となります。上場している株式などであれば、取引所での売却額がそのまま譲渡収入金額になりますが、非上場の株式については売買契約に譲渡価額が明記されていない、または譲渡価額が時価に比し適正な価格でない場合は、税務当局が譲渡価額を決定する権限を有します。
不動産譲渡所得
不動産等を売却した場合には、その不動産の譲渡価額から、その取得原価(付随費用を含む)を控除した金額となります。その他、譲渡のために要した経費のうち特定のものについては、所得金額から控除することができます。
[ロイヤルティ所得]
ロイヤルティ所得については、1,000万ドンを超える金額が所得金額となります。また、複数のロイヤルティ契約にわたる場合は、それらの契約を合計した金額により所得金額が算出されます。
[フランチャイズ所得]
フランチャイズ契約に基づく収入については、ロイヤルティ所得と同様、受取金額が1,000万ドンを超える金額が所得金額となります。また、一件のフランチャイズ契約を複数に分割して譲渡する場合には、それらの譲渡額をすべて合計した金額により所得金額が算出されます。
[勝利金・賞金所得]
賞金等の収入については、その賞金等の獲得の都度、その受領額が1,000万ドンを超える金額が所得金額となります。一つのイベントで複数の賞金を受取る場合には、その受取額の合計により所得金額が計算されます。その他、宝くじの賞金については、1回の収入額が1,000万ドンを超えるか否かにより判断するなどの規定があります。
[相続・贈与による所得]
相続や贈与により金銭・物品等を取得した場合には、その取得した価額の合計額が1,000万ドンを超える金額が所得金額となります。以下のものについては、それぞれに定める金額が収入金額となります。
■個人所得税額
ベトナムにおける所得税計算については、上図の手順により計算します。
個人所得税の税額は、所得金額から、所得控除額を控除した課税所得金額に対して、以下に示した累進税率を乗じて算出します。
また、非居住者に対する税率は以下のとおりです。
■申告・納付手続
所得税額の算定を行った後、個人所得税の申告、納付手続を行うことになります。ベトナムにおける申告・納付制度については、所得の種類に応じて、詳細な規定があります。
[納税者登録]
ベトナムにおいて申告・納付を行う場合は、納税者登録を行い、個人税コード番号を取得する必要があります。
納税者登録は、発行されるまでに時間を要する可能性もあるため、赴任後早めに取得申請を行うことが望ましく、登録申請書(ベトナム語)、住居の賃貸契約書、パスポートのコピー、写真等を求められる可能性があります。
駐在員かつ所得が給与所得のみの場合は、雇用主を通じて雇用主の所轄税務署に納税者登録を行うことが可能です。その他の所得がある場合には、駐在員の住居のある地域の所轄税務署で登録をすることになります。
近年では、納税者番号取得手続に際し、申請の遅滞に対しても厳しい対応をされる傾向があるため、注意が必要です。
[個人所得税の申告・納付]
個人所得税の申告については、その所得の区分により、詳細に定められており、区分により、申告・納付手続が異なります。
所得が給与所得のみの場合
給与所得に対する個人所得税の源泉徴収について、雇用主は原則として四半期ごとに申告・納付を行います。申告・納付期限は、各四半期の終了月の翌月末日です。
ただし、前年度の源泉徴収税額の合計が5,000万ドンを超えるなど、特定の要件を満たす場合には、月次で申告・納付を行う必要があります。
年間の最終的な税額は、年末調整または個人の確定申告によって精算されます。確定申告の期限は、暦年の終了から4ヶ月目の末日(翌年4月末日)です。(※旧規定の90日から変更されています)
給与所得以外の所得がある場合
給与以外の所得がある場合には、その所得の区分に応じて、以下の 申告・納付手続が必要になります。
[帰任時の確定申告]
ベトナムでの任期を終え自国への帰任をする場合、帰国日より45日以内にPITの確定申告を行う必要がございます。
申告期間としては1カ月単位での申告を行う必要があります。例えば、2023年12月15日に帰任をする場合は2023年12月31日を課税最終日として申告を行います。また、12月15日に赴任期間が終了しても1月に出国した場合は1月31日を課税最終日として申告する必要があります。
そのため、赴任期間の終了月に出国をしなければPIT額が増加してしまうため注意が必要です。
[給与所得以外の所得がある場合]
給与以外の所得がある場合には、その所得の区分に応じて、以下の申告・納付手続が必要になります。
※証券譲渡所得にかかる個人所得税は、原則として譲渡の都度、証券会社等を通じて源泉徴収されるか、個人が申告し、最終的に年次申告を行います。
付加価値税
■付加価値税の概要
付加価値税(VAT:Value Added Tax)とは、ベトナム国内における付加価値を課税対象とする税金であり、日本の消費税とおおむね同様の税金で、以下のような特徴を有しています。
・ 物品、サービスの消費に対して課される間接税
・ 税金の負担者は最終消費者である
・ 中間業者はVATの負担はしないが、納税の義務を負う
・ 定期的に申告・納付する義務がある
・ インボイスの保管
■納税義務者
VATの負担者は最終消費者ですが、納付義務を負うのは、VAT課税対象物品の販売あるいはサービスの提供を行う事業者(VAT登録事業者)、ならびに物品の輸入者であり、個人・法人を問わず納税義務が発生します。
また、代理人や支店を通じてベトナム国内で事業を営む外国法人にもVATの納税義務があります。
■VATの非課税取引
VATは、ベトナム国内における販売やサービス提供などの行為に対して課されますが、付加価値税の性質になじまないものや、社会政策的な見地から、通達Circular129/2008/TT-BTCにより、26項目の財・サービスについては付加価値税の課税対象から外され、非課税取引とされています。以下は、その主な例です。
・農産品、水産物などで、未加工・半加工の状態のもの
・農業関連のインフラサービス
・政府が所有している住宅の住人への譲渡
・土地使用権の譲渡
・生命保険等の保険サービス
・金融サービス(クレジット、証券取引、資本譲渡、デリバティブ取引、金融機関が行う信用保証サービス等)
・医療サービス(検診、治療等)
・郵便、通信、インターネットサービス等
・都市部のインフラ整備サービス
・文化財などに対する維持、修繕、建築サービス
・教育、職業訓練サービス
・政府が行うラジオ、テレビ放送
・教科書用図書、新聞の発行、特定の書籍や映像の制作販売
・公共の交通機関サービス
・国内で生産ができない機械設備等
・武器、軍事設備
・人道支援のための物資の輸入
・技術移転、ソフトウェア取引
・天然資源の輸出
・身体障害者用物品
・行政手数料等
輸入時にVATが非課税となっていたものであっても、その当初の目的以外にその物品等が使用された場合には、その物品の輸入時に遡って税関に VAT申告をする必要があります。
■納付税額の計算
ベトナム企業が顧客から販売・サービス等の対価を受取る場合、その行われた事業の税率に応じたVAT(売上VAT)を徴収し、また購入・サービス等の対価を支払う場合、同じくその行われた事業の税率に応じたVAT(仕入VAT)を支払うことになります。
[売上VAT]
売上VATは、販売・サービス等の販売価格に対して課される税金で、インボイスに記載されている金額を合計した金額となります。VATの表記を内税方式にしている場合には、受取総額から課税売上高を控除した金額が売上VATとなります。
[仕入VAT]
課税対象となる取引およびサービスの対価を支払う際の、タックスインボイスに記載されている金額を合計した金額が仕入VATとなります。
この場合の、納付すべき税額の計算に当たっては、2種類の方法が認められています。
控除方式(インボイス方式)
納税額=売上VATー仕入VAT(控除可能なもの)
仕入VATを控除するためには、次の要件を満たしていなければなりません。
・公式タックスインボイスの添付
・外国契約者に代わって外国契約者税を納付した場合には、納税証明書の添付
・銀行送金証明(2,000万ドン以上の取引の場合。また、取引が分割で行われる場合には、さらにその契約書等)
・契約書、通関申告書があること(輸入取引の場合)
簡易課税方式
簡易課税方式は控除方式と比べると簡便な計算方法となっています。
納税額=販売・サービス等の付加価値額合計×税率
付加価値額の算出については、販売・サービス等の販売額から、販売・サービス等に関連した支払額を控除した金額となります。
付加価値額の算出に当たっては、インボイスに記載されている実際の販売・仕入額(VAT等を含む)を基に計算を行います。
この場合の付加価値額については、事業活動の内容により算定方法が異なります。以下に例示されている事業以外のものについては、その事業活動から発生する収入額から、その収入額に対する発生費用の合計額を控除した金額が付加価値額となります。
■課税標準額
VATの課税標準額は、以下の区分に応じて定められています。
■税率
VATの法律上の税率は、課税対象となる取引の区分に応じて、次のとおり定められています。
VATの税率は、原則10%ですが、政策的な理由から5%とされて
いる取引もあり、物品またはサービスの輸出取引については0%課税取引となります。
言い換えると、輸出取引については、最終消費者がベトナム国外に存在する取引にはVATは課されないことを意味しています。つまり、物品の輸出先では、輸入通関時点でその国の付加価値税が課されることが一般的です。そのため、物品の原産地国でもVATを課すと二重課税となり、輸出品の国際競争力の阻害を回避するためにこの措置が採られています。
そのため、この0%※税率を適用するためには、各会社において物品が国外に搬出されたことを証明する書類、すなわち輸出通関書類を必ず保存しておかなければなりません。
【※注:輸出加工企業(EPE)への0%税率適用に関する重要改正】
従来、国内企業から輸出加工企業(EPE)への物品・サービスの提供は、輸出取引として広く0%税率が適用されていました。しかし、2025年7月1日に施行された新VAT法(48/2024/QH15)により、この0%税率の適用条件が厳格化されています。
具体的には、その物品・サービスが「EPEにおける輸出製品の生産に直接的に使用されること」を証明する必要があり、証明が難しい一般管理サービス(コンサルティング等)などは10%の標準税率が適用される可能性が高くなっています。EPEと取引を行う企業は、契約内容や証憑管理に十分な注意が必要です。
※税率0%と非課税の違い
0%………課税対象ではあるが、税率が0%であるため、結果税額が生じない非課税……そもそも、VATの課税対象とはならない
■申告・納付
VATの申告・納付は、企業の申告頻度に応じて定められた期限までに行います。月次申告の場合は翌月20日、四半期申告の場合は翌四半期の最初の月の末日が期限となります。前年度の売上高が500億ドン以下の企業は、四半期申告を選択できます。
[VATの還付手続]
その月の売上VAT額から、仕入VAT額を控除した結果、控除しきれなかった金額が発生した場合、以下の要件を満たしていれば、その仕入VATの還付を受けることができます。
・連続する12カ月間(2014年1月1日改定)、控除しきれなかった仕入VATがある場合(各月において、必ずしも売上VAT<仕入VATでなくてもかまいませんが、常に控除不足の仕入VATがある必要があります)
・輸出を行う課税事業者が、1カ月の間に控除しきれない仕入VATが2億ドン以上残っている場合(仮に2億ドン以上であっても、将来的に発生するであろう売上VATと相殺できると見込まれる場合には還付申請は受理されません)
・ライセンス機関に企業登録を済ませた新設企業が、VAT登録を済ませていても、正式稼動前で売上VATが発生していない、かつ、投資期間が1年間以上である場合(年度末に還付を受けることは可能ですが、還付手続には時間を要します。投資された資産の仕入VATが2億ドン以上の場合、VAT還付は企業登録から4カ月後に行われます)
・ODAなどの無償援助プロジェクトに伴い発生した控除しきれない仕入VATがあり、その支払目的がベトナムでの消費等である場合
・組織変更(M&A、解散等)が行われ、控除しきれない仕入VATまたは過払いのVATが残っている場合
■ 電子インボイス(E-invoice)制度
1. 概要と根拠法令 ベトナムでは、政令123号(Decree 123/2020/ND-CP)および通達78号(Circular 78/2021/TT-BTC)に基づき、電子インボイス(E-invoice)の使用が全面的に義務化されています。これにより、かつて使用されていた紙のインボイス(通称:レッドインボイス)は廃止され、全ての事業者は規定に準拠した電子インボイスを発行・使用しなければなりません。
2. 発行方法とデータ送信 電子インボイスは、会計ソフトウェアから直接、または政府が認可したE-invoiceサービスプロバイダーを通じて発行されます。発行されたインボイスのデータは、税務当局のシステムへ電子的に送信される必要があり、これにより税務当局は取引をリアルタイムに近い形で把握します。
3. 修正・取消方法 発行した電子インボイスに誤りがあった場合の修正や取消も、電子的な手続きによって行われます。物理的にインボイスを回収するのではなく、内容を修正した「修正インボイス(Adjusted Invoice)」や、元のインボイスを無効にする「代替インボイス(Replacement Invoice)」を発行し、そのデータも税務当局へ送信します。
4. 実務上の注意点 損金算入や仕入VAT控除のためには、取引先から受領した電子インボイスが、法令に準拠した有効なものであるかを確認することが極めて重要です。取引を開始する際には、相手方が正規の電子インボイス発行事業者であることを確認する必要があります。疑わしい場合は、税務総局のポータルサイトでインボイスの有効性を検索することも可能です。
■VATインボイスの管理等
付加価値税額の計算に際し、インボイスは非常に重要となります。基本的に、このインボイスに基づいて税額を計算するため、その管理等について税務上の規定があります。
VATのインボイスには、以下の3つがあります。
・輸出商品、サービスの輸出用インボイス
・国内における通常のVATインボイス
・外国契約者税のみなし課税方式により、直接付加価値税を負担する会社が国内で提供する商品・サービスにつき使用する販売用インボイス
このほか、電子インボイスの作成も認められており、政府はこれを推奨しています。
原則的には政府発行のVATインボイスを使用しなければなりませんが、例外として、作成した政府発行のVATインボイスと同等のインボイスを使用することについて財務省から許可を得た場合には、その作成したインボイスを使用することが可能となります。
インボイスの管理においては、インボイス番号はすべて税務当局に登録されているため、納税番号、金額等がきちんと記載されたインボイスを保管しておく必要があります。
また、取引先よりVATインボイスを取得した場合に、記載内容に誤りがあると税額計算上、控除が認められないことや、法人税の計算上も費用として損金算入が認められないこともあるため、注意が必要です。
■VATインボイスの実務上の取扱の注意点
VATインボイスは、政府により厳格に管理されています。VATインボイスの発行に関しても書式および必要記載事項が法定されています。発行に関しては、原則として政府指定の印刷会社に発注するなど、自社で発行する際には非常に厳しい条件があります。
VATインボイスを自社発行する場合の条件は次のとおりです(通達39/2014/TT-BTC:2014年3月31日改正)。
・ 法定資本金額が1,000万ドン以上の企業
・ 自社内に会計システムを導入している企業
支払VATインボイスに関しても法的に問題がないものを入手しなければなりません。取引を開始する場合には、取引先企業が法的に問題のないVATインボイスを発行できることはもちろんのこと、取引先の投資証明書上の事業内容と一致している内容のインボイスを入手する必要があります。取引先の規模が小さい場合もしくは会社書類の確認を依頼しても拒否されるような場合は注意が必要です。VATインボイスが発行されたとしても、他社のものを流用している場合や会社情報が間違っている可能性があります。また、法的に問題のあるVATインボイスの場合は、VAT還付手続時の税務調査にて還付を拒否されたり、将来的な税務調査の際に該当のVATインボイスにかかる費用の損金算入を拒否される可能性があります。
一旦売上を計上し、VATインボイスを発行した後に、何らかの理由でVATインボイスをキャンセルしなければならない場合があります。また、内容に重大な誤謬が発見された場合には以下の手続によりVATインボイスをキャンセルします。
・発行先の企業よりVATインボイスを回収する
・VATインボイスのキャンセルに係る文書を作成する
・VATインボイスの発行先および発行元の法的代表者がVATインボイスのキャンセルに係る文書に署名捺印を行い、それぞれ一部ずつ保管する
・VATインボイスを再発行する(発行済VATインボイスに誤謬があり、再発行の必要がある場合)
・回収したVATインボイスが発行された月のVATの修正申告をする
・キャンセルを行った日時の属する四半期のVAT報告書により税務署に当該VATインボイスのキャンセルを報告する
外国契約者税
■外国契約者税の概要
国契約者税とは、外国の個人または法人(ベトナムでの居住性、PEの所在は不問)が、ベトナムの個人または法人に対してベトナム国内でサービスを行い、対価を得る際に、その発生した所得や付加価値に対して課される税金です。
外国契約者税の納税義務者は、以下のとおり定義されています。
[ベトナム国内で恒久的施設を有して事業活動を行う外国契約者]
ベトナム国内(ベトナム領海内や国際法に規定する特定の地域を含む)において、ベトナムの法人または個人、あるいはベトナムで事業を行う他の外国法人または個人と契約を締結する外国契約者またはその下請企業であり、以下の条件に該当するものをいいます。
・ベトナム国内にPEを有する、または居住者であること(この場合のPEの有無、居住性の判定については、租税条約や国内法の定めによる)
・ベトナムでの事業活動が、契約日から183日を超える期間にわたり行われる場合
・外国契約者がベトナム会計システム(VAS:VietnamAccountingSystem)を適用している場合
※ 2025年7月1日施行の付加価値税法改正により、ベトナムに恒久的施設を持たない電子商取引やデジタルプラットフォーム事業者も納税義務者に含まれることが明確化され、これに伴いプラットフォーム管理者が源泉徴収・納付義務を負う場合もありますこれらは従来のPE保有や183日ルールに加え、新たな納税義務者の範囲として重要です。
財貨あるいはサービスの購入者
ベトナム国内法人または個人が、外国企業または個人との契約によりサービスの提供を受けたり、あるいはサービスの提供を伴う物品の購入をして、その対価を支払う者を指し、そこには次のような組織・個人が含まれます。
・ 企業法、共通投資法等の法令に基づいて設立された事業組織
・ 政治団体、社会政治団体、専門家団体、人民軍などが有する経済組織
・ 石油投資法により運営する石油事業契約者
・ ベトナムの事業ライセンスを有する外国企業の支店
・ ベトナムの事業ライセンスを有する外国組織およびその代表者
・ ベトナムに乗り入れを行う航空会社の窓口および代理店
・ 外国の海運会社による海運サービスを提供する組織または個人や外国の運輸業者の代理店
また、以下のような外国契約者は課税対象にはなりません。
・ ベトナムの法律に基づいてベトナム国内に設立された外国法人または個人
・ サービスの提供を伴わない物品の販売を行う外国法人または個人
・ ベトナム国外で提供され、かつ消費されるサービスの提供を行う外国法人または個人
・ 航空機や船舶などの輸送手段の修繕、広告宣伝サービス、トレーニングサービス等を、ベトナムの企業や個人にベトナム国外で提供する外国法人または個人
以上が外国契約者税の納税義務者の範囲となりますが、申告義務者は、その納税義務者がVASを導入しているかどうかにより異なります。
ベトナム国内に拠点を有しない場合には、このVASを導入しているケースはほとんどありません。VASを導入すべき例としては、たとえば、外国企業がベトナム国内に工場を設立し、生産拠点を設けるなど、ベトナムでの会計をしっかりと行う必要がある場合などです。
外国契約者税=所得税(個人または法人)+付加価値税
外国契約者税は、実質的にベトナム企業が海外から輸入したサービスに対する税金です。この付加価値税は仕入VATと同様の性質を持つため、本来は輸入した側が負担すべきものですが、納税義務者はあくまで外国法人であるため、この税目については事前に取引当事者同士がどのように取り扱うかを協議しておく必要があります。
この、所得税と付加価値税は、それぞれ課税所得、付加価値額に対し一定の税率を乗じて算出されるため、VASを導入している企業であれば実際に課税所得、付加価値額を算定することができますが、VASを導入していない納税義務者は、厳密に課税所得、付加価値額を計算することが不可能です。そのため、VASを導入していない企業は、得たサービス対価の額、付加価値総額を基に、各税額を算出することになります。
このように、VAS導入と非導入では、税額を計算する上で使用する課税標準額、税率が異なってきます。
■課税標準額の計算
[VAS導入事業者の場合]
VASを導入して会計処理を行っている場合には、通常のベトナム企業と同様、それぞれ所得税法の規定に従って税額を算出します。
[VAS非導入事業者の場合]
VASを導入していない事業者については、課税所得の算出が不可能であるため、収入額を基に課税標準額を計算します。通常は、外国契約者との契約対価の額から付加価値税額を控除した金額が課税標準額となりますが、次のような場合には、それぞれの区分に応じた計算を行う必要があります。
・本契約について、ベトナム企業が外国契約者のために支払った立替経費がある場合には、課税標準額に加算されます。
・契約金額が税額を控除した後の金額である場合、税額を控除する前の金額が課税標準額となります(グロスアップ処理により算定)。
・本契約に関連して、外国契約者がベトナム企業やVASを導入している外国企業と下請外注契約している場合には、その支払額を契約対価の額から控除します。
・リース契約の場合は、リース料総額が課税標準となりますが、リース料総額に保険料、運賃などの付随費用が含まれており、それらを直接支払っている場合には、支出額の証明を書類の提出により行うことで、課税収入額から控除することができます。
・ベトナム国外の航空会社については、ベトナム国内での輸送等による収入が課税標準額となります。
・国際運輸業務に関しては、ベトナムから最終目的地までにかかる収入が課税標準額となります。
・証券、債券の譲渡については、譲渡収入額が課税標準額となります。
・1999年1月1日以前に締結された外国契約者との金銭消費貸借契約による貸付金利息については、外国契約者税の対象にはなりません。しかし、当初契約の重要事項が変更されたことにより、当初契約の有効期限より利息が未払である場合などは一部課税対象となり、課税標準額に含まれることになります。
[付加価値額]
VAS導入事業者
VASを導入している場合は通常の付加価値税額の計算と同様、付加価値総額が課税標準額となります。
VAS非導入事業者
VASを導入していない場合は、付加価値税の対象となる物品・サービスの対価が課税標準額となります。ただし、次のような場合には、それぞれの区分に応じた計算を行う必要があります。
・本契約について、ベトナム企業が外国契約者のために支払った立替経費がある場合には、課税標準額に加算されます。
・契約金額が税額を控除した後の金額である場合(VATを支払者負担とする場合)、控除後の金額をグロスアップした金額が課税標準額となります。
・本契約に関連して、外国契約者がベトナム企業やVASを導入している外国企業と下請外注契約している場合には、その支払額を契約対価の額から控除します。
・外国の輸送業者へ支払う国際運輸料については、外国契約者税は課されません。
・リース契約の場合は、リース料総額が課税標準となりますが、リース料総額に保険料、運賃などの付随費用が含まれており、それらを直接支払っている場合には、支出額の証明を書類の提出により行うことで、課税収入額から控除することができます。
■税額の計算
上記により、算出した課税標準額に、それぞれの区分に応じた税率を乗じて税額を算定します。
[VAS導入事業者]
VASを導入している場合は、通常の税額計算と同様の所得税率、付加価値税率を適用して税額を算出します。
[VAS非導入事業者]
VASを導入していない場合は、以下の外国契約者税率(みなし付加価値税率+みなし法人所得税率)が適用されます。
外国契約者が複数の上記サービスを提供する場合には、通常それぞれのサービス単位での税率が適用されますが、契約上、そのサービス内容が詳細に区分されていない場合には、それぞれのサービスに係る税率のうち最も高い税率が適用されます。
製造設備などの機械装置を販売する場合、それに付随して据付、試運転などのサービス行為が提供される場合には、その提供されるサービスごとに上記税率を適用することになりますが、機械装置の販売代金が明確に区分できない場合には、その総額に対して製造サービスの税率を適用することになります。
[みなし税率の適用例]
日本企業からベトナム企業に対し、現地の生産設備を輸出販売し、製造機械の据付、試運転等のサービスを提供した場合、適用される税率は以下のとおりとなります。
■申告および納付方法
外国契約者税の申告・納付については、VASを導入しているか否かにより大きく異なります。
[VAS導入]
外国契約者がVASを導入している場合は、納税・申告義務者は外国契約者自身となり、四半期予定納税や年度末確定申告、月次付加価値税申告を行います。
GoogleやMeta (Facebook)、Netflexといった電子商取引やデジタルプラットフォームに関するサービスでは、
毎回の取引でFCTを申告納付するのは実務上難しいため、当該申告方法が望ましいとされます。
[VAS非導入]
外国契約者がVASを導入していない場合には、申告義務者はベトナム企業側となります。ベトナム企業は、源泉徴収した外国契約者税を、事前に登録した申告方法に応じて、月次申告の場合は翌月20日までに、都度申告の場合は外国契約者への支払日から10営業日以内に申告・納付する必要があります。また、契約が終了する場合には、終了後45日以内に確定申告・納付をする必要があります。
[ハイブリッド方式]
ハイブリッド方式とは、外国契約者税に含まれる法人所得税、付加価値税につき、それぞれ法人所得税分はみなし法人税率を適用、付加価値税分についてはVASを適用して通常の付加価値税額と同様に算出する方法です。
主にODAプロジェクトなど、大規模な契約の際に多額の仕入VATを支払う場合において、みなし付加価値税率を適用すると仕入VATの控除・還付を受けることができなくなるのを回避するための方法です。
ハイブリッド方式により申告・納付を行う際には、以下の要件をすべて満たしていることに加え、事前に税務当局の承認を受けた上で契約締結後20営業日以内に税務当局に対してハイブリッド方式を適用する旨を通知する必要があります。
・ 外国契約者税の対象となる契約期間が183日以上であること
・ ベトナムの居住者である、またはベトナムにPEがあること
・ 外国契約者がベトナム会計制度を適用し、税務登録かつ税コード を取得していること
ハイブリッド方式にて申告・納付をする場合には、外国契約者もしくはベトナム側が申告・納税義務者となります。
関税
■輸出入関税
ベトナム輸出入関税法により、ベトナムの国境を越えて輸出入の許可を得た物品は輸出入関税の対象となります。ベトナムの関税制度と日本のそれとの違いは、ベトナムからの輸出に対して原則として輸出関税が課せられるという点です。(日本では、輸入にのみ関税が課せられます)ただし、近年ベトナムが締結したCPTPPやEVFTAといった主要な自由貿易協定(FTA)の下では、協定国向けの多くの品目について輸出関税が撤廃されており、0%となっています。そのため、実際の取引では、まず適用されるFTAの有無と、対象品目の関税率を確認することが極めて重要です。
ただし、以下の物品は関税の対象にはなりません。
・ ベトナムを通過するだけの貨物
・ 援助事業などによる支援物資
・ 保税区から海外へ輸出される貸物、海外から保税区へ輸入され、 保税区内で使用される貸物、保税区へ移送される貸物
・輸出の際に資源税として国家に納められる分の石油
輸出加工型企業に関しては、特定の物品を輸出入する場合に優遇措置(関税の免除)が定められています。
[関税制度]
関税とは、貨物等を輸出入する際に課される税金です。貨物を輸出入する際の貨物の価格およびそれに付随する費用を基に課税標準額(課税対象となる価格)を算出します。ベトナムでは、貨物の種類別にHSコードとその関税率が決められています。課税標準額に指定された関税率を乗ずることで関税の金額を算出します。
HSコードとは、日本の輸出入統計品目表で定められている商品コードに相当します。商品の名称および分類についての統一システムに関する国際条約(HS条約)において定められたもので最小単位として6桁の商品単位が定められています。6桁の商品分類はこの条約を基に世界共通とされていますが、7桁以上の分類については、各国が任意に設定することが認められています。ベトナムにおいてもHSコードの分類が定められており、各HSコードの分類に基づいて輸出入関税率が設定されています。ベトナムは、8桁のHSコードが設定されています。
課税標準額の算出には従価税と従量税の二方式があります。従価税方式は、輸出入貨物の価格を基に課税標準額を算出する方法です。輸出入価格の影響を受けるのがその特徴です。一方、従量税方式では数量、容積、重量により課税標準額を算定します。ベトナムでは、従価税方式が採用されています。日本では、従価税または従量税のいずれか、または両方式を組み合わせた混合税という方式も採用されています。
輸出入における課税標準額の算出方法は、輸出と輸入では異なります。
輸入の場合の課税標準額は、原則として、CIFとされます。CIFとは、Cost(価格)、Insurance(保険)、Freight(運賃)の価格の合計を指します。ベトナムに貨物が輸入される際の商品価格、運送費用、およびベトナムに到着するまでに商品に掛けられた保険の金額となります。この金額を課税標準額とします。輸出の場合は、FOB価格(FreeonBoard)となります。FOBとは、商品を輸出する場合の輸出港での売却価格です。これには輸出港からの運賃および保険料金は含まれていません。
なお、CIFおよびFOBはインコタームズ(Incoterms)と呼ばれ、貿易取引条件を定義しています。輸出者および輸入者が貨物の運送に対して、各責任範囲を定めるものです。いずれも国際商業会議所
(ICC)により定められています。
[輸出関税]
輸出関税については、保険料、運賃を除き、出港地での売却価格
(FOB価格)を基に課税標準額が算出されます。関税評価額は、輸出時の契約書ならびにその他の関連書類に基づく売却価格となります。
[輸出申告]
申告には、インボイス、パッキングリスト、発注書(PO:PurchaseOrder)、売買契約書が必要です。物品によっては、関連する公官庁から輸出許可書の提出を求められる場合があります。申告書および関連書類の提出後、貨物、申告書、関連書類のいずれにも問題がなければ、納税通知書が発行され、納税完了後に輸出が許可されます。
[輸入関税]
輸入関税については、CIFを基に関税額が算出されます。
※2025年2月18日より、これまで免税対象であった100万ドン以下の小口輸入品に対する関税・付加価値税の免除が廃止され、すべての輸入貨物に課税されることとなりました。この改正により、国際宅配便での少額輸入品も関税・VATの対象となるため、輸入事業者は注意が必要です。
ベトナムの輸入関税には、以下の3種類の税率が採用されています。
標準関税率
優遇税率および特別優遇税率に適用されないその他の輸入物品については、標準関税率が適用されます。標準関税率は、優遇関税率より50%高く設定されています。
優遇税率
優遇税率は、ベトナムとの間で最恵国待遇の合意をしている通商国からの輸入物品に適用されます。国内法により物品ごとに税率が規定されています。
特別優遇税率
特別優遇税率は、自由貿易地域や共通関税制度の一環として、国際貿易の連携強化に向けて、またはその他特別優遇措置の対象となる場合において、ベトナムとの間で特別優遇輸入関税に関する協定を締結している国などからの輸入物品に対し適用されます。また、国内の関税法令により、個別に優遇税率が適用されることがあります。
また、納付通貨は原則としてベトナムドンである必要があります。外貨で納付する場合の通貨はベトナムドンへ換算可能なものでなければならず、税額計算時点のインターバンク為替レートにより換算します。
[輸出加工型企業への優遇]
輸出加工型企業(EPE)とは、輸出加工区内で設立、操業している企業、工業団地内または経済区内で操業し、製品すべてを輸出する企業を指します。
輸出加工型企業は、以下に挙げる物品の輸入に該当する際に優遇されます。
・EPEでの使用、あるいは輸出向け製品の生産のために輸入された物品
・製品加工を目的にベトナムの国内企業から購入した供給物資、原材料、仕掛品
・EPE、輸出加工区、保税倉庫に搬入された物品
・EPEが国内企業よりサービス、建築、取り付け工事を受領する際のVAT
[輸入申告]
輸入申告は、原則として貨物が輸入港に到着した後に行います。申告には、インボイス、パッキングリスト、船荷証券(BL)、発注書、売買契約書、D/O(DeliveryOrder)が必要です。規制貨物および特恵関税を適用する場合、各種関連省庁による輸入許可書・原産地証明書等が必要となります。輸入申告後、場合によっては税関の貨物検査を受けることになります。貨物、輸入申告書ほか提出書類に問題がなければ、納税通知書が発行されます。納税通知書に基づく納付の終了後、貨物の引取が許可されます。
輸入申告書作成時にはHSコードの選定に注意が必要です。HSコードは税率の決定に直接かかわるため、非常に重要です。輸入しようとする貨物がどのHSコードに該当するか、判断が困難な場合は、文書による事前教示制度を利用することもできます。この制度は、貨物を輸入する前に、その貨物のHSコードを税関に相談し返答をもらうというものです。日本では、ごく一般的な制度ですが、ベトナムにおいては、問い合わせをしても回答を得られないこともあります。
HSコードの判断が困難な貨物の輸入を行う際には現地に精通した物流業者に詳細を相談されることをお勧めします。
営業許可税
営業許可税とは日本の地方税に該当するもので、ベトナムで生産・事業活動を行う組織及び個人は内資及び外資企業のいずれも申告納付が必要となります。ライセンス税、事業税とも言います。
■金額
営業許可税の金額は企業登録証明書(ERC)に記載された定款資本金額により決定されます。定款資本金額が無い場合は投資登録証明書(IRC)に記載される投資額によって決定されます。
具体的な金額は下記です。
条件 | 金額/年 |
定款資本金額または投資額が100億VND(≒6千万JPY)を超える組織 | 300万VND(1万8千JPY) |
定款資本金額または投資額が100億VND(≒6千万JPY)未満の組織 | 200万VND(1万2千JPY) |
支店、駐在員事務所、事業拠点等* | 100万VND(6千JPY) |
*外国企業の駐在員事務所に関しては営業許可税の対象にはならず、申告納付の必要はありません。
■申告納付期限
申告納付期限は毎年1月30日です。
活動を開始した年度の翌年1月30日までに最初の申告納税を行います。年度中に資本金の変更があった場合は1月30日までに申告書の提出が必要です。変更がない場合、翌年以降の申告は不要です。納税のみを行います。
■設立初年度
以前の規定では、設立初年度はERC取得後30日以内に最初の申告納付を行う必要がありましたが、政令22/2020/ND-CPにより、設立初年度は営業許可税の申告は不要となりました。例えば、初回の申告納税期限は下記のようになります。
例)
・設立完了:2023/12/1 → 期限:2024/1/30
・設立完了:2024/1/20 → 期限:2025/1/30
参考文献
- 'Vietnam Pocket Tax Book 2013’Price Waterhouse Coopers http://www.pwc.com/en_VN/vn/publications/2013/pwc_vietnam_pocket_ tax_book_2013.pdf.
- Richard Buchanan, Tom McClelland“Taxes in Vietnam, an overview” Deloitte, 2009
- あずさ監査法人、KPMG 編『メコン流域諸国の税務』中央経済社、2009 年
- トーマツ『アジア諸国の税法〈第 7 版〉』中央経済社、2011 年
- 公益財団法人納税協会連合会『平成 25 年版 租税条約関係法規集』清文社、2013 年